説明

皮膚外用剤

【課題】顔面の皮膚に優れたハリ感を付与し、保存安定性にも優れた保湿クリーム等の皮膚外用剤を提供すること。
【解決手段】下記成分(A)〜(E)を含有し、乳化組成物からなることを特徴とする皮膚外用剤。
(A)カルナウバロウ
(B)油分
(C)界面活性剤
(D)増粘剤
(E)水

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は皮膚外用剤に関する。さらに詳しくは、通常の皮膜剤を使用せずに、顔面の皮膚に十分なハリ感を与え、かつ保存安定性にも優れた皮膚外用剤に関する。本発明の皮膚外用剤は保湿クリーム等として顔面に好ましく塗布される。
【背景技術】
【0002】
顔面に塗布する保湿クリーム等の皮膚外用剤においては、顔面の皮膚にハリ感を与えるために、通常、ポリビニルアルコール等の皮膜形成能力がある高分子からなる皮膜剤が配合されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコールから選ばれる水溶性皮膜形成剤と特定の水溶性保湿剤と特定のエステル化合物とを配合する化粧料が開示されており、塗布時ののび広がりが良好で、保湿効果に優れ、ツヤ感やハリ感の付与に優れる化粧料が詳述されている。
【0004】
しかしながら、ポリビニルアルコール等の水溶性皮膜形成剤を配合することによって皮膚のハリ感を付与しようとすると、ハリ感を十分に感じられる量を添加した場合、肌への塗布時によれやベタツキが生じるという好ましくない現象が生じる。顔面に塗布する化粧料は特に繊細な使用感が要求されるため、このような好ましくない現象は化粧料の設計において重要な課題として解決しなければならない。
【0005】
一方、ポリビニルアルコール等の水溶性皮膜形成剤を配合することによって、顔面の皮膚にハリ感を付与しようとすると、長期保存下での安定性に劣る(例えば水溶性皮膜形成剤が分離したりする)、その他の添加成分の安定性にも影響する等の問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−269723号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者等は上述の事情に鑑み、皮膚にハリ感を付与する化粧料を鋭意研究した結果、ポリビニルアルコール等の水溶性皮膜形成剤を配合せずに、特定量のカルナウバロウを配合することによって、ハリ感を十分に感じられる量を添加した場合であっても、肌への塗布時によれやベタツキが生じることがないことを見出して本発明を完成するに至った。さらに、長期保存下においても、製品の安定性に劣ることなく、優れた保全性が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
本発明は、ハリ感と保存安定性に優れた皮膚外用剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、本発明は、下記成分(A)〜(E)を含有し、乳化組成物からなることを特徴とする皮膚外用剤を提供するものである。
(A)カルナウバロウ
(B)油分
(C)界面活性剤
(D)増粘剤
(E)水
【0010】
また、本発明は、皮膚外用剤全量に対して、前記成分(A)のカルナウバロウの配合量が0.01〜10質量%であり、前記成分(B)の油分の配合量が1〜40質量%であり、前記成分(C)の界面活性剤の配合量が0.01〜10質量%であり、(D)の増粘剤の配合量が〜1質量%であり、前記成分(E)の配合量が30重量%〜90質量%であることを特徴とする上記の皮膚外用剤を提供するものである。
【0011】
さらに、本発明は、前記成分(A)のカルナウバロウの配合量が2〜10質量%の場合に、カルナウバロウの配合量が前記成分(B)の全量に対して1〜8.5質量%であることを特徴とする請求項1又は2記載の皮膚外用剤を提供するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、顔面の皮膚に自然で十分なハリ感を付与できる皮膚外用剤を提供できる。本発明の皮膚外用剤は、ポリビニルアルコール等の水溶性高分子皮膜剤を配合した従来製品の欠点であった、塗布のよれやべたつきを生じ難い。さらに、本発明の皮膚外用剤は保存安定性にも優れている。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<A カルナウバロウ>
本発明に使用するカルナウバロウは公知の化粧料成分であり、通常は固形ワックスとして使用される、南米、特にブラジル北部の自生または栽培されている高さ約10mのカルナウバヤシの葉の葉柄から採取される硬くてもろいロウである。C20〜C32の脂肪酸とC28とC34のアルコールからなるエステルであり、特にヒドロキシ酸エステルが多い。融点は80〜86℃と植物ロウのうちでは高い。
カルナウバロウは化粧料に使用する主な目的は、口紅などのスティック状製品のつや出し、耐温度性向上などである。
本発明においては、化粧料公知成分として多数存在するロウ(固形ワックス)のうち、特に皮膚外用剤のハリ感付与剤として、特定化合物のカルナウバロウが限定して使用され、本発明の皮膚外用剤に配合されて本発明の効果を発揮する。
したがって、本発明においては、通常配合されるポリビニルアルコール等の水溶性高分子皮膜剤(ハリ感付与剤)は配合しないことを特徴としている。
【0014】
<カルナウバロウの配合量>
皮膚外用剤に配合する配合量は、皮膚外用剤全量に対して0.01〜10質量%が好ましく、さらに好ましくは0.1〜5質量%であり、最も好ましくは1.5〜2.5質量%である。
