発電機用スラスト軸受装置
【課題】接触応力を低減した発電機用スラスト軸受装置を提供する。
【解決手段】発電機の固定部に支持される軸受台5と、軸受台5の摺動側表面部に固定された支持受台7と、支持受台7の摺動側に設置されたピボットスプリング1と、ピボットスプリング1の摺動側に設置された軸受パッド4とより構成される。軸受パッド4は、固定部側に凹部が設けられた台金4aと、台金4aの摺動側表面部に設けられ回転体に対向する摺動面を有する裏金4bとを含み、ピボットスプリング1は、支持受台7の凹部と接する固定部側ピボット部1bと、台金凹部に接する摺動側ピボット部1aとを含む。支持受台7の凹部は、軸受台5の半径方向の断面の形状が固定部側に向かって凸の滑らかな曲線状であり、軸受台5の周方向の断面の形状が直線状であり、固定部側ピボット部1bの先端部は、軸受台5の半径方向の断面の形状が固定部側に向かって凸の滑らかな曲線状である。
【解決手段】発電機の固定部に支持される軸受台5と、軸受台5の摺動側表面部に固定された支持受台7と、支持受台7の摺動側に設置されたピボットスプリング1と、ピボットスプリング1の摺動側に設置された軸受パッド4とより構成される。軸受パッド4は、固定部側に凹部が設けられた台金4aと、台金4aの摺動側表面部に設けられ回転体に対向する摺動面を有する裏金4bとを含み、ピボットスプリング1は、支持受台7の凹部と接する固定部側ピボット部1bと、台金凹部に接する摺動側ピボット部1aとを含む。支持受台7の凹部は、軸受台5の半径方向の断面の形状が固定部側に向かって凸の滑らかな曲線状であり、軸受台5の周方向の断面の形状が直線状であり、固定部側ピボット部1bの先端部は、軸受台5の半径方向の断面の形状が固定部側に向かって凸の滑らかな曲線状である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電機用スラスト軸受装置に関する。
【背景技術】
【0002】
立軸型の水車発電機のスラスト軸受装置は、水車、発電機等の回転体の自重に加え、水車にかかる水スラスト荷重を支持する。大容量の発電機の場合は、3000t〜4000tもの荷重を支えなければならない。
【0003】
上記の荷重を支えるための軸受装置の構造として、特許文献1には、回転軸周りに放射状に配置された軸受パッドの裏側に凹部を設け、その部分を楕円球形状のピボットで一点支持し、径方向及び周方向に傾動可能としたものが開示されている。また、特許文献1においては、軸受パッドが周方向に回転しないようにするため、パッド外周部に穴をあけ、その穴に柱状の部材を差し込むことにより位置決めを行なっている。
【0004】
他の軸受装置の構造として、非特許文献1には、軸受パッドが内周側及び外周側の2点でピボットスプリングによって支えられたものが開示されている。また、非特許文献1においては、隣接する軸受パッドの内周と外周とを支えるカスケード形式のピボットの配置により、軸受パッドの高さを自動調整する構造となっている。この構造においては、軸受パッドの下に設けられた円形のプレートによって軸受パッド及びピボットスプリングが位置決めされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−270550号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】日本トライボロジー学会編:「すべり軸受資料集」養賢堂 2005年 P78
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の軸受パッド及びピボットスプリングの位置決めは、軸受パッドとプレート(平板)との接触及びピボットスプリングとプレート(平板)との接触により行われていた。そのため、位置決めをする際、軸受パッドとプレートとの間の接触応力及びピボットスプリングとプレートとの間の接触応力による固渋が生じる懸念があった。
【0008】
本発明の目的は、軸受パッド及びピボットスプリングを位置決めする際の軸受パッドとプレートとの間の接触応力及びピボットスプリングとプレートとの間の接触応力を低減し、固渋を防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の発電機用スラスト軸受装置は、発電機の固定部に支持される軸受台と、前記軸受台の摺動側表面部に固定された支持受台と、前記支持受台の摺動側に設置されたピボットスプリングと、前記ピボットスプリングの摺動側に設置された軸受パッドとを含む発電機用スラスト軸受装置であって、前記軸受パッドは、台金と、前記台金の摺動側表面部に設けられ回転体に対向する摺動面を有する裏金とを含み、前記台金の固定部側には台金凹部が設けられ、前記ピボットスプリングは、前記支持受台の凹部と接する固定部側ピボット部と、前記台金凹部に接する摺動側ピボット部とを含み、前記支持受台の前記凹部は、前記軸受台の半径方向の断面の形状が固定部側に向かって凸の滑らかな曲線状であって前記軸受台の周方向の断面の形状が直線状であり、前記固定部側ピボット部の先端部は、少なくとも前記軸受台の半径方向の断面の形状が固定部側に向かって凸の滑らかな曲線状であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、軸受パッド及びピボットスプリングの位置決め時に生じる接触応力を低減することが可能となり、軸受パッドの固渋を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】従来の発電機用スラスト軸受装置におけるプレートによるピボットスプリングの位置決めを示す部分断面図である。
【図2A】従来の発電機用スラスト軸受装置における軸受パッドの位置決めを示す部分断面図である。
【図2B】図2Aにおいて軸受パッドがプレートの内壁面に接触した状態を示す部分断面図である。
【図3】実施例1に係る発電機用スラスト軸受装置を示す概略構成図である。
【図4】図3の発電機用スラスト軸受装置を軸受パッドの上方から見た部分投影図である。
【図5A】実施例1に係る発電機用スラスト軸受装置を示す分解斜視図である。
【図5B】図5Aの軸受パッドを示す断面図である。
