説明

白色ポリプロピレン系樹脂組成物及びそれを用いた自動車外装部品

【課題】物性バランスと耐熱変色性や耐汚れ性に優れかつ射出成形加工性が良好な白色ポリプロピレン系樹脂組成物及びそれを用いた自動車外装部品の提供。
【解決手段】下記成分(a)〜成分(g)からなる白色ポリプロピレン系樹脂組成物等により提供。
成分(a):特定の要件を満足する結晶性プロピレン系ブロック共重合体 50〜65重量%
成分(b):MFRが0.2〜10g/10分、密度が0.860〜0.870g/cmのエチレン・α−オレフィン共重合体エラストマー 10〜30重量%
成分(c):タルク 5〜20重量%
成分(d):エチルアクリレート構成単位の比率が10〜20重量%のエチレン・エチルアクリレート共重合体 1〜2重量%
成分(e):イオウ系酸化防止剤 0.02〜0.1重量%
成分(f):粒径が0.05〜2μmの酸化チタン粒子 1〜3重量%
成分(g):密度が0.94g/cm以上のポリエチレン 0.2〜1.0重量%

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、白色ポリプロピレン系樹脂組成物及びそれを用いた自動車外装部品に関し、さらに詳しくは、物性バランスと耐熱変色性や耐汚れ性に優れかつ射出成形加工性が良好な白色ポリプロピレン系樹脂組成物及びそれを用いた自動車外装部品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車用外装部材は、野外にて用いられることから塗装が施されていた。塗装の工程には多くの設備、または塗料のコストも必要であることから、塗装をほどこさない原着材料の開発は重要である。しかし、塗装を施さないことから、材料自体に塗装品と同等以上の表面特性が求めら、耐汚れ性および耐熱変色性に優れている必要がある。
例えば、特許文献1には、特定の性状のプロピレン系重合体と酸化チタンとからなる射出成形体用樹脂組成物が開示されている。かかる組成物は、原着材料として使用する際に、酸化チタンを含有することから、反り特性、可塑化特性、及び耐候性に優れるとされている。
【0003】
また、特許文献2〜4においては、エチレン―アクリル酸系の共重合体を含有するポリプロピレン系の樹脂組成物が開示されている。かかる組成物は、エチレン―アクリル酸系の共重合体が有する極性基に起因する塗装性の改善を効果とするものであり、原着部品としての表面特性は考慮されていない。
【0004】
さらに、特許文献5〜6には、エチレン・エチルアクリレート共重合体を含有するポリプロピレン樹脂組成物が、また特許文献7には、エチレン・酢酸ビニル共重合体を含有するポリプロピレン樹脂組成物がそれぞれ開示されている。かかる材料は、原着部品としての使用が考慮されていて、耐汚れ性が改善されるとしている。
しかしながら、特許文献5〜7で提案されているポリプロピレン樹脂組成物は、総じて耐熱変色性が劣り、酸化チタンなど白色顔料で着色された白色部品にあっては、変色が目立ちやすい。例えば、原着部品を外装部品(バンパー等)としてボディに組み込んだ車両を常温以上の環境下に保管した場合、原着部品の変色度合いが大きく、原着部品とボディとの色目に差が生じる問題がある。
【0005】
こうした状況下に、従来技術の問題点を解消して、自動車外装部品用の素材として好適な、物性バランスと耐熱変色性や耐汚れ性に優れかつ射出成形加工性が良好な白色ポリプロピレン系樹脂組成物の開発が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−80455号公報
【特許文献2】特開平5−43722号公報
【特許文献3】特開平6−122775号公報
【特許文献4】特開平9−3270号公報
【特許文献5】特開2006−321907号公報
【特許文献6】特開2006−321914号公報
【特許文献7】特開2007−45897号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、上記の従来技術の問題点に鑑み、自動車外装部品用の素材として好適な、物性バランスと耐熱変色性や耐汚れ性に優れかつ射出成形加工性が良好な白色ポリプロピレン系樹脂組成物及びそれを用いた自動車外装部品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために、種々の研究を重ねた結果、特定の結晶性プロピレン系ブロック共重合体に、特定の性状を有するエチレン・α−オレフィン共重合体エラストマー、特定のエチレン/エチルアクリレート共重合体(EEA)、特定の密度を有するポリエチレン、イオウ系の酸化防止剤、タルク、および酸化チタン粒子を組み合わせることにより、従来の材料に比べて耐汚れ性および耐熱変色性のバランスに優れた性能を発現する白色プロピレン系樹脂組成物が得られることを見出し、本発明を完成することに至ったものである。
