説明

発熱体及び発熱体を備えた暖房装置

【課題】自動車の電気補助暖房機において空気を暖めるための発熱体、少なくとも1つのPTC加熱素子と、前記PTC加熱素子を囲み込む絶縁性の筐体、及び内側の表面がPTC加熱素子の対向面に接触する導電体を具備する発熱体の電気的フラッシュオーバーに対する安全性および熱出力を高める。
【解決手段】導電体10の外側の各表面が少なくとも2つの相互結合されたプラスチック・シートを有する絶縁層7によって被覆されるべきであること、及び絶縁層7が筐体2、3に固定的に連結する。さらに、少なくとも2つの相互結合されたプラスチック・シートを有する絶縁層を間に介して、発熱体の対向面に接触する放熱体を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つのPTC発熱素子と上記PTC発熱素子の対向側面に接触する導電体を備えた、空気を暖めるための発熱体及び暖房装置に関係する。このような発熱体は、例えば、本願出願者が所有する特許文献1により知られている。
【背景技術】
【0002】
当該発熱体は、特に自動車の補助暖房機に使用され、列状に連続して配列された複数のPTC発熱素子を備え、互い平行に延設し、上記PTC発熱素子の対向側面に面接触する導電体により上記PTC発熱素子は電流を供給される。導電体は、通常、平行な金属薄板片によって形成される。このように構成された当該発熱体は、例えば、自動車内の空気を暖めるために使用され、対向側面が放熱体に接触する数層の発熱体を具備する暖房装置に使用される。固定器具を使用して、これらの放熱体は、発熱体と比較的よい伝熱接触状態になるように発熱体に装着される。
【0003】
上記の先行技術では、暖房装置の固定器具は、その中に発熱体と放熱体の複数の平行の層がバネの予張力を受けて保持されるフレームによって形成される。当該タイプの暖房装置を開示する、例えば、特許文献2に記載される代替的な実施形態によれば、発熱体は1つの平面に列状に配列された複数のPTC発熱素子によって形成される。これらのPTC発熱素子は、セラミック発熱体または低温導体とも呼ばれ、対向側面に接触する導電体を通じて対向側面で発熱体への電流が供給される。これらの導電体の1つは、外周が密閉された断面によって形成される。その他の導電体は、間に入れた電気的絶縁層を介して前記外周が密閉された金属断面に着設する金属薄板片によって形成される。放熱体は、複数の平行した層に配列されて、外周が密閉された金属断面に対して直角に広がる層板によって形成される。特許文献2により知られる、当該タイプの暖房装置の場合、上述した構造設計を有する複数の外周が密閉された金属断面が備えられ、前記外周が密閉された金属断面は互いに平行に配列される。上記層板の一部分は、外周が密閉された各断面の間に広がり、またその一部分は上記各断面の向こう側へ突き出る。
【0004】
上記発熱体は、導電体とPTC発熱素子とのよい電気的接触を必要とする。そうでなければ、特に、発熱体が自動車用の補助暖房機に使用される場合には、高電流による局所過熱を生じさせるおそれがある、伝導抵抗の増加という問題がある。この熱的事象は、発熱体の損傷を引き起こす可能性がある。さらに、PTC発熱素子は、温度の上昇に対応して放出する熱を少なくする自己調節型抵抗加熱器であるので、局所過熱がPTC発熱素子の自己調節特性の機能不全を引き起こす可能性がある。
【0005】
さらに、補助暖房機の周辺域の温度が高くなると、車室内の人の健康に直接的に有害であり得る煙または気体の発生を引き起こす可能性がある。
【0006】
当該タイプの発熱体を、例えば、500ボルトに達する高い動作電圧で使用することも問題である。この点で生じる一つの問題は、放熱体へ流れる空気が、暖房装置へ入ると電気的フラッシュオーバー、すなわち、短絡を引き起こす恐れがある水分及び/またはほこり運ぶことである。別の基本的な問題は、暖房装置の周辺域で作業する人が、暖房装置及び発熱体のそれぞれの通電部分に対して保護されなければならないことである。
【0007】
