説明

発酵液循環式メタン発酵方法及び装置

【課題】高効率なメタン発酵処理を長期間安定的に維持する方法を提供する。
【解決手段】内側の所定高さに移動式レーキ60と周壁貫通のスクリューコンベア70とが設けられた嫌気性原料槽10に軽量異物Mの混入した有機性固形廃棄物Cを投入し、原料槽10に発酵液Sを供給してすると共に原料槽10の発酵液Sを下方から引き抜いて上方へ戻す循環によって液面を所定高さに維持し、原料槽10に投入された廃棄物Cを発酵液Sに浸漬させつつ可溶化して発酵液Sと共に循環させつつバイオガスGに分解し、原料槽10の液面に浮かぶ軽量異物Mをレーキ60の移動によりスクリューコンベア70に集めて排出する。好ましくは、発酵槽30に貯えた発酵液Sを原料槽10へ継続的に供給し、原料槽10の発酵液Sを継続的に引き抜いて固液分離し且つ分離した濾液Dを発酵槽30へ送ると共に固形分Eを原料槽10へ戻して循環させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は発酵液循環式メタン発酵方法及び装置に関し、とくに有機性固形廃棄物を原料槽に貯えて発酵液を循環させながらメタン発酵処理する方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
資源循環型社会を実現するため、生ごみや紙ごみ等の有機性固形廃棄物を嫌気性微生物によりエネルギー源として利用可能なバイオガス(約60%のメタンガス、約40%の二酸化炭素ガス、少量の硫化水素等を含む)に変換するメタン発酵処理の実用化が進められている。従来のメタン発酵処理の一例は、例えば特許文献1が開示するように、有機性固形廃棄物を混入異物と分別したうえでスラリー状に微粉砕し、メタン発酵槽(嫌気性発酵槽)内で嫌気性微生物と接触させてメタン発酵させる湿式法である。しかし、湿式メタン発酵法はスラリー化に手間がかかると共に、スラリー化のために廃棄物に対して少なくとも1〜2倍程度の希釈水を加える必要があるため発酵処理後に生じる発酵廃液の量が増え、廃水処理負担が増える問題点がある。
【0003】
これに対し本発明者らは、特許文献2〜4に開示するように、有機性固形廃棄物を無加水でスラリー化せずに処理できる発酵液循環式メタン発酵法を開発した。図6は、特許文献4の開示するメタン発酵装置1の一例を示す。図示例のメタン発酵装置1は、有機性固形廃棄物Cを気密に貯える原料槽10と、廃棄物Cを分解する嫌気性微生物が含まれる767A酵液(消化液)Sを気密に貯えるメタン発酵槽30と、発酵槽30の発酵液Sを原料槽10へ継続的に供給する供給装置40と、原料槽10の発酵液Sを継続的に引き抜いて固形分Eと濾液Dとに分離し且つ分離した濾液Dを発酵槽30へ送ると共に固形分Eを原料槽10へ戻す固液分離装置20とを有し、原料槽10と発酵槽30との間で発酵液Sを循環させながら廃棄物Cをメタン発酵させるものである。原料槽10及び発酵槽30はそれぞれ廃棄物C及び発酵液Sを気密に貯えることができる嫌気槽であり、ガス回収路44によって気相部が相互に連通されている。
【0004】
原料槽10の取入口8には、例えば一般家庭やレストラン、食品工場等から排出されるいわゆる可燃ごみ等の有機性固形廃棄物Cを、破砕装置2で適当な大きさに粗粉砕したうえで一定量ずつ連続的に投入する。その原料槽10に発酵槽30から発酵液Sを供給し、廃棄物Cを発酵液Sに浸漬させる。原料槽10の廃棄物Cは発酵液Sに浸漬・混合されながら嫌気性微生物により徐々に可溶化するが、その廃棄物C及び発酵液Sの混合液(C+S)を引き抜き装置14により原料槽10から引き抜き、固液分離装置20に導入して固形分Eと濾液Dとに分離する。原料槽10において十分に可溶化されて小粒径となった廃棄物Cは、発酵液Sと共に分離装置20から濾液Dとして輸送路28を介して発酵槽30に送られ、発酵槽30と原料槽10との間を循環しながら嫌気性微生物により更にバイオガスGに分解される。他方、原料槽10において未だ十分に可溶化されていない大粒径の廃棄物Cは、固形分Eとして分離装置20から返戻路27を介して原料槽10に戻され、原料槽10において更に可溶化されて小粒径となったのち固液分離装置20へ再導入される。
【0005】
図6に示す発酵液循環式メタン発酵法は、有機性固形廃棄物Cを先ず原料槽10で発酵液Sに浸漬させながら可溶化し、可溶化した廃棄物Cのみを発酵液Sと共に発酵槽30に循環させてバイオガスGに分解する方法であり、廃棄物C中の微生物分解速度の比較的早い易分解性有機物(例えば生ごみ等)と比較的遅い難分解性有機物(例えば紙ごみ等)とで原料槽10に留まる滞留時間を切り分け、両者を含む廃棄物C全体をスラリー化せずに高効率でメタン発酵処理することができる。また、廃棄物Cを無加水で処理するので、発酵槽30から適宜引き出す発酵廃液Nの量も小さく抑えることができる。原料槽10において固形廃棄物Cの分解反応(酸発酵)により有機酸を生じるが、発酵液Sの循環により有機酸の蓄積による原料槽10のpH低下(酸敗)を防ぐことができ、原料槽10において固形廃棄物Cの効率的な可溶化を促進すると共に、原料槽10においても供給される発酵液S中のメタン生成菌等が酸発酵の生成物を分解してバイオガスGを生成することができる。
【0006】
