説明

発電設備および発電方法

【課題】発電設備において太陽エネルギを利用して発電を行う際の発電効率を向上させる。
【解決手段】本発明の発電設備1は、太陽エネルギを利用して発電を行う第1発電部2と、第1発電部2で発電に寄与しなかった太陽エネルギを熱媒体に伝えて熱回収する熱回収手段3と、熱回収手段3で熱回収した熱媒体を利用してバイナリサイクルで発電を行う第2発電部4と、を有していることを特徴とする。好ましくは、第1発電部2は、太陽光を集光して太陽エネルギを集める太陽エネルギ集中手段5と、太陽エネルギ集中手段5により集められた太陽エネルギを電気エネルギに変換して発電を行う太陽エネルギ発電部6と、を有しているのがよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽光発電や太陽熱発電の際に、発電に寄与しなかった太陽エネルギを利用してバイナリ発電を行う発電設備および発電方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地球温暖化防止が将来的な解決課題として取り上げられる中、自然エネルギを利用した発電に対する注目が益々高まっている。このような自然エネルギを利用した発電の中でも、太陽光や太陽光による熱を利用した発電は、その中心を為すものと考えられている。
太陽光発電は、「太陽電池」として知られる半導体で構成された光電素子に太陽光を当て、光エネルギを直接電気エネルギに変換するものである。また、太陽光による熱を利用した発電には、発生した熱で作動媒体を蒸発させ発電機を駆動させて発電を行う太陽熱発電や発生した熱を熱電素子で電気に変換して発電する熱電発電がある。この太陽光発電や太陽熱発電として現在一般的に使用されている手段の変換効率(入射した光エネルギのうちどの程度が電気エネルギに変換されるかを示す効率、発電効率とも言う)はそれほど高いものではなく、実用レベルでは変換効率が10%程度のものもある。それゆえ、例えば発電効率が10%程度の発電では残りの90%程度の太陽エネルギが、利用されずに捨てられている。
【0003】
上記した太陽光発電としては、例えば特許文献1に示すようなものが知られている。
特許文献1に示す太陽光の発電設備は、地上に射し込まれた太陽光(太陽エネルギ)を反射鏡を用いて集光し、この集光した太陽光を用いて太陽電池モジュールで発電を行っている。
ところが、一般に太陽電池の発電効率は太陽電池(素子)の温度が上昇すれば低下する。それゆえ、太陽光を集光する集光型の太陽電池では、集光によって太陽電池の周辺の温度が上昇しやすく、高い発電効率を維持することは困難であるし、太陽電池を冷却する機構は必要不可欠になる。
【0004】
そのため、特許文献1の発電設備では、太陽電池モジュールの裏側に冷却水循環式の冷却部が設けられていて、この冷却部で太陽電池モジュールを冷却することにより発電効率を下げないようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−113771号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1の発電設備においては、太陽電池の過昇温による損傷を防止するために冷却を止めることができないものであり、冷却で再利用されずに廃棄されている熱量は、極めて大きい。例えば1000kWの太陽エネルギが得られたとする。この場合、発電効率が10%であれば冷却で廃棄される太陽エネルギは残りの90%、すなわち900kWとなる。これは、毎分200リットルで流れる常温の水を50〜60℃上昇させることができるほど大きなエネルギに相当する。当然、このように大きなエネルギを、利用せずに廃棄することは極めて不経済なことである。
【0007】
つまり、利用せずに廃棄する太陽エネルギを他の発電に再利用してやれば、この他の発電で再利用されて発電される分だけトータルでの発電量が上がり、ひいては発電効率をトータルシステムとして向上することも可能となる。