【図6A】図5Aの軸受パッドの中空円筒に摺動側ピボット部を設置した状態を示す部分断面図である。
【図6B】図5Aの軸受パッドと摺動側ピボット部との作用を示す部分断面図である。
【図7】ピボットスプリングに設けた固定部側ピボット部と支持受台との関係を示す部分断面図である。
【図8】実施例2に係る発電機用スラスト軸受装置を示す分解斜視図である。
【図9】図8の発電機用スラスト軸受装置を軸受パッドの上方から見た部分投影図である。
【図10】実施例3に係る発電機用スラスト軸受装置を示す分解斜視図である。
【図11A】図10の軸受パッドの中空円筒に摺動側ピボット部を設置した状態を示す部分断面図である。
【図11B】図10の軸受パッドと摺動側ピボット部との接触点が変化した状態を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、例えば、立軸型の水車発電機のように、回転軸周りに放射状に配置された扇形の軸受パッドを備えているスラスト軸受装置に関するものである。
【0013】
以下、本発明の一実施形態に係る発電機用スラスト軸受装置について説明する。
【0014】
前記発電機用スラスト軸受装置は、回転軸周りに放射状に配置され、軸方向の荷重を支持する扇形形状の複数の軸受パッドと、パッド内周側および外周側の2点と接するピボットと、2つのピボットを取付けたピボットスプリングと、ピボットスプリングを設置する支持受台と、支持受台を取付ける軸受台とを含み、軸受パッドの、ピボットとの接触部には凹面を設け、ピボットスプリングは長手方向のみに傾動するように支持受台に取り付けられている。
【0015】
前記発電機用スラスト軸受装置は、発電機の固定部に支持される軸受台と、軸受台の摺動側表面部に固定された支持受台と、支持受台の摺動側に設置されたピボットスプリングと、ピボットスプリングの摺動側に設置された軸受パッドとを含む。そして、軸受パッドは、台金と、台金の摺動側表面部に設けられ回転体に対向する摺動面を有する裏金とを含み、台金の固定部側には台金凹部が設けられ、ピボットスプリングは、支持受台の凹部と接する固定部側ピボット部と、台金凹部に接する摺動側ピボット部とを含み、支持受台の凹部は、軸受台の半径方向の断面の形状が固定部側に向かって凸の滑らかな曲線状であって軸受台の周方向の断面の形状が直線状であり、固定部側ピボット部の先端部は、少なくとも軸受台の半径方向の断面の形状が固定部側に向かって凸の滑らかな曲線状である。
【0016】
前記発電機用スラスト軸受装置において、摺動側ピボット部の先端部は、摺動側に向かって凸の滑らかな曲面状である。
【0017】
前記発電機用スラスト軸受装置において、台金凹部は、摺動側ピボット部の先端部と接する曲面であって摺動側に向かって凸の滑らかな曲面を有する。
【0018】
前記発電機用スラスト軸受装置においては、1個のピボットスプリングが摺動側ピボット部を2個含み、台金は、これらの摺動側ピボット部に接する2個の台金凹部を含み、これらの台金凹部は、軸受台の半径方向に配列されている。
【0019】
前記発電機用スラスト軸受装置においては、ピボットスプリング1個が固定部側ピボット部を2個含み、これらの固定部側ピボット部は、軸受台の周方向に設置された2個の支持受台に設置されている。
【0020】
前記発電機用スラスト軸受装置において、摺動側ピボット部の側面部は、軸受台の摺動側表面に垂直な平面による断面の形状が滑らかな曲線状である部位を有し、この部位が台金凹部に挿入されており、前記部位のうち、軸受台の摺動側表面に垂直な平面による断面の、軸受台の摺動側表面に平行な方向の寸法が、前記部位の固定部側の端部よりも摺動側で最大となる。
【0021】
以下、図を用いて詳しく説明する。
【0022】
図1は、従来の発電機用スラスト軸受装置におけるプレートによるピボットスプリングの位置決めを示す部分断面図である。
【0023】
本図において、ピボットスプリング201の固定部側ピボット部201bは、軸受台205の上面に設置された支持受台207に支持されている。軸受パッド204は、ピボットスプリング201の摺動側ピボット部201aによって支持されている。また、軸受パッド204及び固定部側ピボット部201bは、プレート206によって水平方向について位置決めされている。
【0024】
図2Aは、従来の発電機用スラスト軸受装置における軸受パッドの位置決めを示す部分断面図である。
【0025】
本図においては、軸受パッド204を摺動側ピボット部201aに設置して位置決めした状態を示している。軸受パッド204及び摺動側ピボット部201aとプレート206の内壁面との間には、隙間101が設けてある。
【0026】
図2Bは、図2Aにおいて軸受パッド204がプレート206の内壁面に接触した状態を示す部分断面図である。
【0027】
本図においては、軸受パッド204が摺動側ピボット部201aに対して傾いたり、所定の位置からずれたりして軸受パッド204の側面がプレート206の内壁面に接触した状態を示している。
【0028】
このため、軸受パッド204及び固定部側ピボット部201bは、プレート206の内壁面に接触して固渋が生じる懸念があった。
【0029】
以下、実施例を用いて説明する。
【実施例1】
【0030】
図3は、実施例に係る発電機用スラスト軸受装置の概略構成図である。
【0031】
本図において、発電機用スラスト軸受装置は、発電機の固定部に支持された環状の軸受台5と、軸受台5の上面部に固定された支持受台7と、支持受台7の上部に設置されたピボットスプリング1と、ピボットスプリング1の上部に設置された軸受パッド4と含む構成である。
【0032】
軸受パッド4は、複数個であり、回転軸2の周りに放射状に配置され、回転軸2、回転軸2に固定されたスラストランナ3などで構成された回転体等の自重と、水車に加わる水スラスト荷重とを合わせた総荷重を支持している。ここで、「回転軸2の周りに放射状に配置」とは、回転軸2の中心からほぼ同じ距離に回転軸2の周方向に並べて配置されている状態をいう。
【0033】