0.01質量%未満ではハリ感の効果に乏しい。また、10質量%を超えて配合すると、ハリ感が強くなりすぎて皮膚がつっぱる感じになってしまうので好ましくない。
カルナウバロウ配合量を多くするとハリ感付与には寄与するが、製品保存中に結晶化してブツが発生する場合がある。
したがって、皮膚外用剤全量に対して、2.0質量%未満(0.1〜2.0質量%未満の配合量)が好ましい。1.5%未満の配合量であれば、皮膚外用剤の保存中に、カルナウバロウの結晶が成長し、経時でブツ(カルナウバロウの結晶)が発生することはない。
なお、カルナウバロウを2.0〜10質量%の高配合する場合には、結晶の成長を阻止しブツが生成しないように、成分Bの油分の配合量に対してカルナウバロウを8.5質量%以下の配合量にする必要があることが本発明者等により見出された。
本発明は、カルナウバロウと油分の配合量を上記の如く調整することによって、カルナウバロウが製品保存下で結晶化せずに、製品の保存安定性が増大する。
さらに、以下に説明する各必須成分の配合と配合量によって、他の配合成分の保存安定性も向上する。
【0015】
<B 油分>
本発明に使用する油分は特に限定されない。例えば、液体油脂としては、例えば、アボカド油、ツバキ油、マカデミアナッツ油、トウモロコシ油、オリーブ油、ナタネ油、卵黄油、ゴマ油、パーシック油、小麦胚芽油、サザンカ油、ヒマシ油、アマニ油、サフラワー油、綿実油、エノ油、大豆油、落花生油、茶実油、カヤ油、コメヌカ油、シナギリ油、日本キリ油、ホホバ油、胚芽油、トリグリセリン等が挙げられる。
固体油脂としては、例えば、カカオ脂、ヤシ油、硬化ヤシ油、パーム油、パーム核油、モクロウ核油、硬化油、モクロウ、硬化ヒマシ油等が挙げられる。
炭化水素油としては、例えば、流動パラフィン、オゾケライト、スクワラン、プリスタン、パラフィン、スクワレン、ワセリン等が挙げられる。
高級脂肪酸としては、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、オレイン酸、ウンデシレン酸、イソステアリン酸、リノール酸、リノレイン酸、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)等が挙げられる。
高級アルコールとしては、例えば、直鎖アルコール(例えば、ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、ミリスチルアルコール、オレイルアルコール、セトステアリルアルコール等);分枝鎖アルコール(例えば、モノステアリルグリセリンエーテル(バチルアルコール)、2−デシルテトラデシノール、ラノリンアルコール、コレステロール、フィトステロール、ヘキシルドデカノール、イソステアリルアルコール、オクチルドデカノール等)等が挙げられる。
エステル油としては、例えば、ミリスチン酸イソプロピル、オクタン酸セチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸ミリスチル、オレイン酸デシル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、酢酸ラノリン、ステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソセチル、12−ヒドロキシステアリン酸コレステリル、ジ−2−エチルヘキサン酸エチレングリコール、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル、モノイソステアリン酸N−アルキルグリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、リンゴ酸ジイソステアリル、ジ−2−ヘプチルウンデカン酸グリセリン、トリ−2−エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラ−2−エチルヘキサン酸ペンタエリスリトール、トリ−2−エチルヘキサン酸グリセリン、トリオクタン酸グリセリン、トリイソパルミチン酸グリセリン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、セチル2−エチルヘキサノエート、2−エチルヘキシルパルミテート、トリミリスチン酸グリセリン、トリ−2−ヘプチルウンデカン酸グリセライド、ヒマシ油脂肪酸メチルエステル、オレイン酸オレイル、アセトグリセライド、パルミチン酸2−ヘプチルウンデシル、アジピン酸ジイソブチル、N−ラウロイル−L−グルタミン酸−2−オクチルドデシルエステル、アジピン酸ジ−2−ヘプチルウンデシル、エチルラウレート、セバシン酸ジ−2−エチルヘキシル、ミリスチン酸2−ヘキシルデシル、パルミチン酸2−ヘキシルデシル、アジピン酸2−ヘキシルデシル、セバシン酸ジイソプロピル、コハク酸2−エチルヘキシル、クエン酸トリエチル等が挙げられる。
シリコーン油としては、例えば、鎖状ポリシロキサン(例えば、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン等);環状ポリシロキサン(例えば、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン等)、3次元網目構造を形成しているシリコーン樹脂、シリコーンゴム、各種変性ポリシロキサン(アミノ変性ポリシロキサン、ポリエーテル変性ポリシロキサン、アルキル変性ポリシロキサン、フッ素変性ポリシロキサン等)等が挙げられる。
