説明

発熱体

【課題】簡単な製法と品質管理で製造できる生産性と信頼性を高めた発熱体の提供する。
【解決手段】発熱体は、基材12の上部に1対以上の電極13、14と発熱可能な抵抗体15とが形成されており、これらを被覆するように、接着性材料17と有機性コート材18の積層物である有機被覆材16が配置された構成である。接着性材料12は、結晶化度を高めた難溶剤溶解性の硬化剤未使用タイプである。電極13、14は、硬化剤使用タイプのポリエステル樹脂を含有しておりその給電部分には、導電性有機材料19を介して給電用の導電性端子20が積層されており、有機性被覆材16に設けた小さい寸法の空隙21を経由して、給電用リード線22が導電性端子20に接合材23を用いて接合されている。電極13、14や接着性材料12などが、お互いの相性を考慮して最適化しているので、簡単な製法と品質管理で製造でき、生産性と信頼性を高めた発熱体が提供できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、暖房、乾燥、加熱などの熱源として用いることのできる屈曲性の発熱体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、暖房などに使用される発熱体は、ポリエチレンテレフタレート板などの基板1に、共重合ポリエステル樹脂中に銀粉末を分散しイソシアネートの硬化剤を適量添加した一対の電極材料2と、エチレン酢酸ビニル共重合体とカーボンブラックの混練物をペースト化した正抵抗温度特性を有する抵抗体材料3を形成した構成であった(例えば特許文献1参照)。図2はその構成であり、(a)は発熱部分の部分断面図、(b)はリード線接続部分の部分断面図である。そして、この特許文献1の段落番号[0079]に記載されている様に、電極材料2と抵抗体材料3が形成された基板1は、その上部全面が、熱溶融性樹脂フイルム4とポリエチレンテレフタレート板5を積層した外装材6で被覆されている。熱溶融性材料フィルム4は、基板1と接着することで一対の電極材料2や抵抗体材料3への水の浸入を防止し、耐水性を高めている。
【0003】
一方、電極材料2の給電部分は、銅板からなる端子部材7が、共重合ポリエステルに銀粉末を分散しイソシアネートの硬化剤を適量添加した導電性樹脂8を介して積層されており、両者は電気的及び物理的に接合されている。外装材6は、その端子部材7に対応する部分に、後から施す熱溶融によって貫通穴が形成されており、この貫通穴を経由してリード線9を、半田からなる熱溶融性の接合金属10と結合金属11を介して端子部材7に接合している。このため、端子部材7の形成位置に影響されることなく、外装材6を自由に全面被覆することができる。また、電極材料2の給電部分が、導電性樹脂8を介して端子部材7と接合され、その端子部材7が熱溶融性の接合金属10と結合金属11を介してリード線9と接合される構成であるため、両者が強固に接合される。このため、許容電流が大きい高信頼性で高生産性の給電部が、発熱体の任意の位置に形成できる。このリード線接合構成は、電源電圧が低いために多くの電流が必要とされる場合や、速熱性を得るために大きな突入電流を必要とする正抵抗温度特性を有する発熱体を形成する場合に、極めて効果的である。
【0004】
一方、この発熱体とは構造が異なるが、導電性カーボンを混合した4フッ化エチレン樹種からなる抵抗体材料を、ポリエチレンなどの熱溶融性材料フィルムとポリエチレンテレフタレートの積層板で両側から覆う発熱体がある(例えば特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2005−149877号公報
【特許文献2】特開2000−299181号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の発熱体に用いる外装材6は、熱溶融性材料フィルム4を介して電極材料2や抵抗体材料3を被覆し基板1に接着されているが、この熱溶融性材料フィルム4は、外装材6および発熱体の品質特性を安定させるために、複雑な材料組成および製法と高度な品質管理を用いて、ポリエチレンテレフタレート板5に形成しなければならない課題があった。また、従来の発熱体に用いるリード線9は、水の浸入を防止し耐水性を高めるために、複雑な製法と高度な品質管理を用いて電極材料2の給電部分に接続しなければならない課題があった。
【0006】
熱溶融性材料フィルム4として一般に用いられる接着剤は、ポリエチレンなどのポリオ
レフィンやポリスチレンなどの熱可塑性材料や、尿素材料(ユリア材料とも称す)やフェノール材料さらにエステル材料やエポキシ材料などの熱硬化性材料、ポリイソプレンなどの熱可塑性エラストマーである。これらは、有機溶剤で溶解させた溶剤系接着剤タイプや、熱で融かして液化させるホットメルト系接着剤タイプで使用され、ポリエチレンテレフタレート板5に塗布されて熱溶融性材料フィルム4となる。汎用の溶剤系接着剤やホットメルト系接着剤を用いた熱溶融性材料フィルム4は、ポリエチレンテレフタレート板5に積層して外装材6と用いる場合、接着性とブロッキング性の両立が難しい。そこで、これら接着剤を用いた熱溶融性材料フィルム4は、被着体となるポリエチレンテレフタレート板5に対する接着性と耐ブロッキング性を両立するために、複雑な材料組成および製法と高度な品質管理を必要とする。例えば、ただ単に接着剤となる熱溶融性材料フィルム4の溶液をポリエチレンテレフタレート板5に塗布し乾燥させてフィルムとしただけでは、接着性が強いと、生産工程でロール状に巻取ったときにブロッキングが起こり、フィルムが、一塊の接着ロールとなって使用できなくなる。そこで、耐ブロッキング性を高めるため、熱溶融性材料フィルム4は、ブロッキング防止剤の添加、製造工程中に接着剤表面を離型フィルムでカバーしてロール状に巻取る、などの処理をしてポリエチレンテレフタレート板5に形成している。
【0007】
一方、従来例に記載したような、導電性カーボンを混合した4フッ化エチレン樹種などからなる抵抗体材料を、ポリエチレンなどの熱溶融性材料フィルムとポリエチレンテレフタレート板の積層で覆う発熱体の構成は、ただ単にポリエチレンをホットメルトして抵抗体材料を覆うだけでは、多湿環境での耐久信頼性確保が難しい。ポリエチレンは、結晶性の高い材料であるがその表面に結晶化の過程ではじき出された非晶質部分と部分酸化部分が存在しているため、排他性が強くこれが接着を妨げているので化学的接着が期待できない。そのため、長期間にわたる接着の耐久信頼性確保が難しくなり、接着部分からの水の浸入を完全に防止できなくなって、抵抗体材料に電気導通性の水分が付着してその電気抵抗が変化し、加湿耐久信頼性が低下する。そこで、その影響を回避するために、熱溶融性材料フィルム4は、複雑な材質と製法で基板1に接着して高度な品質管理を用いて検査していた。
【0008】
これに加えて、従来例に記載したようなリード線9の接続は、リード線9を半田からなる熱溶融性の接合金属10と結合金属11を介して端子部材7に接合する構成である。この構成だと、端子部材7と熱溶融性材料フィルム4の隙間からの水の浸入を防止し耐水性を高めるために、このリード線接続構成品は、その上部に有機性樹脂などを被覆しているが、単純な製法で有機性樹脂を被覆するだけでは不充分であった。そこでその影響を回避するために、被覆用の有機性樹脂は、複雑な材質と製法で接合金属10等を被覆し高度な品質管理を用いて検査して、ここから進入した水分が抵抗体材料3に付着することを防止していた。
【0009】
さらに、これら熱溶融性材料フィルム4は、電極2や抵抗体材料3を被覆しているので、被覆する際に発生する有機溶剤蒸発物やホットメルト液化物が、電極2や抵抗体材料3の耐久特性に影響する。特に、電極2は、電気抵抗値が小さいので、僅かな影響を敏感に感じる。そこでその影響を回避するために、熱溶融性材料フィルム4は、電極2や抵抗体材料3への影響を回避する特殊材料をさらに添加するという複雑な材料組成とし、複雑な製法で熱溶融性材料フィルム4をポリエチレンテレフタレート板5に形成している。また、製膜した熱溶融性材料フィルム4は、複雑な製法で基板1に接着して高度な品質管理を用いて検査して良品としていた。
【0010】
本発明は、前記課題を解決するものであり、発熱体の構造、電極の材質と硬化材の有無、抵抗体材料の材質と架橋材の有無を、熱溶融性材料フィルムの結晶化度と溶剤溶解性の難易度と硬化剤の有無を、明確にしてお互いの相性の観点から最適化している。そして、
簡単な製法と品質管理で製造できる発熱体の構造と材料とすることで、生産性と信頼性を高めた発熱体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記従来の課題を解決するために、本発明の発熱体は、有機材料系の基材と、基材に形成した1対以上の電極と、電極の間に配置され少なくともその1部分を覆って積層される発熱可能な有機材料系の抵抗体と、電極と抵抗体の全体を被覆する有機性被覆材を備えている。そして、電極は、硬化剤使用タイプのポリエステル樹脂を含有しており、その給電部分に導電性有機材料を介して給電用の導電性端子が積層されている。抵抗体は、熱可塑性材料に架橋材とカーボンブラックが少なくとも混合された材料である。有機性被覆材は、基材の対向面側に形成される有機材料系の接着性材料と、これに積層された有機性コート材で構成される。この接着性材料は、結晶化度を高めた難溶剤溶解性の硬化剤未使用タイプのポリエステル樹脂が主成分である。有機性被覆材には、導電性端子の外形寸法より小さい寸法の空隙が設けられており、給電用リード線が、この空隙を経由して導電性端子に接合材で接合されているとした。
