説明

発電設備における機能性材料の製造方法及び装置

【課題】燃焼炉と流動層炉を有して発電を行うようにしている発電設備において機能性材料を低価格で製造できるようにする。
【解決手段】炭素系原料3を燃焼用空気4により流動燃焼させる燃焼炉1と、燃焼炉1の燃焼ガス5を導入して排ガス6と固体粒子7とに分離する分離器8と、分離器8で分離した固体粒子7を導入し流動用空気9により流動層10を形成しつつ固体粒子7を燃焼炉1に循環させるようにした流動層炉12と、流動層炉12に配置した伝熱管13で加熱した蒸気15により発電を行う発電装置18とを有する発電設備における機能性材料の製造方法であって、分離器8からの排ガス6に同伴する排気同伴粒子22を分離し、続いて分離した排気同伴粒子22を煤25と灰分26とに分離することにより煤25を取り出し、煤25を用いて機能性材料38を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃焼炉と流動層炉を有して発電を行うようにしている発電設備において機能性材料を低価格で製造できるようにした発電設備における機能性材料の製造方法及び装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
活性炭、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバ等の炭素系の機能性材料は、天然ガスを原料として製造する技術が従来から確立されている。
【0003】
しかし、近年の天然ガス価格の高騰から、上記したような機能性材料を石炭等の安価な原料から製造することが求められるようになってきている。
【0004】
石炭から炭素系の機能性材料を製造する方法としては特許文献1がある。特許文献1は酸素O2を用いて石炭をガス化し、ガス化ガスをガスクーラに導き発生した蒸気で蒸気タービンを駆動して発電を行い、更にガス化ガスからグラファイトナノファイバを製造し、ガス化ガスの余剰分でガスタービンを駆動して発電を行うものである。
【特許文献1】特開2003−120323号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1では、酸素O2を用いて石炭をガス化し、このガス化ガスを原料としてグラファイトナノファイバのような機能性材料を製造するというものであり、ガス化のために酸素O2を用いているために装置コスト、運転コストが増加する問題があり、そのために安価な石炭を原料として用いているにも拘らず、機能性材料を製造するための原料としてのガス化ガスの価格が増加してしまうという問題を有していた。
【0006】
本発明は、上記実情に鑑みてなしたもので、燃焼炉と流動層炉を有して発電を行うようにしている発電設備において機能性材料を低価格で製造できるようにした発電設備における機能性材料の製造方法及び装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、炭素系原料を燃焼用空気により流動燃焼させる燃焼炉と、燃焼炉の燃焼ガスを導入して排ガスと固体粒子とに分離する分離器と、分離器で分離した固体粒子を導入し流動用空気により流動層を形成しつつ固体粒子を燃焼炉に循環させるようにした流動層炉と、流動層炉に配置した伝熱管で加熱した蒸気により発電を行う発電装置とを有する発電設備における機能性材料の製造方法であって、前記分離器からの排ガスに同伴する排気同伴粒子を分離し、続いて分離した排気同伴粒子を煤と灰分とに分離することにより煤を取り出し、該煤を用いて機能性材料を製造することを特徴とする発電設備における機能性材料の製造方法、に係るものである。
【0008】
上記発電設備における機能性材料の製造方法において、燃焼炉に供給する燃焼用空気の供給量を制御することにより排ガスから分離して取り出される煤の量を制御することは好ましい。
【0009】
又、上記発電設備における機能性材料の製造方法において、排ガスと空気を熱交換して得た高温空気を、前記燃焼炉の燃焼用空気と前記流動層炉の流動用空気の少なくとも一方に用いることは好ましい。
【0010】
又、上記発電設備における機能性材料の製造方法において、炭素系原料は廃ゴムであってもよい。
【0011】
又、上記発電設備における機能性材料の製造方法において、炭素系原料は石炭であってもよい。
【0012】
又、上記発電設備における機能性材料の製造方法において、炭素系原料は石油残渣であってもよい。
【0013】
又、上記発電設備における機能性材料の製造方法において、炭素系原料はペトロコークスであってもよい。
【0014】
又、上記発電設備における機能性材料の製造方法において、炭素系原料は重質油であってもよい。
【0015】