なお、発酵液循環式メタン発酵装置1は、図6のように原料槽10と発酵槽30とを用いた二槽式に限らず、例えば図8のように原料槽10のみを用いた一槽式とすることも可能である(非特許文献3参照)。図8の原料槽10は、内部を上下に仕切る有孔隔壁21と、その隔壁上方に設けた有機性固形廃棄物Cの取入口8と、原料槽10内に発酵液Sを供給する供給路41と、原料槽10内の発酵液Sを隔壁下方から引き抜いて隔壁上方へ戻して循環させるポンプ16付きの循環路15、27とを有する。例えば可燃ごみ等の有機性固形廃棄物Cを原料槽10の隔壁上方に投入すると共に発酵液Sを供給し、廃棄物Cを発酵液Sに浸漬しながら可溶化し、可溶化した廃棄物Cを発酵液Sと共に循環路15、27に循環させてメタン発酵する。図8のような一槽式の発酵液循環式メタン発酵装置も、可溶化前の廃棄物Cを有孔隔壁21の固液分離作用によって原料槽10内に留め、可溶化した廃棄物Cのみを発酵液Sと共に循環させてバイオガスGに分解するので、易分解性有機物と難分解性有機物との両者を含む廃棄物C全体を高効率でメタン発酵処理することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3064272号公報
【特許文献2】特開2007−044588号公報
【特許文献3】特開2007−216135号公報
【特許文献4】特開2010−142735号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
図6及び図8に示す従来の発酵液循環式メタン発酵装置1では、原料槽10の取入口8に選別装置3を設け、可燃ごみ等の有機性固形廃棄物C中に含まれるメタン発酵に不適な異物K(発泡スチロールや木片等)を選別分離し、バイオガス化に適した有機性固形有機物Cを原料槽10に投入している。ただし、選別装置3で異物Kを完全に選別することは困難であり、選別できなかった異物Kが原料槽10に徐々に蓄積する。発酵液循環式メタン発酵装置1を安定的に維持するためには原料槽10内に蓄積した異物Kを適宜排出・除去しなければならないが、原料槽10を開放すると空気(酸素)が流入して嫌気性微生物の失活(発酵効率の低下)を招き、爆発しうるメタンや有害な硫化水素を含むバイオガスGが周囲に拡散するおそれもあるので、原料槽10を密閉したまま内部の異物Kを外部へ排出する機構が必要である。
【0009】
図6及び図8の原料槽10は、内部を密閉状態(嫌気状態)に保持しつつ異物を排出するため、内部空間の底部(図8では隔壁上方空間の底部)に開閉弁19a付き排出口19を設け、空間上方の液面位に開閉弁17a付き引き出し路17を設けている。底部に沈降した水より比重の大きい重量異物G(割り箸等の木片や砂、貝殻等)は、開閉弁19aの開放により排出口19から排出する。また、原料槽10の液面に浮上する水より比重の小さい軽量異物M(発泡スチロールやビニール、プラスチック等)は、開閉弁17aの開放により水流で溢流堰18に集めて引き出し路17から残渣処理装置52へ排出する。残渣処理装置52に排出した異物Mは、例えば図6に示すように脱水装置53で脱水したのち処分し、濾液(脱水分離液)は液受け槽54及び返送装置(ポンプ等)55を介して発酵槽30又は原料槽10へ戻すことができる。必要に応じて原料槽10の発酵液S中に浮遊する異物Lを、固液分離装置20に設けた開閉弁56a付き引き出し路56を介して残渣処理装置52へ排出することもできる。
【0010】
しかし、図6又は図8の発酵液循環式メタン発酵装置1で実際に可燃ごみ等の有機性固形廃棄物Cを処理してみると、図示例のような排出機構では原料槽10の内部に蓄積する異物、とくに軽量異物Mを充分に排出できない問題が経験された。すなわち、可燃ごみ等に混入している発泡スチロール等の軽量異物Mは、原料槽10内で水分が付着すると、図7(A)のように水の表面張力により相互に付着して大きな塊状となり、溢流堰18を容易に越流しないことが判明した。図7(A)は実際の可燃ごみに含まれる軽量異物Mを集めて行った浮上実験の結果を示し、軽量異物Mが付着集合して見かけ比重が約0.95g/cmの大きな塊となることを表しているが、原料槽10を実際に開放して確認したところ、原料槽10の内部では図7(B)のように軽量異物Mの塊が見かけ比重以上に水面上に突き出た(浮上した)状態で蓄積されていることも判明した。図7(B)の軽量異物Mの塊には本来底部に沈むべき重量異物Gも一部含まれており、同図のように軽量異物Mが見かけ比重と異なる状態で蓄積される理由は、原料槽10で発生するバイオガスGが軽量異物Mに付着して浮力を与えるからと推定される。
【0011】
図7(B)のように塊状に蓄積した軽量異物Mは、図6及び図8の引き出し路17のように液面上に浮かぶスカム(浮きかす)等を水流で排出する機構では除去することができず、原料槽10に長期間滞留して有効容積を大幅に減少させ、メタン発酵の効率を低下させる。発酵液循環式により可燃ごみ等の有機性固形廃棄物Cを効率的に且つ長期間安定的にメタン発酵処理するためには、原料槽10の密閉状態(嫌気状態)を保持しつつ、図7(B)のように原料槽10の内部に蓄積する異物を除去できる機構が必要である。
【0012】
