説明

発熱剤

【目的】粉体アルミニュームと粉体酸化カルシュームから成る発熱剤の、発熱までの立上がり時間を短縮し、発熱量を大きくし、高熱保持時間を延長する。
【解決手段】平均粒径が40〜60μmで、粒度分布が、−330メッシュ(−45μm)が35〜60%、+330メッシュ(+45μm)が15〜30%、+235メッシュ(+63μm)が5〜15%>、+200メッシュ(+75μm)が10〜20%、+140メッシュ(+106μm)が7%>、+100メッシュ(+150μm)が1%>、+70メッシュ(+212μm)が0%の粉体アルミニューム23.3gと、粉体酸化カルシューム11.7gを混合して総質量35gの発熱剤とし、70ccの水と反応させ、8秒後に95.2℃の高温水蒸気を発生させ、80℃に降下するまで25分間維持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発熱剤に関する。より詳細に述べれば、本発明は、粉体アルミニュームと粉体酸化カルシュームを特定の比率で配合した発熱剤であって、水と反応して発熱する発熱剤において、粉体アルミニュームの粒径と粒度分布を特定の範囲に数値限定することにより、発熱効率と発熱持続時間を延長させたことを特徴とする発熱剤に関する。
【背景技術】
【0002】
本願出願人が保有する特許第3467729号明細書(特許文献1)は、「発熱剤の質量当たり、100メッシュ(−150μm90%以上)乃至200メッシュ(−75μm95%以上)の粉体酸化カルシュームが15乃至30%,及び−330メッシュ(−45μm)が40乃至60%,+330メッシュ(+45μm)が15乃至30%,+235メッシュ(+63μm)が15%>、+200メッシュ(+75μm)が10%>の粒度分布を有する粉体アルミニューム70乃至85%から成る発熱剤。」を開示している。
【0003】
以下の説明において、粒度分布の数字の前に付した(−)は、「以下」或いは「pass」の意味である。従って、たとえば、−330メッシュは、330メッシュ以下或いは330メッシュpass、及び−45μmは、40μm以下或いは40μmpassの意味である。
また、各種反応機構、化学反応速度論、熱力学等に関する説明、および主要な用語の定義等が、特許文献1に記載されているものと同じ場合には、本明細書では、それらを割愛することがある。
【0004】
特許文献1に開示されている発熱剤は、開発に成功して以来多種多様な用途に使用されている。最も重要な用途は、災害対策基本法により、大規模災害に備えて地方自治体等で備蓄されている非常食、駅弁或いは自衛隊の戦闘糧食のように、調理済み食品を、時や場所を選ばずに加熱して調理直後の状態として喫食する加熱装置としての使用である。
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示されている発熱剤を、調理済み食品の加熱装置として使用する場合、いくつかの改良すべき課題があることが判明した。最も重要な課題は、発熱までの立ち上がり時間をできるだけ短くすること、および発熱時間をできるだけ延長することである。これは、たとえば駅弁のような場合における、購入してから、できるだけ早く喫食したいとする購入者の要望や、戦闘糧食を寒冷地で使用する場合における、発熱までの立ち上がり時間をできるだけ短くすると同時に、発熱時間をできるだけ延長して欲しいとする要望を反映してのことである。
【0006】
本発明者は、特許文献1に開示されている発熱剤の発熱までの立ち上がり時間をできるだけ短くし、発熱量を大きくし、かつ発熱時間をできるだけ延長することについて、検討したが、このことは、特許文献1に記載されているアルミニュームの粒度分布では、不可能なことが分かった。
【0007】
その理由について説明する。
特許文献1に記載されている粉体アルミニュームの粒度分布は、次の通りである。
イ。−330メッシュ(−45μm)が40乃至60%,
ロ。+330メッシュ(+45μm)が15乃至30%,
ハ。+235メッシュ(+63μm)が15%>
ニ。+200メッシュ(+75μm)が10%>
すなわち、330メッシュ以下(45μm以下)という小さな粒子が40〜60%も占めていて、その平均粒径を計算すると、30〜55μmの範囲である。
【0008】
化学反応速度論に関して衝突説(Collision theory of reaction rate)を展開したアレニウス(Arrhenius)は、速度定数kを次式(1)で表している。
k=Aexp(-Ea/RT) (1)
ここで、Aは、頻度因子(全衝突回数に対する有効衝突回数の割合)、Eaは、活性化エネルギー、Rは気体定数、Tは絶対温度である。このアレニウスの式の自然対数をとると、式(1)は下記のようになる。
lnk=lnA-(Ea/RT) (2)
この式から、頻度因子Aの値が大きくなればなるほど、反応速度定数が大きくなること、つまり、反応速度が大きくなることが分かる。
【0009】
ところで、化学反応速度論において、反応速度とは、物質の移動が問題になるのではなくて、物質の変化の速度が問題になるのである。
たとえば、反応 A→B について、反応速度Vは、反応物Aの濃度[A]の減少率としても、生成物Bの濃度[B]の増加率としても定義できる。
v=-d[A]/dt=d[B]/dt
【0010】
上に概説したアレニウスの説を適用すると、水(H2O)を介して、反応物であるアルミニューム(Al)と酸化カルシューム(CaO)の接触面積が大きくなればなるほど、衝突する頻度が大きくなり、アルミニューム(Al)と酸化カルシューム(CaO)の濃度が減少し、反応速度が大きくなることが分かる。従って、アルミニューム(Al)と酸化カルシューム(CaO)の接触面積を大きくするには、それぞれの粒度をできるだけ小さくして、全表面積を大きくしなければならないことが分かる。
【0011】
アレニウスの式は、気体イオン反応などの一部の高速度反応を除き、均一気相および液相、不均一接触反応、固相反応などの一般化学反応はもちろん、拡散および粘性などの輸送現象にも広く成立する。
