説明

発熱体

【課題】簡単な製法と品質管理で製造できるリード線接合技術を使用することで、生産性と信頼性を高めた屈曲性のある発熱体の提供を目的とする。
【解決手段】発熱体は、有機性基材10の上部に、1対以上の電極11、12と抵抗体13と有機性被覆材14が積層されている。電極12の給電部分に対応する有機性被覆材14には空隙15が設けられており、空隙15を経由して、給電用リード線16が、接合部材17を用いて電極12に接合されている。接合部材17と空隙15の周辺は、難燃材18が含有された有機性補強材19で覆われている。有機性補強材19は、リード線接合部分の接合力を向上させるとともに、含有する難燃材18が温度上昇に起因する諸現象(トラッキング性や熱劣化性)を防止する。また、簡単な製造技術と品質管理技術を用いて被覆することで製造できるので、高い生産性を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、暖房、乾燥、加熱などの熱源として用いることのできる屈曲性の発熱体に関し特に、リード線接合の生産性と信頼性を高めた発熱体を提供するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、暖房などに使用される発熱体は、ポリエチレンテレフタレート板などの基板1に、共重合ポリエステル樹脂中に銀粉末を分散しイソシアネートの硬化剤を適量添加した一対の電極材料2と、エチレン酢酸ビニル共重合体とカーボンブラックの混練物をペースト化した正抵抗温度特性を有する抵抗体材料3を形成した構成である。そして、電極材料2の給電部分は、銅板からなる端子部材4が、共重合ポリエステルに銀粉末を分散しイソシアネートの硬化剤を適量添加した導電性樹脂5を介して積層されており、両者は電気的及び物理的に接合されている(例えば、特許文献1参照)。その構成を図2にします。
【0003】
電極材料2と抵抗体材料3が形成された基板1は、その上部全面が、熱溶融性樹脂フイルムとポリエチレンテレフタレート板を積層した外装材6で被覆されている。外装材6は、その端子部材4に対応する部分に、後から施す熱溶融によって貫通穴が形成されており、この貫通穴を経由してリード線9を、半田からなる熱溶融性の接合金属7と結合金属8を介して端子部材4に接合している。このため、端子部材4の形成位置に影響されることなく、外装材6を自由に全面被覆することができる。また、電極材料2の給電部分が、導電性樹脂5を介して端子部材4と接合され、その端子部材4が熱溶融性の接合金属7と結合金属8を介してリード線9と接合される構成であるため、両者が強固に接合される。このため、許容電流が大きい高信頼性で高生産性の給電部が、発熱体の任意の位置に形成できる。このリード線接合構成は、電源電圧が低いために多くの電流が必要とされる場合や、速熱性を得るために大きな突入電流を必要とする正抵抗温度特性を有する発熱体を形成する場合に、極めて効果的である。
【0004】
また、発熱体の電極材料の一部分に端子取り出し部分を設け、さらにこの端子取り出し部分を基材に編み込むように設置することにより、基材と強固に取り付ける構成もある(例えば、特許文献2参照)。この構成は、前述のリード線の接合構成を改良した構成であり、端子取り出し部は、その一端部分に電極材料が積層され、他端部分には接合材を介して端子が積層された構成である。そして、端子には、リード線が接続されている。また、端子取り出し部は、10−2Ω・cm以下のカーボン繊維、金属繊維等の導電性繊維及び金属箔、カーボンシート等で構成されており、基材の表面に直に形成されているとしている。電圧電流は、端子に接合されたリード線から供給され、端子から接合材さらに端子取り出し部そして電極材料と伝達されて、発熱体を加熱する。
【特許文献1】特開2005−149877号公報
【特許文献2】特開2002−367755号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のリード線接合技術は、リード線9を端子部材4に接合する際に、接合金属7と結合金属8を、精度の高い熱溶融制御技術と高度な品質管理技術を用いて、熱溶融しなければならない課題があった。これは、接合金属7と結合金属8の熱溶融が、リード線9と端子部材4との接合のみならず、端子部材4と電極材料2の給電部分を接合する導電性樹脂5の接合にも、影響を及ぼすためである。これら金属の熱溶融温度が高いと、導電性樹脂5が熱劣化して端子部材4と電極材料2の接合力が低下し、逆に金属の熱溶融温度が低いと、リード線12と端子部材4の接合力が低下する。この課題は、従来の
端子取り出し部分を基材に編み込むように設置する方法も、同様であった。そこで、従来は、この2つの接合部分の接合力確保をはかるため、金属の熱溶融温度と時間を精度よく制御してリード線接合をおこない、得られる接合品を高度な品質管理技術を用いて検査していた。
【0006】
一方、一般的に用いられる補強材で、電極材料とリード線の接合部分の周囲を覆って接合強度を高める方法が有る。しかしながら、この方法も、リード線接合部分を覆うことで温度上昇することに起因する諸現象(トラッキング性や熱劣化性など)を防止するため、補強材の乾燥条件などを精度よく制御して被覆をおこない、得られる被覆品の多孔度などを高度な品質管理技術を用いて検査しなければならない課題があった。この様に、従来のリード線の接合技術は、精度の高い製造技術と高度な品質管理技術を用いなければならないため、生産性の低下を招いており、生産性が高いリード線接合技術の開発が求められていた。
【0007】
本発明は、前記課題を解決するものであり、簡単な製法と品質管理で製造できるリード線接合技術を使用することで、生産性と信頼性を高めた屈曲性のある発熱体の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
従来の課題を解決するために、本発明の発熱体は、有機性基材に形成した1対以上の電極および発熱可能な抵抗体と、電極の給電部分に対応する空隙を除いて抵抗体と電極の全体を被覆する有機性被覆材と、空隙を経由して電極の給電部分に接合部材を用いて接合されてなる給電用リード線と、空隙と接合部材の周辺を覆っており難燃材を含有した有機性補強材を、少なくとも備えた構成とした。
【0009】