そこで本発明の目的は、高効率なメタン発酵処理を長期間安定的に維持することができる発酵液循環式メタン発酵方法及び装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
図1の実施例を参照するに、本発明による発酵液循環式メタン発酵方法は、軽量異物Mの混入した有機性固形廃棄物Cを内側の所定高さに移動式レーキ60と周壁貫通のスクリューコンベア70とが設けられた原料槽10に投入し、原料槽10に発酵液Sを供給し且つ原料槽10の発酵液Sを下方から引き抜いて上方へ戻す循環によって液面を所定高さに維持し、原料槽10に投入された廃棄物Cを発酵液Sに浸漬させつつ可溶化して発酵液Sと共に循環させつつバイオガスGに分解し、原料槽10の液面に浮かぶ軽量異物Mをレーキ60の移動によりスクリューコンベア70に集めて排出してなるものである。
【0014】
また図1のブロック図を参照するに、本発明による発酵液循環式メタン発酵装置は、内側の所定高さに移動式レーキ60と周壁貫通のスクリューコンベア70とが設けられた原料槽10、原料槽10に軽量異物Mの混入した有機性固形廃棄物Cを投入する取入口8、原料槽10に発酵液Sを供給する供給路41、及び原料槽10の発酵液Sを下方から引き抜いて上方へ戻す循環路15、27を備え、原料槽10に投入された廃棄物Cを発酵液Sに浸漬させつつ可溶化して発酵液Sと共に循環させつつバイオガスGに分解し、原料槽10の液面に浮かぶ軽量異物Mをレーキ60の移動によりスクリューコンベア70に集めて排出してなるものである。
【0015】
好ましくは、図1に示すように、発酵液Sを貯えるメタン発酵槽30を設け、供給路41に発酵槽30の発酵液Sを原料槽10へ継続的に供給する供給装置40を含め、循環路15、27に原料槽10の発酵液Sを継続的に引き抜いて固液分離し且つ分離した濾液Dを発酵槽30へ送ると共に固形分Eを原料槽10へ戻す固液分離装置20を含める。
【0016】
望ましくは、図2に示すように、移動式レーキ60に、水平腕部材62とその腕部材62にヒンジ結合された掻き取り羽63とを含める。掻き取り羽63の突端縁には複数の山型の凹凸を設けることができる。更に望ましくは、原料槽10の底部に開閉弁19a付き排出口19を設け、移動式レーキ60に原料槽10の底面上を摺動する下部レーキ67を含め、原料槽10の発酵液下に沈む異物Gを下部レーキ67により排出口19に集めて開閉弁19aの開放により排出可能とする。
【0017】
更に好ましくは、図2のように原料槽10の水平断面を円形とし、移動式レーキ60に、原料槽10の鉛直中心軸周りに回転する中間部分が回転方向前方に折れ曲がった中折れ腕部材62と、その腕部材62の中折れ部より先端側の内向き部62aにヒンジ結合された掻き取り羽63とを含める。また、スクリューコンベア70を原料槽10の半径方向に延在させると共にその原料槽内側部分を断面台形の上端取入溝72付き異物取入部材71で囲い、取入部材71の断面台形の傾斜面73でレーキ60の掻き取り羽63を跳ね上げ可能とする。スクリューコンベア70には、図1に示すように、その出口端を水封する水槽75を含めることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明による発酵液循環式メタン発酵方法及び装置は、軽量異物Mの混入した有機性固形廃棄物Cを投入する原料槽10の内側の所定高さに移動式レーキ60と周壁貫通のスクリューコンベア70とを設け、その原料槽10に発酵液Sを供給すると共に原料槽10の発酵液Sを下方から引き抜いて情報へ戻す循環によって液面を所定高さに維持し、原料槽10に投入された廃棄物Cを発酵液Sに浸漬させつつ可溶化して発酵液Sと共に循環させつつバイオガスGに分解し、原料槽10の発酵液面に浮かぶ異物Mをレーキ60の移動によりスクリューコンベア70に集めて排出するので、次の有利な効果を奏する。
【0019】
(イ)有機性固形廃棄物Cに混入した軽量異物Mは原料槽10の内部で相互に付着して大きな塊となって液面に浮上するが、移動式レーキ60を用いることにより、軽量異物Mを塊から掻き取ってスクリューコンベア70に寄せ集めることができる。
(ロ)掻き採った軽量異物Mは排出過程で再び塊状に付着して閉塞の原因となりうるが、スクリューコンベア70を用いることにより、閉塞を避けながら軽量異物Mを原料槽10の外部へ送り出すことができる。
(ハ)塊状となった軽量異物Mは原料槽10の内部でバイオガスGを抱き込んで液面から高く突き出た状態となる場合もあるが、移動式レーキ60に水平腕部材62とヒンジ結合された上下可動式の掻き取り羽63を含めることにより、液面上の浮上高さの異なる軽量異物を液面下の軽量異物と共に効率よく回収することができる。
【0020】
(ニ)また、移動式レーキ60に複数の山型の凹凸が突端縁に設けられた掻き取り羽63を含めることにより、紐状の軽量異物Mを含む様々な形状の軽量異物Mを効率よく掻き集めることができる。
(ホ)原料槽10の断面が円形である場合は、移動式レーキ60に中間部分が回転方向前方に折れ曲がった回転式中折れ腕部材62を含めることにより、液面に浮上する軽量異物Mを内向きに掻き寄せながら効率よく回収することができる。
(ヘ)移動式レーキ60及びスクリューコンベア70で軽量異物Mを原料槽10から排出しながら有機性固形廃棄物Cをメタン発酵することにより、軽量異物Mの蓄積による原料槽10の有効容積の減少を避け、廃棄物Cのメタン発酵効率を長期間安定的に維持することができる。
