説明

白髪改善剤

【課題】本発明の目的は、優れた白髪改善、防止効果を有する白髪改善剤を提供することにある。
【解決手段】本発明は、ポリリン酸を含有する白髪改善剤を提供する。また、本発明は、前記ポリリン酸に、ウコギ抽出物、マロチラート(ジチオール誘導体)、塩基性線維芽細胞増殖因子(b-FGF)、アンジオジェニン、ω-アルコキシカルボニルアルキルトリアルキルアンモニウム、アマチャヅル抽出物、サンショウ抽出物、およびコショウ抽出物からなる群から選択された少なくとも1種以上の抗白髪剤が混合されてなる、白髪改善剤を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、白髪を黒髪化する作用を有する白髪改善料に関し、詳しくは、メラノサイトを増やし、さらにメラノサイト刺激因子の活性を維持、改善、促進してメラノサイトを活性化させて、白髪を黒化させる作用に優れたポリリン酸を配合してなる白髪改善剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、白髪を黒髪化する作用を有する抗白髪剤としては、ウコギ抽出物(特許文献1)、マロチラート(ジチオール誘導体)(非特許文献1)、塩基性線維芽細胞増殖因子(b-FGF)またはアンジオジェニン(特許文献2)、ω-アルコキシカルボニルアルキルトリアルキルアンモニウム(特許文献3)、アマチャヅル抽出物(特許文献4)、サンショウ抽出物(特許文献5)、コショウ抽出物(非特許文献2)などが知られている。
【特許文献1】特開昭60−178805号公報
【特許文献2】特開平8−208440号公報
【特許文献3】特開平7−316048号公報
【特許文献4】特開昭58−99417号公報
【特許文献5】特開平11−79951号公報
【非特許文献1】香粧会誌,Vol.21, No.3(1997)
【非特許文献2】Biol.Pharm.Bull., 27,1611-1616(2004)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、これらの抗白髪剤の効果は必ずしも充分なものではなく、実際に市販されているものもほとんど無い。また、白髪の原因は、毛包におけるメラノサイトの減少と不活性化とされており、メラノサイトの不活性化には様々なメラノサイト刺激因子が関わっていると考えられているが、そのメカニズムについては未だ不明な点が多い。
【0004】
本発明の目的は、優れた白髪改善、防止効果を有する白髪改善剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、鋭意研究の結果、ポリリン酸が優れた白髪改善、防止作用をもつことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明は、ポリリン酸を含有する白髪改善剤を提供する。また、本発明は、前記ポリリン酸に、ウコギ抽出物、マロチラート(ジチオール誘導体)、塩基性線維芽細胞増殖因子(b-FGF)、アンジオジェニン、ω-アルコキシカルボニルアルキルトリアルキルアンモニウム、アマチャヅル抽出物、サンショウ抽出物、およびコショウ抽出物からなる群から選択された少なくとも1種以上の抗白髪剤が混合されてなる、白髪改善剤を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の白髪改善剤は、優れた白髪改善、防止効果を有する。すなわち、本発明の白髪改善剤を使用することによって、頭皮のメラノサイトが活性化され、白髪の改善が促進されるとともに、白髪の発生が抑制される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明で使用されるポリリン酸は、オルトリン酸が脱水縮合して得られる直鎖縮合ポリリン酸、側鎖に有機基が導入された側鎖ポリリン酸、環状ポリリン酸等が挙げられ、特に、化学組成式がH(n+2)PO(3n+1)(nは2以上の整数)で表され、式1に示すように、2個以上のPO四面体が頂点の酸素原子を共有して直鎖状に連なった構造をした直鎖縮合ポリリン酸が好ましい。
【化1】

【0009】
nは2以上の整数である。
【0010】
nは少なくとも2以上の整数であり、好ましくは5〜5000、さらに好ましくは15〜5000である。すなわち、本発明のポリリン酸は、好ましくは平均鎖長15以上のポリリン酸である。
【0011】
また、ポリリン酸の水素が金属の陽イオンで置換されたポリリン酸塩もまた、本発明の範囲内に含まれる。ポリリン酸と塩を形成する金属イオンとしては、例えば、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムなどが挙げられる。
【0012】
例として、式1において水素がナトリウムイオンで置換されたポリリン酸ナトリウムを、式2として以下に示す。式2で表わされるポリリン酸ナトリウムは、化学組成式Na(n+2)PO(3n+1)(nは2以上の整数)で表わされる化合物である。
【化2】

