説明

皮膚外用剤

【課題】水中油型組成物におけるL−アスコルビン酸−2−リン酸エステルの脂肪酸エステルおよび/またはその塩の加水分解を抑制し、よって該エステルおよび/またはその塩の経時的な安定化が可能な水中油型乳化組成物を提供すること。
【解決手段】一般式:
【化1】


(式中、Rは脂肪酸残基を表す)
で表されるL−アスコルビン酸−2−リン酸エステルの脂肪酸エステルおよび/またはその塩、0.07〜0.65のIOB値を有する液状油、界面活性剤、および水を含有する水中油型組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中油型組成物におけるアスコルビン酸誘導体の安定化技術、詳細には、水中油型組成物におけるアスコルビン酸誘導体の加水分解が抑制された皮膚外用剤の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
アスコルビン酸は皮膚に対して様々な有用性、例えば美白効果、抗酸化効果、コラーゲン合成促進効果などを与えることが知られており、医薬品や化粧品に広く用いられている。しかしながら、アスコルビン酸は酸化安定性に乏しく、着色するなど製剤への安定配合が困難であり、現在、これらの問題点を解決すべく様々な誘導体の開発が行われている。
なかでも、電解質基と脂肪酸基とを有するL−アスコルビン酸−2−リン酸エステルの脂肪酸エステルおよびその塩(以下、単に「アスコルビン酸誘導体」という場合がある)は、経皮吸収性および皮内でのアスコルビン酸リリースに優れ、生体内で高いアスコルビン酸の生理機能を発揮することが期待されている。
一方、L−アスコルビン酸−2−リン酸エステルの脂肪酸エステルは、アスコルビン酸に比して酸化安定性には優れるものの、その構造上加水分解を受け易いという特徴があるため、水中油型組成物への安定した配合が困難である。また、加水分解により経皮吸収性が低下し、生体内において十分なアスコルビン酸の生理機能を発揮することができないという問題があった。
これまでに、L−アスコルビン酸−2−リン酸エステルの高級脂肪酸エステルの塩を含有する皮膚外用剤において、そのpHを7〜9に調整することにより該エステル塩の分解を抑制し、安定性および溶解性が改善された皮膚外用剤および化粧料に関する技術(特許文献1)や、該エステル塩に水溶性合成高分子化合物を併用し、該エステル塩の分解および減少を防いだ皮膚外用剤に関する技術(特許文献2)や、エデト酸を併用し、該エステル塩の酸化分解を抑制した皮膚外用剤に関する技術(特許文献3)が知られている。
【特許文献1】特開2003−176217号公報
【特許文献2】特開2005−187466号公報
【特許文献3】特開2007−099670号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、水中油型組成物におけるL−アスコルビン酸−2−リン酸エステルの脂肪酸エステルおよび/またはその塩の加水分解を抑制し、よって該エステルおよび/またはその塩の経時的な安定化が可能な水中油型乳化組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、かかる課題に鑑み、水中油型組成物におけるアスコルビン酸誘導体の安定配合について鋭意検討した結果、油相へのアスコルビン酸誘導体の分配を制御することによりアスコルビン酸誘導体の安定性を向上し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0005】
すなわち、本発明は、
[1](A)下記の一般式:
【化1】