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、太陽エネルギを電気に変換する変換素子を利用して発電を行うだけでなく、変換素子の損傷防止および発電効率を維持するために捨てられていた太陽エネルギを再利用してバイナリ発電を行うことにより、発電効率を設備全体として向上させることができる発電設備および発電方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するため、本発明の発電設備は次の技術的手段を講じている。
すなわち、本発明の発電設備は、太陽エネルギを利用して発電を行う第1発電部と、前記第1発電部で発電に寄与しなかった太陽エネルギを熱媒体に伝えて熱回収する熱回収手段と、前記熱回収手段で熱回収した熱媒体を利用してバイナリサイクルで発電を行う第2発電部と、を有していることを特徴とする。
【0009】
好ましくは、前記第1発電部は、太陽光を集光して前記太陽エネルギを集める太陽エネルギ集中手段と、前記太陽エネルギ集中手段により集められた太陽エネルギを電気エネルギに変換して発電を行う太陽エネルギ発電部と、を有しているとよい。
好ましくは、前記第2発電部は、前記熱回収手段で発生した熱媒体を利用して液体の作動媒体を蒸発させる蒸発器と、前記蒸発器で蒸発した作動媒体の蒸気により発電を行う発電機と、前記発電機で発電に用いられた作動媒体の蒸気を凝縮する凝縮器と、を備えているとよい。
【0010】
好ましくは、前記熱回収手段は、前記第1発電部の太陽エネルギ発電部を冷却する冷却流路に冷却媒体(熱媒体)を流通させて熱回収するとよい。
好ましくは、前記熱媒体に水が用いられていて、前記熱回収手段での熱回収に用いられた水を、設備外に排水する排水管が設けられているとよい。
好ましくは、前記熱媒体に、取水源から取水された用水、または当該用水を浄化した浄水が用いられていて、前記熱媒体を前記冷却流路に供給する給水管が設けられているとよい。
【0011】
好ましくは、前記取水源から水を取水して前記給水管に供給する取水配管及び/又は取水ポンプが設けられているとよい。
好ましくは、前記配水管が前記取水源に放水するように設けられているとよい。
また、本発明の発電方法は、上述した発電設備を用いた発電方法であって、前記太陽エネルギを利用して第1の発電を行うと共に、前記第1の発電において発電に寄与しなかった太陽エネルギを熱エネルギとして利用してバイナリサイクルで第2の発電を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の発電設備及び発電方法によれば、太陽エネルギを電気に変換する変換素子を利用して発電を行うだけでなく、変換素子の損傷防止および発電効率維持のために捨てられていた太陽エネルギを再利用してバイナリ発電を行うことにより、発電効率を設備全体として向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第1実施形態の発電設備を示す図である。
【図2】第1実施形態の発電設備の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る発電設備1の第1実施形態を、図面に基づき詳しく説明する。
図1に示すように、第1実施形態の発電設備1は、太陽エネルギを利用して発電を行う第1発電部2と、この第1発電部2で発電に使われなかった太陽エネルギを熱エネルギとして熱媒体に伝える熱回収手段3と、熱回収手段3で熱回収した熱媒体を利用してバイナリサイクルで発電を行う第2発電部4と、を有している。
【0015】
最初に、本発明の発電設備1を構成する第1発電部2、熱回収手段3、及び第2発電部4の中から、まず第1発電部2について説明する。
第1発電部2は、太陽エネルギを電気エネルギに変換して発電を行うものである。この第1発電部2は、太陽光を集光して太陽エネルギを集める太陽エネルギ集中手段5と、太陽エネルギ集中手段5で集められた太陽エネルギを電気エネルギに変換して発電を行う太陽エネルギ発電部6と、を有している。
【0016】
太陽エネルギ発電部6には、例えば本実施形態のように、太陽の光エネルギを電気エネルギに変換する太陽電池のような光電素子を採用することが可能である。
また、太陽エネルギ集中手段5は、太陽の動きを追尾する反射鏡を複数並べて配備すると共にその複数の反射鏡から射し込まれた太陽光を所定方向に集中するように反射させる固定式の反射鏡を備えた反射部7と、反射部7で所定方向に集中された太陽光をさらに集光させる非追尾式集光器8と、を有している。