なお、最も好ましい油分は、テトラ2−エチルへキサン酸ペンタエリスリット(RA−PE−408 日本精化株式会社製)である。この特定油分の場合にカルナウバロウの結晶成長を抑制し易く、ブツの発生が効率よく防止される。
【0016】
<油分の配合量>
皮膚外用剤に配合する配合量は、皮膚外用剤全量に対して1〜40質量%が好ましく、さらに好ましくは5〜30質量%であり、最も好ましくは10〜25質量%である。油分は一種または二種以上が配合される。
【0017】
<C 界面活性剤>
本発明の使用する界面活性剤は特に限定されない。
アニオン界面活性剤としては、脂肪酸セッケン(例えば、ラウリン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム等);高級アルキル硫酸エステル塩(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸カリウム等);アルキルエーテル硫酸エステル塩(例えば、POE−ラウリル硫酸トリエタノールアミン、POE−ラウリル硫酸ナトリウム等);N−アシルサルコシン酸(例えば、ラウロイルサルコシンナトリウム等);高級脂肪酸アミドスルホン酸塩(例えば、N−ミリストイル−N−メチルタウリンナトリウム、ヤシ油脂肪酸メチルタウリンナトリウム、ラウリルメチルタウリンナトリウム等);リン酸エステル塩(POE−オレイルエーテルリン酸ナトリウム、POE−ステアリルエーテルリン酸等);スルホコハク酸塩(例えば、ジ−2−エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム、モノラウロイルモノエタノールアミドポリオキシエチレンスルホコハク酸ナトリウム、ラウリルポリプロピレングリコールスルホコハク酸ナトリウム等);アルキルベンゼンスルホン酸塩(例えば、リニアドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、リニアドデシルベンゼンスルホン酸トリエタノールアミン、リニアドデシルベンゼンスルホン酸等);高級脂肪酸エステル硫酸エステル塩(例えば、硬化ヤシ油脂肪酸グリセリン硫酸ナトリウム等);N−アシルグルタミン酸塩(例えば、N−ラウロイルグルタミン酸モノナトリウム、N−ステアロイルグルタミン酸ジナトリウム、N−ミリストイル−L−グルタミン酸モノナトリウム等);POE−アルキルエーテルカルボン酸;POE−アルキルアリルエーテルカルボン酸塩;α−オレフィンスルホン酸塩;高級脂肪酸エステルスルホン酸塩;二級アルコール硫酸エステル塩;高級脂肪酸アルキロールアミド硫酸エステル塩;ラウロイルモノエタノールアミドコハク酸ナトリウム;N−パルミトイルアスパラギン酸ジトリエタノールアミン;カゼインナトリウム等が挙げられる。
【0018】
カチオン界面活性剤としては、例えば、アルキルトリメチルアンモニウム塩(例えば、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム等);アルキルピリジニウム塩(例えば、塩化セチルピリジニウム等);塩化ジステアリルジメチルアンモニウムジアルキルジメチルアンモニウム塩;塩化ポリ(N,N’−)ジメチル−3,5−メチレンピペリジニウム);アルキル四級アンモニウム塩;アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩;アルキルイソキノリニウム塩;ジアルキルモリホニウム塩;POE−アルキルアミン;アルキルアミン塩;ポリアミン脂肪酸誘導体;アミルアルコール脂肪酸誘導体;塩化ベンザルコニウム;塩化ベンゼトニウム等が挙げられる。
【0019】
両性界面活性剤としては、例えば、イミダゾリン系両性界面活性剤(例えば、2−ウンデシル−N,N,N−(ヒドロキシエチルカルボキシメチル)−2−イミダゾリンナトリウム、2−ココイル−2−イミダゾリニウムヒドロキサイド−1−カルボキシエチロキシ2ナトリウム塩等);ベタイン系界面活性剤(例えば、2−ヘプタデシル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、アルキルベタイン、アミドベタイン、スルホベタイン等)等が挙げられる。
【0020】
親油性非イオン界面活性剤としては、例えば、ソルビタン脂肪酸エステル類(例えば、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンモノイソステアレート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンセスキオレエート、ソルビタントリオレエート、ペンタ−2−エチルヘキシル酸ジグリセロールソルビタン、テトラ−2−エチルヘキシル酸ジグリセロールソルビタン等);グリセリンポリグリセリン脂肪酸類(例えば、モノ綿実油脂肪酸グリセリン、モノエルカ酸グリセリン、セスキオレイン酸グリセリン、モノステアリン酸グリセリン、α,α’−オレイン酸ピログルタミン酸グリセリン、モノステアリン酸グリセリンリンゴ酸等);プロピレングリコール脂肪酸エステル類(例えば、モノステアリン酸プロピレングリコール等);硬化ヒマシ油誘導体;グリセリンアルキルエーテル等が挙げられる。
【0021】