【0012】
酸化カルシュームとアルミニュームから成る発熱剤で採用している反応は、固相である酸化カルシューム(CaO)とアルミニューム(Al)と、液相である水(H2O)との不均一系反応である。不均一系反応の場合、反応はそれぞれの相の界面で進行する。従って、反応速度は界面の大きさ(総面積)に関係する。また、反応条件によっては、反応物質の界面への拡散、或いは生成物の界面からの拡散過程が速度を支配する因子となることがる。表面積が大きくなるほど、不均一系反応の場合、それぞれの相の界面の大きさ、すなわち、表面積が大きいほど、反応速度が大きいことになる。
【0013】
アレニウスの理論は、アルミニューム(Al)粒子や酸化カルシューム(CaO)粒子が、水との発熱反応の過程で、粒子同士が水を介して凝集又は会合を起こさないということを前提としている。不均一系反応で、同一の粒子同士が凝集又は会合を起こすと、いわゆる異常液体(会合液体)となる。異常液体になると、粒子は運動の自由度が束縛されているので、温度の上昇、蒸発により、蒸発エントロピーに関するトルートンの法則(Trouton's rule)や表面張力に関するエートベシュの式(Eotvos' equation)又はラムゼー=シールズの式(Ramsay-Shields' equation)に従う正常液体に比較して、かなり大きいエントロピーの増加を示す。このような異常液体になると、分子間相互作用が大きいため、密度や粘度が大きくなり、粒子同士の衝突頻度が低くなり、反応速度が小さくなり、発熱までの立ち上がり時間が長くなり、発熱量が小さくなるのである。
【0014】
分子の凝集又は会合現象を無視したアレニウス(Arrhenius)の分子衝突理論に基づくと、アルミニューム(Al)と酸化カルシューム(CaO)の接触面積を大きくするには、それぞれの粒度をできるだけ小さくして、全表面積を大きくすればよい。しかしながら、特許文献1公報に記載されている発明のように、330メッシュ以下(45μm以下)のように、小さな粒子が大半、すなわち40〜60%を占めている場合、搬送中或いは発熱反応の過程で粒子同士が、水を介して凝集或いは会合を起こすために、反応物であるアルミニューム(Al)と酸化カルシューム(CaO)の衝突頻度が抑制され、反応速度が小さくなり、発熱までの立ち上がり時間が長くなり、発熱量が小さくなるのである。
【特許文献1】特許第3467729号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
発明が解決しようとする主たる課題は、特定の粒度分布を有する粉体アルミニュームと粉体酸化カルシュームを、特定の比率で配合した発熱剤であって、水と反応して発熱する発熱剤において、粉体アルミニュームの粒度分布を特定の範囲に数値限定することにより、発熱剤の発熱までの立ち上がり時間をできるだけ短くし、発熱量を大きくし、かつ発熱時間をできるだけ延長することである。
【0016】
発明が解決しようとする別の課題は、特定の粒度分布を有する粉体アルミニュームと粉体酸化カルシュームを特定の比率で配合した発熱剤であって、水と反応して発熱する発熱剤において、粉体アルミニュームの粒度分布を特定の範囲に数値限定することにより、発熱剤の搬送中または貯蔵中、或いは水との発熱反応過程で粉体アルミニュームが凝集するのを防止して、粉体アルミニュームの使用効率を高め、発熱剤の発熱までの立ち上がり時間をできるだけ短くし、発熱量を大きくし、かつ発熱時間をできるだけ延長することである。
【0017】
発明が解決しようとするさらに別の課題は、特定の粒度分布を有する粉体アルミニュームと粉体酸化カルシュームを特定の比率で配合した発熱剤であって、水と反応して発熱する発熱剤において、粉体アルミニュームの粒度分布を特定の範囲に数値限定することにより、発熱剤の搬送中または貯蔵中、或いは水との発熱反応過程で粉体アルミニュームが凝集するのを防止して、粉体アルミニュームの使用効率を高め、発熱剤の発熱までの立ち上がり時間をできるだけ短くし、発熱量を大きくし、かつ発熱時間をできるだけ延長することにより、調理済み食品の加熱効率を高め、戦闘糧食のような特殊な用途にまで、その用途を拡大することである。
【0018】
特許文献1に記載された発熱剤は、「発熱剤の質量当たり、100メッシュ(−150μm90%以上)乃至200メッシュ(−75μm95%以上)の粉体酸化カルシュームが15乃至30%、及び−330メッシュ(−45μm)が40〜60%、+330メッシュ(+45μm)が15〜30%、+235メッシュ(+63μm)が15%>、+200メッシュ(+75μm)が10%>の粒度分布を有する粉体アルミニューム70乃至85%から成る発熱剤。」である。
【0019】
このアルミニュームの平均粒径を計算すると、30〜55μmであり、粒度分布は、45μm以下の粒子が40〜60%と、構成する粒子群の大半を占めている。従って、水を介在して凝集或いは会合を起こすために、反応物であるアルミニューム(Al)と酸化カルシューム(CaO)の衝突頻度が抑制され、反応速度が小さくなり、発熱までの立ち上がり時間が長くなり、発熱量が小さくなるのである。
【0020】
本発明者は、粉体アルムニウムを主剤とし、酸化カルシュウムを副剤として含有する発熱剤において、小径粒子、中径粒子および大径粒子が適度に混合した粉体アルミニュームを使用することにより、水を介して粉体アルムニウムが凝集或いは会合を起こすのを防止することができ、反応速度を大きくし、発熱までの立ち上がり時間を短縮し、総発熱量を大きくすることができると考え、化学反応速度論および熱力学に関する理論、および経済性の観点から、発熱剤の原料として使用可能な粒度分布および平均粒径を有する粉体アルミニュームを策定した。
尚、「主剤」および「副剤」は、本願出願人が保有する特許第3467729号公報(特許文献1)にそれらの定義を説明したので、割愛する。
【0021】
