発泡樹脂製パッド成形装置
【課題】 製品パッドの周縁部にバリを残存させることなく原型パッドを切断することができる発泡樹脂製パッド成形装置を提供すること。
【解決手段】 遮断プレート10が原型パッド20と雌型6の平坦面部6aとの間に介在することによって、切断カッター15は、雌型6の凹面部6bを横切り始めるときに、初めて原型パッド20と接触して原型パッド20を切断し始める。このため、切断カッター15が雌型6の凹面部6bに達するまでの過程で、切断カッター15の動きが雌型6の平坦面部6aにはみ出た原型パッド20の部分に邪魔されることもなく、切断カッター15の切断時の軌道が振れ動くこともなくなる。よって、切断カッター15による切り口がガタつかずに、周縁部にバリが残存することのない高品質の製品パッド50を製造できる。
【解決手段】 遮断プレート10が原型パッド20と雌型6の平坦面部6aとの間に介在することによって、切断カッター15は、雌型6の凹面部6bを横切り始めるときに、初めて原型パッド20と接触して原型パッド20を切断し始める。このため、切断カッター15が雌型6の凹面部6bに達するまでの過程で、切断カッター15の動きが雌型6の平坦面部6aにはみ出た原型パッド20の部分に邪魔されることもなく、切断カッター15の切断時の軌道が振れ動くこともなくなる。よって、切断カッター15による切り口がガタつかずに、周縁部にバリが残存することのない高品質の製品パッド50を製造できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡樹脂製の原型パッドを切断することで、ブラジャーパッド又は肩パッド等の各種衣料用パッドに使用される製品パッドを成形する発泡樹脂製パッド成形装置に関し、特に、その製品パッドの周縁部にバリを残存させることなく原型パッドを切断できる発泡樹脂製パッド成形装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の発泡樹脂製パッドの製造方法には、下記特許文献1に記載するとおり、所定の原型パッドを圧縮変形させながら切断して所定形状の製品パッドを製造するものがある。ここで、この特許文献1記載の発泡樹脂製パッドの製造方法について、図10、図11を参照して説明する。
【0003】
図10は、特許文献1に記載する発泡樹脂製パッドの製造方法を説明する図であって、原型パッド20を圧縮変形して切断する状態を図示した断面図であり、図11(a)は、この図10に示す製造方法によって製造された製品パッド40の断面図であり、図11(b)は、図11(a)に示す製品パッド40の平面図である。
【0004】
図10に示すように、製品パッド40の形状となる凹面部30aを有する雌型30と、その凹面部30aに合致する凸面部31aを対向部に有する雄型31より成る一対のプレス型30,31を準備する。そして、略円錐カップ状の原型パッド20の頂部が雌型30の凹面部30aに入るように、原型パッド20を一対のプレス型30,31間にセットした後、この原型パッド20を、プレス型30,31で挾持して凹面部30aと凸面部31aとに適合した形状に圧縮変形させる。
【0005】
それから、原型パッド20を圧縮変形させたままで、プレス型30,31間へカッター32を図10中の水平方向に通し、そのカッター32によって原型パッド20を上下に切断して二分割に分離する。この後、一対のプレス型30,31による圧縮が解除されると、雌型30の凹面部30a内に収まっていた部分、即ち、原型パッド20の頂部及びその周辺部に相当する部分が、弾性復元して所定の略ドーム状の製品パッド40となる。
【0006】
図11(a)に示すように、この製品パッド40は、その外周面41が原型パッド20の頂部及びその周辺部と同じ略ドーム状の膨らみを残したまま、その周縁42と内側面43とが圧縮変形されながらカッター32により切断されたことで凹面部30a内の凹凸が逆転した形状に成形される。
【特許文献1】特開2000−110007号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記した発泡樹脂製パッドの製造方法では、図10に示すように、原型パッド20の頂部及びその周辺部が凹面部30a及び凸面部31aの間で圧縮変形されるとき、この圧縮変形に伴って、原型パッド20の周縁部が雌型30に向けて押し付けられて、雌型20の凹面部30aからはみ出た原型パッド20の部分が、凹面部30aの周囲にある平坦面部30bに接触してしまう。
【0008】
このように、原型パッド20が雌型30の平坦面部30bに接触していると、カッター32をプレス型30,31間に通すときに、平坦面部30と原型パッド20との接触部分がカッター32の邪魔をするため、カッター32が図10の上下方向に振れ動いてしまい、カッター32を雌型30の平坦面部30bに沿ってスムーズに移動できないという問題点があった。
【0009】
しかも、このようにカッター32が振れ動くと、図10に示すようにカッター32の切断時の切口(カッター32の軌道)21もガタついてしまい、製品パッド40の正規の周縁部42(図11(b)中の2点鎖線)に不要なバリ44が残存してしまって、製品パッド40が不良品化してしまうという問題点があった。
【0010】
そこで、本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、製品パッドの周縁部にバリを残存させることなく原型パッドを切断することができる発泡樹脂製パッド成形装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的を達成するために請求項1の発泡樹脂製パッド成形装置は、平坦面部の一部に凹面部が凹設される雌型と、その凹面部に対向する凸面部が凸設される雄型とを有し、その雄型及び雌型間に発泡樹脂製の原型パッドを挟持して圧縮変形させるプレス手段と、そのプレス手段によって原型パッドが前記雌型及び雄型間で圧縮変形される場合に、その雌型の凹面部からはみ出る原型パッドの部分とその雌型の平坦面部との間に介在される薄板状に形成され、かつ、その雌型の凹面部との対向部分にその凹面部の外周形状に略倣った形状の開口部が貫通形成される遮断部材と、その遮断部材と前記雌型との間に挿入されるカッターを有し、そのカッターを前記遮断部材と前記雌型との間で前記凹面部を横切るように移動させることによって、前記プレス手段により圧縮変形される原型パッドを、前記雌型の凹面部に収まる部分と、その凹面部からはみ出る部分とに切断して二分割する切断手段とを備えている。
【0012】
この請求項1の発泡樹脂製パッド成形装置によれば、原型パッドは、プレス手段によって、雌型と雄型との間で挟持されて圧縮変形される。このとき、雌型上には遮断部材が重畳されており、原型パッドの部分のうち雌型の凹面部に対向する部分は、遮断部材の開口部を通り抜けて雌型の凹面部に入り込んで、その雌型の凹面部と雄型の凸面部との間で圧縮されるが、原型パッドの部分のうち雌型の平坦面部に対向する部分は、雌型の凹面部に収まりきらずに凹面部の外にはみ出てしまう。
