説明

皮膚化粧料

【課題】保湿性が高く、べたつきのない感触に優れた化粧料に関する。
【解決手段】(A)ダイマージリノール酸(フィトステリル/イソステアリル/セチル/ステアリル/ベヘニル) 0.1〜3質量%
(B)多価アルコール 10〜25質量%
(C)糖及び/又は糖誘導体 0.01〜3質量%
を含有する皮膚化粧料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保湿性が高く、べたつきのない感触に優れた皮膚化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚の水分保持は、皮膚を健やかに保つために不可欠な要因であり、保湿を目的とした化粧料、医薬品等が数多く市販されている。これら化粧料、医薬品等においては、多価アルコール、糖、水溶性高分子などが保湿剤として用いられている。しかし、保湿効果を高めるために保湿剤の配合量を多くすると、べたつきという好ましくない感触に繋がってしまう場合が多い。
【0003】
近年、保湿性に優れた皮膚化粧料を得るために、抱水性の高い油剤であるダイマー酸エステルを利用する方法が用いられ始めている。
例えば、ダイマー酸ステロールエステルが高い抱水性を持ち、それを配合した化粧料がべたつかず、しっとり感に優れること(例えば、特許文献1参照。)が知られている。
【0004】
また、ダイマー酸ジエステル、水溶性高分子、多価アルコールを含有する化粧料が保湿性に優れていること(例えば、特許文献2又は3参照。)も知られている
【0005】
しかし上記の技術においても、高い保湿性と、べたつきのない感触という相反する効果を両立させるという点では、十分満足の得られるものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−199937号公報
【特許文献2】特開2005−97123号公報
【特許文献3】特開2009−40705号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明の目的は、保湿性が高く、べたつきのない感触に優れた皮膚化粧料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的は、ダイマージリノール酸(フィトステリル/イソステアリル/セチル/ステアリル/ベヘニル)を0.1〜3質量%、多価アルコールを10〜25質量%、糖及び/又は糖誘導体を0.01〜3質量%含有する皮膚化粧料により達成される。
【発明の効果】
【0009】
本発明の皮膚化粧料は、保湿性が高く、べたつきのない感触に優れた効果を有するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の構成について詳述する。
【0011】
本発明の皮膚化粧料で使用する成分(A)はダイマージリノール酸(フィトステリル/イソステアリル/セチル/ステアリル/ベヘニル)(以下、ダイマージリノール酸エステルと略する。)であり、例えば水素添加ダイマー酸と、フィトステロール、イソステアリル
アルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール及びベヘニルアルコールとを、無触媒でエステル化反応させ水蒸気脱臭したり、酸触媒下エステル化し水洗後に水蒸気脱臭したりして、得ることができる。市販品の例としては、日本精化株式会社製のPlandool−H、Plandool−Sなどを挙げることができる。配合量は、皮膚化粧料全体を100質量%(以下、質量%を%と略す。)として、0.1〜3%である。0.1%未満では、保湿性の点で満足の得られる結果とはならず、3%を超えると、べたつきが出てくる場合があり好ましくない。
【0012】
本発明の皮膚化粧料で使用する成分(B)は多価アルコールであり、具体例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン、3−メチルー1,3−ブタンジオール、1,3−ブチレングリコールなどが挙げられる。これら多価アルコールのなかで、好ましくは1,3−ブチレングリコール、ジプロピレングリコールである。配合量は皮膚化粧料全体を100%として、10〜25%である。10%未満では、保湿性の点で満足の得られる結果とはならない場合があり、また25%を超えると、べたつきが出てくることがある。
【0013】
本発明の皮膚化粧料で使用する成分(C)は糖及び/又は糖誘導体であり、具体例としては、ソルビトール、マンニトール、ブドウ糖、ショ糖、果糖、キシリトール、ラクトース、マルトース、マルチトール、マルトトリイトール、マルトテトライトール、マルトペンタイトール、トレハロース、グルコシルトレハロース、マルトシルトレハロース、マルトトリオシルトレハロースなどが挙げられる。これら糖及び/又は糖誘導体のなかで、好ましくはマルトトリイトール、マルトテトライトール、マルトシルトレハロースである。配合量は皮膚化粧料全体を100%として、0.01〜3%である。0.01%未満では、保湿性の点で満足の得られる結果とはならず、また3%を超えると、べたつきが出てくる場合がある。
【0014】
