説明

皮膚外用剤

【課題】酵母抽出物配合の皮膚外用剤の保湿作用を高め、肌に優れた保湿感を与える皮膚外用剤を提供すること。
【解決手段】次の成分(A)及び(B):
(A)酵母抽出物、
(B)トリプトファン及びヒスチジンからなる群から選ばれる一種又は二種のアミノ酸
を包含するリポソームを含有する皮膚外用剤。
該皮膚外用剤を肌に適用することにより、肌に保湿感を与えることができる。この保湿感は、前記成分(B)に、さらに、バリン、ロイシン、イソロイシン、スレオニン、リジン、メチオニン及びフェニルアラニンからなる群から選ばれる一種又は二種以上のアミノ酸を配合することにより、さらに増強する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リポソームを含有した皮膚外用剤に関する。
【背景技術】
【0002】
肌をみずみずしくし、潤いを与えるために、従来より保湿作用を有する化合物を配合した皮膚外用剤が提供されてきている。酵母抽出物は安全性も高く、保湿作用を有する重要な化合物の一つである。しかしながら、酵母抽出物の保湿作用は必ずしも高くなく、酵母抽出物を配合した皮膚外用剤による、肌に対する保湿作用は充分とは言えない。酵母抽出物を配合した皮膚外用剤の先行技術としては、パック、クリーム、乳液等の例がある(特許文献1、2、3、4及び5参照)。
【0003】
一方、薬効成分の薬効を向上させるために薬効成分をリポソーム化する技術が知られているが、酵母抽出物を包含したリポソームについては知られていない。なお、本発明に係る化合物であるアミノ酸を包含したリポソームについては皮膚外用剤に関する技術が公開されている(例えば、特許文献6及び7参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2000−229827号公報
【特許文献2】特開2002−326922号公報
【特許文献3】特開2003−160463号公報
【特許文献4】特開2003−238378号公報
【特許文献5】特開2005−220084号公報
【特許文献6】特開平7−285827号公報
【特許文献7】特開平8−208423号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的は、酵母抽出物配合の皮膚外用剤の保湿作用を高め、肌に優れた保湿感を与える皮膚外用剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、酵母抽出物を特定のアミノ酸と共にリポソーム化し、皮膚外用剤中に含有させることにより上記課題が解決されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、次の成分(A)及び(B):
(A)酵母抽出物、
(B)トリプトファン及びヒスチジンからなる群から選ばれる一種又は二種のアミノ酸
を包含するリポソームを含有する皮膚外用剤である。
【0008】
本発明においては、前記成分(B)に、さらに、バリン、ロイシン、イソロイシン、スレオニン、リジン、メチオニン及びフェニルアラニンからなる群から選ばれる一種又は二種以上のアミノ酸を含有することにより、さらに保湿作用が増強するので好ましい実施態様である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、酵母抽出物と特定のアミノ酸をリポソームに包含させて、皮膚外用剤に配合することにより、肌に優れた保湿感を与える皮膚外用剤が得られる。本発明の皮膚外用剤は、毎日使用することによりさらに優れた保湿効果が発揮される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための最良の形態について詳述する。
【0011】
本発明において用いられる酵母抽出物における酵母としては、特に限定されないが、例えば、パン酵母、ビール酵母、ワイン酵母、清酒酵母等を挙げることができる。本発明において用いられる酵母抽出物としては、酵母の極性溶媒による抽出物、酵母を自己消化、酸加水分解又は酵素分解等により溶菌させた後ろ過したもの、あるいは前記溶菌液を乾燥し、それより極性溶媒で抽出したものを用いることができるが、これらに限定されることはなく、酵母抽出物の形態としては、溶媒を含んだ抽出液等であっても、溶媒を除去したペースト又は粉末のものであっても何れの形態でも使用可能である。なお、抽出に使用する極性溶媒としては、例えば、水、エタノール、1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、又はこれらの任意の混合溶媒が用いられる。
【0012】
酵母抽出物は、抽出された粗抽出物をそのまま、または、さらにろ過、濃縮等をおこなって精製抽出物として用いることができる。本発明においては、酵母抽出物として市販されているものを用いることができる。市販品としては、例えば、チトカタライザー(山川貿易株式会社製)、Biodynes(株式会社GSIクレオス製)等が挙げられる。前記チトカタライザーは、パン酵母の中の有効成分を自己消化法により処理し、抽出・濃縮・無臭化した水溶性抽出物である。本発明における酵母抽出物の配合量は、乾燥純分として皮膚外用剤全量中7.5×10−3〜1.0質量%が好ましい。
【0013】