【0009】
すなわち、本発明の第1の発明によれば、下記成分(a)〜成分(g)からなる白色ポリプロピレン系樹脂組成物が提供される。
成分(a):下記(i)〜(iv)の要件を満足する結晶性プロピレン系ブロック共重合体 50〜65重量%
(i)MFRが20〜120g/10分である
(ii)結晶性ホモポリプロピレン部分のMFRが50〜300g/10分である
(iii)エチレン−α−オレフィン共重合部分の比率が5〜30重量%である
(iv)エチレン−α−オレフィン共重合部分のエチレン含量が30〜55重量%である
成分(b):MFRが0.2〜10g/10分、密度が0.860〜0.870g/cmのエチレン・α−オレフィン共重合体エラストマー 10〜30重量%
成分(c):タルク 5〜20重量%
成分(d):エチルアクリレート構成単位の比率が10〜20重量%のエチレン・エチルアクリレート共重合体 1〜2重量%
成分(e):イオウ系酸化防止剤 0.02〜0.1重量%
成分(f):粒径が0.05〜2μmの酸化チタン粒子 1〜3重量%
成分(g):密度が0.94g/cm以上のポリエチレン 0.2〜1.0重量%
【0010】
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明に係る白色ポリプロピレン系樹脂組成物を用いて成形したことを特徴とする自動車用外装部材が提供される。
【0011】
また、本発明の第3の発明によれば、第2の発明において、自動車用外装部品が、バンパーであることを特徴とする自動車用外装部材が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明の白色ポリプロピレン系樹脂組成物は、物性バランスと耐熱変色性や耐汚れ性に優れ、しかも射出成形加工性が良好であり、自動車用外装部材として好適な樹脂組成物であるので、その工業的価値は極めて大きい。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物は、(a)結晶性プロピレン系ブロック共重合体、(b)エチレン・α−オレフィン共重合体エラストマー、(c)タルク、(d)エチレン・エチルアクリレート共重合体、(e)イオウ系酸化防止剤、(f)酸化チタン粒子、および(g)ポリエチレンからなる。
以下に、ポリプロピレン系樹脂組成物の構成成分、ポリプロピレン系樹脂組成物の調製方法、成形方法、用途等について詳細に説明する。
【0014】
[I]ポリプロピレン系樹脂組成物の構成成分
(1)結晶性プロピレン系ブロック共重合体(a)
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物に用いる結晶性プロピレン系ブロック共重合体(以下、成分(a)と略称する場合がある。)は、結晶性ホモポリプロピレン部分とエチレン・プロピレン共重合部分を逐次重合して得られるプロピレン・エチレンブロック共重合体であり、下記(i)〜(iv)の特性を満足することを特徴とする。
【0015】
(i)MFR
結晶性プロピレン系ブロック共重合体(a)全体のメルトフローレート(MFR)は、20〜120g/10分であり、好ましくは25〜100g/10分であり、より好ましくは30〜80g/10分である。MFRが20g/10分未満であると成形性が劣り、120g/10分を超えると衝撃強度、引張り伸びが低下する。ここで、MFRは、JIS K7210に準拠し、230℃、2.16kg荷重で測定する値である。
【0016】
(ii)ホモポリプロピレン部分
結晶性プロピレン系ブロック共重合体(a)のホモポリプロピレン部分のMFRは、50〜300g/10分であり、好ましくは60〜200g/10分である。MFRが50g/10分未満であると成形性が劣り、300g/10分を超えると衝撃強度、引張り伸びが低下する。
【0017】
(iii)エチレン・プロピレン共重合部分の比率
