説明

発熱体設置用冶具

【課題】 線状の発熱体を蛇行状に設置する際に発熱体の直線部同士の間隔を容易に維持することができ、しかも、必要に応じて直線部同士の間隔を広狭させることのできる、設置作業負担が少なくしかも汎用性の高い発熱体設置用冶具を提供する。
【解決手段】 線状の発熱体3を直線部3aと折り返し湾曲部3bとが交互に形成された蛇行状に設置するための発熱体設置用冶具であって、発熱体3の取り付け箇所に設置される取り付けベース2としての複数の棒状体4と、該棒状体4上に載置されて発熱体3の各直線部3aをそれぞれ保持する複数の保持具1とを備え、棒状体4には一定間隔毎に係止孔21が形成され、保持具1には係止孔21に凹凸係合する係止突起22が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、寒冷地等における屋外駐車場や住宅建物の玄関周りあるいは道路などのコンクリート舗装面やアスファルト舗装面等の地面を加温して融雪や凍結防止を行う線状の発熱体を、その設置箇所に設置するための発熱体設置用冶具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、線状の発熱体を使用して地面を加温する場合、その発熱体を一定長さ毎に折り返して蛇行状に設置するものがある。このように発熱体を蛇行状に配置する場合には発熱体の直線部同士の間隔によって発熱量が変化することとなるため、発熱体の直線部同士の間隔が一定となるようにしながら発熱体を蛇行状に設置しなければならないが、直線部同士の間隔を一定にしながら蛇行状に配置していくことは困難であり施工作業者の負担が大きいものであった。
【0003】
これに対し、施工時に発熱体の直線部同士の間隔が一定になるようにするための発熱体設置用冶具が提案されている(下記特許文献1参照)。該発熱体設置用冶具は発熱体の直線部が入る溝がその上面に一定間隔毎に形成されたものである。そして、発熱体を設置するに際し、まずはその設置箇所に発熱体設置用冶具を設置し、そのうえで発熱体設置用冶具の各溝に発熱体の直線部を入れるようにしながら発熱体を蛇行状に設置していくことで発熱体の直線部同士の間隔は一定に保持される。
【特許文献1】特開平6−220808号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、降雪量や気温等の気候条件が設置箇所によって異なるため、設置箇所に応じて直線部同士の間隔を設定することが必要となるが、上記従来の発熱体設置用冶具にあっては溝同士の間隔が一定であるため直線部同士の間隔を設置箇所に応じて変化させることができない。従って、溝の間隔の異なる発熱体設置用冶具を多種用意して設置箇所に応じて使い分ける必要があり汎用性に乏しいという問題があった。
【0005】
それゆえに本発明は、上記従来の問題に鑑みてなされ、線状の発熱体を蛇行状に設置する際に発熱体の直線部同士の間隔を容易に維持することができ、しかも、必要に応じて直線部同士の間隔を広狭させることのできる、設置作業負担が少なくしかも汎用性の高い発熱体設置用冶具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決すべくなされたものであり、本発明に係る発熱体設置用冶具は、線状の発熱体を直線部と折り返し湾曲部とが交互に形成された蛇行状に設置するための発熱体設置用冶具であって、発熱体の設置箇所に設置される取り付けベースと、該取り付けベース上に載置されて発熱体の各直線部をそれぞれ保持する複数の保持具とを備え、取り付けベースは、保持具同士の間隔を維持するための位置決め手段を有し、該位置決め手段は、間隔の異なる複数の位置に保持具を位置決め可能に構成されていることを特徴とする。
【0007】
