発電システムにおける蒸発器
【課題】アンモニアおよび硫酸の両方に対しても十分な耐食性を発揮しえる材料からなる蒸発器を提供する。
【解決手段】発電機4、タービン3、このタービンに熱媒体として供給するアンモニア水の蒸気である熱媒蒸気を発生させる蒸発器1及びタービンからの排出蒸気を凝縮させる凝縮器5を有する発電システムにおける蒸発器であって、蒸発器における少なくとも伝熱管1bの材料として、ニッケルが51.0〜62.5質量%、クロムが14.5〜16.5質量%、モリブデンが15.0〜17.0質量%、鉄が4.0〜7.0質量%、タングステンが3.0〜4.5質量%、モリブデンが15.0〜17.0質量%、及びコバルトが1.5〜2.5質量%の各範囲内で含まれたものを用いることにより、蒸発器における熱源として硫酸製造プラントにて得られる硫酸を用いるようにしたものである。
【解決手段】発電機4、タービン3、このタービンに熱媒体として供給するアンモニア水の蒸気である熱媒蒸気を発生させる蒸発器1及びタービンからの排出蒸気を凝縮させる凝縮器5を有する発電システムにおける蒸発器であって、蒸発器における少なくとも伝熱管1bの材料として、ニッケルが51.0〜62.5質量%、クロムが14.5〜16.5質量%、モリブデンが15.0〜17.0質量%、鉄が4.0〜7.0質量%、タングステンが3.0〜4.5質量%、モリブデンが15.0〜17.0質量%、及びコバルトが1.5〜2.5質量%の各範囲内で含まれたものを用いることにより、蒸発器における熱源として硫酸製造プラントにて得られる硫酸を用いるようにしたものである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電システムにおける蒸発器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、硫酸製造プラントにおいて、吸収塔を出た90℃程度の硫酸を冷却水により冷却し製品タンクに送っており、低い温度ではあるが、この硫酸の持つ熱を利用することが考えられる。
【0003】
従来、低温用の発電システムにはアンモニアを熱媒体とするランキンサイクルを用いたものがあり、その熱源として、温水が一般的に用いられており、したがって蒸発器の少なくとも伝熱部分、すなわち伝熱管の材料としては、アンモニアに対する耐食性だけを考慮したもの、例えば炭素鋼が使用されていた。
【0004】
ところで、このような発電システムの熱源に、上述したように、硫酸製造プラントで得られた硫酸の持つ熱を用いる場合には、蒸発器の伝熱管に硫酸が流されることになるため、蒸発器の材料、特に、伝熱管の材料としては、アンモニアと硫酸に対して有効なもの、例えばステンレス鋼などが用いられることになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、蒸発器における伝熱管の材料として、ステンレス鋼を用いた場合でも、アンモニアと硫酸に対しては、その耐食性が十分ではなかった。
そこで、本発明は、少なくとも、蒸発器の伝熱部材がアンモニアおよび硫酸の両方に対しても十分な耐食性を発揮し得る材料にて構成された発電システムにおける蒸発器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の発電システムにおける蒸発器は、発電機およびこの発電機を回転させるタービンを有するとともに、このタービンに熱媒体として供給するアンモニア水またはアンモニアの蒸気である熱媒蒸気を発生させる蒸発器および上記タービンからの排出蒸気を凝縮させる凝縮器を有する発電システムにおける蒸発器であって、
蒸発器における少なくとも伝熱部材の材料として、ニッケル(Ni)が51.0〜61.5質量%、モリブデン(Mo)が15.0〜17.0質量%、クロム(Cr)が14.5〜16.5質量%、鉄(Fe)が4.0〜7.0質量%、タングステン(W)が3.0〜4.5質量%およびコバルト(Co)が1.5〜2.5質量%の各範囲内で含まれるものを用いることにより、蒸発器における熱源として硫酸製造工程から得られる硫酸を用いるようにしたものである。
【発明の効果】
【0007】