【0012】
有機性被覆材は、有機性コート材に有機材料系の接着性材料が形成されている構成である。この接着性材料は、ホットメルト接着材が使用できるので、加熱してホットメルトすると溶融してすぐに固まって、基材に良好に接着する。しかも、接着性材料は、ポリエステル樹脂が主成分であるため接着力が強く、基材と有機性コート材の接着の長期間にわたる耐久信頼性が確保でき、接着部分から抵抗体への水の浸入を完全に防止して、抵抗体の水分付着による電気抵抗変化を起こらなくし、加湿耐久信頼性を向上させる。
【0013】
これに加えて、有機性被覆材は、導電性端子の外形寸法より小さい寸法の空隙が設けられておりこの小さな空隙を経由して、給電用リード線が、電極に積層した導電性端子に接合材を用いて接合される構成である。給電用リード線を通過させるために有機性被覆材に設ける空隙が、導電性端子の外形寸法より小さい寸法であるため、有機性補強材が導電性端子の外周部分を覆ってここからの水の浸入を完全に防止し、抵抗体の水分付着による電気抵抗変化を起こらなくして加湿耐久信頼性を向上させる。
【0014】
また、接着性材料は、硬化剤を使用しないので線状の柔らかい非架橋型となっているうえに難溶剤溶解性としているので、耐ブロッキング性に優れておりロール状に巻取ったときにお互いがくっつくことがない。
【0015】
電極は、硬化剤使用タイプのポリエステル樹脂を含有した材料であり、その上部に抵抗体および有機性被覆材が順々に積層される構造である。そのため、これら材料が順々に積層されて硬化のために加熱されるごとに、電極は、硬化がどんどん進んでゆき一層優れた電気導電性が得られる。一方、抵抗体は、熱可塑性材料にカーボンブラックが混合された材料であるので、ホットメルトする際に溶融しても冷却すると元の形状に戻る良好な発熱体となっている。しかも、抵抗体は、さらに架橋材を加えて架橋させた架橋型であるので3次元構造を持ち、この架橋型の3次元構造は、カーボンブラックどうしを強固に接触させてその導電経路が長期的に安定し、優れた耐久信頼性が確保できる。
【0016】
さて、電極および抵抗体は、その上部全体を有機性被覆材で被覆してホットメルトされるので接着性材料と接合するが、接着性材料が硬化剤を使用しないタイプであるので、ホットメルトする際にその熱溶融液化物が電極および抵抗体に流動しても、電極はその硬化を、抵抗体はその架橋が妨げられることがなく、優れた抵抗特性を長期間維持する。これに加えて、接着性材料は結晶化度を高めているため、ホットメルトする際にその熱溶融液化物が電極や抵抗体に流動すると、電極や抵抗体は、その結晶化度が高められて優れた耐久信頼性を長期間維持する。また、ポリエステル樹脂は、硬化に際して揮発性物質を発生
しないうえに加圧成形を必要としない利点があるため、これを接着性樹脂材として用いた際に、これらが抵抗体へ与える影響を少なくでき、簡単な製膜技術と品質管理技術で耐久信頼性の優れた発熱体を製造できる。さらに、ポリエステル樹脂は、引張り強度や耐水性、耐溶剤性、耐寒性が良好である。そのため、発熱体に何回も大きな加重を掛けた使用、発熱体に何回も水や溶剤をこぼした使用、−20℃の寒い場所での使用でも、発熱体は良好な耐久信頼性を長期間維持する。
【0017】
結晶性を高めた硬化剤未使用タイプの接着性材料を有機性被覆材に接合する技術と、この有機性被覆材を用いて発熱体を製造する技術は、従来のブロッキング防止剤などを添加して接着性材料を形成する技術と比較して、簡単な製法と品質管理で製造できる。このため、本発明は、簡単な製造技術と品質管理技術を用いることで、生産性と信頼性を高めた発熱体が提供できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、簡単な製法と品質管理で製造できる接着性材料により、生産性と信頼性を高めた発熱体が提供でき、生産に要する電力量や生産コストが低減する効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
第1の発明の発熱体は、有機材料系の基材と、前記基材に形成した1対以上の電極と、前記電極の間に配置され少なくともその1部分を覆って積層される発熱可能な有機材料系の抵抗体と、前記電極と前記抵抗体の全体を被覆する有機性被覆材を少なくとも備え、前記電極は、硬化剤使用タイプのポリエステル樹脂を含有しておりその給電部分に導電性有機材料を介して給電用の導電性端子が積層され、前記抵抗体は、熱可塑性材料に架橋材とカーボンブラックが混合された材料であり、前記有機性被覆材は、前記基材の対向面側に形成される有機材料系の接着性材料とこれに積層された有機性コート材で構成され、前記接着性材料は、結晶化度を高めた難溶剤溶解性の硬化剤未使用タイプのポリエステル樹脂が主成分であり、前記有機性被覆材は、前記導電性端子の外形寸法より小さい寸法の空隙が設けられており、給電用リード線が、前記空隙を経由して前記導電性端子に接合材で接合されるとした。
【0020】
有機性被覆材は、有機性コート材に有機材料系の接着性材料が形成されている構成である。この接着性材料は、ホットメルト接着材が使用できるので、加熱してホットメルトすると溶融してすぐに固まって、基材に良好に接着する。しかも、接着性材料は、ポリエステル樹脂が主成分であるため接着力が強く、基材と有機性コート材の接着の長期間にわたる耐久信頼性が確保でき、接着部分から抵抗体への水の浸入を完全に防止して、抵抗体の水分付着による電気抵抗変化を起こらなくし、加湿耐久信頼性を向上させる。
【0021】
これに加えて、有機性被覆材は、導電性端子の外形寸法より小さい寸法の空隙が設けられておりこの小さな空隙を経由して、給電用リード線が、電極に積層した導電性端子に接合材を用いて接合される構成である。給電用リード線を通過させるために有機性被覆材に設ける空隙が、導電性端子の外形寸法より小さい寸法であるため、有機性補強材が導電性端子の外周部分を覆ってここからの水の浸入を完全に防止し、抵抗体の水分付着による電気抵抗変化を起こらなくして加湿耐久信頼性を向上させる。
【0022】
また、接着性材料は、硬化剤を使用しないので線状の柔らかい非架橋型となっているうえに難溶剤溶解性としているので、耐ブロッキング性に優れておりロール状に巻取ったときにお互いがくっつくことがない。
【0023】
電極は、硬化剤使用タイプのポリエステル樹脂を含有した材料であり、その上部に抵抗体および有機性被覆材が順々に積層される構造である。そのため、これら材料が順々に積
層されて硬化のために加熱されるごとに、電極は、硬化がどんどん進んでゆき一層優れた電気導電性が得られる。一方、抵抗体は、熱可塑性材料にカーボンブラックが混合された材料であるので、ホットメルトする際に溶融しても冷却すると元の形状に戻る良好な発熱体となっている。しかも、抵抗体は、さらに架橋材を加えて架橋させた架橋型であるので3次元構造を持ち、この架橋型の3次元構造は、カーボンブラックどうしを強固に接触させてその導電経路が長期的に安定し、優れた耐久信頼性が確保できる。
【0024】
さて、電極および抵抗体は、その上部全体を有機性被覆材で被覆してホットメルトされるので接着性材料と接合するが、接着性材料が硬化剤を使用しないタイプであるので、ホットメルトする際にその熱溶融液化物が電極および抵抗体に流動しても、電極はその硬化を、抵抗体はその架橋が妨げられることがなく、優れた抵抗特性を長期間維持する。これに加えて、接着性材料は結晶化度を高めているため、ホットメルトする際にその熱溶融液化物が電極や抵抗体に流動すると、電極や抵抗体は、その結晶化度が高められて優れた耐久信頼性を長期間維持する。また、ポリエステル樹脂は、硬化に際して揮発性物質を発生しないうえに加圧成形を必要としない利点があるため、これを接着性樹脂材として用いた際に、これらが抵抗体へ与える影響を少なくでき、簡単な製膜技術と品質管理技術で耐久信頼性の優れた発熱体を製造できる。さらに、ポリエステル樹脂は、引張り強度や耐水性、耐溶剤性、耐寒性が良好である。そのため、発熱体に何回も大きな加重を掛けた使用、発熱体に何回も水や溶剤をこぼした使用、−20℃の寒い場所での使用でも、発熱体は良好な耐久信頼性を長期間維持する。
【0025】
このように、本発明は、相性を考慮しお互いを最適化しているので、簡単な製法と品質管理で製造でき、生産性と信頼性を高めた発熱体が提供できる。
【0026】
第2発明の発熱体は、特に第1の発明に用いる電極は、銀粉を主成分とする導電性付与材と、共重合ポリエステル樹脂とイソシアネート系硬化剤を少なくとも含有している結合剤とからなり、前記導電性付与剤/前記結合剤の組成比が60/40〜95/5(硬化後の重量比)であるとした。電極は、共重合ポリエステル樹脂とイソシアネート系硬化剤を含有している結合材とし、導電性付与剤/結合剤の組成比が60/40〜95/5(硬化後の重量比)すると、柔らかく優れたゴム弾性を持つ。この共重合ポリエステル樹脂を用いた電極は、その引張り強度が格段に優れるため、給電用リード線の頻繁なる引っ張りによっても、導電性有機材料と剥離することなく強固に接合していた。また、この材料の電極は、接着性材料をホットメルトする際の熱溶融液化物と接触しても、その硬化を妨げられることがなく、優れた抵抗特性を長期間維持した。