該構成の発熱体設置用冶具を用いて線状の発熱体を設置するには、例えば、設置箇所に取り付けベースを設置したうえでその取り付けベース上に複数の保持具を載置したり、取り付けベース上に複数の保持具を載置したものを設置箇所に設置したりする。保持具を取り付けベース上に載置する際には、取り付けベースに保持具同士の間隔を維持するための位置決め手段が設けられているので、その位置決め手段によって保持具同士の間隔が維持される。従って、間隔が維持された複数の保持具にそれぞれ発熱体の直線部を保持させるようにしながら発熱体を蛇行状に設置していくことにより、その発熱体の直線部同士の間隔も一定に維持される。また、取り付けベースの位置決め手段が間隔の異なる複数の位置に保持具を位置決め可能に構成されているので、例えば、発熱体を直線部同士の間隔が広い状態で設置したい場合には位置決め手段によって保持具同士の間隔を広めに設定し、逆に発熱体を直線部同士の間隔が狭い状態で設置したい場合には位置決め手段によって保持具同士の間隔を狭めに設定する。即ち、位置決め手段によって保持具同士の間隔を広めに設定したり狭めに設定したりすることによって発熱体の直線部同士の間隔を必要に応じて広く設定したり狭く設定したりすることができる。
【0008】
特に、取り付けベースには保持具の被係止部と上下に凹凸係合する位置決め用係止部が位置決め手段として形成され、保持具を間隔の異なる複数の位置に位置決めできるように、位置決め用係止部が発熱体の直線部に対して略直交する方向に並設されていることが好ましい。
【0009】
取り付けベースの位置決め手段を保持具の被係止部と凹凸係合する位置決め用係止部とすることにより、凹凸係合という簡単な構成で保持具を位置決めすることができ、しかも、その位置決め用係止部が並設されているので何れの位置決め用係止部に保持具の被係止部を凹凸係合させるかによって保持具同士の間隔を簡単に広めに設定したり狭めに設定したりすることができる。
【0010】
更に、保持具の下面には、被係止部としての係止突起又は係止孔が設けられ、取り付けベースの上面には、保持具の係止突起又は係止孔と凹凸係合する位置決め用係止部としての係止孔又は係止突起が発熱体の直線部に対して略直交する方向に一定間隔毎に形成されていることが好ましい。
【0011】
位置決め係止部として係止孔又は係止突起を取り付けベースの上面に形成することにより、その係止孔又は係止突起に保持具の下面の係止突起又は係止孔を凹凸係合させることで容易に保持具を位置決めしながら取り付けベース上に設置することができ、保持具の係止突起又は係止孔を凹凸係合させる対象となる取り付けベースの係止孔又は係止突起を選択することにより、保持具同士の間隔を容易に広狭設定することができる。
【0012】
更には、保持具は、上面に発熱体の直線部が入る凹溝を有するレール状であり、取り付けベースは、その長手方向に係止孔又は係止突起が一定間隔毎に形成された複数の棒状体からなり、該複数の棒状体を間隔をおいて並設した上にレール状の保持具が略直交するように載置されることが好ましい。
【0013】
取り付けベースが複数の棒状体から構成されることにより棒状体間には空間が生じる。そして、その上に載置される保持具もレール状であって間隔をあけて載置されるので、棒状体と保持具とが平面視において略格子状に配置されることとなり、その格子状の隙間によって地熱を有効活用することができて地面の加温効果が増すという利点がある。
【0014】
更に、係止突起及び係止孔は丸形であると、格子状に形成された保持具と棒状体とが係止突起及び係止孔を支点として菱形に変形できるので設置箇所の形状に応じて冶具の形状を微調整することができる。
【発明の効果】
【0015】