【0013】
もっとも、この凹面部からはみ出た原型パッドの部分は、この原型パッドの部分と雌型の平坦面部との間に介在する遮断部材の上に覆い被さるように載り上がるため、この遮断部材によって雌型の平坦面部から遮断されて、この雌型の平坦面部に接触することが防止される。そして、遮断部材によって原型パッドと雌型の平坦面部とが互いの接触を遮断された状態のまま、カッターが遮断部材と雌型との間に挿入されて、このカッターが切断手段によって移動される。
【0014】
すると、カッターは、雌型の凹面部を横切り始めるときに、初めて原型パッドと接触して原型パッドを切断し始めるため、雌型の平坦面部にはみ出た原型パッドの部分に邪魔されて振れ動くことがなくなる。したがって、カッターによる切り口がガタつくこともなくなるので、原型パッドを、凹面部内に収まる部分と、その凹面部からはみ出る部分と綺麗に二分割させて、製品パッドの周縁部にバリが残存することもなくなる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の発泡樹脂製パッド成形装置によれば、原型パッドと雌型の平坦面部との間には遮断部材が介在される。よって、原型パッドが圧縮変形されるときに、原型パッドの周縁部が雌型に向けて押し付けられても、雌型の凹面部からはみ出た原型パッドの部分が、その凹面部周囲にある平坦面部に接触することを防止できる。しかも、この遮断部材と雌型との間でカッターを移動させて原型パッドを切断するので、カッターが雌型の凹面部を横切り始めるまで、このカッターが原型パッドに触れること防止できる。すると、原型パッドのうち、雌型の凹面部に収まった部分は、その凹面部の輪郭通りに綺麗に切断されるため、製品パッドの周縁部にバリが残存こともなく、製品パッドの品質が高められるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の好ましい実施例について、添付図面を参照して説明する。図1は、本発明の発泡樹脂製パッド成形装置の一実施例であるパッド成形機1の側面図であり、図中の矢印Xは、切断カッター15の送り方向を示している。このパッド成形機1は、発泡樹脂製の原型パッド20を圧縮変形させた状態で切断することによって、所望の形状を有する製品パッド50を成形するものである。
【0017】
なお、本実施例では、衣料用パッドの一種であるブラジャーパッドを製品パッド50として原型パッド20から成形製造する場合について説明する。
【0018】
図1に示すように、パッド成形機1は、主として、フレーム2と、プレス装置3と、切断装置4とを備えており、なかでもフレーム2は、プレス装置3及び切断装置4が搭載される基体となるものである。プレス装置3は、原型パッド20を圧縮変形させるためのものであり、主に、一対の雄型5及び雌型6と、複数のエアシリンダ7,7と、シリンダ駆動装置8とを備えている。
【0019】
一対の雄型5及び雌型6は、その間に発泡樹脂製の原型パッド20を挟持して所定形状に圧縮変形させるためのプレス型であり、互いに間隔を隔てて対向配置されている。雄型5は、雌型6との対向面に凸面部5aが形成されており、この凸面部5aは雌型6へ向けて凸設されている。
【0020】
一方、雌型6は、フレーム2の左側部分に配設される支持部材9によって、雄型5との対向位置に支持されており、その雄型5との対向面に1枚の遮断プレート10が重畳されている。
【0021】
図2を参照して、一対の雄型5及び雌型6と遮断プレート10の詳細について説明する。図2(a)は、雄型5、雌型6及び遮断プレート10の分解斜視図であり、図2(b)は、雄型5及び雌型6を並べて図示した平面図である。
【0022】
図2(a)に示すように、雌型6は雄型5との対向面に略平滑面状の平坦面部6aが形成されており、この平坦面部6aの略中央の一部には凹面部6bが凹設されている。そして、この雌型6の凹面部6bの内面には、製品パッド50の内側面の凹凸を相互に逆転させた凹凸形状に適合する凹凸が形成されている
【0023】
また、雌型6の平坦面部6aは、その表面が平滑面状の硬質樹脂製シートによって被覆されており、この平坦面部6aに沿って切断カッター15が摺動し易くなっている。さらに、雌型6の凹面部6bは雄型5の凸面部5aに対向する部分に凹設されており、図2(b)に示すように、この雄型5の凸面部5aと雌型6の凹面部6bとは、それぞれ略同サイズの輪郭形状に形成されている。よって、雄型5の凸面部5aを雌型6の凹面部6bに対向させたとき、この両者の輪郭が一致するようになっている。
【0024】
図2(a)に示すように、遮断プレート10は、可撓性を有した薄板状の硬質樹脂製シートで形成されており、雌型6の平坦面部6aに重畳されるものである。この遮断プレート10における雌型6の平坦面部6aとの対向面は平滑面状に形成されており、遮断プレート10に沿って切断カッター15が摺動し易くなっている。
【0025】
また、遮断プレート10における雌型6の凹面部6bとの対向部分には、雌型6の凹面部6bの外周形状に略倣った形状の開口部10aが貫通形成されている。そして、遮断プレート10における開口部10aを除く部分の形状は、雌型6の平坦面部6aの平面形状に一致するように形成されている。
【0026】
また、遮断プレート10における雌型6の平坦面部6aとの非対向面には、例えば、エンボス加工等により微細な凹凸が形成されており、遮断プレート10の開口部10aの周縁部に原型パッド20が覆い被さるように載り上がって圧接される場合に、原型パッド20と遮断プレート10との間の摩擦抵抗を高めて、原型パッド20が遮断プレート10に対して摺り動くことを防止できる。
【0027】
図1に戻ると、雄型5における雌型6との非対向面側(図1右側)には取付版11が取着されており、この取付版11を介して、雄型5は、複数のエアシリンダ7,7のロッド7a,7a先端部に連結固定されている。エアシリンダ7は、圧縮空気を用いてロッド7aをケーシング7bから出没させる空気圧式のアクチュエータであり、そのケーシング7bがフレーム2の右側部分に固定支持されている。
【0028】
シリンダ駆動装置8は、各エアシリンダ7に対してロッド7aを出没させる圧縮空気を供給して、その各ロッド7aの出没動作を制御する機器である。このシリンダ駆動装置8によって各エアシリンダ7に圧縮空気が供給されると、各エアシリンダ7の各ロッド7aが雌型6の配設側へ向けて突出され、この突出によって雄型5が雌型6へ向けて押動されて、原型パッド20が雄型5及び雌型6間で圧縮変形されるのである。
【0029】
切断装置4は、上述したプレス装置3によって圧縮変形される原型パッド20を切断するものであって、カッターヘッド12と、このカッターヘッド12を移動させる動力を供給するとともにカッターヘッド12の動作を制御する機器であるヘッド駆動装置13とを備えている。
【0030】