【0027】
第3発明の発熱体は、特に第1の発明に用いる電極と導電性有機材料は、銀を主成分とする導電性付与材とポリエステル樹脂を少なくとも含有しており、導電性端子は錫メッキした銅箔からなり、接合材はスズを含むハンダとした。電極と導電性有機材料と導電性端子と接合材の材質を相互の関係より最適化したので、給電用リード線の頻繁なる引っ張りによっても、導電性有機材料は電極と剥離することなく強固に接合していた。またこのことで、導電性有機材料は、簡単な工法と品質管理を用いて硬化を行なうことができるようになる。
【0028】
第4発明の発熱体は、特に第1の発明に用いる有機性被覆材に設ける空隙は、導電性端子の中心部より外れた部分に設けられているとした。有機性被覆材に設ける空隙の位置を、導電性端子の中心部より外れた部分に設けると、ハンダなどの接合材による加熱の影響が、導電性端子の中心部より外れた部分に及ぶようになる。これにともない、この下部に有る導電性有機材料は、加熱の影響を中心部より外れた部分に受けるので、この局部的に受ける接着強度の影響が全体の接着強度に及ぶことが大きく低減し、給電用リード線が頻繁に引っ張られても、電極と剥離することなくこれらと強固に接合している。また、この
ことで、ハンダなどの接合材による加熱は、簡単な工法と品質管理を用いて行なうことができるようになる。
【0029】
第5発明の発熱体は、特に第1の発明に用いる接合材は、飽和ポリエステル樹脂を主成分とする有機性補強材でその周囲を被覆されているとした。接合材の周囲を、飽和ポリエステル樹脂を主成分とする有機性補強材で被覆すると、給電用リード線が頻繁に引っ張られても、導電性端子と剥離することなく強固に接合している。これは、有機性補強材として接着性と可撓性に優れた飽和ポリエステル樹脂を主成分とする材料を用いると、弾力性の有る有機性補強材となって給電用リード線の引っ張りを吸収して和らげるためと思われる。また、このことで、ハンダなどの接合材の接続熱は、簡単な工法と品質管理を用いて行なうことができるようになる。
【0030】
第6発明の発熱体は、特に第1の発明に用いる接着性材料は、その分子量が5000〜15万であるポリエステル樹脂を主成分とするとした。この分子量のポリエステル材料は、小さな高分子材料であるため分子が適度な自由性で動くことができ、耐ブロッキング性と接着性がさらに向上し、製造・検査の容易さと優れた加湿中耐久信頼性を有する。
【0031】
第7の発明の発熱体は、特に第1の発明に用いる接着性材料は、全多価カルボン酸のうち芳香族ジカルボン酸が25〜75モル%で脂環族ジカルボン酸が残部である、ポリエステル樹脂を主成分とする。
【0032】
ポリエステル材料は、多価カルボン酸(カルボン酸を多く含む有機酸の総称)成分と、多価アルコール(アルコールを多く含む有機酸の総称)成分の重縮合反応により生成した材料である。芳香族ジカルボン酸は、その量が多いほど耐加水分解性を向上させるが、ガラス転移温度や融点が上昇して高温での接着作業性を必要として製造がやや複雑になる。一方、脂環族ジカルボン酸は、その量が多いとガラス転移温度や融点を低下させて低温で接着作業性を行わせて製造が簡単になるが、逆にその量が低下すると接着性がやや低下する。この発明は、多価カルボン酸の組成を最適化して耐ブロッキング性と接着性をさらに向上させた接着性樹脂材であり、簡単な製造技術と品質管理技術を用いることで、生産性と信頼性を一層高めた発熱体が提供できる。
【0033】
第8の発明の発熱体は、特に第1の発明に用いる接着性材料は、全多価カルボン酸のうち、芳香族ジカルボン酸が45〜75モル%で、脂環族ジカルボン酸が45〜5モル%で、脂肪族ジカルボン酸が残部であるポリエステル樹脂を主成分とする。この発明は、多価カルボン酸の組成を最適化して耐ブロッキング性と接着性をさらに向上させた接着性樹脂材であり、簡単な製造技術と品質管理技術を用いることで、生産性と信頼性を一層高めた発熱体が提供できる。
【0034】
第9の発明の発熱体は、特に第7の発明もしくは第8の発明に用いる接着性材料のポリエステル材料は、多価アルコール成分のうち少なくとも分子量が250以上のポリアルキレングリコールが2〜20モル%であるとした。これは、多価カルボン酸の組成を最適化して耐ブロッキング性と接着性をさらに向上させた接着性樹脂材であり、簡単な製造技術と品質管理技術を用いることで、生産性と信頼性を一層高めた発熱体が提供できる。
【0035】
第10の発明の発熱体は、特に第1の発明に用いる基材が、結晶化核剤を用いて結晶化させた芳香族ジカルボン酸が主成分のポリエステル系材料であるとした。基材をこの材料組成とすると、接着性材料と親和して各々の特性が向上して、さらに簡単な製造技術と品質管理技術を用いることができ、生産性と信頼性を高めた発熱体が提供できる。
【0036】
第11の発明の発熱体は、特に第1の発明に用いる有機性コート材が、結晶化核剤を用
いて結晶化させた芳香族ジカルボン酸が主成分のポリエステル系材料であるとした。有機性コート材をこの材料組成とすると、接着性材料と親和して各々の特性が向上して、さらに簡単な製造技術と品質管理技術を用いることができ、生産性と信頼性を高めた発熱体が提供できる。
【0037】
第12の発明の発熱体は、特に第1の発明に用いる基材および有機性コート材が、ポリエチレンテレフタレートであるとした。基材および有機性コート材をポリエチレンテレフタレートとすると、接着性材料と親和して各々の特性が向上して、さらに簡単な製造技術と品質管理技術を用いることができ、生産性と信頼性を高めた発熱体が提供できる。
【0038】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。なお、本発明の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0039】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態である発熱体の断面図であり、(a)は発熱部分の部分断面図、(b)はリード線接続部分の部分断面図である。発熱体は、有機材料系の基材12と、基材12に形成した1対以上の電極13、14と、電極13、14の間に配置され少なくともその1部分を覆って積層される発熱可能な有機材料系の抵抗体15と、電極13、14と抵抗体15の全体を被覆する有機性被覆材16で構成される。この有機性被覆材16は、基材12の対向面側に形成されている有機材料系の接着性材料17と、これに積層された有機性コート材18で構成される。電極13、14は、硬化剤使用タイプのポリエステル樹脂を含有しており、その給電部分に導電性有機材料19を介して給電用の導電性端子20が積層される。抵抗体15は、熱可塑性材料に架橋材とカーボンブラックが混合された材料である。接着性材料17は、結晶化度を高めた難溶剤溶解性の硬化剤未使用タイプのポリエステル樹脂が主成分である。有機性被覆材16は、導電性端子20の外形寸法より小さい寸法の空隙21が設けられており、給電用リード線22が、空隙21を経由して導電性端子20に接合材23を用いて接合されている。
【0040】
発熱体の具体例を以下に記載する。まず、電極13、14を、125μm厚みのポリエチレンテレフタレートの基材12の片面に形成した。電極13、14は、共重合ポリエステル系樹脂とブロックイソシアネート系硬化剤を混合した結合材に、銀とカーボンからなる導電性付与材を分散した導電性銀ペーストであり、印刷乾燥によって10μm厚みとなっている。そして、熱硬化後の重量組成比は、銀粉81wt%とカーボン3wt%の導電性付与材と、共重合ポリエステル樹脂とイソシアネート系硬化剤を少なくとも含有している結合剤の16wt%とからなり、導電性付与剤/結合剤の組成比が84/16である。電極13、14は、主電極とこの主電極から分岐される枝電極から構成されており、枝電極が交互に位置するように配置されている。
【0041】
次に、有機材料系の抵抗体15を、既に形成された電極13、14の間に配置され少なくともその1部分を覆って積層されるように形成した。抵抗体15は、正抵抗温度特性を有する有機材料系の抵抗体であり、熱可塑性材料(エチレン酢酸ビニル共重合体を使用)と架橋材(ジクミルパーオキサイドを使用)とカーボンブラックの混練物をペースト化したものを、印刷乾燥により10μm厚みとして形成している。
【0042】
その後、電極13等の給電部分に、導電性銀ペーストからなる導電性有機材料19を介して、70μm厚みの銅箔に錫メッキした導電性端子20を積層し、電極13等と導電性端子20を接合した。導電性有機材料19は、ポリエステル材料とブロックイソシアネート系硬化剤を混合した結合材に導電性付与材として銀粉末を分散した材料である。
【0043】
さらにその上部に、有機性被覆材16を、基材12や電極13、14さらに抵抗体15