発熱体は、有機材料を主成分としているので、長時間折り曲げて使用されたり褶曲部分に用いられたりしても優れた屈曲性を有しており、高い信頼性を長期間確保できる。有機性補強材は、給電用リード線が接合される部分を覆う構成であるため、接合部材の接合力を補い、その接合力を向上させる。また、有機材料を主成分して難燃材を含有する組成であるため、リード線接合部分を覆うことで温度上昇することに起因する諸現象(トラッキング性や熱劣化性など)を防止する対策となっており、簡単な製造技術と品質管理技術を用いて被覆しても、この諸現象を充分に防止できる。またさらに、有機性補強材は、難燃材を分散させる有機材料(以下、ホットメルト系有機材料と称す)を主成分としているので被覆性が高く、簡単な製造技術と品質管理技術を用いて被覆できる。これに加えて、水分の進入を防止するので、高い接合信頼性を長期間確保できる。
【0010】
この様に、本発明は、難燃材を含有する有機性補強材を用いて、その給電用リード線が接合される部分(つまり、有機性被覆材の空隙と接合部材の周辺)を覆う構成とすることで、信頼性の高い給電用リード線の接合を、簡単な製造技術と品質管理技術を用いておこなうことができ、生産性を高めた屈曲性のある発熱体が提供できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、簡単な製法と品質管理で製造できる給電用リード線の接合方法により、生産性と信頼性を高めた屈曲性のある発熱体が提供でき、生産に要する電力量や生産コストが低減する効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
第1の発明の発熱体は、有機性基材と、前記有機性基材に形成した1対以上の電極および前記電極の間に配置される発熱可能な抵抗体と、前記電極の給電部分に対応する空隙を除いて前記抵抗体と前記電極の全体を被覆する有機性被覆材と、前記空隙を経由して前記
電極の給電部分に接合部材を用いて接合されてなる給電用リード線と、前記空隙と前記接合部材の周辺を覆っており難燃材を含有した有機性補強材を、少なくとも備えた構成とした。
【0013】
発熱体は、有機材料を主成分としているので、長時間折り曲げて使用されたり褶曲部分に用いられたりしても優れた屈曲性を有しており、高い信頼性を長期間確保できる。有機性補強材は、給電用リード線が接合される部分を覆う構成であるため、接合部材の接合力を補い、その接合力を向上させる。また、有機材料を主成分して難燃材を含有する組成であるため、リード線接合部分を覆うことで温度上昇することに起因する諸現象(トラッキング性や熱劣化性など)を防止する対策となっており、簡単な製造技術と品質管理技術を用いて被覆しても、この諸現象を充分に防止できる。またさらに、有機性補強材は、難燃材を分散させる有機材料(以下、ホットメルト系有機材料と称す)を主成分としているので被覆性が高く、簡単な製造技術と品質管理技術を用いて被覆できる。これに加えて、水分の進入を防止するので、高い接合信頼性を長期間確保できる。
【0014】
この様に、本発明は、難燃材を含有する有機性補強材を用いて、その給電用リード線が接合される部分(つまり、有機性被覆材の空隙と接合部材の周辺)を覆う構成とすることで、信頼性の高い給電用リード線の接合を、簡単な製造技術と品質管理技術を用いておこなうことができ、生産性を高めた屈曲性のある発熱体が提供できる。
【0015】
第2の発明の発熱体は、特に第1の発明に用いる有機性補強材が、無溶剤性および無水溶性のホットメルト系有機材料を主成分とするとした。ホットメルト系有機材料を主成分とするので、その熱溶融物を塗布するという簡単な製膜技術と品質管理技術を用いて、有機性被覆材の空隙と接合部材の周辺を覆うことができる。さらに、有機性補強材は、無溶剤性および無水溶性であるので、貫通孔の無い緻密な膜が得られて水分進入が大きく低減し、水分の多い環境下で長期間使用しても、さらに高い接合信頼性が長期間確保できる。
【0016】
第3の発明の発熱体は、特に第1の発明に用いる有機性補強材が、少なくともハロゲンを含有しないとしたものである。有機性補強材にハロゲンが含有されていないと、接合部材や電極(銅や銀を使用)の金属材料との反応物である、密着性のほとんどないハロゲン金属の腐食物が生成しない。このため、強固な有機性補強材となり、さらに耐久信頼性の優れた給電用リード線の接合部分が得られた。
【0017】
第4の発明の発熱体は、特に第1の発明に用いる有機性補強材が、リン系難燃材を含有するとしたものである。難燃材がリン系材料であると、ホットメルト系有機材料と効果的に反応して強固な有機性補強材が得られる。また、難燃材であるリン系材料が、給電用リード線や接合部材さらに電極の材料として、汎用的に使用される銅や銀さらにハンダ(錫が主成分)の金属と反応して金属リン化合物となり、これら材料と有機性補強材を優れた強度で接合させる。このことにより、耐久信頼性が一層優れた給電用リード線の接合部分が得られる。
【0018】
第5の発明の発熱体は、特に第1の発明に用いる有機性補強材が、ポリエステル樹脂とリン系難燃材を含有するとしたものである。ポリエステル樹脂は、プラスチックや繊維さらに金属との接着性に優れた材料であるので、これら材料で構成されている有機性被覆材や接合部材と強固に接合する。しかも、リン系化合物と親和力が有るので接着性や化学的機械的特性等の低下が少ない。これに加えて、難燃材であるリン系材料が、給電用リード線や接合部材さらに電極の材料として、汎用的に使用される銅や銀さらにハンダ(錫が主成分)の金属と反応して金属リン化合物となり、これら材料と有機性補強材を優れた強度で接合させる。このことにより、耐久信頼性が一層優れた給電用リード線の接合部分が得られる。
【0019】
第6の発明の発熱体は、特に第1の発明に用いる有機性補強材は、ポリエステル樹脂と、リン酸系化合物とトリアジン系化合物との反応により得られる難燃材を含有するとした。リン酸系化合物とトリアジン系化合物との反応により得られる難燃材は、難燃性が極めて優れているのでポリエステル樹脂への混合量が少なくてすみその分、有機性補強材の接着性や化学的機械的特性等の低下が非常に少ない。このため、耐久信頼性がさらに一層優れた給電用リード線の接合部分が得られる。
【0020】
