説明

発酵によるチアミン産生

本発明は、チアミン産物を過剰産生させそしてチアミン産物を培地中に放出させる突然変異を含む微生物を使用して、チアミン産物を産生させる方法を提供する。この突然変異を含む微生物の生物学的に純粋な培養物及びこの突然変異を含む単離されたポリヌクレオチドも提供される。更に、臨床サンプル中の病原性微生物を検出する方法、抗生物質を同定するためのアッセイ、並びにこのようなアッセイにより同定された抗生物質が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チアミン産物を産生する方法に関する。更に詳細には、本発明は、チアミン産物を過剰産生しそして培地中に放出することを引起す突然変異を含む微生物を使用してチアミン産物を産生させる方法に関する。該微生物の生物学的に純粋な培養物及び突然変異を含む単離されたポリヌクレオチドも提供される。更に、臨床サンプル中の病原性微生物を検出する方法、抗生物質を同定するためのアッセイ及びこのようなアッセイを使用して同定された抗生物質も提供される。
【0002】
ビタミンB1としても知られているチアミンは、ビタミンの水溶性B−複合体の構成員でありそして哺乳動物のための栄養要件である。チアミンのピロリン酸形態は、例えば、ピルビン酸デヒドロゲナーゼ、ピルビン酸オキシダーゼ又はトランスケトラーゼにより異化される代謝経路のように、多くの炭水化物及びアミノ酸代謝経路における補酵素としてin vivoで作用する。他のビタミン生合成経路(例えば、リボフラビン及びビオチン)と違って、チアミンは新規(de novo)経路の一部ではなくて、実際には再利用(salvage)経路の一部であることに留意することは重要である。
【0003】
チアミン生合成における大抵の酵素による工程及び中間体は、E.coliにおいて研究されそしてSalmonella typhimurium及びRhizobiumにおいてより少ない程度に研究されている(概説については、Brown and Williamson(1987)pp.528-532, In F.C.Neidhart et al.(ed.)Escherichia coli and Salmonella typhimurium:Cellular and Molecular Biology, vol.1.American Society for Microbiology, Washington, D.C.;White and Spenser(1996)pp.680-686, In F.C.Neidhardt et al.(ed.)Escherichia coli and Salmonella typhimurium:Cellular and Molecular Biology, vol.2.American Society for Microbiology, Washington, D.C.;Begley et al.(1999)Arch.Microbiol.171:293-300参照).チアミン経路における工程をコードするE.coli遺伝子は、染色体上の4つの異なる部位に位置している:即ち、90”におけるthiCEFSGHオペロン、46”におけるthiMDオペロン(それぞれthiJ及びthiL遺伝子は9.5”付近においてクラスターされている)及び25”におけるthiK。これらの遺伝子のすべては、クローニングされ、配列決定され、そしてこれらの遺伝子によりコードされた酵素の多くは、E.coliにおいて過剰産生されそしてそれらの酵素活性が決定された。
【0004】
ピリミジン部分、4−アミノ−5−ヒドロキシメチル−2−メチルピリミジンリン酸(HMP−P)は、新規なプリン生合成経路における中間体、5−アミノイミダゾールリボチド(AIR)から誘導される。グラム陰性菌では、AIRのHMP−Pへの転換は、thiC遺伝子産物により触媒される。次いでHMP−Pは、ThiDキナーゼによりHMP−PPにリン酸化され、次いでチアゾール単位とカップリングする。
【0005】
チアゾール部分、5−(2−ヒドロキシエチル)−4−メチルチアゾールリン酸(HET−P)は、L−チロシン及び1−デオキシ−D−キシルロースリン酸(DXP)から誘導され、硫黄原子は、おそらくL−システインに由来する。この反応は、少なくとも5つの遺伝子thiF、thiS、thiG、thiH及びthiIの発現を必要とする。
【0006】
HMP−PPとHET−Pとのカップリングは、thiEによりコードされたチアミンリン酸ピロホスホリラーゼにより触媒されて、チアミン一リン酸(TMP)を生じさせる。次いでTMPを、thiLによりコードされたチアミン一リン酸キナーゼの作用によってリン酸化してチアミンピロリン酸(TPP)を形成する。チアミンは新規経路(de novo pathway)の一部ではないので、E.coliは、外因性チアミンをTMPに転換するために、thiKによりコードされた再利用酵素、チアミンキナーゼを必要とする。
【0007】
B.subtilisにおけるチアミンの合成は、E.coliにおいて見出されたのと同じ酵素及び中間体を利用するようである(例えば、Perkins and Pero(2001)pp.271-286, In Sonenshein et al, (ed.) Bacillus subtilis and its relatives:from genes to cells, American Society for Microbiology, Washington, D.C.参照)。しかしながら、重要な差がある。従来の遺伝子名称は、E.coli及びB.subtilisにおいて異なっている。第一に、E.coliからのHMP生合成酵素ThiC、チアミンリン酸ピロホスフェートThiE及びヒドロキシエチルチアゾールキナーゼThiMは、それぞれ、ThiA、ThiC及びThiKという名称のそれらの対応物(counterparts)を有する。第二に、知られているB.subtilisチアミン生合成遺伝子は、3つのクラスター:thiA遺伝子のみからなるthiA遺伝子座、遺伝子thiOSFGD1からなるthiB遺伝子座並びにthiK及びthiC遺伝子からなるthiC遺伝子座として、異なって構成される。第三に、チアゾール生合成における少なくとも1つの酵素工程は異なる。B.subtilisゲノムは、thiHオーソログ(thiH ortholog)を含有しない。その代わりに、thiO(thiB遺伝子座におけるyjbR)は、チアゾール生合成に関与するオキシダーゼ活性をコードすることが予測される。この遺伝子は、E.coliゲノム内には存在せず、それはThiHに対するアミノ酸相同性を示さない。それは、Rhizobium etliからのthi遺伝子と関連した遺伝子(thiO)の1つに対して相同性である。第四に、E.coli thiDの2つのオーソログ、yjbV(thiD1)及びywdB(thiD2)がB.subtilisにおいて見出され、これらは、生合成及び再利用HMPキナーゼをコードすることができる。最後に、thiC遺伝子座は、未知の遺伝子、転写調節因子のlysRファミリーに対する強い類似性を示すywbIを含有する。
【0008】
本発明は、バチルス科(Bacillaceae)、ラクトバチルス科(Lactobacillaceae)、ストレプトコッカス科(Streptococcaceae)、コリネバクテリア科(Corynebacteriaceae)及びブレビバクテリア科(Brevibacteriaceae)よりなる群から選ばれる微生物であって、チアミン産生を脱調節しそしてチアミン産物を細胞から放出させる突然変異を含有する微生物を提供する。
【0009】
「チアミン産物」は、チアミン、チアミン一リン酸(TMP)及び/又はチアミンピロリン酸(TPP)の単独又はいかなる組み合わせも意味する。
【0010】
本発明に使用される微生物は、該微生物の「生物学的に純粋な培養物」、即ち、微生物が自然において通常会合している成分、細胞及び他の成分から分離されている微生物を意味することは理解される。
【0011】
下記の材料は、American Type Culture Collection(ATCC), P.O.Box 1549, Manassas, VA20108 USAに2003年5月12日に、及びDeutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen(DSMZ), Mascheroder Weg 1B, D-38124 Braunschweig, Germanyに2004年4月5日に、ブタペスト条約の規約に従って下記するとおりの対応する受託番号:Bacillus subtilis TH95(ATCC PTA-5221)、Bacillus subtilis TH101(ATCC PTA-5222)、Bacillus subtilis TH115(ATCC PTA-5223)、Bacillus subtilis TH116(ATCC PTA-5224)、Bacillus subtilis TH404(DSM 16333)、及びBacillus subtilis TH405(DSM 16334)により、寄託された。
【0012】
「突然変異」は、本明細書では修飾と相互交換可能に使用されて、例えば、いかなる機構によっても細胞内における又は細胞からのチアミン又はチアミン産物の増加又は減少を可能とする野生型微生物と比べて微生物に表現型の変化を伝える、バクテリアの如き微生物の野生型DNA配列の変化を意味する。突然変異は、ナンセンス突然変異(アンバー(UAG)、オーカー(T/UAA)及びオパール(T/UGA)を含む、1つ以上のフレームシフト、置換、挿入及び/又は欠失を含む種々の方法において引起すことができる。欠失は、単一のヌクレオチドの欠失、又は全体の遺伝子の欠失を含めて、1つより多くのヌクレオチドの欠失であることができる。
【0013】
「アミノ酸置換」は、一対一対応のアミノ酸置換を意味する。このような置換は、置換されたアミノ酸が同様な構造的及び/又は化学的性質を有する場合には、事実上保存性である。保存性置換の例は、ロイシンのイソロイシン若しくはバリンによる置換、アスパルギン酸のグルタミン酸による置換、又はトレオニンのセリンによる置換を含む。本発明の範囲内の非保存性置換は、脂肪族側鎖を有するアミノ酸の芳香族側鎖を有するアミノ酸による置換、例えば、ロイシンのフェニルアラニンによる置換を含む。
【0014】
アミノ酸「挿入」又は「欠失」は、アミノ酸配列に対する変化又はアミノ酸配列内の変化を意味する。それらは、典型的には、約1〜5アミノ酸の範囲に入る。特定のアミノ酸配列において許容された変化は、ペプチドを合成的に製造すること又は組換えDNA技術を使用して配列におけるヌクレオチドの挿入、欠失若しくは置換を系統的に行うことにより実験的に決定することができる。
【0015】
「脱調節する」又は「脱調節」は、酵素/タンパク質のレベル又は活性が変えられるか又は変更されるような、生合成経路における酵素/タンパク質をコードする遺伝子の発現の変化又は変更であって、チアミン産物の産生の増加、又は例えば分泌、流出等による細胞からのチアミン産物の放出をもたらす(それらに限定はされない)変化又は変更を意味する。遺伝子発現の変化又は変更は、遺伝子自体のDNA配列の変化、又は非タンパク質コードDNA領域を含む遺伝子の外側の領域のDNA配列の変化により行うことができる。「脱調節する」又は「脱調節」は、チアミン産物の産生の増加又はチアミン産物の放出の増加が起こるような、細胞の生合成遺伝子の発現を変化させる代謝物の細胞内レベルのいかなる乱れ(perturbation)も意味することができる。
【0016】
1つの態様では、上記した微生物におけるチアミン産生を脱調節する突然変異は、ΔthiL、tx1、tx26及びそれらの組み合わせからなる群より選ばれる。このような突然変異は、tx1と組み合わせたΔthiL、tx26と組み合わせたΔthiL、tx26と組み合わせたtx1、並びにtx1及びtx26の両方と組み合わせたΔthiLを含む。3つの突然変異、ΔthiL、tx1及びtx26のすべてを含む微生物が好ましい。
【0017】
好ましい態様では、微生物は、バチルス属(Bacillus)、ラクトバチルス属(Lactobacillus)、ラクトコッカス属(lactococcus)、コリネバクテリウム属(Corynebacterium)及びブレビバクテリウム属(Brevibacterium)及びよりなる群から選ばれる。更に好ましくは、微生物は、バチルス(Bacillus)属から選ばれ、最も好ましくは、それはB.subtilis細胞である。
【0018】
1つの態様では、上記した突然変異を含有する微生物はB.subtilis TH95である。
【0019】
1つの態様では、本発明は、ΔthiL、tx1、tx26及びそれらの組み合わせからなる群より選ばれる突然変異を含有し、更にthiA遺伝子産物をコードするポリヌクレオチド配列の少なくとも1つのコピーを含有するDNAカセットを含み、該ポリヌクレオチド配列が強い構成的プロモーターにより作動的に制御されている、上記した微生物を提供する。好ましい微生物は、B.subtilis TH116である。
【0020】
更なる態様では、本発明は、ΔthiL、tx1、tx26及びそれらの組み合わせからなる群より選ばれる突然変異を含有し、更にthiKCオペロンからの遺伝子産物をコードするポリヌクレオチド配列の少なくとも1つのコピーを含有するDNAカセットを含み、該ポリヌクレオチド配列が強い構成的プロモーターにより作動的に制御されている、上記した微生物を提供する。好ましい微生物は、B.subtilis TH115である。
【0021】
更なる態様では、本発明は、ΔthiL、tx1、tx26及びそれらの組み合わせからなる群より選ばれる突然変異を含有し、更にtenAl−thiOSGFDオペロンの遺伝子産物をコードするポリヌクレオチド配列を含有するDNAカセットを含み、該ポリヌクレオチド配列が強い構成的プロモーターにより作動的に制御されている、上記した微生物を提供する。好ましい微生物は、B.subtilis TH404である。
【0022】
更なる態様では、本発明は、ΔthiL、tx1、tx26及びそれらの組み合わせからなる群より選ばれる突然変異を含有し、更に(a)tenAl−thiOSGFDオペロンの遺伝子産物をコードするポリヌクレオチド配列を含有するDNAカセット及び(b)thiA遺伝子産物をコードするポリヌクレオチド配列の少なくとも1つのコピーを含有するDNAカセットを含み、該ポリヌクレオチド配列が強い構成的プロモーターにより作動的に制御されている、上記した微生物を提供する。好ましい微生物は、B.subtilis TH405である。
【0023】
本発明では、「DNAカセット」は、定められた制限部位でベクターに挿入されうる発現産物をコードするDNAのDNAコード配列又はセグメントを意味する。カセット制限部位は、正しいリーディングフレームにおけるカセットの挿入を確実にするようにデザインされる。一般に、外来DNAは、ベクターDNAの1つ以上の制限部位で挿入され、次いで伝達性ベクターDNAと共に宿主細胞中にベクターにより運ばれる。DNA断片は, 線状化されたベクターDNAの端部に結合したトポイソメラーゼの使用により制限酵素なしにベクターDNAに挿入することもでき;これは、PCRで調製されたDNA断片の直接クローニングのために特に有用である。挿入され若しくは付加されたDNAを有するDNAのセグメント又は配列、例えば、発現ベクターは、「DNA構築物」と呼ぶこともできる。普通の型のベクターは、「プラスミド」であり、これは、追加の(外来)DNAを容易に受け入れることができそして適当な宿主細胞に容易に導入されうる通常バクテリア起源の一般に二本鎖DNAの内蔵分子(self-contained molecule)である。プラスミドはしばしばコードDNA及びプロモーターDNAも含有しそして外来DNAを挿入するための適当な1つ以上の制限部位を有する。「コードDNA」は、特定のタンパク質又は酵素のための特定のアミノ酸配列をコードするDNA配列である。DNAカセットは、特定のヌクレオチド配列に加えて、特定のヌクレオチド配列の転写を制御するためにエンハンサー及びプロモーターを含む追加の転写制御エレメントを含有することができる。「プロモーターDNA」は、コードDNAの発現を開始し、調節し、又はコードDNAの発現を媒介又は制御するDNA配列である。プロモーターDNA及びコードDNAは、同じ遺伝子又は異なる遺伝子からのものであることができそして同じもしくは異なる生物からのものであることができる。種々の真核生物宿主及び原核生物宿主における複製及び/又は発現のためのプラスミド及び真菌ベクターを含む多数のベクターが記載されている。非限定的例は、実施例に特定的に記載されたこれら、及びpKKプラスミド(Clonetech)、pUCプラスミド、pETプラスミド(Novagen, Inc., Madison, WI)、pRSET若しくはpREPプラスミド(Invitrogen, San Diego, CA)、又はpMALプラスミド(New England Biolabs, Beverly, MA)、pCR2.1Topo(Invitrogen, San Diego, CA)、pXLTopo(Invitrogen, San Diego, CA)、及び本明細書に開示され若しくは引用された方法又は当業者に知られた他の方法を使用する、多くの適切な宿主細胞を含む。組換えクローニングベクターは、クローニング若しくは発現のための1つ以上の複製システム、宿主における選択のための1つ以上のマーカー、例えば、抗生物質耐性及び1つ以上の発現カセットをしばしば含むであろう。
【0024】
DNAカセットは、コードDNAの1つ以上のコピー、例えば、配列の1〜50コピー、好ましくは、1〜25コピー、例えば、1〜5、1〜10、1〜15及び1〜20コピーを含有することができる。配列は、例えば、タンデムに、即ち、ヘッド−ツー−テイル配置(head-to-tail arrangement)を含む、いかなる順序ででも配置されうる。
【0025】
「作動的に制御されている」は、コードDNAの転写が、例えば、プロモーター又は転写エンハンサーにより制御されるか又は媒介されることを意味する。このようなプロモーター又は転写エンハンサーは、コードDNAに隣接していることができ、又はコードDNAから上流若しくは下流に位置することができる。
【0026】
「強い構成的プロモーター」は、ネイティブ宿主細胞に比べて高い頻度でmRNAsを開始させるプロモーターである。強い構成的プロモーターは、周知でありそして適切なプロモーターは、宿主細胞において制御されるべき特定の配列に従って選ばれうる。グラム微生物からのこのような強い構成的プロモーターの例は、SP01−26、SP01−15、veg、pyc(ピルビン酸カルボキシラーゼプロモーター)及びamyEを含むが、それらに限定はされない。グラム陰性微生物からのプロモーターの例は、tac、tet、trp−tet、lpp、lac、lpp−lac、lacIq、T7、T5、T3、gal、trc、ara、SP6、λ−P及びλ−Pを含むが、それらに限定はされない。
【0027】
他の観点では、本発明は、ΔthiL、tx1、tx26及びそれらの組み合わせからなる群より選ばれる突然変異を含有し、更に(a)B.subtilisのプリンオペロンの発現を脱調節する第1突然変異及び(b)5−アミノイミダゾールリボチド(AIR)のカルボキシアミノイミダゾールリボチド(CAIR)への転換を阻止する第2突然変異を含む上記した微生物を提供する。好ましい態様では、第1突然変異は、purオペロンのリーダー領域内の突然変異を含み、そして第2突然変異は、ホスホリボシルアミノイミダゾールカルボキシラーゼIをコードするpurE遺伝子内の突然変異を含む。更に好ましくは、微生物は、B.subtilis TH101である。
【0028】
「転換を阻止する」という用語は、細胞機械(cellular machinery)がAIRをCAIRに転換するのを、突然変異が阻止することを意味する。本発明では、AIRのCAIRへの転換が完全に阻止されるのが好ましいが、75%より高い、例えば85〜90%より高い転換の阻止も許容されうる。
【0029】
1つの態様では、本発明は、チアミン産物を産生させる方法又はプロセスである。この方法は、チアミン産物を過剰産生させそしてそれらを培地中に放出させるΔthiL、tx1、tx26及びそれらの組み合わせからなる群より選ばれる突然変異を含有する上記した微生物を、適当な培地中で培養することを含む。次いでチアミン産物を培地から回収する。
【0030】
「過剰産生する」は、本発明の微生物(1種若しくは複数種)又は本発明の方法で使用される微生物(1種若しくは複数種)が、実施例に記載の方法のいずれかにより測定して、ネイティブ微生物が産生するよりも過剰の1種以上のチアミン産物を産生するように工学的に作られることを意味する。このようなチアミン産物の実質的量が、例えば、分泌若しくは流出により培養培地中に放出される。本明細書で使用した、「実質的量」とは、細胞により産生されたチアミン産物の75%より多く、好ましくは85%より多く、例えば、90〜95%が培地中に放出されることを意味する。
【0031】
「チアミン産物」に関して使用される「回収する」とは、チアミン産物を培地から分離し及び/又は回収されたチアミン産物を純粋な若しくは半純粋な形態に単離することを意味する。例えば、発酵培養液からチアミン産物を回収するためのいかなる慣用の方法も本発明において使用することができる。回収は、HPLCの使用によるチアミン産物の単離も意味することができる。
【0032】
1つの観点では、上記した方法は、チアミン前駆体の存在下に該微生物を培養することを更に含む。好ましい前駆体は、4−アミノ−5−ヒドロキシメチル−2−メチルピリミジン(HMP)、5−(2−ヒドロキシエチル)−4−メチルチアゾール(HET)及びそれらの組み合わせよりなる群から選ばれる。
【0033】
上記したチアミン産物を産生するための方法において、該微生物が、上記したB.subtilisのプリンオペロンの発現を脱調節する突然変異を更に含むならば、該微生物を、チアミン前駆体及びプリン供給源の存在下に培養する方法を提供することが、本発明の他の観点である。好ましい態様では、チアミン前駆体はHETであり、そしてプリン供給源はキサンチンである。
【0034】
他の観点では、上記した方法は、HET経路の前駆体の存在下に該微生物を培養することを更に含む。「HET経路の前駆体」は、5−(2−ヒドロキシエチル)−4−メチルチアゾール(HET)を産生するのに使用される炭素含有化合物を意味する。このような前駆体は、好ましくは、グリシン、システイン、イソロイシン、トレオニン及びそれらの組み合わせよりなる群から選ばれる。
【0035】
他の観点では、上記した方法は、HMP経路の前駆体又はHMPの誘導体の存在下に該微生物を培養することを更に含む。「HMP経路の前駆体」は、4−アミノ−5−ヒドロキシメチル−2−メチルピリミジン(HMP)を産生するのに使用される炭素含有化合物を意味する。このような前駆体の非限定的例は、5−アミノイミダゾールリボチド(AIR)を含む。「HMPの誘導体」は、4−アミノ−2−メチル−5−ピリミジンメタンアミン(Grewe Diamibe)と同じ方法で機能するHMPのいかなる化学的に修飾された変異体も意味する。
【0036】
かくして、本発明は、(a)チアミン産生物を培地中に過剰産生させる突然変異を含有する、バチルス科(Bacillaceae)、ラクトバチルス科(Lactobacillaceae)、ストレプトコッカス科(Streptococcaceae)、コリネバクテリア科(Corynebacteriaceae)及びブレビバクテリア科(Brevibacteriaceae)よりなる群から選ばれる微生物を適当な培地中で培養し、そして(b)チアミン産物を回収することを含む、チアミン産物を産生する方法を指向する。
【0037】
1つの態様では、本発明は、微生物が、ΔthiL、tx1及びtx26を含む突然変異を含有する、上記した方法を指向する。