発電機用スラスト軸受装置は、油で満たされており、回転軸2及びスラストランナ3が回転すると、スラストランナ3と軸受パッド4との間に油膜が形成されるようになっている。発電機用スラスト軸受装置は、油膜圧力により効果的にスラスト荷重を支持することができるようにするため、状況に応じて、径方向及び周方向に適切に傾動可能な構造を有している。
【0034】
しかし、スラストランナ3の回転に伴う油膜のせん断応力により、軸受パッド4を周方向へ回転させる力が発生する。この力による軸受パッド4の移動を制限するため、軸受パッド4及び軸受パッド4を支持するピボットスプリング1の位置決めをする必要がある。
【0035】
本実施例においては、ピボットスプリング1の上面部に摺動側ピボット部1a(凸部)を設け、軸受パッド4の下面部に設けた中空円筒4cの凹部(台金凹部)に挿入する構成とすることにより位置決めをしている。
【0036】
図4は、図3の発電機用スラスト軸受装置を軸受パッド4の上方から見た部分投影図である。
【0037】
本図において、軸受台5の上方に周方向に設置された軸受パッド4は、上面部の形状が略台形状であり、軸受台5の半径方向に外側の部分が幅広になっている。また、軸受パッド4は、それぞれ2個の中空円筒4cを有し、中空円筒4cの凹部にピボットスプリング1に設けた2個の摺動側ピボット部1aを挿入することにより位置決めをされている。
【0038】
図5Aは、実施例に係る発電機用スラスト軸受装置を示す分解斜視図である。
【0039】
本図においては、軸受パッド4の下面の内周側及び外周側に凹球面を有する中空円筒4cが設けてあり、円筒状の穴(凹部)が設けてある。この穴に、ピボットスプリング1に設けた凸球面を有する摺動側ピボット部1aを挿入することにより、軸受パッド4を2点で支持するようになっている。摺動側ピボット部1aの先端部は、凸球面に限定されるものではなく、摺動側に向かって凸の滑らかな曲面状であればよい。
【0040】
また、軸受台5に設けた半円筒形状の凹部を有する支持受台7に、ピボットスプリング1に設けた凸部である固定部側ピボット部1bが設置されている。固定部側ピボット部1bの先端部は、半円筒形状であることが望ましい。また、固定部側ピボット部1bの先端部は、半球面形状であってもよい。すなわち、固定部側ピボット部1bの先端部は、少なくとも軸受台5の半径方向の断面の形状が固定部側に向かって凸の滑らかな曲線状である。
【0041】
支持受台7の半円筒形状の凹部は、軸受台5の半径方向の断面の形状が半円形状、円弧状などの下方に向かって凸の滑らかな曲線状(固定部側に向かって凸の滑らかな曲線状)になっている。そして、支持受台7の半円筒形状の凹部は、軸受台5の周方向の断面の形状が直線状となっていることが望ましい。
【0042】
これにより、ピボットスプリング1は、軸受台5の半径方向にのみ傾動可能とすることができる。
【0043】
図5Bは、図5Aの軸受パッド4を示す断面図である。
【0044】
本図において、軸受パッド4は、台金4aの上面に裏金4bを固定し、台金4aの下面に凹部4d(台金凹部)を有する中空円筒4cを固定した構造を有している。裏金4bの上面は、回転体との摺動面となっている。凹部4dの上面部は、凹球面(上に凹である滑らかな曲面であれば、必ずしも曲率が一定でなくてもよい。)となっている。
【0045】
図5Aの中空円筒4cの配置で示すように、台金凹部(凹部4d)は、軸受台5の半径方向に配列されている。
【0046】
本実施例において、凹部及び凸部の形状は、必ずしも曲率が一定でなくてもよい。
【0047】
図6Aは、図5Aの軸受パッド4の中空円筒4cに摺動側ピボット部1aを設置した状態を示す部分断面図である。
【0048】
図6Bは、図5Aの軸受パッドの中空円筒4cと摺動側ピボット部1aとの作用を示す部分断面図である。
【0049】
図6Aにおいては、摺動側ピボット部1aの最上部(頂点)が中空円筒4cの最上面部に接触して支持されている。
【0050】
これに対して、図6Bにおいては、摺動側ピボット部1aと中空円筒4cとは、図中右寄りで摺動側ピボット部1aの凸球面と中空円筒4cの凹球面とが接している。ここで、上記の凸球面と凹球面とが接している点を接触点と呼ぶ。
【0051】
これにより、スラスト方向の荷重F1に加え、周方向の荷重F2がかかった場合においても、軸受パッド4の摺動側ピボット部1aとの接触点が移行する際の反力F3が作用し、軸受パッド4は位置決めされる。このため、図1、2A及び2Bに示す従来のプレート6は不必要となる。また、周方向の荷重F2が変化することによって接触点が移動するため、軸受パッド4の固渋を防止することができる。
【0052】
次に、ピボットスプリング1の位置決めについて説明する。
【0053】
図7は、ピボットスプリングに設けた固定部側ピボット部と支持受台との関係を示す部分断面図である。
【0054】
本図において、ピボットスプリング1の下面には、半円筒形状の凸部である固定部側ピボット部1bが設けてある。この固定部側ピボット部1bが軸受台5に取付けられた支持受台7の半円筒形状の凹部に設置されている。支持受台7の凹部により、ピボットスプリング1の周方向への移動及び回転が抑制され、ピボットスプリング1は、支持受台7の上でピボットスプリング1の長手方向(軸受台5の半径方向)のみ傾動可能となるように位置決めをされた状態となる。これにより、従来のプレート6は不必要となり、プレート6とピボットスプリング1との間の接触がなくなり、固渋を防止することが可能となる。
【0055】
本実施例において、軸受パッド4の上面部の形状は略台形状としてあるが、これに限定されるものではなく、略長方形状、三角形状などであってもよい。
【0056】
また、本実施例においては、軸受パッド4は、台金4aの下面に、凹部4d(台金凹部)を有する中空円筒4cを固定した構成としてあるが、台金凹部を設けるために必ずしも中空円筒4cを設ける必要はなく、台金4aの下面に、直接、凹部4dを設けた構成とし、中空円筒4cを設けない構成としてもよい。
【実施例2】
【0057】
実施例1においては、軸受パッド4に周方向の大きな力が急激にかかった際、軸受パッド4に回転力が作用し、これに伴い、ピボットスプリング1も回転しようとする。このような場合、支持受台7に設けた半円筒形状の凹部の側面部とピボットスプリング1の下面に設けた半円筒形状の凸部である固定部側ピボット部1bの側面部とが接触してこれらの間に大きな接触応力が発生してしまう可能性がある。