第7の発明の発熱体は、特に第1の発明に用いる有機性補強材は、ポリブチレンテレフタレート樹脂とリン系難燃材を含有するとした。ポリブチレンテレフタレート樹脂は、ポリブチレンテレフタレート樹脂は、結晶性の熱可塑性飽和ポリエステル樹脂の1種であり、強靭で剛性が高く、熱的・電気的性質に優れている。また、吸水率が非常に小さく、耐油性や耐溶剤性に優れ、寸法安定性が良好である。さらに、結晶化速度が大きく、流動性も良好で、成形性に優れている。この優れた特性が、有機性補強材19として適しており、有機性被覆材や接合部材とも強固に接合する。しかも、リン系化合物と親和力が有るので接着性や化学的機械的特性等の低下が少ない。このことにより、耐久信頼性がさらに一層優れた給電用リード線の接合部分が得られる。
【0021】
第8の発明の発熱体は、特に第1の発明に用いる有機性補強材は、ポリブチレンテレフタレート樹脂と、リン酸エステルまたはホスホニトリルもしくはその両方の難燃材を含有するとした。リン酸エステルまたはホスホニトリルもしくはその両方の難燃材は、難燃性が極めて優れているのでポリブチレンテレフタレート樹脂への混合量が少なくてすみその分、有機性補強材の接着性や化学的機械的特性等の低下が非常に少ない。このため、耐久信頼性がさらに一層優れた給電用リード線の接合部分が得られる。
【0022】
第9の発明の発熱体は、特に第1の発明に用いる有機性被覆材は、少なくとも有機性補強材の周辺表面がコロナ放電処理されているとした。有機性被覆材が、コロナ放電処理されていると、有機性補強材がこの部分に強固に接合して一層信頼性の高いリード線接合品が得られる。
【0023】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。なお、本発明の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0024】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1である発熱体の断面図であり、(a)は抵抗体および電極の部分断面図、(b)は電極周辺の部分断面図である。発熱体は、有機性基材10の上部に、1対以上の電極11、12と、電極11、12の間に配置される発熱可能な抵抗体13が形成されており、電極11、12と抵抗体13を被覆するようにその上部にさらに、有機性被覆材14が積層された構成である。有機性被覆材14の電極12の給電部分に対応する部分には、空隙15が設けられており、この空隙15を経由して、給電用リード線16が、接合部材17を用いて電極12に接合されている。そして、接合部材17と空隙15との隙間およびその周辺の有機性被覆材14は、難燃材18が含有された有機性補強材19で覆われている。
【0025】
電極12が銅を主成分とする材料であると、接合部材17は、ハンダであり、図1(a)の様にハンダを溶融させ固化させることで、電極12と給電用リード線16を接合する構成となっている。一方、電極12が銀を主成分とする材料であると、接合部材17は、図1(b)の様に、接着性の有る導電性有機材料20と、銅などの導電性端子21と、ハンダなどの接合材22が積層された構成となっている。この構成は、導電性有機材料20が電極12と導電性端子21とを接合し、接合材22が導電性端子21と給電用リード線
16を接合する構成である。このことで、給電用リード線16からの電圧電流が、電極12に印加される。
【0026】
発熱体は、有機材料を主成分としているので、長時間折り曲げて使用されたり褶曲部分に用いられたりしても優れた屈曲性を有しており、高い信頼性を長期間確保できる。
【0027】
有機性補強材19は、給電用リード線16が接合される部分を覆う構成であるため、接合部材17の接合力を補い、その接合力を向上させる。また、有機材料を主成分して難燃材18を含有する組成であるため、リード線接合部分を覆うことで温度上昇することに起因する諸現象(トラッキング性や熱劣化性など)を防止する対策となっており、簡単な製造技術と品質管理技術を用いて被覆しても、この諸現象を充分に防止できる。これに加えて、水分の進入を防止するので、高い接合信頼性を長期間確保できる。またさらに、有機性補強材19は、難燃材18を分散させる有機材料(以下、ホットメルト系有機材料23と称す)を主成分としているので被覆性が高く、簡単な製造技術と品質管理技術を用いて被覆できる。
【0028】
有機性被覆材14は、熱溶融性樹脂材24とその上部に積層された有機性コート材25で構成される材料であり、熱溶融性樹脂材24の溶解温度以上に温度設定されたラミネートロールによって、有機性基材10や抵抗体13などの材料と熱融着して積層されるようにしている。このことで、水分が抵抗体13に付着しその抵抗値を変化させることが起こらない様にした。
【0029】
発熱体を試作しその効果を確認した例を以下に記載する。まず、電極11、12を、125μm厚みのポリエチレンテレフタレート板からなる有機性基材10の片面に形成した。電極11、12は、共重合ポリエステル樹脂とブロックイソシアネート系硬化材を混合した結合材に、銀とカーボンからなる導電性付与材を分散した導電性銀ペーストであり、印刷し乾燥することによって10μm厚みとなる。電極11、12は、主電極とこの主電極から分岐される枝電極から構成されており、枝電極が交互に位置するように配置されている。次に、抵抗体13を、既に形成された電極11、12の間に配置されるように形成した。抵抗体13は、正抵抗温度特性を有する抵抗体であり、エチレン酢酸ビニル共重合体とカーボンブラックの混練物をペースト化したものを、印刷して乾燥することにより10μm厚みとなる。
【0030】
その後、有機性基材10や電極11、12さらに抵抗体13を被覆するように、有機性被覆材14を配置した。有機性被覆材14は、20μm厚みのポリブチレンテレフタレート樹脂を主成分とする熱溶融性樹脂材24と、50μm厚みのポリエチレンテレフタレートを主成分とする有機性コート材25で構成される材料である。有機性被覆材14は、熱溶融性樹脂材24の溶解温度以上に温度設定されたラミネートロールによって、有機性基材10や抵抗体13などの材料と熱融着して積層される。この熱融着構造とすることで、水分が抵抗体13に付着しその抵抗値を変化させることが起こらない様にした。そして、熱溶解などの手段により、有機性被覆材14の電極12の給電部分に対応する部分に、空隙15を設けた。
【0031】