親水性非イオン界面活性剤としては、例えば、POE−ソルビタン脂肪酸エステル類(例えば、POE−ソルビタンモノオレエート、POE−ソルビタンモノステアレート、POE−ソルビタンモノオレート、POE−ソルビタンテトラオレエート等);POEソルビット脂肪酸エステル類(例えば、POE−ソルビットモノラウレート、POE−ソルビットモノオレエート、POE−ソルビットペンタオレエート、POE−ソルビットモノステアレート等);POE−グリセリン脂肪酸エステル類(例えば、POE−グリセリンモノステアレート、POE−グリセリンモノイソステアレート、POE−グリセリントリイソステアレート等のPOE−モノオレエート等);POE−脂肪酸エステル類(例えば、POE−ジステアレート、POE−モノジオレエート、ジステアリン酸エチレングリコール等);POE−アルキルエーテル類(例えば、POE−ラウリルエーテル、POE−オレイルエーテル、POE−ステアリルエーテル、POE−ベヘニルエーテル、POE−2−オクチルドデシルエーテル、POE−コレスタノールエーテル等);プルロニック型類(例えば、プルロニック等);POE・POP−アルキルエーテル類(例えば、POE・POP−セチルエーテル、POE・POP−2−デシルテトラデシルエーテル、POE・POP−モノブチルエーテル、POE・POP−水添ラノリン、POE・POP−グリセリンエーテル等);テトラPOE・テトラPOP−エチレンジアミン縮合物類(例えば、テトロニック等);POE−ヒマシ油硬化ヒマシ油誘導体(例えば、POE−ヒマシ油、POE−硬化ヒマシ油、POE−硬化ヒマシ油モノイソステアレート、POE−硬化ヒマシ油トリイソステアレート、POE−硬化ヒマシ油モノピログルタミン酸モノイソステアリン酸ジエステル、POE−硬化ヒマシ油マレイン酸等);POE−ミツロウ・ラノリン誘導体(例えば、POE−ソルビットミツロウ等);アルカノールアミド(例えば、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド、ラウリン酸モノエタノールアミド、脂肪酸イソプロパノールアミド等);POE−プロピレングリコール脂肪酸エステル;POE−アルキルアミン;POE−脂肪酸アミド;ショ糖脂肪酸エステル;アルキルエトキシジメチルアミンオキシド;トリオレイルリン酸等が挙げられる。
【0022】
<界面活性剤の配合量>
皮膚外用剤に配合する配合量は、皮膚外用剤全量に対して0.01〜10質量%が好ましく、さらに好ましくは0.1〜7.5質量%であり、最も好ましくは1〜5質量%である。界面活性剤は一種または二種以上が配合される。
【0023】
<D 増粘剤>
本発明に使用する増粘剤は特に限定されない。増粘剤としては、例えば、アラビアガム、カラギーナン、カラヤガム、トラガカントガム、キャロブガム、クインスシード(マルメロ)、カゼイン、デキストリン、ゼラチン、ペクチン酸ナトリウム、アラギン酸ナトリウム、メチルセルロース、エチルセルロース、CMC、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリアクリル酸ナトリウム、カルボキシビニルポリマー、ローカストビーンガム、グアーガム、タマリントガム、ジアルキルジメチルアンモニウム硫酸セルロース、キサンタンガム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、ベントナイト、ヘクトライト、ケイ酸AlMg(ビーガム)、ラポナイト、無水ケイ酸等が挙げられる。
【0024】
<増粘剤の配合量>
皮膚外用剤に配合する配合量は、皮膚外用剤全量に対して3質量%未満が好ましく、さらに好ましくは0.01〜1.0質量%であり、最も好ましくは0.01〜1.0質量%である。増粘剤は一種または二種以上が配合される。
なお、増粘剤は1.0質量%を超えて配合するとべたつきを生じる場合がある。また、0.01質量%未満であると、経時での製剤安定性が維持できないなどの問題が生じることがある。
【0025】
<E 水及び配合量>
水は精製水やイオン交換水を使用するのが好ましい。皮膚外用剤に配合する配合量は、皮膚外用剤全量に対して30〜90重量%が好ましく、さらに好ましくは35〜85質量%であり、最も好ましくは40〜80質量%である。
製品が、水中油型乳化組成物か油中水型乳化組成物かによって、水の配合量は適宜決定される。
【0026】
本発明の皮膚外用剤には上記した必須構成成分の他に通常化粧料等の皮膚外用剤に用いられる他の成分、例えば、粉末成分、保湿剤、紫外線吸収剤、金属イオン封鎖剤、低級アルコール、多価アルコール、糖、アミノ酸、有機アミン、高分子エマルジョン、pH調整剤、皮膚栄養剤、ビタミン、酸化防止剤、酸化防止助剤、香料等を必要に応じて適宜配合し、目的とする剤型に応じて常法により製造することが出来る。本発明は、水中油型乳化組成物が好ましく、製品としては、顔面に使用して皮膚にハリを付与する保湿クリームが好ましい。
【実施例】
【0027】
以下実施例によって本発明をさらに具体的に説明する。本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。実施例における配合量は特に断りのない限り質量%で示す。
【0028】
表1に示す処方にて、常法により保湿クリーム(水中油型乳化組成物)を製造し、使用性と保存安定性の試験を行った。
<使用性>
表1の保湿クリームを顔面に使用する実使用試験をパネラー12人により行い、使用後のハリ感について評価した。判定に関しては以下の通りポイントを算出し、合計ポイントで判定した。
【0029】
「判定基準」
◎:合計ポイントが10以上
○:合計ポイントが0〜9
△:合計ポイントが−9〜−1
×:合計ポイントが−10以下
【0030】
「評価基準」
「実施例:カルナウバロウ配合クリーム」
塗布後にハリ感を非常に感じる :+3 (3名)
塗布後にハリ感を感じる :+1 (5名)
塗布後にハリ感は分からない : 0 (4名)
塗布後にハリ感をやや感じない :-1 (0名)
塗布後にハリ感を全く感じない :-3 (0名)