本発明は、炭素系原料を燃焼用空気により流動燃焼させる燃焼炉と、燃焼炉の燃焼ガスを導入して排ガスと固体粒子とに分離する分離器と、分離器で分離した固体粒子を導入し流動用空気により流動層を形成しつつ固体粒子を燃焼炉に循環させるようにした流動層炉と、流動層炉に配置した伝熱管で加熱した蒸気により発電を行う発電装置とを有する発電設備における機能性材料の製造装置であって、前記分離器からの排ガスに同伴する排気同伴粒子を分離する粒子分離装置と、粒子分離装置で分離した排気同伴粒子を導入して煤と灰分とに分離する煤取出装置と、煤取出装置で分離した煤を導入して機能性材料を製造する材料製造装置と、を有することを特徴とする発電設備における機能性材料の製造装置、に係るものである。
【0016】
上記発電設備における機能性材料の製造装置において、粒子分離装置が高温フィルタであることは好ましい。
【0017】
又、上記発電設備における機能性材料の製造装置において、煤取出装置が風力選別器であることは好ましい。
【0018】
又、上記発電設備における機能性材料の製造装置において、排ガスと空気とを熱交換して得た高温空気を、前記燃焼炉の燃焼用空気と前記流動層炉の流動用空気の少なくとも一方に供給する空気予熱器を有することは好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明の発電設備における機能性材料の製造方法及び装置によれば、燃焼炉の燃焼ガスから分離器によって固体粒子が分離された排ガスから、該排ガスに同伴される排気同伴粒子を分離し、続いて分離した排気同伴粒子を煤と灰分とに分離することにより煤を取り出し、該煤を用いて機能性材料を製造するようにしたので、燃焼炉と流動層炉を備えて発電を行う発電設備において排ガスから回収する煤を用いて機能性材料を低価格で製造できるという優れた効果を奏し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の形態を添付図面を参照して説明する。
【0021】
図1は本発明の発電設備における機能性材料の製造装置の一例を示す概略構成図であり、この発電設備は、原料供給装置2により供給する廃棄ゴムタイヤ等の廃ゴム、石炭、石油残渣、ペトロコークス、重質油等の炭素系原料3を、下部から供給される燃焼用空気4により高速流動燃焼させる燃焼炉1と、燃焼炉1から排出される燃焼ガス5を導入して排ガス6と固体粒子7とに分離する分離器8と、分離器8で分離した固体粒子7を導入して下部から供給される流動用空気9により流動層10を形成すると共に、固体粒子7を供給管11により燃焼炉1に循環させるようにした流動層炉12と、流動層炉12の流動層10内部に配置した伝熱管13により流動層10と水14を熱交換して生成した蒸気15を蒸気タービン16に供給して発電機17により発電する発電装置18とを有している。前記流動層炉12に供給されて流動層10を形成した流動用空気9は集塵装置19に導かれて集塵された後、排ガス処理装置20等を介して排気されるようになっている。
【0022】
上記した発電設備において、分離器8により固体粒子7が分離された排ガス6は、粒子分離装置21に導いて排ガス6に同伴される排気同伴粒子22を分離するようにしている。この粒子分離装置21としては、高温フィルタ(バグフィルタ)等を用いることができる。又、前記粒子分離装置21によって排気同伴粒子22が除去された排ガス6は排ガス処理装置23等を介して排気されるようになっている。
【0023】
前記粒子分離装置21により分離された排気同伴粒子22は煤取出装置24に導くようにしており、煤取出装置24では前記排気同伴粒子22を煤25と灰分26とに分離するようにしている。
【0024】
図2は前記煤取出装置24の一例として風力選別器24aの場合を示したもので、図2の風力選別器24aは、装置本体27の上部に前記粒子分離装置21からの排気同伴粒子22を受け入れる入口28を有しており、入口28から導入された排気同伴粒子22が装置本体27内を鉛直下方に落下するようになっている。又、装置本体27の側部には、前記装置本体27内を落下する前記排気同伴粒子22に対して横方向から空気などの分級ガス29を吹き付けるようにしたガス供給装置30を備えている。このガス供給装置30は、前記したように装置本体27内を落下する排気同伴粒子22に対して横方向から整流された弱い流速の分級ガス29を供給するようになっている。29aは排気出口である。
【0025】
前記装置本体27の下部における前記入口28の略直下位置には排気同伴粒子22中の比較的重量が重い粒子である煤25を取り出すようにした煤取出口32が設けてあり、又、煤取出口32に対して前記分級ガス29が移動する方向の下流側(図2では左側)には灰取出口33,34が順次設けてある。図2の例では中間的重量を有す煤と灰分の混合物35を灰取出口33から取り出して燃焼炉1に供給するようにしており、又、軽量重量を有す灰分36を灰取出口34から取り出して廃棄したり或いは原料等の所要の目的に利用するようにしている。尚、図2では2つの灰取出口33,34を備えて混合物35と灰分36とを別々に取り出すようにした場合について示したが、1つの循環粒子取出口を設けて煤取出口32に落下したもの以外は燃焼炉1に供給したり或いは廃棄するようにしてもよい。