その結果、5〜10μm、15〜20μm、20〜25μm、20〜30μm、25〜30μm、40〜60μm、85〜115μm、160〜200μm、および530〜680μmから成る群から選択された範囲の平均粒径を有する粉体アルミニュームを少なくとも1種含むアルミニュームを使用すれば、小径粒子、中径粒子および大径粒子が適度に混合することになり前記課題が解決できることを発見した。
【0022】
以下、本発明で使用される粉体アルミニュームの粒度分布とその平均粒径を例示する。尚、粒度分布を有する粒子の平均粒径は、複雑な計算を必要とし、計算の仕方によっては、必ずしも一致しない場合があることは、当業者の理解するところである。
【0023】
本発明で使用される粉体アルミニュームの粒度分布としては、−330メッシュ(−45μm)が98%<、+330メッシュ(+45μm)が1%>、+235メッシュ(+63μm)が1%>、+200メッシュ(+75μm)がtrのものが例示される。この粒度分布の平均粒径は、5〜10μmの範囲である。
【0024】
さらに、粉体アルミニュームの粒度分布として、−330メッシュ(−45μm)が100%、+330メッシュ(+45μm)が0%のものが例示される。この粒度分布の平均粒径は、15〜20μmの範囲である。
【0025】
さらに、粉体アルミニュームの粒度分布として、−330メッシュ(−45μm)が96%<、+330メッシュ(+45μm)が5%>、+235メッシュ(+63μm)が1%>、+200メッシュ(+75μm)が1%>、+140メッシュ(+106μm)が0%のものが例示される。この粒度分布の平均粒径は、20〜25μmの範囲である。
【0026】
さらに、粉体アルミニュームの粒度分布として、−330メッシュ(−45μm)が70〜90%、+330メッシュ(+45μm)が30%>、+235メッシュ(+63μm)が3%>、+200メッシュ(+75μm)が2%>、+140メッシュ(+106μm)が1%>、+100メッシュ(+150μm)が0%のものが例示される。この粒度分布の平均粒径は、20〜30μmの範囲である。
【0027】
さらに、粉体アルミニュームの粒度分布として、−330メッシュ(−45μm)が98%<、+330メッシュ(+45μm)が10%>、+235メッシュ(+63μm)が2%>、+200メッシュ(+75μm)が1%>、+140メッシュ(+106μm)がtrのものが例示される。この粒度分布の平均粒径は、25〜30μmの範囲である。
【0028】
さらに、粉体アルミニュームの粒度分布として、−330メッシュ(−45μm)が35〜60%、+330メッシュ(+45μm)が15〜30%、+235メッシュ(+63μm)が5〜15%>、+200メッシュ(+75μm)が10〜20%、+140メッシュ(+106μm)が7%>、+100メッシュ(+150μm)が1%>、+70メッシュ(+212μm)が0%のものが例示される。この粒度分布の平均粒径は、40〜60μmの範囲である。
【0029】
さらに、粉体アルミニュームの粒度分布として、+330メッシュ(+45μm)が1%>、+235メッシュ(+63μm)が15%>、+200メッシュ(+75μm)が40〜70%、+140メッシュ(+106μm)が30〜50%、+100メッシュ(+150μm)が3%>、+70メッシュ(+212μm)が0%のものが例示される。この粒度分布の平均粒径は、85〜115μmの範囲である。
【0030】
さらに、粉体アルミニュームの粒度分布として、+235メッシュ(+63μm)が3%>、+200メッシュ(+75μm)が20〜40%、+140メッシュ(+106μm)が20〜35%、+100メッシュ(+150μm)が20〜30%、+70メッシュ(+212μm)が10〜35%、+36メッシュ(+425μm)が2%>のものが例示される。この粒度分布の平均粒径は、110〜190μmの範囲である。
【0031】
さらに、粉体アルミニュームの粒度分布として、+235メッシュ(+63μm)が2%>、+200メッシュ(+75μm)が5%>、+140メッシュ(+106μm)が15〜30%、+100メッシュ(+150μm)が20〜40%、+70メッシュ(+212μm)が30〜55%、+36メッシュ(+425μm)が5%>、+26メッシュ(+600μm)が0%のものが例示される。この粒度分布の平均粒径は、160〜200μmの範囲である。
【0032】
さらに、粉体アルミニュームの粒度分布としては、+100メッシュ(+150μm)が1%>、+70メッシュ(+212μm)が15%>、+36メッシュ(+425μm)が40〜60%、+26メッシュ(+600μm)が20〜40%、+18メッシュ(+880μm)が10〜25%のものが例示される。この粒度分布の平均粒径は、530〜680μmの範囲である。
【0033】
本発明の発熱剤の副剤である酸化カルシューム(生石灰)に関して説明する。 酸化カルシュームは、各種の品級のものが入手できるが、反応速度を高め且つなるべく大量の反応熱を得るためにも、本発明で使用される酸化カルシュームはできるだけ不純物が少ないものが好ましく、たとえば、CaO含量が90%以上で不純分が3.2%以下、CO2が2.0%以下、より好ましくは、CaO含量が93%以上で不純分が3.2%以下、CO2が2%以下、最も好ましくは、CaO含量が95%以上で不純分が1.8%以下、CO2が0.9%以下のものである。
【0034】
本発明で使用される粉体酸化カルシュームは、主剤である粉体アルミニュームの平均粒径である5〜10μm、15〜20μm、20〜25μm、20〜30μm、25〜30μm、40〜60μm、85〜115μm、160〜200μm、或いは530〜680μmに、それぞれ合わせた平均粒径の酸化カルシュームを使用することが理想的である。
【0035】