本発明においては、必須成分として、トリプトファン及びヒスチジンからなる群から選ばれる一種又は二種のアミノ酸が用いられる。トリプトファン及びヒスチジンは異節環状アミノ酸(以下、(異)とも表す。)であり、いずれも公知の物質である。本発明における前記トリプトファン及びヒスチジンからなる群から選ばれる一種又は二種のアミノ酸の配合量は皮膚外用剤全量中7.75×10−7〜10.0質量%が好ましい。本発明においては、前記トリプトファン及びヒスチジンからなる群から選ばれる一種又は二種のアミノ酸に加えて、バリン、ロイシン、イソロイシン、スレオニン、リジン及びメチオニンからなる脂肪族アミノ酸(以下、(脂)とも表す。)、フェニルアラニンからなる芳香族アミノ酸(以下、(芳)とも表す。)を配合することができる。前記バリン、ロイシン、イソロイシン、スレオニン、リジン、メチオニン及びフェニルアラニンは、これらの群から選ばれる一種又は二種以上を用いることができるが、全てを配合することが好ましい。これらのアミノ酸を配合することにより、保湿作用をさらに増強させることができる。前記本発明におけるトリプトファン、ヒスチジン(異節環状アミノ酸)、バリン、ロイシン、イソロイシン、スレオニン、リジン、メチオニン(脂肪族アミノ酸)、フェニルアラニン(芳香族アミノ酸)の9種のアミノ酸は、いわゆる必須アミノ酸として知られている。なお、前記バリン、ロイシン、イソロイシン、スレオニン、リジン、メチオニン及びフェニルアラニンからなる群から選ばれる一種又は二種以上のアミノ酸を配合する場合においては、前記トリプトファン及びヒスチジンからなる群から選ばれる一種又は二種のアミノ酸と併せた量として皮膚外用剤全量中7.75×10−7〜10.0質量%であることが好ましい。
【0014】
本発明においては、アミノ酸として、必須成分である前記異節環状アミノ酸に、さらに、前記脂肪族アミノ酸及び/又は前記芳香族アミノ酸を配合する場合、異節環状アミノ酸量1質量部に対して、脂肪族アミノ酸量を6〜10質量部、芳香族アミノ酸を0.5〜2.0質量部の範囲で配合することが好ましい。
【0015】
本発明の皮膚外用剤において、酵母抽出物と前記アミノ酸はリン脂質を構成成分とするリポソームに包含させて皮膚外用剤中に含有される。リポソーム化により酵母抽出物と前記アミノ酸配合による保湿効果が顕著に発揮される。
【0016】
リポソーム化に用いられるリン脂質としては、化粧料、医薬部外品、医薬品等に使用されるものであれば特に限定されない。なお、本発明においてリン脂質とは、天然リン脂質、水素添加リン脂質等のリン脂質誘導体、合成リン脂質等を含めた概念のものである。リン脂質としては、例えば、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、スフィンゴミエリン等の天然リン脂質、天然リン脂質中の不飽和炭素鎖を水素により飽和とした水素添加リン脂質、ジオレイルホスファチジルコリン等の合成リン脂質等が挙げられる。本発明においては、大豆リン脂質、卵黄リン脂質等のリン脂質、水素添加大豆リン脂質、水素添加卵黄リン脂質等の水素添加リン脂質、合成リン脂質を用いることが好ましく、水素添加リン脂質がさらに好ましく、特に水素添加大豆リン脂質が好ましい。リン脂質は、その1種を単独で使用してもよく、又は2種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0017】
リポソームの安定化の目的でコレステロール、グルコース、高級アルコール、非イオン性界面活性剤、イオン性界面活性剤等の安定化剤を添加することができる。前記リポソームの安定化剤は、例えば、前記リポソーム調製の際にリン脂質等と共に混合され、リポソームの一構成成分とすることができる。
【0018】
前記非イオン界面活性剤の例としては、ソルビタン脂肪酸エステル類(ソルビタンモノステアレート、セスキオレイン酸ソルビタン等)、グリセリン脂肪酸類(モノステアリン酸グリセリン等)、プロピレングリコール脂肪酸エステル類(モノステアリン酸プロピレングリコール等)、硬化ヒマシ油誘導体、グリセリンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン(以下、POEという。)ソルビタン脂肪酸エステル類(POEソルビタンモノオレエート、POEソルビタンモノステアレート等)、POEソルビット脂肪酸エステル類(POEソルビットモノラウレート等)、POEグリセリン脂肪酸エステル類(POEグリセリンモノイソステアレート等)、ポリエチレングリコール(以下、PEGという。)脂肪酸エステル類(PEGモノオレエート、PEGジステアレート等)、POEアルキルエーテル類(POE2−オクチルドデシルエーテル等)、POEアルキルフェニルエーテル類(POEノニルフェニルエーテル等)、プルロニック型類、POE・ポリオキシプロピレン(以下、POPという。)アルキルエーテル類(POE・POP2−デシルテトラデシルエーテル等)、テトロニック類、POEヒマシ油・硬化ヒマシ油誘導体(POEヒマシ油、POE硬化ヒマシ油等)、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルグルコシド等を挙げることができる。非イオン界面活性剤は1種または2種以上が任意に選択されて配合される。
【0019】