カッターヘッド12は、一対のリニアガイドウェイ14,14を介して、フレーム2の左側部分に支持されており、ヘッド駆動装置13によって、切断カッター15の送り方向(図1の矢印X方向)に略直交する水平方向(図1の紙面に対する直交方向、及び、図3の矢印Y方向)に向けて移動可能となっている(図3参照)。
【0031】
また、カッターヘッド12は、原型パッド20を切断するための無端帯状の切断カッター15と、この切断カッター15をカッターヘッド12の上部から下部へ向けて垂直方向(図1の矢印X方向)に一定速度で送り移動させるカッター送り装置(図示せず)とを備えている。
【0032】
なお、図示しないカッター送り装置は、図1に示すカッターヘッド12の上下両側に配設される一対のローラ(図示せず)と、その一方のローラを回動させる駆動モータ(図示せず)とを備えており、この駆動モータの回転駆動によって、一対のローラの間に張架される切断カッター15を周回移動させるものである。
【0033】
図3は、図1のIII−III線で縦断面視した雌型6及びカッターヘッド12の正面図であり、図4は、図3のIV−IV線における横断面図である。なお、図3及び図4中の矢印Xは切断カッター15の送り方向を、矢印Yはカッターヘッド12の順送り方向を、それぞれ示している。また、遮断プレート10の一部の図示を省略している。
【0034】
図3に示すように、遮断プレート10は、その開口部10aが雌型6の凹面部6bに合致し、かつ、その開口部10aを除く部分が雌型6の平坦面部6aに合致した状態で、雌型6に重ねられている。そして、雌型6の平坦面部6aと遮断プレート10との間には、垂直方向(図3の上下方向)に向けられた切断カッター15が挿入される隙間16(図4参照)が設けられている。
【0035】
図4に示すように、この雌型6と遮断プレート10との間の隙間16は、原型パッド20を切断するときに切断カッター15が雌型6の平坦面部6aに沿って移動するためのスリット(以下「カッタースリット」という。)である。また、遮断プレート10の左右両端部は固定用テープ17,17によって雌型6の左右両端部にそれぞれ固定されており、これによってカッタースリット16の左右両端部は閉塞されている。
【0036】
これに対し、カッタースリット16の上下両端部はいずれも開放されており、図3に示すように、切断カッター15は、カッターヘッド12の上部からカッタースリット16の上端部開放を通じてカッタースリット16内へ挿入され、このカッタースリット16内を縦断貫通して、カッタースリット16の下端部開放からカッターヘッド12の下部へ張架されている。
【0037】
図5は、カッターヘッド12の移動に伴う切断カッター15の移動状態を図示したものであり、雌型6、遮断プレート10及び切断カッター15を図示した平面図である。なお、図5中の矢印Xは切断カッター15の送り方向を、矢印Yはカッターヘッド12の順送り方向を、それぞれ示している。
【0038】
図5に示すように、カッターヘッド12がヘッド駆動装置13によって雌型6の左端側から右端側へ向けて一定速度で移動されることで、切断カッター15が図中の(a)位置から(e)位置まで一定速度で移動される。ここで、切断カッター15が(a)位置から(b)位置に到達するまで、この切断カッター15は、その長手方向両端部(図5の上下両側)を除く全ての部分が遮断プレート10によって覆われている。したがって、切断カッター15が雌型6の凹面部6bの周縁に辿り着くまで、かかる切断カッター15が原型パッド20に接触することが確実に防止される。
【0039】
そして、切断カッター15が(b)位置に到達すると、この切断カッター15の刃先が雌型6の凹面部6bの周縁に達し、このとき初めて切断カッター15の刃先が、遮断プレート10の開口部10aを通じて姿を現す。つまり、切断カッター15は、この(b)位置から遮断プレート10の開口部10aと重なり合っている雌型6の凹面部6bを横切り始めるのであり、このとき初めて切断カッター15の刃先が原型パッド20に接触して、これを切断し始めるのである。
【0040】
そして、切断カッター15が(b)位置から(c)位置を通過して(d)位置に到達するまで、即ち、雌型6の凹面部6bを横切り終えるまで、この切断カッター15は、遮断プレート10の開口部10aから姿を現しながら移動される。つまり、切断カッター15は、この(b)位置から(c)位置を経て(d)位置にほぼ達するまで、原型パッド20を切断し続けるのである。
【0041】
それから、切断カッター15が(d)位置を過ぎて(e)位置に到達するまで、この切断カッター15は、その長手方向両端部(図5の上下両側)を除く全ての部分が遮断プレート10によって覆われる。このため、切断カッター15が雌型6の凹面部6bを横切りきった後、切断カッター15が原型パッド20に接触することが確実に防止される。そして、切断カッター15が(e)位置に到達すると、カッターヘッド12の矢印Y方向へ向けた順方向送り動作、即ち、切断装置4による原型パッド20の切断動作が終了する。
【0042】
このようにして、遮断プレート10と雌型6との間にあるカッタースリット16に切断カッター15を挿入したまま、この切断カッター15を矢印X方向へ送りつつ、カッターヘッド12を矢印Y方向へ送り移動させることによって、プレス装置3により圧縮変形される原型パッド20は、雌型6の凹面部6bに収まる部分と、その凹面部6bからはみ出る部分とに二分割切断されるのである(図8(b)参照)。
【0043】
次に、図6、図7、図8、図9を参照して、上記のように構成されたパッド成形機1を用いた製品パッド50の成形方法について説明する。
【0044】
ここで、図6は、一対の雄型5及び雌型6間に原型パッド20をセットする前状態を示した縦断面図であり、図7は、一対の雄型5及び雌型6間に原型パッド20を狭持して圧縮変形させた状態を示した縦断面図であって、切断カッター15が図5の(a)位置にある場合を図示したものである。図8は、一対の雄型5及び雌型6間で原型パッド20が圧縮変形されている状態を示した縦断面図であって、図8(a)は、切断カッター15が図5の(b)位置にある場合を図示したものであり、図8(b)は、切断カッター15が図5の(c)位置にある場合を図示したものであり、各図中に示す矢印Yは、カッターヘッド12の順送り方向を示している。図9(a)は、パッド成形機1を用いた成形方法により製造された製品パッド50の断面図であり、図9(b)は、図9(a)に示す製品パッド50の平面図である。
【0045】
このパッド成形機1を用いた製品パッド50の成形方法によれば、まず、一対の雄型5及び雌型6の間に原型パッド20がセットされる。このとき、図6に示すように、略円錐カップ状の原型パッド20の頂部が雌型6の凹面部6bに向けられる。
【0046】
すると、原型パッド20の頂部が遮断プレート10の開口部10aを通り抜けて雌型6の凹面部6b内に納められる。そして、この状態で、プレス装置3のシリンダ駆動装置8が稼働されると、各エアシリンダ7のロッド7aが突出されて、雄型5が雌型6へ向けて押動される。
