説明

発電システム

【課題】回転を伝達するか否かを切り換えるSSSクラッチでのミスアライメントの発生を抑制できる発電システムを提供することにある。
【解決手段】原動機から供給される排気から出力を取り出すパワータービンと、パワータービンから出力される回転を伝達する第1出力軸と、第1出力軸と連結された第1減速機と、原動機から供給される排熱から出力を取り出す蒸気タービンと、蒸気タービンから出力される回転を伝達する第2出力軸と、第2出力軸に連結された第2減速機と、第2の減速機を介して蒸気タービンと連結されている発電機と、第1減速機を介してパワータービンに連結され、かつ、第2減速機を介して蒸気タービンに連結されたSSSクラッチと、を有することで上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パワータービン及び蒸気タービンからの回転力を発電機に伝達する発電システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
船舶等の原動機として用いられるガスタービンの出力を発電にも利用する発電システムとしては、ガスタービンと、ガスタービンから排出される熱を利用した蒸気タービンとから出力される回転力により発電機で発電するシステムがある。
【0003】
例えば、特許文献1には、原動機に付属した発電システムではないが、蒸気タービンと、発電機と、起動装置を有するガスタービンとを一軸上に配置した発電システムが記載されている。また、発電システムは、ガスタービンと起動装置に間に、回転数の違いによりかん脱を行うSSSクラッチ(Synchro Self Shiftingクラッチ)が配置されている。また、発電システムは、プラント停止時、SSSクラッチを用いて、蒸気タービンを軸から切り離し、ガスタービンを単独で停止させる。このような発電システムは、ガスタービンを駆動させて出力軸を回転させることで、電力を発生させる。さらに、ガスタービンからの排熱を回収し、その排熱により蒸気タービンを駆動させ電力を発生させている。このようにガスタービンの排熱も利用することで、効率よく電力を発生させることができる。
【0004】
【特許文献1】特開2005−180370号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の発電プラントのガスタービンに変えて、パワータービンを用いることができる。ここで、パワータービンは、ガスタービン、ディーゼルエンジン等の原動機から排出される排気ガスにより回転されることで、出力を取り出す装置である。このように、原動機からの出力を取り出して発電する発電システムには、例えば、図3に示すようなシステムがある。
【0006】
図3に示す発電システム100は、原動機から排出される排ガスにより駆動されるパワータービン102と、原動機から排出される熱により駆動される蒸気タービン104と、パワータービン102と蒸気タービン104で生成された駆動力を電力に変換する発電機106と、パワータービン104の駆動力を蒸気タービン104に連結された軸に伝達する第1減速機108と、蒸気タービン104に連結された軸の駆動力を発電機106に伝達する第2減速機110と、パワータービン102から第1減速機108を介して駆動力が伝達される軸と蒸気タービン104に連結された軸との係合/解放を切り換えるSSSクラッチ112と、蒸気タービン104が連結された軸を回転させるターニング装置114とを有する。パワータービン102は、第1減速機108とSSSクラッチ112を介して蒸気タービン104に接続されている。また、蒸気タービン104は、第2減速機110を介して発電機106と接続されている。また、蒸気タービン104が接続されている軸には、ターニング装置114が接続されている。また、各部同士また各部に接続された軸同士は、ダイアフラムカップリングにより連結されている。
【0007】
発電システム100は、以上のような構成であり、パワータービン102の回転が蒸気タービン104の回転と同期したときに、SSSクラッチ112を係合させ、パワータービン102の駆動力を第1変速機108及びSSSクラッチ112を介して蒸気タービン104に連結された軸に伝達され、蒸気タービン104からの出力される駆動力とともに第2減速機110を介して発電機106に伝達される。発電システム100は、パワータービン102及び蒸気タービン104の両方で出力される駆動力を電力に変換することができる。また、パワータービン102の回転と蒸気タービン104の回転とが同期していないときは、SSSクラッチ112を解放することで、蒸気タービン104に連結されている軸に負荷がかかり、蒸気タービン104の駆動力がパワータービン102の駆動力により低下することを防止できる。
【0008】
ここで、SSSクラッチ112は、スラスト力、及び軸、支持部の熱伸びによるアライメント変化を許容できない構造である。しかしながら、蒸気タービン104とSSSクラッチ112とが隣接している構成では、SSSクラッチ112の端面に位置する蒸気タービン104が高温、高圧であるため軸及び軸受台の熱伸びによりアライメント変化が発生し、ミスアライメントが生じる。このようなミスアライメントは、各機器の連結部にダイアフラムカップリングを配置することで吸収できるが、ミスアライメントを0にすることはできず、SSSクラッチの焼きつき、軸振動発生の要因となる。