特許文献3は、PTC加熱素子を備えた浸漬ヒーターを開示しており、上記PTC加熱素子は導電体間に配列され、浸漬ヒーターの金属筐体に対して前記導電体を絶縁するために絶縁層によって覆われる。この先行技術の場合には、筐体はPTC加熱素子を密封して囲み込む。絶縁の目的のために、絶縁性のセラミック材料で作られた板が筐体と各発熱体の間に備えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】欧州特許第1061776号明細書
【特許文献2】欧州特許第1467599号明細書
【特許文献3】国際公開第99/18756号パンフレット
【特許文献4】欧州特許第0350528号明細書
【特許文献5】欧州特許第1515588号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、より高い安全性を与える、暖房装置の発熱体並びに対応する暖房装置を提供することである。本発明は、起こり得る電気的フラッシュオーバーに対する安全性を高めることを特に目的とする。
【0010】
具体的には、本発明はまた、少なくとも1つのPTC発熱素子、上記PTC発熱素子の対向外側面に接触する導電体、及び平行した層に配列され、上記発熱体の対向面に接触するように支持された複数の放熱体を具備し、高電流で安全に効果的に動作可能である複数の発熱体を有する暖房装置を提供することを目的にする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
発熱体に関する問題を解決するために、本発明は、導電体の各外側表面が少なくとも2つの相互結合されたプラスチック・シートからなる絶縁層によって被覆され、上記絶縁層は筐体に固定的に連結されるように、発熱体を実現することによってさらに改良されるべきであることを提案する。
【0012】
多層シートを導電体上に直接設けるときには(望ましい場合、前記多層シートと導電体の間に中間セラミック層を入れる)、例えば、4kV以上の非常によい絶縁耐力が達成可能であることがわかった。この多層シートは、好ましくは、ラミネート加工によってセラミック層または導電体に直接接着される。相互結合されたシートはクラックの形成がなく、破損せずに、単層シートよりもより効果的に機械的応力に耐えることができるため、多層シートの使用は、単層シートの厚さと基本的に同じ厚さであることを基準にして、よりよい機械的保護を可能にする。したがって、機械的強度を従来と同等に保ちつつ、またはそれよりさらに向上させ、熱伝導を改良するために絶縁層の層の厚さを減少させることが可能になる。例えば、1層の層板である放熱体がシートに直接接触するように、絶縁層は、発熱体の外側の面に好ましくは設けられる、多層シートだけによって形成され得る。代替的に、シートと導電体は、それらの間に絶縁層の一部として設けられた1つまたは複数のセラミック層を有することもできる。
【0013】
発熱体から放熱体への熱伝導がわずかしか損なわれないように、絶縁層は、好ましくは、導電体に直接接触するべきである。絶縁層は、最良の可能な熱伝導率を有するべきである。目標の熱伝導率は、4W/(mk)よりも高い。6kV/mmを上回る電気的絶縁性をもつ絶縁層が、短絡に対する最良の可能な保護という点で有効であることがわかった。絶縁層の絶縁耐力は、好ましくは層構造の横方向に、少なくとも2000V、好ましくは、少なくとも3000Vであるべきである。
【0014】
本発明による発熱体の場合には、絶縁層は、絶縁性筐体である筐体に固定的に連結される。絶縁層は、各導電体の外側表面に接触して前記各導電体を覆う。各導電体は、次に、絶縁性筐体によって囲まれる少なくとも1つのPTC発熱素子をそれらの間に収容する。したがって、発熱体の上面と下面は絶縁層によって覆われ、上面と下面の間にわたる発熱体の側面は絶縁性筐体によって囲まれる構造設計が得られる。その結果、少なくとも1つのPTC発熱素子が筐体と筐体に固定的に連結される絶縁層によって収容され、封入され、周囲から密封されるようになる。筐体は、それ自体として、個々のPTC加熱素子または複数のPTC加熱素子を収容するための複数の収容空間を形成できる。さらに、筐体によって形成され、複数のPTC加熱素子を収容するために使用される収容手段の壁は、個々のPTC加熱素子の間に間隔をとり、区分化するように形成され得る。例えば、複数のPTC加熱素子が列状に連続して配列され得るように、筐体の細長い収容手段を実現することができ、個々のPTC発熱素子用の収容空間は内側へ突き出るウェブによって分離される。