そして、この空隙15を経由して、給電用リード線16を、接合部材17を用いて電極12の給電部分に接合した。電極12が銀を主成分とする材料であるので、接合部材17は、図1(b)の様に、接着性の有る導電性有機材料20と、銅などの導電性端子21と、ハンダなどの接合材22が積層された構成とした。まず、70μm厚みの銅箔からなる導電性端子21を、未乾燥状態の導電性銀ペーストからなる導電性有機材料20を介して電極12に積層して乾燥させることで、電極12と導電性端子21は予め電気的物理的に接合した。導電性有機材料20は、共重合ポリエステル樹脂とブロックイソシアネート系
硬化材を混合した結合材に導電性付与材として銀粉末を分散した材料である。その後、給電用リード線16を、有機性被覆材14に設けた空隙15を経由して導電性端子21まで導き、ハンダからなる接合材22を用いて導電性端子21に接合した。
【0032】
最後に、空隙15および接合材22の周辺部分を、ポリブチレンテレフタレート樹脂からなるホットメルト系有機材料23を主成分としリン酸エステル系の難燃材18が含有される有機性補強材19で覆って完成である。
【0033】
この構成品は、給電用リード線16の接合が、電極12と導電性端子21が導電性有機材料20を介して接合する工程、接合材22を熱溶融させるハンダ等の熱を用いて有機性被覆材14に空隙15を形成する工程、接合材22の熱溶融により導電性端子21と給電用リード線16を接合する工程、有機性補強材19を被覆する工程で、行われる。これらいずれの工程も、簡単な製造技術と品質管理技術を用いて行なうことができる工程であるため、高い生産性を有していた。
【0034】
また、有機性補強材19は、有機性被覆材14の空隙15と接合部材17の周辺を覆う構成であるため、給電用リード線16と電極12との接合も同時に行なってその接合力を補い、接合をおこなう接合部材17の接合力を向上させる。このため、簡単な接着技術と品質管理技術を用いて、接合部材17を接着させても、給電用リード線16の外れが起こらず、信頼性の高いリード線接合品が得られた。また、有機性補強材19は、難燃材18を含有するため、リード線接合部分を覆うことで温度上昇することに起因する諸現象を防止する対策となっており、簡単な塗布技術と品質管理技術を用いて被覆しても、温度上昇に起因する諸現象を充分に防止できる。これに加えて、有機性補強材19は、水分の進入を防止するので、水分の多い環境下で長期間使用しても、高い接合信頼性が長期間確保できる。
【0035】
発熱体で使用できる材料と構成について説明する。有機性基材10は、樹脂やゴムさらには繊維の単独品もしくは複合品であり、フイルムシートや板、織布、不織布として使用する。これらは、電極11、12や抵抗体13の印刷膜との密着性に優れるとともに、これら印刷膜を乾燥する際の熱に溶融等を起こすことなく充分に耐える高分子材料である。特に、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルサルホン、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアリルサルホンなどの樹脂は、前述の密着性や耐熱性に優れており、この用途に適している。
【0036】
電極11、12は、主成分となる金属の導電性付与材に、有機樹脂の結合材を少量混合させた低抵抗材料である。導電性付与材は、銀とカーボン、銀、銅、銀などの金属を被覆した銅を使用する。結合材は、共重合ポリエステル樹脂とブロックイソシアネート系硬化材を混合した材料、フェノール樹脂などを使用する。また、銅箔もしくは、銅や銀にニッケルメッキした金属箔を結合材で接合させる構成品としてもよい。
【0037】
抵抗体13は、高分子材料に導電性材料(例えば、カーボンブラック、黒鉛、グラファイト等)を混練したものであり、エチレン酢酸ビニル共重合体などとカーボンブラックの混練物などを使用する。
【0038】
有機性被覆材14は、樹脂やゴムさらには繊維の単独品もしくは複合品であり、フイルムシートや板、織布、不織布として使用する。特に、熱溶融性樹脂材24と有機性コート材25の複合品として使用する際、熱溶融性樹脂材24が、その溶解温度以上に温度設定されたラミネートロールによって、有機性基材10や抵抗体13などの材料と熱融着してその上部に積層される。熱融着構造とする目的は、水分が抵抗体13に付着しその抵抗値を変化させることが起こらない様にするためである。これを実現するには、熱溶融性樹脂
材24はその溶解温度が、有機性コート材25より低く、発熱体の最高使用温度より高いことが必要である。この観点より、熱溶融性樹脂材24は、90〜120℃で溶解するポリブチレンテレフタレート樹脂やポリエステル樹脂が適している。有機性コート材25は、200℃以上で溶解するポリエチレンテレフタレートなど前述の有機性基材10、を主成分とする材料が適している。
【0039】
有機性被覆材14に設ける空隙15は、接合部材17として導電性端子21を用いる際は、その空隙径を導電性端子21の平板寸法より小さくした。これは、接合材22が導電性端子21の中心部分に主に接合されるため、導電性端子21を電極12と強固に接合させることができるためである。
【0040】
接合部材17は、ハンダや導電性有機ペーストなどの接着材料および金属部材であり、図1(a)の様に接着性を有する単一の接着材料を使用する方法、図1(b)の様にこれらを複数個組み合わせて使用する構成が有る。導電性有機材料20は、主成分となる金属の導電性付与材に、有機樹脂の結合材を少量混合させた低抵抗の導電性接着材である。導電性付与材は、銀とカーボン、銀、銅、銀などの金属を被覆した銅を使用する。結合材は、共重合ポリエステル樹脂とブロックイソシアネート系硬化材を混合した材料、フェノール樹脂などを使用する。導電性有機材料20は、溶剤を含有した流動性の熱硬化性であり、電極12の給電部分に接合される際は溶剤分の大半が除去された未硬化型である。このため、共重合ポリエステルを主成分とする樹脂とイソシアネートの硬化剤を含有した組成、共重合ポリエステルを主成分とする樹脂と所定の温度以下では反応性を制限されたブロック型イソシアネートの硬化剤を含有した組成、共重合ポリエステルを主成分とする樹脂と所定の温度以下では反応性を制限された硬化剤を含有した組成を用いる。また、電極11、12と同じ材料を使用したり、導電性端子21に接合される際に熱硬化しても良い。
【0041】