を被覆するように配置した。有機性被覆材16は、ポリエステル材料を主成分とした50μm厚みフィルムの接着性材料17と、ポリエチレンテレフタレートの125μm厚みの有機性コート材18で構成される材料である。有機性被覆材16は、接着性材料17の融点温度以上に温度設定されたラミネートロールによって、基材12や電極13、14さらに抵抗体15と熱融着して積層される。基材12を有機性被覆材16で覆い熱融着して気密構造とすることで、水分などが抵抗体15に付着しその抵抗値を変化させることが起こらない様にした。
【0044】
最後に、導電性端子20の外形寸法より小さい寸法の空隙21を有機性被覆材16にレーザ等で設け、導電性端子20を加熱し硬化させて電極13等に電気的物理的に接合し、給電用リード線22をこの空隙21を経由して導電性端子20にはんだの接合材23を用いて接合して完成である。
【0045】
効果特性は、次の様にして評価した。耐ブロッキング性は、接着性材料17を有機性コート材18に塗布してフィルムとしロール状に巻いた際に、ブロッキング(フィルムが一塊の接着ロールとなって使用できなくなる)が起こらないことを評価した指標である。◎は長期保存でもブロッキングが起こらないので離型紙なしで簡単にロールできる、○は短期間の保存ではブロッキングが起こらないが長期保存を考慮すると離型紙が必要、△は短期間の保存でもブロッキングが起こるため離型紙を介在させて対処したこと、×は不適格を表わす。
【0046】
接着の強さは、ラミネートにより基材12を有機性被覆材16で覆い熱融着して際の、接着性材料17の接着の強さを評価した指標である。◎は接着が極めて強いので気密シールが優れている、○は接着が強いので気密シールが良好である、△は接着が不充分なので気密シールが不充分であること、×は不適格を表わす。
【0047】
製造・検査の容易さは、接着性材料17を有機性コート材18に塗布してフィルムとしロール状に巻いて有機性被覆材16を形成する製造工程と、基材12と有機性被覆材16をラミネートして熱融着する工程の、製造し易さと検査の容易さを評価した指標である。◎は製造・検査が極めて容易である、○は製造・検査が容易である、△は製造・検査がやや複雑であること、×は不適格を表わす。
【0048】
加湿中耐久信頼性は、発熱体の40℃湿度90%雰囲気での耐久信頼性であり、◎は耐久信頼性が充分に優れている、○は耐久信頼性が良好である、△は耐久信頼性がやや不充分であること、×は不適格を表わす。
【0049】
本発明は、次の材料系を使用した発熱体である。電極13、14は、ポリエステル系材料とブロックイソシアネート系硬化剤を混合した結合材に、銀とカーボンからなる導電性付与材を分散した混練物である。抵抗体15は、熱可塑性材料としてエチレン酢酸ビニル共重合体を、架橋材としてジクミルパーオキサイドを用いて、カーボンブラックと混練した混練物である。接着性材料17は、硬化剤を使用しないタイプの結晶化度を高めた難溶剤溶解性のポリエステル材料であり、融点107℃で分子量3万である。この接着性材料17は、芳香族ジカルボン酸が60モル%で脂環族ジカルボン酸が残部の多価カルボン酸であり、多価アルコールのうち分子量が250以上のポリアルキレングリコールが5%を占める。基材12および有機性コート材18は、融点250℃のポリエチレンテレフタレートで、結晶化核剤を用いて結晶化させた芳香族ジカルボン酸が主成分のポリエステル系材料であるので、接着性材料17と比較して融点が高い。導電性有機材料19は、ポリエステル系材料とブロックイソシアネート系硬化剤を混合した結合材に導電性付与材として銀粉末を分散した材料、導電性端子20は錫メッキした銅箔、接合材23はハンダである。なお以後、この材料系を使用した発熱体は、特に記載がない限り、実施の形態1と記載
する。
【0050】
(表1)は、本発明の実施例および比較例の効果特性である。比較例1〜7は、電極13、14、抵抗体15、接着性材料17材質を異ならせた以外は、本発明の実施の形態1と同じ材料系である。本発明との相違点のみ説明する。比較例1は、硬化剤を使用して硬化させるタイプのポリエステル樹脂を接着性材料17として使用した例である。比較例2は、結晶化度が低い溶剤溶解性のポリエステル樹脂を接着性材料17として使用した例である。比較例3は、硬化剤を使用して硬化させるタイプであり結晶化度が低い溶剤溶解性のポリエステル樹脂を接着性材料17として使用した例である。比較例4は、架橋材を使用しない抵抗体15を使用した例である。比較例5は、硬化剤を使用しないタイプのポリエステル系の電極13、14と、架橋材を使用しない抵抗体15と、接着性材料17を使用しない例である。比較例6は、抵抗体と同じ材質の熱可塑性材料(エチレン酢酸ビニル共重合体)を接着性材料17として使用した例である。比較例7は、エポキシ樹脂の熱硬化性樹脂を使用した抵抗体15の例である。
【0051】
【表1】

【0052】
本発明は、比較例1〜7と比較して、耐ブロッキング性や接着性、製造検査簡易性さらに加湿中耐久信頼性が優れていることがわかる。その理由は、次のように考えられる。
【0053】
有機性被覆材16は、有機性コート材18に有機材料系の接着性材料17が形成されている構成である。この接着性材料17は、ホットメルト接着材が使用できるので、加熱してホットメルトすると溶融してすぐに固まって、基材12に良好に接着する。しかも、接着性材料17は、ポリエステル樹脂が主成分であるため接着力が強く、基材12と有機性
コート材18の接着の長期間にわたる耐久信頼性が確保でき、接着部分から抵抗体への水の浸入を完全に防止して、抵抗体15の水分付着による電気抵抗変化を起こらなくし、加湿耐久信頼性を向上させる。
【0054】
これに加えて、有機性被覆材16は、導電性端子20の外形寸法より小さい寸法の空隙21が設けられておりこの小さな空隙21を経由して、給電用リード線22が、電極13等に積層した導電性端子20に接合材23を用いて接合される構成である。給電用リード線22を通過させるために有機性被覆材16に設ける空隙21が、導電性端子20の外形寸法より小さい寸法であるため、有機性被覆材16が導電性端子20の外周部分を覆って強固に接着しここからの水の浸入を完全に防止して、抵抗体15の水分付着による電気抵抗変化を起こらなくして加湿耐久信頼性を向上させる。
【0055】
また、接着性材料17は、硬化剤を使用しないので線状の柔らかい非架橋型となっているうえに難溶剤溶解性としているので、耐ブロッキング性に優れておりロール状に巻取ったときにお互いがくっつくことがない。
【0056】
電極13、14は、銀やカーボンからなる導電性付与材と、加工性や接着性さらに電気絶縁性に優れたポリエステル樹脂と、これを硬化させるイソシアネートやスチレンさらにはメタクリル酸メチルエステルなどの硬化剤(架橋用単量体と呼ばれることも有り)が少なくとも含有される。電極13、14は、その上部に抵抗体15および有機性被覆材16が順々に積層される構造であるため、これら材料が順々に積層されて硬化のために加熱されるごとに、硬化がどんどん進んでゆき一層優れた電気導電性が得られる。一方、抵抗体15は、熱可塑性材料にカーボンブラックが混合された材料であるので、ホットメルトする際に溶融しても冷却すると元の形状に戻る良好な発熱体となっている。しかも、抵抗体15は、さらに架橋材を加えて架橋させた架橋型であるので3次元構造を持ち、この架橋型の3次元構造は、カーボンブラックどうしを強固に接触させてその導電経路が長期的に安定し、優れた耐久信頼性が確保できる。
【0057】
さて、電極13、14および抵抗体15は、その上部全体を有機性被覆材16で被覆してホットメルトされるので接着性材料17と接合するが、接着性材料17が硬化剤を使用しないタイプであるので、ホットメルトする際にその熱溶融液化物が電極13、14および抵抗体15に流動しても、電極13、14はその硬化を、抵抗体15はその架橋が妨げられることがなく、優れた抵抗特性を長期間維持する。これに加えて、接着性材料17は結晶化度を高めているため、ホットメルトする際にその熱溶融液化物が電極13、14や抵抗体15と接触すると、電極13、14や抵抗体15は、その結晶化度が高められて優れた耐久信頼性を長期間維持する。
【0058】
結晶性を高めた硬化剤未使用タイプの接着性材料17を有機性被覆材16に接合する技術と、この有機性被覆材16を用いて発熱体を製造する技術は、従来のブロッキング防止剤などを添加して接着性材料を形成する技術と比較して、簡単な製法と品質管理で製造できる。このため、本発明は、簡単な製造技術と品質管理技術を用いることで、生産性と信頼性を高めた発熱体が提供できる。
【0059】
なお、抵抗体15は、熱可塑性材料をポリフッ化ビニリデンまたはポリエチレンとし、これに架橋剤とカーボンブラックを混練した混練物でも同様の効果が得られた。また、基材12や有機性コート材18は、ポリカーボネート系またはポリアミド系を用いても同様の効果が得られた。
【0060】
接着性材料17の難溶剤溶解性は、トルエン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、酢酸エチルの単独またはこれら内の任意の複数種からなる任意の
混合比からなる混合溶媒の内のいずれか一種以上に25℃で3%以上溶解しないものをいう(濃度3%で加熱溶解後25℃で24時間保存後に、ゲル化または析出)。なお、実用上は、上記溶媒のいずれか一種以上に5%以上、より好ましくは10%以上、さらに好ましくは15%以上、最も好ましくは22%溶解しないことが望まれる。また、結晶化度を高めた接着性材料17は、結晶化度が25〜50%の材料をいい、熱可塑性樹脂に分類される飽和ポリエステル樹脂であるため、熱硬化しても元のフィルム形状に戻る利点があり、この利点は、電極13、14や抵抗体15と混合しない効果を生み出している。