以上のように本発明の発熱体設置用冶具にあっては、取り付けベースに保持具を位置決めすることができるので保持具に保持される発熱体の直線部同士の間隔を容易に維持させることができて発熱体の設置作業負担が軽減され、しかも、設置箇所や用途に応じて保持具同士の間隔を広くしたり逆に狭くしたりすることができるので一つの発熱体設置用冶具によって種々の設置箇所や用途に対応することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明に係る発熱体設置用冶具の一実施形態について図面を参酌しつつ説明する。図1に本実施形態における発熱体設置用冶具を平面的に示しているが、該発熱体設置用冶具は、線状の発熱体としてのテープ状のヒータ線3を直線部3aと折り返し湾曲部3bとが交互に形成された蛇行状に設置するためのものであり、ヒータ線3の設置箇所に設置される取り付けベース2と、該取り付けベース2上に載置されてヒータ線3の各直線部3aをそれぞれ保持する複数の保持具1とから構成される。
【0017】
まず、図4及び図5を用いて該発熱体設置用冶具を使用して設置されるテープ状のヒータ線3について説明する。該ヒータ線3は、直線部3aと隣接する直線部3aの端部同士を連結するようにU字状に湾曲された折り返し湾曲部3bとが交互に繰り返されるように蛇行状に引き回されて設置される。直線部3a同士は互いに平行であって、互いの離間距離及び直線部3aの長さは一定である。
【0018】
かかるヒータ線3は、図4のようにテープ状、即ち、偏平の断面形状を有するものである。詳細には、図5にその横断面を示しているようにトラック状の断面を有している。即ち、円弧状の両側面3c(幅方向の両端部)と平坦な上面3d、下面3eとを有する長円形断面である。寸法の一例を挙げれば、幅(長辺の長さ)が18.5mmで、厚み(短辺の長さ)が7.5mmである。
【0019】
ここで、ヒータ線3の構造について説明すると、該ヒータ線3は、いわゆる自己温度制御型のヒータである。詳細には、正温度特性(PTC(Positive Temperature Coefficient)特性)を有する複数個の正特性サーミスタ素子31を備えている。該正特性サーミスタ素子31は、例えば、チタン酸バリウムを主成分とするほぼ直方体形状のセラミックス半導体であり、室温からキュリー温度(抵抗急変温度)までは低抵抗であるが、キュリー温度を超えると急に抵抗値が増大する特性を有する感熱素子である。この特性により、正特性サーミスタ素子31は、キュリー温度を下回る温度下において電圧が印加されると、最初は低温であるために抵抗値が小さいので大電流が流れ、正特性サーミスタ素子31の温度が急激に上昇する。そして、正特性サーミスタ素子31の温度がキュリー温度を超えると、抵抗値が急に増大するために電流量が減少し、その結果、正特性サーミスタ素子31の発熱量は減少する。そのため、正特性サーミスタ素子31は、一定温度以上に温度が上がることがなく、一定温度で安定して熱平衡状態を保つ。即ち、正特性サーミスタ素子31は、自己温度制御機能を有している。従って、発熱量制御のための温度制御回路や過熱防止回路を別途設ける必要がない。
【0020】
尚、正特性サーミスタ素子31のキュリー温度は、例えば、正特性サーミスタ素子31の材料組成や焼成条件(焼成温度、焼成時間など)を変更することによって、適当な範囲内で任意に変更することが可能であり、例えば、70℃に設定される。また、正特性サーミスタ素子31は、例えば、幅6mm×長さ8.3mm×厚み1.7mmの直方体形状に形成されていて、その長さ方向の両端部が金属端子33に保持されている。これらの金属端子33の外方にはそれぞれ上下一対の突片38が設けられ、該上下一対の突片38間にそれぞれ給電線32a,32bが挟み込まれるようにして固定され、これにより、正特性サーミスタ素子31は給電線32a,32b間に跨った状態に接続されている。尚、正特性サーミスタ素子31の表面の金属端子33が当接する部分(例えば、幅6mm×長さ2mmの部分)には、オーム性を有する電極34が形成されていて、正特性サーミスタ素子31と電極34とはオーム性接続をなしている。
【0021】