導電性端子21は、電解銅箔や圧延銅箔などの薄板とし、導電性有機材料20との接合面を粗面化するとともにその表面にスズなどの異種金属を鍍金して、導電性有機材料20との密着性を高めた構成としてもよい。また、カーボン繊維、金属繊維、カーボンシートを使用してもよい。またさらに、導電性端子21は、複数の開口部を形成することで、粘着性材料が電極12の給電部分に接合する際に、導電性有機材料20が、この開口部を経由してはみ出して密着性がさらに高まる構成としてもよい。また、密着性をさらに一層高まるために、導電性端子21は、給電部分に接合される面に、導電性有機材料20の他にさらに粘着性材料を併置した構成としてもよい。
【0042】
導電性端子21を電極12の給電部分に接合する際の、導電性有機材料20の硬化は、熱板加熱法もしくは誘電加熱法を用いておこなった。例えば、誘電加熱法は、導電性有機材料20と導電性端子21と電極12の給電部分を集中的に加熱し、導電性有機材料20を効果的に硬化させた。
【0043】
接合材22は、スズまたはビスマスを主成分とする融点180〜270℃の金属である。具体的には、Sn−3.5Ag、Sn−3.5Ag−0.75Cu、Sn−2Ag−0.75Cu−3Bi、Sn−57Bi−1Agなどである。
【0044】
有機性補強材19の主成分となるホットメルト系有機材料23は、ポリブチレンテレフタレート樹脂、変性ポリプロピレン・エチレン(変性PPE)、アクリルニトリル・ブタジエン・スチレン三元共重合体(ABS)、ポリスチレン、ポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリカーボネート、ポリカーボネート(PC)/ABS、ポリアミド、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル、フェノール樹脂を使用する。
【0045】
難燃材18は、リン系、窒素系、アンチモン系、金属水酸化物系、臭素系、塩素系であり、ホットメルト系有機材料100重量部に対して2〜60重量部、望ましくは10〜40重量部混合する。ホットメルト系有機材料23と難燃材18は、上記材料を任意に組み合わせて使用するが、その組み合わせ事例は以下の通リである。
【0046】
ホットメルト系有機材料とリン系難燃材は、変性ポリプロピレン・エチレン(変性PPE)とトリフェニルホスフェート、アクリルニトリル・ブタジエン・スチレン三元共重合体(ABS)と芳香族縮合リン酸エステル、ポリオレフィンと赤リン系、ポリカーボネートと芳香族縮合リン酸エステル、ポリカーボネートと赤リン系、ポリカーボネート(PC)/ABSとトリフェニルホスフェート、PC/ABSと芳香族縮合リン酸エステル、PC/ABSと赤リン系、ポリアミドと赤リン系、ポリ塩化ビニルとトリクレジルホスフェート、ポリ塩化ビニルとトリキシレニルホスフェート、ポリ塩化ビニルと芳香族縮合リン酸エステル系、ポリウレタンとトリキシレニルホスフェート、エポキシ樹脂と赤リン系、フェノール樹脂とトリフェニルホスフェート、フェノール樹脂と赤リン系などの組み合わせで使用される。
【0047】
窒素系化物系の難燃材は、トリアジン系化合物(メラミン、メレム、メラム)が最適である。これとの組み合わせで用いられるホットメルト系有機材料は、各種の樹脂が可能であるが、特に熱可塑性樹脂が良好であり、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂などが使用される。ポリエステル樹脂は、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレートで代表される樹脂である。難燃材は、窒素系化物系の単独もしくはリン系難燃材との併用で使用される。
【0048】
アンチモン系難燃材は三酸化アンチモンが最適である。これとの組み合わせで用いられるホットメルト系有機材料は、ABS、ポリスチレン、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル、エポキシ樹脂である。金属水酸化物系難燃材は水酸化アルミニウムや水酸化マグネシウムが最適である。これとの組み合わせで用いられるホットメルト系有機材料は、ポリオレフィン、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル、フェノール樹脂である。
【0049】
ホットメルト系有機材料と臭素系難燃材と組み合わせは、ABSとテトラブロモビスフェノールA(TBBA)、ポリスチレンとビス(テトラブロモフタルイミド)エタン、ポリスチレンとTBBAエポキシ・オリゴマー、ポリスチレンとビス(ペンタブロモフェニル)エタン、ポリスチレンとTBBA・ビス(ジブロモプロピルエーテル)、ポリオレフィンとビス(テトラブロモフタルイミド)エタン、ポリオレフィンとビス(ペンタブロモフェニル)エタン、ポリカーボネートとTBBAカーボネート・オリゴマー、ポリエステルとTBBAカーボネート・オリゴマー、ポリエステルとTBBAエポキシ・オリゴマー、エポキシ樹脂とテトラブロモビスフェノールA(TBBA)、フェノール樹脂とテトラブロモビスフェノールA(TBBA)である。この他に塩素系難燃材もあるが、同様の組み合わせで使用できる。
【0050】
有機性補強材19を被覆する際の溶融粘度について検討した。その結果、有機性補強材は、1000〜40000CPSの溶融粘度で被覆すると良好に作業が行なわれ、生産性の高く強固な有機性補強材19が得られた。一方、溶融粘度が1000CPS未満もしくは40000CPSを超えると作業が良好に行なわれない。
【0051】
(実施の形態2)
実施の形態2は、有機性補強材19の材質について検討した。その結果、有機性補強材19が、無溶剤性および無水溶性のホットメルト系有機材料23を主成分としていると、その熱溶融物を塗布するという一層簡単な製膜技術と品質管理技術を用いて、有機性被覆
材の空隙と接合材の周辺を覆うことができた。また、有機性補強材19は、無溶剤性および無水溶性であるので、貫通孔の無い緻密な膜が得られて水分進入が大きく低減し、水分の多い環境下で長期間使用しても高い接合信頼性が長期間確保できる。
【0052】