【0038】
1つの態様では、本発明は、微生物が、thiA遺伝子産物をコードするポリヌクレオチド配列の少なくとも1つのコピーを含有するDNAカセットを更にも含み、該ポリヌクレオチド配列が強い構成的プロモーターにより作動的に制御されている、上記した方法を指向する。
【0039】
1つの態様では、本発明は、微生物が、B.スブチリス(B.subtilis)のプリンオペロンの発現を脱調節する突然変異及び5−アミノイミダゾールリボチド(AIR)のカルボキシアミノイミダゾールリボチド(CAIR)への転換を阻止する突然変異を更に含む、上記した方法を指向する。
【0040】
1つの態様では、本発明は、微生物が、thiKCオペロンからの遺伝子産物をコードするポリヌクレオチド配列の少なくとも1つのコピーを含有するDNAカセットを更に含み、該ポリヌクレオチド配列が強い構成的プロモーターにより作動的に制御される、上記した方法を指向する。
【0041】
1つの態様では、本発明は、微生物が、tenAl−thiOSGFDオペロンの遺伝子産生物をコードするポリヌクレオチド配列の少なくとも1つのコピーを含有するDNAカセットを更に含み、該ポリヌクレオチド配列が強い構成的プロモーターにより作動的に制御される、上記した方法を指向する。
【0042】
1つの態様では、本発明は、微生物が、(a)tenAl−thiOSGFDオペロンの遺伝子産生物をコードするポリヌクレオチド配列の少なくとも1つのコピーを含有するDNAカセット及び(b)thiA遺伝子産物をコードするポリヌクレオチド配列の少なくとも1つのコピーを含有するDNAカセットを更に含み、該ポリヌクレオチド配列が強い構成的プロモーターにより作動的に制御される、上記した方法を指向する。
【0043】
他の態様では、本発明は、tx1突然変異を含む単離されたポリヌクレオチド配列である。このような突然変異は、チアミン産生を脱調節しそしてチアミン産物を培養培地中に放出させる突然変異を含有する、チアミンの産生を増加させる組換え微生物、例えば、バチルス属(Bacillaceae)、ラクトバチルス属(Lactobacillaceae)、ストレプトコッカス属(Streptococcaceae)、コリネバクテリア属(Corynebacteriaceae)及びブレビバクテリア属(Brevibacteriaceae)よりなる群から選ばれる微生物の構築のために有用である。アミノ酸残基116におけるロイシンのフェニルアラニンへの置換を生じさせる突然変異が好ましい(野生型YloS配列番号32に比べて位置116におけるLeuのPheへの置換を有するアミノ酸配列のコピーについて配列番号31参照)。
【0044】
本明細書で使用された、「単離された」ポリヌクレオチド(例えば、RNA、DNA又は混合ポリマー)又はポリペプチドは、その自然の状態においてそれに伴っている成分から実質的に分離されたことを意味する。ポリヌクレオチドの場合に、「単離された」とは、天然にネイティブ配列に伴う他の細胞成分、例えば、リボソーム、ポリメラーゼ、多くの他のゲノム配列及びタンパク質から分離されたということを意味する。この用語は、その天然に存在する環境から取り出されたポリヌクレオチドを包含し、そして組換えDNA又はクローニングされたDNA単離体及び化学的に合成された類似体又は異種システムにより生物学的に合成された類似体を含む。ポリペプチドに関して、「単離された」という用語は、その自然の状態でそれに伴っている成分から分離されたタンパク質又はポリペプチドを意味する。単量体のタンパク質は、サンプルの少なくとも約60〜75%が単一のポリペプチド配列を示す場合に単離されている。単離されたタンパク質は、典型的には、タンパク質サンプルの約60〜90%重量/重量、更に通常約95%を含み、好ましくは約99%以上の純度であろう。タンパク質純度又は等質性は、当該技術分野で周知の多数の手段、例えば、タンパク質サンプルのポリアクリルアミドゲル電気泳動、続いてゲルを染色して単一のポリペプチドバンドを可視化することにより示すことができる。ある目的には、HPLC又は当該技術分野で周知の他の手段を使用して、精製のためのより高い解像力を提供することができる。
【0045】
1つの態様では、上記した単離されたポリヌクレオチド配列は、配列番号30であるか又はストリンジェントな条件下に配列番号30にハイブリダイズするポリヌクレオチド配列であり、そして微生物中に存在するとき、チアミン産物の脱調節を引起す。
【0046】
本明細書で同定されたポリヌクレオチド配列に「ストリンジェントな条件」下にハイブリダイズしそして同じ機能を保持する、即ち、適切な細胞に導入されるとき、チアミン産生の脱調節を引起す核酸は、本発明の範囲内にある。「ストリンジェントな条件」は、当該技術分野で知られている:例えば、Maniatis et al., Molecular Cloning:A Laboratory Manual, 2d Edition, 1989, and Short Protocols in Molecular Biology, ed.Ausubel, et al., 参照。これらの両方共参照により本明細書に組み込まれる。ストリンジェントな条件は、配列依存性でありそして異なる環境において異なるであろう。より長い配列は、特により高い温度でハイブリダイズする。核酸のハイブリダイゼーションへの広汎なガイドは、Tijssen, Techniques in Biochemistry and Molecular Biology--Hybridization with Nucleic Acid Probes, “Overview of principles of hybridization and the strategy of nucleic acid assays”(1993)に見出される。一般に、ストリンジェントな条件は、既定されたイオン強度pHにおいて特定の配列についての熱的融点(thermal melting point)(Tm)より約5〜10℃低いように選ばれる。Tmは、標的に対して相補的なプローブの50%が平衡において標的配列にハイブリダイズする温度(規定されたイオン強度、pH及び核酸濃度下に)である(標的配列はTmにおいて過剰に存在するので、平衡においてプローブの50%が占められる)。ストリンジェントな条件は、塩濃度が、pH7.0〜8.3において約1.0Mナトリウムイオンより少なく、典型的には、約0.01〜1.0Mナトリウムイオン濃度(又は他の塩)であり、そして温度は、短いプローブ(例えば10〜50ヌクレオチド)では少なくとも約30℃でありそして長いプローブ(例えば50ヌクレオチドより長い)では少なくとも約60℃である、ストリンジェントな条件である。ストリンジェントな条件は、脱安定化剤、例えばホルムアミドの添加によっても達成されうる。この開示の目的には、このようなハイブリダイゼーションのための適当な「ストリンジェントな条件」は、40%ホルムアミド、1MNaCl、1%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)の緩衝液中で37℃でのハイブリダイゼーション及び少なくとも約50℃、通常約55℃〜約60℃の温度で20分間0.2XSSC中での少なくとも1回の洗浄、又は同等な条件を含む、ストリンジェントな条件である。ポジティブなハイブリダイゼーションは、バックグラウンドのレベルより少なくとも2倍高い。当業者は、別のハイブリダイゼーション及び洗浄条件を使用して同様なストリンジェンシーの条件を与えることができることを容易に認識するであろう。
【0047】
「核酸配列」というフレーズは、5’から3’端部へと読まれるデオキシリボヌクレオチド又はリボヌクレオチド塩基の一本鎖又は二本鎖ポリマーを意味する。それは、染色体DNA、自己複製性プラスミド、DNA若しくはRNAの感染性ポリマー及び主として構造的役割を行うDNA若しくはRNAを含む。特に限定されない限り、この用語は、参照核酸と同様な結合性を有しそして天然に存在するヌクレオチドと同様に代謝される天然のヌクレオチドの既知の類似体を含有する核酸を包含する。特記されない限り、特定の核酸配列は、その保存的に修飾された変異体(例えば、縮重コドン置換)及び相補性配列並びに明白に示された配列も暗黙のうちに包含する。特に、縮重コドン置換は、1つ以上の選ばれた(又はすべての)コドンの第3の位置が混合塩基及び/又はデオキシイノシン残基で置換されている配列を発生させることにより達成されうる(Batzer et al., Nucleic Acid Res.19:5081(1991);Ohtsuka et al, J.Biol.Chem.260:2605-2608(1985);Cassol et al, 1992;Rossolini et al., Mol.Cell.Probes 8:91-98(1994)。
【0048】
他の態様では、本発明は、2つの連鎖していない突然変異、即ち、第1の突然変異tx26−1及び第2突然変異tx26−2を含む単離されたポリヌクレオチド配列であって、チアミン産生性微生物における両突然変異の存在がチアミン産生の脱調節を引起す、ポリヌクレオチド配列である。第1の突然変異、tx26−1は、ΔyufR::Tn917(BGSC#1A642)に対する70%連鎖(linkage)を示し、そして第2の突然変異、tx26−2は、ΩmotA::Tn917(BGSC#1A631)に対する59%連鎖を示す。かくして、本発明は、ΔyufR::Tn917に対する70%連鎖を有する第1突然変異(tx26−1)及びΩmotA::Tn917に対する59%連鎖を有する第2突然変異(tx26−2)を含む単離されたポリヌクレオチド配列であって、チアミン産生性微生物における該突然変異の両方の存在がチアミン産生の脱調節を引起す、単離されたポリヌクレオチド配列を指向する。
【0049】
好ましくは、tx26−1突然変異は、配列番号33であるポリヌクレオチド配列又はストリンジェントな条件下に配列番号33にハイブリダイズするポリヌクレオチド配列によりコードされており、そしてtx26−2突然変異との組み合わせにおいて微生物中に存在するとき、チアミン産生の脱調節を引起す。
【0050】
好ましくは、tx26−2突然変異は、配列番号36であるポリヌクレオチド配列又はストリンジェントな条件下に配列番号36にハイブリダイズするポリヌクレオチド配列によりコードされており、そしてtx26−1突然変異との組み合わせにおいて微生物中に存在するとき、チアミン産生の脱調節を引起す。
【0051】
更に、上記した1種以上のポリヌクレオチド、即ち、(a)第1突然変異tx26−1及び第2突然変異tx26−2を含む単離されたポリヌクレオチド配列又は(b)tx1突然変異を含む単離されたポリヌクレオチド配列を含むDNAカセット並びにこのようなDNAカセットを含有する微生物が本発明により提供される。
【0052】
更なる態様は、患者からの臨床サンプル中の病原性微生物を検出する方法である。この方法は、グラム(Gram)微生物がサンプル中に存在するかどうかを決定すること、微生物がyloSオーソログ(ortholog)を含有するかどうかを決定すること、及び微生物がthiLオーソログを含有するかどうかを決定することを含み、グラム微生物中のyloSオーソログの存在及びthiLオーソログの不存在により、微生物が病原性であることを示す。
【0053】
「臨床サンプル」は、哺乳動物、好ましくは、ヒト又は食用動物である患者から採取したいかなるアッセイ可能な検査試料も意味する。アッセイ可能な検査試料は、血液、尿、糞便、喀痰、組織又は他の生物学的供給源から選ぶことができ、それから、微生物を、もし存在すれば、実施例に開示されたとおり同定しそして特徴付けることができる。
【0054】
上記した患者からの臨床サンプル中に検出される微生物は、好ましくは、リステリア属(Listeria)、スタフィロコッカス属(Staphylococcus)、クロストリジウム属(Clostridium)、エンテロコッカス属(Enterococcus)、及びストレプトコッカス属(Streptococcus)よりなる群から選ばれ、最も好ましくは、リステリアモノシトゲネス(Listeria monocytogenes)、スタフィロコッカスアウレウス(Staphylococcus aureus)、スタフィロコッカスエピダーミディス(Staphylococcus epidermidis)、クロストリジウムテタニ(Clostridium tetani)、クロストリジウムパーフリンゲンス(Clostridium perfringens)、エンテロコッカス(Enterococcus)属の種(Enterococcu sp)、ストレプトコッカスアガラクティエ(Streptococcus agalactiae)、ストレプトコッカスピロゲネス(Streptococcus pyogenes)及びストレプトコッカスニューモニエ(Streptococcus pneumoniae)よりなる群から選ばれる。
【0055】
YloSタンパク質は、殺菌化合物を同定するための価値ある標的である。何故ならば、yloSオーソログのみを含有しそしてthiLオーソログを含有しない多くのグラム菌は既知の病原体であるからである。従って、本発明は、YloSに結合するか又は、例えばyloS発現若しくはYloS活性に対して刺激作用若しくは抑制作用を有するモジュレーター(modulators)、即ち、候補若しくは試験化合物又は作用物質(例えば、ペプチド、ペプチド擬似体(peptidomimetics)、小分子又は他の薬物)を同定するためのスクリーニングアッセイ(又は方法)も提供する。
【0056】
1つの態様では、(a)YloSタンパク質を含むアッセイ組成物を試験化合物と接触させ、そして(b)試験化合物がYloSタンパク質活性を阻害するかどうかを決定することを含み、該化合物がYloSタンパク質活性の活性を阻害する能力に基づいて該化合物を抗生物質として同定する、抗生物質を同定するためのアッセイが提供される。好ましくは、このアッセイは、精製されたYloSタンパク質、部分的に精製されたYloSタンパク質、YloSタンパク質を産生する細胞からの粗細胞抽出物を含み、又はYloSタンパク質は、リステリア属(Listeria)、スタフィロコッカス属(Staphylococcus)、クロストリジウム属(Clostridium)、エンテロコッカス属(Enterococcus)、及びストレプトコッカス属(Streptococcus)よりなる群から選ばれる病原性微生物に由来するポリヌクレオチドによりコードされている。このような病原性微生物は、リステリアモノシトゲネス(Listeria monocytogenes)、スタフィロコッカスアウレウス(Staphylococcus aureus)、スタフィロコッカスエピダーミディス(Staphylococcus epidermidis)、クロストリジウムテタニ(Clostridium tetani)、クロストリジウムパーフリンゲンス(Clostridium perfringens)、エンテロコッカス(Enterococcus)属の種(Enterococcu sp)、ストレプトコッカスアガラクティエ(Streptococcus agalactiae)、ストレプトコッカスピロゲネス(Streptococcus pyogenes)及びストレプトコッカスニューモニエ(Streptococcus pneumoniae)を含むが、それらに限定はされない。
【0057】
抗生物質を同定するためのアッセイに関する「アッセイ組成物」は、このようなアッセイを行うのに必要な組み合わせにおける成分を意味する。このようなアッセイ組成物は、最小でも、YloSタンパク質若しくはその生物学的に活性な部分及び試験化合物、即ち、試験されるべきペプチド、ペプチド擬似体、小分子若しくは他の薬物を必要とする。
【0058】
本明細書で使用された、「YloS活性」は、YloSタンパク質、即ち、yloS遺伝子によりコードされたタンパク質、のいかなる検出可能な活性又は測定可能な活性も意味する。本発明では、YloS活性は、下記:(1)YloS生合成経路における少なくとも1つの工程のモジュレーション、(2)YloS生合成の促進又は(3)YloS突然変異体の相補性の少なくとも1つである。抗生物質を同定するためのアッセイに関しては、試験化合物は、もしそれがYloSタンパク質翻訳の減少、yloS転写の減少又はYloS活性の損失を引起すならば、YloSタンパク質活性を阻害する。
【0059】
本発明の試験化合物は、天然化合物ライブラリー、生物学的ライブラリー、空間的にアドレス可能なパラレル固相若しくは液相ライブラリー(spatially addressable parallel solid phase or solution phase libraries);デコンボルーション(deconvolution)を必要とする合成ライブラリー法;ワンビーズワン化合物ライブラリー法(one-bead one-compound library method);及びアフィニティークロマトグラフィー選択を使用する合成ライブラリー法を含む、当該技術分野で知られている化合物ライブラリー法における多数のアプローチのいずれかを使用して得ることができる。生物学的ライブラリーアプローチは、ペプチドライブラリーに限られているが、他のアプローチは、ペプチド、非ペプチドオリゴマー又は化合物の小分子ライブラリーに適用可能である(Lam, K.S.(1997)Anticancer Drug Des.12:145)。
【0060】
分子ライブラリーの合成方法の例は、当該技術分野で、例えば、De Witt et al.(1993)PNAS90:6909;Erb et al.(1994)PNAS91:11422;Zuckermann et al.(1994)J.med.Chem.37:2678;Cho et al.(1993)Science261:1303;Carrell et al.(1994)Angew.Chem.Int.Ed.Engl.33:2059;Carell et al.(1994)Angew.Chem.Int.Ed.Engl.33:2061;及びGallop et al.(1994)J.Med.Chem.37:1233に見出されうる。化合物のライブラリーは、溶液中に、ビーズ上に、チップ上に、バクテリア中に、胞子中に(U.S.Patent No.5, 223, 409)、プラスミド上に又はファージ上に存在することができる。
【0061】
1つの態様では、アッセイは、YloSタンパク質若しくはその生物学的に活性な部分 を発現する組換え微生物を試験化合物と接触させ、そして試験化合物のYloS活性をモジュレートする能力を決定する、微生物に基づくアッセイである。試験化合物のYloS活性をモジュレートする能力の決定は、例えば、増殖、細胞内YloS濃度又は分泌されたYloS濃度を監視することにより達成されうる(YloSを阻害する化合物は試験微生物におけるYloSタンパク質の蓄積をもたらすであろう故)。YloS基質は、YloS活性のモジュレーションが、例えば、標識された基質の中間体若しくは産物への転換を検出することにより決定されうるように、放射性同位体、酵素標識若しくは他の可溶性若しくは不溶性シグナル発生部分で標識することができる。例えば、YloS基質は、直接又は間接に、32P、14C又は3Hにより標識することができ、そして放射性同位体は、シンチレーション計数により放射能発光の直接計数により検出されうる。あるいは、YloS基質は、可溶性若しくは不溶性シグナル発生部分で直接または間接に標識することができ、そしてシグナルは、比色定量アッセイ、酵素アッセイ又は蛍光測定法アッセイにより検出されうる。化合物のYloS活性をモジュレートする能力の決定は、別法として、レポーター遺伝子(検出可能なマーカー、例えば、ルシフェラーゼをコードする核酸に作動的に連結されたyloS−応答性調節エレメントを含む)の誘導を検出すること又はCoAで調節される細胞応答を検出することにより決定されうる。
【0062】
本発明の他の態様では、本発明のスクリーニングアッセイは、YloSタンパク質若しくはその生物学的に活性な部分をin vitroで試験化合物と接触させ、そして試験化合物がYloSタンパク質若しくはその生物学的に活性な部分に結合する能力又はYloSタンパク質若しくはその生物学的に活性な部分の活性をモジュレートする能力を決定する、細胞なしのアッセイ(cell-free assay)である。1つのこのような態様では、アッセイは、YloSタンパク質若しくはその生物学的に活性な部分を既知の基質と接触させてアッセイ混合物を形成し、アッセイ混合物を試験化合物と接触させ、そして試験化合物がその基質に対するYloSタンパク質の酵素活性をモジュレートする能力を決定することを含む。1つの態様では、既知の基質はYloSタンパク質である。他の態様では、既知の基質はYloS類似体である。フレーズ「YloS類似体」は、YloSと同じ若しくは同様な方法で機能するYloSタンパク質に対して構造が類似した化合物を意味する。例示的類似体は、標識されたYloSタンパク質及び/又は他の検出可能なYloSタンパク質誘導体を含む。YloS類似体という用語は、YloSタンパク質に密接に関係した化合物又はYloSタンパク質に由来する化合物、例えば、YloS基質として作用することができる構造的に関連した化合物も含む。
【0063】
スクリーニングアッセイは、微生物、タンパク質及び/又は反応体を入れるために適当ないかなる容器においても達成することができる。このような容器の例は、マイクロタイタープレート、試験管及びマイクロ遠心管を含む。本発明のアッセイ方法の1つより多くの態様において、YloSタンパク質、YloS基質、基質類似体又はYloSタンパク質を発現する組換え微生物を固定化して、産物、リガンド及び/又は基質の分離を促進させること並びにアッセイの自動化を受け入れることが望ましいことがある。例えば、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ/YloS融合タンパク質は、グルタチオンセファロースビーズ(Sigma Chemical Co., St.Louis, MI)又はグルタチオン誘導体化マイクロタイタープレートに吸着させることができる。マトリックス上にタンパク質を固定化するための他の技術(例えば、ビオチン−コンジュゲーション及びストレプトアビジン固定化又は抗体コンジュゲーション)を、本発明のスクリーニングアッセイに使用することもできる。
【0064】
本発明は、上記したスクリーニングアッセイにより同定された新規な作用物質も含む。従って、適切な動物モデルにおいて本明細書に記載のとおりに同定された作用物質を更に使用することは、本発明の範囲内にある。例えば、本明細書に記載の同定されたYloSモジュレート化剤(YloS modulating agent)(例えば、抗殺菌化合物)を、感染動物モデルにおいて使用して、このような作用物質による処置の効果、毒性又は副作用を決定することができ、及び/又は、病原性微生物により引起され又は誘発された特定の疾患状態を処置することができる。好ましい態様では、該新規作用物質は抗生物質である。
【0065】
YloSモジュレーターは、更に、本発明YloSタンパク質のいずれか1つの結晶構造に基づいてデザインされうる。特に、多くのグラム病原性バクテリア中のYloSの発見に少なくとも部分的に基づいて、例えば、本明細書に記載の組換え方法を使用して、有意な量のYloSタンパク質を産生させ、該タンパク質を精製しそして結晶化させ、該タンパク質をX線結晶学的方法に付し、そして決定された結晶構造に基づいて、モジュレーター(例えば、活性部位モジュレーター、例えば、競合体分子、活性部位阻害剤等)をデザインしそしてデザインされたモジュレーターを本明細書に記載のアッセイのいずれか1つに従って試験することができる。
【0066】
本発明の最も重要な結果のいくらかは、下記の図に要約される。
下記の実施例は、本発明を説明するだけであって、いずれにせよ本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
実施例1:一般的方法