【0026】
前記煤取出装置24の煤取出口32に落下して取り出した煤25は、材料製造装置37に供給し、該材料製造装置37によって活性炭、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバ等の機能性材料38を製造するようにしている。材料製造装置37には、活性炭等を製造するための造粒装置、化学気相成長法(CVD法)を用いた生成炉或いはその他の材料合成反応炉等を用いることができる。
【0027】
一方、図1に示すように、前記分離器8からの排ガス6と空気39とを熱交換する空気予熱器40を設け、該空気予熱器40によって得た高温空気41を、前記燃焼炉1の燃焼用空気4と前記流動層炉12の流動用空気9の少なくとも一方に供給するようにしている。42は燃焼炉1に供給する燃焼用空気4の供給量を制御する制御器であり、又、43は流動層炉12に供給する流動用空気9の供給量を制御する制御器である。
【0028】
上記形態例の作動を説明する。
【0029】
図1の発電設備においては、原料供給装置2により廃ゴム、石炭、石油残渣、ペトロコークス、重質油等の炭素系原料3は燃焼炉1に供給され、燃焼炉1の下部から供給される燃焼用空気4によって高速流動燃焼される。燃焼炉1から排出される燃焼ガス5は分離器8に導かれて排ガス6と固体粒子7とに分離され、分離器8で分離した固体粒子7は流動層炉12に導入されて下部から供給される流動用空気9により流動層10を形成し、この時、流動層10内部に配置した伝熱管13によって生成された蒸気15が発電装置18の蒸気タービン16に供給されて発電機17による発電が行われる。
【0030】
前記分離器8にて固体粒子7が分離された排ガス6は、高温フィルタ(バグフィルタ)等の粒子分離装置21に導かれ、該粒子分離装置21によって排ガス6に同伴した排気同伴粒子22が分離される。
【0031】
前記粒子分離装置21によって分離された排気同伴粒子22は煤取出装置24に導かれて煤25と灰分26とに分離される。
【0032】
図2に示す煤取出装置24である風力選別器24aでは、前記粒子分離装置21で分離した排気同伴粒子22が入口28から装置本体27内に導入されて装置本体27内を落下し、この時、装置本体27の側部に設けられたガス供給装置30によって横方向から整流された弱い流速の分級ガス29が供給されることによって、排気同伴粒子22中の比較的重量が重い重量粒子である煤25は煤取出口32に落下し、一方、中間的重量を有する煤と灰分との混合物35は灰取出口33に落下し、又、軽量である灰分36は灰取出口34に落下する。前記煤取出装置24としては種々の方式のものを採用することができるが、前記したように風力選別器24aを用いると、排ガス6から分離した排気同伴粒子22を、簡単な構成にて煤25と灰分26とに効果的に分離することができ、よって炭素濃度の高い煤25を容易に取り出せるという効果がある。
【0033】
前記煤取出装置24の煤取出口32に落下して取り出された煤25は、材料製造装置37に供給され、該材料製造装置37によって活性炭、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバ等の機能性材料38の製造が行われる。この時、材料製造装置37には、活性炭等を製造するための造粒装置、化学気相成長法(CVD法)を用いた生成炉或いはその他の材料合成反応炉等を用いることができる。
【0034】
又、中間的重量を有する煤煤と灰分の混合物35は灰取出口33から取り出されて燃焼炉1に供給され、又、軽量である灰分36は灰取出口34から取り出して廃棄したり或いは原料等の所要の目的に利用される。
【0035】
一方、前記分離器8からの排ガス6と熱交換する空気予熱器40により高温空気41を得ており、この高温空気41を、前記燃焼炉1の燃焼用空気4と前記流動層炉12の流動用空気9の少なくとも一方に供給する。これにより、燃焼炉1及び流動層炉12の温度を高めることができ、よって伝熱管13によって生成される蒸気15の温度を高めて発電装置18による発電量を増加できる。
【0036】
上記構成において、燃焼炉1に供給する燃焼用空気4の供給量を制御器42で制御すると、排ガス6から粒子分離装置21及び煤取出装置24を介して取り出される煤25の量を制御することができる。即ち、燃焼用空気4の供給量を減少すると、炭素系原料3の未燃粒子が増加することによって取り出される煤25の量が増加することになるので、燃焼炉1への燃焼用空気4の供給量を制御することによって、材料製造装置37で製造する機能性材料38の目標製造量に対応した煤25の取出量になるように制御することが可能になる。