以上の発熱構造物の製法を概説すると、まず、正特性サーミスタ素子31の長辺の両側に金属端子33を圧入する。この金属端子33の表面には半田合金が鍍金されており、この金属端子33を圧入した素子31を熱処理することで端子33の表面の半田層が溶融して電極34に接着する。これにより、正特性サーミスタ素子31と金属端子33との電気的接触が確実なものとなる。次に、二本の給電線32a,32b(錫めっき銅線)を50mm送って一旦停止させる機構にて流し、その停止したタイミングで上記の金属端子33付きの素子31を給電線32a,32b間に挿入する。このとき、各給電線32a,32bは、金属端子33の両側の上下一対の突片38の間に配置されるようにする。次いで上下一対の突片38を給電線32a,32bの形状(円形)に沿わせて湾曲させるように上下に圧縮し、これによって二本の給電線32a,32bが端子33に圧着され、両者の電気的接触が確保される。
【0022】
以上の工程により、複数個の正特性サーミスタ素子31が50mmの間隔をあけて配置された、複数個の正特性サーミスタ素子31及び一対の給電線32a,32bからなる全体として梯子状の発熱構造物が得られる。この梯子状の構造物は、電気絶縁性を有する柔軟な合成樹脂(例えば、初期の最大点伸度280%の軟質塩化ビニル系樹脂)からなる内被覆部材35によって被覆されている。内被覆部材35は、正特性サーミスタ素子31及び給電線32a,32bからなる梯子状の構造物を上下から挟み込むようにして押出成形されて、この梯子状の構造物を絶縁封止している。内被覆部材35の表面は、複数本の金属細線を編んで形成された金属編組カバー36で被覆されている。金属編組カバー36は、例えば、直径0.12mmの金属細線(錫めっき銅線)を7本束ねてなる集合線を24本作成し、この24本の集合線を格子状に編み上げることによって筒状に形成されており、内被覆部材35の表面に50%の被覆率(内被覆部材35の全表面積に対する金属編組カバー36で被覆されている部分の面積の割合)で密着している。この金属編組カバー36で被覆されてなる内部構造物は、さらに、電気絶縁性を有する柔軟な合成樹脂からなる外被覆部材37によって被覆されている。外被覆部材37は、内部構造物を上下から挟み込むように押出成形されて、その内部構造物を絶縁封止している。
【0023】
この構成により、正特性サーミスタ素子31からの発熱は、内被覆部材35を介して金属編組カバー36に与えられ、この金属編組カバー36を伝導して、金属編組カバー36のほぼ全域から外被覆部材37に与えられる。よって、ヒータ線3は、ほぼ均一な表面温度特性を発揮することができ、外被覆部材37の表面において、正特性サーミスタ素子31に対向する部分と互いに隣接する正特性サーミスタ素子31の間に対向する部分とでほぼ同じ発熱温度を得ることができる。また、金属編組カバー36及び外被覆部材37が設けられていることにより、外部からの損傷(傷付き)や折曲に対する強度が増す。ゆえに、このヒータ線3が蛇行状に配線されても、その折り返し湾曲部3bで給電線32a,32bの断線などを生じるおそれがなく、また、ヒータ線3を用いた加温構造が屋外駐車場の地面を加温するための構造として適用されても、温度変化に伴う伸縮による給電線32a,32bの断線を生じたり、自動車や人の往来による応力が加わることによる給電線32a,32bの断線や金属端子33からの正特性サーミスタ素子31の脱落を生じたりするおそれがなく、さらに、優れた防水性と絶縁性を発揮する。金属編組カバー36は、極細の金属細線を用いて構成されたものであるから、この金属編組カバー36を設けたことにより、ヒータ線3の柔軟性が損なわれることはない。しかも、正特性サーミスタ素子31の幅に対して互いに隣り合う正特性サーミスタ素子31間の間隔が十分に長いから、ヒータ線3は良好な柔軟性を発揮し、その施工時に楽に蛇行状に引き回すことができる。また、正特性サーミスタ素子31は一定温度以上には発熱しないので、正特性サーミスタ素子31の異常発熱によって地面が異常加熱されるといったおそれがない。