【0058】
図8は、実施例2に係る発電機用スラスト軸受装置の分解斜視図である。
【0059】
図9は、実施例2に係る発電機用スラスト軸受装置の軸受パッド4の上方から見た発電機用スラスト軸受装置の投影図である。
【0060】
これらの図においては、ピボットスプリング1の長手方向に対して垂直方向(軸受台5の周方向)の2か所に半円筒形状の凸部である固定部側ピボット部1bを設けてあり、これらの固定部側ピボット部1bは、軸受台5に取付けられた2つの支持受台7で支持されるようになっている。これにより、ピボットスプリング1が位置決めをされるため、ピボットスプリング1と支持受台7との間の損傷を抑制することができる。
【0061】
支持受台7の半円筒形状の凹部は、軸受台5の半径方向の断面の形状が半円形状、円弧状などの下方に向かって凸の滑らかな曲線状(固定部側に向かって凸の滑らかな曲線状)になっている。そして、支持受台7の半円筒形状の凹部は、軸受台5の周方向の断面の形状が直線状となっていることが望ましい。
【0062】
これにより、ピボットスプリング1は、軸受台5の半径方向にのみ傾動可能とすることができる。
【0063】
また、固定部側ピボット部1bの形状を半円筒凸形状でなく凸球面形状とし、さらに、支持受台の凹部の形状を凹球面形状にすることにより、位置決めをする際の固渋の防止を更に確実にすることができる。
【実施例3】
【0064】
図10は、実施例3に係る発電機用スラスト軸受装置を示す分解斜視図である。
【0065】
本図において、摺動側ピボット部1aは、摺動側ピボット部1aの支持部301aよりも直径を大きくしてあり、摺動側ピボット部1aの側面部は、鉛直方向に曲率を有している。
【0066】
図11Aは、図10の軸受パッドの中空円筒にピボットを設置した状態を示す部分断面図である。図11Bは、図10の軸受パッドとピボットとの接触点が変化した状態を示す部分断面図である。
【0067】
これらの図は、摺動側ピボット部1aの側面部が鉛直方向に曲率を有する場合を示すものである。すなわち、摺動側ピボット部1aのうち、台金凹部(中空円筒4cの凹部)に挿入された部位の下端部より上部(摺動側)に直径(太さ)が最大となる部分を有している。
【0068】
実施例1及び実施例2においては、軸受パッド4の位置決めがされているものの、急激な周方向の力が生じた場合に、軸受パッド4の下面に設けた中空円筒4cの凹部の側面部と摺動側ピボット部1aの側面部とが接触する可能性がある。
【0069】
そこで、本実施例においては、摺動側ピボット部1aの側面部に曲率を設けることにより、急激な周方向の力が生じた場合であっても、その曲率を設けた側面部のみで接触する。この場合において、中空円筒4cの凹部の側面部と摺動側ピボット部1aとの接触点は、上記の周方向の力や接触点の変化の速度などによって変化する。このため、接触点が定まらず、摺動側ピボット部1a全体の損傷を抑制することができる。
【0070】
なお、本明細書において記載した「上面」、「下面」、「上面部」、「下面部」、「上部」、「下部」などの用語は、重力が働く方向を下方として表したものである。発電機用スラスト軸受装置の軸受パッドの上面部は回転体と対向して摺動する面であり、発電機用スラスト軸受装置の下部に位置する軸受台は発電機の固定部に支持されるものであるため、それぞれ、「上面」を「摺動側表面」、「下面」を「固定部側表面」、「上面部」を「摺動側表面部」、「下面部」を「固定部側表面部」、「上部」を「摺動側」、「下部」を「固定部側」と呼んでもよい。
【符号の説明】
【0071】
1:ピボットスプリング、1a:摺動側ピボット部、1b:固定部側ピボット部、2:回転軸、3:スラストランナ、4:軸受パッド、4a:台金、4b:裏金、4c:中空円筒、4d:凹部、5:軸受台、6:プレート、7:支持受台。
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電機用スラスト軸受装置に関する。
【背景技術】
【0002】
立軸型の水車発電機のスラスト軸受装置は、水車、発電機等の回転体の自重に加え、水車にかかる水スラスト荷重を支持する。大容量の発電機の場合は、3000t〜4000tもの荷重を支えなければならない。
【0003】
上記の荷重を支えるための軸受装置の構造として、特許文献1には、回転軸周りに放射状に配置された軸受パッドの裏側に凹部を設け、その部分を楕円球形状のピボットで一点支持し、径方向及び周方向に傾動可能としたものが開示されている。また、特許文献1においては、軸受パッドが周方向に回転しないようにするため、パッド外周部に穴をあけ、その穴に柱状の部材を差し込むことにより位置決めを行なっている。
【0004】
他の軸受装置の構造として、非特許文献1には、軸受パッドが内周側及び外周側の2点でピボットスプリングによって支えられたものが開示されている。また、非特許文献1においては、隣接する軸受パッドの内周と外周とを支えるカスケード形式のピボットの配置により、軸受パッドの高さを自動調整する構造となっている。この構造においては、軸受パッドの下に設けられた円形のプレートによって軸受パッド及びピボットスプリングが位置決めされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−270550号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】日本トライボロジー学会編:「すべり軸受資料集」養賢堂 2005年 P78
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の軸受パッド及びピボットスプリングの位置決めは、軸受パッドとプレート(平板)との接触及びピボットスプリングとプレート(平板)との接触により行われていた。そのため、位置決めをする際、軸受パッドとプレートとの間の接触応力及びピボットスプリングとプレートとの間の接触応力による固渋が生じる懸念があった。
【0008】