酵母抽出物と前記アミノ酸を包含するリポソームの調製にあたっては、特に限定されることなく、超音波法、ホモミキサー法、薄膜法、注入法、界面活性剤除去法等既知の方法で調製することができる。例えば、リン脂質に、もし必要であれば多価アルコール、コレステロール等の安定化剤を加熱混合し、溶解する。その後、酵母抽出物及びアミノ酸を、例えば酵母抽出物液及びアミノ酸液の形で添加し、撹拌混合し、そこに水を加え、さらに撹拌混合する。その後、高圧ミキサー(例えばマイクロフルイダイザーのような高圧乳化機やAPVホモジナイザー等)で処理しリポソームを形成させる。次いで、加温した場合は、室温まで冷却してリポソーム液を得る。なお、高圧ミキサー処理する混合物が分散液の場合は、処理する前の工程で高速撹拌(例えば、ホモミキサーで3000rpm以上の撹拌速度)等により分散を高めることが好ましい。
【0020】
また、前記例示した製法において、リン脂質等の成分で、酵母抽出物及び/又はアミノ酸を除いたリポソームを調製し、次いで該リポソームと前記除いた成分(酵母抽出物及び/又はアミノ酸)、必要であればその他の包含成分をさらに混合して撹拌、好ましくは高速撹拌する等前記と同様にして調製することもできる。さらに、充分な量の酵母抽出物及び/又はアミノ酸が包含されていないリポソーム、あるいは酵母抽出物及び/又はアミノ酸が全く包含されていないリポソームを調製し、次いで必要量になるように、酵母抽出物及び/又はアミノ酸等を混合して前記同様にして調製することも可能である。これらの方法による酵母抽出物及びアミノ酸を包含したリポソームを調製するに当たっては、例えば、市販されている酵母抽出物及びアミノ酸が包含されていないリポソームを利用することが可能であり、これの利用により品質の安定した酵母抽出物及びアミノ酸高濃度包含のリポソームが効率的に得られる。
【0021】
市販されている前記酵母抽出物及びアミノ酸が包含されていないリポソームの例としては、例えばNIKKOL アクアソーム BH、同LA(以上、日光ケミカルズ社製)等が挙げられる。本発明においてはこれらの市販品をそのまま用いてもよいが、リポソームの濃度を高める等本発明の皮膚外用剤を調製するに当たって使いやすい仕様に変換して用いることも効率的な方法である。
【0022】
リポソームは、リン脂質の二分子膜の一重層あるいは多重層からなる球状の小胞体で、酵母抽出物及び/又はアミノ酸がリン脂質の膜中または小胞体内に取り込まれた状態(包含)となる。リポソームの粒子径は平均粒径30〜200nmであることが好ましい。中でも40〜100nmがより好ましい。平均粒径が200nmを超えると肌への浸透化が劣るようになり好ましくない。なお、リポソームの粒子径は、濃厚系粒径アナライザーFPAR−1000(大塚電子株式会社製、光散乱光度計)を用いて室温にて測定した。
【0023】
リポソームは、一般的には、水分散液として存在し、水に任意に希釈される。皮膚外用剤中においても皮膚外用剤中の水に任意に希釈されるが、本発明におけるリポソームとは、皮膚外用剤中に存在する任意に希釈されたリポソーム水分散液を含む概念である。
【0024】
本発明においては、酵母抽出物と前記アミノ酸をリポソームに包含させて皮膚外用剤中に含有されるが、前記リポソームとしては、酵母抽出物と前記アミノ酸の混合されたものが包含されたリポソームばかりでなく、皮膚外用剤中のリポソーム内に所定の酵母抽出物と前記アミノ酸が存在すればよい。例えば、酵母抽出物及び前記アミノ酸それぞれ別々に包含されたリポソームの、それぞれのリポソームを皮膚外用剤中に含有させても構わない。さらに、アミノ酸として混合物を用いる場合についても、混合されたアミノ酸を包含したリポソームばかりでなく、それぞれ一種のアミノ酸又は任意の種類混合されたアミノ酸を包含したリポソームを、それぞれを皮膚外用剤中に含有させても構わない。なお、酵母抽出物についても、二種以上を用いる場合はアミノ酸の場合と同じである。本発明においては、これらのリポソームの態様を全て含めたものとして、請求項1及び2の表現をとっている。すなわち、例えば、請求項1には、次の成分(A):
(A)酵母抽出物
を包含するリポソーム及び次の成分(B):
(B)トリプトファン及びヒスチジンからなる群から選ばれる一種又は二種のアミノ酸
を包含するリポソームを含有する皮膚外用剤が含まれるものである。本発明においては、酵母抽出物と前記アミノ酸の混合されたものが包含されたリポソームが保湿効果の点で好ましい。
【0025】
酵母抽出物及びアミノ酸を包含したリポソームを皮膚外用剤中に含有させるに当たっては、酵母抽出物及びアミノ酸が包含されていないか、又は所定量の酵母抽出物及びアミノ酸が包含されていないリポソームと、酵母抽出物及びアミノ酸を皮膚外用剤処方の一成分として配合して、皮膚外用剤調製時に酵母抽出物及びアミノ酸を所定量包含したリポソームを形成させても構わない。
【0026】
本発明の皮膚外用剤には、前記成分の他に、通常化粧品、医薬部外品、医薬品等の皮膚外用剤に用いられる他の成分を本発明の効果を損なわない範囲で適宜配合することができる。前記任意配合成分としては、成分中に含まれる物質が複数の成分に該当する場合がある記載であり、また前記と一部重なる記載も含まれるが、例えば、油分、界面活性剤、保湿剤、多価アルコール、増粘剤、水溶性高分子、皮膜形成剤、非水溶性高分子、油ゲル化剤、高分子エマルジョン、粉末、顔料、染料、レーキ、低級アルコール、糖類、紫外線吸収剤、前記以外のアミノ酸類、ビタミン類、美白剤,皮膚賦活剤,血行促進剤,抗脂漏剤,抗炎症剤(消炎剤)等の薬剤、植物抽出物、有機酸、有機アミン、金属イオン封鎖剤、pH調整剤、酸化防止剤、抗菌剤(防腐殺菌剤)、収斂剤、清涼剤、香料、水等を挙げることができる。
【0027】