(式中、Rは脂肪酸残基を表す)
で表されるL−アスコルビン酸−2−リン酸エステルの脂肪酸エステルおよび/またはその塩、
(B)0.07〜0.65のIOB値を有する液状油、
(C)界面活性剤、および
(D)水
を含有する水中油型組成物;
[2]一般式中、Rが炭素数8〜22個の直鎖または分岐型の飽和または不飽和アルキル基である前記[1]記載の水中油型組成物;
[3](B)液状油がホホバ油、ステアリン酸2−ヘキシルデシル、イソステアリン酸2−ヘキシルデシル、2−エチルヘキサン酸セチル、オリーブ油、マカデミアナッツ油、メドウフォーム油、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、ミリスチン酸イソプロピル、イソノナン酸イソノニル、リンゴ酸ジイソステアリル、トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル、テトラ2−エチルヘキサン酸ペンタエリスリトール、ヒマシ油およびセスキオレイン酸ソルビタンよりなる群から選択される1種または2種以上である前記[1]または[2]に記載の水中油型組成物;
[4](C)界面活性剤が8〜15のHLB値を有する非イオン性界面活性剤である前記[1]ないし[3]のいずれか1に記載の水中油型組成物;
[5](C)界面活性剤がモノステアリン酸ヘキサグリセリル、モノオレイン酸ヘキサグリセリル、ジステアリン酸デカグリセリル、ジイソステアリン酸デカグリセリル、モノステアリン酸POE(5)グリセリル、モノオレイン酸POE(5)グリセリル、モノラウリン酸ソルビタン、モノステアリン酸POE(6)ソルビタン、モノオレイン酸POE(6)ソルビタン、モノオレイン酸ポリエチレングリコール(6E.O)、ジイソステアリン酸ポリエチレングリコールおよびモノステアリン酸グリセリル(自己乳化型)よりなる群から選択される1種または2種以上である前記[1]ないし[4]のいずれか1に記載の水中油型組成物;および
[6]塩がアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩である前記[1]ないし[5]のいずれか1に記載の水中油型組成物
を提供する;
【発明の効果】
【0006】
本願の[1]に係る発明によれば、有効成分であるL−アスコルビン酸−2−リン酸エステルの脂肪酸エステルおよび/またはその塩の水中油型組成物における加水分解を抑制し、安定配合が可能となる。
【0007】
本願の[2]に係る発明によれば、[1]に係る発明と比して、特定のL−アスコルビン酸−2−リン酸エステルの脂肪酸エステルおよび/またはその塩について水中油型組成物における加水分解を抑制し、安定配合が可能となる。
【0008】
本願の[3]に係る発明によれば、[1]または[2]に係る発明と比して、特定の液状油を用いることによりL−アスコルビン酸−2−リン酸エステルの脂肪酸エステルおよび/またはその塩が乳化粒子の液状油−水界面からより液状油内側に分配される結果、界面での加水分解が起こりにくくなり、水中油型組成物における該エステルおよび/またはその塩の安定配合が可能となる。
【0009】
本願の[4]および[5]に係る発明によれば、[1]ないし[3]に係る発明と比して、より安定した水中油型乳化物を形成することができ、その結果として組成物の安定性を向上することができ、L−アスコルビン酸−2−リン酸エステルの脂肪酸エステルおよび/またはその塩のより安定な配合が可能となる。
【0010】
本願の[6]に係る発明によれば、[1]ないし[5]に係る発明と比して、水中油型組成物への製剤化が容易になる。
【0011】
本明細書中で用いる「IOB値」とは、化合物の有機値に対する化合物の無機値の比に対応する。すなわち、IOB=無機値/有機値として算出することができ、このうち、化合物の無機値を算出するためには、ヒドロキシル基を標準的な基として考慮し、それに対して100の値が与えられる。この100の値はアルカン中の炭素原子数の関数としての一連のアルカンに対する沸点曲線と、アルカンに対する直鎖状飽和第一級モノアルコール類似体についての沸点曲線の間の距離に対して相関する。また、化合物の有機値を算出するためには、メチレン基を単位として考慮し、炭素原子の数によって評価する。炭素原子または−CH、−CH−、もしくは=CH−基は20として計算する。水素原子は考慮しない。有機化合物における環、分枝、またはエチレン性もしくはアセチレン性不飽和基の存在は、"Prediction of Organic Compounds by a conceptional diagram", A. Fujita, Pharm. Bull, 2, pp163-173 (1954)の167頁に示されている有機値に従って、化合物の有機値を算出する際に考慮する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明は、水中油型組成物におけるL−アスコルビン酸−2−リン酸エステルの脂肪酸エステルまたはその塩の加水分解を抑制し、よって長期間にわたる該アスコルビン酸誘導体の効果の持続を目的として完成されたものである。
具体的には、アスコルビン酸誘導体は水分子と接触することにより分子中のエステル結合が加水分解され、経皮吸収性に劣る分解物や、酸化安定性に劣るアスコルビン酸が生成する。したがって、アスコルビン酸誘導体の加水分解を抑制することにより、優れた経皮吸収性で、アスコルビン酸と同様の効果を長期間にわたって発揮させることができる。
そこで、本発明の水中油型組成物においては、アスコルビン酸誘導体を水分子と接触させることなく液状油成分の深相に局在させる、すなわち、水−油状成分界面から離れて液状油成分の深相に分配させることによりアスコルビン酸誘導体の加水分解を抑制し、長期安定化を図るものであり、特定のIOB値を有する液状油とアスコルビン酸誘導体とを組合せることによりかかる液状油成分中への深相の分配を達成したものである。
【0013】
本発明は、1つの形態において、L−アスコルビン酸−2−リン酸エステルの脂肪酸エステルおよび/またはその塩、0.07〜0.65のIOB値を有する液状油、界面活性剤および水を含有する水中油型組成物を提供する。
本発明で用いるL−アスコルビン酸−2−リン酸エステルの脂肪酸エステルは、一般式:
【0014】
【化2】