本発明の目的は、軸受パッド及びピボットスプリングを位置決めする際の軸受パッドとプレートとの間の接触応力及びピボットスプリングとプレートとの間の接触応力を低減し、固渋を防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の発電機用スラスト軸受装置は、発電機の固定部に支持される軸受台と、前記軸受台の摺動側表面部に固定された支持受台と、前記支持受台の摺動側に設置されたピボットスプリングと、前記ピボットスプリングの摺動側に設置された軸受パッドとを含む発電機用スラスト軸受装置であって、前記軸受パッドは、台金と、前記台金の摺動側表面部に設けられ回転体に対向する摺動面を有する裏金とを含み、前記台金の固定部側には台金凹部が設けられ、前記ピボットスプリングは、前記支持受台の凹部と接する固定部側ピボット部と、前記台金凹部に接する摺動側ピボット部とを含み、前記支持受台の前記凹部は、前記軸受台の半径方向の断面の形状が固定部側に向かって凸の滑らかな曲線状であって前記軸受台の周方向の断面の形状が直線状であり、前記固定部側ピボット部の先端部は、少なくとも前記軸受台の半径方向の断面の形状が固定部側に向かって凸の滑らかな曲線状であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、軸受パッド及びピボットスプリングの位置決め時に生じる接触応力を低減することが可能となり、軸受パッドの固渋を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】従来の発電機用スラスト軸受装置におけるプレートによるピボットスプリングの位置決めを示す部分断面図である。
【図2A】従来の発電機用スラスト軸受装置における軸受パッドの位置決めを示す部分断面図である。
【図2B】図2Aにおいて軸受パッドがプレートの内壁面に接触した状態を示す部分断面図である。
【図3】実施例1に係る発電機用スラスト軸受装置を示す概略構成図である。
【図4】図3の発電機用スラスト軸受装置を軸受パッドの上方から見た部分投影図である。
【図5A】実施例1に係る発電機用スラスト軸受装置を示す分解斜視図である。
【図5B】図5Aの軸受パッドを示す断面図である。
【図6A】図5Aの軸受パッドの中空円筒に摺動側ピボット部を設置した状態を示す部分断面図である。
【図6B】図5Aの軸受パッドと摺動側ピボット部との作用を示す部分断面図である。
【図7】ピボットスプリングに設けた固定部側ピボット部と支持受台との関係を示す部分断面図である。
【図8】実施例2に係る発電機用スラスト軸受装置を示す分解斜視図である。
【図9】図8の発電機用スラスト軸受装置を軸受パッドの上方から見た部分投影図である。
【図10】実施例3に係る発電機用スラスト軸受装置を示す分解斜視図である。
【図11A】図10の軸受パッドの中空円筒に摺動側ピボット部を設置した状態を示す部分断面図である。
【図11B】図10の軸受パッドと摺動側ピボット部との接触点が変化した状態を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、例えば、立軸型の水車発電機のように、回転軸周りに放射状に配置された扇形の軸受パッドを備えているスラスト軸受装置に関するものである。
【0013】
以下、本発明の一実施形態に係る発電機用スラスト軸受装置について説明する。
【0014】
前記発電機用スラスト軸受装置は、回転軸周りに放射状に配置され、軸方向の荷重を支持する扇形形状の複数の軸受パッドと、パッド内周側および外周側の2点と接するピボットと、2つのピボットを取付けたピボットスプリングと、ピボットスプリングを設置する支持受台と、支持受台を取付ける軸受台とを含み、軸受パッドの、ピボットとの接触部には凹面を設け、ピボットスプリングは長手方向のみに傾動するように支持受台に取り付けられている。
【0015】
前記発電機用スラスト軸受装置は、発電機の固定部に支持される軸受台と、軸受台の摺動側表面部に固定された支持受台と、支持受台の摺動側に設置されたピボットスプリングと、ピボットスプリングの摺動側に設置された軸受パッドとを含む。そして、軸受パッドは、台金と、台金の摺動側表面部に設けられ回転体に対向する摺動面を有する裏金とを含み、台金の固定部側には台金凹部が設けられ、ピボットスプリングは、支持受台の凹部と接する固定部側ピボット部と、台金凹部に接する摺動側ピボット部とを含み、支持受台の凹部は、軸受台の半径方向の断面の形状が固定部側に向かって凸の滑らかな曲線状であって軸受台の周方向の断面の形状が直線状であり、固定部側ピボット部の先端部は、少なくとも軸受台の半径方向の断面の形状が固定部側に向かって凸の滑らかな曲線状である。
【0016】
前記発電機用スラスト軸受装置において、摺動側ピボット部の先端部は、摺動側に向かって凸の滑らかな曲面状である。
【0017】
前記発電機用スラスト軸受装置において、台金凹部は、摺動側ピボット部の先端部と接する曲面であって摺動側に向かって凸の滑らかな曲面を有する。
【0018】
前記発電機用スラスト軸受装置においては、1個のピボットスプリングが摺動側ピボット部を2個含み、台金は、これらの摺動側ピボット部に接する2個の台金凹部を含み、これらの台金凹部は、軸受台の半径方向に配列されている。
【0019】
前記発電機用スラスト軸受装置においては、ピボットスプリング1個が固定部側ピボット部を2個含み、これらの固定部側ピボット部は、軸受台の周方向に設置された2個の支持受台に設置されている。
【0020】
前記発電機用スラスト軸受装置において、摺動側ピボット部の側面部は、軸受台の摺動側表面に垂直な平面による断面の形状が滑らかな曲線状である部位を有し、この部位が台金凹部に挿入されており、前記部位のうち、軸受台の摺動側表面に垂直な平面による断面の、軸受台の摺動側表面に平行な方向の寸法が、前記部位の固定部側の端部よりも摺動側で最大となる。
【0021】
以下、図を用いて詳しく説明する。
【0022】
図1は、従来の発電機用スラスト軸受装置におけるプレートによるピボットスプリングの位置決めを示す部分断面図である。
【0023】
