説明

皮膚外用剤及びその安定化剤

【課題】アスコルビン酸、その誘導体及びそれらの塩、コラーゲン、アミノ酸、その誘導体及びそれらの塩、並びにリン脂質からなる群から選ばれる一種又は二種以上を含有する組成物の高温条件下における安定性を向上せしめるための技術を提供する。また、上記有効成分を含み、かつ安全で安定な無賦香の皮膚外用剤を提供する。
【解決手段】ゼラニウム水、ローズ水、カモミール水、ラベンダー水、ローズマリー水、ラブダナム水、ローレル水及びオレンジフラワー水から選ばれる一種又は二種以上を上記物質の安定化剤に含有させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アスコルビン酸、その誘導体及びそれらの塩、コラーゲン、アミノ酸、その誘導体及びそれらの塩、並びにリン脂質からなる群から選択される一種又は二種以上を含有する組成物の安定化剤、並びに該安定化剤を含有する皮膚外用剤及び化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、化粧料に代表される皮膚外用剤の分野では、その製剤化における成分の選択にあたって、種々の制限が存するようになっている。特に、化粧料などの保存安定性を高めるために用いられる保存料や安定化剤などの成分には生体に好ましくない作用を及ぼすものも多くあり、これらの成分の選択や使用量には、多大な注意を払わなければならない。例えば、防腐剤のブチルパラベンなどは、内分泌物質かく乱作用が一部で疑われる報告が出ており、その使用量に注意を要さなければならないし、抗酸化剤のBHTやBHAは、生体に害を及ぼす場合も疑われるためその使用が制限されつつある。このような背景において、化粧料などの保存料や安定化剤の使用などを抑えようとする傾向があるが、保存料を配合しない化粧料は、有効成分などが変質して異臭が発生しやすいため、香料成分を用いてこれをマスキングすることなども行われている。しかしながら、一方で、香料成分についても嗜好性の面や刺激やアレルギーなど安全性の面からこれを好まない消費者が増えてきており、いわゆる無賦香化粧料の需要が高まっている。
【0003】
皮膚外用剤に配合される成分のうち、アスコルビン酸類、コラーゲン、アミノ酸類などは、安全性が極めて高く、近年になって種々の有効な作用が明らかになってきていることから、化粧料などに使用され、その含有濃度も高くすることが望まれている。しかしながら、これらの成分は高温条件下で変質しやすく、化粧料などを一定期間保存した場合、色が変化したり、異臭が発生したりするため、高濃度で含有させることが困難であった。特に、香料などを含有しない無賦香の皮膚外用剤においては、このような成分の臭いの変化が如実に判明するため、有効成分を高濃度で含有させることは極めて困難であった。
このような中、アミノ酸、タンパク質、レシチンなどを含有する含水化粧料の経時的な変臭、変色を防ぐ手段として、化粧料に還元剤やキレート剤を使用することが行われている(特許文献1、特許文献2)。しかしながら、このような手段は効果などの面で十分とはいえない場合もある。
【0004】
ゼラニウム、ローズ、カモミール、ラベンダー、ローズマリー、ラブダナム、ローレル、オレンジ等の香料植物は、自然の植物の好ましい香りを有するため、その精油成分が種々の化粧料などに配合されている。
一方、香料植物の精油成分を水蒸気蒸留法によって得る過程で、水蒸気蒸留物に貯留した精油成分を取り除いた残余成分である水相成分は、クッキーなどの風味付けに用いられたり、そのものを皮膚に化粧水代わりに塗布したりして用いることが知られている。また、これらの水相成分を化粧料等に含有させることにより、原料臭を微かな香気でマスキングすることが知られている(特許文献3)。なお、ローズマリー、ローレルなどの抽出物は、抗酸化作用を有することが知られている(特許文献4、5)。しかしながら、香料植物を水蒸気蒸留法で処理して得られる上記水相成分が、アスコルビン酸、その誘導体及びそれらの塩、コラーゲン、アミノ酸、その誘導体及びそれらの塩、並びにリン脂質などを含有する組成物の高温条件下での変質を防ぎ、組成物の安定性を保持する作用を有することについては全く知られていない。
【0005】
【特許文献1】特開平8−231335号公報
【特許文献2】特開2000−281559号公報
【特許文献3】特開2003−192568号公報
【特許文献4】特開2004−75646号公報
【特許文献5】特開2003−095915号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、アスコルビン酸、その誘導体及びそれらの塩、コラーゲン、アミノ酸、その誘導体及びそれらの塩、並びにリン脂質からなる群から選択される一種又は二種以上を含有する、高温化で変質しやすい組成物の高温条件下での安定性を向上せしめる技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明者らは、アスコルビン酸、その誘導体及びそれらの塩、コラーゲン、アミノ酸、その誘導体及びそれらの塩、並びにリン脂質からなる群から選択される一種又は二種以上を含有する組成物の高温条件下での安定性を向上せしめる技術を求めて、鋭意研究努力を重ねた結果、安定化剤にゼラニウム水、ローズ水、カモミール水、ラベンダー水、ローズマリー水、ラブダナム水、ローレル水及びオレンジフラワー水からなる群から選択される一種又は二種以上を含有させることにより、上記組成物の高温条件下での安定性が増大することを見出し、本発明を完成させるに至った。すなわち、本発明は、以下に示すとおりである。