(ト)また、スクリューコンベア79の出口端を水槽75で水封することにより、原料槽10を密閉状態に保持したまま軽量異物Mを外部に排出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
以下、添付図面を参照して本発明を実施するための形態及び実施例を説明する。
【図1】は、本発明の発酵液循環式メタン発酵装置の一実施例の説明図である。
【図2】は、図1の移動式レーキ60及びスクリューコンベア70を含む原料槽10の水平断面図である。
【図3】は、本発明の移動式レーキ60の他の実施例の説明図である。
【図4】は、図1の発酵液循環式メタン発酵装置による異物排出能力を確認した実験結果を示すグラフである。
【図5】は、本発明の発酵液循環式メタン発酵装置の他の実施例の説明図である。
【図6】は、従来の発酵液循環式メタン発酵装置の一例の説明図である。
【図7】は、図6のメタン発酵装置内に蓄積する軽量異物の状態を示す説明図である。
【図8】は、従来の発酵液循環式メタン発酵装置の他の一例の説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
図1は、本発明の発酵液循環式メタン発酵装置1の実施例を示す。図示例のメタン発酵装置1は、有機性固形廃棄物Cを気密に貯える原料槽10を備えており、その原料槽10の内側の所定高さに移動式レーキ60と周壁貫通のスクリューコンベア70とが設けられている。また原料槽10には、軽量異物Mの混入した有機性固形廃棄物Cを投入する取入口8と、発酵液Sを供給する供給路41と、内部の発酵液Sを下方から引き抜いて上方へ戻すポンプ16付きの循環路15、27とが設けられている。原料槽10の内部に取入口8から有機性固形廃棄物Cを投入すると共に供給路41から発酵液Sを供給し、原料槽10内の発酵液Sを循環路15、27によって下方から抜き出して上方へ戻して循環させながら発酵液Sの液面を所定高さに維持し、投入された廃棄物Cを発酵液Sに浸漬させながら可溶化し、可溶化した廃棄物Cを更に発酵液Sと共に循環させながらバイオガスGに分解する。発酵液Sの一例は嫌気性微生物(例えば他のメタン発酵処理で馴養された種汚泥)を含有させた汚泥であるが、必要に応じて中和剤や微量栄養剤等の分解処理添加剤を加えてもよい。
【0023】
図示例のメタン発酵装置1は、図6と同様の二槽式のものであり、発酵液Sを気密に貯えるメタン発酵槽30を備え、供給路41上に発酵槽30の発酵液Sを原料槽10へ継続的に供給する供給装置40(例えばポンプ)を含め、循環路15、27上に原料槽10内の廃棄物Cと混合された発酵液Sを継続的に引き抜いて固形分Eと濾液Dとに固液分離する固液分離装置20を含めている。図示例の固液分離装置20は、原料槽10から廃棄物C及び発酵液Sの混合液(C+S)を引き抜く引き抜き装置14(図示例ではポンプ16付き引き抜き路15)と、分離後の濾液Dを発酵槽30へ送る輸送路28と、分離後の固形分Eを原料槽10へ戻す返戻路27とを有している。原料槽10に投入された有機性固形発酵液Sを原料槽10と固液分離装置20と発酵槽30との間で循環する発酵液Sに浸漬させながら可溶化し、可溶化した廃棄物Cを更に発酵液Sと共に原料槽10と固液分離装置20と発酵槽30との間で循環させながらバイオガスGに分解する。発酵槽30及び原料槽10で生成されたバイオガスGは、回収路44を介してガスホルダ45に回収する。
【0024】
本発明で用いる固液分離装置20は、とくに分離方式等に制限はなく、例えば所定粒径(例えば10mm、好ましくは5mm)以上の固形物Eを濾液Dと分離する沈降分離方式、スクリーン(フィルタ)方式、振動振るい方式、膜分離方式、又は後述の図5に示すような分離装置20とすることができる。また、循環させる発酵液Sは嫌気性微生物の活性温度(例えば20〜65℃、好ましくは30〜60℃)に保持することが望ましい。図示例では、メタン発酵槽30に撹拌装置31(循環ポンプ33付き外付け循環路32)を設けて内部の発酵液Sを撹拌すると共に、その循環路32上に加温装置(熱交換器)34を設けて発酵液Sを所要温度に加温している。例えば、ガスホルダ45のバイオガスGを燃料とする温水ボイラ47(図6参照)を設け、その温水ボイラ47の温水を供給路48経由で加温装置34へ供給することができる。必要に応じて図5に示すように、原料槽10にも撹拌装置11(例えば循環ポンプ13付き外付け循環路12)を設けることができる。
【0025】
以下、図1を参照して原料槽10に設けた移動式レーキ60及びスクリューコンベア70の作用について説明するが、本発明の適用対象は二槽式の発酵液循環式メタン発酵処理に限定されるものではなく、例えば図8のように一槽式のメタン発酵処理に本発明を適用することも可能である。すなわち、例えば図1の原料槽10に図8のような有孔隔壁21を含めることで一槽式の発酵液循環式メタン発酵装置1に転用することが可能であるが、そのような一槽式の原料槽10とした場合でも、以下に説明する移動式レーキ60及びスクリューコンベア70を設けて有効容積の減少を防止することにより、一槽式の発酵液循環式メタン発酵処理を長期間安定的に維持することが可能である。