しかしながら、使用する粉体酸化カルシュームの平均粒径を、粉体アルミニュームの平均粒径に対応させることは、コストを上昇させ、その結果、発熱剤を実用に耐えない高価なものにする。従って、5〜680μmと大きな範囲にある平均粒径を有する酸化カルシュームを使用することが好ましい。さらに、汎用性という点から、+70メッシュ(+212μm90%以上pass)〜−330メッシュ(−45μm90%以上pass)の粒度範囲のものが好ましい。また、使い易さおよびコストの点からは、100メッシュ(+150μm90%以上)〜200メッシュ(+75μm90%以上pass)の粒度範囲のものが好ましい。さらに、発熱効率の点からは、200メッシュ(+75μm90%以上pass)〜−130メッシュ(−45μm90%以上pass)の粒度範囲のものが好ましい。
【0036】
本発明における酸化カルシュームと水との反応、及び酸化カルシュームと水との反応によって生成される水酸化カルシュームとアルミニュームとの反応機構を説明する。酸化カルシュームは下記の反応により水と反応して多量の熱を発生しながら水酸化カルシュームを生成する:
CaO+H2O=Ca(OH)2+15.2Kcal (1)
発熱量をグラム当たりに換算すると、CaOの分子量は56.08であるので、271cal/gになる。
【0037】
(1)の反応の結果、水溶液は生じた水酸化カルシュームの加水分解の結果、強いアルカリ性を呈す。
【0038】
一方、アルミニュームは、下記の式(2)に従って水酸化カルシュームと急激に反応してアルミン酸カルシュームと水素を与える:
2Al+3Ca(OH)2=3CaO・Al23+3H2↑ (2)
この時発生する反応熱は約47k/calである。Alの分子量は26.98であるので、約871cal/gになる。
【0039】
従って、酸化カルシューム1グラムとアルミニューム1グラムを使用することによって、約1142calの熱量が発生することが分かる。ここで、全量をアルミニューム粉末にしてはどうかという疑問が生ずるであろうが、アルミニューム単品では、100℃以上の高温にしない限り水と反応しないので、酸化カルシュームと水との反応が先ず必要になる。即ち、本発明では、酸化カルシュームと水を先ず反応させ、その反応によって生じた水酸化カルシュームとアルミニューム粉末とを反応させるという2段階反応を行わせるものである。換言すれば、酸化カルシュームと水の反応によって生じた水酸化カルシュームは、アルミニューム粉末を100℃以下の温度で反応させるための反応開始剤、或いは一種の触媒として機能すると理解してもよい。
【0040】
尚、(2)の反応で生成するアルミン酸カルシュームは、一つの化学式で表現することは不可能で、3CaO・Al2O3の他に、CaO・Al23,Ca3[Al(OH)62,2Ca(OH)2・Al(OH)3・5/2H2O,CaO・2Al23等がある。従って、式(2)は、アルミニュームと水酸化カルシュームの代表的な反応の一つであると理解されるべきである。
【0041】
次に、酸化カルシューム、アルミニューム、および水の量比に関して説明する。本発明の発熱剤が、連続して発生する反応式(1)および(2)を満足させることは前述した通りである。なお、本明細書では、説明の便宜上、酸化カルシューム、アルミニューム、および水の反応を、反応式(1)および(2)に分離して示してあるが、これらの反応は、完全に独立した2段階で起こるのではなく、同時並行的に3成分系逐次反応として起こっている。
CaO+H2O=Ca(OH)2 (1)
2Al+3Ca(OH)2=3CaO・Al23+3H2↑ (2)
化学量論上は、酸化カルシューム1モル(56g)に対して、アルミニュームを2モル(54g)、およびの水を1モル(18cc)使用すればよいことになる。しかしながら、アルミニュームの中には、Ca(OH)2と反応応せずに残留するもの、水を介して凝集(会合)するものがあることを想定して、酸化カルシュームに対して、化学量論量の過剰量のアルミニュームを使用することが好ましい。即ち、酸化カルシューム1モルに対して2モル以上のアルミニュームを使用することが好ましい。
【0042】
従って、本明細書において、「アルミニューム(Al)と、酸化カルシューム(CaO)の量比が、連続して発生する反応式(1)および(2)における化学量論量を満足させる」とは、酸化カルシューム1モルに対してアルミニュームが2モル以上使用する場合を含む。
【0043】
次に、使用する水の量に関して説明する。反応式(1)において、化学量論上は、酸化カルシューム1モル(56g)に対して1モル(18cc)の水を使用すればよいことになる。しかしながら、反応式(1)の過程で水の一部が蒸発すること、或いは水の一部が、発熱剤を充填している不織布製の袋に吸収されること、または水を介して酸化カルシュムが凝集(会合)を起こし、水の全量が本来の目的に使用されない場合があることを想定して、酸化カルシュームに対して、化学量論的量の過剰量の水を使用することが好ましい。
【0044】
本発明のアルミニュームと酸化カルシュームとから成る発熱剤は、水を浸透させる所定の目付量の不織布、和紙、合成紙等の袋に充填し、さらにアルミ箔等非透水性の袋に包装して、酸化カルシュームが空気中の水分を吸収して反応するのを防止する。
【0045】
本発明の発熱剤は、非常食、携帯食用加熱調理容器に予め組み込んで使用することもできる。本発明の発熱剤を組込むことができる加熱調理容器は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレンテレフタレート、ポリメタクリ酸メチル、ナイロン及びポロメチルペンテン等合成樹脂製、合成樹脂加工アルミニューム、合成樹脂加工紙、金属缶、ビン、金属と合成樹脂の組合せの各種容器である。
【課題を解決するための手段】
【0046】
従って、上記課題は下記の諸発明によって解決することができる。
1.主剤としてのアルミニュームと、副剤としての酸化カルシュームとを含む発熱剤であって、
(a) アルミニュームと、酸化カルシュームの量比が、連続して発生する反応式(1)および(2)における化学量論的量を満足させること、
CaO+H2O=Ca(OH)2 (1)