本発明の皮膚化粧料を肌に塗布し、水などが揮発すると、肌は微視的には、油相で覆われる部位と、水相で覆われる部位に分かれる。油相成分部位には(A)ダイマージリノール酸エステルが、水相成分部位には(C)糖及び/又は糖誘導体が存在する。これらは保湿性を高めるが、べたつく感触も生じさせてしまう。(B)多価アルコールは、油相、水相のどちらにも分布し、(A)ダイマー酸ジリノール酸エステルと(C)糖及び/又は糖誘導体のべたつきを抑制する。この3成分の組み合わせにより、全ての部分で高い保湿性とべたつきのなさを両立させていると考えられる。
【0015】
本発明の皮膚化粧料は、上述した成分を必須の構成成分とするが、当該組成物には本発明の目的を損なわない範囲で、他の成分、例えば、陰イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、粘剤、油剤、粉体(色素、樹脂、顔料)、防腐剤、香料、保湿剤、生理活性成分、塩類、溶媒、酸化防止剤、キレート剤、パール化剤、中和剤、pH調整剤、昆虫忌避剤、酵素等の成分を適宜配合することができる。以下に他の配合成分の具体例を示すが、これらに限られるものではない。
【0016】
陰イオン性界面活性剤としては、直鎖あるいは分岐鎖脂肪酸塩、α−アシルスルホン酸塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルアリルスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキル硫酸塩、アルキルエーテル硫酸塩、アルキルアミド硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルアミドエーテル硫酸塩、アルキルリン酸塩、アルキルアミドリン酸塩、アルキロイルアルキルタウリン塩、N−アシルアミノ酸塩、スルホコハク酸塩、パーフルオロアルキルリン酸エステル等が挙げられる。
【0017】
両性界面活性剤としては、グリシン型、アミノプロピオン酸型、カルボキシベタイン型、スルホベタイン型、スルホン酸型、硫酸型、リン酸型等が挙げられる。
【0018】
非イオン性界面活性剤としては、脂肪酸アルカノールアミド、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、アルキルアミンオキシド等が挙げられる。
【0019】
油剤としては、通常化粧料に用いられる揮発性及び不揮発性の油剤、溶剤及び樹脂が挙げられ、常温で液体、ペースト、固体のいずれの形態であっても構わない。油剤の例としては、例えばセチルアルコール、イソステアリルアルコール、ラウリルアルコール、ヘキサデシルアルコール、オクチルドデカノール等の高級アルコール、イソステアリン酸、ウンデシレン酸、オレイン酸等の脂肪酸、ミリスチン酸ミリスチル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸オクチルドデシル、オレイン酸デシル、ミリスチン酸イソプロピル、ジメチルオクタン酸へキシルデシル、モノステアリン酸グリセリン、トリオクタン酸グリセリン、フタル酸ジエチル、モノステアリン酸エチレングリコール、オキシステアリン酸オクチル等のエステル類、ステアリン酸コレステリル、オレイン酸コレステリル、分岐脂肪酸コレステリル等のコレステロールエステル、流動パラフィン、ワセリン、スクワラン等の炭化水素、ラノリン、還元ラノリン、カルナバロウ等のロウ、ミンク油、カカオ脂、ヤシ油、パーム核油、ツバキ油、ゴマ油、ヒマシ油、オリーブ油等の油脂、ジメチルポリシロキサン、環状ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン等のシリコーン油等が挙げられる。
【0020】
粉体の例としては、赤色201号、黄色4号、青色1号、黒色401号等の色素、黄色4号Alレーキ、黄色203号Baレーキ等のレーキ色素、ナイロンパウダー、シルクパウダー、シリコーンパウダー、セルロースパウダー、シリコーンエラストマー球状粉体、ポリエチレン末等の樹脂、黄酸化鉄、赤色酸化鉄、酸化クロム、カーボンブラック、群青、紺青等の有色顔料、酸化亜鉛、酸化チタン等の白色顔料、タルク、マイカ、セリサイト、カオリン等の体質顔料、雲母チタン等のパール顔料等の顔料、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、珪酸マグネシウム等の金属塩、シリカ、アルミナ等の無機粉体、ベントナイト、スメクタイト、窒化ホウ素等が挙げられる。これらの粉体の形状(球状、棒状、針状、板状、不定形状、燐片状、紡錘状等)に特に制限はない。
【0021】
生理活性成分としては、皮膚に塗布した場合に皮膚に何らかの生理活性を与える物質が挙げられる。例えば、老化防止剤、紫外線防御剤、ひきしめ剤、抗酸化剤、保湿剤、血行促進剤、抗菌剤、殺菌剤、乾燥剤、冷感剤、温感剤、ビタミン類、アミノ酸、創傷治癒促進剤、刺激緩和剤、鎮痛剤、細胞賦活剤、酵素成分等が挙げられる。
【0022】
本発明の皮膚化粧料は、常法に従って製造することができる。また、本発明の皮膚化粧料としては、基礎化粧料、メイクアップ化粧料、ボデイ化粧料等が挙げられる。剤形も目的に応じて任意に選択することができる。すなわち、液状、クリーム状、ジェル状、乳液状、シート状、エアゾール状等のものが挙げられる。本発明の皮膚化粧料は、一般の化粧料に限定されるものではなく、医薬部外品、指定医薬部外品、外用医薬品等を包含するものである。
【実施例】
【0023】
次に本発明を実施例に基づいて詳細に説明するが、これに限定されるものではない。実施例に先立ち、各実施例で採用した試験法、評価法を説明する。
【0024】
(保湿性試験(角質層水分量測定方法))