本発明のBacillus subtilis株は、株PY79(原栄養株SPβ;Cat.#1A747, Bacillus Genetic Stock Center(BGSC), The Ohio State University, Columbus, Ohio43210USA)及び1102(leuA8metB5;Saito et al.(1979)Mol.Gen.Genet.170:117-122)に由来する。ネオマイシン耐性遺伝子(neo)カセット及びテトラサイクリン耐性遺伝子(tet)カセットは、それぞれ、プラスミドpBEST501(Cat.#ECE47, BGSC)及びpDG1514(Cat#ECE100, BGSC)から得られた。
【0067】
培地
B.subtilisのための標準最小培地(MM)は、1X Spizizen塩、グルタミン酸ナトリウム0.04%及びグルコース0.5%を含有する。標準固体完全培地は、Tryptone Blood Agar Broth(TBAB, Difco)である。標準液体完全培地は、Veal-Infusion-Yeast Extract broth(VY)である。液体試験管培養におけるチアミン産生を試験するために、チアミンを含まない培地を使用する(Difco)。フェドバッチ発酵のために、VF培地を使用する。これらの培地の組成物は、下記に記載されるか又は以前に記載された標準配合物である(Harwood and Archibald(1990)pp.1-26 and545-552(Appendix 1), In Cutting and Harwood(ed.)Molecular biological methods for Bacillus.John Wiley and Sons, New York)。
【0068】
TBAB培地:Difco Tryptone Blood Broth 33g、全体を1Lとするのに十分な量の水。オートクレーブ処理する。
【0069】
VY培地:Difco Veal Infusion Broth25g 、Difco Yeast Extract 5g、全体を1Lとするのに十分な量の水、オートクレーブ処理する。
【0070】
最小培地(MM):10XSpizizen塩100ml;50%グルコース10ml;40%グルタミン酸ナトリウム1ml、全体を1Lとするのに十分な量の水。
【0071】
10XSpizizen塩:K2HPO4140g;(NH42SO420g;KH2PO460g;クエン酸三ナトリウム・2H2O10g;MgSO4・7H2O;全体を1Lとするのに十分な量の水。
【0072】
チアミンアッセイ培地:Difcoチアミンアッセイ培地85g、全体を1Lとするのに十分な量の水。オートクレーブ処理する(Difco Manual(1998)pp.499-501, Difco Laboratories, Maryland, USA)。
【0073】
微量元素溶液:MnSO4・H2O1.4g;CoCl2・6H2O0.4g;(NH46Mo724・4H2O0.15g;AlCl3・6H2O0.1g;CuCl2・2H2O0.075g;全体を200mlとするのに十分な量の水。ろ過−滅菌する。
【0074】
Fe溶液:FeSO4・7H2O0.21g;全体を10mlとするのに十分な量の水。ろ過−滅菌する。
【0075】
CaCl2溶液:CaCl2・2H2O15.6g;全体を500mlとするのに十分な量の水。ろ過−滅菌する。
【0076】
Mg/Zn溶液:MgSO4・7H2O100g;ZnSO4・7H2O0.4g;全体を200mlとするのに十分な量の水。ろ過−滅菌する。
【0077】
VF発酵培地:グルタミン酸ナトリウム0.75g;KH2PO44.71g;K2HPO44.71g;Na2HPO4・12H2O8.23g;NH4Cl0.23g;(NH42SO41.41g;酵母エキス(Merck)11.77g;Basildon消泡剤0.2ml;全体を1Lとするのに十分な量の水。所定の場所で滅菌する。
【0078】
●醗酵槽に別々に加えた:27.3g/Lの最終濃度となるようにグルコース・H2
●醗酵槽に別々に加えた(最終濃度):2ml/L微量元素溶液、2ml/LCaCl2溶液、2ml/LMg/Zn溶液;2ml/LFe溶液。
●給餌の研究のためのバッチの改変は、特に下記の実施例において与えられるであろう。グルコースは必要に応じて供給した。給餌溶液は、下記の組成物に報告されたとおり、ミネラル、規定された栄養素若しくは食品栄養素を含有することができる:
【0079】
NB(栄養ブロス)を有するフェドバッチ法のための醗酵給餌溶液:最終濃度(オートクレーブ処理の後):660g/Lグルコース・H2O;2g/LMgSO4・7H2O;14.6mg/LMnSO4・H2O;4mg/LZnSO4・H2O;45.8g/L栄養ブロス(Difco、1g/ml溶液中で別々にオートクレーブ処理する)。
【0080】
HMPを伴うフェドバッチ法のための醗酵給餌溶液:最終濃度(オートクレーブ処理の後):660g/Lグルコース・H2O;2g/LMgSO4・7H2O;14.6mg/LMnSO4・H2O;4mg/LZnSO4・H2O。HMPを0.54g/L又は2.7g/Lとなるように加える(水/濃HCl中にHMPを溶解し、ろ過−滅菌する)。
【0081】
HETを伴うフェドバッチ法のための醗酵給餌溶液:最終濃度(オートクレーブ処理の後):660g/Lグルコース・H2O;2g/LMgSO4・7H2O;14.6mg/LMnSO4・H2O;4mg/LZnSO4・H2O。HETを0.54g/L又は2.7g/Lとなるように加える(水にHETを溶解し、ろ過−滅菌する)。
【0082】
HMP及びHETを伴うフェドバッチ法のための醗酵給餌溶液:最終濃度(オートクレーブ処理の後):660g/Lグルコース・H2O;2g/LMgSO4・7H2O;14.6mg/LMnSO4・H2O;4mg/LZnSO4・H2O。HMPを0.54g/L又は2.7g/Lとなるように加える(水/濃HClにHMPを溶解し、ろ過−滅菌する)。HETを0.54g/L又は2.7g/Lとなるように加える(水にHETを溶解し、ろ過−滅菌する)。
【0083】
チアミンアッセイ
生物学的アッセイ:既知の方法(Difco Manual(1998)pp.499-501, Difco Laboratories, Maryland, USA)を使用して、Salmonella typhimuriumに由来するインディケーターを使用して全チアミン化合物をアッセイした。株DM456(thiD906::MudJ)は、最小培地中のチアミン、TMP及びTPPに応答し、これに対して、株DM1864(thiL934::Tn10d)は、TPPのみに応答する(Webb and Downs(1997)J.Biol.Chem.272;15702-15707;Peterson and Downs(1997)J.Bacteriol.179:4894-4900)。0.0256〜100μg/リットルの範囲の、既知の量のチアミン、TMP及びTPPに対するDM456の応答は同様であった。更に、DM456は、TPPに対してDM1854よりも感受性が高いことが見出された。B.subtilis培養物をアッセイするために、上澄液をろ過−滅菌した後、希釈液を調製した。細胞のフレンチプレスによる破壊及び10分間の10,000gにおける遠心により得られたろ過−滅菌された細胞抽出物の希釈物から、細胞内チアミンレベルを測定した。インディケーター株をチアミンアッセイ培地(TAM)中で37℃で一夜増殖させた。濁度の読み取りを600nmで行いそして標準溶液の範囲と比較した。
【0084】
HPLC/チオクロム:先に述べた改変されたチオクロム−HPLCアッセイ法(Chie et al.(1999)Biochemistry38:6460-6470)を使用して、個々のチアミン化合物、チアミン、TMP及びTPPを測定した。簡単に言えば、培養上澄液又は細胞内抽出物100μlを4M酢酸カリウム200μlに加えた。次いでサンプルを、7MNaOH中の新鮮な3.8mMフェリシアン化カリウム100μlの添加により酸化する。混合物を激しく混合し、次いで飽和KH2PO4中の新鮮な0.06%H22100μlの添加によりクエンチする。サンプルをHPLCバイアルに移しそしてSupelcosilLC−18−Tカラム(15cm×4.6mm、3μm)(Supelco-Ref.No58970-U)に注入する。40%0.1MK2HPO4(pH6.6)及び4mM硫酸水素テトラブチルアンモニウムの存在下に10%〜35%メタノール(H2O50%〜25%)勾配により溶離を行う。365nmでの励起の後444nmで蛍光を測定する。カラムからの溶離の経時的順序は、チアミン、TMP及びTPPである。この方法を利用して醗酵期間中の内部及び外部チアミン産生の両方を監視した。
【0085】
HPLC/DAD:醗酵培養液中のチアミン及び中間体HMP及びHETを直接測定するために、サーモスタット付オートサンプラー及びダイオードアレー検出器(DAD)を備えたAgilent 1100HPLCシステムを使用してPhenomenexLUNAC18カラムで、サンプルのクロマトグラフィーを行った。カラム寸法は、150×4.6mm、粒度5ミクロンである。カラム温度を20℃で一定に保った。移動相は、水中のペンタンスルホネート0.4g、pH2(A)及びメタノール(B)の混合物である。20分における2%A(3分)〜20%Aの範囲の勾配溶離を適用する。流速は1ml/分である。検出方法は、254nmでの紫外線吸収である。この方法の選択性は、適切な基準化合物、チアミン、HMP及びHETの10μl標準溶液を、各々100μg/mlで、注入することにより証明された。標的化合物は、特別なサンプル調製なしに完全に分離された。
【0086】
分子技術及び遺伝子技術
標準遺伝子及び分子生物学技術は、当該技術分野で公知でありそして以前に記載されている(Maniatis et al.(1982)Molecula cloning:a laboratory manual.Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, N.Y.;Miller(1972)Experiments in molecular genetics.Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor)。DNA形質転換、PBS1普遍形質導入、及び他の標準B.subtilis遺伝子技術も当該技術分野で公知であり、そして以前に記載されている(Cutting and Horn(1990)pp.27-74, In Cutting and Harwood(ed.)Molecular biological methods for Bacillus.John Wiley and Sons, New York)。
【0087】
醗酵
チアミン産生株を、攪拌式タンク醗酵槽で、例えば、6〜12リットル作用容積を有するBIOFLO4500 New Brunswick 20リットル容器中で、増殖させた。コンピューター制御及びデータ収集は、NBS Biocommand 32 commercial software(New Brunswick Scientific Co., Inc., Edison, NJ, USA)により行った。
【0088】
植え込みサイズは、通常、容器中の最初の培地容積の5%であった。水酸化アンモニウム溶液(水中28%)の自動添加により反応器において常に6.8のpHを保った。醗酵温度は39℃でありそして6リットル/分の一定の空気流を与えた。消泡剤(Basildon)を必要に応じて手動で加え、そして容器中2psiの一定の圧力を保った。攪拌器の自動カスケーディングにより、15%溶解酸素(pO2)の最小濃度を達成した。最小攪拌速度を400rpmに設定した。
【0089】
醗酵は、バッチプロセスであることができるが、好ましくは、炭水化物制限フェドバッチ法(carbohydrate-limited, fed-batch processes)である。ゆえに、最初のグルコースの消費(これは通常6〜8時間のプロセス時間の後にそうなった)の後に規定された給餌溶液(上記)を反応器に与えた。その時点で、圧力を8psiに増加させ、そして給餌溶液の添加を70g/時間の速度で開始し、8時間の間に102.5g/時間に線形的に増加させそして102.5g/時間で一定に保った。
【0090】
実施例2:新規にチアミン及びチアミン化合物を産生する突然変異体微生物の培養
この実施例は、チアミン生合成及び脱調節突然変異ΔthiL、tx1、tx26突然変異及びそれらの組み合わせを単離して、チアミン化合物を過剰産生するB.subtilis株を産生することを説明する。
【0091】
30mlの最小培地振とうフラスコ培養物中で37℃で24時間増殖させた細胞から、野生型B.subtilis及び工学的に作られたB.subtilisからのチアミン産物の細胞内及び細胞外レベルを決定した。ポジティブコントロールとして、チアミン脱調節されたE.coliPT−R1突然変異体も試験した。バイオアッセイの結果は、チアミン産物は、音波処理された細胞の抽出物からは容易に検出されたが、培養培地からは殆ど又は全然検出されなかったことを示した(表1)。対数期又は定常期野生型B.subtilisにおけるチアミン産物の細胞内レベルは、約100〜200μg/Lであることが計算された。E.coliについて報告されたとおり、B.subtilisにおける細胞内チアミン産物は、TPPの形態にあるらしい。チアミン産物の細胞内レベルは、チアミン脱調節されたE.coliPT−R1株において有意により高く、定常期細胞で約1.6mg/Lに達した。
【0092】
【表1】