(式中、Rは脂肪酸残基を表す)
【0015】
で表され、その塩も含まれる。式中のRは好ましくは炭素数8〜22個の直鎖または分岐型の飽和または不飽和アルキル基であり、より好ましくはラウリル、ミリスチル、パルミチル、ステアリル、2−ヘキシルデシルまたはイソステアリル基である。また、塩にはナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩または亜鉛塩などのようなアルカリ金属塩およびアルカリ土類金属の塩が含まれる。
本発明の水中油型組成物におけるL−アスコルビン酸−2−リン酸エステルの脂肪酸エステルの配合量は、組成物全体の重量に対して通常0.01〜20重量%であり、好ましくは0.01〜10重量%であり、より好ましくは0.1〜8重量%である。組成物中におけるアスコルビン酸誘導体の配合量が0.01重量%未満の場合にはアスコルビン酸誘導体の所期の効果を得ることができず、一方、20重量%を超える場合には組成物の安定性が損なわれるため好ましくない。
【0016】
本発明で用いる液状油は、0.07〜0.65のIOB値を有し、20℃にて液状形態を有する油であれば特に限定されるものではないが、ホホバ油、オリーブ油、ゴマ油、サザンカ油、サンフラワー油、ツバキ油、トウモロコシ油、マカデミアナッツ油、メドウフォーム油、アボガド油などの植物油、ステアリン酸2−ヘキシルデシル、イソステアリン酸2−ヘキシルデシル、ミリスチン酸イソセチル、2−エチルヘキサン酸セチル、ステアリン酸ブチル、イソステアリン酸イソプロピル、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、ミリスチン酸ブチル、ミリスチン酸イソプロピル、イソノナン酸イソノニル、リンゴ酸ジイソステアリル、ジカプリル酸プロピレングリコール、トリオクタン酸トリメチロールプロパン、トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル、テトラ2−エチルヘキサン酸ペンタエリスリトール、セスキオレイン酸ソルビタンなどが含まれ、好ましくはホホバ油、ステアリン酸2−ヘキシルデシル(IOB=0.09)、イソステアリン酸2−ヘキシルデシル、2−エチルヘキサン酸セチル、オリーブ油、マカデミアナッツ油、メドウフォーム油(IOB=0.16)、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン(IOB=0.16)、ミリスチン酸イソプロピル(IOB=0.18)、イソノナン酸イソノニル、リンゴ酸ジイソステアリル、トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル、テトラ2−エチルヘキサン酸グリセリル、ヒマシ油、セスキオレイン酸ソルビタンであり、これらを単独または二種以上組み合わせて用いることができる。本発明の水中油型組成物における液状油の配合量は、組成物全体の重量に対して通常1〜74重量%であり、好ましくは1〜60重量%であり、より好ましくは3〜45重量%である。組成物中における液状油の配合量が1重量%未満の場合にはアスコルビン酸誘導体を安定化することができず、一方、74重量%を超える場合には組成物の安定性が損なわれるため好ましくない。
【0017】
また、本発明で用いる界面活性剤は、通常8〜15、好ましくは8〜10のHLB値を有するものであれば特に限定されるものではないが、モノステアリン酸ヘキサグリセリル、モノオレイン酸ヘキサグリセリル、ジイソステアリン酸デカグリセリル、ジステアリン酸デカグリセリル、モノステアリン酸POE(5)グリセリル、モノオレイン酸POE(5)グリセリル、モノラウリン酸ソルビタン、モノステアリン酸POE(6)ソルビタン、モノオレイン酸POE(6)ソルビタン、POE(2)セチルエーテル(HLB=8)、テトラオレイン酸POE(6)ソルビット(HLB=8.5)、POE(2)ステアリルエーテル(HLB=8)、モノオレイン酸ポリエチレングリコール(6E.O)、ジイソステアリン酸ポリエチレングリコールなどが含まれ、好ましくはモノステアリン酸ヘキサグリセリル、モノオレイン酸ヘキサグリセリル、ジイソステアリン酸デカグリセリル、ジステアリン酸デカグリセリル、モノステアリン酸POE(5)グリセリル、モノオレイン酸POE(5)グリセリル、モノラウリン酸ソルビタン、モノステアリン酸POE(6)ソルビタン、モノオレイン酸POE(6)ソルビタン、モノオレイン酸ポリエチレングリコール(6E.O)、ジイソステアリン酸ポリエチレングリコールである。本発明の水中油型組成物に配合する界面活性剤の配合量は、組成物全体の重量に対して通常1〜20重量%であり、好ましくは1〜15重量%であり、より好ましくは2〜10重量%である。組成物中における界面活性剤の配合量が1重量%未満の場合には安定な水中油型組成物が形成されず、それによってアスコルビン酸誘導体を安定化することができず、一方、20重量%を超える場合には使用感が悪化し、また皮膚への刺激が増大するため好ましくない。
【0018】