【0015】
望ましい場合、絶縁層を導電体に直接接着できる。導電体と絶縁層間の熱伝導性をよりよくするためには、設けられる接着層はできるだけ薄くすべきであり、20μm未満の厚さをもつようにすべきである。同じ理由で、プラスチック・シートが、セラミック板(この板が設けられる場合)の上に好ましくは積層される。上記シートは、その上に設けられた、好ましくはその一つの面の上に、10〜15μmの厚さをもつワックス層を有し、特に、発熱体の動作条件、すなわち、約80°Cの上昇した温度の下で絶縁層が導電体に押し付けられているとき、このワックス層が溶けて、効率的な熱の伝導を可能にする。この点において、出願者が所有する特許文献4によりすでに基本的に知られているように、発熱体と放熱体の平行の層からなる暖房装置がフレーム内に配置される場合、そしてこの層構造体がバネの予張力を受けて前記フレーム内に保持される場合、上記のことは有利になるであろう。代替的な実施形態は、例えば、特許文献5に記載されている。
【0016】
発熱体は、それ自体としては、連続して配列された複数のPTC発熱素子、前記PTC発熱素子の両側面を覆う導電体、各導電体の外側の面を覆う絶縁層によって形成され得る。この層構造のすべての構成要素は、相互結合することができ、特に、接着剤を用いて接合できる。導電絶縁層が、好ましくは、導電体よりも外側に延設するべきであり、そうすることにより、 発熱体の導電性の通電構成要素が、発熱体の絶縁された外周縁部よりも後ろに、前記周縁部との間にある間隔をとる関係に置かれるようにする。導電体は、電気的接点を形成するために、絶縁層を越えて突き出すことができる。
【0017】
PTC発熱素子を正確に位置付けるために、本発明は、別の好適な実施形態により、それ自体は周知である、位置固定用フレームを発熱体に設けるべきであることを提案する。前記位置固定用フレームは、少なくとも1つのPTC発熱素子をそこに収容するためのフレーム空間の範囲を定める。本発明の意味の範囲内では、上記フレームは絶縁性の筐体とみなすことができる。それ自体は周知である、この位置固定用フレームは、例えば、上記の特許文献4に記載されており、通常、非導電性の材料、特にプラスチック材料から製造される。位置固定用フレームは、通常、PTC発熱素子または発熱体の各要素の平面において1つ以上のPTC発熱素子用のフレーム空間の範囲を定める細長い構成要素として実現される。PTC発熱素子または複数の素子が、このフレーム空間内に位置付けられる。このような位置固定用フレームは、本質的に、絶縁性の筐体を形成でき、その上側面と下側面は絶縁層に固定的に連結され得る。これを実現するために、接着剤を用いてまたは溶接によって絶縁層を位置固定用フレームに連結できる。筐体に絶縁層を連結するために、絶縁性の筐体のプラスチック材料を成形することもできる。絶縁層と筐体材料との固定的な結合、好ましくは強固な連結を提供するために適当である結合であれば、どのような種類の結合でも本発明の実現に適する。
【0018】