【0017】
具体的には、反射部7は、地面や路面などのような水平面に複数並べられたヘリオスタット9と、これらのヘリオスタット9で反射された太陽光をさらに反射させる上部反射鏡10とを有している。このヘリオスタット9は、反射光が常に上部反射鏡10の方向を向くように、反射面の向きや仰角を制御できるようになっている。上部反射鏡10は、地面から起立状に設けられたタワー11の上部に設けられた凹面鏡であり、複数のヘリオスタット9からの反射光を下方を向く凹面で反射させて、反射光を下方の太陽電池(言い換えれば上述した太陽エネルギ発電部6)に集光している。
【0018】
非追尾式集光器8は、反射部7で集光された太陽光をさらに集光するものであり、本実施形態では複合放物面型集光器(Compound Parabolic Concentrator)である。
上述した太陽エネルギ集中手段5を用いることにより、ヘリオスタット9→上部反射鏡10→非追尾式集光器8の順で太陽エネルギが集約され、太陽エネルギを例えば1000倍程度まで増幅することができ、増幅された太陽エネルギを用いて発電を行うことができる。
【0019】
ところで、上述したように太陽から射し込まれた太陽エネルギを1000倍に増幅し、1m当たり1000kW程度にすることができたとしても、太陽電池(太陽エネルギ発電部6)の発電効率が10%しかなければ1000kW/mの90%に相当する900kW/mは余分な熱として発電に利用されずに廃棄されることになり、極めて不経済である。
【0020】
そこで、本発明の発電設備1では、第1発電部2で発電に使われなかった太陽エネルギを熱エネルギとして熱媒体に伝える熱回収手段3と、この熱回収手段3で熱回収した熱媒体を利用してバイナリサイクルで発電を行う第2発電部4とを設けて、発電に使われなかった太陽エネルギを熱回収してバイナリ発電を行うことにより発電効率を全体として向上させている。
【0021】
次に、本発明の発電設備1の特徴である熱回収手段3及び第2発電部4について詳しく説明する。
熱回収手段3は、第1発電部2で発電に使われなかった太陽エネルギを熱エネルギとして熱媒体に伝えて熱回収するものである。本実施形態では、熱回収手段3は、第1発電部2の昇温部位を冷却するように設けられた流路に熱媒体(冷却媒体C)を流通させ、昇温部位からその流路内の熱媒体への伝熱によって熱媒体(冷却媒体C)を加熱するものである。加熱された熱媒体(以降、冷却媒体Cという)は第2発電部4に送られている。
【0022】
本実施形態では、熱回収手段3は内部に冷却媒体Cを流通させる流路12を備えた冷却ジャケット13(冷却流路)を有しており、第1実施形態では冷却ジャケット13は第1発電部2の太陽エネルギ発電部6にのみ配備されている。
冷却ジャケット13は、太陽エネルギ発電部6(図例では太陽電池の下側)に隣接して配備されており、太陽電池を下方から支持できるようになっている。冷却ジャケット13の内部には冷却媒体Cである冷却水を流通可能な流路12が設けられており、この流路12内を流通する冷却水が加熱されることにより、太陽電池に加わった太陽エネルギのうち発電に使用されなかった余剰分を熱エネルギとして一旦熱媒体に回収できるようになっている。
【0023】
冷却ジャケット13には、図示しない取水源(例えば、海、河川、地下、湖または池など)から得た水を冷却水としてこの冷却ジャケット13に供給する給水管14が設けられており、取水源から取水された用水またはこの用水を浄化した浄水がこの給水管14を通じて冷却水として供給されている。取水源が発電設備の近くにある場合には、給水管に通じる取水配管や取水ポンプを含む取水手段を発電設備に付設して、取水源から発電設備に直接的に(水道事業者を介することなく)冷却水を供給するようにしても良い。この様にすれば断水による発電設備の故障(第1発電部2の損傷)を防ぐことができる。
【0024】
このようにして給水管14を介して冷却ジャケット13に供給された冷却水は後述する第2発電部4の蒸発器16で回収した熱エネルギを第2発電部4に受け渡し、熱エネルギの受け渡しが終わった冷却水は設備外に排水管15を経由して排水される。取水源が発電設備の近くにある場合には、用済みの冷却水を配水管を通じて取水源に放水するようにしてもよい。この際、配水管に排水ピットや排水クリークを接続するものであっても良い。