【0026】
図示例の原料槽10には、周辺地域から排出される有機性固形廃棄物Cを含む可燃ごみを清掃センター等に集めて処理する場合を想定し、包装(ビニール袋等)を破砕して廃棄物Cを適当な大きさに粗粉砕する破砕装置2と、所定粒径(例えば50mm)以下の廃棄物Cを選別(ふるい分け)するトロンメル等の選別装置3とを設けている。選別装置3で選別された廃棄物Cを原料ホッパ7に一時貯留し、取入口8を介して原料槽10に一定量ずつ連続的に投入する。図6を参照して上述したように発酵液循環式のメタン発酵処理は、難分解性有機物と易分解有機物とを含む廃棄物Cを各有機物の分解速度に応じて処理時間を切り分けながらメタン発酵することができ、分解速度の異なる様々な固形有機物を含む可燃ごみ等の廃棄物Cを分別せずに連続的に処理する場合に適している。ただし、本発明の処理対象の有機性固形廃棄物Cは可燃ごみ等に限定されるわけではない。
【0027】
原料槽10の取入口8は、スクリューコンベアにより原料ホッパ7の廃棄物Cを原料槽10内の発酵液Sの液面下に押し込む構造となっており、原料槽10内のバイオガスGの逆流(流出)を発酵液Sの水封により抑制している。ただし、原料槽10の密閉状態(嫌気状態)を破壊せずに廃棄物Cを投入できれば、投入方法は図示例に限定されない。有機性固形廃棄物C中に混入している大粒径の異物Kは選別装置3により一部除去されるが、選別できなかった異物K(軽量異物Mと重量異物Gとを含む)は廃棄物Cと共に原料槽10へ投入される。上述したように発酵液循環式のメタン発酵処理では、原料槽10に投入された軽量異物Mは可溶化前の廃棄物Cと共に原料槽10に留まって滞留し、図7のように大きな塊状となって原料槽10の液面に蓄積する。原料槽10の液面位置に設けた移動式レーキ60と周壁貫通のスクリューコンベア70は、図7のような塊状に蓄積した液面上の軽量異物Mを原料槽10の外部へ排出するためのものである。
【0028】
例えば可燃ごみ等の有機性固形廃棄物C中に混入している軽量異物Mは、水を含んでも膨潤しない発泡スチロール、ビニール、プラスチック等が主体である。このような軽量異物Mを発酵液Sと共に固形分の移送可能なポンプ(モーノポンプ等)で排出することも考えられるが、本発明者の実験によれば、含水率の低い発泡スチロール等を含む液体をモーノポンプ等で連続的に排出すると閉塞が頻発する可能性がある。スクリューコンベア70は、含水率の低い軽量異物Mを閉塞させずに連続的に排出する場合に適している。また、原料槽10の嫌気状態に維持するためには排出路の出口端を水封することが望ましいが、ポンプの水流で押し流す機構の排出路では水封部で軽量異物Mを押し出せず、軽量異物Mが排出路内に滞留するおそれがある。スクリューコンベア式の排出路によれば、スクリューの押圧によって軽量異物Mを水封部(図示例では水槽75の液面下)に押し出すことができる。図示例は3段のスクリューコンベア70を組み合わせ、外側3段目のコンベアの出口端を水槽75に挿入して軽量異物Mを押し込む構造とすることにより、原料槽10を水封する仕組みとなっている。
【0029】
移動式レーキ60は、図7のように塊状となった液面上の軽量異物Mを掻き取ってスクリューコンベア70に寄せ集めるものである。本発明者の実験によれば、塊状の軽量異物Mにスクリューコンベア70を挿入しただけでは、挿入位置の軽量異物Mを排出することは可能であるが、水の表面張力により相互に付着して壁のような状態となった挿入位置周囲の軽量異物Mを排出することは困難である。原料槽10の液面に沿って移動するレーキ60により、塊状の軽量異物Mを掻き取ってスクリューコンベア70に寄せ集めることで、液面全体に浮上している塊状の軽量異物Mを外部へ排出することができる。
【0030】
図示例の移動式レーキ60は、円筒状の原料槽10の鉛直中心に沿って配置した回転軸61と、回転軸61の液面高さに設けた水平腕部材62と、その腕部材62に沿って結合した掻き取り羽63とを有する。また、スクリューコンベア70を原料槽10の半径方向に延在させ、回転軸61の周りの掻き取り羽63の回転によって液面に浮上している塊状の軽量異物Mを少しずつ掻き取ってスクリューコンベア70に投入している。ただし、移動式レーキ60の回転は本発明に必須の条件ではなく、例えば原料槽10が方形槽である場合は、その方形断面の一辺に沿ってスクリューコンベア70を延在させ、それと直角方向に移動式レーキ60(水平腕部材62及び掻き取り羽63)を移動させて液面に浮上する塊状の軽量異物Mをスクリューコンベア70に寄せ集めることも可能である。
【0031】
好ましくは、図2に示すように移動式レーキ60の掻き取り羽63を、ヒンジ64により上下動可能に水平腕部材62へ結合する。図7(B)を参照して説明したように、塊状の軽量異物Mは原料槽10の内部でバイオガスGを抱き込んで液面から高く突き出た状態となりうるので、掻き取り羽63を腕部材62に固定すると、軽量異物Mの浮力によって掻き取り羽63が上方に跳ね上げられて腕部材62に過重な負荷がかかるおそれがある。掻き取り羽63を上下可動式とすることで、液面上に異なる高さで浮上する軽量異物Mを、水面下にある軽量異物Mと共に効率よく回収することができる。また、上下可動式の掻き取り羽63にウェイト65の載置部を設けることで、掻き取り羽63の掻き取り力をウェイト65により調整することも可能である。