上述した材料を蒸発器の少なくとも伝熱部材に用いるようにしたので、アンモニアおよび硫酸の両方に対しても耐食性が発揮されることとなり、硫酸製造工程で得られた硫酸の有する熱を支障なく回収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施の形態に係る発電システムの概略構成を示す模式図である。
【図2】本発明の他の実施の形態に係る発電システムの概略構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態に係る発電システムにおける蒸発器を図1に基づき説明する。
まず、発電システムの概略構成について説明する。
【0010】
この発電システムは、硫酸製造工程すなわち硫酸製造プラントで得られた低温の、例えば90℃程度の硫酸の持つ熱を熱源として発電を行い廃熱を回収するものであり、熱媒体(作動流体と呼ぶこともできる)としてアンモニア水(アンモニア水溶液である)を用いるカリーナサイルクルにて作動するものである。
【0011】
このカリーナサイクルを用いた発電システムは、図1に示すように、アンモニア水(以下、熱媒液ともいう)を導いて加熱し蒸発させる蒸発器1と、この蒸発器1にて蒸発されたアンモニア蒸気(水蒸気も含み、以下、熱媒蒸気ともいう)を導いて当該熱媒蒸気中に含まれる(同伴された)液分を分離する気液分離器2と、この気液分離器2にて液分が分離された熱媒蒸気を導くとともに当該熱媒蒸気により駆動されるタービン3と、このタービン3により回転される発電機4と、上記タービン3から排出されたタービン排気(以下、排出蒸気という)を導いて当該排出蒸気を冷却し凝縮させる凝縮器5と、途中に液送ポンプ15を有するとともに上記凝縮器5で凝縮された熱媒液を蒸発器1に導くための第1熱媒液移送管11と、上記蒸発器1で得られた熱媒蒸気を気液分離器2を介して蒸気タービン3に導くための第1熱媒蒸気移送管12と、蒸気タービン3から排出された排出蒸気を凝縮器5に移送する排出蒸気移送管13と、上記気液分離器2にて分離された液分すなわち温度の高い熱媒液を凝縮器5に移送するための第2熱媒液移送管14と、上記第1熱媒液移送管11と第2熱媒液移送管14とに設けられて気液分離器2からの温度の高い熱媒液が有する熱を凝縮器5からの温度の低い熱媒液に与えて熱回収するための熱交換器6とから構成されている。
【0012】
そして、上記蒸発器1は、熱媒液が充填される蒸発器本体1aと、この蒸発器本体1a内に設けられて熱源(加熱流体でもある)としての硫酸が導かれる伝熱管1bとから構成され、また凝縮器5についても、排出蒸気が導かれる蒸発器本体5aと、この蒸発器本体5a内に設けられて冷却流体例えば冷却水が導かれて排出蒸気を冷却する伝熱管5bとから構成されている。
【0013】
上記発電システムにおいて、硫酸製造プラントで得られた90℃程度の低温の硫酸が蒸発器1の伝熱管1bに導かれ、蒸発器本体1a内の熱媒液を加熱し蒸発させて熱媒蒸気であるアンモニア水の蒸気が得られる。
【0014】
この熱媒蒸気は、気液分離器2に導かれ、これに同伴した液分が分離される。液分が分離された熱媒蒸気はタービン3に導かれてタービン3が駆動される。そして、タービン3により発電機4を回転させて発電が行われる。
【0015】
上記タービン3を出た排出蒸気は凝縮器5の凝縮器本体5a内に入り、伝熱管5b内を流れる冷却水により冷却・凝縮されて熱媒液となり、この熱媒液は第2熱媒液移送管14を介して蒸発器1に移送されて再び硫酸により加熱・蒸発される。
【0016】
ところで、上記蒸発器1の伝熱管1b内には硫酸が導かれるとともに蒸発器本体1a内には熱媒液であるアンモニア水が導かれるため、少なくとも、伝熱管1bの材料としては、以下に示すような、アンモニアと硫酸に対して耐食性を有する材料が用いられる。
【0017】