合計14ポイント
【0031】
「比較例:カルナウバロウ非配合クリーム」
塗布後にハリ感を非常に感じる :+3 (2名)
塗布後にハリ感を感じる :+1 (5名)
塗布後にハリ感は分からない : 0 (3名)
塗布後にハリ感をやや感じない :-1 (2名)
塗布後にハリ感を全く感じない :-3 (0名)

合計:9ポイント
【0032】
表1の保湿クリームを顔面に使用する実使用試験をパネラー12人により行い、使用時のよれやべたつきについて評価した。判定に関しては以下の通りポイントを算出し、合計ポイントで判定した。
【0033】
「判定基準」
◎:合計ポイントが10以上
○:合計ポイントが0〜9
△:合計ポイントが−9〜−1
×:合計ポイントが−10以下
【0034】
「実施例:カルナウバロウ配合クリーム」
塗布後によれやべたつきを全く感じない :+3 (1名)
塗布時によれやべたつきをやや感じない :+1 (4名)
塗布時によれやべたつきは分からない : 0 (3名)
塗布時によれやべたつきをやや感じる :-1 (3名)
塗布時によれやべたつきを非常に感じる :-3 (1名)

合計:1ポイント
【0035】
「比較例:カルナウバロウ非配合クリーム」
塗布後によれやべたつきを全く感じない :+3 (0名)
塗布時によれやべたつきをやや感じない :+1 (4名)
塗布時によれやべたつきは分からない : 0 (3名)
塗布時によれやべたつきをやや感じる :-1 (5名)
塗布時によれやべたつきを非常に感じる :-3 (0名)