(1) アスコルビン酸、その誘導体及びそれらの塩、コラーゲン、アミノ酸、その誘導体及びそれらの塩、並びにリン脂質からなる群から選択される一種又は二種以上を含有する皮膚外用剤であって、さらにゼラニウム水、ローズ水、カモミール水、ラベンダー水、ローズマリー水、ラブダナム水、ローレル水及びオレンジフラワー水からなる群から選択される一種又は二種以上を含有する安定化剤を含有することを特徴とする、皮膚外用剤。(2) アスコルビン酸リン酸エステル塩、魚類由来加水分解コラーゲン、水酸化レシチン及びトリメチルグリシンからなる群から選択される一種又は二種以上を含有する、(1)に記載の皮膚外用剤。
(3) 前記安定化剤が、ゼラニウム水及びカモミール水を含有する安定化剤、ラブダナム水及びローレル水を含有する安定化剤、又はラブダナム水及びゼラニウム水を含有する安定化剤であることを特徴とする、(1)又は(2)に記載の皮膚外用剤。
(4) 前記安定化剤が、さらに1,3−ブタンジオールを含有することを特徴とする、(1)〜(3)の何れか一に記載の皮膚外用剤。
(5) 精油成分を含有しないことを特徴とする、(1)〜(4)の何れか一に記載の皮膚外用剤。
(6) 無賦香である旨の表示を有することを特徴とする、(5)に記載の皮膚外用剤。(7) 化粧料であることを特徴とする、(1)〜(6)の何れか一に記載の皮膚外用剤。
(8) ゼラニウム、ローズ、カモミール、ラベンダー、ローズマリー、ラブダナム、ローレル及びオレンジからなる群から選択される一種又は二種以上の植物体を水蒸気蒸留し、得られた水蒸気を冷却して水相成分を取り出し、該水相成分に1,3−ブタンジオールを添加して安定化剤を得る工程と、該安定化剤とアスコルビン酸、その誘導体及びそれらの塩、コラーゲン、アミノ酸、その誘導体及びそれらの塩、並びにリン脂質からなる群から選択される一種又は二種以上を含有する皮膚外用剤とを50℃以下の温度で混合する工程を含む、皮膚外用剤の製造方法。
(9) ゼラニウム水、ローズ水、カモミール水、ラベンダー水、ローズマリー水、ラブダナム水、ローレル水及びオレンジフラワー水からなる群から選択される一種又は二種以上を含有することを特徴とする、アスコルビン酸、その誘導体及びそれらの塩、コラーゲン、アミノ酸、その誘導体及びそれらの塩、並びにリン脂質からなる群から選択される一種又は二種以上を含有する組成物の安定化剤。
【発明の効果】
【0008】
本発明のゼラニウム水、ローズ水、カモミール水、ラベンダー水、ローズマリー水、ラブダナム水、ローレル水及びオレンジフラワー水からなる群から選択される一種又は二種以上を含有する安定化剤は、アスコルビン酸、その誘導体及びそれらの塩、コラーゲン、アミノ酸、その誘導体及びそれらの塩、並びにリン脂質からなる群から選択される一種又は二種以上を含有する組成物の高温条件下での安定性を高める効果を有する。特に、上記組成物の異臭の発生や色の変化などを防ぐ効果に優れる。また、本発明の安定化剤を皮膚外用剤に用いることにより、保存性に優れる化粧料などを提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
(1)本発明の安定化剤
本発明の安定化剤は、ゼラニウム水、ローズ水、カモミール水、ラベンダー水、ローズマリー水、ラブダナム水、ローレル水及びオレンジフラワー水からなる群から選択される一種又は二種以上を含有することを特徴とする。
ゼラニウム水とは、ゼラニウムの植物体を水蒸気蒸留法で処理して得られた蒸留物から精油成分を除いた残りの水相成分をいう。本発明の安定化剤に用いるゼラニウムは、フウロソウ科テンジクアオイ属(Pelargonium)又はフウロソウ属(Geranium)に属する種であれば、特に制限なく用いることができるが、テンジクアオイ属ローズゼラニウム(Pelargonium capitatum)を用いることが好ましい。また、上記ゼラニウム水は、ゼラニウムの植物体の一部又は全部を用いて製造することができ、一部を用いる場合の部位も特に制限されないが、地上部を用いることが好ましい。
ローズ水とは、ローズの植物体を水蒸気蒸留法で処理して得られた蒸留物から精油成分を除いた残りの水相成分をいう。本発明の安定化剤に用いるバラは、バラ科バラ属(Rosa)に属する種であれば、特に制限なく用いることができる。また、上記ローズ水は、ローズの植物体の一部又は全部を用いて製造することができ、一部を用いる場合の部位も特に制限されないが、花及び/又は蕾を用いることが好ましい。
カモミール水とは、カモミールの植物体を水蒸気蒸留法で処理して得られた蒸留物から精油成分を除いた残りの水相成分をいう。本発明の安定化剤に用いるカモミールは、キク科アンテミス属(Anthemis、ローマンカモミール)、オルメニス属(Ormenis、モロッコカモミール)又はマトリカリア属(Matricaria、ジャーマンカモミール)に属する種であれば、特に制限なく用いることができるが、オルメニス属モロッコカモミール(Ormenis mixta)を用いることが好ましい。また、上記カモミール水は、カモミールの植物体の一部又は全部を用いて製造することができ、一部を用いる場合の部位も特に制限されないが、花及び/又は蕾を用いることが好ましい。
ラベンダー水とは、ラベンダーの植物体を水蒸気蒸留法で処理して得られた蒸留物から精油成分を除いた残りの水相成分をいう。本発明の安定化剤に用いるラベンダーは、シソ科ラバンデュラ属(Lavandula)に属する種であれば、特に制限なく用いることができる。また、上記ラベンダー水は、ラベンダーの植物体の一部又は全部を用いて製造することができ、一部を用いる場合の部位も特に制限されないが、花及び/又は蕾を用いることが好ましい。
ローズマリー水とは、ローズマリーの植物体を水蒸気蒸留法で処理して得られた蒸留物から精油成分を除いた残りの水相成分をいう。本発明の安定化剤に用いるローズマリーは、シソ科マンネンロウ属(Rosmarinus)に属する種であれば、特に制限なく用いることができる。また、上記ローズマリー水は、ローズマリーの植物体の一部又は全部を用いて製造することができ、一部を用いる場合の部位も特に制限されないが、地上部を用いることが好ましい。