前記任意配合成分のうち、油分の具体的な例としては、例えば、硬化油、モクロウ、カカオ脂、硬化ヒマシ油、オリーブ油、ヒマシ油、マカデミアナッツ油、月見草油等の油脂;ミツロウ、ラノリン、ゲイロウ、キャンデリラロウ、カルナウバロウ、イボタロウ、ホホバロウ、ホホバ油、液状ラノリン等のロウ類;固形パラフィン、セレシン、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレンワックス、流動パラフィン、スクワラン、ポリブテン、揮発性炭化水素等の炭化水素油;パルミチン酸セチル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、2−エチルヘキサン酸セチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、ステアリン酸オクチル、パルミチン酸オクチル、アジピン酸ジイソプロピル、セバチン酸ジ2−エチルヘキシル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、トリミリスチン酸グリセリル、トリ−2−エチルヘキサン酸グリセリル、トリオクタン酸グリセリル、トリイソステアリン酸グリセリル、ジイソステアリン酸ジグリセリル、トリイソステアリン酸ジグリセリル、テトラ2−エチルヘキサン酸ペンタエリトリット、ジオクタン酸ペンタエリトリット、トリ2−エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、リンゴ酸ジイソステアリル等のエステル油;ステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、ベへン酸、イソステアリン酸、オレイン酸等の高級脂肪酸;セチルアルコール、ステアリルアルコール、セトステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール、オクチルドデカノール等の高級アルコール、ジメチルポリシロキサン,メチルフェニルポリシロキサン,ジフェニルポリシロキサン等の鎖状ポリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン,デカメチルシクロペンタシロキサン,ドデカメチルシクロヘキサシロキサン等環状シリコーン、アミノ変性ポリシロキサン,アルキル変性ポリシロキサン,フッ素変性ポリシロキサン等の変性ポリシロキサン等を挙げることができる。油分は、1種または2種以上が任意に選択されて配合することができる。
【0028】
前記任意配合成分のうち、多価アルコールの具体的な例としては、例えば、グリセリン、1,3−ブチレングリコール(1,3−BG)、1,2−ペンタンジオール、エリスリトール、ソルビトール、キシリトール、マルチトール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール(DPG)、ジグリセリン等が挙げられる。多価アルコールは1種または2種以上が任意に選択されて配合される。
【0029】
前記任意配合成分のうち、保湿剤の具体的な例としては、例えば、乳酸塩(ナトリウム等)、ピロリドンカルボン酸ナトリウム(PCAソーダ)、尿素等を挙げることができる。保湿剤は1種または2種以上が任意に選択されて配合される。
【0030】
前記任意配合成分のうち、水溶性高分子の具体的な例としては、例えば、グアガム、クインスシード、カラギーナン、ガラクタン、アラビアガム、ペクチン、マンナン、デンプン、プルラン、キサンタンガム、カードラン、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、グリコーゲン、ヘパラン硫酸、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸ナトリウム、トラガントガム、ケラタン硫酸、コンドロイチン、ムコイチン硫酸、ヒドロキシエチルグアガム、カルボキシメチルグアガム、デキストラン、ケラト硫酸、ローカストビーンガム、サクシノグルカン、カロニン酸、キチン、キトサン、カルボキシメチルキチン、寒天、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、ポリアクリル酸ナトリウム、PEG等が挙げられる。水溶性高分子は1種または2種以上が任意に選択されて配合することができる。
【0031】
本発明の皮膚外用剤は前記成分を配合して常法にしたがって調製することができる。また、前記のように、皮膚外用剤の調製に際して、皮膚外用剤の調製と同時にリポソームを形成させてもよい。
【0032】
本発明皮膚外用剤の形態としては、特に限定されないが、例えば、乳液、クリーム、化粧水、パック等が挙げられる。また、剤型としては、特に限定されないが、ジェル、分散液、軟膏、外用液、クリーム等が挙げられ、特に、ジェル系とすることが保湿効果の点から好ましい。
【実施例】
【0033】
以下実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。配合量は、特に記載のないものは質量%である。実施例の説明に先立ち本発明で用いた効果試験方法について説明する。
【0034】
保湿効果
化粧品使用感官能評価経験のある女性パネラー10名によって効果テストを行った。パネラーは、洗顔後に試験品適量を顔に塗布し、塗布後2時間後の保湿感を官能で評価した。
【0035】
(評価基準)
◎:保湿を強く感じる。
○:保湿を感じる。
△:保湿をわずかに感じる。
×:保湿を感じない。
【0036】
[アミノ酸液の調製]
表1に掲げた成分を混合してアミノ酸液A〜Dを調製した。
【0037】
【表1】