【0025】
なお、上述した熱回収手段3では、アンモニアやメタノールなどの有機媒体を用いず、冷却媒体Cに水(HO)を用いている。有機媒体を冷却媒体Cに用いる場合、このような有機媒体は一般に低沸点で気化しやすく、少しの熱エネルギでも簡単に気化・膨張して高圧になりやすい。つまり、太陽エネルギのように熱量が大きな熱源から熱エネルギを移送するのに有機媒体を用いると、有機媒体のガス化により流路内が高圧となり冷却ジャケット13等を耐圧構造にする等の配慮が必要であったり、大きな熱エネルギを運べず第1の発電部が過昇温となって破損してしまう虞がある。しかし、冷却媒体Cとして冷却水を用いる場合は、このような問題は発生しにくくなる。
【0026】
また、第1実施形態の発電設備1の場合、第2の発電部4における機器破損を回避するために作動媒体の循環量は必然的に制限される。また、冷却媒体Cである冷却水は熱回収に用いられた後、放水されており、循環されていない。第1実施形態の発電設備において仮に有機媒体や冷却水を循環させて太陽エネルギを回収しようとする場合、循環式の熱回収手段3に入る熱エネルギと出て行く熱エネルギとをバランスさせるために、第1発電部2での冷却効率や発電効率が犠牲となる場合がある。これに対して、冷却媒体Cを排水して循環させない場合は、第1発電部2での冷却効率や発電効率が犠牲となる心配はない。
【0027】
第2発電部4は、上述した熱回収手段3で回収した熱エネルギを用いて、バイナリ発電を行うものである。第2発電部4は、熱回収手段3で熱回収した後の熱媒体を利用して液体の作動媒体Tを蒸発させる蒸発器16と、蒸発器16で蒸発した作動媒体Tの蒸気により発電を行う発電機17と、発電機17で発電に用いられた作動媒体Tの蒸気を凝縮する凝縮器18と、を備えている。
【0028】
蒸発器16は、上述した熱回収手段3で回収した熱エネルギによって、液体の作動媒体Tを蒸発させて作動媒体Tの蒸気を生成するものである。蒸発器16は、アルミや銅などのように伝熱性に優れた金属製の熱交換器から形成されている。
蒸発器16の1次側には冷却ジャケット13で加熱された冷却水(冷却媒体C)が供給されており、2次側には液体の作動媒体Tが供給されている。蒸発器16で液体から蒸気に気化(蒸発)した作動媒体Tは発電機17の膨張部19に送られる。
【0029】
上述した作動媒体Tは、例えばペンタン、ヘキサンや代替フロン(R245fa)のような水よりも低沸点の有機媒体である。このような低沸点の有機媒体を用いることにより、第1発電部2に用いられる太陽電池の発電効率を下げない温度範囲で、効率よい発電を行うことが可能となる。蒸発器16で気化した作動媒体Tの蒸気は上述した蒸発器16の出側の循環配管20を通じて発電機17の膨張部19に送られる。
【0030】
発電機17は、蒸発器16で生成された作動媒体Tの蒸気を利用して発電を行うものである。発電機17は、蒸発器16から送られてきた作動媒体Tの蒸気を膨張させ、膨張する蒸気の圧力を利用してスクリュロータ21を回転駆動する膨張部19と、このスクリュロータ21の回転力を利用して発電を行う発電部22と、を有している。
発電機17には入側の循環配管20から蒸発器16で生成された作動媒体Tの蒸気を導入できるようになっている。また、発電機17には出側の循環配管20が接続されており、発電に用いられた後(仕事をした後)の作動媒体Tを凝縮器18に送ることができるようになっている。
【0031】
凝縮器18は、発電機17で発電し終わった作動媒体Tの蒸気を、冷却水と熱交換することによって、作動媒体Tの蒸気を液体に凝縮させている。具体的には、凝縮器18は熱交換器となっていて、1次側に供給された発電後の作動媒体Tの蒸気を2次側に供給された冷温媒体(冷却水)と熱交換することにより、作動媒体Tの蒸気を凝縮して作動媒体Tの液体を生成することができるようになっている。凝縮器18で凝縮された液体の作動媒体Tは、媒体循環ポンプ23に送られる。
【0032】
媒体循環ポンプ23は、凝縮器18で凝縮された液体の作動媒体Tを蒸発器16に圧送するものである。図例の媒体循環ポンプ23の右側には入側の循環配管20が接続されており、凝縮器18で凝縮された液体の作動媒体Tを供給できるようになっている。また、図例の媒体循環ポンプ23の左側には出側の循環配管20が接続されており、作動媒体Tを蒸発器16に圧送できるようになっている。