【0061】
(実施の形態2)
実施例2は、電極13、14の材質について検討した内容である。電極13等は、その給電部分に導電性有機材料19を介して給電用の導電性端子20が積層されており、さらに導電性端子20にはハンダなどの接合材23を用いて、給電用リード線22が接合される構造である。給電用リード線22は、発熱体に電圧電流を供給するリード線であり、電圧電流供給時に頻繁に引っ張られる。電極13等の給電部分と導電性有機材料19は、この給電用リード線22の引っ張りによって剥離しないことが肝要であり、この影響を回避するため、ただ単に電極13、14の材質を決めると、複雑な工法と高度な品質管理を用いて硬化を行なわななければならない必要が生じる。これに加えて、電極13、14は、その上部に接着性材料17がホットメルトされた際の熱溶融液化物が積層されるので、この影響が回避できる材質としなければならない。
【0062】
これらのことを考慮して、電極の材質検討をおこなったところ、電極13、14は、銀粉を主成分とする導電性付与材と、共重合ポリエステル樹脂とイソシアネート系硬化剤を少なくとも含有している結合剤とからなり、導電性付与剤/結合剤の組成比が60/40〜95/5(硬化後の重量比)であるとすると、柔らかく優れたゴム弾性を持つ電極となった。この共重合ポリエステル樹脂を用いた電極13等は、その引張り強度が他の汎用電極と比較して格段に優れており、給電用リード線22の頻繁なる引っ張りによっても、導電性有機材料19と剥離することなく強固に接合していた。また、この材料の電極13等は、接着性材料17をホットメルトする際の熱溶融液化物と接触しても、その硬化を妨げられることがなく、優れた抵抗特性(導電性、耐屈曲性、耐熱性、耐湿性、耐熱衝撃性など)を長期間維持した。そしてこのことで、電極13、14は、簡単な工法と品質管理を用いて硬化を行なうことができるようになる。
【0063】
一方、導電性付与剤/結合剤の組成比は、60/40未満とすると、良好な導電性、耐屈曲性、耐熱性や耐湿性や耐熱衝撃性、耐引張り性等が得られず、好ましくなかった。また、95/5を越えると、耐屈曲性、密着性が低下して好ましくなかった。また、導電性付与剤/結合剤の組成比は、より好ましくは80/20〜90/10であり、この組成比とすると、極めて優れた導電性、耐屈曲性、耐熱性、耐湿性、耐熱衝撃性、耐引張り性が得られた。
【0064】
また、導電性付与材は、銀粉単独または銀粉を主体とするものが好ましい。銀粉の形状としては、フレーク状(リン片状)、球状、樹枝状(デンドライト状)、球状の1次粒子が3次元状に凝集した形状などがある。この内、フレーク状銀粉または、前述した球状の1次粒子が3次元状に凝集した形状の銀粉が、特に好ましい。フレーク状銀粉としては光散乱法による平均粒子径(50%D)が1〜15μmが好ましく、より好ましくは2〜8μm、さらに好ましくは2〜5μmである。銀粉の他にカーボンブラック、グラファイト粉などの炭素系のフィラー、金粉、白金粉、パラジウム粉などの貴金属粉、銅粉、ニッケル粉、アルミ粉、真鍮粉などの卑金属粉、銀などの貴金属でめっき、合金化した卑金属粉、シリカ、タルク、マイカ、硫酸バリウムなどの無機フィラー、などを銀粉に混合して使用できる。ただ、導電性や耐湿性さらにコスト面より、カーボンブラックおよび/またはグラファイト粉は、銀粉主体の全導電粉に20重量%以下、さらに好ましくは10重量%
以下で配合することが好ましい。
【0065】
共重合ポリエステル樹脂は、ポリエステル樹脂とイソシアネート系化合物を反応させ硬化させることで得られる。このポリエステル樹脂(A)と、イソシアネート系硬化剤となる樹脂(B)を混合して塗布液を調製する場合、樹脂(A)と樹脂(B)の重量比は(A):(B)=90:10〜10:90が好ましく、更に好ましくは(A):(B)=80:20〜20:80の範囲である。固形分重量に対する上記樹脂(A)の割合が10%未満では、基材12への塗布性が不適でその密着性が不十分であるので、酸化重合(あるいは溶剤)タイプのインキの密着性が悪くなった。一方、上記樹脂(B)の割合が10%未満の場合には、酸化重合(あるいは溶剤)タイプのインキによる印刷は可能であるが、実用性のあるインキの密着性が得られなかった。なお、共重合ポリエステル樹脂は、その分子鎖末端に水酸基とカルボキシル基を有するようにすることでも得られた。
【0066】
硬化剤として用いるイソシアネート化合物は、芳香族、脂肪族のジイソシアネート、3価以上のポリイソシアネートがあり、低分子化合物、高分子化合物のいずれでもよい。例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水素化ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートあるいはこれらのイソシアネート化合物の3量体、及びこれらのイソシアネート化合物の過剰量と、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ソルビトール、エチレンジアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の低分子活性水素化合物または各種ポリエステルポリオール類、ポリエーテルポリオール類、ポリアミド類の高分子活性水素化合物などと反応させて得られる末端イソシアネート基含有化合物が挙げられる。
【0067】
また、イソシアネート化合物は、特に、ブロック型イソシアネート基を含有する樹脂が最適である。これは、末端イソシアネート基を親水性基で封鎖(以下、これをブロックイソシアネート型と言う)した樹脂である。例えば、熱反応型の水溶性ウレタンを使用する場合で具体例を説明する。このブロック化されたイソシアネート基は、ウレタンプレポリマーを親水化あるいは水溶化する。製膜時の乾燥あるいは熱セットの過程で、上記樹脂(B)に熱エネルギーが与えられると、ブロック剤がイソシアネート基からはずれるため、上記樹脂(B)は自己架橋した網目に、混合した水分散性共重合ポリエステル樹脂(A)を固定化するとともに、上記樹脂(A)の末端基等とも反応する。塗布液調製時の樹脂(B)は、親水性であるため耐水性が悪いが、塗布、乾燥および熱セットして熱反応が完了すると、ウレタン樹脂(B)の親水基すなわちブロック剤がはずれるため、耐水性が良好な塗膜が得られる。上記親水性すなわちブロック剤のうち、熱処理温度および熱処理時間が適当で、工業的に広く用いられるものとしては、重亜硫酸塩類が最も好ましい。また、上記樹脂(B)において使用されるウレタンプレポリマーの化学組成としては、(1)分子内に2個以上の活性水素原子を有する分子量が200〜20000の化合物、(2)分子内に2個以上のイソシアネート基を有する有機ポリイソシアネート、(3)分子内に少なくとも2個の活性水素原子を有する鎖伸長剤を反応せしめて得られる末端イソシアネート基を有する化合物、である。
【0068】
また、ブロックイソシアネート化合物は、これ以外に例えば、フェノール、チオフェノール、メチルチオフェノール、エチルチオフェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシノール、ニトロフェノール、クロロフェノールなどのフェノール類、アセトキシム、メチルエチルケトオキシム、シクロヘキサノンオキシムなどのオキシム類、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール類,エチレンクロルヒドリン、1,3−ジクロロ−2−プロパノールなどのハロゲン置換アルコール類、t−ブタノール、t−ペンタノールなどの第三級アルコール類、ε−カプロラクタム、δ−バレロラクタ
ム、γ−ブチロラクタム、β−プロピロラクタムなどのラクタム類が使用される。またその他にも、芳香族アミン類、イミド類、アセチルアセトン、アセト酢酸エステル、マロン酸エチルエステルなどの活性メチレン化合物、メルカプタン類、イミン類、イミダゾール類、尿素類、ジアリール化合物類も挙げられる。これらは、硬化性よりオキシム類、イミダゾール類、アミン類が好ましい。これらの架橋剤には、その種類に応じて選択された公知の触媒あるいは促進剤を併用することもできる。
【0069】
(実施の形態3)
実施例3は、電極13、14と導電性有機材料19と導電性端子20と接合材23の材質について検討した内容である。導電性有機材料19は、給電用リード線22を接続する導電性端子20を、電極13等の給電部分に物理的電気的に接着する材料である。この給電用リード線22は、発熱体に電圧電流を供給するリード線でありハンダなどの接合材23を用いて導電性端子20に接続固定されているのであるが、電圧電流供給時に頻繁に引っ張られている。導電性有機材料19は、この給電用リード線22の引っ張りによって、電極13等の給電部分から剥離しないことが肝要であり、ただ単にこれらの材質を決めると、複雑な工法と高度な品質管理を用いて硬化を行なわななければならない必要が生じる。
【0070】