すなわち、ニッケル(Ni)が51.0〜61.5質量%、モリブデン(Mo)が15.0〜17.0質量%、クロム(Cr)が14.5〜16.5質量%、鉄(Fe)が4.0〜7.0質量%、タングステン(W)が3.0〜4.5質量%およびコバルト(Co)が1.5〜2.5質量%の各範囲内で含まれるものが用いられる。より正確に言うと、上述した成分に、マンガン(Mn)およびバナジウム(V)の合計が0.5〜1.3質量%の範囲内で添加されるとともに、炭素(C)、リン(P)、硫黄(S)およびケイ素(Si)の合計が0.2質量%以下となるようにされたものが用いられている。
【0018】
このような材料を用いることにより、アンモニアおよび硫酸の両方に対しても耐食性が発揮され、使用に十分耐えることができる。
ところで、上記実施の形態においては、発電システムとしてカリーナサイクルにて動作するものを説明したが、例えばランキンサイクルにて動作する発電システムの蒸発器にも適用することができる。
【0019】
ここで、ランキンサイクルを、図2に基づき簡単に説明しておく。
この発電システムは、熱媒体として濃度が100%のアンモニア液を使用するもので、アンモニア液すなわち熱媒液を導き加熱し蒸発させる蒸発器21と、この蒸発器21にて蒸発されたアンモニア蒸気すなわち熱媒蒸気を導くとともに当該熱媒蒸気により駆動されるタービン22と、このタービン22により回転される発電機23と、上記タービン22から排出されたタービン排気である排出蒸気を導くとともに冷却水により冷却し凝縮させる凝縮器24とから構成されている。勿論、蒸発器21にて蒸発された熱媒蒸気は熱媒蒸気移送管31によりタービン22に移送され、タービン22から排出された排出蒸気は排出蒸気移送管32により凝縮器24に移送され、またこの凝縮器24にて凝縮された熱媒液は熱媒液移送管33により蒸発器21に移送される。
【0020】
なお、凝縮器24の冷却系統25についてはその説明を省略する。
そして、蒸発器21の蒸発器本体21a内に設けられた伝熱管21bには、硫酸製造プラントで得られた90℃程度の低温の硫酸が導かれているとともに、当該伝熱管21bの材料についても、上述した実施の形態1と同様のものが用いられている。
【0021】
すなわち、ニッケル(Ni)が51〜62.5質量%、クロム(Cr)が14.5〜16.5質量%、モリブデン(Mo)が15.0〜17.0質量%、鉄(Fe)が4.0〜7.0質量%、タングステン(W)が3.0〜4.5質量%、モリブデン(Mo)が15.0〜17.0質量%、およびコバルト(Co)が1.5〜2.5質量%の各範囲内で含有させたものが用いられる。より正確に言うと、上記の構成に、マンガン(Mn)およびバナジウム(V)の合計が0.5〜1.3質量%の範囲内で添加するとともに、炭素(C)、リン(P)、硫黄(S)およびケイ素(Si)の合計が0.2質量%以下となるようにしたものが用いられている。
【0022】
したがって、この場合も、アンモニアおよび硫酸の両方に対しても耐食性が発揮され、使用に十分耐えることができる。
ところで、上記各実施の形態においては、蒸発器における硫酸が流れる伝熱管の材料について説明したが、勿論、伝熱管以外の部分で硫酸と接触する箇所がある場合には、その部分も、上述した材料が用いられる。したがって、蒸発器本体についても上記材料を用いてもよい。なお、硫酸と接触しない部分については、少なくとも、アンモニアに対して耐食性を有する材料が用いられる。
【符号の説明】
【0023】
1 蒸発器
1a 蒸発器本体
1b 伝熱管
3 タービン
4 発電機
5 凝縮器
11 第1熱媒液移送管
12 熱媒蒸気移送管
13 排出蒸気移送管
14 第2熱媒液移送管
21 蒸発器
21a 蒸発器本体
21b 伝熱管
22 タービン
23 発電機
24 凝縮器
31 熱媒蒸気移送管
32 排出蒸気移送管
33 熱媒液移送管
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電システムにおける蒸発器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、硫酸製造プラントにおいて、吸収塔を出た90℃程度の硫酸を冷却水により冷却し製品タンクに送っており、低い温度ではあるが、この硫酸の持つ熱を利用することが考えられる。
【0003】