接着接合されたプラスチック・シートをさらに改良するために、本発明は、好適なさらに別の実施形態により、これらのプラスチック・シートを互いに結合し、それらの間に編まれた繊維織物を挟み込むべきであることを提案する。例えば、編まれた繊維織物の両面にプラスチック・シートをラミネート加工により積層できる。編まれた繊維織物は、例えば、重ならない、またはほとんど重ならない状態で配列された互いに実質的に平行に延びる繊維ストランドからのみ構成できる。しかし、好ましく使用されるものは、介在する編まれた繊維織物を挟み込んだ少なくとも2つのプラスチック・シートの多軸応力に耐えるのにより適した編まれた繊維織物である。低導電率をもつ繊維の使用が推奨される。編まれた織物の繊維にかかる熱応力についても、好適なさらなる改良はガラス繊維織物を使用すべきあることを提案する。さらに、編まれた繊維織物が実質的に空気を含まずにプラスチック・シート間に挟まれるように、編まれた織物の繊維は、好ましくは、シリコーンに浸される。加えて、編まれた織物のすべての繊維ストランドが完全に濡れていれば、シートの対向する層間の強固な、つまりよい結合をもたらす。
【0019】
例えば、自動車の車室を暖めるための空気暖房装置に取り付けられる発熱体を、特に外部から絶縁するためには、少なくとも2つの多層プラスチック・シートを接着剤によって接合し、それらが導電体を直接的にまたは間接的に覆うように、発熱体の外側の面にこれらのプラスチック・シートを備えることが有利であることがわかった。多層シートの各々1つは、少なくとも2つの接着接合されたプラスチック・シートからなる。2つの多層の接着接合されたシートからなる絶縁層であり、前記多層シートの各々は、直接接合される、または編まれた繊維織物を介して接合される、2つの接着接合されたプラスチック・シートからなる、上記絶縁層は、絶縁層を介した外部への効率のよい熱伝導に関して、確実な十分な絶縁に関して、特に効果的な提案であることがわかった。
【0020】
特に目標とした高電圧印加に対して、少なくとも1.05kVの絶縁耐力をもつプラスチック・シートが、このようなシートの絶縁耐力試験において特に効果的であることがわかった。この絶縁耐力は、互いに相互結合されるシートの各々1つによって提供される。各個のプラスチック・シートの厚さは、0.05から0.09mmの間、好ましくは、0.06から0.08mmの間であるべきである。上記プラスチック・シートを形成するために適当な材料は、ポリイミド、ポリアミド、シリコーン、またはテフロン(PTFE)である。接着接合された層は、それらが同一の物質からなるように実現でき、または異なるプラスチック材料で作られてもよい。相互結合されたプラスチック・シートの良好な機械的強度に関しては、前記シートは、好ましくは、気泡が含まれないような方法で、例えば、ラミネート加工によって相互結合されるべきである。2つのプラスチック・シートを結合するために特に適当である接着剤は、シリコーン含有接着剤である。
【0021】
PTC加熱素子とそれに接触する導電体の周囲を絶縁するために、本発明のさらに別の実施形態は、インサート成形によって各絶縁層を筐体に連結すべきであることを提案する。この筐体は、互いに連結される2個の筐体シェルからなり得る。特に有利であることがわかった筐体シェルは、外部から発熱体に圧力がかかるときにそのシーリング効果が高まる、圧縮可能な部材を間に挟んで互いに当接する2個の筐体構成部材からなるシェルである。この構造設計は、少なくとも1つの発熱体とその外側の面に接触する放熱体が、バネの予張力を受けて互いに接触して支持、保持され、前記バネはフレームの内側の面に着設する、電気暖房装置のフレーム内に発熱体を取り付けるために特に作成された。
【0022】
筐体の強度を高めるために、本発明のさらに別の好適な実施形態は、導電体の少なくとも端部が包み込まれるように、インサート成形によって絶縁層を筐体に連結すべきであることを提案する。その結果、筐体を形成するプラスチック材料が、通常、金属薄板片からなる導電体の少なくとも端部を封入することになり、これにより、固定的に予め決められた外形を有する比較的堅い筐体が形成される。筐体は、好ましくは、熱可塑性エラストマーまたはシリコーンからなる。
【0023】
暖房装置に関する本発明の元になった類似の問題を解決するために、放熱体は、少なくとも2つの相互接続されたプラスチック・シートからなる絶縁層を間に介して、発熱体の対向面に接触すべきであるという点において、上記暖房装置はさらに改良されるべきであることが提案される。したがって、2つのプラスチック・シートは、発熱体の外側の面に接触し、例えば、蛇行するアルミニウム・ストリップまたは銅ストリップからなる放熱体にとっての接触面を形成する。