最小培地(30ml)中の37℃で24時間増殖後のチアミン濃度
37℃で24時間増殖後最小培地培養物30mlから集められた音波処理した細胞の1ml上澄液のチアミン濃度
すべての細胞内チアミン産物は培養培地に分泌されると仮定する。計算:(細胞内チアミン濃度(μg/L)×0.001L)×1000ml/L/30ml
【0093】
E.coli ThiLタンパク質配列をSubtilistのタンパク質データベースと比較すると、1つのみのタンパク質配列に対する有意な類似性が検出された:YdiA(P(N)=8.1e−15)。このタンパク質をコードする遺伝子、ydiAは、長さが975塩基対でありそしてB.subtilis染色体上で55°に位置した5つの遺伝子オペロンの第1遺伝子である。挿入部位から下流の遺伝子の転写を制御するIPTG−誘導性Pspacプロモーターを含有する、非極性挿入ベクターpMUTIN2及び4を使用して、thiL破壊突然変異体を発生させた(Vagner et al.(1998)Microbiology 144:3097-3104)。ヌクレオチド264と612との間のYdiA配列に対応する、2つのオリゴヌクレオチドプライマー、BsuydiA1(配列番号7)及びBsuydiA2(配列番号8)を使用して、標準PCR法により348bpDNA断片を調製した。この断片を、pMUTIN2ベクターのHindIII部位とBamHI部位との間にクローニングし、E.coliプラスミドpTH1を発生させた。次いで、このプラスミドを、5μg/mlのエリスロマイシンに耐性のコロニーを選択するDNA形質転換により、B.subtilisPY79のydiA(thiL)遺伝子に挿入した。1つのErmコロニーを回収しそしてTH5と名付けた(ΩthiL::pMUTIN)。IPTGの存在下又は不存在下にエリスロマイシンを有するTBAB培地上でのバクテリア増殖を比較することにより、ydiAの下流の遺伝子の1つ以上の発現が細胞増殖のために必要であることが決定された。ydiA(thiL)のヌクレオチド267と272との間に内因性ロー非依存性転写終結部位(endogeneous rho-independent transcription termination site)を含有する(cat2)若しくは欠いている(cat4)クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼカセットを挿入することにより、追加のydiA(thiL)破壊を発生させた場合にも、同様な結果が得られた。PCRプライマー対cat#1(配列番号9)−cat#2(配列番号10)及びcat#1−cat#4(配列番号11)を使用して、それぞれ、DNAカセットcat2又はcat4遺伝子を発生させ、これらを、プライマーydiA/atp/for/bam(配列番号12)−ydiA/atp/rev/sma(配列番号13)及びydiA/ctp/for/sma/2(配列番号14)−ydiA/ctp/rev/ecorI/2(配列番号15)を使用して発生させたydiA(thiL)PCR DNA断片にライゲーションさせた。次いで、5μg/mlのクロラムフェニコールに耐性のコロニーを選択するDNA形質転換により、株PY79の染色体ydiA(thiL)遺伝子に、ΔthiL::catカセットを直接挿入した。ΔthiL::cat4(TH12)を含有するCmコロニーのみが、TBAB培地上で正常に増殖し;ΔthiL::cat2を含有するCmコロニーは、小さな、ピンポイントコロニーとして増殖した。それぞれ、ΔthiL::cat2及びΔydiA::cat4を含有する株TH11及びTH12を取っておいた。驚くべきことに、株TH5及びTH12は、チアミン又はTPP栄養要求株ではなかった。その代わりに、両株はチアミン栄養緩徐株(bradytroph)であった、即ち、最小培地で、TH5及びTH12のコロニーサイズは、PY79コントロールコロニーの直径の半分であった。Salmonella及びE.coliのthiLなし突然変異体は厳密なチアミン栄養要求株であるので、B.subtilisは、TMPをTPPに転換することができる第2のキナーゼ活性又は別の経路を含むと思われた。興味深いことに、ydiA(thiL)突然変異体は、最小培地で37℃で1日のインキュベーションの後B.subtilis thiF又はthiG突然変異体(それぞれ、TH3及びTH4と呼ばれる株)と栄養共生することができたが、これに対して、PY79は3日以上を要した。これは、ydiA突然変異体がチアミン生合成について部分的に脱調節されそして野生型株よりもより拡散性の高いチアミン産物を放出することを示唆した。バイオアッセイの結果(表2)は、全細胞内チアミン産生(チアミン+TMP+TPP)レベルは、PY79よりもTH5及びTH12において僅かにより高い(2〜3倍)ことを示した。PY79に対して僅かにより高い全チアミンレベルは、培養培地においても検出されたが、細胞内レベルよりはるかに低かった。興味深いことに、チアミン産生の増加は、チアミン類似体ピリチアミンに対する耐性を与えるのに十分ではなかった。
【0094】
【表2】