【0038】
[酵母抽出物液の調製]
表2に掲げた成分からなる酵母抽出物液A(酵母抽出物乾燥純分として1.5質量%)を調製した。調製には、チトカタライザーBG30(山川貿易株式会社製)を使用した。
【0039】
【表2】

【0040】
[リポソームの調製]
表3に掲げた成分を用いて以下の方法でリポソームA〜Gを製造した。表3には使用した各成分の割合を質量%(配合量合計100質量%)で示している。なお、アミノ酸液A〜Dは、表1に示したもの、酵母抽出物液Aは表2に示したものである。水素添加大豆リン脂質、グリセリン及びDPGの一部を50℃で混合後、DPGの残部とコレステロールの混合物を添加し、50℃で加熱溶解した。その後、酵母抽出物液A及び該当するアミノ酸液を添加し、撹拌混合した。その後、精製水を加え100質量%とし撹拌混合した。最後に、高圧乳化機(「マイクロフルイダイザー」米国マイクロフルイディックス社製)で処理をしリポソームを得た。得られたリポソームの平均粒子径は45nmであった。なお、表3には、酵母抽出物液Aとアミノ酸液AまたはBを配合した非リポソーム組成物である非リポソームA及びBの成分を掲げた。この非リポソームは各成分を混合して調製した。
【0041】
【表3】