【0024】
本発明の 暖房装置は、好ましくは、上記に述べたとおりの発熱体を含む。具体的には、この暖房装置に含まれる1つ以上の発熱体は、上述した好適な実施形態のいずれかを具現化できる。発熱体を対象にした従属請求項のいずれかに含まれた特徴は、暖房装置を対象にした請求項の主題を詳しく説明するために同様に適用される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】発熱体に当接する電気補助暖房機の放熱体を有する発熱体の第1の実施形態の断面図を示す。
【図2】発熱体の第2の実施形態を示す。
【図3】絶縁シートの個々の層の側面斜視図により図1及び図2による実施形態に使用される絶縁シートを示す。
【図4】暖房装置の実施形態の側面斜視図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明のさらなる詳細は、図面と合わせて説明する発明の実施形態の以下の説明から理解できるであろう。
【0027】
図1は、それぞれプラスチック射出成形部品として製造された2個の細長いU字形の筐体構成部材2、3を備える発熱体1の第1の実施形態の断面図を示す。筐体シェル構成部材2、3は、金属薄板片10と絶縁層7がそこに当接する、各々対向する横側面を有する。各々の金属薄板片10の端部は、筐体構成部材2、3を本質的に形成するプラスチック材料によって包み込まれる。2個の金属薄板片10は、インサート成形によって筐体構成部材2、3の各プラスチック材料に連結される。各筐体構成部材2、3の外端面は、金属薄板片10の長手方向の縁辺が覆われるように、そこに被着された絶縁シート9を有する。発熱体1の外端面に設けられる絶縁層7は、後述する前記絶縁シート9によって、ここでは完全に形成される。
【0028】
平行に延設するU字形筐体構成部材2、3をなす棒状物の対向する各端面は、2個の筐体構成部材2、3によって形成され、PTC加熱素子5を収容する内部空間の外側周囲を密封するシーリング・ストリップ4をそれらの間に挟み込む。シーリング・ストリップによってもたらされるシーリング効果は、外側から筐体2、3に作用する圧力が増加するにつれて増加する。
【0029】
シーリング・ストリップ4の厚さは、少なくとも1つのPTC発熱素子5の厚さの考えられる製造公差が、2個の筐体構成部材が互いに接触することなく、シーリング・ストリップ4の圧縮によって補正可能であるように選択される。この文脈において、PTC加熱素子には、製造プロセスに起因するある程度の寸法ばらつきが生じるという事実を参考するべきである。シーリング・ストリップ4の弾性特性と寸法が適切に選択されるならば、考えられる厚さばらつきがある場合でも、PTC加熱素子を収容する内部空間はその周囲を常に密封されるように、上記のような厚さ公差をシーリング・ストリップの圧縮によって補正できる。
【0030】
圧縮可能なプラスチック材料からなり、2個の筐体構成部材2、3の対向する端面に着設するシーリング・ストリップの圧縮により、下側と上側の金属薄板片10に平行に広がる平面を横切る方向に、2個の筐体構成部材2、3はある程度動くことが結果的に可能となる。圧縮可能なプラスチック材料によってもたらされるシーリング効果は、外側から発熱体1にかかる圧力が増加するにつれて増加する。
【0031】
通常そうであるように、導電体の前端は、筐体構成部材2、3を越えて延設可能であり、そこからさらに、必要ならば、発熱体を包み込み、層構造において予張力の下で発熱体を保持するフレームの外側面を越えて突き出すようにし、導電体はこの位置でフレームの電気的接続を形成する。
【0032】
図2は、第2の実施形態の断面図を示す。図1に示した実施形態の構成要素に相当する構成要素は、図1におけるのと同じ参照番号により指示される。
【0033】