【0047】
すると、図7に示すように、雄型5の凸面部5aが原型パッド20の頂部及びその周辺部分を雌型6の凹面部6bへ向けて押圧し、この原型パッド20が雌型6と雄型5との間で挟持されて圧縮変形される。
【0048】
このとき、原型パッド20の部分のうち雌型6の凹面部6bに対向する部分は、遮断プレート10の開口部10aを通り抜けて、凸面部5aと凹面部6bとに適合した形状に圧縮変形される。これに対し、原型パッド20の部分のうち雌型6の平坦面部6aに対向する部分は、雌型6の凹面部6bに収まりきらずに凹面部6bの外にはみ出て、雌型6上に重畳される遮断プレート10の上に覆い被さるように載り上がる。
【0049】
すると、遮断プレート10の開口部10aの周縁部分は、雄型5によって押圧される原型パッド20によって雌型6の平坦面部6aに押圧(付勢)する格好となるので、切断カッター15が開口部10aを横切る場合に、かかる切断カッター15が上下に振れてガタつくことを防止することができる。
【0050】
この結果、原型パッド20の部分のうち雌型6の凹面部6bからはみ出た部分と雌型6の平坦面部6aとの間には遮断プレート10が介在する格好となるため、凹面部6bからはみ出た原型パッド20部分は、雌型6の平坦面部6aから遮断され、この遮断によって原型パッド20と雌型6の平坦面部6aとの接触が防止される。そして、プレス装置3による原型パッド20の圧縮変形を維持したまま、切断装置4による原型パッド20の切断が行われる。
【0051】
この原型パッド20の切断では、切断カッター15がカッター送り装置(図示せず)によって矢印X方向(図1、図3及び図5参照)へ送り移動されながら、カッターヘッド12がヘッド駆動装置13によって矢印Y方向(図3、図4及び図5参照)へ送り移動される。すると、図7に示す位置にある切断カッター15が、雌型6の平坦面部6a及び遮断プレート10の間で摺接されながら、雌型6の平坦面部6aに沿ってカッタースリット16内を矢印Y方向へ移動される。
【0052】
この後、カッターヘッド12の送り移動が継続され続けると、図8(a)に示すように、切断カッター15の刃先が、雌型6の凹面部6bと遮断プレート10の開口部10aとの間から、雌型6の凹面部6b内へ突出されて、このとき初めて原型パッド20に接触させられる。
【0053】
そして、カッターヘッド12の送り移動が更に継続されると、図8(b)に示すように、原型パッド20は、雌型6の平坦面部6aと面一となる切断面で上下に二分割される。この後、切断カッター15が雌型6の凹面部6bを横切り終えて雌型6の右端部に到達すると、ヘッド駆動装置13によるカッターヘッド12の移動が停止される。
【0054】
この後、シリンダ駆動装置8によって、各エアシリンダ7,7のロッド7a,7aがケーシング7b,7bに没入されると、雄型5が雌型6から離されて、一対の雄型5及び雌型6による原型パッド20の圧縮状態が解除される。すると、雌型6の凹面部6b内に収まっていた部分、即ち、原型パッド20の頂部及びその周辺部に相当する部分が、図9(a)に示すように、弾性復元して所定の略ドーム状の製品パッド50となる。
【0055】
図9(a)に示すように、この製品パッド50は、その外周面が原型パッド20の頂部及びその周辺部と同じ略ドーム状の膨らみを残したまま、その周縁と内側面とが圧縮変形されながらカッターにより切断されたことで凹面部6b内の凹凸が逆転した形状と略同一形状に成形される。
【0056】
しかも、遮断プレート10が原型パッド20と雌型6の平坦面部6aとの間に介在することによって、切断カッター15は、雌型6の凹面部6bを横切り始めるときに、初めて原型パッド20と接触して原型パッド20を切断し始める。このため、切断カッター15が雌型6の凹面部6bに達するまでの過程で、切断カッター15の動きが雌型6の平坦面部6aにはみ出た原型パッド20の部分に邪魔されることもなく、切断カッター15の切断時の軌道が振れ動くこともなくなる。
【0057】
したがって、切断カッター15による切り口がガタつくこともなくなるので、原型パッド20から、凹面部6b内に収まる部分が凹面部6bの輪郭通りに綺麗に切り取られ、結果、図9(b)に示すように、周縁部にバリが残存することのない高品質の製品パッド50を製造することができる。
【0058】
以上、実施例に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の一実施例であるパッド成形機の側面図である。
【図2】(a)は、雄型、雌型及び遮断プレートの分解斜視図であり、(b)は、雄型及び雌型を並べて図示した平面図である。
【図3】図1のII−II線で縦断面視した雌型及びカッターヘッドの正面図である。
【図4】図3のIV−IV線における横断面図である。
【図5】カッターヘッドの移動に伴う切断カッターの移動状態を図示したものであり、雌型、遮断プレート及び切断カッターを図示した平面図である。
【図6】一対の雄型及び雌型間に原型パッドをセットする前状態を示した縦断面図である。
【図7】一対の雄型及び雌型間に原型パッドを狭持して圧縮変形させた状態を示した縦断面図であって、切断カッターが図5の(a)位置にある場合を図示したものである。
【図8】一対の雄型及び雌型間で原型パッドが圧縮変形されている状態を示した縦断面図であって、(a)は、切断カッターが図5の(b)位置にある場合を図示したものであり、(b)は、切断カッターが図5の(c)位置にある場合を図示したものである。
【図9】(a)は、パッド成形機を用いた成形方法により製造された製品パッドの断面図であり、(b)は、(a)に示す製品パッドの平面図である。
【図10】従来の発泡樹脂製パッドの製造方法を説明する図であって、原型パッドを圧縮変形して切断する状態を図示した断面図である。
【図11】(a)は、図10に示す製造方法によって製造された製品パッドの断面図であり、(b)は、(a)に示す製品パッドの平面図である。
【符号の説明】
【0060】
1 パッド成形機(発泡樹脂製パッド成形装置)
3 プレス装置(プレス手段)
4 切断装置(切断手段)
5 雄型
5a 凸面部
6 雌型
6a 平坦面部(平坦部)
6b 凹面部
10 遮断プレート(遮断部材)
10a 開口部
15 切断カッター(カッター)
20 原型パッド
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡樹脂製の原型パッドを切断することで、ブラジャーパッド又は肩パッド等の各種衣料用パッドに使用される製品パッドを成形する発泡樹脂製パッド成形装置に関し、特に、その製品パッドの周縁部にバリを残存させることなく原型パッドを切断できる発泡樹脂製パッド成形装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の発泡樹脂製パッドの製造方法には、下記特許文献1に記載するとおり、所定の原型パッドを圧縮変形させながら切断して所定形状の製品パッドを製造するものがある。ここで、この特許文献1記載の発泡樹脂製パッドの製造方法について、図10、図11を参照して説明する。