合計:-1ポイント
【0036】
<保存安定性>
カルナウバロウの配合量を多くするとハリ感付与には寄与するが、製品保存中に結晶化してブツが発生する場合がある。したがって、カルナウバロウの配合量と、油分の配合量並びに油分の種類の選択に、本発明の困難性が存在する。カルナウバロウの保存安定性は下記により判定した。
【0037】
(1)製品製造直後
○:黒板上に塗布した場合に、ブツが目視により確認されない。
△:黒板上に塗布した場合に、ブツが目視により僅かに確認される。
×:黒板上に塗布した場合に、ブツが目視により明確に確認される。
【0038】
(2)50℃、4週間の製品保存後の結晶成長
○:カルナウバロウの結晶の成長が偏向顕微鏡で観察されない。
×:カルナウバロウの結晶の成長が偏向顕微鏡で観察された。
【0039】
【表1】

表中の効果については、「0028」での合計ポイントから判定し、「-10以下:×、-9〜-1:△、0〜9:○、10以上:◎」として表記した。

「表1」の結果から、本発明の実施例は、優れたハリ感を与えると同時に、塗布時のよれやべたつき等、使用感を損ねることなく皮膚外用剤を製造することができることがわかる。
一方、カルナウバロウ、油分の配合量を工夫することで、優れた使用感を維持しつつ、保存安定性にも極めて優れた皮膚外用剤を作成することができる。
【0040】
以下に本発明の皮膚外用剤の処方例を挙げる。何れの実施例も、優れたハリ感を与え、塗布時のよれやべたつきを防止できるという優れた効果を有する。また、カルナウバロウや他の配合成分の保存安定性にも極めて優れた製品である。
【0041】
〔実施例4:水中油型乳化保湿クリーム〕
配合成分 質量%
(E)精製水 残余
濃グリセリン 8
ブチレングリコール 9
マルチトール液 0.75
エリスリトール 0.1
ポリエチレングリコール1500 2
(D)キサンタンガム 0.01
(A)カルナウバロウ 1.5
(C)ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体 0.5
(C)イソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル 1.5
(C)親油型モノステアリン酸グリセリル 1.6
(B)ベヘニルアルコール 1.7
(B)バチルアルコール 1.7
(B)硬化油 1
(B)ホホバ油 1.5
(B)トリイソステアリン酸グリセリル 0.8
(B)テトラ2−エチルへキサン酸ペンタエリスリット 1
(B)α−オレフィンオリゴマー 5
(B)メチルポリシロキサン 5
トラネキサム酸 1
グリチルリチン酸ジカリウム 0.05
フェノキシエタノール 0.35
クエン酸 0.03
クエン酸ナトリウム 0.07
ピロ亜硫酸ナトリウム 0.003

製造方法:油溶性成分を油分に溶解後、70℃に加温した(油相)。他方、水溶性成分を精製水に溶解し、70℃に加温した(水相)。この水相に前述の油相を添加攪拌混合、室温まで冷却した。
【0042】
〔実施例5:水中油型乳化保湿クリーム〕
配合成分 質量%
(E)精製水 残余
濃グリセリン 8
ブチレングリコール 9
マルチトール液 0.75
エリスリトール 0.1
ポリエチレングリコール1500 2
(D)キサンタンガム 0.01
(A)カルナウバロウ 1.5
(C)ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体 0.5
(C)イソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル 1.5
(C)親油型モノステアリン酸グリセリル 1.6
(B)ベヘニルアルコール 1.7
(B)バチルアルコール 1.7
(B)硬化油 1
(B)ホホバ油 1.5
(B)トリイソステアリン酸グリセリル 0.8
(B)テトラ2−エチルへキサン酸ペンタエリスリット 2.5
(B)α−オレフィンオリゴマー 5
(B)メチルポリシロキサン 5
トラネキサム酸 1
グリチルリチン酸ジカリウム 0.05
フェノキシエタノール 0.35
クエン酸 0.03
クエン酸ナトリウム 0.07
ピロ亜硫酸ナトリウム 0.003