尚、正特性サーミスタ素子31としてチタン酸バリウムを主成分とするセラミックス半導体を用いる代わりに、樹脂中にカーボンまたは金属粉末を練り込んだ樹脂製のものを用いてもよい。但し、強度、耐久性の観点から、セラミックス半導体が好ましい。また、金属編組カバー36を構成する集合線の本数、1本の集合線を構成する金属細線の本数、金属細線の直径、金属編組カバー36による内被覆部材35の表面の被覆率など、上述した具体的数値は単なる一例であって、良好な表面温度分布特性が得られるように、それぞれが適当な範囲内の数値に設定される。例えば、金属編組カバー36を構成する集合線の本数は、12乃至24本の範囲内で設定され、金属細線の直径は0.1乃至0.15mmの範囲内で設定され、金属編組カバー36による内被覆部材35の被覆率は50乃至90%の範囲内で設定されることが好ましい。
【0024】
ヒータ線3は以上のような構造であるが、実際の施工に際しては所定長さ、例えば、25mに切断して使用する。従って、ヒータ線3の端末部は例えば以下のような処理がなされている。例えば、ヒータ線3の延設方向に所定の間隔をおいて配置されている正特性サーミスタ素子31がない部分でヒータ線3を切断し、その切断面に露出した二本の給電線32a,32b及び金属編組カバー36が互いに接触しないように切り口を処理する。このように処理した切り口を、ヒータ線3の断面形状に対応した凹部を有する合成樹脂製の封止部材の前記凹部に挿入する。その際、凹部内に防水性の接着剤等を流し込む等することで防水性、絶縁封止性を向上させることができる。
【0025】
このようなテープ状のヒータ線3を蛇行状に設置する際に使用する発熱体設置用冶具は、上述したように取り付けベース2と保持具1から構成される。取り付けベース2は、設置箇所である例えば路盤7上に載置され(図6参照)、ヒータ線3の直線部3aと略直交する方向(ヒータ線3の直線部3aの短手方向)に伸びる複数の棒状体4から構成される。該棒状体4は、例えば全て同一のものであって、ヒータ線3の直線部3aの長手方向に一定の間隔をあけて並設される。尚、本実施形態においては、ヒータ線3の直線部3aを三本の棒状体4が横断するように配置される。即ち、ヒータ線3の直線部3aの両端部と略中央部の合計三箇所を横断するように三本の棒状体4が配置されるが、この本数や配置箇所、配列等は適宜設計変更可能である。また、棒状体4は、図2及び図6に示すように、一定幅を有する薄板状であって、その上面には位置決め用係止部としての係止孔21が棒状体4の長手方向に沿って一定間隔毎に形成されている。該係止孔21は丸孔(丸形)であって、棒状体4の幅方向略中央に形成され、また、上下貫通孔として形成されている。更に、棒状体4の上面一側部には、目盛り23が長手方向に沿って形成されている。尚、目盛り23は、係止孔21の形成位置と合致する位置に形成されていると共に、係止孔21間略中央位置にも形成されている。即ち、目盛り23のピッチは係止孔21のピッチの半分である。尚、棒状体4は、例えば、金属やプラスチックや木材等から構成される。
【0026】
一方、この棒状体4上に直交するように配置されて棒状体4と共に平面視において格子状の構造物としての発熱体設置用冶具を構成する前記保持具1は、全て同一形状のレール状であって、棒状体4の長手方向に一定間隔毎に棒状体4と略直交するように配置される。具体的には、保持具1は、図3に示す如く、上面に長手方向に沿って凹溝11が全長に亘って形成された断面視凹状のものであり、該凹溝11でヒータ線3の直線部3aを保持する構成である。尚、保持具1の長さは、ヒータ線3の直線部3aの長さと略等しい。また、保持具1の凹溝11には図6のようにヒータ線3が縦置きにした状態で嵌め込まれる。即ち、ヒータ線3の幅方向が上下方向となるようにして嵌め込まれ、従って、凹溝11の幅はヒータ線3の厚さと略等しい。更に、凹溝11の深さは縦置きのヒータ線3が1/2から1/3程度嵌り込む深さが好ましく、凹溝11の寸法は、例えば、幅7.5mm、深さ7乃至10mmである。