説明

発電装置を備えた緩衝器

【課題】異音の発生がなく、簡便な構造で発電させること。
【解決手段】発電装置20を備えた緩衝器100であって、作動流体が封入されたシリンダ1と、シリンダ1に進退自在に挿入されるピストンロッド5とを備え、発電装置20は、シリンダ1の外周面に巻き付けられた圧電素子21を備え、緩衝器100の伸縮作動に伴うシリンダ1内の油圧変動によって圧電素子21にて発電が行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電装置を備えた緩衝器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車輪振動及びエンジン振動により圧電セラミックを直接殴打して発電する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−112364号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載の発電方法では、打音が発生するため、車両に搭載するには問題がある。また、振動を圧電セラミックに伝える振動伝達部が必要であるため、装置が大掛かりになる。
【0005】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、異音の発生がなく、簡便な構造で発電させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、発電装置を備えた緩衝器であって、作動流体が封入されたシリンダと、前記シリンダに進退自在に挿入されるピストンロッドと、を備え、前記発電装置は、前記シリンダの外周面に巻き付けられた圧電素子を備え、緩衝器の伸縮作動に伴う前記シリンダ内の油圧変動によって前記圧電素子にて発電が行われることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、緩衝器の伸縮作動に伴うシリンダ内の圧力変動によって圧電素子にて発電が行われるため、発電に際して異音の発生がない。また、圧電素子はシリンダの外周面に巻き付けられるだけの簡便な構造である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施の形態に係る緩衝器の概略縦断面図である。
【図2】発電装置の発電動作を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
【0010】
まず、図1を参照して、本実施の形態に係る緩衝器100の全体構成について説明する。緩衝器100は、自動車等の車両における車体と車軸との間に介装され、車体姿勢の変化を抑制する機能を有するものである。
【0011】
緩衝器100は、作動油(作動流体)が封入されたシリンダ内筒1と、シリンダ内筒1内に摺動自在に挿入されたピストン2と、一端にピストン2が固定され他端はシリンダ内筒1の外部に延在するピストンロッド5と、シリンダ内筒1を囲むシリンダ外筒6とを備える。シリンダ内筒1の内部は、ピストン2によってロッド側流体室3とピストン側流体室4とに画成される。ピストン2はピストンロッド5の段部にナット16によって固定される。
【0012】
シリンダ内筒1とシリンダ外筒6との間には、作動油をガスとともに貯留するリザーバ室7が画成される。シリンダ内筒1の底部には、ピストン側流体室4とリザーバ室7とを区画するベースバルブ8が固定される。ベースバルブ8には、リザーバ室7からピストン側流体室4への作動油の流れを許容する一方、逆向きの作動油の流れを阻止するチェック弁9と、ピストン側流体室4からリザーバ室7への作動油の流れに抵抗を付与する縮側減衰弁11とが設けられる。
【0013】
ピストン2には、ピストン側流体室4からロッド側流体室3への作動油の流れを許容する一方、逆向きの作動油の流れを阻止するチェック弁10と、ロッド側流体室3からピストン側流体室4への作動油の流れに抵抗を付与する伸側減衰弁12とが設けられる。
【0014】
ロッド側流体室3とリザーバ室7は、シリンダ内筒1の開口端部を閉塞するロッドガイド13によって作動油の行き来が不能に区画される。ピストンロッド5はロッドガイド13を挿通して設けられる。
【0015】
緩衝器100が収縮作動する場合には、ピストン側流体室4が縮小し、ロッド側流体室3が拡大する。これに伴い、ピストン側流体室4の作動油はチェック弁10を通じてロッド側流体室3に流入する。一方、ロッド側流体室3とピストン側流体室4の合計容積は、ピストン2の縮側ストロークに伴ってシリンダ内筒1に侵入するピストンロッド5の侵入体積相当分減少する。シリンダ内筒1のこの容積変動は、ピストン側流体室4の作動油の一部が縮側減衰弁11を通じてリザーバ室7に流出することによって補償される。この時、縮側減衰弁11を通る作動油が縮側減衰力を発生させる。
【0016】
緩衝器100が伸長作動する場合には、ロッド側流体室3が縮小し、ピストン側流体室4が拡大する。これに伴い、ロッド側流体室3の作動油は伸側減衰弁12を通じてピストン側流体室4に流入する。この時、伸側減衰弁12を通る作動油が伸側減衰力を発生させる。一方、ロッド側流体室3とピストン側流体室4の合計容積は、ピストン2の伸側ストロークに伴ってシリンダ内筒1から退出するピストンロッド5の退出体積相当分増加する。シリンダ内筒1のこの容積変動は、リザーバ室7の作動油の一部がチェック弁9を通じてピストン側流体室4に流入することによって補償される。