これらのことを考慮して、これらの材質検討をおこなった。その結果、電極13、14と導電性有機材料19は、銀を主成分とする導電性付与材とポリエステル樹脂を少なくとも含有しており、導電性端子20は錫メッキした銅箔からなり、接合材23はスズを含むハンダとすると、給電用リード線22の頻繁なる引っ張りによっても、電極13等と剥離することなく強固に接合していた。またこのことで、導電性有機材料19は、簡単な工法と品質管理を用いて硬化を行なうことができるようになった。
【0071】
これら材料は、汎用的な接合材23であるハンダが、スズを含みこれに各種金属を固溶溶させて融点190〜230℃としていることを考慮し、このハンダを使用することで給電用リード線22が簡単な工法と品質管理を用いて電極13等と強固に接合できる様に、その材質を最適に決めたものである。
【0072】
電極13、14と導電性有機材料19は、両者とも前述の実施の形態1と同じ材質であり、銀の単独または銀とカーボンを混合した導電性付与材と、加工性や接着性さらに電気絶縁性に優れたポリエステル樹脂と、これを硬化させるイソシアネートやスチレンさらにはメタクリル酸メチルエステルなどの硬化剤(架橋用単量体と呼ばれることも有り)が少なくとも含有される。これらは、実施の形態2と同じ組成系とすると良好であり、さらに同じ材質と組成とすると極めて良好であった。また、導電性有機材料19は、電極13等に接合される以前は未硬化の状態であるとすると、さらに簡単な工法と品質管理を用いて硬化を行なうことができるようになった。このことについて以下詳細に説明する。
【0073】
導電性樹脂材料19は、電極に接合される前は未硬化の状態であり、電極13等に熱接着した後に硬化させることにより、材料の本来の接着強度が発揮されるとした。これを実現するため、導電性有機材料19は、流動性を付与するための僅かな溶剤と、所定の温度(約50〜100℃の任意温度)以下で反応性を制限されるラジカル重合禁止剤(C)を含有している。このことで、未硬化の状態を長期に維持管理できるようになり、導電性有機材料19が形成された導電性端子20の保存期間を長くすることができた。そして、電極13等と接着後に、ラジカル重合禁止剤(C)のブロックが解除される温度以上で熱反応させることによって、共重合ポリエステルは硬化し、熱硬化した共重合ポリエステル本来の強固な接着強度が得られる。その組成配合比は、ポリエステル樹脂(A)、ポリイソシアネート(B)、ラジカル重合禁止剤(C)が、(A)/(B)/(C)=100/0.5〜30/0.001〜0.5(重量比)である。この組成にすることで、共重合ポリ
エステルは、硬化後も柔軟で変形にも強い接着強度が得られ、さらに簡単な工法と品質管理を用いて硬化を行なうことができるようになった。
【0074】
また、導電性端子20は、導電性有機材料19の側を疎面化した銅箔に錫メッキすると、さらに良好な接合が得られ、さらに簡単な工法と品質管理を用いて硬化を行なうことができるようになった。
【0075】
(実施の形態4)
実施例4は、有機性被覆材16に設ける空隙21の位置について検討した内容である。空隙21は、給電用リード線22を導電性端子20にハンダなどの接合材23を用いて接合するために、有機性被覆材16に設けて給電用リード線22を通過させる穴である。導電性端子20は、ハンダなどの接合材23で加熱されるため、その下部にある導電性有機材料19も同時に加熱される。このハンダなどの接合材23による加熱は、導電性有機材料19の導電性端子20および電極13等に対する物理的電気的な接着に影響を与えるため、この影響を回避するため、ただ単に空隙21の位置を決めると、複雑な工法と高度な品質管理を用いて加熱を行なう必要が生じる。
【0076】
図1に記載したように、有機性被覆材16に設ける空隙21の位置を、導電性端子20の中心部より外れた部分(例えば、中心部より右側部分)に設けると、ハンダなどの接合材23による加熱の影響が、導電性端子20の中心部より外れた部分に及ぶようになる。これにともない、この下部に有る導電性有機材料19は、加熱の影響を中心部より外れた部分に受けるので、この局部的に受ける接着強度の影響が全体の接着強度に及ぶことが大きく低減し、給電用リード線22が頻繁に引っ張られても、電極13等と剥離することなくこれらと強固に接合している。また、このことで、ハンダなどの接合材23による加熱は、簡単な工法と品質管理を用いて行なうことができるようになる。
【0077】
(実施の形態5)
実施例5は、給電用リード線22を接合する接合材23の周辺構造について検討した内容である。給電用リード線22は、電圧電流供給時に頻繁に引っ張られるので、導電性端子20から剥離しないことが肝要であり、この影響を回避するため、ただ単に接合材23を加熱すると、複雑な工法と高度な品質管理を用いて加熱を行なう必要が生じる。
【0078】
図1に記載したように、接合材23は、飽和ポリエステル樹脂を主成分とする有機性補強材24でその周囲を被覆されると、給電用リード線22が頻繁に引っ張られても、導電性端子20と剥離することなく強固に接合していた。これは、接着性と可撓性に優れた飽和ポリエステル樹脂を主成分とする材料を有機性補強材24として用いているため、有機性補強材24が有機性コート材18と良好に接着し、しかも弾力性の有るとなって給電用リード線22の引っ張りを吸収して和らげるためと思われる。また、このことで、ハンダなどの接合材23の接続熱は、簡単な工法と品質管理を用いて行なうことができるようになる。有機性補強材24で使用する飽和ポリエステル樹脂は、ポリブチレンテレフタレートまたはポリエチレンテレフタレートまたは接着性材料に使用した樹脂など、結晶性を有する熱可塑性樹脂に分類される樹脂であり、これをホットメルトしてその熱溶解物を接合材23の周囲に被覆し、冷却して固化した状態で使用される。さらに、有機性補強材24は、リンなどの難燃材を混合した樹脂を使用し、耐トラッキング性を向上されてもよい。
【0079】
(実施の形態6)
実施の形態6は、接着性材料17に使用するポリエステル系材料の分子量について検討した内容であり、(表2)は、その検討結果である。検討は、接着性材料17としてポリエステル系を使用しその分子量(重量平均分子量を使用)を変化させ、他は前述の実施の形態1と同じ材料系である発熱体で行なった。
【0080】
【表2】

【0081】
第6実施例は、接着性材料17を分子量が0.5万〜15万であるポリエステル系材料としているため、接着性材料17が、基材12および有機性コート材18と親和力を持って強固に接着するようになり、水分等の浸入を防止し、極めて優れた加湿中耐久信頼性を有するようになった。また、耐ブロッキング性や接着性、製造・検査も極めて優れていた。
【0082】
参考品は、接着性材料17を分子量が0.5万未満または、15万を超えるとしているため、各々の特性は優れるが、第6実施例と比較すると物足りない。
【0083】
なお、この結果は、基材12および有機性コート材18としてポリスチレンやポリカーボネート系を使用した同様の実施例でも同じであり、接着性材料17を分子量が0.5〜15万であるポリエステル系とすると、極めて優れた加湿中耐久信頼性、耐ブロッキング性、接着性、製造・検査、となった。また、抵抗体15は、熱可塑性材料をポリフッ化ビニリデンまたはポリエチレンとし、これに架橋剤とカーボンブラックを混練した混練物でも、同様の効果が得られた。
【0084】
(実施の形態7)
実施例7は、接着性材料17に使用するポリエステル材料を構成する全多価カルボン酸の内訳を検討した内容であり、(表3)は、その検討結果である。検討は、接着性材料17としてポリエステル系を使用しその全多価カルボン酸の組成を変化させ、他は前述の実施の形態1と同じ材料系である発熱体で行なった。
【0085】
【表3】

【0086】
第7実施例1〜5は、全多価カルボン酸(芳香族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸)のうち、芳香族ジカルボン酸が25〜75モル%で脂環族ジカルボン酸が残部である多価カルボン酸と、多価アルコールを重縮合反応させたポリエステル材料の接着性材料17を使用した発熱体である。これらは、耐ブロッキング性、接着性、製造・検査の容易さ、加湿中耐久信頼性が優れている。
【0087】
第7実施例の接着性材料17に用いたポリエステル材料は、多価カルボン酸の組成を適正化して融点が約90〜130℃としているため、結晶性が高まり、耐ブロッキング性と接着性と耐加水分解性が向上している。また、接着性材料17に使用したポリエステル材料の結晶性が高まることにともなって、抵抗体15も結晶性が高まりその耐久信頼性が向上する利点が生じている。さらに、この接着性材料17を形成してこれを被覆材に接合する技術とこの被覆材を用いて発熱体を製造する技術は、簡単な製法と品質管理で製造でき、生産性と信頼性を高めた発熱体が提供できた。
【0088】
比較例1は、全多価カルボン酸成分のうち、芳香族ジカルボン酸が75モル%を越えるポリエステル材料の接着性材料17を使用した発熱体である。このポリエステル材料は、耐ブロッキングは良好であるが接着性が不充分であり、しかも約190℃の融点をもっているため製造・検査が複雑となった。さらに、有機性被覆材16をラミネートロールによって基材12と熱融着する際に、高温でラミネートロールするため、耐久信頼性が低下していた。