結晶性プロピレン系ブロック共重合体(a)のエチレン・プロピレン共重合部分の比率は、結晶性ホモポリプロピレン部分とエチレン・プロピレン共重合部分との和に対し、5〜30重量%であり、好ましくは10〜25重量%である。エチレン・プロピレン共重合部分の比率が5重量%未満であると衝撃強度が低下し、30重量%を超えると剛性が低下する。
【0018】
(iv)エチレン・プロピレン共重合部分のエチレン含量
結晶性プロピレン系ブロック共重合体(a)のエチレン・プロピレン共重合部分のエチレン含量は、30〜55重量%であり、好ましくは35〜50重量%である。エチレン含量が30重量%未満であると衝撃強度が低下し、55重量%を超えると衝撃強度が低下する。
【0019】
本発明で用いる結晶性プロピレン系ブロック共重合体(a)は、高立体規則性触媒を用いてスラリー重合、バルク重合、気相重合により製造することが好ましい。高立体規則性触媒としては、塩化マグネシウムに四塩化チタン、有機ハイドライド、及び有機シラン化合物を接触させて形成した固体成分に有機アルミニウム化合物を組み合わせた触媒が挙げられる。重合方式としては、バッチ重合、連続重合のどちらの方式でも採用される。
【0020】
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物において、結晶性プロピレン系ブロック共重合体(a)の配合量は、50〜65重量%であり、好ましくは55〜60重量%である。成分(a)の配合量が、50重量%未満では剛性などが不足となり、65重量%を超えると衝撃強度と剛性のバランスが悪くなる。
【0021】
(2)エチレン・α−オレフィン共重合体エラストマー(b)
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物に用いるエチレン・α−オレフィン共重合体エラストマー(以下、成分(b)と略称する場合がある。)は、耐衝撃性を向上しつつ、かつ良好な成形性、物性、収縮特性を発現させる目的で用いられる。エチレン・α−オレフィン共重合体エラストマーにおいて、エチレンと共重合されるα−オレフィンとしては、特に限定されないが、好ましくは、1−オクテンや1−ブテンが挙げられる。エチレン・α−オレフィン共重合体エラストマーは、1種類である必要はなく、2種類以上の混合物であってもよい。
【0022】
エチレン・α−オレフィン共重合体エラストマーは、230℃で測定されるMFRが0.2〜10g/であり、好ましくは、0.4〜6g/である。MFRが上記範囲を逸脱した場合には、外観が不良となったり、もしくは衝撃性が不十分となる。
【0023】
エチレン・α−オレフィン共重合体エラストマーは、密度が0.860〜0.870g/cm、好ましくは0.860〜0.868g/cmである。密度が、0.860g/cm未満ではプロピレン系樹脂組成物の耐汚れ性が不十分であり、密度が0.870g/cmを越える場合には衝撃性が不十分となる。なお、密度は、JIS K7112に準拠して測定したものである。
【0024】
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物において、エチレン・α−オレフィン共重合体エラストマー(b)の配合量は、10〜30重量%であり、好ましくは15〜25重量%である。成分(b)の配合量が、10重量%以下では、衝撃強度が不足し、30重量%を越えると、剛性が劣り不適である。
【0025】
(3)タルク(c)
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物に用いるタルク(以下、成分(c)と略称する場合がある。)は、剛性の向上、寸法安定性の調整等を目的に用いられる。
タルク(c)は、特に限定されないが、好ましくは1.5〜15μmである。該タルクは、先ず例えばタルク原石を衝撃式粉砕機やミクロンミル型粉砕機で粉砕して製造したり、更にジェットミルなどで粉砕した後、サイクロンやミクロンセパレータ等で分級調整する等の方法で製造する。
また、タルクは、各種金属石鹸、パラフィンワックス、ポリエチレンワックスまたはそれらの変性物、有機シラン、有機ボラン、有機チタネ−トなどで表面処理したものでも良く、さらに見かけ比容を2.50ml/g以下にしたいわゆる圧縮タルクを用いても良い。上記タルクの平均粒径は、レーザ回折散乱方式粒度分布計を用いて測定した値であり、測定装置としては、例えば、堀場製作所LA−920型が測定精度において優れているので好ましい。