従来、低温用の発電システムにはアンモニアを熱媒体とするランキンサイクルを用いたものがあり、その熱源として、温水が一般的に用いられており、したがって蒸発器の少なくとも伝熱部分、すなわち伝熱管の材料としては、アンモニアに対する耐食性だけを考慮したもの、例えば炭素鋼が使用されていた。
【0004】
ところで、このような発電システムの熱源に、上述したように、硫酸製造プラントで得られた硫酸の持つ熱を用いる場合には、蒸発器の伝熱管に硫酸が流されることになるため、蒸発器の材料、特に、伝熱管の材料としては、アンモニアと硫酸に対して有効なもの、例えばステンレス鋼などが用いられることになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、蒸発器における伝熱管の材料として、ステンレス鋼を用いた場合でも、アンモニアと硫酸に対しては、その耐食性が十分ではなかった。
そこで、本発明は、少なくとも、蒸発器の伝熱部材がアンモニアおよび硫酸の両方に対しても十分な耐食性を発揮し得る材料にて構成された発電システムにおける蒸発器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の発電システムにおける蒸発器は、発電機およびこの発電機を回転させるタービンを有するとともに、このタービンに熱媒体として供給するアンモニア水またはアンモニアの蒸気である熱媒蒸気を発生させる蒸発器および上記タービンからの排出蒸気を凝縮させる凝縮器を有する発電システムにおける蒸発器であって、
蒸発器における少なくとも伝熱部材の材料として、ニッケル(Ni)が51.0〜61.5質量%、モリブデン(Mo)が15.0〜17.0質量%、クロム(Cr)が14.5〜16.5質量%、鉄(Fe)が4.0〜7.0質量%、タングステン(W)が3.0〜4.5質量%およびコバルト(Co)が1.5〜2.5質量%の各範囲内で含まれるものを用いることにより、蒸発器における熱源として硫酸製造工程から得られる硫酸を用いるようにしたものである。
【発明の効果】
【0007】
上述した材料を蒸発器の少なくとも伝熱部材に用いるようにしたので、アンモニアおよび硫酸の両方に対しても耐食性が発揮されることとなり、硫酸製造工程で得られた硫酸の有する熱を支障なく回収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施の形態に係る発電システムの概略構成を示す模式図である。
【図2】本発明の他の実施の形態に係る発電システムの概略構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態に係る発電システムにおける蒸発器を図1に基づき説明する。
まず、発電システムの概略構成について説明する。
【0010】
この発電システムは、硫酸製造工程すなわち硫酸製造プラントで得られた低温の、例えば90℃程度の硫酸の持つ熱を熱源として発電を行い廃熱を回収するものであり、熱媒体(作動流体と呼ぶこともできる)としてアンモニア水(アンモニア水溶液である)を用いるカリーナサイルクルにて作動するものである。
【0011】
このカリーナサイクルを用いた発電システムは、図1に示すように、アンモニア水(以下、熱媒液ともいう)を導いて加熱し蒸発させる蒸発器1と、この蒸発器1にて蒸発されたアンモニア蒸気(水蒸気も含み、以下、熱媒蒸気ともいう)を導いて当該熱媒蒸気中に含まれる(同伴された)液分を分離する気液分離器2と、この気液分離器2にて液分が分離された熱媒蒸気を導くとともに当該熱媒蒸気により駆動されるタービン3と、このタービン3により回転される発電機4と、上記タービン3から排出されたタービン排気(以下、排出蒸気という)を導いて当該排出蒸気を冷却し凝縮させる凝縮器5と、途中に液送ポンプ15を有するとともに上記凝縮器5で凝縮された熱媒液を蒸発器1に導くための第1熱媒液移送管11と、上記蒸発器1で得られた熱媒蒸気を気液分離器2を介して蒸気タービン3に導くための第1熱媒蒸気移送管12と、蒸気タービン3から排出された排出蒸気を凝縮器5に移送する排出蒸気移送管13と、上記気液分離器2にて分離された液分すなわち温度の高い熱媒液を凝縮器5に移送するための第2熱媒液移送管14と、上記第1熱媒液移送管11と第2熱媒液移送管14とに設けられて気液分離器2からの温度の高い熱媒液が有する熱を凝縮器5からの温度の低い熱媒液に与えて熱回収するための熱交換器6とから構成されている。