【0009】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、蒸気タービンと、ガスタービンと、発電機とのいずれかの間に配置され、回転を伝達するか否かを切り換えるSSSクラッチでのミスアライメントの発生を抑制できる発電システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、原動機に付属した発電システムであって、前記原動機から供給される排気から出力を取り出すパワータービンと、前記パワータービンから出力される回転を伝達する第1出力軸と、前記第1出力軸と連結された第1減速機と、前記原動機から供給される排熱から出力を取り出す蒸気タービンと、前記蒸気タービンから出力される回転を伝達する第2出力軸と、前記第2出力軸に連結された第2減速機と、前記第2の減速機を介して前記蒸気タービンと連結されている発電機と、前記第1減速機を介して前記パワータービンに連結され、かつ、前記第2減速機を介して前記蒸気タービンに連結されたSSSクラッチと、を有することを特徴とする。
【0011】
ここで前記SSSクラッチは、一方の面が前記第1減速機と直接連結され、他方の面が前記第2減速機と直接連結されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明にかかる発電システムは、SSSクラッチでのミスアライメントの発生を抑制でき、SSSクラッチの焼きつき、軸振動の発生を抑制できるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に、本発明にかかる発電システムの一実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0014】
図1は、本発明の発電システムの一実施形態の概略構成を示すブロック図である。図1に示すように、発電システム10は、原動機から排出される排気ガス及び排熱から駆動力を取り出し、発電を行う装置であり、パワータービン12と、蒸気タービン14と、発電機16と、第1減速機18と、第2減速機20と、SSSクラッチ22と、ターニング装置24とを有する。
【0015】
パワータービン12は、動翼と、動翼と共に回転する軸とを有し、原動機から排出された排気ガスにより動翼を回転させて、軸を回転させる。このようにして、パワータービン12は、原動機から排出される排気ガスの力から回転力を取り出す。なお、パワータービンの構成は、本実施形態に限定されず、ガスなどの作動流体(本実施形態では、一定以上の流速の排ガス)が供給されることで、回転力を取り出す種々の機構を用いることができる。
【0016】
蒸気タービン14は、少なくとも排熱回収手段と、動翼と、動翼と共に回転する軸とを有し、排熱取得手段により、原動機から排出される熱を回収して蒸気を生成し、その蒸気により動翼を回転させる。このように、蒸気タービン14は、原動機から排出される排熱の力から回転力を取り出す。なお、排熱回収手段は、例えば、原動機から排出される排気ガスとの間で熱交換をすることで、原動機から排出される熱を取得する。
【0017】
発電機16は、パワータービン12及び蒸気タービン14で取り出され、第1減速機18、SSSクラッチ22、第2減速機20を介して伝達された回転から電力を取り出す。
【0018】
第1減速機18は、パワータービン12が連結されている軸(第1出力軸)30及び、SSSクラッチ22及び蒸気タービン14が連結されている軸と連結されている。第1減速機18は、相対的に径の小さいギヤと径の大きいギヤとが係合して、2つのギヤがつれまわる構成であり、径の小さいギヤがパワータービン12に連結されている軸32と連結され、径の大きいギヤがSSSクラッチ22に連結されている軸と連結されている。第1減速機18は、パワータービン12から出力される回転を減速させかつトルクを増大させて、SSSクラッチ22が連結されている軸に伝達する。
【0019】
第2減速機20は、蒸気タービン14が連結されている軸(第2出力軸)32、SSSクラッチ22が連結されている軸、及び発電機16が連結されている軸と連結されている。第2減速機20は、相対的に径の小さいギヤと径の大きいギヤとが係合して、2つのギヤがつれまわる構成であり、径の小さいギヤが蒸気タービン14に連結されている軸32及びSSSクラッチ22に連結されている軸と連結され、径の大きいギヤが発電機16に連結されている軸と連結されている。また、第2減速機20の径の小さいギヤは、一方の面に蒸気タービン14に連結されている軸32が連結され、他方の面にSSSクラッチ22が連結されている軸が連結されている。第2減速機20は、蒸気タービン14から出力される回転、及び/または、パワータービン12から出力され、第1減速機18で減速され、SSSクラッチ22を伝達された回転を減速させかつトルクを増大させて、発電機16が連結されている軸に伝達する。
【0020】