ラブダナム水とは、ラブダナムの植物体を水蒸気蒸留法で処理して得られた蒸留物から精油成分を除いた残りの水相成分をいう。本発明の安定化剤に用いるラブダナムは、ハンニチバナ科ゴジアオイ属(Cistus)に属する種であれば、特に制限なく用いることができ
るが、ラブダナム(Cistus landaniferus L.)を用いることが好ましい。また、上記ラブダナム水は、ラブダナムの植物体の一部又は全部を用いて製造することができ、一部を用いる場合の部位も特に制限されないが、枝及び/又は葉を用いることが好ましい。
ローレル水とは、ローレルの植物体を水蒸気蒸留法で処理して得られた蒸留物から精油成分を除いた残りの水相成分をいう。本発明の安定化剤に用いるローレルは、クスノキ科ゲッケイジュ属(Laurus)に属する種であれば、特に制限なく用いることができるが、ローレル(Laurus nobilis L.)を用いることが好ましい。また、上記ローレル水は、ローレルの植物体の一部又は全部を用いて製造することができ、一部を用いる場合の部位も特に制限されないが、葉を用いることが好ましい。
オレンジフラワー水とは、オレンジの花を水蒸気蒸留法で処理して得られた蒸留物から精油成分を除いた残りの水相成分をいう。本発明の安定化剤に用いるオレンジは、ミカン科ミカン属(Citrus)に属する種であれば、特に制限なく用いることができる。また、上記オレンジフラワー水は、オレンジの花及び/又は蕾を用いて製造することができる。
【0010】
上記各植物蒸留水は、上記各植物体に水蒸気を接触させた後、水蒸気と共に留出する揮発性成分を凝縮させ、デカンテーションなどにより油水分離することで得られる水相部分である。本発明の各植物蒸留水は、この水相部分をそのまま使用することもできるが、膜濃縮など公知の方法によって濃縮したものを使用してもよい。また、該油水分離において、油相部分として得られる油性成分を精油とよび、一般的にこの精油部分は香料として使用できるものであるが、本発明においては、特に使用する必要はない。本発明の水蒸気蒸留方法としては、公知の方法の何れも使用することができる。例えば該植物体1質量部に対して、通常1〜50質量部、好ましくは1.5〜20質量部、さらに好ましくは2〜10質量部の水を加えて、加熱して留出する蒸留液を二層分離することにより得ることができる。このようにして得られた各植物の水相成分は、そのまま、アスコルビン酸、その誘導体及びそれらの塩、コラーゲン、アミノ酸、その誘導体及びそれらの塩、並びにリン脂質からなる群から選択される一種又は二種以上を含有する組成物の安定化剤として用いることができる。
【0011】
本発明の安定化剤においては、上記各植物蒸留水のうち一種を単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。通常は、一種を単独で又は二種を組み合わせて用いることが好ましく、二種を組み合わせて用いることがさらに好ましい。一種を単独で用いる場合は、ゼラニウム水、カモミール水、ラブダナム水又はローレル水を用いるのが好ましい。二種を組み合わせて用いる場合は、ゼラニウム水とカモミール水、ゼラニウム水とローズ水、ゼラニウム水とラブダナム水、又はラブダナム水とローレル水の組み合わせが好ましく、この中でもゼラニウム水とカモミール水の組み合わせが好ましく、さらにローズゼラニウム水とモロッコカモミール水の組み合わせが特に好ましい。また、二種を組み合わせて用いる場合の各植物蒸留水の含有割合は、1:4〜4:1とするのが好ましく、1:2〜2:1とするのがさらに好ましい。
【0012】
本発明の安定化剤は、ゼラニウム、ローズ、カモミール、ラベンダー、ローズマリー、ラブダナム、ローレル及びオレンジからなる群から選択される一種又は二種以上の植物体を水蒸気蒸留し、得られた水蒸気を冷却した後、この冷却物の下層の水相成分と上層の精油成分とを分離することにより得ることができる。このような水蒸気蒸留は、植物の精油を製造するのに用いられる水蒸気蒸留装置などを用いて行うことができる。
【0013】
本発明の安定化剤は、さらに、1,3−ブタンジオールを含有することが好ましい。これにより、組成物に安定化剤を、添加、混合したときに、これに含まれるアスコルビン酸、その誘導体及びそれらの塩、コラーゲン、アミノ酸、その誘導体及びそれらの塩、リン脂質を組成物中に均一に分散させ、保存時の有効成分の沈降を防ぐことができる。1,3−ブタンジオールの含有量は特に制限されないが、通常、植物蒸留水全質量に対して1〜
9倍が好ましい。1,3−ブタンジオールを加える場合には、上記のように植物を水蒸気蒸留法で処理し、水相成分を取り出した後、直ちに加えることが好ましい。
【0014】
本発明の安定化剤に含有される上記植物蒸留水は、組成物中のアスコルビン酸、その誘導体又はそれらの塩、コラーゲン、アミノ酸、その誘導体又はそれらの塩、リン脂質が、高温条件下で変質することを防ぎ、組成物の品質の低下を抑制する作用を有する。品質の低下の指標としては、例えば、臭いの発生や変化、色の変化などが挙げられる。本発明の安定化剤は、特に組成物における異臭の発生や色の変化を抑制する作用に優れる。例えば、本発明の安定化剤を上記組成物に含有させた場合、該組成物を38〜42℃の条件で3ヶ月間保存した場合にも、異臭の発生や色の変化を抑制することができる。さらに、より過酷な50℃の条件で2週間保存した場合にも、異臭の発生や色の変化を抑制することができる。
【0015】