図2は、筐体シェル構成部材2とシェル相手構成部材3からなる筐体を備える発熱体1であり、前記構成部材は貝殻のような構造設計を有する、発熱体1の代替的な実施形態の断面図を示す。両方の筐体構成部材2,3は、絶縁シート9と、前記絶縁シート9の内側面に設けられ、絶縁シートに直接接触し、かつPTC加熱素子5に接触する金属薄板片10をインサート成形によってそこに固定されたプラスチック射出成形部品として製造される。金属薄板片10の外側の面は、絶縁層の一部としてそこに被着された多層シート9を有する。この絶縁シート9は、ラミネート加工によって金属薄板片10に直接被着される。その結果できた板状の構成部材は、インサート成形によって、 筐体構成部材を形成するプラスチック材料に連結される。前記プラスチック材料は、好ましくはシリコーンである。PTC加熱素子によって発生した熱が、ほとんど妨げられることなく伝導によって放熱体11へ到達できるように、発熱体1はこの方向では比較的薄い。図示した実施形態では、放熱体11は、2個の筐体構成部材2、3のプラスチック材料によって横から保持され、そのようにして所定の位置に固定される。筐体構成部材のインサート成形によって製造された端部は、絶縁シート9よりも外端側へ特に突き出ていて、これにより、前記絶縁シート9に直接接触する放熱体11が、図2に示した層構造に対して横切る方向に動かされることが抑止される。
【0034】
図1に示した実施形態と同様に、図2に示した実施形態も製造工程を簡易化するために全く同じ形状の筐体構成部材2、3を有する。各々の筐体構成部材2、3の端面の一方には溝20が設けられ、他方には、バネ21が相手側の端面を越えて突き出る。筐体構成部材2、3の一方のバネ21は、筐体構成部材2、3の内部がシールされるように他方の筐体構成部材3、2の補完的な溝20に嵌まる。ここで、溝20の幅はバネ21の厚さをほんのわずかだけ上回るべきであることに注意を払うべきである。溝20の深さとバネ21の長さは、PTC加熱素子5が筐体に収容されるとき、これら加熱素子5が金属薄板片に面接触するように選択され、設定された収縮及び/または圧縮時、または特にPTC発熱素子の側に製造公差が発生しているとき、筐体構成部材2、3が、少なくともわずかな範囲で相手側へ移動可能なように選択され、さらに、おそらく発生すると思われる製造公差と熱膨張が、筐体を密封するために十分に重なり合う状態で溝20とバネ21が互いに嵌合することを妨げないように選択される。
【0035】
図3は、前述の発熱体の外側の表面に設けられる絶縁シート9の各層の側面斜視図を示し、前記層は拡大図で示される。絶縁シート9は、6つの層からなり、0.07mmの厚さをもち、シリコーンからなる同一の構造設計の2層プラスチック・シート30、32、34、36を各2個ずつ有する。プラスチック・シート30〜36の各々は、1.05kVを超える絶縁耐力をもつ。外側のプラスチック・シート30は隣接するプラスチック・シート32に、これら2つのプラスチック・シートの間にガラス繊維織物38を入れて接着される。ガラス繊維織物38は、互いに実質的に直交して延びる織り合わされたガラス繊維ストランドからなる。ガラス繊維ストランドは、シリコーンに浸される。プラスチック・シート30と32の間の全空隙は、シリコーンで埋められる。2つのシート30、32とそれらの間に挟まれたガラス繊維織物38は、2層ガラス繊維強化シート40を形成する。前記シート40の下に置かれた2層ガラス繊維強化シート42は、同じ構造設計を有する。2層ガラス繊維強化シート40、42の各々は接着層に結合され、これにより、2つのガラス繊維織物38と4つプラスチック・シート30、32、34及び36からなる6層絶縁シート9 が得られる。多層シート40、42の間に設けられる接着層は、シリコーン接着剤からなる。
【0036】