【0012】
そして、上記蒸発器1は、熱媒液が充填される蒸発器本体1aと、この蒸発器本体1a内に設けられて熱源(加熱流体でもある)としての硫酸が導かれる伝熱管1bとから構成され、また凝縮器5についても、排出蒸気が導かれる蒸発器本体5aと、この蒸発器本体5a内に設けられて冷却流体例えば冷却水が導かれて排出蒸気を冷却する伝熱管5bとから構成されている。
【0013】
上記発電システムにおいて、硫酸製造プラントで得られた90℃程度の低温の硫酸が蒸発器1の伝熱管1bに導かれ、蒸発器本体1a内の熱媒液を加熱し蒸発させて熱媒蒸気であるアンモニア水の蒸気が得られる。
【0014】
この熱媒蒸気は、気液分離器2に導かれ、これに同伴した液分が分離される。液分が分離された熱媒蒸気はタービン3に導かれてタービン3が駆動される。そして、タービン3により発電機4を回転させて発電が行われる。
【0015】
上記タービン3を出た排出蒸気は凝縮器5の凝縮器本体5a内に入り、伝熱管5b内を流れる冷却水により冷却・凝縮されて熱媒液となり、この熱媒液は第2熱媒液移送管14を介して蒸発器1に移送されて再び硫酸により加熱・蒸発される。
【0016】
ところで、上記蒸発器1の伝熱管1b内には硫酸が導かれるとともに蒸発器本体1a内には熱媒液であるアンモニア水が導かれるため、少なくとも、伝熱管1bの材料としては、以下に示すような、アンモニアと硫酸に対して耐食性を有する材料が用いられる。
【0017】
すなわち、ニッケル(Ni)が51.0〜61.5質量%、モリブデン(Mo)が15.0〜17.0質量%、クロム(Cr)が14.5〜16.5質量%、鉄(Fe)が4.0〜7.0質量%、タングステン(W)が3.0〜4.5質量%およびコバルト(Co)が1.5〜2.5質量%の各範囲内で含まれるものが用いられる。より正確に言うと、上述した成分に、マンガン(Mn)およびバナジウム(V)の合計が0.5〜1.3質量%の範囲内で添加されるとともに、炭素(C)、リン(P)、硫黄(S)およびケイ素(Si)の合計が0.2質量%以下となるようにされたものが用いられている。
【0018】
このような材料を用いることにより、アンモニアおよび硫酸の両方に対しても耐食性が発揮され、使用に十分耐えることができる。
ところで、上記実施の形態においては、発電システムとしてカリーナサイクルにて動作するものを説明したが、例えばランキンサイクルにて動作する発電システムの蒸発器にも適用することができる。
【0019】
ここで、ランキンサイクルを、図2に基づき簡単に説明しておく。
この発電システムは、熱媒体として濃度が100%のアンモニア液を使用するもので、アンモニア液すなわち熱媒液を導き加熱し蒸発させる蒸発器21と、この蒸発器21にて蒸発されたアンモニア蒸気すなわち熱媒蒸気を導くとともに当該熱媒蒸気により駆動されるタービン22と、このタービン22により回転される発電機23と、上記タービン22から排出されたタービン排気である排出蒸気を導くとともに冷却水により冷却し凝縮させる凝縮器24とから構成されている。勿論、蒸発器21にて蒸発された熱媒蒸気は熱媒蒸気移送管31によりタービン22に移送され、タービン22から排出された排出蒸気は排出蒸気移送管32により凝縮器24に移送され、またこの凝縮器24にて凝縮された熱媒液は熱媒液移送管33により蒸発器21に移送される。
【0020】
なお、凝縮器24の冷却系統25についてはその説明を省略する。
そして、蒸発器21の蒸発器本体21a内に設けられた伝熱管21bには、硫酸製造プラントで得られた90℃程度の低温の硫酸が導かれているとともに、当該伝熱管21bの材料についても、上述した実施の形態1と同様のものが用いられている。
【0021】