使用できるホットメルト系有機材料は、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂であり、特に熱可塑性樹脂が良好である。熱可塑性樹脂は、ポリエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、変性ポリプロピレン・エチレン(変性PPE)、アクリルニトリル・ブタジエン・スチレン三元共重合体(ABS)、ポリオレフィン、ポリカーボネート(PC)、PC/ABS、ポリアミド、ポリ塩化ビニルである。熱硬化性樹脂は、エポキシ樹脂、ウレタン樹、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、ケイソ樹脂である。
【0053】
(実施の形態3)
実施の形態3は、有機性補強材19の材質についてさらに詳細に検討した。その結果、有機性補強材19にハロゲン(塩素や臭素など)が含有されていないと、さらに耐久信頼性の優れた給電用リード線16の接合部分が得られた。有機性補強材19にハロゲンが含有されていないことは、ホットメルト系有機材料23がハロゲンを含有しないとともに、難燃材18が非ハロゲン系材料(具体的にはリン系、窒素系、アンチモン系、金属水酸化物系)であることである。このため、接合部材17(または、接合材22と導電性端子21と接合材22)に使用される金属、さらには電極12に分散した銀などの金属粉末との反応物である、剥離性のあるハロゲン金属の腐食物が生成しない。このため、強固な有機性補強材19が長期間得られるためである。逆に、ハロゲンが含有されていると、接合部材17や電極12の金属と反応して腐食を起こさせ、剥離性のあるハロゲン金属が生成して、有機性補強材19の長期間強度保持が不充分であった。
【0054】
ホットメルト系有機材料23は、リン系の難燃材18とは実施の形態1および4〜8に記載した通り、窒素系化物系もしくはアンチモン系もしくは金属水酸化物系の難燃材18とは前述の実施の形態1に記載した通りに組み合わせて使用される。
【0055】
(実施の形態4)
実施の形態4は、有機性補強材19の材質についてさらに詳細に検討した。その結果、難燃材18がリン化合物であり、ホットメルト系有機材料100重量部に対して難燃材18が2〜60重量部、望ましくは10〜40重量部混合すると、さらに耐久信頼性の優れた給電用リード線16の接合部分が得られた。
【0056】
これは、難燃材18がリン系材料であるので、ホットメルト系有機材料23と効果的に反応して強固な有機性補強材19が得られるためと思われる。また、難燃材18であるリン系材料が、給電用リード線16や接合部材17(導電性端子21や接合材22など)さらに電極12の材料として、汎用的に使用される銅や銀さらに錫が主成分のハンダ等の金属と反応して金属リン化合物となり、これら材料と有機性補強材19を優れた強度で接合させるためとも思われる。
【0057】
使用できるリン化合物は、リン酸エステル、リン酸アンモニウム、ホスホニトリル、トリフェニルホスフェート、芳香族縮合リン酸エステル、赤リン、芳香族縮合リン酸エステルである。
【0058】
これらリン化合物の難燃材18は、ホットメルト系有機材料23との混合材料、ホットメルト系有機材料23との共重合材料、ホットメルト系有機材料23との共重合材料にさらにリン化合物の難燃材18を混合した材料として、使用される。このような有機性補強材19は、耐久信頼性が一層優れた給電用リード線16の接合部分が得られた。
【0059】
ホットメルト系有機材料23は、特に、熱可塑性樹脂が最適であり、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂等が挙げられる。これは、通電により発熱体が温度上昇して暖かくなると有機性基材10や有機性被覆材14が伸びる現象に対して、熱可塑性樹脂の有機性補強材19は、温度上昇すると材質劣化を起こすことなく柔らかくなって塑性が増し温度が低下すると元の寸法に復帰できる性質があるので、有機性基材10や有機性被覆材14の伸び縮みに追随して強固な接合を長期間維持できるためである。また、ホットメルト系有機材料23が、熱可塑性樹脂(例えば、ポリエステル樹脂)であると、有機性被覆材14(特に、有機性コート材25)によく使用される熱可塑性樹脂(例えば、ポリエチレンテレフタレートで代表されるポリエステル樹脂)や、給電用リード線16の表皮材料である熱可塑性樹脂(例えば、塩化ビニル樹脂やポリオレフィン樹脂)と強固に接合する利点もあった。
【0060】
ポリエステル樹脂は、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレートなどである。ポリカーボネートは、芳香族ポリカーボネートが好ましく、特にビスフェノールAを主原料にした芳香族ポリカーボネート等がよい。ポリアミド樹脂は、ナイロン6、ナイロン66、ナイロンMXD6等である。
【0061】
なお、有機性補強材19は、さらに難燃性を増すために必要に応じてリン化合物の他に、トリアジン系化合物(メラミン、メレム、メラム)などの窒素系の難燃材18をさらに混合して、難燃材18としての合計量が2〜60重量部、望ましくは10〜40重量部してもよい。
【0062】
また、有機性補強材19は、リンを分子中に含有するポリエステル共重合体100質量部と、リン酸系化合物とトリアジン系化合物との反応により得られる難燃材1〜300質量部と、熱可塑性樹脂0〜2000質量部を含有する組成物を使用してもよい。リンを分子中に含有するポリエステル共重合体は、リンがポリエステルに化学結合していれば特に限定されるものではないが、望ましくはリン原子として樹脂中に0.05〜3質量%含有されていればよい。リン酸系化合物とトリアジン系化合物との反応により得られる難燃材は、リン酸メラミン、ピロリン酸メラミン、ポリリン酸メラミンの中から選ばれた少なくとも1種からなる難燃性樹脂組成物である。
【0063】
これらの有機性補強材19は、成形性、燃焼時の腐食性ガス、機械特性、熱安定性に優れた難燃性樹脂組成物であり、環境面、および廃棄、リサイクル時のコスト低減に優れた効果が有る。
【0064】
(実施の形態5)
実施の形態5は、有機性補強材19の材質について詳細に検討した。その結果、ポリエステル樹脂とリン系難燃材を含有すると、強固な有機性補強材19が得られた。
【0065】