【0089】
比較例2は、全多価カルボン酸のうち、芳香族ジカルボン酸が25モル%未満の接着性材料17を使用した発熱体である。このポリエステル材料を使用した発熱体は、いずれの特性も不充分であった。
【0090】
なお、この優れた効果は、基材12および有機性コート材18として、ポリアミド系やポリカーボネート系を使用した実施例でも、同様の優れた効果が得られた。さらに、抵抗体15は、熱可塑性材料をポリフッ化ビニリデンまたはポリエチレンとし、これに架橋剤とカーボンブラックを混練した混練物でも、同様の優れた効果が得られた。
【0091】
ポリエステル材料は、多価カルボン酸(カルボン酸を多く含む有機酸の総称)成分と、多価アルコール(アルコールを多く含む有機酸の総称)成分の重縮合反応により生成した材料である。
【0092】
芳香族ジカルボン酸は、環の中に共役二重結合を含んだ偶数個の炭素原子からなる炭化
水素環式物(芳香族炭化水素と称す)に、カルボン酸(COOHで表現される基)が2個付いた化合物である。その量が多いほど耐加水分解性を向上させるが、ガラス転移温度や融点が上昇して高温での接着作業性を必要として製造がやや複雑になる。具体的には、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボンル酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、2,2’−ジフェニルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸であり、これを適宜使用した。
【0093】
脂環族ジカルボン酸は、炭素原子が環状に結合しているがその環の中に二重結合がないかあっても芳香族化合物のように完全に共役していない炭化水素化合物(脂環族炭化水素と称す)に、カルボン酸が2個付いた化合物である。その量が多いとガラス転移温度や融点を低下させて低温で接着作業性を行わせて製造が簡単になるが、逆にその量が低下すると接着性がやや低下する。具体的には、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸とその酸無水物、4−メチル−1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、ダイマー酸、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、2,5−ノルボルネンジカルボン酸無水物、テトラヒドロ無水フタル酸等であり、これを適宜使用した。更に、p−ヒドロキシ安息香酸、p−(2−ヒドロキシエトキシ)安息香酸、あるいはヒドロキシピバリン酸、γ−ブチロラクトン、ε−カプロラクトン等のヒドロキシカルボン酸類も必要により使用した。脂環族ジカルボン酸を含むことにより、ポリエステル材料は適度な結晶性を保持することができ、ホットメルト接着剤等に用いる結晶性ポリエステル材料として適正な特性を示す。
【0094】
脂肪族ジカルボン酸は、脂環族ジカルボン酸のもつ特徴をさらに低下させた特性である。
【0095】
(実施の形態8)
実施例8は、接着性材料17に使用するポリエステル材料を構成する全多価カルボン酸の内訳をさらに検討した。(表4)は、その検討結果である。検討は、接着性材料17としてポリエステル系を使用しその全多価カルボン酸の組成を変化させ、他は前述の実施の形態1と同じ材料系である発熱体で行なった。実施の形態7と異なる点は、全多価カルボン酸を、芳香族ジカルボン酸と脂環族ジカルボン酸と脂肪族ジカルボン酸の3組成系にしたことである。
【0096】
【表4】

【0097】
第8実施例A〜Gは、全多価カルボン酸(芳香族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸)のうち、芳香族ジカルボン酸が45〜75モル%で脂環族ジカルボン酸が45〜5モル%で脂肪族ジカルボン酸が残部である多価カルボン酸と、多価アルコ
ールを重縮合反応させたポリエステル材料の接着性材料17を使用した発熱体である。
【0098】
この第8実施例A〜Gで使用するポリエステル材料は、耐ブロッキング性、接着性、製造・検査の容易さ、加湿中耐久信頼性が優れている。
【0099】
比較例10は、全多価カルボン酸成分のうち、芳香族ジカルボン酸が75モル%を越えるポリエステル材料の接着性材料17を使用した発熱体である。このポリエステル材料は、耐ブロッキングや接着性は良好であるが、約190℃の融点をもっているため製造・検査が複雑となった。さらに、有機性被覆材16をラミネートロールによって基材12と熱融着する際に、高温でラミネートロールするため、耐久信頼性が低下していた。
【0100】
比較例11は、全多価カルボン酸のうち、芳香族ジカルボン酸が45モル%未満の接着性材料17を使用した発熱体である。このポリエステル材料を使用した発熱体は、加湿中耐久信頼性がやや不充分であった。比較例12は、全多価カルボン酸のうち、芳香族ジカルボン酸が45モル%未満で脂肪族ジカルボン酸が45モル%を超えるポリエステル材料の接着性材料17を使用した発熱体である。このポリエステル材料は、いずれの特性も不充分であった。
【0101】
なお、この優れた効果は、基材12および有機性コート材18として、ポリアミド系やポリカーボネート系を使用した実施例でも、同様の優れた効果が得られた。さらに、抵抗体15は、熱可塑性材料をポリフッ化ビニリデンまたはポリエチレンとし、これに架橋剤とカーボンブラックを混練した混練物でも、同様の優れた効果が得られた。
【0102】
(実施の形態9)
実施例9は、接着性材料17に使用するポリエステル材料のうち、多価アルコールの内、分子量が250以上の物が占める割合について検討した。その結果を、(表5)(表6)に示す。検討は、接着性材料17としてポリエステル系を使用し、その多価アルコールの内、分子量が250以上の物が占める割合を変化させ、他は前述の実施の形態1と同じ材料系である発熱体で行なった。
【0103】
(表5)は、全多価カルボン酸のうち芳香族ジカルボン酸が75〜25モル%で脂環族ジカルボン酸が残部である組成物において、多価アルコールの分子量を異ならせた実施例である。
【0104】
【表5】

【0105】
芳香族ジカルボン酸が75モル%のグループ6〜9において、第9実施例7〜8は、分
子量が250以上の多価アルコールを2〜20モル%使用したものであり、20モル%を超えた比較品6、2モル%未満の比較品9と比べて、耐ブロッキング性、接着性、製造検査の簡易性、加湿中耐久信頼性が優れている。このことは、芳香族ジカルボン酸が25モル%のグループ10〜13でも同様であり、第9実施例11〜12は、比較品10と13と比べて、耐ブロッキング性、接着性、製造検査の簡易性、加湿中耐久信頼性が優れている。
【0106】
(表6)は、全多価カルボン酸のうち、芳香族ジカルボン酸が45〜75モル%で脂環族ジカルボン酸が45〜5モル%で脂肪族ジカルボン酸が残部である組成物において、多価アルコールの分子量を異ならせた実施例である。
【0107】
【表6】

【0108】
芳香族ジカルボン酸が75モル%系のH〜Kで本発明の効果を説明する。分子量が250以上の多価アルコールを2〜20モル%使用した第9実施例I〜Jは、この多価アルコールが20モル%を超えた比較品H、2モル%未満の比較品Kと比べて、耐ブロッキング性、接着性、製造検査の簡易性、加湿中耐久信頼性が優れている。このことは、芳香族ジカルボン酸が45モル%のグループL〜Oでも同様であり、第9実施例M〜Nは、比較品LとOと比べて、耐ブロッキング性、接着性、製造検査の簡易性、加湿中耐久信頼性が優れている。
【0109】
多価アルコール成分のうち少なくとも分子量が250以上のポリアルキレングリコールを2〜20モル%とした第9実施例は、20モル%を超える参考品や2モル%未満の参考品と比較して、耐ブロッキング性および接着性が優れていることがわかる。なお、この優れた効果は、基材12および有機性コート材18として、ポリアミド系やポリカーボネート系を使用した実施例でも、同様の優れた効果が得られた。さらに、抵抗体15は、熱可塑性材料をポリフッ化ビニリデンまたはポリエチレンとし、これに架橋剤とカーボンブラックを混練した混練物でも、同様の優れた効果が得られた。
【0110】
多価アルコールについて説明する。多価アルコールの内、分子量が250未満のものは、炭素数2〜10の脂肪族グリコ−ル、炭素数が6〜12の脂環族グリコ−ル、これらのエ−テル結合含有グリコ−ルよりなる。炭素数2〜10の脂肪族グリコ−ルは、エチレングリコ−ル、1,2−プロピレングリコ−ル、1,3−プロパンジオ−ル、1,4−ブタンジオ−ル、1,2−ブタンジオ−ル、1,3−ブタンジオ−ル、2,3−ブタンジオ−ル、1,5−ペンタンジオ−ル、2−メチル−1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコ−ル、1,6−ヘキサンジオ−ル、3−メチル−1,5−ペンタンジオ−ル、1,