20名のパネルの上腕部において、試料塗布前及び塗布15分後の角質水分量を市販の水分計(コルネオメーター(Corneometer(登録商標))CM825、ドイツCourage+Khazaka社製)を用いて測定し、塗布後の数値の上昇した人数にて評価を行った。
【0025】
(肌へのべたつきのなさ)
専門パネル10名により、各皮膚化粧料を使用、使用中及び使用後の肌へのべたつきのなさについて評価を実施した。評価基準は以下の通りである。
(評価基準)
◎…専門パネル8名以上が使用中及び使用後肌へのべたつきがないと認めた。
○…専門パネル6名以上8名未満が使用中及び使用後肌へのべたつきがないと認めた。
△…専門パネル3名以上6名未満が使用中及び使用後肌へのべたつきがないと認めた。
×…専門パネル3名未満が使用中及び使用後肌へのべたつきがないと認めた。
【0026】
実施例1〜4、比較例1〜6
表1に示した処方の皮膚化粧料を調整し、前記各試験を実施した。その結果を表1に併せて示す。各成分の配合量の単位は質量%である。
【0027】
【表1】

【0028】
表1より明らかなように本発明の成分を用いた実施例の皮膚化粧料はいずれも優れた性能を有していた。一方、必須成分のいずれかを欠いたあるいは適切な量を配合しなかった比較例では、保湿効果、べたつきのなさのいずれかあるいは両方の面で劣っており、本発明
の目的を達成できなかった。
【0029】
以下、本発明の皮膚化粧料のその他の処方例を実施例として挙げる。なお、これらの実施例の皮膚化粧料についても、上記の使用時の保湿試験、使用時のべたつきのなさについて各項目を検討したところ、いずれの実施例においても、優れた特性を有しており良好であった。
【0030】
実施例5(化粧水)
(1)ジプロピレングリコール 10.0%
(2)1,3−ブチレングリコール 5.0%
(3)マルトシルトレハロース 0.5%
(4)マルトトリイトール 0.1%
(5)ヒドロキシプロピルメチルセルロース 0.1%
(6)クエン酸 0.05%
(7)クエン酸ナトリウム 0.1%
(8)鱈浮袋由来水溶性コラーゲン(F) 0.2%
(9)キサンタンガム 0.05%
(10)エデト酸二ナトリウム 0.01%
(11)エタノール 6.0%
(12)ダイマージリノール酸エステル(※) 0.1%
(13)パラメトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル 0.1%
(14)ポリオキシエチレン(50)硬化ヒマシ油 0.6%
(15)モノラウリン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン 0.2%
(16)フェノキシエタノール 0.2%
(17)エチルヘキシルグリセリン 0.05%
(18)香料 0.01%
(19)精製水 全量を100%とする
(※):Plandool−H(日本精化株式会社)
【0031】
(製法)
(1)〜(10)及び(19)を均一に混合し、(11)〜(18)を均一に混合したものを加え、充分に攪拌した後、ボトル容器に充填し化粧水を調整した。
【0032】
実施例6(乳液)
(1)D−パントテニルアルコール 0.2%
(2)トラネキサム酸 0.2%
(3)グリチルリチン酸ジカリウム 0.1%
(4)γ−オリザノール 0.1%
(5)N−アセチルグルコサミン 0.2%
(6)コンドロイチン硫酸ナトリウム 0.2%
(7)ヒアルロン酸ナトリウム 0.1%
(8)鮫由来加水分解由来コラーゲン(F) 0.3%
(9)フェノキシエタノール 0.2%
(10)ダイマージリノール酸エステル(※) 0.5%
(11)流動パラフィン 13.0%
(12)親油型モノステアリン酸グリセリン 2.0%
(13)ワセリン 1.0%
(14)メチルポリシロキサン(5000cs) 0.5%
(15)ステアリン酸 1.0%
(16)コレステロール 1.0%
(17)マルトシルトレハロース 0.1%
(18)ベヘニルアルコール 0.5%
(19)ベントナイト 0.5%
(20)N−ステアロイル−L−グルタミン酸ナトリウム 0.1%
(21)1,3−ブチレングリコール 5.0%
(22)ジプロピレングリコール 7.0%
(23)メチルパラベン 0.2%
(24)精製水 全量を100%とする
(※):Plandool−H(日本精化株式会社製)
【0033】
(製法)
(10)〜(17)を約80℃にて均一溶解し、(18)〜(24)を約80℃にて均一溶解したものを加えてホモミキサーにて分散する。ついで冷却を行い、40℃で(1)〜(9)を添加して30℃まで冷却しPET容器に充填し乳液を調整した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分(A)〜(C)を含有することを特徴とする皮膚化粧料。
(A)ダイマージリノール酸(フィトステリル/イソステアリル/セチル/ステアリル/ベヘニル) 0.1〜3質量%
(B)多価アルコール 10〜25質量%
(C)糖及び/又は糖誘導体 0.01〜3質量%

【公開番号】特開2012−184179(P2012−184179A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−47037(P2011−47037)
【出願日】平成23年3月4日(2011.3.4)
【出願人】(306018365)クラシエホームプロダクツ株式会社 (188)
【Fターム(参考)】