本発明の安定化剤は、アスコルビン酸、その誘導体及びそれらの塩、コラーゲン、アミノ酸、その誘導体及びそれらの塩、並びにリン脂質からなる群から選ばれる一種又は二種以上を含有する組成物を安定化するために用いることができる。特に、アスコルビン酸の誘導体であるアスコルビン酸リン酸エステル及び/又はその塩、アスコルビン酸配糖体などを含有する組成物を安定化するのに好適に用いることができ、この中でも、アスコルビン酸リン酸エステル及び/又はその塩を含有する組成物を安定化するのに好適に用いることができる。特に、アスコルビン酸リン酸エステル及び/又はその塩を3質量%以上、好ましくは4質量%以上含有する組成物を安定化するために好適に用いることができる。
【0016】
本発明の安定化剤は、例えば化粧料などの皮膚外用剤、医薬、飲食品、飼料などの組成物に用いることができるが、特に、高温条件下で保存される可能性が高く、かつ一定以上の期間保存可能である必要がある皮膚外用剤に用いるのに好適であり、この中でも特に化粧料に用いるのに好適である。
また、本発明の安定化剤は、本発明の目的を達成し得る限りにおいて、通常、安定化剤に用いられる他の任意成分を含有していてもよい。
【0017】
(2)本発明の皮膚外用剤
本発明の皮膚外用剤は、アスコルビン酸、その誘導体及びそれらの塩、コラーゲン、アミノ酸、その誘導体及びそれらの塩、並びにリン脂質からなる群から選ばれる一種又は二種以上を含有するものであり、本発明の安定化剤を含有することを特徴とする。
アスコルビン酸の誘導体としては、皮膚外用剤に用いた場合に、生理的に許容されるものであれば特に制限されず、アスコルビン酸リン酸エステル及び/又はその塩、アスコルビン酸配糖体などが挙げられる。この中でもアスコルビン酸リン酸エステル及び/又はその塩を含有するのが好ましい。アスコルビン酸又はその誘導体の塩も同様に特に制限されないが、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、トリエタノールアミン塩、トリエチルアミン塩等の有機アミン塩類、リジン塩、アルギニン塩等の塩基性アミノ酸塩などを含有することが好ましい。本発明の皮膚外用剤におけるアスコルビン酸、その誘導体及びそれらの塩の含有量も、特に制限されるものではないが、皮膚外用剤全量に対して、3質量%以上、好ましくは4質量%以上含有する場合に本発明の皮膚外用剤の効果が顕著である。
本発明の皮膚外用剤に含有するコラーゲンは、皮膚外用剤に用いた場合に、生理的に許容されるものであれば特に制限されない。例えば、加水分解されているコラーゲンであってもよい。この中でも特に、魚類を基源とする加水分解コラーゲンが好ましく例示できる。本発明の皮膚外用剤におけるコラーゲンの含有量も、特に制限されるものではないが、皮膚外用剤全量に対して、通常0.01〜0.1質量%が好ましい。
本発明の皮膚外用剤に含有するアミノ酸は、皮膚外用剤に用いた場合に、生理的に許容されるものであれば特に制限されない。アミノ酸の種類は特に制限されないが、リジン、
ヒスチジン、プロリンなどが好ましく挙げられる。アミノ酸の誘導体も同様に特に制限されず、アシル化アミノ酸とそのエステル、N位をアルキル化したベタインなどが挙げられ、この中でもN−ラウロイルグルタミン酸ジ(オクチル/コレステリル)等のアシル化アミノ酸のエステル及びトリメチルグリシンが特に好ましく挙げられる。本発明の皮膚外用剤におけるアミノ酸の含有量も特に制限されるものではないが、皮膚外用剤全量に対して、通常0.01〜1質量%が好ましい。
本発明の皮膚外用剤に含有するリン脂質は、皮膚外用剤に用いた場合に、生理的に許容されるものであれば特に制限されないが、レシチン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルセリン、ホスファチジン酸及びこれらのリゾ体が好ましく例示でき、特に好ましいものは水酸化レシチン(リゾレシチン)ある。本発明の皮膚外用剤におけるリン脂質の含有量も、特に制限されるものではないが、皮膚外用剤全量に対して0.01〜0.1質量%が好ましい。
本発明の皮膚外用剤は、上記成分のうち単独一種のみを含有するものであっても、二種以上を含有するものであってもよい。二種以上を含有する場合の成分も、皮膚外用剤に用いた場合に、生理的に許容される組み合わせであれば特に制限されない。
【0018】
本発明の皮膚外用剤は、上記安定化剤を含有することを特徴とする。本発明の皮膚外用剤における安定化剤の含有量は、本発明の目的を達成し得る限りにおいて特に制限されず、植物の種類や蒸留に用いる水の質量に応じて適宜調節することができる。例えば、以下に示す含有量を基準として安定化剤の含有量を決定することが好ましい。植物1質量部に対して水3質量部を加えて得られる植物蒸留水の場合は、皮膚外用剤全量に対して0.5〜4質量%、植物1質量部に対して水10質量部を加えて得られる植物蒸留水の場合は、皮膚外用剤全量に対して1〜10質量%、植物1質量部に対して水50質量部を加えて得られる植物蒸留水の場合は、皮膚外用剤全量に対して5〜20質量%の範囲で含有させるのがよい。
【0019】
本発明の皮膚外用剤は、高温条件下で保存した場合にも、異臭の発生や色の変化が起こりにくく、品質が安定する。本発明の皮膚外用剤は、38〜42℃の条件で3ヶ月間保存した場合にも、異臭の発生や色の変化が抑制される。さらに、より過酷な50℃の条件で2週間保存した場合にも、異臭の発生や色の変化が抑制される。
【0020】