【0017】
シリンダ外筒6内の端部には、ピストンロッド5の外周面が摺動し、外部への作動油の漏れを防止するシール部材17が設けられる。
【0018】
以上のように、緩衝器100は、シリンダ内筒1及びシリンダ外筒6からなるシリンダ15に対してピストンロッド5が進退することによって減衰力を発揮するものである。
【0019】
緩衝器100には、緩衝器100の伸縮作動に伴って発電を行う発電装置20が設けられる。以下では、図2を参照して発電装置20について説明する。
【0020】
発電装置20は、シリンダ内筒1の外周面に巻き付けられた圧電素子21を備える。圧電素子21は圧電体を電極で挟んだフィルム材であり、そのフィルム材がシリンダ内筒1の外周面に絶縁フィルムを介して巻き付けられる。具体的には、圧電素子21は接着剤等によってシリンダ内筒1の外周面に隙間なく固定される。
【0021】
圧電素子21は、ロッド側流体室3及びピストン側流体室4の双方の外周を囲んで取り付けられる。また、圧電素子21はシリンダ内筒1の外周面全周に巻き付けるのが、発電効率の観点からは望ましい。しかし、シリンダ内筒1の外周面の一部に巻き付けるようにしてもよい。
【0022】
圧電素子21の電極には配線が接続され、その配線は発電装置20にて発電された電力を充電するバッテリ、又は発電装置20にて発電された電力にて駆動する負荷に接続される。
【0023】
次に、発電装置20の発電動作について説明する。
【0024】
緩衝器100が収縮作動する場合には、ピストン側流体室4が縮小するため、ピストン側流体室4内の圧力が上昇し、緩衝器100が伸長作動する場合には、ロッド側流体室3が縮小するため、ロッド側流体室3内の圧力が上昇する。
【0025】
このように、緩衝器100の伸縮作動に伴ってシリンダ内筒1の内圧が上昇するため、その内圧(図2中の矢印)によってシリンダ内筒1の胴部1aが径方向に僅かに膨らむ。緩衝器100の両端部はベースバルブ8とロッドガイド13によって拘束されているため、胴部1aは両端部を支点として径方向に撓んだ状態となる(図2に点線で示す状態)。
【0026】
胴部1aが撓むことによって、胴部1aの外周面に巻き付けられた圧電素子21も変形する。圧電素子21はシリンダ内筒1の外周面に隙間なく固定されているため、シリンダ内筒1の胴部1aの僅かな変形にも追従して変形する。圧電素子21が変形することによって、圧電素子21にて発電が行われる。圧電素子21にて発電された電力は配線を通じてバッテリ又は負荷に供給される。
【0027】
以上の第1の実施の形態によれば、以下に示す作用効果を奏する。
【0028】
緩衝器100の伸縮作動に伴うシリンダ内筒1内の圧力変動によって圧電素子21にて発電が行われるため、発電に際して異音の発生がない。また、圧電素子21はシリンダ内筒1の外周面に巻き付けられるだけの簡便な構造である。このように、緩衝器100によれば、簡便な構造で効率的に発電を行うことができる。
【0029】
本発明は上記の実施の形態に限定されずに、その技術的な思想の範囲内において種々の変更がなしうることは明白である。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明は、緩衝器の伸縮作動を利用して発電を行う発電装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0031】
100 緩衝器
1 シリンダ内筒
2 ピストン
5 ピストンロッド
6 シリンダ外筒
20 発電装置
21 圧電素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電装置を備えた緩衝器であって、
作動流体が封入されたシリンダと、
前記シリンダに進退自在に挿入されるピストンロッドと、を備え、
前記発電装置は、前記シリンダの外周面に巻き付けられた圧電素子を備え、
緩衝器の伸縮作動に伴う前記シリンダ内の油圧変動によって前記圧電素子にて発電が行われることを特徴とする発電装置を備えた緩衝器。
【請求項2】
前記シリンダは、
前記ピストンロッドの端部に固定されたピストンが摺動自在に挿入されたシリンダ内筒と、
作動流体をガスとともに貯留するリザーバ室を前記シリンダ内筒との間に画成するシリンダ外筒と、を備え、
前記圧電素子は、前記シリンダ内筒の外周面に巻き付けられることを特徴とする請求項1に記載の発電装置を備えた緩衝器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2012−202530(P2012−202530A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−70055(P2011−70055)
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【出願人】(000000929)カヤバ工業株式会社 (2,151)
【Fターム(参考)】