製造方法:油溶性成分を油分に溶解後、70℃に加温した(油相)。他方、水溶性成分を精製水に溶解し、70℃に加温した(水相)。この水相に前述の油相を添加攪拌混合、室温まで冷却した。
【0043】
〔実施例6:水中油型乳化保湿クリーム〕
配合成分 質量%
(E)精製水 残余
濃グリセリン 8
ブチレングリコール 9
マルチトール液 0.75
エリスリトール 0.1
ポリエチレングリコール1500 2
(D)キサンタンガム 0.01
(A)カルナウバロウ 1.5
(C)ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体 0.5
(C)イソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル 1.5
(C)親油型モノステアリン酸グリセリル 1.6
(B)ベヘニルアルコール 1.7
(B)バチルアルコール 1.7
(B)硬化油 1
(B)ホホバ油 1.5
(B)トリイソステアリン酸グリセリル 0.8
(B)テトラ2−エチルへキサン酸ペンタエリスリット 5
(B)α−オレフィンオリゴマー 5
(B)メチルポリシロキサン 5
トラネキサム酸 1
グリチルリチン酸ジカリウム 0.05
フェノキシエタノール 0.35
クエン酸 0.03
クエン酸ナトリウム 0.07
ピロ亜硫酸ナトリウム 0.003

製造方法:油溶性成分を油分に溶解後、70℃に加温した(油相)。他方、水溶性成分を精製水に溶解し、70℃に加温した(水相)。この水相に前述の油相を添加攪拌混合、室温まで冷却した。
【0044】
〔実施例7:水中油型乳化保湿クリーム〕
配合成分 質量%
(E)精製水 残余
濃グリセリン 8
ブチレングリコール 9
マルチトール液 0.75
エリスリトール 0.1
ポリエチレングリコール1500 2
(D)キサンタンガム 0.1
(A)カルナウバロウ 1.5
(C)ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体 0.5
(C)イソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル 1.5
(C)親油型モノステアリン酸グリセリル 1.6
(B)ベヘニルアルコール 1.7
(B)バチルアルコール 1.7
(B)硬化油 1
(B)ホホバ油 1.5
(B)トリイソステアリン酸グリセリル 0.8
(B)テトラ2−エチルへキサン酸ペンタエリスリット 2.5
(B)α−オレフィンオリゴマー 5
(B)メチルポリシロキサン 5
トラネキサム酸 1
グリチルリチン酸ジカリウム 0.05
フェノキシエタノール 0.35
クエン酸 0.03
クエン酸ナトリウム 0.07
ピロ亜硫酸ナトリウム 0.003

製造方法:油溶性成分を油分に溶解後、70℃に加温した(油相)。他方、水溶性成分を精製水に溶解し、70℃に加温した(水相)。この水相に前述の油相を添加攪拌混合、室温まで冷却した。
【0045】
〔実施例8:水中油型乳化保湿クリーム〕
配合成分 質量%
(E)精製水 残余
濃グリセリン 8
ブチレングリコール 9
マルチトール液 0.75
エリスリトール 0.1
ポリエチレングリコール1500 2
(D)キサンタンガム 0.01
(A)カルナウバロウ 2
(C)ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体 0.5
(C)イソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル 1.5
(C)親油型モノステアリン酸グリセリル 1.6
(B)ベヘニルアルコール 1.7
(B)バチルアルコール 1.7
(B)硬化油 1
(B)ホホバ油 1.5
(B)トリイソステアリン酸グリセリル 0.8
(B)テトラ2−エチルへキサン酸ペンタエリスリット 5
(B)α−オレフィンオリゴマー 5
(B)メチルポリシロキサン 5
トラネキサム酸 1
グリチルリチン酸ジカリウム 0.05
フェノキシエタノール 0.35
クエン酸 0.03
クエン酸ナトリウム 0.07
ピロ亜硫酸ナトリウム 0.003