【0026】
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物において、タルク(c)の配合量は、5〜20重量%、好ましくは8〜15重量%である。成分(c)の配合量が、5重量%以下では、剛性や耐熱性が不足し、20重量%を越えると、衝撃強度や外観が劣り不適である。
【0027】
(4)エチレン・エチルアクリレート共重合体(EEA)(d)
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物に用いるエチレン・エチルアクリレート共重合体(EEA)(以下、成分(d)と略称する場合がある。)は、エチルアクリレート構成単位の比率が10〜20重量%であり、好ましく13〜18重量%である。エチルアクリレート構成単位の比率が10重量%より低い場合には、EEAと他の成分との相溶性が高くなり、EEAの部品表面への移行が少なく、耐汚れ性が不足となる。20重量%より大きい場合には相溶性が悪いために、物性に大きな悪影響を及ぼす。
【0028】
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物において、エチレン・エチルアクリレート共重合体(EEA)(d)の配合量は、1〜2重量%、好ましくは1〜1.8重量%である。成分(d)の配合量が、この範囲を逸脱すると、耐汚れ性が悪化したり、または剛性が低くなる。
【0029】
(5)硫黄系酸化防止剤(e)
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物に用いる硫黄系酸化防止剤(以下、成分(e)と略称する場合がある。)は、特に限定されないが、好ましくは、ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジミリスチル−3,3’−チオジプロピピオネート、ジステアリル−3,3’−チオジプロピオネートなどが挙げられる。
【0030】
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物において、硫黄系酸化防止剤(e)の配合量は、0.02〜0.1重量%、好ましくは0.04〜0.75重量%である。成分(e)の配合量が、0.02重量%以下では耐熱変色性に劣り、0.1重量%以上では耐候性の低下が見られる。また、硫黄系酸化防止剤を使用せず、他の酸化防止剤のみ、例えばリン系酸化防止剤を使用する場合などでは耐熱変色性に劣るため不適である。
【0031】
(6)酸化チタン粒子(f)
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物に用いる酸化チタン粒子(以下、成分(f)と略称する場合がある。)は、特に限定されないが、結晶構造的にルチル型とアナタース型いずれの結晶構造であってもよい。耐候性が優れるルチル型が好ましい。また、酸化チタンはその生成過程において、使用媒体中での分散性や、耐候性を改良するためにAl、SiO、ZnO等で表面処理されたものであってもよい。
また、酸化チタン粒子の粒径は、0.05〜2μmである。この範囲の粒径にすることにより、着色力、隠ぺい力などに優れるようになる。
【0032】
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物において、酸化チタン粒子(f)の配合量は、1.0〜3重量%、好ましくは1.0〜2重量%である。成分(f)の配合量が、1.0重量%以下では、着色力、隠蔽度に劣り、3重量%以上では剛性などを下げるために好ましくない。
【0033】
(7)ポリエチレン(g)
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物に用いるポリエチレン(以下、成分(g)と略称する場合がある。)は、エチレン・α−オレフィン共重合体又はエチレン単独重合体である。ポリエチレン(f)の密度は、0.94g/cm以上、好ましくは0.945g/cm以上、特に好ましくは0.950〜0.970g/cmである。成分(g)の密度が、上記範囲外の場合には外観や耐傷付き性が劣り、不適である。ここで、密度は、JIS K7112に準拠して測定する値である。
【0034】