最小培地(30ml)中の37℃で24時間増殖後のチアミン濃度
37℃で24時間増殖後最小培地培養物30mlから集められた音波処理した細胞の1ml上澄液のチアミン濃度
【0095】
B.subtilisのチアミン脱調節された突然変異体を単離するためのストラテジーは、thiA−lacZ融合体を含有するバクテリアを突然変異誘発させ、次いでXGAL含有培地で、TPP又はチアミンの存在下にLac(即ち、青いコロニー)であるコロニーをスクリーニングすることであった。thiAの5’プロモーター領域の417bpを含有する732bp長さのDNA断片を、標準方法を使用するPCRにより調製し、そしてpDG1728ベクターのプロモーターなしのlacZ遺伝子の前方に一方向にクローニングして(Guerout-Fleury et al.(1996)Gene180:57-61)、プラスミドpTH12を生じさせた。このベクターは、B.subtilisの非必須amyE遺伝子座(non-essential amyE locus)に異所性転写lacZ融合体(ectopic transcriptional lacZ fusions)を導入するようにデザインされている。プラスミドpTH12を制限酵素消化により線状化しそしてB.subtilis PY79に形質転換して、100μg/mlスペクチノマイシンに耐性のコロニーを選択した。TH21(ΩamyE::thiA−lacZ)と名付けられた1つの得られるコロニーは、異なる栄養増殖条件下に試験されるとき、明瞭なチアミン調節を示した。チアミン1μMを含有する振とうフラスコ培養物中で初期対数期(OD600=0.8〜0.9)へと増殖させると、thiA−lacZの発現は、チアミンなしの最小培地中で増殖させた細胞に比べて約80倍抑制された。HMP(1μM)もまた融合体の発現を抑制したが、より少ない程度(5〜7倍)であった。チアゾール及びアデノシン(各々1μM)は抑制活性を示した。経時実験では、thiA−lacZの発現は、細胞が初期対数期(OD600=0.8〜0.9)にあるとき最も高かった(200ミラー単位(Miller Units))。発現は、細胞が定常期(OD600>1)に入ると、徐々に減少した(50ミラー単位に)。
【0096】
thiA−lacZ融合体の調節は、いくつかの突然変異体においても評価された。胞子形成欠如突然変異体株(ΔspoOA::erm)において、融合体の発現は調節されたが、チアミンによる抑制のレベルは、野生型におけるよりも低かった。ydiA/thiLの欠失を含む株(TH22(ΔthiL::cat4、ΩamyE::thiA−lacZ))において、融合体は部分的に脱調節された。即ち、lacZ活性は、抑制増殖条件及び脱抑制増殖の両条件下に2〜3倍高かった。
【0097】
これらの結果に基づいて、thiA−lacZレポーター株TH22(ΔthiL::cat4)を使用して、抑制増殖条件下に、脱調節された突然変異体をスクリーニングした。2つの方法を使用して、このような突然変異体を単離した。第1の方法では、チアミン1μM及びXGAL25μg/mlを含有するMM寒天プレートを調製した。対数増殖期TH22細胞の均一な希釈を行った後、3滴のエチルメタンスルホネート(EMS、d=1.17g/ml溶液)を含有するペーパーディスクを、プレートの中心に置いた。Lacコロニーは、37℃で7日のインキュベーションの期間にわたり現れた。脱調節された突然変異体Tx1−Tx10を回収した。第2の方法では、EMSで突然変異誘発させた細胞のバンクを調製しそしてスクリーニングした。従って、対数段階TH−22細胞をEMS9.4mMで90分間処理し、そしてアリクォートを−90℃で10%グリセロール中に凍結させた。凍結されたストックからの細胞をVY培地中に希釈し、室温で30分間インキュベーションし、次いでチアミン1μM及びXGAL25μg/mlを含有するMM培地上でプレートした。Lacコロニーのスクリーニングにより、突然変異体Tx11〜Tx26を得た。これらの突然変異体は、チアミン抑制条件及びTPP抑制条件下に青色の出現の強度及びタイミングに基づき(表3)そして追加の表現型に基づいて3つのクラスに分類することができる。1つの突然変異体(Tx1)は、強いチアミン栄養緩徐株であることが見出され、これは、この突然変異体が、(1)残留TMPキナーゼ活性又は(2)TMPを介する第2のTMP−TPP経路に関与した遺伝子を不活性化したことを示唆する。他の突然変異体、Tx26は、ピリチアミン10μMに耐性であった。チアミン産物の合成に関して、突然変異体Tx7(クラス2)は、親株、TH22(ΔthiL::cat4、ΩamyE::thiA−lacZ)に比べて2〜3倍多くの全チアミン産物を分泌したが、チアミン産生物の細胞内レベルは同様であった(表4)。突然変異体Tx26(クラス1)は、TH22コントロール株よりも10〜15倍多くの全細胞外チアミン産生物を培養培地中に分泌した(表4)。分泌されたチアミン産生物の50%を僅かに超えたものがTPPの形態にあった。Tx1及びTx23により示されたクラス3突然変異体は、チアミン又はTPPの存在下に異なるLac発現に基づいてチアミン−TMP−TPP経路に影響を与えると思われる。
【0098】
【表3】

【0099】
【表4】


37℃で24時間増殖後の最小培地(30ml)中のチアミン濃度
37℃で24時間増殖後の最小培地培養物30mlから集められた音波処理した細胞の1ml上澄液のチアミン濃度
【0100】
外因性前駆体給餌の研究において、HMP及びHETの全チアミン産物への転換も、Tx7とTx26とでは異なっていた(表5)。各株を、指示された量のHET及びHMTを含有する最小培地培養物中で37℃で18時間増殖させた。培養培地及び細胞抽出物をチアミン産物について分析した。S.typhimuriumインディケーターDM456(ΩthiD906::MudJ)及びDM1856(ΩthiL934::Tn10)それぞれを使用する生物学的アッセイにより(チアミン+TMP+TPP)及び(TPP)を測定した。チアミン産物は培地中に検出されなかった。Tx7では、チアミン産物の大部分は、主としてTPPの形態で細胞内に見出された。対照的に、Tx26における全チアミン産物の90%は、主としてチアミン+TMPとして培養培地中に見出された。細胞外蓄積は、HMP+HETを加えることなく増殖させたTx26よりも約40倍高かった。
【0101】
【表5】

【0102】
突然変異tx26、thiL及びtx1の組み合わせを含有するB.subtilis株を構築した。この株は、組み込まれそして増幅された工学的に作られたチアミン生合成遺伝子のための宿主として役立つことができた。第1段階として、Tx26における突然変異を、DNA形質転換及びピリチアミン10μMに耐性のコロニーを選択することにより、TH12(ΔthiL::cat4)に移行させた。チアミンの存在下にやはりLacである1つのPyrコロニーを回収しそしてTH48と命名した。各株を、微量栄養素及びDifco栄養ブロス(NB)2.5%を補充した最小培地中で37℃で18時間増殖させた。上澄液を、チアミン+TMP+TPP)についてインディケーターSalmonellaDM456(thiD906::MudJ)及び(TPP)についてSalmonellaDM1856(thiL934::Tn10)を使用するバイオアッセイにより、チアミン産物について分析した。最小培地振とうフラスコ培養物中で増殖させると、TH48は、Tx26親に比べて同様なレベルのチアミン産物を産生した(表6)。次いで、catで中断されたthiL遺伝子(cat-interrupted thiL gene)をフレーム内欠失(in-frame deletion)により置換した。標準PCR法を使用して、thiLのフレーム内欠失(アミノ酸残基Gly79及びGly202を除去する)を最初に構築しそしてE.coliプラスミドベクターpEpUCΔ1のBamHI部位とEcoR1部位との間に挿入して、pTH30を創生した。pEpUCΔ1(S.Seror, Universite Paris-Sud, 91405 Orsay, France)は、選択可能なエリスロマイシン耐性(erm)カセット及び51℃を超えると機能しない温度感受性複製起点を含む。TH48細胞をpTH30により51℃で形質転換して、エリスロマイシン耐性を選択した。Cmでもある1つのErmコロニーを回収し、そして抗生物質選択の不存在下に28℃で夜通し72時間 増殖させた。次いでバクテリアを、TBAB寒天プレート上にプレートし、そしてプレートを37℃で一夜インキュベーションした。コロニーの約25%は、エリスロマイシン及びクロラムフェニコール抗生物質の両方に感受性であることが見出された。いくつかのErmCmコロニーからの染色体DNAのPCR分析により、フレーム内ΔthiL突然変異の存在及びΔthiL::cat4突然変異の不存在が確認された。これにより株TH83を得た。次いで、サイレントTn917挿入体に対する連鎖(linkage)、ΩyloA::Tn917(tx1に対する60%連鎖;Bacillus Genetic Stock Centerの株1A633,CU4153又はΩzdi−82::Tn917とも呼ばれる)を使用する標準方法によるPBS1形質導入によるTH83への形質導入により、tx1突然変異を導入した。得られる株はTH95と呼ばれた。
【0103】
【表6】

【0104】
20リットルの実験室規模の醗酵槽を使用する標準フェドバッチ醗酵において、NBはTH95においてチアミン産生を高めることが見出された。結果は、細胞外チアミン産物レベルは、NBなしの給餌に比べて4%NBを含有する給餌培地を使用すると約2〜3倍高かった(表7)。産生は、30〜48時間の増殖の間に6〜7mg/リットルの最大レベルに達した。更に重要には、チオクロム/HPLCアッセイにより判定して、細胞外チアミン産物の少なくとも65%はチアミンの形態にあったが、これに対して給餌物中にNBのない醗酵では、産物の大部分はTMP及びTPPであった。同時に、播種(seed)内のNBの量を増加させ(10%)そして給餌物からNBを除去すると、チアミン関連産物の産生を24時間培養時間に遅延させた。更に、分泌されたチアミン産物は減少しそして主としてTMPの形態にあった。バッチへのNB(4%)の添加も、全チアミン産生の減少及び分泌プロフィールの変化をもたらし、その場合すべてのチアミン形態(THI、TMP及びTPP)が殆ど等モル量であった。
【0105】
【表7】

【0106】
実施例3: HMP及びHETを使用するチアミン化合物の産生
この実施例は、チアミン前駆体HMP及びHETの存在下にチアミン脱調節株を増殖させてチアミン化合物を産生させる方法を記載する。
チアミン前駆体共給餌(co-feed)を伴う株TH95(tx26tx1ΔthiLyloA::Tn917)の醗酵を、フェドバッチ条件下に6リットル及び1リットル規模で行った。ヒドロキシエチルチアゾール(HET)0.54g/リットル及びヒドロキシメチルピリミジン(HMP)0.54g/リットルを含有する給餌溶液は、培養培地中のチアミンの有意な蓄積をもたらした。チアミン力価が48時間後に120mg/L(表8)に達し、これは、いずれかの前駆体の濃度に基づく25%のモル収率を表す。逆に、TMP及びTPP力価は非常に低く(それぞれ、4及び2mg/リットル)、チアミン関連分泌産物の全量の3%未満に相当する。HMP又はHETのみの供給は、すべてのチアミン産生物の非常に低い力価をもたらした。HMP及びHETの濃度を各々又は組み合わせにおいて2.7g/リットルに増加させても、チアミン産生レベルの有意な増加をもたらさなかった。HET0.54g/リットル及びHMP0.54g/リットルの存在下にTH95の醗酵を延長すると、チアミン力価を優先的に増加させた。70時間後に、チアミン(THI)力価は、250mg/リットルに達し、これに対して、TMP及びTPPレベル(7及び2mg/リットル)は48時間時点のレベルと同様であった(表9)。
【0107】
【表8】