【0042】
(注)NIKKOLレシノールS−10(日光ケミカルズ社製)
【0043】
[皮膚外用剤の調製]
[実施例1〜4、比較例1〜5]
皮膚外用剤(ジェルクリーム)を表4に示す所定量の成分を加え、ジェル製剤とした。なお、リポソームA〜G及び非リポソームA、Bは表3に示したものである。
【0044】
【表4】

【0045】
上記実施例1〜4、比較例1〜5の皮膚外用剤(ジェルクリーム)につき効果試験を行い、その評価結果を表5に示した。
【0046】
【表5】

【0047】
表5から分かるように、酵母抽出物と、異節環状アミノ酸であるトリプトファン及び/又はヒスチジンを包含させたリポソームを配合した皮膚外用剤は、酵母抽出物のみを包含させたリポソームを配合した皮膚外用剤(比較例1)、トリプトファン又はヒスチジンのみを包含させたリポソームを配合した皮膚外用剤(比較例2、3)及び酵母抽出物とトリプトファン又はヒスチジンの非リポソーム物を配合した皮膚外用剤(比較例4、5)に比較して、相乗的に肌に優れた保湿感を与えることが分かる。さらに、アミノ酸としてトリプトファン及び/又はヒスチジンからなる異節環状アミノ酸に、バリン、ロイシン、イソロイシン、スレオニン、リジン及びメチオニンからなる脂肪族アミノ酸並びにフェニルアラニンからなる芳香族アミノ酸をさらに配合した皮膚外用剤(実施例4)は、肌に対する保湿感がさらに増強していることが分かる。
【0048】
[実施例5〜8]
以下、さらに本発明の表6の組成からなる皮膚外用剤の実施例(実施例5〜8(ジェルクリーム))を示す。なお、製造は実施例1〜4の方法に準じて行った。表6配合のリポソームH〜Kは、表3のものと同様にして調製した表7に示したものを用いた。なお、表7中のアミノ酸液A〜Dは表1に示したものであり、酵母抽出物液Aは表2に示したものである。
【0049】
【表6】