そして、保持具1の下面1aには、前記棒状体4の係止孔21と凹凸係合する係止突起22が形成されている(図3及び図6参照)。該係止突起22も丸形であって、保持具1の幅方向の略中央に形成され、且つ、長手方向に沿って一定間隔毎に複数形成されている。尚、本実施形態においては、保持具1に合計三つの係止突起22が形成されており、各係止突起22が三本の棒状体4の係止孔21に係合することにより、三本の棒状体4によって位置決めされる。また、各保持具1同士の間隔は一定である。即ち、棒状体4の係止孔21が一定間隔毎に形成されているため、例えば、図1のように二つおきに係止孔21に保持具1の係止突起22を係合させることにより各保持具1の間隔が一定とされている。また、発熱量を増減させたい場合には、保持具1を係止孔21の三つおきや一つおき等に載置して保持具1同士の間隔を広狭調節する。尚、保持具1の材質も種々選択可能であるが、地面に加わる繰り返し加重を緩和するために緩衝材として構成することが好ましく、また、下方への熱を遮断して上方に効率良く熱を伝えるために断熱材として構成することが好ましく、例えば、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂等の発泡樹脂の成形品(ビーズ発泡粒子の型内成形品や押出成形品を切削加工したもの)から構成する。尚、材質としてポリスチレンを使用する場合であって、ヒータ線3の外被覆部材37の材質が耐熱ビニル混合物である場合には、その耐熱ビニル混合物の可塑剤(フタル酸エステル)が保持具1に移行して保持具1が溶ける場合があるので、凹溝11の表面には樹脂フィルムあるいは金属箔によるコーティングを行って可塑剤の移行を防止することが好ましい。また、保持具1の断面形状についても種々の形状が採用可能であるが、下方に向けて徐々に幅広となる形状を採用すれば、上部からの応力を分散できるので、好ましい。
【0027】
次に、以上のような構成の発熱体設置用冶具を用いて発熱体としてのヒータ線3を設置する施工方法について図1、図6を用いて説明する。まず、図6に示すような上面が略フラットの路盤7上に、図1に示すように棒状体4を間隔をあけて設置する。この棒状体4は路盤7上に単に載置する他、仮止めしてもよい。そして、棒状体4を橋架するように保持具1を棒状体4上に載置していくのであるが、その際、保持具1の係止突起22を棒状体4の係止孔21に凹凸係合させ、それによって棒状体4に対する保持具1の相対位置を位置決めする。保持具1は棒状体4の長手方向に一定間隔毎に載置するが、棒状体4の係止孔21が一定間隔毎に形成されているためその係止孔21を目視確認することで保持具1を一定間隔毎に確実且つ容易に載置することができる。また、棒状体4の上面に目盛り23が形成されているのでそれを利用することで簡単に所定位置に保持具1を位置決めすることもできる。尚、保持具1同士の間隔はそれに保持されるヒータ線3の直線部3a同士の間隔になるため、係止突起22を凹凸係合させる係止孔21を他の係合孔21に変更することにより保持具1同士の間隔を広狭させることができ、設置箇所やニーズに応じて単位面積あたりの発熱量を係止孔21のピッチ単位で増減させることができる。そして、保持具1を棒状体4の長手方向に沿って順次一定間隔毎に配置、位置決めした後、各保持具1にヒータ線3の直線部3aを縦置きに保持させるようにしながら蛇行状にヒータ線3を配置する。その後、鉄筋8を格子状に配設したうえで、コンクリートを流し込んで表層部6(舗装部)を形成する。尚、棒状体4と路盤7(下地)との間にコンクリートを流し込んでもよく、その場合において、鉄筋8を棒状体4と路盤7との間に設けたり、あるいは、棒状体4と路盤7との間及び保持具1の上方の二箇所にそれぞれ鉄筋8を設けてもよい。尚、コンクリートに代えてアスファルトを使用する場合には、保持具1や棒状体4には220℃程度の耐熱性が必要となり、例えば、保持具1には、シリコン発泡成形体やポリエステル系樹脂発泡体(結晶化度の高いもの)、あるいはガラス繊維の成形体を使用するが、特に、シリコン発泡成形体が好ましい。また、表層部6自体もアスファルトから構成する場合にはヒータ線3の外被覆部材37には例えばポリテトラフルオロエチレン等のフッ素樹脂を使用して耐熱性を確保する。尚、ヒータ線3の埋設深度は例えば50乃至100mmである。