本発明の皮膚外用剤は、上記必須成分以外に、通常皮膚外用剤に使用される任意成分を含有することが出来る。このような任意成分としては、例えば、マカデミアナッツ油、アボガド油、トウモロコシ油、オリーブ油、ナタネ油、ゴマ油、ヒマシ油、サフラワー油、綿実油、ホホバ油、ヤシ油、パーム油、液状ラノリン、硬化ヤシ油、硬化油、モクロウ、硬化ヒマシ油、ミツロウ、キャンデリラロウ、カルナウバロウ、イボタロウ、ラノリン、還元ラノリン、硬質ラノリン、ホホバロウ等のオイル、ワックス類、流動パラフィン、スクワラン、プリスタン、オゾケライト、パラフィン、セレシン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックス等の炭化水素類、オレイン酸、イソステアリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、ウンデシレン酸等の高級脂肪酸類、セチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、オクチルドデカノール、ミリスチルアルコール、セトステアリルアルコール等の高級アルコール等、イソオクタン酸セチル、ミリスチン酸イソプロピル、イソステアリン酸ヘキシルデシル、アジピン酸ジイソプロピル、セバチン酸ジ−2−エチルヘキシル、乳酸セチル、リンゴ酸ジイソステアリル、ジ−2−エチルヘキサン酸エチレングリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ジ−2−ヘプチルウンデカン酸グリセリン、トリ−2−エチルヘキサン酸グリセリン、トリ−2−エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラ−2−エチルヘキサン酸ペンタンエリトリット等の合成エステル油類、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン等の鎖状ポリシロキサン、オクタメチルシクロテトラ
シロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン等の環状ポリシロキサン、アミノ変性ポリシロキサン、ポリエーテル変性ポリシロキサン、アルキル変性ポリシロキサン、フッ素変性ポリシロキサン等の変性ポリシロキサン等のシリコーン油等の油剤類、脂肪酸セッケン(ラウリン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム等)、ラウリル硫酸カリウム、アルキル硫酸トリエタノールアミンエーテル等のアニオン界面活性剤類、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム、ラウリルアミンオキサイド等のカチオン界面活性剤類、イミダゾリン系両性界面活性剤(2−ココイル−2−イミダゾリニウムヒドロキサイド−1−カルボキシエチロキシ2ナトリウム塩等)、ベタイン系界面活性剤(アルキルベタイン、アミドベタイン、スルホベタイン等)、アシルメチルタウリン等の両性界面活性剤類、ソルビタン脂肪酸エステル類(ソルビタンモノステアレート、セスキオレイン酸ソルビタン等)、グリセリン脂肪酸類(モノステアリン酸グリセリン等)、プロピレングリコール脂肪酸エステル類(モノステアリン酸プロピレングリコール等)、硬化ヒマシ油誘導体、グリセリンアルキルエーテル、POEソルビタン脂肪酸エステル類(POEソルビタンモノオレエート、モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン等)、POEソルビット脂肪酸エステル類(POE−ソルビットモノラウレート等)、POEグリセリン脂肪酸エステル類(POE−グリセリンモノイソステアレート等)、POE脂肪酸エステル類(ポリエチレングリコールモノオレート、POEジステアレート等)、POEアルキルエーテル類(POE2−オクチルドデシルエーテル等)、POEアルキルフェニルエーテル類(POEノニルフェニルエーテル等)、プルロニック型類、POE・POPアルキルエーテル類(POE・POP2−デシルテトラデシルエーテル等)、テトロニック類、POEヒマシ油・硬化ヒマシ油誘導体(POEヒマシ油、POE硬化ヒマシ油等)、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルグルコシド等の非イオン界面活性剤類、ポリエチレングリコール、グリセリン、1,3−ブチレングリコール、エリスリトール、ソルビトール、キシリトール、マルチトール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ジグリセリン、イソプレングリコール、1,2−ペンタンジオール、2,4−ヘキシレングリコール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−オクタンジオール等の多価アルコール類、ピロリドンカルボン酸ナトリウム、乳酸、乳酸ナトリウム等の保湿成分類、グアガム、クインスシード、カラギーナン、ガラクタン、アラビアガム、ペクチン、マンナン、デンプン、キサンタンガム、カードラン、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、グリコーゲン、ヘパラン硫酸、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸ナトリウム、トラガントガム、ケラタン硫酸、コンドロイチン、ムコイチン硫酸、ヒドロキシエチルグアガム、カルボキシメチルグアガム、デキストラン、ケラト硫酸,ローカストビーンガム,サクシノグルカン,カロニン酸,キチン,キトサン、カルボキシメチルキチン、寒天、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリエチレングリコール、ベントナイト等の増粘剤、表面を処理されていても良い、マイカ、タルク、カオリン、合成雲母、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、無水ケイ酸(シリカ)、酸化アルミニウム、硫酸バリウム等の粉体類、表面を処理されていても良い、ベンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄、酸化コバルト、群青、紺青、酸化チタン、酸化亜鉛の無機顔料類、表面を処理されていても良い、雲母チタン、魚燐箔、オキシ塩化ビスマス等のパール剤類、レーキ化されていても良い