【0013】
nは2以上の整数である。
【0014】
ポリリン酸の製造方法には、特に制限はなく、本出願時に公知の任意の製造方法によってポリリン酸を製造することができる。例えば、平均鎖長が15以上の中長鎖ポリリン酸を取得する方法として、安価で容易に入手可能なヘキサメタリン酸塩を用いる方法がある。この方法では、先ず、ヘキサメタリン酸塩を0.1〜10重量%、好ましくは10重量%となるように水に溶解する。このヘキサメタリン酸水溶液に、87〜100%エタノール、好ましくは96%エタノールを、ヘキサメタリン酸溶液とエタノールとの混合後の全体液量の1/10〜1/3量で、すなわちヘキサメタリン酸水溶液:エタノールが2:1〜9:1の体積比となる量で添加する。この混合溶液を十分に攪拌し、その結果析出する沈殿物を、遠心分離またはフィルター濾過等の分離方法を用いて水溶液成分と分離する。このようにして分離した沈殿物が中長鎖ポリリン酸である。このポリリン酸を続いて70%エタノールにより洗浄し、その後乾燥させる。このような分離操作で得られるポリリン酸の平均鎖長は60から70であり、10以下の短鎖ポリリン酸はほとんど含まれていない。
【0015】
白髪改善剤として用いられるポリリン酸濃度は、例えば、白髪改善剤中1×10−7〜50重量%であり、好ましくは0.01〜10重量%である。ポリリン酸の含有量が1×10−7重量%未満では白髪改善効果が得られず、また、ポリリン酸の含有量が50重量%を超えると製剤上の問題が生じる。
【0016】
本発明はまた、ポリリン酸に、すでに抗白髪剤として知られている種々の物質を混合してなる白髪改善剤であってもよい。公知の抗白髪剤は、これらに限定されないが、例えば、ウコギ抽出物、マロチラート(ジチオール誘導体)、線維芽細胞増殖因子、アンジオジェニン、ω-アルコキシカルボニルアルキルトリアルキルアンモニウム、アマチャヅル抽出物、サンショウ抽出物、およびコショウ抽出物からなる群から選択される。抗白髪剤は、2種類以上の抗白髪剤が組み合わされて使用されてもよい。抗白髪剤の白髪改善剤中の配合量は、例えば1×10−7〜50重量%、好ましくは0.001〜10重量%である。
【0017】
本発明の白髪改善剤には、上記成分の他に、細胞賦活剤(パントテン酸及びその誘導体、感光素301号、ニンジン抽出物、ビオチン、モノニトログアヤコール、アラントイン、ペンタデカン酸グリセリド、クロレラ抽出物、ローヤルゼリー、ブナ抽出物、α-ヒドロキシ酸、ムチン、絹硫酸加水分解物、海藻抽出物、ジイソプロピルアミンジクロロアセテート、レチノール、γ-アミノ-β-ヒドロキシ酪酸、ステロイド誘導体、梨種子抽出物、ニコチニックアルコール有機酸塩、コレウス・フォルスコリィ抽出物、酵母抽出物、カラス麦抽出物、カムカム抽出物、ビフィズス菌抽出物、ミカン科植物抽出物、ブリオノール酸、γ-アミノ酪酸、月桃抽出物、ハイビスカス抽出物など)、血流促進剤(アセチルコリン、塩化カルプロニウム、センブリ抽出物、トウガラシチンキ、ヒノキチオール、セファランチン、ニコチン酸ベンジル、ニンニク抽出物、トウキ抽出物、ゲンチアナ抽出物、γ-オリザノール、カンゾウ抽出物、ミノキシジル、センキュウ抽出物、チクセツニンジン抽出物、ショウガ抽出物、ジオウ抽出物、アロエ抽出物、イチョウ抽出物、スピロノラクトン、ビタミンB6塩酸塩、D-カンフル、DL-カンフル、DL-α-トコフェロール、ヨウ化ニンニク抽出物、DL-α-トコフェロールリノレイン酸エステル、イノシトールヘキサニコチン酸エステル、ビタミンE誘導体、デキストラン硫酸ナトリウム、ニコチン酸、DL−α-トコフェロールニコチン酸エステル、ニコチン酸ブトキシエチル、ニコチン酸メチル、ノナン酸バニリルアミド、コハク酸DL-α-トコフェロール、酢酸DL-α-トコフェロール、オクチルフタリド、カンタリスチンキ、ショウキョウチンキなど)、保湿剤(グリセリン、プロピレングリコール、ヒアルロン酸、ピロリドンカルボン酸ナトリウム、コンドロイチン硫酸、ミニササニシキ抽出物、冬虫夏草抽出物、サフラン抽出物、ムチンなど)、皮膚刺激剤(L-メントール、ハッカ油、ニコチン酸ベンジル、ノニル酸バニルアミド、カンフルなど)、女性ホルモン(エストロン、エストラジオール、エチニルエストラジオールなど)、女性ホルモン様物質(大豆抽出物、豆乳醗酵液、甘草抽出物、甘草葉抽出物、イソフラボン、ダイゼイン、ゲニステインなど)、アミノ酸(シスチン、システイン、メチオニン、セリンなど)、ビタミン類、角質溶解剤(サリチル酸、レゾルシン、乳酸、グリコール酸など)、経皮吸収促進剤(エタノール、イソプロパノールなどのアルコール類、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリンなどの多価アルコール類、ピロリドン類、ヒアルロン酸、尿素誘導体、サリチル酸類などの保湿・軟化剤、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミドなどの非プロトン溶媒、中鎖脂肪酸エステル、オレイン酸プロピレングリコール、レシチン、ミリスチン酸イソプロピルなどの油脂類、界面活性剤、エイゾン、エイゾン類似物質、環状尿素など)を配合することができる。これらの付加成分の白髪改善剤中の配合量は、例えば1×10−7〜50重量%、好ましくは0.001〜10重量%である。
【0018】
その他、本発明の白髪改善剤には、油分(スクワラン、流動パラフィン、ポリブテン、シリコーン、ホホバ油、ツバキ油など)、界面活性剤(ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステルなど)、多価アルコール(プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、イソプレングリコール、ジプロピレングリコール、ソルビトール、マルチトール、グリセリンなど)、抗酸化剤(ジブチルヒドロキシトルエン、イソプロピルガレート、トコフェロールなど)、金属イオン封鎖剤(エデト酸塩、エチレンジアミンテトラアセテート又はその塩、アラニン、クエン酸ナトリウム、グルコン酸、酒石酸など)、抗炎症剤(グリチルリチン酸誘導体、グリチルレチン酸誘導体、甘草抽出物、カルベノキソロン2ナトリウム、グアイアズレン、塩酸ジフェンヒドラミン、シコン抽出物、エイジツ抽出物、酢酸ヒドロコルチゾン、プレドニゾロンなど)、防腐剤(パラベン類、グルコン酸クロルヘキシジン、ソルビン酸、塩化ベンザルコニウム、クロルキシレノール、トリクロロカルバニリド、ハロカルバン、モノニトログアヤコール、感光素201号、サリチル酸など)、水溶性高分子、色素、香料などを適宜配合することができる。これらの付加成分の白髪改善剤中の配合量は、例えば1×10−7〜50重量%、好ましくは0.001〜10重量%である。
【0019】
本発明の白髪改善剤は、1日に1回〜数回(例えば2〜6回)、適量を頭皮、および白髪の改善を期待する部位に塗布して使用するとよい。
【0020】
また、本発明の白髪改善剤の剤形は特に限定されず、ヘアトニック、ヘアローション、ヘアクリーム、エアゾール、軟膏等として提供することができる。
【実施例】
【0021】
以下、本発明を実施例に基づいて詳述する。
【0022】
<白髪改善効果試験>
白髪には様々な要因が関与し、メラノサイトにも種々の生理活性因子が複雑に作用することから、以下の実使用試験を行った。
【0023】
1.白髪改善剤の調製
ポリリン酸ナトリウムは、20w/v%ポリリン酸ナトリウム水溶液を使用した。20w/v%ポリリン酸ナトリウム水溶液の組成を、以下の表1に示した。このとき、ポリリン酸Naは、平均鎖長45および65(n=45および65)のポリリン酸として存在する。なお、エタノールはポリリン酸ナトリウムを分離操作するときに使用したものが残留するため、操作のスケールや温度等の条件で変化しうる。
【表1】