【0028】
以上のように保持具1の凹溝11にテープ状のヒータ線3を縦置きにして蛇行させているので、折り返し湾曲部3bにおいて捻れが生じるおそれがなく耐久性に優れる。しかも、凹溝11にヒータ線3を嵌め込んで保持させる構成であるので、縦置きであってもヒータ線3を安定させることができ、ヒータ線3の配線作業も楽に行える。また、縦置きにすることによって、縦置きのヒータ線3の一方の側部を凹溝11に嵌め込みながらも他方の側部を保持具1から上方に突出、露出させることができるので、保持具1から上方に突出した部分で熱を上部へと効率よく伝達することができるという利点がある。
【0029】
しかも、棒状体4と保持具1とが格子状となっていて両者の間には上下に貫通した平面視矩形の隙間S(図1参照)が形成されるのでその隙間Sを介して地熱を有効活用することができる。
【0030】
また、施工時においては、各保持具1が棒状体4に位置決めされ、それによって保持具1同士の間隔が一定に維持されるため、各保持具1にヒータ線3を嵌め込むことでその直線部3a同士の間隔もずれたりばらついたりすることなく容易に所望の間隔を確保することができる。しかも、保持具1の凹溝11は直線部3aをその全長に亘って保持する構成であるから、施工時や施工後において直線部3aが保持具1から外れたりすることもない。また、ヒータ線3の発熱量を増減させたい場合には係合させる係止孔21を変更することで保持具1同士の間隔を容易に増減させて対応することができるため、施工が極めて簡単となる。しかも、係止孔21と係止突起22が丸形であるので、格子状に配置された棒状体4と保持具1とをその交差部分を支点として僅かに菱形に変形させることもでき、従って、配置箇所の形状に合わせて冶具の形状を微調整することもできる。
【0031】
尚、本実施形態では、直線部に対し三本の棒状体4を配置したが、少なくとも二本配置すれば保持具1を確実に位置決めできて保持具1同士の間隔を一定に保持できる。
【0032】
また、係止孔21を棒状体4の長手方向に一定間隔毎に連続的に形成したが、予め基準となる保持具1同士の間隔に合わせて基準の係止孔21を形成し、その基準の係止孔21の左右に一つあるいは複数の係止孔21を棒状体4の長手方向に間隔をあけて並設する構成であってもよい。
【0033】
更に、保持具1に係止突起22を形成し棒状体4に係止孔21を形成したが、逆に保持具1に係止孔21を棒状体4に係止突起22をそれぞれ形成してもよい。また、係止孔21と係止突起22とを適宜組み合わせた構成としてもよい。
【0034】
また、係止孔21と係止突起22を丸形として係止孔21及び係止突起22を支点として格子状の保持具1と棒状体4とが菱形に変形できる構成としたが、係止孔21や係止突起22の形状は断面矩形とするなど種々変更可能である。
【0035】
更に、複数の棒状体4から取り付けベース2を構成したが、取り付けベース2は棒状体4に限られず一枚の板状体から構成してもよい。但し、複数の棒状体4から構成して棒状体4間に隙間Sを形成することにより、レール状の保持具1と共に格子状となり、その隙間Sからの地熱を有効に活用することができるという利点がある。
【0036】
尚、保持具1の被係止部として係止突起22あるいは係止孔21を採用し、それと凹凸係合する係止孔21あるいは係止突起22を位置決め用係止部として棒状体4に形成したが、位置決め用係止部の構成及びそれによって係止される保持具1の被係止部の構成についても適宜設計変更可能である。何れにしても上下に凹凸係合することによって保持具1を位置決めする位置決め用係止部を取り付けベース2に設けることにより凹凸係合という簡単な構成でもって保持具1を容易に位置決めでき且つ保持具1同士の間隔を所望に応じて設定できる。