【0033】
本発明の発電方法は、上述した発電設備1を用いて、太陽エネルギを利用して第1の発電を行うと共に、第1の発電において発電に使われなかった太陽エネルギを熱媒体に伝えて熱回収し、熱回収した後の熱媒体を利用してバイナリサイクルで第2の発電を行うものである。
具体的には、第1実施形態の発電方法は、まず第1発電部2で太陽エネルギを利用した第1の発電が行われる。
【0034】
第1の発電は、太陽から射し込まれた太陽エネルギをまず地面に複数配備されたヘリオスタット9で反射し、複数のヘリオスタット9で反射された太陽光(太陽エネルギ)をタワー11の上部に配備された上部反射鏡10に集めてさらに反射させる。このようにして上部反射鏡10で反射された太陽光は非追尾式集光器8を経てさらに集光され、最終的に1000倍程度に増幅されて太陽エネルギ発電部6に送られる。
【0035】
このとき、太陽エネルギ発電部6では、この太陽エネルギ発電部6に用いられている太陽電池の発電効率に従って例えば射し込まれた太陽エネルギの10%程度が電気エネルギに変換されて発電が行われ、残りの90%程度が第1発電部2での発電に使用されることなく熱などとして捨てられる。
そこで、第1発電部2で発電に使われなかった太陽エネルギを、熱回収手段3を用いて熱エネルギとして回収し、第2発電部4において熱回収手段3で発生した熱エネルギを利用してバイナリサイクルで発電を行う。
【0036】
具体的には、第1発電部2の周囲に設けられた冷却ジャケット13の流路に冷却媒体Cを流通させ、第1発電部2で発電に使われなかった太陽エネルギを冷却媒体Cに伝えて熱回収し、熱回収して昇温した冷却媒体Cを第2発電部4に送っている。
そして、熱回収して温度が上がった冷却媒体Cの熱エネルギを利用して代替フロンなどからなる水より低沸点の作動媒体Tを蒸発させ、作動媒体Tの蒸気を生成する。このようにして生成した作動媒体Tの蒸気を発電機17の膨張部19に送り、膨張部19で作動媒体Tの蒸気が膨張させ、膨張する作動媒体Tの圧力を利用してスクリュロータ21を回転駆動する。そして、このスクリュロータ21の回転力を利用して発電部22で発電を行う。
【0037】
発電機17の発電部22で発電に用いられた作動媒体Tの蒸気は、発電機17の出側の循環配管20を通じて凝縮器18に送られる。凝縮器18では、発電機17から送られてきた作動媒体Tの蒸気が冷却水と熱交換され、作動媒体Tが液体に凝縮される。
凝縮器18で凝縮された液体の作動媒体Tは媒体循環ポンプ23に送られ、媒体循環ポンプ23で圧送された液体の作動媒体Tは蒸発器16に再び送られる。
【0038】
このようにして、作動媒体Tが蒸発器16→発電機17(膨張部19)→凝縮器18→媒体循環ポンプ23→蒸発器16の順に閉ループ状に形成された循環配管20を循環し、このとき発電機17で発電が行われる。
上述したように例えば1000kWの太陽エネルギのうち、その10%にあたる100kWを第1発電部2で発電し、第1発電部2で発電に使われなかった900kWの太陽エネルギを再利用して第2発電部4でバイナリ発電を行うことにより、さらに90kWの発電が可能になったとする。このような場合は、第1発電部2だけで発電する際には1000kWの太陽エネルギのうち100kWだけしか電気エネルギに変換されていなかったものが、上述の発電設備1では190kWが発電されたことになり、発電効率を設備全体として10%→19%と飛躍的に向上させることが可能となる。
【0039】
なお、上述した第1発電部2の太陽エネルギ発電部6として、光電変換素子として太陽電池を用いた例を挙げたが、太陽電池による発電に替えて熱電変換素子で熱エネルギを電気エネルギに替えることにより発電を行うものを用いても良い。
また、図2に示すように、熱回収手段3の冷却ジャケット13は、太陽エネルギ発電部6の周囲だけでなく、上部反射鏡10、非追尾式集光器8などの周囲に配備しても良い。
その場合、取水源から取られた冷却水は、太陽エネルギ発電部6、上部反射鏡9、非追尾式集光器8のそれぞれに設けられた冷却ジャケット13の流路内へ供給され、熱エネルギを受け、第2発電部4へと熱エネルギを供給することとなる。
【0040】