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物において、ポリエチレン(f)の配合量は、0.2〜1.0重量%、好ましくは0.3〜0.8重量%である。ポリエチレン(f)の配合量が、0.2重量%以下では耐汚れ性が悪く、1.0重量%以上では剛性に悪影響を及ぼす。
【0035】
(8)その他の配合成分(任意成分)
本発明のプロピレン系樹脂組成物においては、本発明の効果を損なわない範囲で、或いは、更に性能の向上をはかるために、上記成分(a)〜(g)以外に、以下に示す任意成分を配合することが出来る。具体的には、酸化防止剤、帯電防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、核剤、難燃剤、分散剤、滑剤、中和剤などをあげることができる。
【0036】
[II]プロピレン系樹脂組成物の製造と成形
(1)製造方法
本発明で用いるプロピレン系樹脂組成物は、上記成分(a)〜(g)を、従来公知の方法で、各配合成分を上記配合割合で配合・混合し、溶融混練することにより製造できる。
溶融混練は、一軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、ロールミキサー、ブラベンダープラストグラフ、ニーダー等の通常の混練機を用いて行なわれ、混練・造粒することによって、本発明のプロピレン系樹脂組成物が得られる。
この場合、各成分の分散を良好にすることができる混練・造粒方法を選択することが好ましく、通常は二軸押出機を用いて行われる。この混練・造粒の際には、上記各成分の配合物を同時に混練してもよく、また性能向上をはかるべく各成分を分割して混練する、すなわち、例えば先ずプロピレン系重合体の一部又は全部とエラストマーとを混練し、その後に残りの成分を混練・造粒するといった方法を採用することもできる。
【0037】
(2)成形方法
本発明のプロピレン系樹脂組成物は、公知の各種方法による成形に用いることができる。例えば、射出成形(ガス射出成形も含む)、射出圧縮成形(プレスインジェクション)、押出成形、中空成形、カレンダー成形等にて成形することによって各種成形品を得ることができる。このうち、射出成形、射出圧縮成形がより好ましい。
【0038】
[III]プロピレン系樹脂組成物の用途
本発明のプロピレン系樹脂組成物は、耐汚れ性、物性バランスに優れ、かつ射出成形加工性に優れるため、各種工業部品分野、特に薄肉化、高機能化、大型化された各種自動車用成形品、例えばバンパー、ロッカーモール、サイドモール、オーバーフェンダー、バックドア、ガーニッシュなどの白色外装部材として実用に十分な性能を有している。
【実施例】
【0039】
以下に、本発明のポリプロピレン系樹脂組成物を実施例および比較例を示して具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例および比較例に限定されるものではない。なお、実施例、比較例において使用した原材料および試験法・評価方法は、以下のとおりである。
【0040】
[I]評価方法
(1)MFR:JIS K7210に準拠し、230℃、2.16kg荷重で行った。
(2)曲げ弾性率(単位:MPa):JIS K7203に準拠して23℃で測定した。
(3)アイゾット(IZOD)衝撃強度(単位:J/m):JIS K7110に準拠し、−30℃で測定した。
(4)耐汚れ性:射出成形により作製した350mm×100mm×3.0mmtの平板試験片を、350mm辺について対地角度45°で傾斜させ、評価面を南方に向けた状態で屋外に設置し、一定期間自然天候下に曝露した。長尺試験片を用いることで、塵埃・油分等の付着・堆積した試験片表面への降雨による雨滴滑落痕跡が汚れ付着として明瞭になるようにした。屋外曝露で得られた汚れ付着試験片を、市販の車両洗浄液を含ませたスポンジにより流水下にて洗浄し、汚れの残留を目視外観により下記の基準で評価した。
◎ ほぼ完全に汚れ除去
○ 汚れ残留を認識できるが十分除去
× 汚れ残留目立つ
(5)耐熱変色性:射出成形により作製した100mm×100mm×3.0mmtの平板シートを、100℃に調整したオーブン中にて、500時間暴露した後、色相(YI)を測定した。測定は、日本電色製SE2000にて実施した。
【0041】
[II]原材料
(1)結晶性プロピレン系ブロック共重合体[成分(a)]
表1に示す(a−1)〜(a−5)のプロピレン・エチレンブロック共重合体を用いた。
(2)エチレン・α−オレフィン共重合体エラストマー[成分(b)]