【0037】
更に、凹凸係合の構成以外にも種々の構成の位置決め手段を採用でき、何れにしても保持具1同士の間隔が維持されると共にその間隔を二種類以上設定できる構成であれば位置決め手段の構成は問わない。
【0038】
また、発熱体の構成もテープのヒータ線3には限定されず、保持具1の構成も種々の構成が採用できる。例えば、保持具1の凹溝11の断面形状を矩形ではなくヒータ線3の形状に合わせて円弧状あるいはU字状にしてもよい。また、保持具1が直線部3aを全長に亘って保持する構成ではなく部分的に保持する構成であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の一実施形態に係る発熱体設置用冶具を示す平面図。
【図2】同冶具を構成する取り付けベースとしての棒状体を示す平面図。
【図3】同冶具を構成する保持具を示し、(イ)は側面図、(ロ)は正面図。
【図4】同冶具を用いて設置される発熱体の一部破断部分を含む平面図。
【図5】図4のP−P断面図。
【図6】同冶具を使用した施工例を示す断面図。
【符号の説明】
【0040】
1…保持具、2…取り付けベース、3…ヒータ線(発熱体)、3a…直線部、3b…折り返し湾曲部、4…棒状体、6…表層部、7…路盤(下地)、8…鉄筋、11…凹溝、31…正特性サーミスタ素子、32a,32b…給電線、33…金属端子、34…電極、35…内被覆部材、36…金属編組カバー、37…外被覆部材、38…突片、21…係止孔(位置決め用係止部、位置決め手段)、22…係止突起(被係止部)、23…目盛り

【特許請求の範囲】
【請求項1】
線状の発熱体を直線部と折り返し湾曲部とが交互に形成された蛇行状に設置するための発熱体設置用冶具であって、
発熱体の設置箇所に設置される取り付けベースと、該取り付けベース上に載置されて発熱体の各直線部をそれぞれ保持する複数の保持具とを備え、取り付けベースは、保持具同士の間隔を維持するための位置決め手段を有し、該位置決め手段は、間隔の異なる複数の位置に保持具を位置決め可能に構成されていることを特徴とする発熱体設置用冶具。
【請求項2】
取り付けベースには保持具の被係止部と上下に凹凸係合する位置決め用係止部が位置決め手段として形成され、保持具を間隔の異なる複数の位置に位置決めできるように、位置決め用係止部が発熱体の直線部に対して略直交する方向に並設されている請求項1記載の発熱体設置用冶具。
【請求項3】
保持具の下面には、被係止部としての係止突起又は係止孔が設けられ、取り付けベースの上面には、保持具の係止突起又は係止孔と凹凸係合する位置決め用係止部としての係止孔又は係止突起が発熱体の直線部に対して略直交する方向に一定間隔毎に形成されている請求項2記載の発熱体設置用冶具。
【請求項4】
保持具は、上面に発熱体の直線部が入る凹溝を有するレール状であり、取り付けベースは、その長手方向に係止孔又は係止突起が一定間隔毎に形成された複数の棒状体からなり、該複数の棒状体を間隔をおいて並設した上にレール状の保持具が略直交するように載置される請求項3記載の発熱体設置用冶具。
【請求項5】
係止突起及び係止孔は丸形である請求項4記載の発熱体設置用冶具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−97416(P2006−97416A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−287386(P2004−287386)
【出願日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【出願人】(500034468)サンオー産業株式会社 (3)
【Fターム(参考)】