絶縁層は、図3に示した実施形態に限定されない。例えば、さらに追加のプラスチック・シートをガラス繊維織物38に付加して設けてもよい。少なくとも2個のシートが相互結合されるべきであり、前記シートは2.0kV以上の絶縁耐力をもつ合成シートを形成する。好ましくは、これらの合成シートの3個が絶縁層として使用される。このようにして、6層絶縁層が得られ、その場合、各個の絶縁プラスチック・シートは少なくとも1.0kVの絶縁耐力もつ。達成すべき目標は、自動車産業用の補助暖房機に使用される発熱体であり、前記補助暖房機の発熱体は300ボルトの絶縁耐力によって保護されるものである。通常、放熱体と接触する発熱体の上側表面と下側表面では、この保護は絶縁層9だけによって提供される。発熱体1の端面、すなわち、通常、上側表面と下側表面と直角に広がる側面では、同様の保護は、筐体2、3のプラスチック材料によって提供される。発熱体が500ボルトまで達する動作電圧で使用されるときに、最良の可能な絶縁耐力を得るためには、各絶縁層をインサート成形によって筐体構成部材2、3の中に組み込むべきである、すなわち密封状態に組み込むべきである。
【0037】
図4は、本発明による暖房装置の実施形態を示す。この暖房装置は、2個のフレーム・シェル54によって形成された外周が密閉されたフレーム52の形の固定器具を備える。フレーム52内には、全く同じに設計された発熱体(例えば、図1または図2による)の複数の層が収容され、前記層は平行に延設する。フレーム52は、前記フレーム52中で層構造を予張力の下で保持するバネ(図示せず)をさらに含む。好ましくは、すべての放熱体56は、各発熱体60に直接隣接して配列される。図4に示した放熱体56は、蛇行するアルミニウム金属薄板片によって形成される。すなわち、これらの構造設計は図1及び図2による放熱体の構造設計と同じである。発熱体は、これらの個々の放熱体56の間に、フレーム52の空気入口及び出口用開口上のグリルの長手方向のバー58の後ろに置かれる。フレーム52の中央部分で、これらの長手方向のバー58のうちの一つが、そこでは発熱体60が見えるように、説明の目的のために取り外されている。
【0038】
放熱体56は中間絶縁層7を介して通電構成部品に当接することを考慮して、放熱体56、すなわち、放熱体は無電位である。フレーム52は、好ましくは、電気絶縁性をさらに向上させることができるようなプラスチック材料で作られる。暖房装置の通電構成部品に触らないような追加の保護が、これもプラスチック材料で作られ、フレーム・シェル54と一体成形されるグリルによって与えられる。
【0039】
フレーム52の一方の端面には、それ自体は周知である方法によりプラグ接続が備えられ、そこから電源及び/または制御ラインが延びる。これらのラインは、車両内に備えられた暖房装置と前記車両との間の制御接続及び電源接続を確立するために使用され得る。フレーム52の端面には、プラグ接続に加えて制御素子を包含することもできる筐体が示される。
【符号の説明】
【0040】
1 発熱体
2 筐体シェル構成部材
3 シェル相手構成部材
4 シーリング・ストリップ
5 PTC加熱体
7 絶縁層
9 絶縁シート
10 金属薄板片
11 放熱体
20 溝
21 バネ
30 プラスチック・シート
32 プラスチック・シート
34 プラスチック・シート
36 プラスチック・シート
38 ガラス繊維織物
40 外側の面の多層シート
42 内側の面の多層シート
52 フレーム
54 フレーム・シェル
56 放熱体
58 長手方向のバー
60 発熱体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
特に自動車の電気補助暖房機において空気を暖めるための発熱体(1)であり、少なくとも1つのPTC加熱素子(5)と、前記PTC加熱素子(5)を囲み込む絶縁性の筐体(2、3)と、内側の表面が前記PTC加熱素子(5)の対向面に接触する導電体(10)とを具備し、
前記導電体(10)の外側の各表面が、少なくとも2つの相互結合されたプラスチック・シート(30、32、34、36)を有する絶縁層(7)によって被覆され、前記絶縁層(7)が前記筐体(2、3)に固定的に連結されることを特徴とする発熱体。
【請求項2】