【0003】
図10は、特許文献1に記載する発泡樹脂製パッドの製造方法を説明する図であって、原型パッド20を圧縮変形して切断する状態を図示した断面図であり、図11(a)は、この図10に示す製造方法によって製造された製品パッド40の断面図であり、図11(b)は、図11(a)に示す製品パッド40の平面図である。
【0004】
図10に示すように、製品パッド40の形状となる凹面部30aを有する雌型30と、その凹面部30aに合致する凸面部31aを対向部に有する雄型31より成る一対のプレス型30,31を準備する。そして、略円錐カップ状の原型パッド20の頂部が雌型30の凹面部30aに入るように、原型パッド20を一対のプレス型30,31間にセットした後、この原型パッド20を、プレス型30,31で挾持して凹面部30aと凸面部31aとに適合した形状に圧縮変形させる。
【0005】
それから、原型パッド20を圧縮変形させたままで、プレス型30,31間へカッター32を図10中の水平方向に通し、そのカッター32によって原型パッド20を上下に切断して二分割に分離する。この後、一対のプレス型30,31による圧縮が解除されると、雌型30の凹面部30a内に収まっていた部分、即ち、原型パッド20の頂部及びその周辺部に相当する部分が、弾性復元して所定の略ドーム状の製品パッド40となる。
【0006】
図11(a)に示すように、この製品パッド40は、その外周面41が原型パッド20の頂部及びその周辺部と同じ略ドーム状の膨らみを残したまま、その周縁42と内側面43とが圧縮変形されながらカッター32により切断されたことで凹面部30a内の凹凸が逆転した形状に成形される。
【特許文献1】特開2000−110007号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記した発泡樹脂製パッドの製造方法では、図10に示すように、原型パッド20の頂部及びその周辺部が凹面部30a及び凸面部31aの間で圧縮変形されるとき、この圧縮変形に伴って、原型パッド20の周縁部が雌型30に向けて押し付けられて、雌型20の凹面部30aからはみ出た原型パッド20の部分が、凹面部30aの周囲にある平坦面部30bに接触してしまう。
【0008】
このように、原型パッド20が雌型30の平坦面部30bに接触していると、カッター32をプレス型30,31間に通すときに、平坦面部30と原型パッド20との接触部分がカッター32の邪魔をするため、カッター32が図10の上下方向に振れ動いてしまい、カッター32を雌型30の平坦面部30bに沿ってスムーズに移動できないという問題点があった。
【0009】
しかも、このようにカッター32が振れ動くと、図10に示すようにカッター32の切断時の切口(カッター32の軌道)21もガタついてしまい、製品パッド40の正規の周縁部42(図11(b)中の2点鎖線)に不要なバリ44が残存してしまって、製品パッド40が不良品化してしまうという問題点があった。
【0010】
そこで、本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、製品パッドの周縁部にバリを残存させることなく原型パッドを切断することができる発泡樹脂製パッド成形装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的を達成するために請求項1の発泡樹脂製パッド成形装置は、平坦面部の一部に凹面部が凹設される雌型と、その凹面部に対向する凸面部が凸設される雄型とを有し、その雄型及び雌型間に発泡樹脂製の原型パッドを挟持して圧縮変形させるプレス手段と、そのプレス手段によって原型パッドが前記雌型及び雄型間で圧縮変形される場合に、その雌型の凹面部からはみ出る原型パッドの部分とその雌型の平坦面部との間に介在される薄板状に形成され、かつ、その雌型の凹面部との対向部分にその凹面部の外周形状に略倣った形状の開口部が貫通形成される遮断部材と、その遮断部材と前記雌型との間に挿入されるカッターを有し、そのカッターを前記遮断部材と前記雌型との間で前記凹面部を横切るように移動させることによって、前記プレス手段により圧縮変形される原型パッドを、前記雌型の凹面部に収まる部分と、その凹面部からはみ出る部分とに切断して二分割する切断手段とを備えている。
【0012】
この請求項1の発泡樹脂製パッド成形装置によれば、原型パッドは、プレス手段によって、雌型と雄型との間で挟持されて圧縮変形される。このとき、雌型上には遮断部材が重畳されており、原型パッドの部分のうち雌型の凹面部に対向する部分は、遮断部材の開口部を通り抜けて雌型の凹面部に入り込んで、その雌型の凹面部と雄型の凸面部との間で圧縮されるが、原型パッドの部分のうち雌型の平坦面部に対向する部分は、雌型の凹面部に収まりきらずに凹面部の外にはみ出てしまう。
【0013】
もっとも、この凹面部からはみ出た原型パッドの部分は、この原型パッドの部分と雌型の平坦面部との間に介在する遮断部材の上に覆い被さるように載り上がるため、この遮断部材によって雌型の平坦面部から遮断されて、この雌型の平坦面部に接触することが防止される。そして、遮断部材によって原型パッドと雌型の平坦面部とが互いの接触を遮断された状態のまま、カッターが遮断部材と雌型との間に挿入されて、このカッターが切断手段によって移動される。
【0014】
すると、カッターは、雌型の凹面部を横切り始めるときに、初めて原型パッドと接触して原型パッドを切断し始めるため、雌型の平坦面部にはみ出た原型パッドの部分に邪魔されて振れ動くことがなくなる。したがって、カッターによる切り口がガタつくこともなくなるので、原型パッドを、凹面部内に収まる部分と、その凹面部からはみ出る部分と綺麗に二分割させて、製品パッドの周縁部にバリが残存することもなくなる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の発泡樹脂製パッド成形装置によれば、原型パッドと雌型の平坦面部との間には遮断部材が介在される。よって、原型パッドが圧縮変形されるときに、原型パッドの周縁部が雌型に向けて押し付けられても、雌型の凹面部からはみ出た原型パッドの部分が、その凹面部周囲にある平坦面部に接触することを防止できる。しかも、この遮断部材と雌型との間でカッターを移動させて原型パッドを切断するので、カッターが雌型の凹面部を横切り始めるまで、このカッターが原型パッドに触れること防止できる。すると、原型パッドのうち、雌型の凹面部に収まった部分は、その凹面部の輪郭通りに綺麗に切断されるため、製品パッドの周縁部にバリが残存こともなく、製品パッドの品質が高められるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の好ましい実施例について、添付図面を参照して説明する。図1は、本発明の発泡樹脂製パッド成形装置の一実施例であるパッド成形機1の側面図であり、図中の矢印Xは、切断カッター15の送り方向を示している。このパッド成形機1は、発泡樹脂製の原型パッド20を圧縮変形させた状態で切断することによって、所望の形状を有する製品パッド50を成形するものである。