2Al+3Ca(OH)2=3CaO・Al23+3H2↑ (2)、および
(b) 主剤が、5〜10μm、15〜20μm、20〜25μm、20〜30μm、25〜30μm、40〜60μm、85〜115μm、160〜200μm、および530〜680μmから成る群から選択された平均粒径を有する粉体アルミニュームを少なくとも1種含むことを特徴とする発熱剤。
【0047】
2.前記1項において、粉体アルミニュームの粒度分布が、+100メッシュ(+150μm)が1%>、+70メッシュ(+212μm)が15%>、+36メッシュ(+425μm)が40〜60%、+26メッシュ(+600μm)が20〜40%、+18メッシュ(+880μm)が10〜25%である。
【0048】
3.前記1項において、粉体アルミニュームの粒度分布が、+235メッシュ(+63μm)が2%>、+200メッシュ(+75μm)が5%>、+140メッシュ(+106μm)が15〜30%、+100メッシュ(+150μm)が20〜40%、+70メッシュ(+212μm)が30〜55%、+36メッシュ(+425μm)が5%>、+26メッシュ(+600μm)が0%である。
【0049】
4.前記1項において、粉体アルミニュームの粒度分布が、+235メッシュ(+63μm)が3%>、+200メッシュ(+75μm)が20〜40%、+140メッシュ(+106μm)が20〜35%、+100メッシュ(+150μm)が20〜30%、+70メッシュ(+212μm)が10〜35%、+36メッシュ(+425μm)が2%>である。
【0050】
5.前記1項において、粉体アルミニュームの粒度分布が、+330メッシュ(+45μm)が1%>、+235メッシュ(+63μm)が15%>、+200メッシュ(+75μm)が40〜70%、+140メッシュ(+106μm)が30〜50%、+100メッシュ(+150μm)が3%>、+70メッシュ(+212μm)が0%である。
【0051】
6.前記1項において、粉体アルミニュームの粒度分布が、−330メッシュ(−45μm)が35〜60%、+330メッシュ(+45μm)が15〜30%、+235メッシュ(+63μm)が5〜15%>、+200メッシュ(+75μm)が10〜20%、+140メッシュ(+106μm)が7%>、+100メッシュ(+150μm)が1%>、+70メッシュ(+212μm)が0%である。
【0052】
7.前記1項において、粉体アルミニュームの粒度分布が、−330メッシュ(−45μm)が98%<、+330メッシュ(+45μm)が10%>、+235メッシュ(+63μm)が2%>、+200メッシュ(+75μm)が1%>、+140メッシュ(+106μm)がtrである。
【0053】
8.前記1項において、粉体アルミニュームの粒度分布が、−330メッシュ(−45μm)が70〜90%、+330メッシュ(+45μm)が30%>、+235メッシュ(+63μm)が3%>、+200メッシュ(+75μm)が2%>、+140メッシュ(+106μm)が1%>、+100メッシュ(+150μm)が0%である。
【0054】
9.前記1項において、粉体アルミニュームの粒度分布が、−330メッシュ(−45μm)が96%<、+330メッシュ(+45μm)が5%>、+235メッシュ(+63μm)が1%>、+200メッシュ(+75μm)が1%>、+140メッシュ(+106μm)が0%−330メッシュ(−45μm)が100%、+330メッシュ(+45μm)が0%である。
【0055】
10.前記1項において、粉体アルミニュームの粒度分布が、−330メッシュ(−45μm)が100%、+330メッシュ(+45μm)が0%である。
【0056】
11.前記1項において、粉体アルミニュームの粒度分布が、−330メッシュ(−45μm)が98%<、+330メッシュ(+45μm)が1%>、+235メッシュ(+63μm)が1%>、+200メッシュ(+75μm)がtrである。
【発明の効果】
【0057】
請求項1に記載した発明によると、特許文献1に記載した発熱剤に比べて、発熱剤の発熱までの立ち上がり時間を短縮し、発熱量を大きくし、かつ発熱時間を延長することができ、かつ主剤としての酸化アルミニュームの選択の幅を拡げることができる。
【0058】
請求項2に記載した発明によると、特許文献1に記載した発熱剤に比べて、発熱剤の発熱までの立ち上がり時間を短縮し、発熱量を大きくし、かつ発熱時間を延長することができ、かつ搬送時或いは水との反応時に凝集又は会合が発生する率を軽減させることができる。
【0059】
請求項3に記載した発明によると、請求項2に記載した発熱剤に比べて、発熱効率を上げ、発熱までの立ち上がり時間を短縮し、発熱量を大きくし、かつ発熱時間を延長させることができる。
【0060】
請求項4に記載した発明によると、請求項3に記載した発熱剤に比べて、発熱効率を上げ、発熱までの立ち上がり時間を短縮し、発熱量を大きくし、かつ発熱時間を延長させることができる。
【0061】
請求項5に記載した発明によると、請求項4に記載した発熱剤に比べて、発熱効率を上げ、発熱までの立ち上がり時間を短縮し、発熱量を大きくし、かつ発熱時間を延長させることができる。
【0062】
請求項6に記載した発明によると、請求項5に記載した発熱剤に比べて、発熱効率を上げ、発熱までの立ち上がり時間を短縮し、発熱量を大きくし、かつ発熱時間を延長させることができる。
【0063】
請求項7に記載した発明によると、請求項6に記載した発熱剤に比べて、発熱効率を上げ、発熱までの立ち上がり時間を短縮し、発熱量を大きくし、かつ発熱時間を延長させることができる。
【0064】
請求項8に記載した発明によると、請求項7に記載した発熱剤に比べて、発熱効率を上げ、発熱までの立ち上がり時間を短縮し、発熱量を大きくし、かつ発熱時間を延長させることができる。
【0065】
請求項9に記載した発明によると、請求項8に記載した発熱剤に比べて、発熱効率を上げ、発熱までの立ち上がり時間を短縮し、発熱量を大きくし、かつ発熱時間を延長させることができる。