【0108】
【表9】

【0109】
実施例4:ThiA合成を増加させたチアミン産生株
この実施例は、B.subtilis thiA遺伝子を過剰発現してチアミン産生物の過剰産生及び分泌をもたらすのに使用することができるB.subtilis thiA遺伝子を含有するDNAカセットの構築を説明する。
【0110】
発現を増加させるために、ネイティブプロモーター領域が、B.subtilisバクテリオファージSPO1に由来する強い構成的SPO1−26プロモーター(P26と命名された)により置換されている、増幅可能な工学的に作られたthiAカセットを構築した。最初に、全体のthiA遺伝子を含有する1770bp長さのDNA断片を、標準方法及び合成オリゴDNAプライマーthiA/for/pXI22/NdeI(配列番号1)及びthiA/rev/pXI22/Bam(配列番号2)を使用するPCRにより増幅した。NdeI及びBamHIによる消化の後に、PCR産生物を、pXI22modのNdeI部位とBamHI部位との間に挿入し、標準的な方法を用いてコンピテントE.coli細胞に形質転換した。pXI22modは、P26プロモーター、合成Bacillus RBS、cryTターミネーター、選択可能なアンピシリン(bla)耐性遺伝子及びクロラムフェニコール(cat)耐性遺伝子及びRBSとcryTターミネーターとの間に位置したNdeI/BamHIクローニング部位(NdeI部位はATG開始部位を発生させる)を含有する7.2kbE.coliプラスミドである。P26プロモーターは、プロモーターの−35及び−10コンセンサス領域間にE.coliColE1レプリコン及びbla遺伝子を配置することにより不活性化された。更に、pXI22内のNdeI部位を標準方法により修飾して、レプリコン領域内に位置した望まれないNdeI制限部位を除去した。これによりプラスミドpTH43を得た(図1)。他のthiA発現カセットも、catカセットを選択可能なテトラサイクリン耐性(tet)遺伝子で置換することによって調製された。これを行うために、プラスミドpDG1514(BGSC, Cat#ECE100)遺伝子からのtet遺伝子を含有する2042bpDNA断片を、標準方法及び合成オリゴDNAプライマーtet/for/PmeI(配列番号3)及びtet/rev/NotI(配列番号4)を使用するPCRにより増幅した。次いで、この断片をpTH43のPmeI部位とNotI部位との間にクローニングして、pTH47を得た(図1)。
【0111】
次の仕事は、P26thiA−catカセットをチアミン脱調節株に組み込むことであった。最初に、プラスミドpTH43をBsaIにより消化しそして3352bp長さの断片を標準方法を使用してアガロースゲルから精製した。精製した断片をそれ自体に高いDNA濃度でライゲーションしそして標準方法を使用してTH95コンピテント細胞に形質転換した。形質転換体を、クロラムフェニコール5μg/mlを含有するTBAB培地上で選択した。TH116と名付けられた1つのCmコロニーを更に研究するために取っておいた。引き続いてより高いレベルのクロラムフェニコールに耐性のコロニーを得ることにより、thiAの発現を増加させた。特に、クロラムフェニコール60μg/mlに耐性のTH116の株を得ることができる。クロラムフェニコール60μg/mlに耐性のTH116株の粗細胞抽出物のSDS−PAGE分析は、クロラムフェニコール5μg/mlの みに耐性のTH116株より有意に高いレベルのThiAタンパク質を示した。
【0112】
工学的に作られた株TH116によるチアミン産生を、HET共給餌(0.54g/リットル、重量/重量)を伴う標準フェドバッチ条件を使用して20リットルの実験室規模の醗酵槽で試験した。クロラムフェニコール60μg/mlに耐性の株TH116は、18〜21mg/リットルのチアミンを産生し(表10)、これはTH95醗酵に比較してチアミン産生において3倍の増加である(表8)。しかしながら、チアミン産生は、給餌の研究において観察されたよりも有意に低かった(実施例3参照)。この結果は、HMPの形成は速度限定性であることを示し、これは、不十分な量の追加の酵素活性又は低いレベルのAIRプールにより引起されうることを示す。
【0113】
【表10】

【0114】
実施例5:AIR形成を増加させた微生物を使用してチアミン化合物を産生する方法
この実施例は、プリン経路を改変してアミノイミダゾールリボチド(AIR)形成を増加させることにより、チアミン産生を増加させる実験を説明する。これは、同時に、プリンオペロン(purO)のリーダー領域内の突然変異を使用してB.subtilisプリンオペロンの発現を脱調節しそしてホスホリボシルアミノイミダゾールカルボキシラーゼIをコードするpurE遺伝子内の突然変異の導入によりAIRのカルボキシアミノイミダゾールリボチド(CAIR)への転換を阻止することにより達成された。
【0115】
purO突然変異を構築するために、オペロンプロモーターの上流領域を、プライマーYebF+1(配列番号18)及びYebG−1(配列番号19)を使用するPCRにより増幅させて、667bp産物を発生させた。野生型B.subtilis1012から調製されたゲノムDNAをテンプレートとして使用し、そしてPCR反応条件は、95℃で1分の変性、55℃で1分間のアニーリング及び72℃で1分間の伸長の30サイクルからなっていた。PCR産物を、WizardPCR精製キット(Promega)を使用して精製しそしてEcoR1−BamHIで二重消化した。PCR産物を、EcoR1−BamHI消化されたpUC19にクローニングして、プラスミドpNMR72を得た。
【0116】
purEプロモーターを、プライマーPurE+3(配列番号20)及びPurE−1(配列番号21)を使用するPCRにより増幅して、768bp産物を得た。PCR産物を、WizardPCR精製キット(Promega)を使用して精製しそしてBamHI−PstIで二重消化し、そしてBamHI−PstI消化されたpNMR72にクローニングして、プラスミドpNMR76を得た。
【0117】
プラスミドpNMR76をBamHIで線状化しそしてpBEST50からのBclIで消化したネオマイシン耐性(neo)遺伝子カセットにライゲーションして、pur転写と同じ方位のneoカセットを有するpNMR79及び反対方位のneoカセットを有するpNMR80を得た。両プラスミドをScaIで線状化しそしてコンピテントB.subtilis1012細胞に形質転換した。形質転換体を2.5μg/mlの最終濃度となるようにネオマイシンを含有するTBAB上で選択した。pNMR79形質転換体について67コロニーが観察され、そしてpNMR80形質転換については18コロニーが観察された。各形質転換実験からの6コロニーを取り出しそしてPCRにより分析した。2つのクローンが、各形質転換について二重乗換え(double crossover)として組み込まれたトランケーテッド(truncated)purオペロンを含有するものとして同定された。これらのクローンは、pNMR79形質転換についてBS1566及びBS1567と再命名されそしてpNMR80形質転換についてはBS1568及びBS1569と再命名された。
【0118】
purO欠失突然変異をpurE6突然変異と組み合わせるために、B.subtilis株1A320(purE6trpC2;Bacillus Genetic Stock Center, The Ohio State University, Columbus, Ohio43210USA)を、株BS1567からの染色体DNAで形質転換して、株TH94を得た。purO::neo purE6は密接に連鎖しているので、両突然変異を、標準条件下のPBS1普遍形質導入によりチアミン脱調節株TH95に同時に移行して、株TH101(tx26tx1ΔthiLyloA::Tn917ΔpurO::neo purE)を得た。チアミン産生を決定するために、株TH101を、HET(0.54g/リットル)共給餌を伴う標準1−Lフェドバッチ条件下に増殖させた。キサンチンもバッチ培地及び給餌溶液に、それぞれ、0.01%(重量/重量)及び1%(重量/重量、7.35N NaOHに溶解した)で加えて、プリン要求を飽和させた。キサンチンは、プリン新規酵素のいずれもフィードバック阻害もしなければ、高濃度で毒性でもない。更に、給餌物はNH4Cl(9.6%重量/重量)も含有しそしてpHをH2SO4(10%)及びNaOH(7.35M)を使用して制御した。結果は、同じ実験条件下にコントロールTH95醗酵よりも約6倍多くのチアミンをブロス中に産生したことを示した(表11)。
【0119】
【表11】


BD、検出以下
【0120】
実施例6:チアミンカップリング遺伝子(thiamin coupling gene)を強めることによりチアミン化合物産生を増加させる方法
この実施例は、B.subtilis thiC遺伝子を過剰発現してチアミン産物の過剰産生及び分泌をもたらすのに使用することができるB.subtilis thiC遺伝子を含有するDNAカセットの構築を説明する。この遺伝子は、再利用酵素、HETキナーゼをコードする遺伝子、thiKを含有するオペロン内に位置している。
【0121】
thiCの発現を増加させるために、ネイティブプロモーター領域が、B.subtilisバクテリオファージSP01に由来する強い構成的SP01−26プロモーター(P26と命名された)により置換されている増幅可能なカセットを構築した。これを行うために、thiAカセットをpTH47から除去しそしてthiKCを含有するDNA断片により置換した。最初に、thiKC構造遺伝子を含有する1555bp断片を、標準方法及び合成オリゴDNAプライマーthiKC/for3/pXI22/NdeI(配列番号5)及びthiCop/rev2/pXI22/SmaI(配列番号6)を使用するPCRにより増幅した。NdeI及びBamHIによる消化の後、PCR産物を、pTH43のNdeI部位とBamHI部位との間に挿入して、プラスミドpTH48(図2)を得た。
【0122】
このP26thiKC−tetカセットを、最初にpTH48をBsaIで消化しそして標準方法を使用してアガロースゲルからの4078bp断片を精製することにより、TH95に導入した。精製した断片をそれ自体に高DNA濃度でライゲーションしそして標準方法を使用してTH95コンピテント細胞中に形質転換した。形質転換体を、テトラサイクリン20μg/mlを含有するTBAB培地で選択した。TH115と名付けられた1つのTetコロニーを、更なる研究のために取っておいた。連続したより高いレベルのテトラサイクリンに耐性のコロニーを得ることによりthiKCの発現を増加させた。特に、テトラサイクリン45μg/mlに耐性のTH115の株を得ることができた。粗細胞抽出物のSDS−PAGE分析は、テトラサイクリン20μg/mlのみに耐性のTH115株よりも有意に高いレベルのThiK及びThiCタンパク質を示した。
【0123】
HMP及びHET共給餌(各々、0.54g/リットル)の存在下に、TH115の2つのフェドバッチ醗酵は、チアミン産生を増加させた(48時間で210mg/L及び78時間後300mg/リットル)。基質HMp又はHETに関するモル収率は各々48時間及び78時間で45%であった。2つの他の醗酵は、チアミン産生を僅かに減少させた。興味深いことに、より高いチラミン分泌は厳しい増殖制限事象と同時に起こった。この増殖制限事象は、醗酵の最初の時間の期間中に起こりそして6リットルの培養への栄養ブロス(NB)25g及びTPP1.6mgの添加により克服することができた。HPLC/DADは、醗酵ブロス中にチアミンが存在することを確証しそして他のUVで検出可能な化合物からチアミンを精製するのに使用することができた。興味深いことに、HMPもHETも、HPLC/DADにより検出されず、これは、0.54g/リットルで適用された共給餌物の完全な取り込みを示す。いずれにせよ、これらの結果は、TH115が、外因的に添加された前駆体からTMPを合成し、TMP脱リン酸化してチアミンとし、そしてチアミンを培養培地中に分泌するための高い能力を有することを示す。更に、ThiCカップリング活性は、明らかにこの方法では律速ではない。
【0124】
実施例7:チアゾール生合成酵素の発現レベルを高めることによりチアミン化合物産生を増加させる方法
この実施例は、B.subtilis thiBオペロン含有遺伝子tenAI−thiOSGFDを含有するDNAカセットであって、該遺伝子を過剰発現させてチアミン産生物を過剰産生させそして分泌させるのに使用することができるDNAカセットの構築を説明する。
【0125】
最初に、tenAI−thiOSGFDオペロンの前のネイティブプロモーター領域を欠失したチアゾール栄養要求株を発生させた。それをするために、プロモーター領域の各側に位置した2つのDNA断片(TenAの下流及びYjbQの上流の断片)を、最初に、プライマー対YjbQ+_BamHI(配列番号22)/YjbQ−_MluI(配列番号23)及びTenA+_KpnI(配列番号24)/TenA−_XhoI(配列番号25)を使用してB.subtilis PY79染色体から増幅した。クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼカセットを含有する第3断片を、プライマーTenA−cat+_KpnI(配列番号26)及びTenA−cat−_MluI(配列番号27)を使用してTH11染色体DNA(PY79ΔthiL::cat2)から増幅した。次いでこれらの3つの断片のアセンブリングを、pUC19において行ってプラスミドpTH401を発生させた。これは、PstI制限部位とEcoR1制限部位との間に挿入された‘yjbQ3’−MluI−3’cat5’−KpnI−5’tenA’DNA構成を含む。TH95におけるプラスミドpTH401の形質転換及びCm5μg/mlでの選択は、チアミン及びチアゾール栄養要求株TH403を生じさせた。
【0126】
26tenAI−thiOSGFDカセットを構築するために、pTH401におけるcatカセットを、KpnI及びMluIにより切り取り、次いで、バクテリオファージSPO1に由来する強い構成的プロモーターP26を含むPCR断片により置換した。この断片を、プライマーP26+_MluI(配列番号28)及びP26−_KpnI(配列番号29)を使用してプラスミドpUCSPO1−26から増幅した。次いでTH403バックグラウンドにおける原栄養性の回復について選択することにより、thiB過剰発現カセットの導入を行なった。TH403へのP26tenA’フレーム内融合を創生するライゲーション混合物の形質転換の後に、原栄養性形質転換体を、それらが最小培地プレート上で増殖する能力について選択した。それらのクロラムフェニコール感受性及びtenAI−thiOSGFDオペロンの前におけるP26プロモーターの存在が確認された。得られる株をTH404(図3)と名付けた。
【0127】
工学的に作られた株TH404によるチアミン産生を、HMP共給餌(0.54g/リットル、重量/重量)を伴う標準フェドバッチ条件(開始容積:6リットル)を使用して20リットルの実験室規模の醗酵槽で試験した。株TH404は、315mg/リットルまでのチアミンを産生した(表12)。その数値は、株TH95で48時間後に得られた数値(110mg/リットル、表9)よりも有意に高い。
【0128】
【表12】


実施例8:ThiA及びチアゾール生合成酵素の発現レベルを高めることによりチアミン化合物産生を増加させる方法
この実施例は、B.subtilis thiA遺伝子及びB.subtilis thiBオペロン含有遺伝子tenAI−thiOSGFDを含有するDNAカセットの組み合わせであって、該遺伝子を過剰発現させてチアミン産物を過剰産生させそして分泌させるのに使用することができるDNAカセットの組み合わせの構築を説明する。
【0129】
B.subtilisP26tenAI−thiOSGFDカセット(実施例7に記載された)及び増幅可能なP26thiA−catカセット(実施例4に記載された)を組み合わせるために、株TH404のコンピテント細胞を、標準方法を使用して株TH116から抽出された非集合的濃度(non-congressional concentration)の染色体DNAで形質転換した。形質転換体を、クロラムフェニコール5μg/mlに対する耐性について選択した。それらは、P26tenAI−thiOSGFD及びP26thiA−catカセットを含有することがPCR分析により確認された。TH405と名付けられた1つのCmコロニーを更なる研究のために取っておいた。連続したより高いレベルのクロラムフェニコールに耐性のコロニーを得ることによりTH405におけるthiAの発現を増加させた。特に、クロラムフェニコール60μg/mlに耐性のTH405の株を得ることができた。クロラムフェニコール60μg/mlに耐性の株TH405の粗抽出物のSDS−PAGE分析は、株TH116におけるP26thiA−catカセットの増幅後に得られたレベル(実施例4)と同じである、5μg/mlのみに耐性の株TH405より有意に高いレベルのThiAタンパク質を示した。
【0130】
工学的に作られた株TH405によるチアミン産生を、標準フェドバッチ条件(開始容積:6リットル)を使用して、20リットルの実験室規模の醗酵槽で試験した。クロラムフェニコール60μg/mlに耐性の株TH405は、48時間にチアミン34〜37mg/リットルを産生し(表13)、これは、HMP0.54g/リットルの共給餌を伴うTH95醗酵(表8)と比べてチアミン産生が6倍の増加である。しかしながら、チアミン産生は、共給餌の研究で観察された又はthiBオペロンのみを過剰発現する株で観察された(表12、実施例7)よりも有意に低かった。この結果は、実施例4からの我々の観察、即ち、HMPの形成が律速であることを確証し、そしてthiA及びthiBオペロンに加えて過剰発現されるのに必要である推定欠落遺伝子がthiBオペロンの一部ではないことを確証する。
【0131】
【表13】