例えば、ヘリオスタット9及び上部反射鏡10からなる反射部7で太陽光を100倍に増幅(集光)する際には、100倍に増幅された太陽エネルギの数%が吸収などによって熱になる。また、非追尾式集光器8でも、同様に10倍程度に集光された太陽エネルギの数%が吸収などによって熱となる。それゆえ、吸収などによって失われるこれらの太陽エネルギに対しても、熱回収手段3を用いて熱エネルギを回収すれば、発電効率を設備全体としてさらに向上させることができる。
【0041】
なお、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。特に、今回開示された実施形態において、明示的に開示されていない事項、例えば、運転条件や操業条件、各種パラメータ、構成物の寸法、重量、体積などは、当業者が通常実施する範囲を逸脱するものではなく、通常の当業者であれば、容易に想定することが可能な値を採用している。
【符号の説明】
【0042】
1 発電設備
2 第1発電部
3 熱回収手段
4 第2発電部
5 太陽エネルギ集中手段
6 太陽エネルギ発電部
7 反射部
8 非追尾式集光器
9 ヘリオスタット
10 上部反射鏡
11 タワー
12 配管
13 冷却ジャケット
14 給水管
15 排水管
16 蒸発器
17 発電機
18 凝縮器
19 膨張部
20 循環配管
21 スクリュロータ
22 発電部
23 媒体循環ポンプ
C 冷却媒体
T 作動媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽エネルギを利用して発電を行う第1発電部と、
前記第1発電部で発電に寄与しなかった太陽エネルギを熱媒体に伝えて熱回収する熱回収手段と、
前記熱回収手段で熱回収した熱媒体を利用してバイナリサイクルで発電を行う第2発電部と、
を有していることを特徴とする発電設備。
【請求項2】
前記第1発電部は、
太陽光を集光して前記太陽エネルギを集める太陽エネルギ集中手段と、前記太陽エネルギ集中手段により集められた太陽エネルギを電気エネルギに変換して発電を行う太陽エネルギ発電部と、を有していることを特徴とする請求項1に記載の発電設備。
【請求項3】
前記第2発電部は、
前記熱回収手段で熱回収した熱媒体を利用して液体の作動媒体を蒸発させる蒸発器と、
前記蒸発器で蒸発した作動媒体の蒸気により発電を行う発電機と、
前記発電機で発電に用いられた作動媒体の蒸気を凝縮する凝縮器と、を備えていることを特徴とする請求項2に記載の発電設備。
【請求項4】
前記熱回収手段は、前記第1発電部の太陽エネルギ発電部を冷却する冷却流路に熱媒体を流通させて熱回収することを特徴とする請求項2又は3に記載の発電設備。
【請求項5】
前記熱媒体に水が用いられていて、
前記熱回収手段での熱回収に用いられた水を、設備外に排水する排水管が設けられていることを特徴とする請求項4に記載の発電設備。
【請求項6】
前記熱媒体に、取水源から取水された用水、または当該用水を浄化した浄水が用いられていて、
前記熱媒体を前記冷却流路に供給する給水管が設けられていることを特徴とする請求項5に記載の発電設備。
【請求項7】
前記取水源から水を取水して前記給水管に供給する取水配管及び/又は取水ポンプが設けられていることを特徴とする請求項6に記載の発電設備。
【請求項8】
前記排水管が前記取水源に放水するように設けられていることを特徴とする請求項5〜6の何れかに記載の発電設備。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の発電設備を用いた発電方法であって、
前記太陽エネルギを利用して第1の発電を行うと共に、前記第1の発電において発電に寄与しなかった太陽エネルギを熱エネルギとして利用してバイナリサイクルで第2の発電を行うことを特徴とする発電方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−40736(P2013−40736A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−179120(P2011−179120)
【出願日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】