【0017】
なお、本実施例では、衣料用パッドの一種であるブラジャーパッドを製品パッド50として原型パッド20から成形製造する場合について説明する。
【0018】
図1に示すように、パッド成形機1は、主として、フレーム2と、プレス装置3と、切断装置4とを備えており、なかでもフレーム2は、プレス装置3及び切断装置4が搭載される基体となるものである。プレス装置3は、原型パッド20を圧縮変形させるためのものであり、主に、一対の雄型5及び雌型6と、複数のエアシリンダ7,7と、シリンダ駆動装置8とを備えている。
【0019】
一対の雄型5及び雌型6は、その間に発泡樹脂製の原型パッド20を挟持して所定形状に圧縮変形させるためのプレス型であり、互いに間隔を隔てて対向配置されている。雄型5は、雌型6との対向面に凸面部5aが形成されており、この凸面部5aは雌型6へ向けて凸設されている。
【0020】
一方、雌型6は、フレーム2の左側部分に配設される支持部材9によって、雄型5との対向位置に支持されており、その雄型5との対向面に1枚の遮断プレート10が重畳されている。
【0021】
図2を参照して、一対の雄型5及び雌型6と遮断プレート10の詳細について説明する。図2(a)は、雄型5、雌型6及び遮断プレート10の分解斜視図であり、図2(b)は、雄型5及び雌型6を並べて図示した平面図である。
【0022】
図2(a)に示すように、雌型6は雄型5との対向面に略平滑面状の平坦面部6aが形成されており、この平坦面部6aの略中央の一部には凹面部6bが凹設されている。そして、この雌型6の凹面部6bの内面には、製品パッド50の内側面の凹凸を相互に逆転させた凹凸形状に適合する凹凸が形成されている
【0023】
また、雌型6の平坦面部6aは、その表面が平滑面状の硬質樹脂製シートによって被覆されており、この平坦面部6aに沿って切断カッター15が摺動し易くなっている。さらに、雌型6の凹面部6bは雄型5の凸面部5aに対向する部分に凹設されており、図2(b)に示すように、この雄型5の凸面部5aと雌型6の凹面部6bとは、それぞれ略同サイズの輪郭形状に形成されている。よって、雄型5の凸面部5aを雌型6の凹面部6bに対向させたとき、この両者の輪郭が一致するようになっている。
【0024】
図2(a)に示すように、遮断プレート10は、可撓性を有した薄板状の硬質樹脂製シートで形成されており、雌型6の平坦面部6aに重畳されるものである。この遮断プレート10における雌型6の平坦面部6aとの対向面は平滑面状に形成されており、遮断プレート10に沿って切断カッター15が摺動し易くなっている。
【0025】
また、遮断プレート10における雌型6の凹面部6bとの対向部分には、雌型6の凹面部6bの外周形状に略倣った形状の開口部10aが貫通形成されている。そして、遮断プレート10における開口部10aを除く部分の形状は、雌型6の平坦面部6aの平面形状に一致するように形成されている。
【0026】
また、遮断プレート10における雌型6の平坦面部6aとの非対向面には、例えば、エンボス加工等により微細な凹凸が形成されており、遮断プレート10の開口部10aの周縁部に原型パッド20が覆い被さるように載り上がって圧接される場合に、原型パッド20と遮断プレート10との間の摩擦抵抗を高めて、原型パッド20が遮断プレート10に対して摺り動くことを防止できる。
【0027】
図1に戻ると、雄型5における雌型6との非対向面側(図1右側)には取付版11が取着されており、この取付版11を介して、雄型5は、複数のエアシリンダ7,7のロッド7a,7a先端部に連結固定されている。エアシリンダ7は、圧縮空気を用いてロッド7aをケーシング7bから出没させる空気圧式のアクチュエータであり、そのケーシング7bがフレーム2の右側部分に固定支持されている。
【0028】
シリンダ駆動装置8は、各エアシリンダ7に対してロッド7aを出没させる圧縮空気を供給して、その各ロッド7aの出没動作を制御する機器である。このシリンダ駆動装置8によって各エアシリンダ7に圧縮空気が供給されると、各エアシリンダ7の各ロッド7aが雌型6の配設側へ向けて突出され、この突出によって雄型5が雌型6へ向けて押動されて、原型パッド20が雄型5及び雌型6間で圧縮変形されるのである。
【0029】
切断装置4は、上述したプレス装置3によって圧縮変形される原型パッド20を切断するものであって、カッターヘッド12と、このカッターヘッド12を移動させる動力を供給するとともにカッターヘッド12の動作を制御する機器であるヘッド駆動装置13とを備えている。
【0030】
カッターヘッド12は、一対のリニアガイドウェイ14,14を介して、フレーム2の左側部分に支持されており、ヘッド駆動装置13によって、切断カッター15の送り方向(図1の矢印X方向)に略直交する水平方向(図1の紙面に対する直交方向、及び、図3の矢印Y方向)に向けて移動可能となっている(図3参照)。
【0031】
また、カッターヘッド12は、原型パッド20を切断するための無端帯状の切断カッター15と、この切断カッター15をカッターヘッド12の上部から下部へ向けて垂直方向(図1の矢印X方向)に一定速度で送り移動させるカッター送り装置(図示せず)とを備えている。
【0032】
なお、図示しないカッター送り装置は、図1に示すカッターヘッド12の上下両側に配設される一対のローラ(図示せず)と、その一方のローラを回動させる駆動モータ(図示せず)とを備えており、この駆動モータの回転駆動によって、一対のローラの間に張架される切断カッター15を周回移動させるものである。
【0033】
図3は、図1のIII−III線で縦断面視した雌型6及びカッターヘッド12の正面図であり、図4は、図3のIV−IV線における横断面図である。なお、図3及び図4中の矢印Xは切断カッター15の送り方向を、矢印Yはカッターヘッド12の順送り方向を、それぞれ示している。また、遮断プレート10の一部の図示を省略している。
【0034】
図3に示すように、遮断プレート10は、その開口部10aが雌型6の凹面部6bに合致し、かつ、その開口部10aを除く部分が雌型6の平坦面部6aに合致した状態で、雌型6に重ねられている。そして、雌型6の平坦面部6aと遮断プレート10との間には、垂直方向(図3の上下方向)に向けられた切断カッター15が挿入される隙間16(図4参照)が設けられている。
【0035】
図4に示すように、この雌型6と遮断プレート10との間の隙間16は、原型パッド20を切断するときに切断カッター15が雌型6の平坦面部6aに沿って移動するためのスリット(以下「カッタースリット」という。)である。また、遮断プレート10の左右両端部は固定用テープ17,17によって雌型6の左右両端部にそれぞれ固定されており、これによってカッタースリット16の左右両端部は閉塞されている。