【0132】
実施例9:グリシン又はシステイン利用性を増加させることによりチアミン化合物産生を増加させる方法
この実施例は、HET経路における両前駆体であるグリシン又はシステインの存在下にチアミン脱調節株を増殖させることによりチアミン産生を増加させる実験を説明する。
【0133】
B.subtilis TH96(tx26tx1ΔthiL)によるチアミン産生を、HMP(0.54g/リットル)及びグリシン共給餌(2g/リットル)を伴う標準フェドバッチ条件を使用して、6リットルの実験室規模の醗酵において試験した。チアミン、TMP及びTPP産生は、48時間で、それぞれ、14mg/リットル、3mg/リットル及び0.5mg/リットルに達し(表14)、これは、HMP給餌だけ(表8)で増殖させたTH95におけるチアミン産物レベルよりも実質的により高い。
【0134】
次に、B.subtilis TH95(tx26tx1ΔthiL)によるチアミン産生を、HMP(0.54g/リットル)及びシステイン共給餌(0.5g/リットル)を伴う標準フェドバッチ条件を使用して、6リットルの実験室規模の醗酵において試験し;システイン同化を促進するためにトレオニン(0.4g/リットル)及びイソロイシン(0.2g/リットル)も加えた。チアミン産生は、48時間で8mg/リットルに達し(表14)、これは、HMP給餌だけ(表8)で増殖させたTH95におけるチアミン力価よりも実質的に高い。
【0135】
チアミン産生の増加は、TH95の醗酵に4つのアミノ酸、グリシン、システイン、イソロイシン及びトレオニンをすべて添加することにより達成することもできた(表14)。更に、これらのアミノ酸の合成に関与する生合成遺伝子の発現を増加させること、又は該アミノ酸生合成遺伝子の発現を増加させる調節遺伝子若しくはシス作用性調節部位に突然変異を導入すること、又は該生合成酵素の活性を増加させる突然変異を導入することにより、チアミン産生性を増加させることができた。
【0136】
【表14】

【0137】
実施例10:前駆体としてグレーベジアミン(Grewe Diamine)を使用してチアミン化合物を産生させる方法
この実施例は、HMPの誘導体、4−アミノ−2−メチル−5−ピリミジンメタンアミン(Grewe Diamine)の存在下にチアミン脱調節株を増殖させることによりチアミンの産生を証明する実験を説明する。
【0138】
グレーベジアミン(Grewe Diamine)は、C−5ヒドロキシメチル基がアミノメチル基により置換されているHMPの誘導体である。B.subtilis TH95(tx25tx1ΔthiL)によるチアミン産生を、グレーベジアミン及びHET共給餌(各々0.54g/リットル)を伴う標準フェドバッチ条件を使用して、6リットルの実験室規模の醗酵で試験した。チアミン産生は、45.5時間で53mg/リットルに達した(表15)。給餌溶液中のグレーベジアミンのレベルを2.7g/リットルに増加させると、チアミン産生は46.5時間で120mg/リットルに増加した(表15)。これらの結果は、グレーベジアミン及びHMTからチアミンを産生する醗酵法を開発することの実行可能性を証明する。更に、これらの結果は、B.subtilisが、グレーベジアミンをHMP、若しくはチアミンを産生するのに使用することができる構造的に類似した化合物に転換することができる1つ以上の酵素活性をコードすることを証明する。
【0139】
【表15】

【0140】
実施例11:単離された遺伝子及び突然変異
yloS/tx1
株Tx1は、tx1突然変異を有し(突然変異を有するポリヌクレオチド配列のコピーについて配列番号30参照)、これは、TPPの存在下にLac表現型についてthiA−lacZ融合体含有バクテリアをスクリーニングすることにより単離された。この株(ΔthiL::cat4amyE::thiA−lacZtx1)は、この突然変異が、残留TMPキナーゼ活性、又はチアミンからTPPを形成させる第2経路に関与する未知の遺伝子産物を不活性化すると思われることを示す強いチアミン栄養緩徐株(brady troph)であることが示された。再構成の研究は、Tx1のLac表現型が、HET(ΩthiF::pMUTIN)又はHMP−P(ΩthiA::Tn917)経路のいずれかにおける阻止を含むTH22誘導体の分析により判定されたとおり、チアゾール又はHMP経路における一般的欠陥により引き起こされたのではないことを示した。
【0141】
tx1を有する株は、いかなる有意な量のチアミン産物も含有しない、栄養ブロス2.5%を補充された最小培地中で増殖するその能力に基づいて栄養緩徐株であることが確証された。これらの培養物において、Tx1はコントロール株TH22(ΩthiL::cat4ΩamyE::thiA−lacZ)よりも約10倍多くの細胞外チアミン産物を産生した。興味深いことに、すべての検出可能なチアミン産物は、チアミン又はTPPの形態にあり、TMPは培養培地中に検出されなかった。遺伝子の研究は、Tx1のチアミン栄養緩徐株表現型はΔthiL::cat4を必要とすることを示した。
【0142】
標準条件下にPBS1普遍形質導入を使用する遺伝子マッピングの研究は、tx1突然変異がΔthiL::cat4又はΩamyE::thiA−lacZに連鎖されて(linked)いないことを示した。しかしながら、tx1は、140°に位置したzdi−82::Tn917(BGSG#1A633)に対する90%形質導入連鎖を示した。同じマーカーに対する形質転換連鎖は8%であった。121°と140°との間に位置したいくつかのTn−917連鎖突然変異も、tx1に対する有意な連鎖を示した。1つの突然変異、urc83::Tn917(株1A611)は、高い形質導入連鎖(>60%)及び有意な形質転換連鎖(10%)を示した。ウラシル+システイン又はウラシル+メチオニンに対する栄養要求性を引起すこの挿入は、pyrオペロンとcysオペロン(139°)との間の接続部にある。第2の突然変異、yloA::Tn917は、tx1に対する同様な連鎖を示した。tx1のΩspoVM::Tn917突然変異に対するはるかに高い形質導入連鎖及びDNA形質転換連鎖が観察され、これは、tx1がspoVMに隣接したyloSに対して対立遺伝子であることを示す。yloS遺伝子は、チアミンピロホスホキナーゼ活性を有することが以前に示されたSchizosaccharomyces pombeのTNR3遺伝子タンパク質に対する弱いアミノ酸類似性(P=0.23)を示す。tx1がyloSに対して対立遺伝子であるかどうかを決定するために、yloS遺伝子の塩基124で出発する安定な448bp長さの欠失突然変異(ΔyloS::cat)を、標準方法を使用するPCRにより構築しそしてPY79に導入した。ΩthiL::pMUTINの導入の後、得られる二重突然変異体は、元のTx1突然変異体に表現型が類似していた。更に、Tx1突然変異体におけるyloSのDNA配列決定は、アミノ酸残基116におけるロイシンのフェニルアラニンへの置換をもたらした単塩基突然変異を示した(L116>F116;配列番号31参照)。
【0143】
これらの結果に基づいて、B.subtilisは、TMPからTPPを合成するための2つの生合成経路:(1)thiLの産物によるTMPのTPPへの直接の酵素的変換及び(2)未知のホスファターゼによるTMPのTHIへの酵素的変換、続いて、yloSの産生物によるTHIのTPPへのピロリン酸化を含む。
【0144】
経路(1)は、グラム陰性生物(例えば、Salmonella typhimurium及びE.coli)において存在することが示された。経路(2)は、いくつかのグラム菌及び、酵母を含む幾つかの他の真核微生物においてのみ存在する(Llorente et al, (1999)Mol.Microbiol.32:1140-1152)。更に、B.subtilisは、チアミンをTMPに転換するキナーゼ活性を含まなければならない。この結論は、突然変異ΔyloS::cat4及びΩthiA84::Tn917を含む株TH109がチアミンを含有する最小培地中で増殖することができることを示す遺伝子研究に基づいている。
【0145】
タンパク質データベースサーチは、少なくとも13のバクテリア属、即ち、Oceanobacillus、listeria、Staphylococcus、Enterococcus、Streptococcus、Clostridium、Fusobacterium、Tropheryma、Mesorhizobium、Brucella、Thermotoga、Agrobacterium及びHelicobactorは、YloSに対する有意な相同性を有するタンパク質をコードする1つ以上の遺伝子を含むことを示した。これらの微生物の大部分は、グラム菌である。非バクテリア生物(例えば、酵母、Drosophila melanogaster、Mus musculus、及びTreponema pallidum)からの遺伝子に対するより弱い相同性も検出された。興味深いことに、yloS含有バクテリア種の大部分は、thiLオーソログ遺伝子を含有せずそして反対にthiL含有バクテリア種の大部分はyloSオーソログ遺伝子を含まない(表16)。この後者の群は、大部分グラム陰性属からなっていた。B.subtilisと同様に、Oceanobacillus iheyensisは、両方の遺伝子を含む。これらの結果は、真性細菌は、チアミンのピロリン酸化又はTMPのリン酸化によりTPPを形成する能力に依存して、2つの群に分類することができることを示す。更に、yloSオーソログをのみを含有しそしてthiLオーソログを含有しないグラム菌の多くは、既知の病原体であり、これは、yloS遺伝子が抗バクテリア剤を開発するための標的として使用することができることを示唆する。
【0146】
【表16】

【0147】
yuaJ/tx26−1
標準条件を使用するPBS1普遍形質導入実験は、Tx26突然変異体が染色体の異なる領域に位置した2つの突然変異を含有することを示した。これらの実験では、染色体のまわりに位置した表現型的にサイレントなTn917挿入体(phenotypically silent Tn917 insertion)を含有する標準野生型B.subtilis株(Bacillus Genetic Stock Center)でファージ溶菌液を最初に調製した。これらの溶菌液の2つ(1つはマップ位置277°にΩyufR::Tn917(BGSC#1A642)を有しそして他方はマップ位置122.5°にΩmotA::Tn917(BGSC#1A631)を有する)は、Tx26表現型を野生型に復帰させることができた(TPP1μMを含有する最小培地でのLacのLacへの復帰及びピリチアミン0.1μMを使用するピリチアミン耐性のピリチアミン感受性への復帰)。これらの予想されなかった結果は、両突然変異が、Tx26により示されたチアミン脱調節表現型のために必要なことを示した。tx26−1と名付けられた1つの突然変異は、ΩyufR::Tn917に対する70%連鎖を示しそして、tx26−2と名付けられた他の突然変異は、ΩmotA::Tn917に対する59%連鎖を示した。更に、戻し交雑(back-cross)実験では、Tx26のピリチアミン耐性マーカーを、コングレッションDNA形質転換(congression DNA transformation)により感受性B.subtilis株に移行させることができた。これらのピリチアミン耐性形質転換体もチアミン脱調節されている(TPP1μMを含有する最小培地でlacでありそしてピリチアミン0.1μMに耐性である)。
【0148】
yufR/maeN(277.1°)、yuiGH(281°)、yurI(285.6°)、gerAB及びyvaC(294°)における抗生物質挿入の種々の組み合わせを含有する供与体株を使用する3因子交雑実験を、マイクロアレー分析を使用して同定された(下記参照)チアミン調節された遺伝子(thiamin-regulated gene)、yuaJに近いtx26−1突然変異を更にマッピングした。tx26−1がyuaJに対して対立遺伝子であるかどうかを決定するために、標準PCR法を使用して、yuaJの欠失突然変異を最初に構築した。これを達成するために、位置353で出発するyuaJの324bp長さの内部断片を、プライマーBsyuaJ/for/Hind3(配列番号16)及びBsyuaJ/rev/Bam(配列番号17)を使用して、PCR増幅しそしてpMUTIN2のBamHI部位とHindIII部位との間に挿入して、プラスミドpTH31を創生した。予測されたとおり、ΩyuaJ::pMUTINの野生型株(例えば、PY79)又はthiA突然変異体への導入は、表現型なしであった。しかしながら、いくつかの遺伝子交雑において、ΩyuaJ::pMUTIN2の破壊は、tx26−1に対する非常に高い形質導入連鎖及び形質転換連鎖(100%)を示した。これらの連鎖結果は、tx26−1をyuaJ内に又はyuaJの近くに位置づけた。更に、株TH112(tx26−1tx26−2ΔthiL)へのΩyuaJ::pMUTINの形質導入及び形質転換は、ピリチアミン0.1μMに耐性Ermコロニーをもたらした。最後に、Tx26からのyuaJのDNA配列分析は、tx26−1(突然変異を含むポリヌクレオチド配列のコピーについて配列番号33参照)がyuaJの対立遺伝子であることを確証した。Tx26からの4つの独立したPCR断片及び野生型親株(PY79)からの2つからのDNA配列の比較は、アミノ酸位置35のグルタミン残基のオーカー停止コドンへの変化をもたらした単塩基突然変異を検出した(Q35(CAA)>Stop(TAA);野生型YuaJのアミノ酸配列番号35に比較して配列番号34参照)。タンパク質データベースサーチによれば、yuaJは、チアミンパーミアーゼ又は表面抗原タンパク質遺伝子の調節因子をコードすることが示された。疎水性分析は、YuaJが6回膜貫通ドメインを含有することを示した。tx26−1突然変異の導入は、タンパク質分解を受けているらしいトランケーテッド(truncated)35アミノ酸タンパク質を産生することが予測される。これらの結果は、上に与えられた遺伝子データと共に、yuaJの機能の損失は、チアミン脱調節表現型の原因であることを示唆する。更に、マイクロアレーデータ(下記参照)は、yuaJの発現がTPPにより調節されることを示しそして予測された5’リーダー領域の検査は、コンセンサスTHIボックス調節配列に対する強い相同性を有するDNA配列を示した。
【0149】
tx26−2
Tn917挿入を含む株で調製されたPBS1ファージ溶菌液の収集を使用する普遍形質導入マッピングの研究(2因子交雑)は、tx26−2のB.subtilisゲノム上122.5°に位置したΩmotA::Tn917(BGSC#1A631)に対する60%連鎖を示した。この遺伝子マップ位置は、遺伝子、ykoFEDCのクラスターに対応し、その転写レベルは、チアミン脱調節Tx26株のマイクロアレー研究において増加することが示された(表17参照)。更に、これらの遺伝子は、オペロンとして組織されていると思われそしてykoFの上流のプロモーター領域にTHIボックス調節エレメントを含有する。ykoFの上流の400bp領域を含む、このオペロンのDNA配列決定は、Asp180(GAC)のAsn180(AAC)への置換をもたらすykoD遺伝子における単塩基突然変異を検出した(野生型YkoDのアミノ酸配列番号38と比較してアミノ酸配列について配列番号37参照)。タンパク質データベースサーチは、ykoDがHMP輸送ATP結合タンパク質をコードすることを示した。このオペロンにおける2つの他の遺伝子、ykoE及びCは、HMP輸送パーミアーゼをコードすることが予測される。これらの結果は、tx26−2突然変異がykoDの対立遺伝子でありそしてチアミンの細胞輸送に影響を与えることを示した(突然変異を含むポリヌクレオチド配列のコピーについて配列番号36参照)。
【0150】
マイクロアレープロファイリングにより同定されたチアミン調節された遺伝子
マイクロアレープロフィリングを行うために、チアミンピロリン酸を加えられているか又は加えられていない50mlのSpizizen最小培地を含有する振とうフラスコ培養物中でPY79を増殖させた。夜通し培養物を、新鮮な培地中にKlett=10単位となるように希釈しそして指数増殖期(Klett=100単位)となるように増殖させた。培養物の半分からの細胞を遠心により集め、そして全DNAを直ちに以前に記載された如くして抽出した(Lee et al.(2001)J.Bacteriol.183:7371-7380)。残りの培養物を初期定常期となるように増殖して後RNA抽出した。初期定常期は、グルコース消耗の30分後であると判定され;培地中のグルコース含有率を、標準方法を使用してグルコースアナライザー2(Beckman, Fullerton, CA)により測定した。標識されたcDNA標的の調製、マイクロアレーハイブリダイゼーション及び染色方法並びにデータ分析は上記Lee et al.に記載されている。
【0151】
既知のチアミン調節されたB.subtilis遺伝子thiA及びtenAI−thiOSGFDに加えて、結果の分析は、TPPの不存在下に増殖させた細胞におけるいくつかの他の遺伝子の3倍以上の転写レベルも示した。これらの遺伝子は、表17に列挙されている。これらの結果は、TPPの存在下に最小培地中で増殖させた野生型株及びチアミン脱調節(Tx26)株のマイクロアレーデータの比較により確認さされた。更に、これらの遺伝子のいくつかにおいては、コンセンサスシス作用調節部位(thiボックス)は、5’リーダー領域内で可視化することができ、これによりTPPによる調節を確証した。これらの遺伝子の発現を、個々に又は互いに協奏して、又は既知の生合成遺伝子との組み合わせにおいて、増加又は減少させることが、より高いチアミン、HMP及び/又はチアゾール産生ももたらすことができると予想されうる。
【0152】
【表17】