また、本発明で用いる水には、例えば精製水、イオン交換水、蒸留水などが含まれ、これらを単独または二種以上組み合わせて用いることができる。本発明の水中油型組成物における水の配合量は、他の配合成分の残余量であり、自体公知の製法で油相の乳化に用いられるほか、高温安定性に劣るアスコルビン酸誘導体などの成分を配合する際に、その成分を少量の水に溶解または懸濁などして比較的温度が低下した乳化組成物に添加するのにも用いられる。
【0019】
また、本発明の水中油型組成物には、上記の必須成分に加えて本発明の効果を損なわない範囲において、通常の皮膚外用剤に配合される各種の成分、例えば、上記液状油を除く他の油剤、保湿剤、粘度調節剤、紫外線吸収剤、pH調整剤、中和剤、酸化防止剤、防腐剤、抗菌剤、薬剤、抽出液、香料、色素などを配合できる。
そのうち油剤としては、例えば、バチルアルコール、セチルアルコール、ベヘニルアルコール、ラノリン脂肪酸コレステリル、水素添加パーム核油、水素添加大豆リン脂質、ステアリン酸、ミツロウ、カルナウバロウ、キャンデリラロウ、セレシン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックス、ステアリルアルコール、オレイルアルコールなどが挙げられる。
また、保湿剤としては、例えば、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコールなどの多価アルコール、アミノ酸、核酸、コラーゲン、エラスチンなどのタンパク質、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸などのムコ多糖類などが挙げられる。
また、粘度調節剤としては、例えば、カルボキシビニルポリマー、キサンタンガム、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースなどが挙げられる。
また、紫外線吸収剤としては、例えば、安息香酸系紫外線吸収剤、アントラニル酸系紫外線吸収剤、サリチル酸系紫外線吸収剤、ケイ皮酸系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤やウロカニン酸、ウロカニン酸エチル、2−フェニル−5−メチルベンゾキサゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、4−tert−ブチル−4’−メトキシベンゾイルメタン、ビス(レゾルシニル)トリアジン、2,4−ビス[{4−(2−エチルヘキソロキシ)−2−ヒドロキシ}−フェニル]−6−(4−メトキシフェニル)−1,3,5−トリアジンなどが挙げられる。
また、pH調整剤としては、例えば、水酸化ナトリウム、乳酸、クエン酸、グリコール酸、コハク酸、酒石酸、dl−リンゴ酸、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素アンモニウムなどが挙げられる。
また、酸化防止剤としては、例えば、パラオキシ安息香酸メチル、α−トコフェロール、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソールなどが挙げられる。
さらに、防腐剤または抗菌剤としては、パラオキシ安息香酸エステル、フェノキシエタノール、安息香酸、サリチル酸、石炭酸、ソルビン酸、パラクロルメタクレゾール、ヘキサクロロフェン、塩化ベンザルコニウム、塩化クロルヘキシジン、トリクロロカルバニリド、感光素などが含まれる。
【0020】
本発明の水中油型組成物は、特に限定されるものではないが、皮膚外用剤、皮膚化粧料などとして用いることが好ましく、例えば、乳液、クリーム、ローション、ファンデーション、クレンジングフォーム、日焼け防止用または日焼け用の乳液またはクリームなどの種々の製品形態とすることが可能である。
【0021】
本発明は、別の形態において、(1)0.07〜0.65のIOB値を有する液状油および8〜15、好ましくは8〜10のHLB値を有する非イオン性界面活性剤を80℃にて加熱溶解し;
(2)水を80℃に加熱し;
(3)(1)の混合物を(2)の水に攪拌しながら添加して均一に乳化し;
(4)(3)で得られた乳化物に、少量の水に溶解したL−アスコルビン酸−2−リン酸エステルの脂肪酸エステルおよび/またはその塩を添加して均一に乳化した後、室温まで徐冷する
ことを特徴とするL−アスコルビン酸−2−リン酸エステルの脂肪酸エステルおよび/またはその塩を水中油型組成物に安定して配合する方法を提供し、当該方法に用いる各種成分は上記したものと同様のものを用いる。また、配合成分の添加、加熱溶解、乳化、徐冷方法は従来公知の方法で行うことができる。
この態様に係る発明によれば、有効成分として用いるL−アスコルビン酸−2−リン酸エステルの脂肪酸エステルおよび/またはその塩の水中油型組成物における加水分解を抑制し、安定配合が可能となる。
【実施例】
【0022】
保存安定性試験
表1に示した配合成分を用いて調製した実施例1〜4および比較例1〜3の水中油型組成物におけるL−アスコルビン酸−2−リン酸−パルミチン酸ナトリウムの保存安定性評価を行った。
【0023】
【表1】