【0036】
これに対し、カッタースリット16の上下両端部はいずれも開放されており、図3に示すように、切断カッター15は、カッターヘッド12の上部からカッタースリット16の上端部開放を通じてカッタースリット16内へ挿入され、このカッタースリット16内を縦断貫通して、カッタースリット16の下端部開放からカッターヘッド12の下部へ張架されている。
【0037】
図5は、カッターヘッド12の移動に伴う切断カッター15の移動状態を図示したものであり、雌型6、遮断プレート10及び切断カッター15を図示した平面図である。なお、図5中の矢印Xは切断カッター15の送り方向を、矢印Yはカッターヘッド12の順送り方向を、それぞれ示している。
【0038】
図5に示すように、カッターヘッド12がヘッド駆動装置13によって雌型6の左端側から右端側へ向けて一定速度で移動されることで、切断カッター15が図中の(a)位置から(e)位置まで一定速度で移動される。ここで、切断カッター15が(a)位置から(b)位置に到達するまで、この切断カッター15は、その長手方向両端部(図5の上下両側)を除く全ての部分が遮断プレート10によって覆われている。したがって、切断カッター15が雌型6の凹面部6bの周縁に辿り着くまで、かかる切断カッター15が原型パッド20に接触することが確実に防止される。
【0039】
そして、切断カッター15が(b)位置に到達すると、この切断カッター15の刃先が雌型6の凹面部6bの周縁に達し、このとき初めて切断カッター15の刃先が、遮断プレート10の開口部10aを通じて姿を現す。つまり、切断カッター15は、この(b)位置から遮断プレート10の開口部10aと重なり合っている雌型6の凹面部6bを横切り始めるのであり、このとき初めて切断カッター15の刃先が原型パッド20に接触して、これを切断し始めるのである。
【0040】
そして、切断カッター15が(b)位置から(c)位置を通過して(d)位置に到達するまで、即ち、雌型6の凹面部6bを横切り終えるまで、この切断カッター15は、遮断プレート10の開口部10aから姿を現しながら移動される。つまり、切断カッター15は、この(b)位置から(c)位置を経て(d)位置にほぼ達するまで、原型パッド20を切断し続けるのである。
【0041】
それから、切断カッター15が(d)位置を過ぎて(e)位置に到達するまで、この切断カッター15は、その長手方向両端部(図5の上下両側)を除く全ての部分が遮断プレート10によって覆われる。このため、切断カッター15が雌型6の凹面部6bを横切りきった後、切断カッター15が原型パッド20に接触することが確実に防止される。そして、切断カッター15が(e)位置に到達すると、カッターヘッド12の矢印Y方向へ向けた順方向送り動作、即ち、切断装置4による原型パッド20の切断動作が終了する。
【0042】
このようにして、遮断プレート10と雌型6との間にあるカッタースリット16に切断カッター15を挿入したまま、この切断カッター15を矢印X方向へ送りつつ、カッターヘッド12を矢印Y方向へ送り移動させることによって、プレス装置3により圧縮変形される原型パッド20は、雌型6の凹面部6bに収まる部分と、その凹面部6bからはみ出る部分とに二分割切断されるのである(図8(b)参照)。
【0043】
次に、図6、図7、図8、図9を参照して、上記のように構成されたパッド成形機1を用いた製品パッド50の成形方法について説明する。
【0044】
ここで、図6は、一対の雄型5及び雌型6間に原型パッド20をセットする前状態を示した縦断面図であり、図7は、一対の雄型5及び雌型6間に原型パッド20を狭持して圧縮変形させた状態を示した縦断面図であって、切断カッター15が図5の(a)位置にある場合を図示したものである。図8は、一対の雄型5及び雌型6間で原型パッド20が圧縮変形されている状態を示した縦断面図であって、図8(a)は、切断カッター15が図5の(b)位置にある場合を図示したものであり、図8(b)は、切断カッター15が図5の(c)位置にある場合を図示したものであり、各図中に示す矢印Yは、カッターヘッド12の順送り方向を示している。図9(a)は、パッド成形機1を用いた成形方法により製造された製品パッド50の断面図であり、図9(b)は、図9(a)に示す製品パッド50の平面図である。
【0045】
このパッド成形機1を用いた製品パッド50の成形方法によれば、まず、一対の雄型5及び雌型6の間に原型パッド20がセットされる。このとき、図6に示すように、略円錐カップ状の原型パッド20の頂部が雌型6の凹面部6bに向けられる。
【0046】
すると、原型パッド20の頂部が遮断プレート10の開口部10aを通り抜けて雌型6の凹面部6b内に納められる。そして、この状態で、プレス装置3のシリンダ駆動装置8が稼働されると、各エアシリンダ7のロッド7aが突出されて、雄型5が雌型6へ向けて押動される。
【0047】
すると、図7に示すように、雄型5の凸面部5aが原型パッド20の頂部及びその周辺部分を雌型6の凹面部6bへ向けて押圧し、この原型パッド20が雌型6と雄型5との間で挟持されて圧縮変形される。
【0048】
このとき、原型パッド20の部分のうち雌型6の凹面部6bに対向する部分は、遮断プレート10の開口部10aを通り抜けて、凸面部5aと凹面部6bとに適合した形状に圧縮変形される。これに対し、原型パッド20の部分のうち雌型6の平坦面部6aに対向する部分は、雌型6の凹面部6bに収まりきらずに凹面部6bの外にはみ出て、雌型6上に重畳される遮断プレート10の上に覆い被さるように載り上がる。
【0049】
すると、遮断プレート10の開口部10aの周縁部分は、雄型5によって押圧される原型パッド20によって雌型6の平坦面部6aに押圧(付勢)する格好となるので、切断カッター15が開口部10aを横切る場合に、かかる切断カッター15が上下に振れてガタつくことを防止することができる。
【0050】
この結果、原型パッド20の部分のうち雌型6の凹面部6bからはみ出た部分と雌型6の平坦面部6aとの間には遮断プレート10が介在する格好となるため、凹面部6bからはみ出た原型パッド20部分は、雌型6の平坦面部6aから遮断され、この遮断によって原型パッド20と雌型6の平坦面部6aとの接触が防止される。そして、プレス装置3による原型パッド20の圧縮変形を維持したまま、切断装置4による原型パッド20の切断が行われる。
【0051】
この原型パッド20の切断では、切断カッター15がカッター送り装置(図示せず)によって矢印X方向(図1、図3及び図5参照)へ送り移動されながら、カッターヘッド12がヘッド駆動装置13によって矢印Y方向(図3、図4及び図5参照)へ送り移動される。すると、図7に示す位置にある切断カッター15が、雌型6の平坦面部6a及び遮断プレート10の間で摺接されながら、雌型6の平坦面部6aに沿ってカッタースリット16内を矢印Y方向へ移動される。
【0052】