本図において、ピボットスプリング201の固定部側ピボット部201bは、軸受台205の上面に設置された支持受台207に支持されている。軸受パッド204は、ピボットスプリング201の摺動側ピボット部201aによって支持されている。また、軸受パッド204及び固定部側ピボット部201bは、プレート206によって水平方向について位置決めされている。
【0024】
図2Aは、従来の発電機用スラスト軸受装置における軸受パッドの位置決めを示す部分断面図である。
【0025】
本図においては、軸受パッド204を摺動側ピボット部201aに設置して位置決めした状態を示している。軸受パッド204及び摺動側ピボット部201aとプレート206の内壁面との間には、隙間101が設けてある。
【0026】
図2Bは、図2Aにおいて軸受パッド204がプレート206の内壁面に接触した状態を示す部分断面図である。
【0027】
本図においては、軸受パッド204が摺動側ピボット部201aに対して傾いたり、所定の位置からずれたりして軸受パッド204の側面がプレート206の内壁面に接触した状態を示している。
【0028】
このため、軸受パッド204及び固定部側ピボット部201bは、プレート206の内壁面に接触して固渋が生じる懸念があった。
【0029】
以下、実施例を用いて説明する。
【実施例1】
【0030】
図3は、実施例に係る発電機用スラスト軸受装置の概略構成図である。
【0031】
本図において、発電機用スラスト軸受装置は、発電機の固定部に支持された環状の軸受台5と、軸受台5の上面部に固定された支持受台7と、支持受台7の上部に設置されたピボットスプリング1と、ピボットスプリング1の上部に設置された軸受パッド4と含む構成である。
【0032】
軸受パッド4は、複数個であり、回転軸2の周りに放射状に配置され、回転軸2、回転軸2に固定されたスラストランナ3などで構成された回転体等の自重と、水車に加わる水スラスト荷重とを合わせた総荷重を支持している。ここで、「回転軸2の周りに放射状に配置」とは、回転軸2の中心からほぼ同じ距離に回転軸2の周方向に並べて配置されている状態をいう。
【0033】
発電機用スラスト軸受装置は、油で満たされており、回転軸2及びスラストランナ3が回転すると、スラストランナ3と軸受パッド4との間に油膜が形成されるようになっている。発電機用スラスト軸受装置は、油膜圧力により効果的にスラスト荷重を支持することができるようにするため、状況に応じて、径方向及び周方向に適切に傾動可能な構造を有している。
【0034】
しかし、スラストランナ3の回転に伴う油膜のせん断応力により、軸受パッド4を周方向へ回転させる力が発生する。この力による軸受パッド4の移動を制限するため、軸受パッド4及び軸受パッド4を支持するピボットスプリング1の位置決めをする必要がある。
【0035】
本実施例においては、ピボットスプリング1の上面部に摺動側ピボット部1a(凸部)を設け、軸受パッド4の下面部に設けた中空円筒4cの凹部(台金凹部)に挿入する構成とすることにより位置決めをしている。
【0036】
図4は、図3の発電機用スラスト軸受装置を軸受パッド4の上方から見た部分投影図である。
【0037】
本図において、軸受台5の上方に周方向に設置された軸受パッド4は、上面部の形状が略台形状であり、軸受台5の半径方向に外側の部分が幅広になっている。また、軸受パッド4は、それぞれ2個の中空円筒4cを有し、中空円筒4cの凹部にピボットスプリング1に設けた2個の摺動側ピボット部1aを挿入することにより位置決めをされている。
【0038】
図5Aは、実施例に係る発電機用スラスト軸受装置を示す分解斜視図である。
【0039】
本図においては、軸受パッド4の下面の内周側及び外周側に凹球面を有する中空円筒4cが設けてあり、円筒状の穴(凹部)が設けてある。この穴に、ピボットスプリング1に設けた凸球面を有する摺動側ピボット部1aを挿入することにより、軸受パッド4を2点で支持するようになっている。摺動側ピボット部1aの先端部は、凸球面に限定されるものではなく、摺動側に向かって凸の滑らかな曲面状であればよい。
【0040】
また、軸受台5に設けた半円筒形状の凹部を有する支持受台7に、ピボットスプリング1に設けた凸部である固定部側ピボット部1bが設置されている。固定部側ピボット部1bの先端部は、半円筒形状であることが望ましい。また、固定部側ピボット部1bの先端部は、半球面形状であってもよい。すなわち、固定部側ピボット部1bの先端部は、少なくとも軸受台5の半径方向の断面の形状が固定部側に向かって凸の滑らかな曲線状である。
【0041】
支持受台7の半円筒形状の凹部は、軸受台5の半径方向の断面の形状が半円形状、円弧状などの下方に向かって凸の滑らかな曲線状(固定部側に向かって凸の滑らかな曲線状)になっている。そして、支持受台7の半円筒形状の凹部は、軸受台5の周方向の断面の形状が直線状となっていることが望ましい。
【0042】
これにより、ピボットスプリング1は、軸受台5の半径方向にのみ傾動可能とすることができる。
【0043】
図5Bは、図5Aの軸受パッド4を示す断面図である。
【0044】
本図において、軸受パッド4は、台金4aの上面に裏金4bを固定し、台金4aの下面に凹部4d(台金凹部)を有する中空円筒4cを固定した構造を有している。裏金4bの上面は、回転体との摺動面となっている。凹部4dの上面部は、凹球面(上に凹である滑らかな曲面であれば、必ずしも曲率が一定でなくてもよい。)となっている。
【0045】
図5Aの中空円筒4cの配置で示すように、台金凹部(凹部4d)は、軸受台5の半径方向に配列されている。
【0046】
本実施例において、凹部及び凸部の形状は、必ずしも曲率が一定でなくてもよい。
【0047】
図6Aは、図5Aの軸受パッド4の中空円筒4cに摺動側ピボット部1aを設置した状態を示す部分断面図である。
【0048】
図6Bは、図5Aの軸受パッドの中空円筒4cと摺動側ピボット部1aとの作用を示す部分断面図である。
【0049】
図6Aにおいては、摺動側ピボット部1aの最上部(頂点)が中空円筒4cの最上面部に接触して支持されている。
【0050】
これに対して、図6Bにおいては、摺動側ピボット部1aと中空円筒4cとは、図中右寄りで摺動側ピボット部1aの凸球面と中空円筒4cの凹球面とが接している。ここで、上記の凸球面と凹球面とが接している点を接触点と呼ぶ。