赤色202号、赤色228号、赤色226号、黄色4号、青色404号、黄色5号、赤色505号、赤色230号、赤色223号、橙色201号、赤色213号、黄色204号、黄色203号、青色1号、緑色201号、紫色201号、赤色204号等の有機色素類、ポリエチレン末、ポリメタクリル酸メチル、ナイロン粉末、オルガノポリシロキサンエラストマー等の有機粉体類、パラアミノ安息香酸系紫外線吸収剤、アントラニル酸系紫外線吸収剤、サリチル酸系紫外線吸収剤、桂皮酸系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、糖系紫外線吸収剤、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、4−メトキシ−4’−t−ブチルジベンゾイルメタン等の紫外線吸収剤類、エタノール、イソプロパノール等の低級アルコール類、ビタミンA又はそ
の誘導体、ビタミンB6塩酸塩,ビタミンB6トリパルミテート,ビタミンB6ジオクタノエート,ビタミンB2又はその誘導体,ビタミンB12,ビタミンB15又はその誘導体等のビタミンB類、α−トコフェロール,β−トコフェロール,γ−トコフェロール,ビタミンEアセテート等のビタミンE類、ビタミンD類、ビタミンH、パントテン酸、パンテチン、ピロロキノリンキノン等のビタミン類などが挙げられる。
【0021】
本発明の皮膚外用剤は、香料植物の精油成分を賦香成分として含有してもよいが、高温条件下で安定であり、保存時の臭いの発生が抑制されているため、臭いの変化をマスキングするための賦香成分の含有は要せず、含有しない無賦香の形態がより好ましい。「無賦香」とは植物の精油や動物性の天然香料や合成香料などの着香成分を使用しないことを意味する。このような形態においては、その包装や説明書などの添付文書において無賦香である旨を表示することができる。
【0022】
本発明の皮膚外用剤は、ゼラニウム、ローズ、カモミール、ラベンダー、ローズマリー、ラブダナム、ローレル及びオレンジからなる群から選択される一種又は二種以上の植物体を水蒸気蒸留し、得られた水蒸気を冷却して水相成分を取り出し安定化剤を得る工程と、得られた安定化剤とアスコルビン酸、その誘導体及びそれらの塩、コラーゲン、アミノ酸、その誘導体及びそれらの塩、並びにリン脂質からなる群から選択される一種又は二種以上を含有する皮膚外用剤とを混合する工程を経ることによって製造することができる。本発明の皮膚外用剤の製造方法においては、上記工程以外の工程をさらに含むことができ、通常の皮膚外用剤を得る方法などを適宜用いることができる。また、本発明の皮膚外用剤の製造方法は、さらに、上記水蒸気蒸留によって得た水相成分に直ちに1,3−ブタンジオールを添加する工程を含むことが好ましい。このような工程を含むことにより、得られる皮膚外用剤において有効成分が均一に分散する。また、安定化剤とアスコルビン酸、その誘導体及びそれらの塩、コラーゲン、アミノ酸、その誘導体及びそれらの塩、並びにリン脂質からなる群から選択される一種又は二種以上を含有する皮膚外用剤を混合する場合は、40℃〜50℃の範囲で行うことが好ましい。
【0023】
本発明の皮膚外用剤は、皮膚に外用で適用するものであれば特に制限されず、例えば、医薬部外品を含有する化粧料、皮膚外用医薬、皮膚外用雑貨などに含有させて用いることができるが、医薬部外品を含有する化粧料に用いることが特に好ましい。
【0024】
以下に、実施例を挙げて、本発明についてさらに詳細に説明を加えるが、本発明がかかる実施例にのみ限定されないことは言うまでもない。
【実施例】
【0025】
以下の方法により、各植物蒸留水を含有する本発明の安定化剤を作製した。
【0026】
(製造例1) ゼラニウム水含有安定化剤
ローズゼラニウム(Pelargonium capitatum)の葉1Kgを水3Lに添加し、水蒸気蒸留装置にかけ、水蒸気を冷却、回収した。得られた蒸留物2.5Lを分液ロートに入れ、下層の水相成分と上層の精油成分に分けた。下層の水相成分であるゼラニウム水に1,3−ブタンジオール10Lを添加し、ゼラニウム水含有安定化剤を得た。
【0027】
(製造例2) ローズ水含有安定化剤
バラの花1Kgを水10Lに添加し、水蒸気蒸留装置にかけ、水蒸気を冷却、回収した。得られた蒸留物8Lを分液ロートに入れ、下層の水相成分と上層の精油成分に分けた。下層の水相成分であるローズ水に1,3−ブタンジオール8Lを添加し、ローズ水含有安定化剤を得た。
【0028】
(製造例3) カモミール水含有安定化剤
モロッコカモミール(Ormenis mixta)の花穂1Kgを水3Lに添加し、水蒸気蒸留装置にかけ、水蒸気を冷却、回収した。得られた蒸留物2.5Lを分液ロートに入れ、下層の水相成分と上層の精油成分に分けた。下層の水相成分であるカモミール水に1,3−ブタンジオール10Lを添加し、カモミール水含有安定化剤を得た。
【0029】
(製造例4) ラベンダー水含有安定化剤
ラベンダーの花穂1Kgを水10Lに添加し、水蒸気蒸留装置にかけ、水蒸気を冷却、回収した。得られた蒸留物8Lを分液ロートに入れ、下層の水相成分と上層の精油成分に分けた。下層の水相成分であるラベンダー水に1,3−ブタンジオール8Lを添加し、ラベンダー水含有安定化剤を得た。
【0030】
(製造例5) ローズマリー水含有安定化剤
ローズマリーの茎、葉1Kgを水5Lに添加し、水蒸気蒸留装置にかけ、水蒸気を冷却、回収した。得られた蒸留物4Lを分液ロートに入れ、下層の水相成分と上層の精油成分に分けた。下層の水相成分であるローズマリー水に1,3−ブタンジオール8Lを添加し、ローズマリー水含有安定化剤を得た。
【0031】
(製造例6) ラブダナム水含有安定化剤