【0050】
【表7】

【0051】
(注)NIKKOLレシノールS−10(日光ケミカルズ社製)
【0052】
[実施例9〜17]
以下、さらに本発明の表8の組成からなる皮膚外用剤の実施例(実施例9〜17(ジェルクリーム))を示す。なお、製造は実施例1〜4の方法に準じて行った。表8配合のリポソームA、B、L〜Sは、表3に示したもの及び同様にして調製した表9に示したものを用いた。なお、表9中のアミノ酸液E〜Lは表10に示したものであり、酵母抽出物液Aは表2に示したものである。
【0053】
【表8】

【0054】
【表9】

【0055】
(注)NIKKOLレシノールS−10(日光ケミカルズ社製)
【0056】
【表10】

【0057】
[実施例18〜20]
以下、さらに本発明の皮膚外用剤を示す。なお、用いたアミノ酸及び酵母抽出物液は以下のようにして調製した。
【0058】
[アミノ酸の調製]
表11に掲げた成分を混合してアミノ酸M、Nを調製した。
【0059】
【表11】

【0060】
[酵母抽出物液の調製]
表12に掲げた成分を混合して酵母抽出物乾燥純分として0.4質量%(B)、2.0質量%(C)、4.0質量%(D)の酵母抽出物液B〜Dを調製した。なお、これらの酵母抽出物液はチトカタライザーBG30(山川貿易株式会社製)を用いて調製した。
【0061】
【表12】

【0062】
実施例18 化粧水
成分 配合量(質量%)
(1)1,3−BG 5.0
(2)DPG 2.0
(3)フェノキシエタノール 0.2
(4)精製水 残量
(5)水素添加大豆リン脂質 1.0
(6)1,3−BG 8.0
(7)コレステロール 0.5
(8)アミノ酸N 0.1
(9)酵母抽出物液B 25.0
(10)精製水 25.0
合計100.0
【0063】
(製法)
成分(5)〜(10)の混合溶液を50℃で高圧乳化機で処理し、30℃まで冷却して、アミノ酸及び酵母抽出物を包含したリポソームを調製した。成分(1)〜(4)を撹拌溶解し、前記リポソームを加え、撹拌混合して化粧水を得た。
【0064】
実施例19 化粧水
(1)1,3−BG 5.0
(2)DPG 2.0
(3)フェノキシエタノール 0.2
(4)精製水 残量
(5)水素添加大豆リン脂質 1.0
(6)1,3−BG 8.0
(7)コレステロール 0.5
(8)アミノ酸M 10.0
(9)酵母抽出物液C 25.0
(10)精製水 24.0
合計100.0
【0065】
(製法)
成分(5)〜(10)の混合溶液を50℃で高圧乳化機で処理し、30℃まで冷却して、アミノ酸及び酵母抽出物を包含したリポソームを調製した。成分(1)〜(4)を撹拌溶解し、前記リポソームを加え、撹拌混合して化粧水を得た。
【0066】
実施例20 クリーム
成分 配合量(質量%)
(1)流動パラフィン 5.0
(2)ステアリン酸2−エチルヘキシル 15.0
(3)ワセリン 3.0
(4)セチルアルコール 1.0
(5)ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート 1.0
(6)ポリオキシエチレン(20)オレイルエーテル 2.5
(7)DPG 5.0
(8)フェノキシエタノール 0.2
(9)精製水 残量
(10)水素添加大豆リン脂質 1.0
(11)1,3−BG 8.0
(12)コレステロール 0.5
(13)アミノ酸N 10.0
(14)酵母抽出物液D 25.0
(15)精製水 15.0
合計100.0
【0067】
(製法)
成分(10)〜(15)の混合溶液を50℃で高圧乳化機で処理し、30℃まで冷却して、アミノ酸及び酵母抽出物を包含したリポソームを調製した。成分(1)〜(9)を80℃で加熱混合溶解し、乳化し、30℃まで冷却し、前記リポソームを添加し、撹拌混合してクリームを得た。
【0068】
[実施例21〜22]
以下、さらに本発明の皮膚外用剤を示す。
【0069】
実施例21 ジェルクリーム
成分 配合量(質量%)
リポソーム(注1) 23.6
アミノ酸M 1.0
酵母抽出物液C 25.0
グリセリン 7.0
1,3−BG 5.0
DPG 3.0
フェノキシエタノール 0.5
カルボキシビニルポリマー 0.8
メチルポリシロキサン 3.0
ジカプリン酸ピリドキシン 0.1
テトラ2−ヘキシルデカン酸アスコルビル 0.2
アラントイン 0.1
水酸化カリウム 0.3
精製水 残余
合計100.0
【0070】
(注1)下表13からなる成分を混合し、50〜60℃で高速撹拌処理し、30℃まで冷却して調製されたリポソーム。
【0071】
【表13】