【0051】
これにより、スラスト方向の荷重F1に加え、周方向の荷重F2がかかった場合においても、軸受パッド4の摺動側ピボット部1aとの接触点が移行する際の反力F3が作用し、軸受パッド4は位置決めされる。このため、図1、2A及び2Bに示す従来のプレート6は不必要となる。また、周方向の荷重F2が変化することによって接触点が移動するため、軸受パッド4の固渋を防止することができる。
【0052】
次に、ピボットスプリング1の位置決めについて説明する。
【0053】
図7は、ピボットスプリングに設けた固定部側ピボット部と支持受台との関係を示す部分断面図である。
【0054】
本図において、ピボットスプリング1の下面には、半円筒形状の凸部である固定部側ピボット部1bが設けてある。この固定部側ピボット部1bが軸受台5に取付けられた支持受台7の半円筒形状の凹部に設置されている。支持受台7の凹部により、ピボットスプリング1の周方向への移動及び回転が抑制され、ピボットスプリング1は、支持受台7の上でピボットスプリング1の長手方向(軸受台5の半径方向)のみ傾動可能となるように位置決めをされた状態となる。これにより、従来のプレート6は不必要となり、プレート6とピボットスプリング1との間の接触がなくなり、固渋を防止することが可能となる。
【0055】
本実施例において、軸受パッド4の上面部の形状は略台形状としてあるが、これに限定されるものではなく、略長方形状、三角形状などであってもよい。
【0056】
また、本実施例においては、軸受パッド4は、台金4aの下面に、凹部4d(台金凹部)を有する中空円筒4cを固定した構成としてあるが、台金凹部を設けるために必ずしも中空円筒4cを設ける必要はなく、台金4aの下面に、直接、凹部4dを設けた構成とし、中空円筒4cを設けない構成としてもよい。
【実施例2】
【0057】
実施例1においては、軸受パッド4に周方向の大きな力が急激にかかった際、軸受パッド4に回転力が作用し、これに伴い、ピボットスプリング1も回転しようとする。このような場合、支持受台7に設けた半円筒形状の凹部の側面部とピボットスプリング1の下面に設けた半円筒形状の凸部である固定部側ピボット部1bの側面部とが接触してこれらの間に大きな接触応力が発生してしまう可能性がある。
【0058】
図8は、実施例2に係る発電機用スラスト軸受装置の分解斜視図である。
【0059】
図9は、実施例2に係る発電機用スラスト軸受装置の軸受パッド4の上方から見た発電機用スラスト軸受装置の投影図である。
【0060】
これらの図においては、ピボットスプリング1の長手方向に対して垂直方向(軸受台5の周方向)の2か所に半円筒形状の凸部である固定部側ピボット部1bを設けてあり、これらの固定部側ピボット部1bは、軸受台5に取付けられた2つの支持受台7で支持されるようになっている。これにより、ピボットスプリング1が位置決めをされるため、ピボットスプリング1と支持受台7との間の損傷を抑制することができる。
【0061】
支持受台7の半円筒形状の凹部は、軸受台5の半径方向の断面の形状が半円形状、円弧状などの下方に向かって凸の滑らかな曲線状(固定部側に向かって凸の滑らかな曲線状)になっている。そして、支持受台7の半円筒形状の凹部は、軸受台5の周方向の断面の形状が直線状となっていることが望ましい。
【0062】
これにより、ピボットスプリング1は、軸受台5の半径方向にのみ傾動可能とすることができる。
【0063】
また、固定部側ピボット部1bの形状を半円筒凸形状でなく凸球面形状とし、さらに、支持受台の凹部の形状を凹球面形状にすることにより、位置決めをする際の固渋の防止を更に確実にすることができる。
【実施例3】
【0064】
図10は、実施例3に係る発電機用スラスト軸受装置を示す分解斜視図である。
【0065】
本図において、摺動側ピボット部1aは、摺動側ピボット部1aの支持部301aよりも直径を大きくしてあり、摺動側ピボット部1aの側面部は、鉛直方向に曲率を有している。
【0066】
図11Aは、図10の軸受パッドの中空円筒にピボットを設置した状態を示す部分断面図である。図11Bは、図10の軸受パッドとピボットとの接触点が変化した状態を示す部分断面図である。
【0067】
これらの図は、摺動側ピボット部1aの側面部が鉛直方向に曲率を有する場合を示すものである。すなわち、摺動側ピボット部1aのうち、台金凹部(中空円筒4cの凹部)に挿入された部位の下端部より上部(摺動側)に直径(太さ)が最大となる部分を有している。
【0068】
実施例1及び実施例2においては、軸受パッド4の位置決めがされているものの、急激な周方向の力が生じた場合に、軸受パッド4の下面に設けた中空円筒4cの凹部の側面部と摺動側ピボット部1aの側面部とが接触する可能性がある。
【0069】
そこで、本実施例においては、摺動側ピボット部1aの側面部に曲率を設けることにより、急激な周方向の力が生じた場合であっても、その曲率を設けた側面部のみで接触する。この場合において、中空円筒4cの凹部の側面部と摺動側ピボット部1aとの接触点は、上記の周方向の力や接触点の変化の速度などによって変化する。このため、接触点が定まらず、摺動側ピボット部1a全体の損傷を抑制することができる。
【0070】
なお、本明細書において記載した「上面」、「下面」、「上面部」、「下面部」、「上部」、「下部」などの用語は、重力が働く方向を下方として表したものである。発電機用スラスト軸受装置の軸受パッドの上面部は回転体と対向して摺動する面であり、発電機用スラスト軸受装置の下部に位置する軸受台は発電機の固定部に支持されるものであるため、それぞれ、「上面」を「摺動側表面」、「下面」を「固定部側表面」、「上面部」を「摺動側表面部」、「下面部」を「固定部側表面部」、「上部」を「摺動側」、「下部」を「固定部側」と呼んでもよい。
【符号の説明】
【0071】