【0066】
請求項10に記載した発明によると、請求項9に記載した発熱剤に比べて、発熱効率を上げ、発熱までの立ち上がり時間を短縮し、発熱量を大きくし、かつ発熱時間を延長させることができる。
【0067】
請求項11に記載した発明によると、請求項10に記載した発熱剤に比べて、発熱効率を上げ、発熱までの立ち上がり時間を短縮し、発熱量を大きくし、かつ発熱時間を延長させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0068】
発熱剤の総質量当たり、100メッシュ(+150μm90%以上)〜200メッシュ(+75μm90%以上pass)の粒度範囲の粉体酸化カルシューム11.7gと、平均粒径が40〜60μmで、粒度分布が、−330メッシュ(−45μm)が35〜60%、+330メッシュ(+45μm)が15〜30%、+235メッシュ(+63μm)が5〜15%>、+200メッシュ(+75μm)が10〜20%、+140メッシュ(+106μm)が7%>、+100メッシュ(+150μm)が1%>、+70メッシュ(+212μm)が0%である粉体アルミニューム23.3gを配合して35gの発熱剤を製造し、その発熱剤を70CCの水と接触させ、粉体酸化カルシュームと水とを反応させる第1段階反応において反応熱を発生させるとともに水酸化カルシュームを生成させ、次いで第2段階反応において、反応開始後8秒で95℃の水蒸気を発生させ、80℃までに降下する時間を25分間にする。
【0069】
以下、実施例、試験例、比較例を掲げ、本発明を具体的に説明する。
〔実施例〕
使用した粉体アルミニューム
以下の実施例、試験例及び比較例で使用した粉体アルミニュームの平均粒径および粒度分布は下記の通りである。なお、下記の説明で、[ ]内の記載は、使用した粉体アルミニュームの略称で、以降この略称を使用する。なお、いずれも山石金属(株)製である。
【0070】
1.[粉体アルミー1]
平均粒径が530〜680μmで、粒度分布が、+100メッシュ(+150μm)が1%>、+70メッシュ(+212μm)が15%>、+36メッシュ(+425μm)が40〜60%、+26メッシュ(+600μm)が20〜40%、+18メッシュ(+880μm)が10〜25%。(「アトマイズアルミVA−20」(登録商標))。
【0071】
2.[粉体アルミー2]
平均粒径が160〜200μmで、粒度分布が、+235メッシュ(+63μm)が2%>、+200メッシュ(+75μm)が5%>、+140メッシュ(+106μm)が15〜30%、+100メッシュ(+150μm)が20〜40%、+70メッシュ(+212μm)が30〜55%、+36メッシュ(+425μm)が5%>、+26メッシュ(+600μm)が0%。(「アトマイズアルミVA30−150」(登録商標))。
【0072】
3.[粉体アルミー3]
平均粒径が110〜190μmで、粒度分布が、+235メッシュ(+63μm)が3%>、+200メッシュ(+75μm)が20〜40%、+140メッシュ(+106μm)が20〜35%、+100メッシュ(+150μm)が20〜30%、+70メッシュ(+212μm)が10〜35%、+36メッシュ(+425μm)が2%>。(「アトマイズアルミVA−40」(登録商標))。
【0073】
4.[粉体アルミー4]
平均粒径が85〜115μmで、粒度分布が、+330メッシュ(+45μm)が1%>、+235メッシュ(+63μm)が15%>、+200メッシュ(+75μm)が40〜70%、+140メッシュ(+106μm)が30〜50%、+100メッシュ(+150μm)が3%>、+70メッシュ(+212μm)が0%。(「アトマイズアルミVA−1520」(登録商標))。
【0074】
5.[粉体アルミー5]
平均粒径が40〜60μmで、粒度分布が、−330メッシュ(−45μm)が35〜60%、+330メッシュ(+45μm)が15〜30%、+235メッシュ(+63μm)が5〜15%>、+200メッシュ(+75μm)が10〜20%、+140メッシュ(+106μm)が7%>、+100メッシュ(+150μm)が1%>、+70メッシュ(+212μm)が0%。(「アトマイズアルミVA−150」(登録商標))。
【0075】
6.[粉体アルミー6]
平均粒径が25〜30μmで、粒度分布が、−330メッシュ(−45μm)が98%<、+330メッシュ(+45μm)が10%>、+235メッシュ(+63μm)が2%>、+200メッシュ(+75μm)が1%>、+140メッシュ(+106μm)がtr。(「アトマイズアルミVA−350」(登録商標))。
【0076】
7.[粉体アルミー7]
平均粒径が20〜30μmで、粒度分布が、−330メッシュ(−45μm)が70〜90%、+330メッシュ(+45μm)が30%>、+235メッシュ(+63μm)が3%>、+200メッシュ(+75μm)が2%>、+140メッシュ(+106μm)が1%>、+100メッシュ(+150μm)が0%。(「アトマイズアルミVA−300」(登録商標))。
【0077】
8.[粉体アルミー8]
平均粒径が20〜25μmで、粒度分布が、−330メッシュ(−45μm)が96%<、+330メッシュ(+45μm)が5%>、+235メッシュ(+63μm)が1%>、+200メッシュ(+75μm)が1%>、+140メッシュ(+106μm)が0%−330メッシュ(−45μm)が100%、+330メッシュ(+45μm)が0%。(「アトマイズアルミVA−500」(登録商標))。
【0078】
9.[粉体アルミー9]
平均粒径が15〜20μmで、粒度分布が、−330メッシュ(−45μm)が100%、+330メッシュ(+45μm)が0%。(「アトマイズアルミVA−1000」(登録商標))。
【0079】
10.[粉体アルミー10]
平均粒径が5〜10μmで、粒度分布が、−330メッシュ(−45μm)が98%<、+330メッシュ(+45μm)が1%>、+235メッシュ(+63μm)が1%>、+200メッシュ(+75μm)がtr。(「アトマイズアルミVA−2000」(登録商標))。