製造方法:油溶性成分を油分に溶解後、70℃に加温した(油相)。他方、水溶性成分を精製水に溶解し、70℃に加温した(水相)。この水相に前述の油相を添加攪拌混合、室温まで冷却した。
【0046】
〔実施例9:水中油型乳化保湿クリーム〕
配合成分 質量%
(E)精製水 残余
濃グリセリン 8
ブチレングリコール 9
マルチトール液 0.75
エリスリトール 0.1
ポリエチレングリコール1500 2
(D)キサンタンガム 0.01
(A)カルナウバロウ 1
(C)ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体 0.5
(C)イソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル 1.5
(C)親油型モノステアリン酸グリセリル 1.6
(B)ベヘニルアルコール 1.7
(B)バチルアルコール 1.7
(B)硬化油 1
(B)ホホバ油 1.5
(B)トリイソステアリン酸グリセリル 0.8
(B)テトラ2−エチルへキサン酸ペンタエリスリット 2.5
(B)α−オレフィンオリゴマー 5
(B)メチルポリシロキサン 5
トラネキサム酸 1
グリチルリチン酸ジカリウム 0.05
フェノキシエタノール 0.35
クエン酸 0.03
クエン酸ナトリウム 0.07
ピロ亜硫酸ナトリウム 0.003

製造方法:油溶性成分を油分に溶解後、70℃に加温した(油相)。他方、水溶性成分を精製水に溶解し、70℃に加温した(水相)。この水相に前述の油相を添加攪拌混合、室温まで冷却した。
【0047】
〔実施例10:水中油型乳化保湿クリーム〕
配合成分 質量%
(E)精製水 残余
濃グリセリン 8
ブチレングリコール 9
マルチトール液 0.75
エリスリトール 0.1
ポリエチレングリコール1500 2
(D)キサンタンガム 0.01
(A)カルナウバロウ 1
(C)ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体 0.5
(C)イソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル 1.5
(C)親油型モノステアリン酸グリセリル 1.6
(B)ベヘニルアルコール 1.7
(B)バチルアルコール 1.7
(B)硬化油 1
(B)ホホバ油 1.5
(B)トリイソステアリン酸グリセリル 0.8
(B)テトラ2−エチルへキサン酸ペンタエリスリット 1
(B)α−オレフィンオリゴマー 5
(B)メチルポリシロキサン 5
トラネキサム酸 1
グリチルリチン酸ジカリウム 0.05
フェノキシエタノール 0.35
クエン酸 0.03
クエン酸ナトリウム 0.07
ピロ亜硫酸ナトリウム 0.003

製造方法:油溶性成分を油分に溶解後、70℃に加温した(油相)。他方、水溶性成分を精製水に溶解し、70℃に加温した(水相)。この水相に前述の油相を添加攪拌混合、室温まで冷却した。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明によれば、顔面の皮膚にハリ感を付与できる皮膚外用剤を提供できる。ハリ感を付与する皮膚外用剤としては皮膜剤を配合した保湿クリームが存在するが、ハリ感を十分に感じられる量を添加すると、塗布のよれやべたつきを生じやすい。しかしながら、本発明の皮膚外用剤はそのような欠点を生じることなく、十分なハリ感を顔面の皮膚に与えることができるので、皮膚外用剤の化粧料である保湿クリーム等として好適に利用される。
さらに、本発明の皮膚外用剤は保存安定性にも優れている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分(A)〜(E)を含有し、乳化組成物からなることを特徴とする皮膚外用剤。
(A)カルナウバロウ
(B)油分
(C)界面活性剤
(D)増粘剤
(E)水
【請求項2】
皮膚外用剤全量に対して、前記成分(A)のカルナウバロウの配合量が0.01〜10質量%であり、前記成分(B)の油分の配合量が1〜40質量%であり、前記成分(C)の界面活性剤活性剤の配合量が0.01〜10質量%であり、(D)の増粘剤の配合量が〜1質量%であり、前記成分(E)の配合量が30〜90質量%であることを特徴とする請求項1記載の皮膚外用剤。
【請求項3】
前記成分(A)のカルナウバロウの配合量が2〜10質量%の場合に、カルナウバロウの配合量が前記成分(B)の全量に対して1〜8.5質量%であることを特徴とする請求項1又は2記載の皮膚外用剤。

【公開番号】特開2011−195459(P2011−195459A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−60540(P2010−60540)
【出願日】平成22年3月17日(2010.3.17)
【出願人】(000001959)株式会社 資生堂 (1,748)
【Fターム(参考)】