表2に示した(b−1)〜(b−2)のエチレン・α−オレフィン系エラストマーを用いた。
(3)タルク[成分(c)]
成分(c)として下記(c−1)のものを用いた。
c−1:LMS200(富士タルク製、LA920により求めた平均粒径:6μm)
(4)エチレン/エチルアクリレート共重合体(EEA)[成分(d)]
成分(d)として下記(d−1)のものを用いた。
d−1:市販品のエチレン・エチルアクリレート共重合体(EEA−1)(エチルアクリレート共重合部の重量%が15%)
(5)硫黄系酸化防止剤[成分(e)]
成分(e)として下記(e−1)〜(e−2)のものを用いた。
e−1:市販品の硫黄系酸化防止剤を用いた。((株)エーピーアイコーポレーション製のDSTP)
e−2:市販品のリン系酸化防止剤を用いた((株)チバ・ジャパン製のイルファフォス168)
(6)酸化チタン[成分(f)]
成分(f)として下記(f−1)のものを用いた。
f−1:市販品である、粒径が0.1μmの酸化チタン粒子(石原産業製タイベークCR−90)
(7)ポリエチレン[成分(g)]
成分(g)として下記(g−1)のものを用いた。
g−1:市販品である、密度が0.958g/cmであるポリエチレン(日本ポリエチレン(株)製、HJ490D)
【0042】
【表1】

【0043】
【表2】

【0044】
(実施例1〜3、比較例1〜6)
表3に示す成分を、表3に示す割合にて、スーパーミキサーにてドライブレンドした後、押出し温度200℃、吐出量35kg/hの条件で2軸押出し機(神戸製鋼社製、KTX44)を用いて溶融混練した。なお、溶融混練時の熱安定剤として、イルガノックス1010を組成物100重量部に対して0.1重量部添加した。表4に評価結果を示す。
【0045】
【表3】

【0046】
【表4】

【0047】
表3及び4より明らかなように、本発明の要件をすべて満たしている実施例1〜3では、成形性、物性、耐汚れ性が良好でかつ耐熱変色性に優れた成形品が得られた。
一方、本発明で規定する要件の全て又は一部を満たしていない比較例1〜6では、実施例の場合と較べて劣り、成形性、物性、耐汚れ性が良好でかつ耐熱変色性に優れた成形品が得られなかった。
【産業上の利用可能性】
【0048】
以上より明らかなように、本発明のポリプロピレン系樹脂組成物は、耐汚れ性に優れ、かつ機械物性および射出成形性にすぐれた白色のポリプロピレン系樹脂組成物であり、自動車用外装部材、特にバンパー材料として、実用に十分な性能を有し、工業的に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分(a)〜成分(g)からなる白色ポリプロピレン系樹脂組成物。
成分(a):下記(i)〜(iv)の要件を満足する結晶性プロピレン系ブロック共重合体 50〜65重量%
(i)MFRが20〜120g/10分である
(ii)結晶性ホモポリプロピレン部分のMFRが50〜300g/10分である
(iii)エチレン−α−オレフィン共重合部分の比率が5〜30重量%である
(iv)エチレン−α−オレフィン共重合部分のエチレン含量が30〜55重量%である
成分(b):MFRが0.2〜10g/10分、密度が0.860〜0.870g/cmのエチレン・α−オレフィン共重合体エラストマー 10〜30重量%
成分(c):タルク 5〜20重量%
成分(d):エチルアクリレート構成単位の比率が10〜20重量%のエチレン・エチルアクリレート共重合体 1〜2重量%
成分(e):イオウ系酸化防止剤 0.02〜0.1重量%
成分(f):粒径が0.05〜2μmの酸化チタン粒子 1〜3重量%
成分(g):密度が0.94g/cm以上のポリエチレン 0.2〜1.0重量%
【請求項2】
請求項1に記載の白色ポリプロピレン系樹脂組成物を用いて成形したことを特徴とする自動車用外装部品。
【請求項3】
自動車用外装部品が、バンパーであることを特徴とする請求項2に記載の自動車用外装部品。

【公開番号】特開2011−126940(P2011−126940A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−284203(P2009−284203)
【出願日】平成21年12月15日(2009.12.15)
【出願人】(596133485)日本ポリプロ株式会社 (577)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】