【0024】
製法:1〜10の油相成分を80℃にて加熱溶解する。一方、13〜18の水相成分を80℃にて加熱溶解する。これに前記した油相成分を攪拌しながら加え、ホモジナイザーにより均一に乳化する。つづいて、溶解した11〜12を加え均一に乳化後、室温まで冷却して実施例1〜4および比較例1〜3の組成物を調製した。
【0025】
調製した実施例1〜4および比較例1〜3の組成物の保存安定性および有効成分残存率を以下の評価基準および方法で評価、定量した。
得られた結果を表1にまとめて示す。
<50℃1ヶ月の保存安定性評価>
[外観(色)]、[臭い]、[外観(分離)]
−:変化なし。 (目視評価にて、評価者10人中0人が変化ありと判断)
±:わずかに変化あり。(目視評価にて、評価者10人中1〜3人が変化ありと判断)
+:顕著な変化あり。(目視評価にて、評価者10人中10人が変化ありと判断)
[使用感]
○:問題なし。(評価者10人中0人がベタつきなど使用上の問題があると判断)
【0026】
<高速液体クロマトグラフィー測定条件>
カラム :資生堂社製 Capcell pack C8 4.6φmm=150mm
カラム温度 :50℃
溶離液 :0.2M過塩素酸Na水溶液/アセトニトリル=40/60
流速 :0.8ml/min
検出 :UV260nm
【0027】
<残存率>
残存率(%)=[50℃静置1ヶ月後の製剤中のL−アスコルビン酸−2−リン酸エステルの脂肪酸エステルの塩の濃度(g/L)]/[調製直後の製剤中の該塩の濃度(g/L)]
【0028】
【表2】