【0080】
[使用した粉体酸化カルシューム]
以下の実施例、試験例及び比較例で使用した粉体酸化カルシュームは、秩父石灰工業株式会社製の粉体酸化カルシュームである。これは、粉末200メッシュ(+75μm95%以上pass)のJIS特号品である。
【0081】
[使用した不織布製袋]
以下の実施例、試験例及び比較例で使用した不織布は、目付量が60g/m2、厚さ0.14mm、通気量20cc/cm2.sec、ヒートシール強度6.0Kgのものである。これを、長さ130mm, 幅45mm, 厚さ4mmに製袋した。
【0082】
〔使用した発生蒸気測定装置と実験方法〕
深さ115mm、長さ140mm、幅750mm内容積1000ccのガラス製容器をアルミ箔で蓋をし、蒸気温度を測定する温度センサーを、容器の底部から45mmの位置にくるようにセットした。一方、それぞれ所定量の粉体アルミニューム及び粉体酸化カルシュームを均一に混合して、前記不織布製の袋に充填して発熱剤を製造し、この発熱剤を、前記の容器の底に置いて、所定量の水を添加し、可使用の蒸気が発生する時間(立上がり時間)、発生する水蒸気の最高到達温度、水蒸気が最高到達温度から80℃にまで降下するまでに要する時間、即ち、高熱保持時間を測定した。
【0083】
〔実施例1〕
前掲の粉体アルミー1、粉体アルミー2、粉体アルミー3、粉体アルミー4、粉体アルミー5、粉体アルミー6、粉体アルミー7、粉体アルミー8、粉体アルミー9、および粉体アルミー10を、それぞれ、0.3g、0.7g、1.0g、1.0g、2.0g、1.0g、1.0g、1.0g、1.0g、および1.0gを混合して、10.0gの粉体混合アルミとし、前掲の酸化カルシューム5.0gと混合して、総質量15gの発熱剤とし、前記の不織布製袋に充填した。この発熱剤を、前記の容器の底に置いて、30ccの水を添加し、可使用の蒸気が発生する時間(立上がり時間)、発生する水蒸気の最高到達温度、水蒸気が最高到達温度から80℃にまで降下するまでに要する時間、即ち、高熱保持時間を測定して、得た結果を表1に示した。
【0084】
〔実施例2〕
前掲の粉体アルミー2を3.3g、および粉体アルミー3を10.0gを混合して、13.3gの粉体混合アルミとし、前掲の酸化カルシューム6.7gと混合して、総質量20gの発熱剤とし、前記の不織布製袋に充填した。この発熱剤を、前記の容器の底に置いて、40ccの水を添加し、可使用の蒸気が発生する時間(立上がり時間)、発生する水蒸気の最高到達温度、水蒸気が最高到達温度から80℃にまで降下するまでに要する時間、即ち、高熱保持時間を測定して、得た結果を表1に示した。
【0085】
〔実施例3〕
前掲の粉体アルミー3を16.7gと、前掲の酸化カルシューム8.3gと混合して、総質量25gの発熱剤とし、前記の不織布製袋に充填した。この発熱剤を、前記の容器の底に置いて、50ccの水を添加し、可使用の蒸気が発生する時間(立上がり時間)、発生する水蒸気の最高到達温度、水蒸気が最高到達温度から80℃にまで降下するまでに要する時間、即ち、高熱保持時間を測定して、得た結果を表1に示した。
【0086】
〔実施例4〕
前掲の粉体アルミー4を20.0gと、前掲の酸化カルシューム10.0gと混合して、総質量30gの発熱剤として前記の不織布製袋に充填した。この発熱剤を、前記の容器の底に置いて、60ccの水を添加し、可使用の蒸気が発生する時間(立上がり時間)、発生する水蒸気の最高到達温度、水蒸気が最高到達温度から80℃にまで降下するまでに要する時間、即ち、高熱保持時間を測定して、得た結果を表1に示した。
【0087】
〔実施例5〕
前掲の粉体アルミー5を23.3gと、前掲の酸化カルシューム11.7gと混合して、総質量35gの発熱剤とし、前記の不織布製袋に充填した。この発熱剤を、前記の容器の底に置いて、70ccの水を添加し、可使用の蒸気が発生する時間(立上がり時間)、発生する水蒸気の最高到達温度、水蒸気が最高到達温度から80℃にまで降下するまでに要する時間、即ち、高熱保持時間を測定して、得た結果を表1に示した。
【0088】
〔実施例6〕
前掲の粉体アルミー6を26.7gと、前掲の酸化カルシューム13.3gと混合して、総質量40gの発熱剤とし、前記の不織布製袋に充填した。この発熱剤を、前記の容器の底に置いて、80ccの水を添加し、可使用の蒸気が発生する時間(立上がり時間)、発生する水蒸気の最高到達温度、水蒸気が最高到達温度から80℃にまで降下するまでに要する時間、即ち、高熱保持時間を測定して、得た結果を表2に示した。
【0089】
〔実施例7〕
前掲の粉体アルミー7を33.3gと、前掲の酸化カルシューム16.7gと混合して、総質量50gの発熱剤とし、前記の不織布製袋に充填した。この発熱剤を、前記の容器の底に置いて、100ccの水を添加し、可使用の蒸気が発生する時間(立上がり時間)、発生する水蒸気の最高到達温度、水蒸気が最高到達温度から80℃にまで降下するまでに要する時間、即ち、高熱保持時間を測定して、得た結果を表2に示した。
【0090】
〔実施例8〕
前掲の粉体アルミー8を40.0gと、前掲の酸化カルシューム20.0gと混合して、総質量60gの発熱剤とし、前記の不織布製袋に充填した。この発熱剤を、前記の容器の底に置いて、120ccの水を添加し、可使用の蒸気が発生する時間(立上がり時間)、発生する水蒸気の最高到達温度、水蒸気が最高到達温度から80℃にまで降下するまでに要する時間、即ち、高熱保持時間を測定して、得た結果を表2に示した。
【0091】
〔実施例9〕
前掲の粉体アルミー9を20.0gと、前掲の酸化カルシューム10.0gと混合して、総質量30gの発熱剤とし、前記の不織布製袋に充填した。この発熱剤を、前記の容器の底に置いて、60ccの水を添加し、可使用の蒸気が発生する時間(立上がり時間)、発生する水蒸気の最高到達温度、水蒸気が最高到達温度から80℃にまで降下するまでに要する時間、即ち、高熱保持時間を測定して、得た結果を表2に示した。