1:ピボットスプリング、1a:摺動側ピボット部、1b:固定部側ピボット部、2:回転軸、3:スラストランナ、4:軸受パッド、4a:台金、4b:裏金、4c:中空円筒、4d:凹部、5:軸受台、6:プレート、7:支持受台。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電機の固定部に支持される軸受台と、前記軸受台の摺動側表面部に固定された支持受台と、前記支持受台の摺動側に設置されたピボットスプリングと、前記ピボットスプリングの摺動側に設置された軸受パッドとを含む発電機用スラスト軸受装置であって、前記軸受パッドは、台金と、前記台金の摺動側表面部に設けられ回転体に対向する摺動面を有する裏金とを含み、前記台金の固定部側には台金凹部が設けられ、前記ピボットスプリングは、前記支持受台の凹部と接する固定部側ピボット部と、前記台金凹部に接する摺動側ピボット部とを含み、前記支持受台の前記凹部は、前記軸受台の半径方向の断面の形状が固定部側に向かって凸の滑らかな曲線状であって前記軸受台の周方向の断面の形状が直線状であり、前記固定部側ピボット部の先端部は、少なくとも前記軸受台の半径方向の断面の形状が固定部側に向かって凸の滑らかな曲線状であることを特徴とする発電機用スラスト軸受装置。
【請求項2】
前記摺動側ピボット部の先端部は、摺動側に向かって凸の滑らかな曲面状であることを特徴とする請求項1記載の発電機用スラスト軸受装置。
【請求項3】
前記台金凹部は、前記摺動側ピボット部の前記先端部と接する曲面であって摺動側に向かって凸の滑らかな曲面を有することを特徴とする請求項2記載の発電機用スラスト軸受装置。
【請求項4】
1個の前記ピボットスプリングが前記摺動側ピボット部を2個含み、前記台金は、これらの前記摺動側ピボット部に接する2個の前記台金凹部を含み、これらの前記台金凹部は、前記軸受台の半径方向に配列されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の発電機用スラスト軸受装置。
【請求項5】
前記ピボットスプリング1個が前記固定部側ピボット部を2個含み、これらの前記固定部側ピボット部は、前記軸受台の周方向に設置された2個の前記支持受台に設置されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の発電機用スラスト軸受装置。
【請求項6】
前記摺動側ピボット部の側面部は、前記軸受台の摺動側表面に垂直な平面による断面の形状が滑らかな曲線状である部位を有し、この部位が前記台金凹部に挿入されており、前記部位のうち、前記軸受台の摺動側表面に垂直な平面による断面の、前記軸受台の摺動側表面に平行な方向の寸法が、前記部位の固定部側の端部よりも摺動側で最大となることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の発電機用スラスト軸受装置。
【請求項1】
発電機の固定部に支持される軸受台と、前記軸受台の摺動側表面部に固定された支持受台と、前記支持受台の摺動側に設置されたピボットスプリングと、前記ピボットスプリングの摺動側に設置された軸受パッドとを含む発電機用スラスト軸受装置であって、前記軸受パッドは、台金と、前記台金の摺動側表面部に設けられ回転体に対向する摺動面を有する裏金とを含み、前記台金の固定部側には台金凹部が設けられ、前記ピボットスプリングは、前記支持受台の凹部と接する固定部側ピボット部と、前記台金凹部に接する摺動側ピボット部とを含み、前記支持受台の前記凹部は、前記軸受台の半径方向の断面の形状が固定部側に向かって凸の滑らかな曲線状であって前記軸受台の周方向の断面の形状が直線状であり、前記固定部側ピボット部の先端部は、少なくとも前記軸受台の半径方向の断面の形状が固定部側に向かって凸の滑らかな曲線状であることを特徴とする発電機用スラスト軸受装置。
【請求項2】
前記摺動側ピボット部の先端部は、摺動側に向かって凸の滑らかな曲面状であることを特徴とする請求項1記載の発電機用スラスト軸受装置。
【請求項3】
前記台金凹部は、前記摺動側ピボット部の前記先端部と接する曲面であって摺動側に向かって凸の滑らかな曲面を有することを特徴とする請求項2記載の発電機用スラスト軸受装置。
【請求項4】
1個の前記ピボットスプリングが前記摺動側ピボット部を2個含み、前記台金は、これらの前記摺動側ピボット部に接する2個の前記台金凹部を含み、これらの前記台金凹部は、前記軸受台の半径方向に配列されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の発電機用スラスト軸受装置。
【請求項5】
前記ピボットスプリング1個が前記固定部側ピボット部を2個含み、これらの前記固定部側ピボット部は、前記軸受台の周方向に設置された2個の前記支持受台に設置されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の発電機用スラスト軸受装置。
【請求項6】
前記摺動側ピボット部の側面部は、前記軸受台の摺動側表面に垂直な平面による断面の形状が滑らかな曲線状である部位を有し、この部位が前記台金凹部に挿入されており、前記部位のうち、前記軸受台の摺動側表面に垂直な平面による断面の、前記軸受台の摺動側表面に平行な方向の寸法が、前記部位の固定部側の端部よりも摺動側で最大となることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の発電機用スラスト軸受装置。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11A】
【図11B】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11A】
【図11B】
【公開番号】特開2012−16071(P2012−16071A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−146996(P2010−146996)
【出願日】平成22年6月29日(2010.6.29)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月29日(2010.6.29)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
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