【0029】
製法:1〜15の油相成分を80℃にて加熱溶解する。一方、18〜23の水相成分を80℃にて加熱溶解する。これに前記した油相成分を攪拌しながら加え、ホモジナイザーにより均一乳化する。つづいて、溶解した16〜17を加え均一に乳化後、室温まで冷却する。
【0030】

【0031】
製法:1〜4の油相成分を80℃にて加熱溶解する。一方、7〜11の水相成分を80℃にて加熱溶解する。これに前記した油相成分を攪拌しながら加え、ホモジナイザーにより均一乳化する。つづいて、溶解した5〜6を加え均一に乳化後、室温まで冷却する。
【0032】

【0033】
製法:1〜4の油相成分を80℃にて加熱溶解する。一方、7〜8の水相成分を80℃にて加熱溶解する。これに前記した油相成分を攪拌しながら加え、ホモジナイザーにより均一乳化する。つづいて、溶解した5〜6を加え均一に乳化後、室温まで冷却する。
【0034】
上記の配合成分および製法にて製造した実施例9〜10の水中油型組成物について、上記の評価基準および方法で保存安定性およびアスコルビン酸誘導体の残存率を測定した結果、実施例1〜8と同様に良好な保存安定性および残存率が認められた。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明のL−アスコルビン酸−2−リン酸エステルの脂肪酸エステルを含む水中油型組成物およびそれを水中油型組成物に安定して配合する方法は、かかるアスコルビン酸誘導体が有する効果を有効に発揮し得る分野、例えば、化粧料、医薬品の分野において利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記の一般式:
【化1】

(式中、Rは脂肪酸残基を表す)
で表されるL−アスコルビン酸−2−リン酸エステルの脂肪酸エステルおよび/またはその塩、
(B)0.07〜0.65のIOB値を有する液状油、
(C)界面活性剤、および
(D)水
を含有する水中油型組成物。
【請求項2】
一般式中、Rが炭素数8〜22個の直鎖または分岐型の飽和または不飽和アルキル基である請求項1記載の水中油型組成物。
【請求項3】
(B)液状油がホホバ油、ステアリン酸2−ヘキシルデシル、イソステアリン酸2−ヘキシルデシル、2−エチルヘキサン酸セチル、オリーブ油、マカデミアナッツ油、メドウフォーム油、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、ミリスチン酸イソプロピル、イソノナン酸イソノニル、リンゴ酸ジイソステアリル、トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル、テトラ2−エチルヘキサン酸ペンタエリスリトール、ヒマシ油およびセスキオレイン酸ソルビタンよりなる群から選択される1種または2種以上である請求項1または2に記載の水中油型組成物。
【請求項4】
(C)界面活性剤が8〜15のHLB値を有する非イオン性界面活性剤である請求項1ないし3のいずれか1項に記載の水中油型組成物。
【請求項5】
(C)界面活性剤がモノステアリン酸ヘキサグリセリル、モノオレイン酸ヘキサグリセリル、ジステアリン酸デカグリセリル、ジイソステアリン酸デカグリセリル、モノステアリン酸POE(5)グリセリル、モノオレイン酸POE(5)グリセリル、モノラウリン酸ソルビタン、モノステアリン酸POE(6)ソルビタン、モノオレイン酸POE(6)ソルビタン、モノオレイン酸ポリエチレングリコール(6E.O)、ジイソステアリン酸ポリエチレングリコールおよびモノステアリン酸グリセリル(自己乳化型)よりなる群から選択される1種または2種以上である請求項1ないし4のいずれか1項に記載の水中油型組成物。
【請求項6】
塩がアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩である請求項1ないし5のいずれか1項に記載の水中油型組成物。

【公開番号】特開2009−249325(P2009−249325A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−98082(P2008−98082)
【出願日】平成20年4月4日(2008.4.4)
【出願人】(591074231)常盤薬品工業株式会社 (20)
【Fターム(参考)】