【0032】
更に好ましくは、図2に示すように、移動式レーキ60に中間部分が回転方向前方に折れ曲がった中折れ腕部材62を含め、その腕部材62の中折れ部より先端側の内向き部62aに掻き取り羽63をヒンジ結合する。本発明者の実験によれば、原料槽10の鉛直中心軸の周りに掻き取り羽63を回転させた場合、回転の遠心力により液面上の軽量異物Mが外側に押し出され、掻き取り羽63の外側の負荷が大きくなる現象が観察された。中折れ腕部材62によって掻き取り羽63を内向きとし、軽量異物Mを内向きに掻き寄せることにより、掻き取り羽63の負荷を均等にして効率的な回収が可能となる。
【0033】
掻き取り羽63は、図3(A)に示すような突端縁が平坦なフラット羽63b又は突端縁に複数の櫛型凹凸を設けた櫛型羽63cとすることも可能であるが、図2に示すように突端縁に複数の山型凹凸を設けた山型羽63aとすることが望ましい。フラット羽63bは、回転負荷が低く、発砲スチロール等の軽量異物Mを効率よく掻き集めることができるが、ビニールや紐状の軽量異物Mを効率よく掻き集めるには適していない。櫛型羽63cは、回転負荷が比較的高いものの、ビニールや紐状の軽量異物Mも効率よく掻き集めることができる。ただし、長期間使用すると軽量異物Mが櫛型凹凸に絡みついた状態となりやすい。山型羽63aは、回転負荷が比較的小さく、様々な形状の発砲スチロール、ビニール、紐状の軽量異物Mを長期間効率よく掻き集めることに適している。必要に応じて、移動式レーキ60に種類の異なる複数の掻き取り羽63を含めてもよい。
【0034】
更に望ましくは、図2に示すように、原料槽10の半径方向に延在させたスクリューコンベア70の原料槽内側部分を断面台形の上端取入溝72付き異物取入部材71で囲い、取入部材71の断面台形の傾斜面73で移動式レーキ60の掻き取り羽63を跳ね上げ可能とする。図示例では、上端にトラフ状の取入溝72が穿たれた断面台形の異物取入部材71を原料槽10の内面から半径方向へ突出させて設け、その取入溝72と連通する貫通孔を原料槽10の周壁に穿ち、その貫通孔を通してスクリューコンベア70を取入部材71の取入溝72の内側に配置している。また、取入部材71の取入溝72を原料槽10の液面より高い位置に設け、図2(B)の矢印に示すように断面台形の傾斜面73により掻き取り羽63を跳ね上げ、いわば傾斜面73を「ならい面」とする掻き取り羽63の変形又は回転によって液面の軽量異物Mを取入溝72に落とし込む。このように取入溝72の上方で掻き取り羽63を跳ね上げる構造とすることにより、液面の軽量異物Mを取入溝72に確実に落とし込むことが期待できる。
【0035】
上述した移動式レーキ60及びスクリューコンベア70によって原料槽10の液面に浮上した軽量異物Mを排出することにより、原料槽10の有効容積の減少を防止し、異物の混入した有機性固形廃棄物Cを発酵液循環式により長期間安定的にメタン発酵処理することができる。移動式レーキ60は、適当な速度で常時駆動してもよいが、軽量異物Mが蓄積する所定時間間隔で又は適宜に駆動することも可能である。原料槽10から排出された軽量異物Mは、例えばスクリューコンベア70の出口端に接続した水槽75の水面上に浮上するので、水槽75から回収して処分することができる。
【0036】
こうして本発明の目的である「高効率なメタン発酵処理を長期間安定的に維持することができる発酵液循環式メタン発酵方法及び装置」の提供を達成することができる。
【0037】
なお、図示例の原料槽10の回転軸61には、移動式レーキ60だけでなく、原料槽10の発酵液S中に滞留している軽量異物Mをほぐすための撹拌棒66と、原料槽10の底面上を摺動する下部レーキ67とが設けられている。図7のように大きな塊状となる前に軽量異物Mを撹拌棒66によってほぐすことにより、移動式レーキ60による液面からの軽量異物Mの回収の容易化を図ることができる。また、図6の従来方法では底部に沈降した重量異物Gの排出が不完全となって蓄積が生じうるが、例えば図3(B)に示すように、下部レーキ67に原料槽10の底面沿いに張出した腕部材68とその腕部材68に回転方向へ傾斜させて取り付けた掻き取り部材69とを含め、原料槽10の底部に沈降した重量異物Gを底部中央の排出口19へ集めて排出の効率化を図ることにより、重量異物Mの蓄積による原料槽10の有効容積の減少を確実に防止することができる。下部レーキ67の形状は図示例に限定されず、原料槽10が方形槽である場合は、その方形断面の一辺に沿って下部レーキ67を移動させて底部に沈降した重量異物Gを排出口19へ寄せ集めることも可能である。
【実施例1】
【0038】
図5は、本発明による発酵液循環式メタン発酵装置1の他の実施例を示す。図示例の原料槽1は所定高さに肉厚周壁78とした縮径部77を設け、上述した移動式レーキ60及びスクリューコンベア70を縮径部77の内側に配置し、その縮径部77の肉厚周壁78を鉛直方向に貫通する取入口8を設けている。例えば原料ホッパ7に貯留された有機性固形廃棄物Cを、取入口8に設けたスクリューコンベアにより原料槽10内の発酵液Sの液面下に一定量ずつ連続的に押し込ながら投入する。移動式レーキ60及びスクリューコンベア70は、図1を参照して上述した構造と同様のものである。