ラブダナム(Cistus landaniferus L.)の葉1Kgを水3Lに添加し、水蒸気蒸留装置にかけ、水蒸気を冷却、回収した。得られた蒸留物2.5Lを分液ロートに入れ、下層の水相成分と上層の精油成分に分けた。下層の水相成分であるラブダナム水に1,3−ブタンジオール10Lを添加し、ラブダナム水含有安定化剤を得た。
【0032】
(製造例7) ローレル水含有安定化剤
ローレル(Laurus nobilis L.)の葉1Kgを水3Lに添加し、水蒸気蒸留装置にかけ、水蒸気を冷却、回収した。得られた蒸留物2.5Lを分液ロートに入れ、下層の水相成分と上層の精油成分に分けた。下層の水相成分であるローレル水に1,3−ブタンジオール10Lを添加し、ローレル水含有安定化剤を得た。
【0033】
(製造例8) オレンジフラワー水含有安定化剤
オレンジの花1Kgを水2.5Lに添加し、水蒸気蒸留装置にかけ、水蒸気を冷却、回収した。得られた蒸留物2Lを分液ロートに入れ、下層の水相成分と上層の精油成分に分けた。下層の水相成分であるオレンジフラワー水に1,3−ブタンジオール12Lを添加し、オレンジフラワー水含有安定化剤を得た。
【0034】
<実施例1>
以下に示す処方に従って、本発明の化粧水を作製した。すなわち、処方成分イ)を80℃で加温し、攪拌、可溶化し、攪拌冷却し、50℃になったところで、ロ)の植物蒸留水含有安定化剤を加え、攪拌冷却を続け、化粧水を得た。ロ)の植物蒸留水含有安定化剤として、ゼラニウム水含有安定化剤(製造例1)4質量%及びカモミール水含有安定化剤(製造例3)4質量%を用いたものを化粧水1とし、ゼラニウム水含有安定化剤8質量%を用いたものを化粧水2とし、カモミール水含有安定化剤8質量%を用いたものを化粧水3とした。また、ロ)の植物蒸留水含有安定化剤に代えて水8質量%を用いたものを比較例1とし、比較例1においてさらにアスコルビン酸リン酸ナトリウムを水に置換したものを比較例2とした。これらの化粧水及び比較例をそれぞれ5℃と50℃の条件下で2週間保存した。2週間後、コニカミノルタ色彩色差計CR−400にて5℃保存品と50℃保存品の色差(ΔE)を測定した。また、同時に調香師により、5℃保存品を対照として50℃保存品がどの程度臭いが著しくなっているかを、スコア0:変化せず、スコア1:微かな変化、スコア2:微弱な変化、スコア3:明確に感じる程度の変化、スコア4:明らか
な変化の基準で判定してもらった。これらの結果を表1に示す。
これより、アスコルビン酸リン酸ナトリウムを含有し、植物蒸留水含有安定化剤を含有しない比較例1は、色及び臭いの変化が著しいのに対して、ゼラニウム水含有安定化剤及び/又はカモミール水含有安定化剤を含有する化粧水1〜3は、色及び臭いの変化が小さいことが分かる。特に、ゼラニウム水含有安定化剤及びカモミール水含有安定化剤を含有する化粧水1は、色及び臭いの変化がほとんど生じていないことが分かる。
【0035】
イ)
アスコルビン酸リン酸ナトリウム 5.00 質量%
フェノキシエタノール 0.50 質量%
N−ラウロイルグルタミン酸ジ(オクチル/コレステリル) 0.01 質量%
グリセリン 5.00 質量%
POE(60)硬化ヒマシ油 0.10 質量%
1,3−ブタンジオール 3.00 質量%
水 78.39 質量%
ロ)
植物蒸留水含有安定化剤 8.00 質量%
【0036】
【表1】

【0037】
<実施例2>
以下の処方に従い、実施例1と同様の方法を用いて、イ)とロ)の成分を混合し、アスコルビン酸リン酸ナトリウムの含有割合が高い本発明の化粧水4を作製した。ロ)の植物蒸留水含有安定化剤は、ゼラニウム水含有安定化剤(製造例1)4質量%及びカモミール水含有安定化剤(製造例3)4質量%を組み合わせて用いた。また、ロ)の植物蒸留水含有安定化剤に代えて水8質量%を用いたものを比較例3とした。これらを実施例1と同様の方法で保存し、色及び臭いの評価を行った。これらの結果を表2に示す。
これより、アスコルビン酸リン酸ナトリウムの含有割合が高く、ゼラニウム水含有安定化剤及びカモミール水含有安定化剤を含有する化粧水4は、色及び臭いの変化が極めて小さいことが分かる。
【0038】
イ)
アスコルビン酸リン酸ナトリウム 3.00 質量%
フェノキシエタノール 0.50 質量%
N−ラウロイルグルタミン酸ジ(オクチル/コレステリル) 0.01 質量%
グリセリン 5.00 質量%
POE(60)硬化ヒマシ油 0.10 質量%
1,3−ブタンジオール 3.00 質量%
水 80.39 質量%
ロ)
植物蒸留水含有安定化剤 8.00 質量%
【0039】
【表2】

【0040】
<実施例3>
以下の処方に従い、実施例1と同様の方法を用いて、イ)とロ)の成分を混合し、本発明の化粧水を作製した。ロ)の植物蒸留水含有安定化剤として、ラブダナム水含有安定化剤(製造例6)4質量%及びローレル水含有安定化剤(製造例7)4質量%を用いた。ものを化粧水5とし、ラブダナム水含有安定化剤8質量%を用いたものを化粧水6とし、ローレル水含有安定化剤8質量%を用いたものを化粧水7とした。また、植物蒸留水含有安定化剤に代えて水8質量%を用いたものを比較例4とした。これらを実施例1と同様の方法で保存し、色及び臭いの評価を行った。これらの結果を表3に示す。
これより、アスコルビン酸リン酸ナトリウムを含有し、植物蒸留水含有安定化剤を含有しない比較例4は、色及び臭いの変化が著しいのに対して、ラブダナム水含有安定化剤及び/又はローレル水含有安定化剤を含有する化粧水5〜7は、色及び臭いの変化が小さいことが分かる。特に、ゼラニウム水含有安定化剤及びカモミール水含有安定化剤を含有する化粧水5は、色及び臭いの変化がほとんど生じていないことが分かる。
【0041】
イ)
アスコルビン酸リン酸ナトリウム 3.00 質量%
フェノキシエタノール 0.50 質量%
N−ラウロイルグルタミン酸ジ(オクチル/コレステリル) 0.01 質量%
グリセリン 5.00 質量%
POE(60)硬化ヒマシ油 0.10 質量%