SSSクラッチ22は、一方の面で、第1減速機18の径の大きいギヤと連結された軸を支持し、他方の面で第2減速機20の径の小さいギヤと連結された軸を支持しており、この支持している2つの軸を係合させた状態と、解放させた状態とに切り換える。つまり、SSSクラッチ22は、回転を伝達する状態と、回転を伝達しない状態とを切り換える。
【0021】
ターニング装置24は、蒸気タービン14が連結されている軸32に連結されており、蒸気タービン14が連結されている軸32を回転させる機構である。ターニング装置24は、蒸気タービン14の停止時に軸を低速で回転させる。ターニング装置24により軸を回転させることで、蒸気タービン14の停止時に軸に対して自然対流による周方向の温度変化のため、軸が変形することを防止することができる。
【0022】
なお、発電システム10は、蒸気タービン14に連結されている軸と第2変速機20に連結されている軸とが別々の軸であり、第2変速機20に連結されている軸とSSSクラッチ22に連結されている軸とが別々の軸であり、パワータービン12に連結されている軸と第1変速機18が連結されている軸とが別々の軸であり、第1変速機18が連結されている軸とSSSクラッチ22が連結されている軸とが別々の軸であり、第2変速機20が連結されている軸と発電機16が連結されている軸とが別々の軸である。また、これらの軸と軸とは、ダイアフラムカップリングで連結されている。なお、パワータービン12が連結されている軸30は、パワータービン12に連結されている軸と第1変速機18が連結されている軸と2つの軸を連結するダイアフラムカップリングとで構成され、蒸気タービン14が連結されている軸32は、蒸気タービン14に連結されている軸と第2変速機20に連結されている軸とこれを連結するダイアフラムカップリングで構成される。
【0023】
発電システム10は、以上のような構成であり、SSSクラッチ22は、パワータービン12の回転と蒸気タービン14との回転が同期したら、第1減速機18に連結された軸と第2減速機20に連結された軸とを係合させ、パワータービン12から出力され、第1減速機18を介して伝達された回転を第2減速機20に伝達させる。第2減速機20に伝達された回転は、第2減速機20から発電機16に伝達される。また、蒸気タービン14から出力される回転は、第2減速機20から第2減速機20から発電機16に伝達される。発電機16は、パワータービン12及び蒸気タービン14から伝達された回転を電力に変換して、発電する。
【0024】
発電システム10は、SSSクラッチ22とパワータービン12とを第1減速機18を介して連結させ、かつ、SSSクラッチ22と蒸気タービン14とを第2減速機20を介して連結させた構成とすることで、パワータービン12及び蒸気タービン14の熱がSSSクラッチ22に伝達しにくくすることができる。これにより、SSSクラッチ22が、パワータービン12及び蒸気タービン14の熱により熱伸びし、ミスアライメントが発生することを抑制することができ、クラッチの焼き付き及び軸振動の発生を抑制することができる。また、パワータービン12からの出力を、蒸気タービン14を介することなく発電機に伝達することができるため、蒸気タービン14に連結されている軸を蒸気タービンの14の出力に応じた強度とすることができる。つまり、蒸気タービン14に連結されている軸で、蒸気タービン14の出力とパワータービン12の出力の両方を伝達する必要がないため、蒸気タービン14に連結されている軸を細くすることができ、発電システム10の製造コストを低くすることができる。
【0025】
ここで、発電システム10では、SSSクラッチ22を第1減速機18と第2減速機20との間に配置したが、本発明はこれに限定されず、SSSクラッチ22とパワータービン12とが減速機を介して連結され、SSSクラッチ22と蒸気タービン14とが減速機を介して連結されていればよい。つまり、SSSクラッチ22が、蒸気タービン12及びパワータービン12と直接連結されていなければよい。例えば、SSSクラッチ22で第1減速機と発電機とを連結させるようにしてもよい。なお、この場合も第1減速機は、径の小さいギヤとパワータービンとが連結され、径の大きいギヤとSSSクラッチとが連結されている。また、発電システム10では、第2減速機の径の小さいギヤとSSSクラッチとを連結したが、第2減速機の径の大きいギヤとSSSクラッチとを連結させてもよい。つまり、SSSクラッチと発電機とが同一ギヤに連結された状態(つまり同軸上)に配置してもよい。
【0026】
以下、図2を用いて、発電システムの他の実施形態について説明する。図2は、本発明の発電システムの他の実施形態の概略構成を示すブロック図である。なお、図2に示す発電システム40は、第2減速機42の構成と、各部の接続関係が異なる点を除いて、他の構成は、図1に示す発電システム10の各部と同様である。したがって、以下では、発電システム10と同様の構成の部分についての説明は省略し、発電システム40に特有の点について説明する。図2に示す発電システム40は、原動機から排出される排気ガス及び排熱から駆動力を取り出し、発電を行う装置であり、パワータービン12と、蒸気タービン14と、発電機16と、第1減速機18と、第2減速機42と、SSSクラッチ22と、ターニング装置24とを有する。