すなわち、ニッケル(Ni)が51〜62.5質量%、クロム(Cr)が14.5〜16.5質量%、モリブデン(Mo)が15.0〜17.0質量%、鉄(Fe)が4.0〜7.0質量%、タングステン(W)が3.0〜4.5質量%、モリブデン(Mo)が15.0〜17.0質量%、およびコバルト(Co)が1.5〜2.5質量%の各範囲内で含有させたものが用いられる。より正確に言うと、上記の構成に、マンガン(Mn)およびバナジウム(V)の合計が0.5〜1.3質量%の範囲内で添加するとともに、炭素(C)、リン(P)、硫黄(S)およびケイ素(Si)の合計が0.2質量%以下となるようにしたものが用いられている。
【0022】
したがって、この場合も、アンモニアおよび硫酸の両方に対しても耐食性が発揮され、使用に十分耐えることができる。
ところで、上記各実施の形態においては、蒸発器における硫酸が流れる伝熱管の材料について説明したが、勿論、伝熱管以外の部分で硫酸と接触する箇所がある場合には、その部分も、上述した材料が用いられる。したがって、蒸発器本体についても上記材料を用いてもよい。なお、硫酸と接触しない部分については、少なくとも、アンモニアに対して耐食性を有する材料が用いられる。
【符号の説明】
【0023】
1 蒸発器
1a 蒸発器本体
1b 伝熱管
3 タービン
4 発電機
5 凝縮器
11 第1熱媒液移送管
12 熱媒蒸気移送管
13 排出蒸気移送管
14 第2熱媒液移送管
21 蒸発器
21a 蒸発器本体
21b 伝熱管
22 タービン
23 発電機
24 凝縮器
31 熱媒蒸気移送管
32 排出蒸気移送管
33 熱媒液移送管
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電機およびこの発電機を回転させるタービンを有するとともに、このタービンに熱媒体として供給するアンモニア水またはアンモニアの蒸気である熱媒蒸気を発生させる蒸発器および上記タービンからの排出蒸気を凝縮させる凝縮器を有する発電システムにおける蒸発器であって、
蒸発器における少なくとも伝熱部材の材料として、ニッケル(Ni)が51.0〜61.5質量%、モリブデン(Mo)が15.0〜17.0質量%、クロム(Cr)が14.5〜16.5質量%、鉄(Fe)が4.0〜7.0質量%、タングステン(W)が3.0〜4.5質量%およびコバルト(Co)が1.5〜2.5質量%の各範囲内にて含まれるものを用いることにより、蒸発器における熱源として硫酸製造工程から得られる硫酸を用いるようにしたことを特徴とする発電システムにおける蒸発器。
【請求項1】
発電機およびこの発電機を回転させるタービンを有するとともに、このタービンに熱媒体として供給するアンモニア水またはアンモニアの蒸気である熱媒蒸気を発生させる蒸発器および上記タービンからの排出蒸気を凝縮させる凝縮器を有する発電システムにおける蒸発器であって、
蒸発器における少なくとも伝熱部材の材料として、ニッケル(Ni)が51.0〜61.5質量%、モリブデン(Mo)が15.0〜17.0質量%、クロム(Cr)が14.5〜16.5質量%、鉄(Fe)が4.0〜7.0質量%、タングステン(W)が3.0〜4.5質量%およびコバルト(Co)が1.5〜2.5質量%の各範囲内にて含まれるものを用いることにより、蒸発器における熱源として硫酸製造工程から得られる硫酸を用いるようにしたことを特徴とする発電システムにおける蒸発器。
【図1】
【図2】
【図2】
【公開番号】特開2010−203376(P2010−203376A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−51413(P2009−51413)
【出願日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【出願人】(000183303)住友金属鉱山株式会社 (2,015)
【出願人】(000005119)日立造船株式会社 (764)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【出願人】(000183303)住友金属鉱山株式会社 (2,015)
【出願人】(000005119)日立造船株式会社 (764)
【Fターム(参考)】
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