9−ノナンジオ−ル、2−エチル−2−ブチルプロパンジオール、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステル、ジメチロールヘプタン、グリセリンモノアリルエーテル、トリメチロールプロパンモノアリルエーテル、ダイマージオール、水添ダイマージオールであり、これを適宜使用した。炭素数6〜12の脂環族グリコ−ルは、1,4−シクロヘキサンジメタノ−ル、トリシクロデカンジメチロール、シクロヘキサンジオール、ビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物、水添ビスフェノールA であり、これを適宜使用した。エ−テル結合含有グリコ−ルとしては、ジエチレングリコ−ル、トリエチレングリコ−ル、ジプロピレングリコ−ルである。一方。分子量が250以上の多価アルコールは、ポリテトラメチレングリコール、ポリプロピレングリコールであり、これらポリアルキレングリコールを適宜使用した。この中で特に、ポリテトラメチレングリコールは、初期接着力と耐加水分解性の観点で好ましく、その分子量は250〜3000であった。
【0111】
(実施の形態10)
実施の形態10は、基材12の材質について検討した内容であり、(表7)は、その検討結果である。検討は、基材12として、製造履歴が異なる結晶性を高めた芳香族ジカルボン酸が主成分のポリエステル系材料を使用した以外は、前述の実施の形態1と同じ材料系である発熱体で行なった。
【0112】
【表7】

【0113】
第10実施例は、結晶化核剤を用いて結晶化させた芳香族ジカルボン酸が主成分のポリエステル系材料を、基材12として使用した発熱体である。この第10実施例は、極めて優れた加湿中耐久信頼性、耐ブロッキング性、接着性、製造・検査の簡易性となった。この理由は、接着性材料17に使用するポリエステル材料と、基材12に使用する芳香族ジカルボン酸を多数有するこの結晶性耐熱ポリエステル材料が、お互いが親和して各々の特性が向上するためと思われる。
【0114】
なお、この優れた効果は、接着性材料17として、前述のように全多価カルボン酸や多価アルコールの組成を異ならせたポリエステル系組成物を使用しても、同様に得られた。また、有機性コート材18として、ポリアミド系やポリカーボネート系を使用した実施例でも、同様の良好な効果が得られた。さらに、抵抗体15は、熱可塑性材料をポリフッ化ビニリデンまたはポリエチレンとし、これに架橋剤とカーボンブラックを混練した混練物でも、同様の優れた効果が得られた。
【0115】
(実施の形態11)
実施の形態11は、有機性コート材18の材質について検討した内容であり、前述の(表7)は、その検討結果である。検討は、有機性コート材18として、製造履歴が異なる芳香族ジカルボン酸が主成分のポリエステル系材料を使用した以外は、前述の実施の形態1と同じ材料系である発熱体で行なった。
【0116】
第11実施例は、結晶化核剤を用いて結晶化させた芳香族ジカルボン酸が主成分のポリエステル系材料を、有機性コート材18として使用した発熱体である。この第11実施例は、極めて優れた加湿中耐久信頼性、耐ブロッキング性、接着性、製造・検査の簡易性となった。この理由は、接着性材料17に使用するポリエステル材料と、有機性コート材18に使用する芳香族ジカルボン酸を多数有するこの結晶性耐熱ポリエステル材料が、お互いが親和して各々の特性が向上するためと思われる。
【0117】
なお、この優れた効果は、接着性材料17として、前述のように全多価カルボン酸や多価アルコールの組成を異ならせたポリエステル系組成物を使用しても、同様に得られた。また、基材12として、ポリアミド系やポリカーボネート系を使用した実施例でも、同様の良好な効果が得られた。さらに、抵抗体15は、熱可塑性材料をポリフッ化ビニリデンまたはポリエチレンとし、これに架橋剤とカーボンブラックを混練した混練物でも、同様の優れた効果が得られた。
【0118】
(実施の形態12)
実施の形態12は、基材12および有機性コート材18の材質について検討した内容であり、(表8)は、その検討結果である。検討は、基材12および有機性コート材18として、材質が異なる芳香族ジカルボン酸が主成分のポリエステル系材料を使用した以外は、前述の実施の形態1と同じ材料系である発熱体で行なった。
【0119】
【表8】

【0120】
第12実施例は、ポリエチレンテレフタレート(略称、PET)を基材12および有機性コート材18として使用した発熱体である。この第12実施例は、極めて優れた加湿中耐久信頼性、耐ブロッキング性、接着性、製造・検査の簡易性となった。この理由は、接着性材料17に使用するポリエステル材料と、基材12および有機性コート材18に使用する芳香族ジカルボン酸を多数有するこの結晶性耐熱ポリエステル材料が、お互いが親和して各々の特性が向上するためと思われる。
【0121】
なお、この優れた効果は、接着性材料17として、前述のように全多価カルボン酸や多価アルコールの組成を異ならせたポリエステル系組成物を使用しても、同様に得られた。また、抵抗体15は、熱可塑性材料をポリフッ化ビニリデンまたはポリエチレンとし、これに架橋剤とカーボンブラックを混練した混練物でも、同様の優れた効果が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0122】
本発明の発熱体は、暖房、乾燥、加熱などの熱源として用いることのできる。
【図面の簡単な説明】
【0123】
【図1】(a)本発明の実施の形態1の発熱体の発熱部分の部分断面図(b)同発熱体のリード線接続部分の部分断面図
【図2】(a)従来の発熱体の発熱部分の部分断面図(b)同発熱体のリード線接続部分の部分断面図
【符号の説明】
【0124】
12 基材
13、14 電極
15 抵抗体
16 有機性被覆材
17 接着性材料
18 有機性コート材
19 導電性有機材料19
20 導電性端子
21 空隙
22 給電用リード線
23 接合材
24 有機性補強材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機材料系の基材と、前記基材に形成した1対以上の電極と、前記電極の間に配置され少なくともその1部分を覆って積層される発熱可能な有機材料系の抵抗体と、前記電極と前記抵抗体の全体を被覆する有機性被覆材を少なくとも備え、前記電極は、硬化剤使用タイプのポリエステル樹脂を含有しておりその給電部分に導電性有機材料を介して給電用の導電性端子が積層され、前記抵抗体は、熱可塑性材料に架橋材とカーボンブラックが混合された材料であり、前記有機性被覆材は、前記基材の対向面側に形成される有機材料系の接着性材料とこれに積層された有機性コート材で構成され、前記接着性材料は、結晶化度を高めた難溶剤溶解性の硬化剤未使用タイプのポリエステル樹脂が主成分であり、前記有機性被覆材は、前記導電性端子の外形寸法より小さい寸法の空隙が設けられており、給電用リード線が、前記空隙を経由して前記導電性端子に接合材で接合される発熱体。
【請求項2】
電極は、銀粉を主成分とする導電性付与材と、共重合ポリエステル樹脂とイソシアネート系硬化剤を少なくとも含有している結合剤とからなり、前記導電性付与剤/前記結合剤の組成比が60/40〜95/5(硬化後の重量比)である請求項1に記載の発熱体。
【請求項3】
電極と導電性有機材料は、銀を主成分とする導電性付与材とポリエステル樹脂を少なくとも含有しており、導電性端子は錫メッキした銅箔からなり、接合材はスズを含むハンダからなる請求項1に記載の発熱体。
【請求項4】
有機性被覆材に設ける空隙は、導電性端子の中心部より外れた部分に設けられている請求項1に記載の発熱体。
【請求項5】
接合材は、飽和ポリエステル樹脂を主成分とする有機性補強材でその周囲を被覆されている請求項1に記載の発熱体。
【請求項6】
接着性材料は、その分子量が5000〜15万であるポリエステル樹脂を主成分とする請求項1に記載の発熱体。
【請求項7】
接着性材料は、全多価カルボン酸のうち芳香族ジカルボン酸が25〜75モル%で脂環族ジカルボン酸が残部である、ポリエステル樹脂を主成分とする請求項1に記載の発熱体。
【請求項8】
接着性材料は、全多価カルボン酸のうち芳香族ジカルボン酸が45〜75モル%で脂環族ジカルボン酸が45〜5モル%で脂肪族ジカルボン酸が残部である、ポリエステル樹脂を主成分とする請求項1に記載の発熱体。
【請求項9】
接着性材料は、多価アルコール成分のうち、少なくとも分子量が250以上のポリアルキレングリコールが2〜20モル%である、ポリエステル材料を主成分とする請求項7または8に記載の発熱体。
【請求項10】
基材は、結晶化核剤を用いて結晶化させた芳香族ジカルボン酸が主成分のポリエステル系材料を主成分とする請求項1に記載の発熱体。
【請求項11】
有機性コート材は、結晶化核剤を用いて結晶化させた芳香族ジカルボン酸が主成分のポリエステル系材料を主成分とする請求項1に記載の発熱体。
【請求項12】
基材および有機性コート材が、ポリエチレンテレフタレートを主成分とする請求項1に記載の発熱体。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−147111(P2008−147111A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−335394(P2006−335394)
【出願日】平成18年12月13日(2006.12.13)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】