【0039】
また、図5の固液分離装置20は、有孔隔壁(例えばスクリーン付き隔壁)21により仕切られた導入室22及び分離室23と、その隔壁21の導入室22側表面に対向して旋回する回転翼24とを有する。原料槽10の混合液(C+S)が引き抜き路15を介して導入室22に導入され、隔壁21のスクリーンによって固液分離されるが、隔壁21の導入室側表面に微小間隙を介して回転翼24を旋回させることにより、導入した混合液(C+S)をほぐすと共に隔壁21のスクリーンの目詰まりを防止することができる。また、図5の固液分離装置20の導入室22は、開閉弁56a付き引き出し路56を介して残渣処理装置52に接続され、必要に応じて原料槽10の発酵液S中に浮遊している異物Lを残渣処理装置52で除去することができる。固液分離装置20によって発酵液Sを循環させる方法及び残渣処理装置52による異物の除去方法は、上述した図1及び図6と同様である。
【0040】
本発明者は、図5に示す発酵液循環式メタン発酵装置1を試作し、有機性固形廃棄物Cとして1トン/日の可燃ごみをメタン発酵処理した場合に、原料槽10に蓄積される異物量を確認する実験を行った。可燃ごみは、破砕装置2で破袋すると共に内容物を150mm以下の粒径に破砕し、選別装置(トロンメル等)3により粒径50mm以上の異物Kを分離し、粒径50mm以下の廃棄物Cを選別して原料槽10に投入した。選別された廃棄物Cの組成を確認したところ、バイオガス化に適した固形有機物(生ごみ及び紙ごみ)Cが約75%、バイオガス化に不適な異物(軽量異物M及び重量異物G)が約25%であった。原料槽10への廃棄物Cの投入量を継続的に計測しながら、原料槽10のスクリューコンベア70及び排出口19から排出される軽量異物M及び重量異物Gの排出量を継続的に計測し、それらの計測量から選別廃棄物Cの組成に基づいて原料槽10内に残る異物M、G(メタン発酵の未分解の有機物も含む)の蓄積量を推定した。
【0041】
図4に、原料槽10の異物蓄積量の推定結果の推移を示す。同図から分かるように、廃棄物Cの投入積算量の増加に応じて、原料槽10の異物M、Gの推定蓄積量(槽内量)も徐々に増加したが、異物M、Gの推定蓄積量は900〜1000kgになるとほぼ一定となり、更に投入積算量が増加してもそれ以上に蓄積量は増加しないと推定された。実験完了後に原料槽10を開放して蓄積した異物M、Gの量を確認したところ、乾重量で922kgの異物が蓄積していた。このことから、図4の異物蓄積量の推定結果は妥当であると判断できた。また、原料槽10から排出される軽量異物M及び重量異物G中に固形有機物(生ごみ及び紙ごみ)Cは殆ど見られず、固形有機物Cのバイオガス化率を約90%で維持されていることが確認された。この実験結果から、移動式レーキ60及びスクリューコンベア70を用いた本発明の異物排出機構が、原料槽10のメタン発酵効率(嫌気状態)に悪影響を与えることなく異物の蓄積量を抑制し、発酵液循環式による有機性固形廃棄物Cの高効率なメタン発酵処理を長期間安定的に維持するために有効であることが確認できた。
【符号の説明】
【0042】
1…発酵液循環式メタン発酵装置 2…破砕装置
3…選別装置 7…原料ホッパ
8…(スクリューコンベア付き)取入口
10…原料槽 11…撹拌装置
12…外付け循環路 13…循環ポンプ
14…引き抜き装置 15…引き抜き路
16…引き抜きポンプ 17…引き出し路
18…溢流堰 19…排出口
20…固液分離装置 21…有孔隔壁(スクリーン付き隔壁)
22…導入室 23…分離室
24…回転翼 25…駆動装置
26…回転軸 27…返戻路
28…輸送路 29…流量計
30…メタン発酵槽 31…撹拌装置
32…外付け循環路 33…循環ポンプ
34…加温装置(熱交換器) 35…廃液路
35a…溢流口
40…供給装置 41…供給路
42…供給ポンプ 44…ガス回収路
45…ガスホルダ 46…脱硫装置
47…温水ボイラ 48…温水供給路
50…制御装置
52…残渣除去装置 53…脱水装置
54…濾液受け槽 55…返送装置(返送ポンプ)
56…引き出し路 57…返送路
60…移動式レーキ(回転レーキ) 61…回転軸
62…(中折れ)水平腕部材 62a…内向き部
63…掻き取り羽 63a…山型羽
63b…フラット羽 63c…櫛型羽
64…ヒンジ 65…ウェイト
66…撹拌棒 67…下部レーキ
68…張出し腕部材 69…掻き取り部材
70…スクリューコンベア 71…異物取入部材
72…取入溝 73…傾斜面(ならい面)
75…水槽 76…コンテナ
77…縮径部 78…肉厚周壁
C…有機性固形廃棄物 D…濾液
E…固形分 F…分離液
G…重量異物 H…温熱媒体
K…選別異物 L…浮遊異物
M…軽量異物 N…廃液
S…発酵液
G…バイオガス(分解生成ガス)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軽量異物の混入した有機性固形廃棄物を内側の所定高さに移動式レーキと周壁貫通のスクリューコンベアとが設けられた原料槽に投入し、前記原料槽に発酵液を供給し且つ原料槽の発酵液を下方から引き抜いて上方へ戻す循環によって液面を前記所定高さに維持し、前記原料槽に投入された廃棄物を発酵液に浸漬させつつ可溶化して発酵液と共に循環させつつバイオガスに分解し、前記原料槽の液面に浮かぶ軽量異物をレーキの移動によりスクリューコンベアに集めて排出してなる発酵液循環式メタン発酵方法。