これは、ポリエステル樹脂は、プラスチックや繊維さらに金属との接着性に優れた材料であるので、これら材料で構成されている有機性被覆材14や接合部材17さらに給電用リード線16と強固に接合する。しかも、リン系化合物と親和力が有るので接着性や化学的機械的特性等の低下が少ないためである。これに加えて、難燃材18であるリン系材料が、給電用リード線16や接合部材17さらに電極12の材料として、汎用的に使用される銅や銀さらにハンダ(錫が主成分)の金属と反応して金属リン化合物となり、これら材料と有機性補強材19を優れた強度で接合させる。
【0066】
また特に、結晶性を高めたポリエステル樹脂との組み合わせは、強固な有機性補強材19が長期間得られて最適であった。なお、有機性補強材19は、ポリエステル樹脂系のホ
ットメルト系有機材料100重量部に対してリン系難燃材をさらに2〜60重量部、望ましくは10〜40重量部混合した組成物である。
【0067】
ポリエステル樹脂は、具体例として、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレートおよびポリエチレン−1,2−ビス(フェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボキシレートなどのほか、ポリエチレンイソフタレート/テレフタレート、ポリブチレンテレフタレート/イソフタレート、ポリブチレンテレフタレート/デカンジカルボキシレートおよびポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート/イソフタレートなどの共重合ポリエステル等が挙げられる。特に、機械的性質、成形性などのバランスのとれたポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートおよびポリエチレンテレフタレート等が好ましく使用できる。
【0068】
リン化合物は、リン酸エステル、リン酸アンモニウム、ホスホニトリル、トリフェニルホスフェート、芳香族縮合リン酸エステル、赤リン、芳香族縮合リン酸エステルである。
【0069】
なお、有機性補強材19は、さらに難燃性を増すために必要に応じてリン化合物の他に、トリアジン系化合物(メラミン、メレム、メラム)などの窒素系の難燃材をさらに混合して、難燃材18としての合計量が2〜60重量部、望ましくは10〜40重量部してもよい。
【0070】
また、有機性補強材19は、ポリブチレンテレフタレートなどの熱可塑性ポリエステル樹脂:芳香族ポリカーボネート樹脂=95:5〜30:70(重量比)の樹脂組成物100重量部に対し、リン系難燃材(例えば、赤燐)を1〜 30重量部含有する組成物を使用してもよい。さらに必要に応じて、難燃性を強化するために、さらに窒素含有化合物やポリテトラフルオロエチレンを含むポリブチレンテレフタレート樹脂を使用してもよい。
【0071】
また、この有機性補強材19は、分子鎖中に含まれるリン原子が0.3wt%以上であり、酸成分の芳香族ジカルボン酸を40モル%以上含み、ポリプロピレングリコールを含んだポリエステル樹脂も使用できる。このポリエステル樹脂は、リン含有カルボン酸またはそのエステル化合物を共重合して得られ、その数平均分子量は、8000〜65000である。これは、8000未満では機械的強度が不足してしまい、接着性等の各種用途特性が損なわれることがある。逆に、重合時の生産性を考慮すると65000未満が現実的であった。この組成物のポリエステル樹脂は、難燃性や耐加水分解性さらに機械的特性に優れたリード線接合部被覆用の接着材となっているので、さらに耐久信頼性の優れた給電用リード線16の接合部分が得られた。
【0072】
さらに、このポリエステル樹脂は、難燃性をさらに向上させるために、リン原子を有するモノマーを共重合や変性によって導入して分子鎖中にリン原子を含ませたものである。その上限は特に規制されないが、逆にリン原子含有量が0.3wt%未満であると、難燃性が低くなり使用しにくい。また、ポリエステル樹脂は、酸成分であるカルボン酸の芳香環濃度を高めておくと、さらに難燃化効果が向上し耐ブロッキング性も向上する。そこで、その濃度を40モル%以上含有するとした。このポリエステル樹脂は、ポリプロピレングリコールを共重合することが必要である。共重合されるポリプロピレングリコール含有量は、ポリエステル樹脂全体を100wt%としたときに、0.5〜25wt%が好ましく、より好ましくは1〜15wt%である。
【0073】
(実施の形態6)
実施の形態6は、有機性補強材19の材質について詳細に検討した。有機性補強材19
は、ポリエステル樹脂のホットメルト系有機材料23と、リン酸系化合物とトリアジン系化合物との反応により得られる難燃材18を含有するとすると、さらに耐久信頼性の優れた給電用リード線16の接合部分が得られた。この有機性補強材19は、ホットメルト系有機材料23の100質量部に対し、難燃材18が1〜30質量部の組成であり、難燃性や耐加水分解性さらに機械的特性に優れたリード線接合部被覆用の接着材となっている。
【0074】
ポリエステル樹脂は、前述の実施の形態5に記載した樹脂である。難燃材18を構成するリン酸系化合物とトリアジン系化合物との反応により得られる物質は、リン酸メラミン、ピロリン酸メラミン、ポリリン酸メラミンである。これら物質は、リン酸系化合物(リン酸、オルトリン酸、亜リン酸、次亜リン酸、メタリン酸、ピロリン酸、三リン酸、四リン酸、縮合リン酸)と、窒素系化合物であるトリアジン系化合物(メラミン、メレム、メラム)の反応により得られる。
【0075】
(実施の形態7)
実施の形態7は、有機性補強材19の材質について詳細に検討した。その結果、ホットメルト系有機材料23がポリブチレンテレフタレート樹脂であり、リン系難燃材18にすると、耐久信頼性の優れた強固な有機性補強材22が得られた。
【0076】
有機性補強材19は、ポリブチレンテレフタレート樹脂の95〜55重量部に対して、難燃材18であるリン酸エステル化合物2〜45重量部を含有する組成物である。なお、ポリブチレンテレフタレート樹脂は、その95〜50重量部とポリフェニレンエーテル樹脂5〜50重量部との混合樹脂としてもよく、その際は混合樹脂100重量部に対して難燃材18であるリン酸エステル化合物を2〜45重量部含有する組成物とした。また、リン酸エステル化合物以外にホスホニトリルなどの難燃材18を使用してよく、その際も2〜45重量部混合する組成とする。このことで、難燃性や耐加水分解性さらに機械的特性に優れたリード線接合部被覆用の接着材とした。
【0077】