【0037】
又、近年、廃棄ゴムタイヤ等の廃ゴムの処分が問題になっているが、本発明によれば、廃棄ゴムタイヤ等を原料として用いることにより大量の煤25を取り出すことが可能になり、よって廃棄ゴムタイヤ等の処分と機能性材料を安価な原料によって製造するという課題を同時に解決することができる。
【0038】
尚、本発明は上記形態にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の発電設備における機能性材料の製造装置の一例を示す概略構成図である。
【図2】煤取出装置の一例としての風力選別器の概略側面図である。
【符号の説明】
【0040】
1 燃焼炉
3 炭素系原料
4 燃焼用空気
5 燃焼ガス
6 排ガス
7 固体粒子
8 分離器
9 流動用空気
10 流動層
12 流動層炉
13 伝熱管
15 蒸気
18 発電装置
21 粒子分離装置
22 排気同伴粒子
24 煤取出装置
24a 風力選別器
25 煤
26 灰分
37 材料製造装置
38 機能性材料
40 空気予熱器
41 高温空気

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素系原料を燃焼用空気により流動燃焼させる燃焼炉と、燃焼炉の燃焼ガスを導入して排ガスと固体粒子とに分離する分離器と、分離器で分離した固体粒子を導入し流動用空気により流動層を形成しつつ固体粒子を燃焼炉に循環させるようにした流動層炉と、流動層炉に配置した伝熱管で加熱した蒸気により発電を行う発電装置とを有する発電設備における機能性材料の製造方法であって、前記分離器からの排ガスに同伴する排気同伴粒子を分離し、続いて分離した排気同伴粒子を煤と灰分とに分離することにより煤を取り出し、該煤を用いて機能性材料を製造することを特徴とする発電設備における機能性材料の製造方法。
【請求項2】
燃焼炉に供給する燃焼用空気の供給量を制御することにより排ガスから分離して取り出される煤の量を制御する請求項1に記載の発電設備における機能性材料の製造方法。
【請求項3】
排ガスと空気を熱交換して得た高温空気を、前記燃焼炉の燃焼用空気と前記流動層炉の流動用空気の少なくとも一方に用いる請求項1又は2に記載の発電設備における機能性材料の製造方法。
【請求項4】
炭素系原料が廃ゴムである請求項1〜3のいずれか1つに記載の発電設備における機能性材料の製造方法。
【請求項5】
炭素系原料が石炭である請求項1〜3のいずれか1つに記載の発電設備における機能性材料の製造方法。
【請求項6】
炭素系原料が石油残渣である請求項1〜3のいずれか1つに記載の発電設備における機能性材料の製造方法。
【請求項7】
炭素系原料がペトロコークスである請求項1〜3のいずれか1つに記載の発電設備における機能性材料の製造方法。
【請求項8】
炭素系原料が重質油である請求項1〜3のいずれか1つに記載の発電設備における機能性材料の製造方法。
【請求項9】
炭素系原料を燃焼用空気により流動燃焼させる燃焼炉と、燃焼炉の燃焼ガスを導入して排ガスと固体粒子とに分離する分離器と、分離器で分離した固体粒子を導入し流動用空気により流動層を形成しつつ固体粒子を燃焼炉に循環させるようにした流動層炉と、流動層炉に配置した伝熱管で加熱した蒸気により発電を行う発電装置とを有する発電設備における機能性材料の製造装置であって、前記分離器からの排ガスに同伴する排気同伴粒子を分離する粒子分離装置と、粒子分離装置で分離した排気同伴粒子を導入して煤と灰分とに分離する煤取出装置と、煤取出装置で分離した煤を導入して機能性材料を製造する材料製造装置と、を有することを特徴とする発電設備における機能性材料の製造装置。
【請求項10】
粒子分離装置が高温フィルタである請求項9に記載の発電設備における機能性材料の製造装置。
【請求項11】
煤取出装置が風力選別器である請求項9又は10に記載の発電設備における機能性材料の製造装置。
【請求項12】
排ガスと空気とを熱交換して得た高温空気を、前記燃焼炉の燃焼用空気と前記流動層炉の流動用空気の少なくとも一方に供給する空気予熱器を有する請求項9〜11のいずれか1つに記載の発電設備における機能性材料の製造装置。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2009−12984(P2009−12984A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−172887(P2007−172887)
【出願日】平成19年6月29日(2007.6.29)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】