【請求項2】
請求項1の方法において、前記発酵液を貯えるメタン発酵槽を設け、その発酵槽から原料槽へ発酵液を継続的に供給し且つ原料槽の発酵液を継続的に引き抜いて固液分離装置経由で発酵槽へ送ると共に分離された固形分を原料槽へ戻して循環させてなる発酵液循環式メタン発酵方法。
【請求項3】
請求項1又は2の方法において、前記移動式レーキに、水平腕部材とその腕部材にヒンジ結合された掻き取り羽とを含めてなる発酵液循環式メタン発酵方法。
【請求項4】
請求項1から3の何れかの方法において、前記移動式レーキに、複数の山型の凹凸が突端縁に設けられた掻き取り羽を含めてなる発酵液循環式メタン発酵方法。
【請求項5】
請求項1から4の何れかの方法において、前記原料槽の水平断面を円形とし、前記移動式レーキに、前記原料槽の鉛直中心軸周りに回転する中間部分が回転方向前方に折れ曲がった中折れ腕部材とその腕部材の中折れ部より先端側の内向き部にヒンジ結合された掻き取り羽とを含めてなる発酵液循環式メタン発酵方法。
【請求項6】
請求項5の方法において、前記スクリューコンベアを原料槽の半径方向に延在させると共にその原料槽内側部分を断面台形の上端取入溝付き異物取入部材で囲い、前記取入部材の断面台形の傾斜面でレーキの掻き取り羽を跳ね上げ可能としてなる発酵液循環式メタン発酵方法。
【請求項7】
請求項1から6の何れかの方法において、前記原料槽の底部に開閉弁付き排出口を設け、前記移動式レーキに原料槽の底面上を摺動する下部レーキを含め、前記原料槽の発酵液下に沈む異物を下部レーキにより排出口に集めて開閉弁の開放により排出してなる発酵液循環式メタン発酵方法。
【請求項8】
請求項1から7の何れかの方法において、前記スクリューコンベアに、その出口端を水封する水槽を含めてなる発酵液循環式メタン発酵方法。
【請求項9】
内側の所定高さに移動式レーキと周壁貫通のスクリューコンベアとが設けられた原料槽、前記原料槽に軽量異物の混入した有機性固形廃棄物を投入する取入口、前記原料槽に発酵液を供給する供給路、及び前記原料槽の発酵液を下方から引き抜いて上方へ戻す循環路を備え、前記原料槽に投入された廃棄物を発酵液に浸漬させつつ可溶化して発酵液と共に循環させつつバイオガスに分解し、前記原料槽の液面に浮かぶ軽量異物をレーキの移動によりスクリューコンベアに集めて排出してなる発酵液循環式メタン発酵装置。
【請求項10】
請求項9の装置において、前記発酵液を貯えるメタン発酵槽を設け、前記供給路に発酵槽の発酵液を原料槽へ継続的に供給する供給装置を含め、前記循環路に原料槽の発酵液を継続的に引き抜いて固液分離し且つ分離した濾液を発酵槽へ送ると共に固形分を原料槽へ戻す固液分離装置を含めてなる発酵液循環式メタン発酵装置。
【請求項11】
請求項9又は10の装置において、前記移動式レーキに、水平腕部材とその腕部材にヒンジ結合された掻き取り羽とを含めてなる発酵液循環式メタン発酵装置。
【請求項12】
請求項9から11の何れかの装置において、前記移動式レーキに、複数の山型の凹凸が突端縁に設けられた掻き取り羽を含めてなる発酵液循環式メタン発酵装置。
【請求項13】
請求項9から12の何れかの装置において、前記原料槽の水平断面を円形とし、前記移動式レーキに、前記原料槽の鉛直中心軸周りに回転する中間部分が回転方向前方に折れ曲がった中折れ腕部材とその腕部材の中折れ部より先端側の内向き部にヒンジ結合された掻き取り羽とを含めてなる発酵液循環式メタン発酵装置。
【請求項14】
請求項13の装置において、前記スクリューコンベアを原料槽の半径方向に延在させると共にその原料槽内側部分を断面台形の上端取入溝付き異物取入部材で囲い、前記取入部材の断面台形の傾斜面でレーキの掻き取り羽を跳ね上げ可能としてなる発酵液循環式メタン発酵装置。
【請求項15】
請求項9から14の何れかの装置において、前記原料槽の底部に開閉弁付き排出口を設け、前記移動式レーキに原料槽の底面上を摺動する下部レーキを含め、前記原料槽の発酵液下に沈む異物を下部レーキにより排出口に集めて開閉弁の開放により排出してなる発酵液循環式メタン発酵装置。
【請求項16】
請求項9から15の何れかの装置において、前記スクリューコンベアに、その出口端を水封する水槽を含めてなる発酵液循環式メタン発酵装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−86157(P2012−86157A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−235139(P2010−235139)
【出願日】平成22年10月20日(2010.10.20)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 鹿島建設株式会社技術研究所による2010年9月30日発行の鹿島技術研究所年報第58号の発表論文
【出願人】(000001373)鹿島建設株式会社 (1,387)
【出願人】(000162593)株式会社協和エクシオ (57)
【Fターム(参考)】