リン化合物は、リン酸エステル、リン酸アンモニウム、ホスホニトリル、トリフェニルホスフェート、芳香族縮合リン酸エステル、赤リン、芳香族縮合リン酸エステルを使用する。
【0078】
なお、有機性補強材19は、さらに難燃性を増すために必要に応じてリン化合物の他に、トリアジン系化合物(メラミン、メレム、メラム)などの窒素系の難燃材をさらに混合して、難燃材18としての合計量が2〜60重量部、望ましくは10〜40重量部してもよい。
【0079】
また、有機性補強材19は、ポリブチレンテレフタレート:芳香族ポリカーボネート樹脂=95:5〜30:70(重量比)の樹脂組成物100重量部に対し、リン系難燃材(例えば、赤燐)を1〜 30重量部含有する組成物も使用できる。さらに必要に応じて、難燃性を強化するために、さらに窒素含有化合物やポリテトラフルオロエチレンを含むポリブチレンテレフタレート樹脂を使用してもよい。
【0080】
ポリブチレンテレフタレート樹脂は、結晶性の熱可塑性飽和ポリエステル樹脂の1種であり、強靭で剛性が高く、熱的・電気的性質に優れている。また、吸水率が非常に小さく、耐油性、耐溶剤性に優れ、寸法安定性が良好である。さらに、結晶化速度が大きく、流動性も良好で接着性、成形性に優れている。この優れた特性が、有機性補強材19として適している。また、ポリブチレンテレフタレート樹脂を主成分とする有機性補強材19は、有機性被覆材14(特に、有機性コート材25)によく使用される熱可塑性樹脂(例えば、ポリエチレンテレフタレートで代表されるポリエステル樹脂)や、給電用リード線16の表皮材料である熱可塑性樹脂(例えば、塩化ビニル樹脂やポリオレフィン樹脂)と強
固に接合する利点もあった。
【0081】
(実施の形態8)
実施の形態8は、有機性補強材19の材質について詳細に検討した。その結果、ホットメルト系有機材料23がポリブチレンテレフタレート樹脂であり、リン酸エステルまたはホスホニトリルもしくはその両方の難燃材18にすると、耐久信頼性の優れた強固な有機性補強材22が得られた。
【0082】
この有機性補強材19は、ポリブチレンテレフタレート樹脂の95〜55重量部に対して、難燃材であるリン酸エステル化合物2〜45重量部を含有する組成物である。なお、リン酸エステル化合物の代替として、ホスホニトリルの単独もしくは、リン酸エステルとホスホニトリルの複合材料を使用してよい。また、ポリブチレンテレフタレート樹脂は、その95〜50重量部とポリフェニレンエーテル樹脂5〜50重量部との混合樹脂としてもよく、その際は混合樹脂100重量部に対して難燃材であるリン酸エステル化合物などを2〜45重量部含有する組成物とした。このことで、難燃性や耐加水分解性さらに機械的特性に優れたリード線接合部被覆用の接着材とした。
【0083】
なお、有機性補強材19は、さらに難燃性を増すために必要に応じて、トリアジン系化合物(メラミン、メレム、メラム)などの窒素系の難燃材をさらに混合して、難燃材18としての合計量が2〜60重量部、望ましくは10〜40重量部してもよい。
【0084】
(実施の形態9)
実施の形態9は、有機性被覆材14の処理方法についてについて検討した。その結果、少なくとも有機性補強材19の周辺表面の有機性被覆材14が、コロナ放電処理されていると、有機性補強材19がこの部分に強固に接合して一層信頼性の高いリード線接合品が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明の発熱体は、暖房、乾燥、加熱などの熱源として用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】(a)本発明の実施の形態1の発熱体の抵抗体および電極の部分断面図(b)同電極周辺の部分断面図
【図2】従来の発熱体の断面図
【符号の説明】
【0087】
10 有機性基材
11、12 電極
13 抵抗体
14 有機性被覆材
15 空隙
16 給電用リード線
17 接合部材
18 難燃材
19 有機性補強材
20 導電性有機材料
21 導電性端子
22 接合材
23 ホットメルト系有機材料
24 熱溶融性樹脂フィルム
25 有機性コート材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機性基材と、前記有機性基材に形成した1対以上の電極および前記電極の間に配置される発熱可能な抵抗体と、前記電極の給電部分に対応する空隙を除いて前記抵抗体と前記電極の全体を被覆する有機性被覆材と、前記空隙を経由して前記電極の給電部分に接合部材を用いて接合されてなる給電用リード線と、前記空隙と前記接合部材の周辺を覆っており難燃材を含有した有機性補強材を、少なくとも備えた発熱体。
【請求項2】
有機性補強材は、無溶剤性および無水溶性のホットメルト系有機材料を主成分としている請求項1に記載の発熱体。
【請求項3】
有機性補強材は、少なくともハロゲンを含有しない請求項1に記載の発熱体。
【請求項4】
有機性補強材は、リン系難燃材を含有する請求項1に記載の発熱体。
【請求項5】
有機性補強材は、ポリエステル樹脂とリン系難燃材を含有する請求項1に記載の発熱体。
【請求項6】
有機性補強材は、ポリエステル樹脂と、リン酸系化合物とトリアジン系化合物との反応により得られる難燃材を含有する請求項1に記載の発熱体。
【請求項7】
有機性補強材は、ポリブチレンテレフタレート樹脂とリン系難燃材を含有する請求項1に記載の発熱体。
【請求項8】
有機性補強材は、ポリブチレンテレフタレート樹脂と、リン酸エステルまたはホスホニトリルもしくはその両方の難燃材を含有する請求項1に記載の発熱体。
【請求項9】
有機性被覆材は、少なくとも有機性補強材の周辺表面がコロナ放電処理されている請求項1に記載の発熱体。

【図2】
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【図1】
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【公開番号】特開2008−146965(P2008−146965A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−331523(P2006−331523)
【出願日】平成18年12月8日(2006.12.8)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】