前記プラスチック・シート(30、32、34、36)は互いに結合され、編まれた繊維織物(38)をシートの間に挟むことを特徴とする、請求項1に記載の発熱体。
【請求項3】
前記プラスチック・シート(30、32、34、36)は互いに結合され、ガラス繊維織物(38)をシートの間に含むことを特徴とする、請求項2に記載の発熱体。
【請求項4】
前記プラスチック・シート(30、32、34、36)は互いに結合され、シリコーンに浸したガラス繊維織物(38)をシートの間に含むことを特徴とする、請求項3に記載の発熱体。
【請求項5】
前記絶縁層(7)は、相互結合されたプラスチック・シート(30、32、34、36)を有し、接着接合される少なくとも2つのシート(40)を有することを特徴とする、請求項2から請求項4のいずれかに記載の発熱体。
【請求項6】
前記相互結合されたプラスチック・シート(30、32、34、36)は、少なくとも2.00kVの絶縁耐力を与えることを特徴とする、請求項1から請求項5のいずれかに記載の発熱体。
【請求項7】
前記少なくとも2つの相互結合されたプラスチック・シート(30、32、34、36)は前記導電体(10)に間接的に接触し、前記少なくとも2つの相互結合されたプラスチック・シート(30、32、34、36)は前記発熱体(11)の外側の面に設けられることを特徴とする、請求項1から請求項6のいずれかに記載の発熱体。
【請求項8】
前記絶縁層(7)は、前記PTC加熱素子(5)を囲み込む絶縁性の筐体(2、3)に、インサート成形によって連結されることを特徴とする、請求項1から請求項7のいずれかに記載の発熱体。
【請求項9】
前記絶縁層(7)は、前記導電体(10)の両端面が封入されるように、前記筐体(2、3)に連結されることを特徴とする、請求項8に記載の発熱体。
【請求項10】
前記筐体(2、3)はシリコーンで作られることを特徴とする、請求項8または請求項9に記載の発熱体。
【請求項11】
前記プラスチック・シート(30、32、34、36)の材料は、ポリイミド、ポリアミド、シリコーンからなるグループから選択されることを特徴とする、請求項1から請求項10のいずれかに記載の発熱体。
【請求項12】
前記プラスチック・シート(30、32、34、36)は、0.05mmから0.09mmまでの、好ましくは、0.06mmから0.08mmまでの厚さをもつことを特徴とする、請求項1から請求項11のいずれかに記載の発熱体。
【請求項13】
前記相互結合されたプラスチック・シート(30、32、34、36)は、シリコーン含有接着剤によって相互結合されることを特徴とする、請求項1から請求項12のいずれかに記載の発熱体。
【請求項14】
少なくとも1つのPTC発熱素子(5)と、前記PTC発熱素子(5)の対向側面に接触する導電体(10)と、平行した層に配列され、発熱体(60)の対向面に接触するように支持された放熱体(56)とを具備する複数の発熱体(60)を有する暖房装置であり、
前記放熱体(56)は、少なくとも2つの相互結合されたプラスチック・シート(30、32、34、36)を有する絶縁層(7)を間に介して、前記発熱体(60)の対向面に接触することを特徴とする暖房装置。
【請求項15】
請求項1から請求項13のいずれかに記載の少なくとも1つの発熱体によって特徴付けられる、空気を暖めるための暖房装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−259823(P2009−259823A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−96224(P2009−96224)
【出願日】平成21年4月10日(2009.4.10)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(501324823)エーベルスパッヒャー・カテム・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング・ウント・コンパニー・コマンディットゲゼルシャフト (23)
【Fターム(参考)】