【0024】
以下の表2に記載された原料成分を配合して白髪改善剤を調製した。具体的には、表2に記載の成分Cを成分Aに溶解させた後、これに本発明の有効成分である成分Bを加えて撹拌し、均一に溶解した。抗白髪剤である塩基性線維芽細胞増殖因子(b-FGF)は、バイオソースインターナショナル社製の試薬(ヒト線維芽細胞成長因子b(rhFGFb))を使用した。調製された白髪改善剤は、ヘアトニックとして提供した。なお、表2ではポリリン酸ナトリウムを含めて固形分換算した量で配合量を示した。また、成分AおよびCについては全て市販のものを使用した。
【表2】

【0025】
2.白髪改善剤の評価試験
クリニックに来院した白髪の脱毛症及び/又は薄毛の患者(35〜70歳、男女比は1:1)50名をランダムに5群に分け、頭部に毎日朝夕2回、連続6ヶ月間塗布させた後、以下に示す基準で評価した。判定はクリニックの医師が行い、それぞれ該当する人数で示した。
【0026】
◎:毛根部の黒化又は褐色化が白髪10本中5本以上
○:同 3〜4本
△:同 1〜2本
×:無効
3.実験結果
【表3】

【0027】
4.考察
表3から明らかなように、比較例1の基剤のみ(成分Bなし)のヘアトニックでは白髪改善効果は認められなかった。また、比較例2の抗白髪剤b-FGF配合のヘアトニックも水溶性多価アルコールが配合されてb-FGFが安定化されているにもかかわらず、白髪改善効果は十分ではなかった。
【0028】
一方、実施例1においては平均鎖長45のポリリン酸ナトリウム(n=45)の配合により、十分な白髪改善効果が認められた。
【0029】
次に、実施例2では、実施例1よりも重合度の高い平均鎖長65のポリリン酸ナトリウム(n=65)を配合し、実施例1よりも高い白髪改善効果が得られた。その理由は必ずしも明らかではないが、おそらくは重合度の高いポリリン酸は頭皮内で完全に分解されるまでに時間を要し、ポリリン酸の生理作用がより持続したと考えられる。
【0030】
最後に、実施例3では、平均鎖長45のポリリン酸ナトリウム(n=45)にb-FGF(塩基性線維芽細胞増殖因子)を配合し、実施例1よりも高い白髪改善効果が得られた。その理由は、おそらくはポリリン酸によって、公知の抗白髪剤であるb-FGFが安定化されかつ細胞との結合が強化され、その生理作用効果が高まったものと考えられる。すなわち、ポリリン酸は、b−FGFのような生理活性因子の効果を促進してメラノサイトを増殖し、その結果、複数のメラノサイト刺激因子を安定化もしくはその機能を高めることによって、間接的にメラノサイトを活性化して白髪を改善するものと考えられる。
【0031】
以上、本発明は、毛髪毛根部のメラノサイトの減少と不活性化を、ポリリン酸による生理活性因子の活性化作用によってメラノサイトの増殖と活性化を行い、優れた白髪の改善作用を発現せしめると共に、安全性にも優れた白髪改善剤を提供することができた。また、ポリリン酸と抗白髪剤とを併用することで、さらに優れた白髪改善剤とすることができた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリリン酸を含有する白髪改善剤。
【請求項2】
前記ポリリン酸が、直鎖縮合ポリリン酸である、請求項1に記載の白髪改善剤。
【請求項3】
前記ポリリン酸が、ポリリン酸塩である、請求項1または2に記載の白髪改善剤。
【請求項4】
前記ポリリン酸が、ポリリン酸ナトリウムである、請求項1または2に記載の白髪改善剤。
【請求項5】
前記ポリリン酸に、ウコギ抽出物、マロチラート(ジチオール誘導体)、塩基性線維芽細胞増殖因子(b-FGF)、アンジオジェニン、ω-アルコキシカルボニルアルキルトリアルキルアンモニウム、アマチャヅル抽出物、サンショウ抽出物、およびコショウ抽出物からなる群から選択された少なくとも1種以上の抗白髪剤が混合されてなる、請求項1〜4のいずれか1項に記載の白髪改善剤。
【請求項6】
前記ポリリン酸に、塩基性線維芽細胞増殖因子(b-FGF)が混合されてなる、請求項1〜4のいずれか1項に記載の白髪改善剤。
【請求項7】
前記ポリリン酸が、1×10−7〜50重量%含有されてなる、請求項1〜6のいずれか1項に記載の白髪改善剤。
【請求項8】
前記ポリリン酸が、平均鎖長15以上のポリリン酸である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の白髪改善剤。

【公開番号】特開2010−59127(P2010−59127A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−228440(P2008−228440)
【出願日】平成20年9月5日(2008.9.5)
【出願人】(508269880)株式会社 エフシーエー (1)
【出願人】(508269891)王子製薬株式会社 (1)
【Fターム(参考)】