【0092】
〔実施例10〕
前掲の粉体アルミー10を10.0gと、前掲の酸化カルシューム5.0gと混合して、総質量15gの発熱剤とし、前記の不織布製袋に充填した。この発熱剤を、前記の容器の底に置いて、30ccの水を添加し、可使用の蒸気が発生する時間(立上がり時間)、発生する水蒸気の最高到達温度、水蒸気が最高到達温度から80℃にまで降下するまでに要する時間、即ち、高熱保持時間を測定して、得た結果を表2に示した。
【0093】
【表1】

【0094】
【表2】

【0095】
本発明により、特許文献1に記載した発熱剤に比べて、発熱剤の発熱までの立ち上がり時間を1/2以上短縮して5〜8秒とし、最高到達温度を1〜7℃高くして93〜99℃にし、80℃へ温度降下するまでの時間を延長することができ、かつ主剤としての酸化アルミニュームの選択の幅を23〜30分に拡大することができるので、駅弁のように、購入してからできるだけ早く喫食したいとする購入者の要望や、戦闘糧食を加熱して、寒冷地で使用したいとする要望を満たすことができ、発熱剤の用途を拡大することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主剤としてのアルミニュームと、副剤としての酸化カルシュームとを含む発熱剤であって、
(a) アルミニューム(Al)と、酸化カルシューム(CaO)の量比が、連続して発生する反応式(1)および(2)における化学量論量を満足させること、
CaO+H2O=Ca(OH)2 (1)
2Al+3Ca(OH)2=3CaO・Al23+3H2↑ (2)、および
(b) 主剤が、530〜680μm、160〜200μm、110〜190μm、85〜115μm、40〜60μm、25〜30μm、20〜30μm、20〜25μm、15〜20μm、および5〜10μmから成る群から選択された平均粒径を有する粉体アルミニュームを少なくとも1種含むことを特徴とする発熱剤。
【請求項2】
粉体アルミニュームの粒度分布が+100メッシュ(+150μm)が1%>、+70メッシュ(+212μm)が15%>、+36メッシュ(+425μm)が40〜60%、+26メッシュ(+600μm)が20〜40%、+18メッシュ(+880μm)が10〜25%である請求項1に記載の発熱剤。
【請求項3】
粉体アルミニュームの粒度分布が+235メッシュ(+63μm)が2%>、+200メッシュ(+75μm)が5%>、+140メッシュ(+106μm)が15〜30%、+100メッシュ(+150μm)が20〜40%、+70メッシュ(+212μm)が30〜55%、+36メッシュ(+425μm)が5%>、+26メッシュ(+600μm)が0%である請求項1に記載の発熱剤。
【請求項4】
粉体アルミニュームの粒度分布が+235メッシュ(+63μm)が3%>、+200メッシュ(+75μm)が20〜40%、+140メッシュ(+106μm)が20〜35%、+100メッシュ(+150μm)が20〜30%、+70メッシュ(+212μm)が10〜35%、+36メッシュ(+425μm)が2%>である請求項1に記載の発熱剤。
【請求項5】
粉体アルミニュームの粒度分布が+330メッシュ(+45μm)が1%>、+235メッシュ(+63μm)が15%>、+200メッシュ(+75μm)が40〜70%、+140メッシュ(+106μm)が30〜50%、+100メッシュ(+150μm)が3%>、+70メッシュ(+212μm)が0%である請求項1に記載の発熱剤。
【請求項6】
粉体アルミニュームの粒度分布が−330メッシュ(−45μm)が35〜60%、+330メッシュ(+45μm)が15〜30%、+235メッシュ(+63μm)が5〜15%>、+200メッシュ(+75μm)が10〜20%、+140メッシュ(+106μm)が7%>、+100メッシュ(+150μm)が1%>、+70メッシュ(+212μm)が0%である請求項1に記載の発熱剤。
【請求項7】
粉体アルミニュームの粒度分布が−330メッシュ(−45μm)が98%<、+330メッシュ(+45μm)が10%>、+235メッシュ(+63μm)が2%>、+200メッシュ(+75μm)が1%>、+140メッシュ(+106μm)がtrである請求項1に記載の発熱剤。
【請求項8】
粉体アルミニュームの粒度分布が−330メッシュ(−45μm)が70〜90%、+330メッシュ(+45μm)が30%>、+235メッシュ(+63μm)が3%>、+200メッシュ(+75μm)が2%>、+140メッシュ(+106μm)が1%>、+100メッシュ(+150μm)が0%である請求項1に記載の発熱剤。
【請求項9】
粉体アルミニュームの粒度分布が−330メッシュ(−45μm)が96%<、+330メッシュ(+45μm)が5%>、+235メッシュ(+63μm)が1%>、+200メッシュ(+75μm)が1%>、+140メッシュ(+106μm)が0%−330メッシュ(−45μm)が100%、+330メッシュ(+45μm)が0%である請求項1に記載の発熱剤。
【請求項10】
粉体アルミニュームの粒度分布が−330メッシュ(−45μm)が100%、+330メッシュ(+45μm)が0%である請求項1に記載の発熱剤。
【請求項11】
粉体アルミニュームの粒度分布が−330メッシュ(−45μm)が98%<、+330メッシュ(+45μm)が1%>、+235メッシュ(+63μm)が1%>、+200メッシュ(+75μm)がtrである請求項1に記載の発熱剤。

【公開番号】特開2007−131689(P2007−131689A)
【公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−324302(P2005−324302)
【出願日】平成17年11月9日(2005.11.9)
【出願人】(500067606)株式会社協同 (12)
【出願人】(598105570)
【Fターム(参考)】