転写比は、TPP処理なしの最小培地中で指数期に増殖させた野生型細胞のハイブリダイゼーション実験からの平均差値(規格化の後)を、TPP処理をした場合の平均差値で割ること(wt/wt)により、又はビタミン処理(vit)を伴う最小培地中で指数期となるように増殖させた脱調節突然変異体Tx26細胞のハイブリダイゼーション実験からの平均差値を、同じ条件下に増殖させた野生型細胞の平均差値で割ること(deg/wt)により計算された。ある遺伝子(太字)では、平均差値は、ハイブリダイゼーション実験当たり二重のプローブセットから得られた。
n/c、平均差値の変化なし
【図面の簡単な説明】
【0153】
【図1】図1は、クロラムフェニコール耐性遺伝子(A)を有するプラスミドpTH43及びテトラサイクリン耐性遺伝子(B)を有するプラスミドpTH47に含まれたP26thiA発現カセットの構造を示す。
【図2】図2は、テトラサイクリン耐性遺伝子を有するプラスミドpTH48に含まれたP26thiKC発現カセットの構造を示す。
【図3】図3は、B.subtilis thiBオペロンを過剰発現する株TH404を構築するのに使用される二段階方法を示す。第1段階において、thiBプロモーター領域をクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(cat)カセットで置換することにより、チアミン栄養要求株を構築した。次いで、原栄養性の回復を使用して、thiBオペロンの前にバクテリオファージの強い構成的P26プロモーターを組み込んだ株を選択した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バチルス科、ラクトバチルス科、ストレプトコッカス科、コリネバクテリア科及びブレビバクテリア科よりなる群から選ばれる微生物であって、チアミン産生を脱調節しそしてチアミン産物を培養培地中に放出させる突然変異を含有する微生物。
【請求項2】
突然変異が、ΔthiL、tx1、tx26及びそれらの組み合わせからなる群より選ばれる、請求項1に記載の微生物。
【請求項3】
バチルス属、ラクトバチルス属、ラクトコッカス属、コリネバクテリウム属及びブレビバクテリウム属よりなる群から選ばれる、請求項1又は2に記載の微生物。
【請求項4】
バチルススブチリス細胞である、請求項3に記載の微生物。
【請求項5】
B.スブチリス TH95(ATCC PTA−5221)である、請求項4に記載の微生物。
【請求項6】
更にDNAカセットを含み、該DNAカセットが、
(a)thiA遺伝子産物をコードするポリヌクレオチド配列であって、該ポリヌクレオチド配列の1つ以上のコピーが該DNAカセットに含有されている、ポリヌクレオチド配列、
(b)thiKCオペロンからの遺伝子産物をコードするポリヌクレオチド配列であって、該ポリヌクレオチド配列の1つ以上のコピーが該DNAカセットに含有されている、ポリヌクレオチド配列、及び
(c)tenAl−thiOSGFDオペロンの遺伝子産物をコードするポリヌクレオチド配列であって、該ポリヌクレオチド配列が強い構成的プロモーターにより作動的に制御されている、ポリヌクレオチド配列、
よりなる群から選ばれるポリヌクレオチド配列を含有する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の微生物。
【請求項7】
更に、(a)tenAl−thiOSGFDオペロンの遺伝子産物をコードするポリヌクレオチド配列を含有するDNAカセット、及び(b)thiA遺伝子産物をコードするポリヌクレオチド配列の少なくとも1つのコピーを含有するDNAカセットであって、該ポリヌクレオチド配列が強い構成的プロモーターにより作動的に制御されているDNAカセット、を含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の微生物。
【請求項8】
B.スブチリス TH116(ATCC PTA−5224)、TH115(ATCC PTA−5223)、TH404(DSM 16333)及びTH405(DSM 16334)よりなる群から選ばれる、請求項6又は7に記載の微生物。
【請求項9】
B.スブチリスのプリンオペロンの発現を脱調節する第1突然変異及び5−アミノイミダゾールリボチド(AIR)のカルボキシアミノイミダゾールリボチド(CAIR)への転換を阻止する第2突然変異を更に含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の微生物。
【請求項10】
第1突然変異がpurオペロンのリーダー領域内の突然変異を含み、そして第2突然変異がホスホリボシルアミノイミダゾールカルボキシラーゼIをコードするpurE遺伝子内の突然変異を含む、請求項9に記載の微生物。
【請求項11】
B.スブチリス TH101(ATCC PTA−5222)である、請求項10に記載の微生物。
【請求項12】
(a)適当な培地中で、チアミン産物を培地中に過剰産生する請求項1〜11のいずれか1項に記載の微生物を培養すること、そして
(b)チアミン産物を回収すること、
を含む、チアミン産物を産生させる方法。
【請求項13】
(a)チアミン前駆体、
(b)チアミン前駆体及びプリン供給源、
(c)HET経路の前駆体、
(d)HMP経路の前駆体、及び
(e)HMPの誘導体、
よりなる群から選ばれる成分の存在下に微生物を培養することを更に含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
チアミン前駆体が、4−アミノ−5−ヒドロキシメチル−2−メチルピリミジン(HMP)、5−(2−ヒドロキシエチル)−4−メチルチアゾール(HET)及びそれらの組み合わせよりなる群から選ばれる、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
チアミン前駆体がHETであり、そしてプリン供給源がキサンチンである、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
HET経路の前駆体が、グリシン、システイン、イソロイシン、トレオニン及びそれらの組み合わせよりなる群から選ばれる、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
HMPの誘導体が、4−アミノ−2−メチル−5−ピリミジンメタンアミン(グレーベジアミン)である、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
tx1突然変異を含む単離されたポリヌクレオチド配列。
【請求項19】
突然変異が、アミノ酸残基116におけるロイシンのフェニルアラニンへの置換をもたらす、請求項18に記載の単離されたポリヌクレオチド配列。
【請求項20】
配列が、配列番号31であるか、又はストリンジェントな条件下に配列番号31にハイブリダイゼーションするポリヌクレオチド配列であり、そして微生物中に存在するとき、チアミン産生の脱調節を引き起こす、請求項18又は19に記載の単離されたポリヌクレオチド配列。
【請求項21】
ΔyufR::Tn917(tx26−1)に対する70%連鎖を有する第1突然変異及びΩmotA::Tn917(tx26−2)に対する59%連鎖を有する第2突然変異を含む単離されたポリヌクレオチド配列であって、チアミン産生性微生物における該突然変異の両方の存在がチアミン産生の脱調節を引起す、単離されたポリヌクレオチド配列。
【請求項22】
tx26−1突然変異が、配列番号33であるポリヌクレオチド配列又はストリンジェントな条件下に配列番号33にハイブリダイズするポリヌクレオチド配列によりコードされており、そしてtx26−2突然変異が、配列番号36であるポリヌクレオチド配列又はストリンジェントな条件下に配列番号36にハイブリダイズするポリヌクレオチド配列によりコードされており、そして微生物中に存在するとき、チアミン産生の脱調節を引起す、請求項21に記載の単離されたポリヌクレオチド配列。
【請求項23】
請求項18〜22のいずれか1項に記載の1つ以上のポリヌクレオチドを含むDNAカセット。
【請求項24】
請求項23のDNAカセットを含有する微生物。
【請求項25】
(a)グラム微生物がサンプル中に存在するかどうかを決定し、
(b)微生物がyloSオーソログを含有するかどうかを決定し、
(c)微生物がthiLオーソログを含有するかどうかを決定する、
ことを含み、
グラム微生物におけるyloSオーソログの存在及びthiLオーソログの不存在により、該微生物が病原性であることを示す、患者からの臨床サンプル中の病原性微生物を検出する方法。
【請求項26】
微生物が、リステリア属、スタフィロコッカス属、クロストリジウム属、エンテロコッカス属、及びストレプトコッカス属よりなる群から選ばれる、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
微生物が、リステリアモノシトゲネス、スタフィロコッカスアウレウス、スタフィロコッカスエピダーミディス、クロストリジウムテタニ、クロストリジウムパーフリンゲンス、エンテロコッカス属の種、ストレプトコッカスアガラクティエ、ストレプトコッカスピロゲネス及びストレプトコッカスニューモニエよりなる群から選ばれる、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
(a)YloSタンパク質を含むアッセイ組成物を試験化合物と接触させること、そして
(b)試験化合物がYloSタンパク質活性を阻害するかどうかを決定すること
を含み、該化合物を、YloSタンパク質活性の活性を阻害するその化合物の能力に基づいて抗生物質として同定する、抗生物質を同定するためのアッセイ。
【請求項29】
アッセイ組成物に含まれたYloSタンパク質は、精製されたYloSタンパク質、部分的に精製されたYloSタンパク質及びYloSタンパク質を産生する細胞からの粗細胞抽出物よりなる群から選ばれる、請求項28に記載のアッセイ。
【請求項30】
YloSタンパク質が、リステリア属、スタフィロコッカス属、クロストリジウム属、エンテロコッカス属、及びストレプトコッカス属よりなる群から選ばれる病原性微生物に由来するポリヌクレオチドによりコードされている、請求項28又は29に記載のアッセイ。
【請求項31】
該微生物が、リステリアモノシトゲネス、スタフィロコッカスアウレウス、スタフィロコッカスエピダーミディス、クロストリジウムテタニ、クロストリジウムパーフリンゲンス、エンテロコッカス属の種、ストレプトコッカスアガラクティエ、ストレプトコッカスピロゲネス及びストレプトコッカスニューモニエよりなる群から選ばれる、請求項30に記載のアッセイ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バチルス科、ラクトバチルス科、ストレプトコッカス科、コリネバクテリア科及びブレビバクテリア科よりなる群から選ばれる微生物であって、チアミン産生を脱調節しそしてチアミン産物を培養培地中に放出させる突然変異を含有する微生物。
【請求項2】
突然変異が、ΔthiL、tx1、tx26及びそれらの組み合わせからなる群より選ばれる、請求項1に記載の微生物。
【請求項3】
更にDNAカセットを含み、該DNAカセットが、
(a)thiA遺伝子産物をコードするポリヌクレオチド配列であって、該ポリヌクレオチド配列の1つ以上のコピーが該DNAカセットに含有されている、ポリヌクレオチド配列、
(b)thiKCオペロンからの遺伝子産物をコードするポリヌクレオチド配列であって、該ポリヌクレオチド配列の1つ以上のコピーが該DNAカセットに含有されている、ポリヌクレオチド配列、及び
(c)tenAl−thiOSGFDオペロンの遺伝子産物をコードするポリヌクレオチド配列であって、該ポリヌクレオチド配列が強い構成的プロモーターにより作動的に制御されている、ポリヌクレオチド配列、
よりなる群から選ばれるポリヌクレオチド配列を含有する、請求項1又は2に記載の微生物。
【請求項4】
(a)適当な培地中で、チアミン産物を培地中に過剰産生する請求項1〜3のいずれか1項に記載の微生物を培養すること、そして
(b)チアミン産物を回収すること、
を含む、チアミン産物を産生させる方法。
【請求項5】
txl突然変異を含むポリヌクレオチド配列。
【請求項6】
ΔyufR::Tn917(tx26−1)に対する70%連鎖を有する第1突然変異及びΩmotA::Tn917(tx26−2)に対する59%連鎖を有する第2突然変異を含むポリヌクレオチド配列であって、チアミン産生性微生物における該突然変異の両方の存在がチアミン産生の脱調節を引起す、ポリヌクレオチド配列。
【請求項7】
請求項5又は6に記載のポリヌクレオチドを1つ以上含むDNAカセットを含有する微生物。
【請求項8】
(a)グラム微生物がサンプル中に存在するかどうかを決定すること、
(b)微生物がyloSオーソログを含有するかどうかを決定すること、
(c)微生物がthiLオーソログを含有するかどうかを決定すること、
を含み、
グラム微生物におけるyloSオーソログの存在及びthiLオーソログの不存在により、該微生物が病原性であることを示す、患者からの臨床サンプル中の病原性微生物を検出する方法。
【請求項9】
(a)YloSタンパク質を含むアッセイ組成物を試験化合物と接触させること、そして
(b)試験化合物がYloSタンパク質活性を阻害するかどうかを決定すること
を含み、該化合物を、YloSタンパク質活性の活性を阻害するその化合物の能力に基づいて抗生物質として同定する、抗生物質を同定するためのアッセイ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2006−526395(P2006−526395A)
【公表日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−508093(P2006−508093)
【出願日】平成16年5月27日(2004.5.27)
【国際出願番号】PCT/CH2004/000321
【国際公開番号】WO2004/106557
【国際公開日】平成16年12月9日(2004.12.9)
【出願人】(503220392)ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ. (873)
【Fターム(参考)】