【0027】
第2減速機42は、蒸気タービン14が連結されている軸(第2出力軸)32、SSSクラッチ22が連結されている軸、及び発電機16が連結されている軸と連結されている。第2減速機42は、相対的に径の大きい1つのギヤに径の小さい2つのギヤが係合して、3つのギヤがつれまわる構成である。つまり、一方の径の小さいギヤから他方の径の小さいギヤへの回転の伝達は、径の大きいギヤを介して行われる。また、第2減速機42は、一方の径の小さいギヤが、蒸気タービン14に連結されている軸32と連結され、他方の径の小さいギヤが、SSSクラッチ22に連結されている軸と連結され、径の大きいギヤが発電機16に連結されている軸と連結されている。第2減速機20は、蒸気タービン14から出力される回転、及び/または、パワータービン12から出力され、第1減速機18で減速され、SSSクラッチ22を伝達された回転を、減速させかつトルクを増大させて、発電機16が連結されている軸に伝達する。
【0028】
発電システム40のように、蒸気タービン14からの動力(回転力)が伝達される第2減速機42のギヤと、パワータービン12からの動力が伝達される第2減速機42のギヤとを異なるギヤとした場合でも、パワータービン12からSSSクラッチ22に第1減速機18を介して動力が伝達され、蒸気タービン14からSSSクラッチ22に第2減速機42を介して動力が伝達される構成とすることで、パワータービン12及び蒸気タービン14の熱がSSSクラッチ22に伝達しにくくすることができる。これにより、発電システム10と同様の効果を得ることができる。
【0029】
また、上記実施形態では、いずれもSSSクラッチと第1減速機、SSSクラッチと第2減速機とが直接接続されている構成としたが、これに限定されず、SSSクラッチと第1減速機との間に他の部材が介在してもよく、SSSクラッチと第2減速機との間に他の部材が介在してもよい。なお、他の部材は、蒸気タービン、パワータービン以外の部材である。また、第1減速機と第2減速機の構成は、相対的に径の異なる2つ、または3つのギヤで構成される減速機に限定されず、種々の減速機を用いることができる。
【0030】
なお、SSSクラッチは、発電機とも減速機を介して連結される位置に配置することが好ましい。減速機を介してSSSクラッチと発電機とを接続することで、発電機で発生される熱が直接SSSクラッチに伝達することを抑制することができ、SSSクラッチに熱伸び等が発生することをより確実に抑制することができる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明にかかる発電システムは、ガスタービン、ディーゼルエンジン等を原動機とする輸送機の発電システムとして有用であり、特に、船舶の発電システムとして用いることに適している。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の発電システムの一実施形態の概略構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の発電システムの他の実施形態の概略構成を示すブロック図である。
【図3】従来の発電システムの一実施形態の概略構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0033】
10 発電システム
12 パワータービン
14 蒸気タービン
16 発電機
18 第1減速機
20 第2減速機
22 SSSクラッチ
24 ターニング装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原動機に付属した発電システムであって、
前記原動機から供給される排気から出力を取り出すパワータービンと、
前記パワータービンから出力される回転を伝達する第1出力軸と、
前記第1出力軸と連結された第1減速機と、
前記原動機から供給される排熱から出力を取り出す蒸気タービンと、
前記蒸気タービンから出力される回転を伝達する第2出力軸と、
前記第2出力軸に連結された第2減速機と、
前記第2の減速機を介して前記蒸気タービンと連結されている発電機と、
前記第1減速機を介して前記パワータービンに連結され、かつ、前記第2減速機を介して前記蒸気タービンに連結されたSSSクラッチと、を有することを特徴とする発電システム。
【請求項2】
前記SSSクラッチは、一方の面が前記第1減速機と直接連結され、他方の面が前記第2減速機と直接連結されていることを特徴とする請求項1に記載の発電システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−133284(P2010−133284A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−307830(P2008−307830)
【出願日】平成20年12月2日(2008.12.2)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】