【0072】
(注2)NIKKOLレシノールS−10(日光ケミカルズ社製)
【0073】
[製法]
リポソーム(注1)にアミノ酸M及び酵母抽出物液Cを混合して50〜60℃で高速撹拌して、リポソーム(注1)に前記アミノ酸及び前記酵母抽出物を内包させた。一方、精製水にカルボキシビニルポリマーを加えて分散させ、水酸化カリウムを加えて中和してゲルを形成させた。次いで、このゲルに残りの成分を加え、さらに前記アミノ酸及び酵母抽出物を内包させたリポソームを添加して撹拌してジェルクリームを調製した。
【0074】
実施例22 ジェルクリーム
成分 配合量(質量%)
リポソーム(注1) 27.1
アミノ酸N 0.1
酵母抽出物B 25.0
POE(60)硬化ヒマシ油 0.1
グリセリン 3.0
1,3−BG 7.0
フェノキシエタノール 0.5
カルボキシビニルポリマー 0.7
テトラ2−ヘキシルデカン酸アスコルビル 0.2
苛性カリ 0.3
アラントイン 0.1
精製水 残余
合計100.0
【0075】
(注1)NIKKOL アクアソーム BH コンク(日光ケミカルズ社製)
【0076】
【表14】

【0077】
[製法]
実施例21と同様にしてジェルクリームを調製した。
【産業上の利用可能性】
【0078】
酵母抽出物と特定のアミノ酸を包含させたリポソームを配合した皮膚外用剤は、肌に相乗的な保湿効果を与え、例えば、医薬部外品を含む化粧品、医薬品等の種々の分野に応用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)及び(B):
(A)酵母抽出物、
(B)トリプトファン及びヒスチジンからなる群から選ばれる一種又は二種のアミノ酸
を包含するリポソームを含有する皮膚外用剤。
【請求項2】
成分(B)に、さらに、バリン、ロイシン、イソロイシン、スレオニン、リジン、メチオニン及びフェニルアラニンからなる群から選ばれる一種又は二種以上のアミノ酸を含有する請求項1記載の皮膚外用剤。

【公開番号】特開2009−46421(P2009−46421A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−213655(P2007−213655)
【出願日】平成19年8月20日(2007.8.20)
【出願人】(502024694)ドクタープログラム株式会社 (8)
【Fターム(参考)】