1,3−ブタンジオール 3.00 質量%
水 80.39 質量%
ロ)
植物蒸留水含有安定化剤 8.00 質量%
【0042】
【表3】

【0043】
<実施例4>
以下の処方に従い、実施例1と同様の方法を用いて、イ)とロ)の成分を混合し、表4
に示す有効成分を含有する本発明の化粧水8〜10を作製した。ロ)の植物蒸留水含有安定化剤は、ゼラニウム水含有安定化剤4質量%及びカモミール水含有安定化剤4質量%を組み合わせて用いた。また、ロ)の植物蒸留水含有安定化剤に代えて水8質量%を用いたものを、それぞれ化粧水8〜10の比較例5〜7とした。これらを実施例1と同様の方法で保存し、色の変化について評価を行った。これらの結果を表4に示す。
これより、各有効成分を含有し、植物蒸留水含有安定化剤を含有しない比較例5〜7は、色の変化が著しいのに対して、ゼラニウム水含有安定化剤及びカモミール水含有安定化剤を含有する本発明の化粧水8〜10は、色の変化が小さいことが分かる。特に、トリメチルグリシン又はリゾレシチンを含有する化粧水8、9は色の変化が極めて小さいことが分かる。
【0044】
イ)
表4の成分 0.10 質量%
フェノキシエタノール 0.50 質量%
グリセリン 5.00 質量%
POE(60)硬化ヒマシ油 0.10 質量%
1,3−ブタンジオール 3.00 質量%
水 83.30 質量%
ロ)
植物蒸留水含有安定化剤 8.00 質量%
【0045】
【表4】

【0046】
<実施例5>
以下の処方に従い、実施例1と同様の方法を用いて、イ)とロ)の成分を混合し、ゼラニウム水含有安定化剤及び表5に示す植物蒸留水含有安定化剤を含有する本発明の化粧水11〜15を作製した。これらを実施例1と同様の方法で保存し、色の変化について評価を行った。これらの結果を表5に示す。
これより、アスコルビン酸リン酸ナトリウムを含有し、植物蒸留水含有安定化剤を含有する本発明の化粧水11〜15は、何れも色の変化が小さいことが分かる。特に、ゼラニ
ウム水含有安定化剤とローズ水含有安定化剤を含有する化粧水11、及びゼラニウム水含有安定化剤とラブダナム水含有安定化剤を含有する化粧水14は、色の変化が極めて小さく、これらの植物蒸留水を組み合わせて安定化剤とすることが好ましいことが分かる。
【0047】
イ)
アスコルビン酸リン酸ナトリウム 5.00 質量%
フェノキシエタノール 0.50 質量%
N−ラウロイルグルタミン酸ジ(オクチル/コレステリル) 0.01 質量%
グリセリン 5.00 質量%
POE(60)硬化ヒマシ油 0.10 質量%
1,3−ブタンジオール 3.00 質量%
水 78.39 質量%
ロ)
ゼラニウム水含有安定化剤 4.00 質量%
表5の成分 4.00 質量%
【0048】
【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
アスコルビン酸、その誘導体及びそれらの塩、コラーゲン、アミノ酸、その誘導体及びそれらの塩、並びにリン脂質からなる群から選択される一種又は二種以上を含有する皮膚外用剤であって、さらにゼラニウム水、ローズ水、カモミール水、ラベンダー水、ローズマリー水、ラブダナム水、ローレル水及びオレンジフラワー水からなる群から選択される一種又は二種以上を含有する安定化剤を含有することを特徴とする、皮膚外用剤。
【請求項2】
アスコルビン酸リン酸エステル塩、魚類由来加水分解コラーゲン、水酸化レシチン及びトリメチルグリシンからなる群から選択される一種又は二種以上を含有する、請求項1に記載の皮膚外用剤。
【請求項3】
前記安定化剤が、ゼラニウム水及びカモミール水を含有する安定化剤、ラブダナム水及びローレル水を含有する安定化剤、又はラブダナム水及びゼラニウム水を含有する安定化剤であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の皮膚外用剤。
【請求項4】
前記安定化剤が、さらに1,3−ブタンジオールを含有することを特徴とする、請求項1〜3の何れか一項に記載の皮膚外用剤。
【請求項5】
精油成分を含有しないことを特徴とする、請求項1〜4の何れか一項に記載の皮膚外用剤。
【請求項6】
無賦香である旨の表示を有することを特徴とする、請求項5に記載の皮膚外用剤。
【請求項7】
化粧料であることを特徴とする、請求項1〜6の何れか一項に記載の皮膚外用剤。
【請求項8】
ゼラニウム、ローズ、カモミール、ラベンダー、ローズマリー、ラブダナム、ローレル及びオレンジからなる群から選択される一種又は二種以上の植物体を水蒸気蒸留し、得られた水蒸気を冷却して水相成分を取り出し、該水相成分に1,3−ブタンジオールを添加して安定化剤を得る工程と、該安定化剤とアスコルビン酸、その誘導体及びそれらの塩、コラーゲン、アミノ酸、その誘導体及びそれらの塩、並びにリン脂質からなる群から選択される一種又は二種以上を含有する皮膚外用剤とを50℃以下の温度で混合する工程を含む、皮膚外用剤の製造方法。
【請求項9】
ゼラニウム水、ローズ水、カモミール水、ラベンダー水、ローズマリー水、ラブダナム水、ローレル水及びオレンジフラワー水からなる群から選択される一種又は二種以上を含有することを特徴とする、アスコルビン酸、その誘導体及びそれらの塩、コラーゲン、アミノ酸、その誘導体及びそれらの塩、並びにリン脂質からなる群から選択される一種又は二種以上を含有する組成物の安定化剤。

【公開番号】特開2007−119425(P2007−119425A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−316203(P2005−316203)
【出願日】平成17年10月31日(2005.10.31)
【出願人】(000113470)ポーラ化成工業株式会社 (717)
【出願人】(000201733)曽田香料株式会社 (56)
【Fターム(参考)】