この後、カッターヘッド12の送り移動が継続され続けると、図8(a)に示すように、切断カッター15の刃先が、雌型6の凹面部6bと遮断プレート10の開口部10aとの間から、雌型6の凹面部6b内へ突出されて、このとき初めて原型パッド20に接触させられる。
【0053】
そして、カッターヘッド12の送り移動が更に継続されると、図8(b)に示すように、原型パッド20は、雌型6の平坦面部6aと面一となる切断面で上下に二分割される。この後、切断カッター15が雌型6の凹面部6bを横切り終えて雌型6の右端部に到達すると、ヘッド駆動装置13によるカッターヘッド12の移動が停止される。
【0054】
この後、シリンダ駆動装置8によって、各エアシリンダ7,7のロッド7a,7aがケーシング7b,7bに没入されると、雄型5が雌型6から離されて、一対の雄型5及び雌型6による原型パッド20の圧縮状態が解除される。すると、雌型6の凹面部6b内に収まっていた部分、即ち、原型パッド20の頂部及びその周辺部に相当する部分が、図9(a)に示すように、弾性復元して所定の略ドーム状の製品パッド50となる。
【0055】
図9(a)に示すように、この製品パッド50は、その外周面が原型パッド20の頂部及びその周辺部と同じ略ドーム状の膨らみを残したまま、その周縁と内側面とが圧縮変形されながらカッターにより切断されたことで凹面部6b内の凹凸が逆転した形状と略同一形状に成形される。
【0056】
しかも、遮断プレート10が原型パッド20と雌型6の平坦面部6aとの間に介在することによって、切断カッター15は、雌型6の凹面部6bを横切り始めるときに、初めて原型パッド20と接触して原型パッド20を切断し始める。このため、切断カッター15が雌型6の凹面部6bに達するまでの過程で、切断カッター15の動きが雌型6の平坦面部6aにはみ出た原型パッド20の部分に邪魔されることもなく、切断カッター15の切断時の軌道が振れ動くこともなくなる。
【0057】
したがって、切断カッター15による切り口がガタつくこともなくなるので、原型パッド20から、凹面部6b内に収まる部分が凹面部6bの輪郭通りに綺麗に切り取られ、結果、図9(b)に示すように、周縁部にバリが残存することのない高品質の製品パッド50を製造することができる。
【0058】
以上、実施例に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の一実施例であるパッド成形機の側面図である。
【図2】(a)は、雄型、雌型及び遮断プレートの分解斜視図であり、(b)は、雄型及び雌型を並べて図示した平面図である。
【図3】図1のII−II線で縦断面視した雌型及びカッターヘッドの正面図である。
【図4】図3のIV−IV線における横断面図である。
【図5】カッターヘッドの移動に伴う切断カッターの移動状態を図示したものであり、雌型、遮断プレート及び切断カッターを図示した平面図である。
【図6】一対の雄型及び雌型間に原型パッドをセットする前状態を示した縦断面図である。
【図7】一対の雄型及び雌型間に原型パッドを狭持して圧縮変形させた状態を示した縦断面図であって、切断カッターが図5の(a)位置にある場合を図示したものである。
【図8】一対の雄型及び雌型間で原型パッドが圧縮変形されている状態を示した縦断面図であって、(a)は、切断カッターが図5の(b)位置にある場合を図示したものであり、(b)は、切断カッターが図5の(c)位置にある場合を図示したものである。
【図9】(a)は、パッド成形機を用いた成形方法により製造された製品パッドの断面図であり、(b)は、(a)に示す製品パッドの平面図である。
【図10】従来の発泡樹脂製パッドの製造方法を説明する図であって、原型パッドを圧縮変形して切断する状態を図示した断面図である。
【図11】(a)は、図10に示す製造方法によって製造された製品パッドの断面図であり、(b)は、(a)に示す製品パッドの平面図である。
【符号の説明】
【0060】
1 パッド成形機(発泡樹脂製パッド成形装置)
3 プレス装置(プレス手段)
4 切断装置(切断手段)
5 雄型
5a 凸面部
6 雌型
6a 平坦面部(平坦部)
6b 凹面部
10 遮断プレート(遮断部材)
10a 開口部
15 切断カッター(カッター)
20 原型パッド
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平坦面部の一部に凹面部が凹設される雌型と、その凹面部に対向する凸面部が凸設される雄型とを有し、その雄型及び雌型間に発泡樹脂製の原型パッドを挟持して圧縮変形させるプレス手段と、
そのプレス手段によって原型パッドが前記雌型及び雄型間で圧縮変形される場合に、その雌型の凹面部からはみ出る原型パッドの部分とその雌型の平坦面部との間に介在される薄板状に形成され、かつ、その雌型の凹面部との対向部分にその凹面部の外周形状に略倣った形状の開口部が貫通形成される遮断部材と、
その遮断部材と前記雌型との間に挿入されるカッターを有し、そのカッターを前記遮断部材と前記雌型との間で前記凹面部を横切るように移動させることによって、前記プレス手段により圧縮変形される原型パッドを、前記雌型の凹面部に収まる部分と、その凹面部からはみ出る部分とに切断して二分割する切断手段とを備えていることを特徴とする発泡樹脂製パッド成形装置。
【請求項1】
平坦面部の一部に凹面部が凹設される雌型と、その凹面部に対向する凸面部が凸設される雄型とを有し、その雄型及び雌型間に発泡樹脂製の原型パッドを挟持して圧縮変形させるプレス手段と、
そのプレス手段によって原型パッドが前記雌型及び雄型間で圧縮変形される場合に、その雌型の凹面部からはみ出る原型パッドの部分とその雌型の平坦面部との間に介在される薄板状に形成され、かつ、その雌型の凹面部との対向部分にその凹面部の外周形状に略倣った形状の開口部が貫通形成される遮断部材と、
その遮断部材と前記雌型との間に挿入されるカッターを有し、そのカッターを前記遮断部材と前記雌型との間で前記凹面部を横切るように移動させることによって、前記プレス手段により圧縮変形される原型パッドを、前記雌型の凹面部に収まる部分と、その凹面部からはみ出る部分とに切断して二分割する切断手段とを備えていることを特徴とする発泡樹脂製パッド成形装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−83093(P2010−83093A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−257120(P2008−257120)
【出願日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【出願人】(598034498)北陸化成株式会社 (3)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【出願人】(598034498)北陸化成株式会社 (3)
【Fターム(参考)】
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