説明

皮膚外用剤

【課題】細胞外マトリクス、具体的にはコラーゲン及びヒアルロン酸産生を促進する効果に優れ、加齢に伴うしわ・たるみの予防・改善に有効な皮膚外用薬を提供する。
【解決手段】有効成分として、炭素原子数が5〜24のケトール脂肪酸であって、炭素原子間の二重結合の数が1〜6個であり、かつαケトール構造又はγケトール構造の脂肪酸、又はその誘導体を含有させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体内における細胞外マトリクス、具体的にはヒアルロン酸等の酸性ムコ多糖と、コラーゲン等の線維性タンパク質の産生を促進する皮膚外用剤に関する。
【背景技術】
【0002】
真皮は、表皮の下にある、結合組織からなる組織である。真皮では、表皮ほど細胞が密に詰まっておらず、むしろ、細胞外空間が多く、その部分は、「細胞外マトリクス」と呼ばれる巨大分子の網目構造によって満たされている。
【0003】
この細胞外マトリクスは、真皮内の線維芽細胞等において、産生されており、ヒアルロン酸やデルマタン硫酸等の酸性ムコ多糖と呼ばれる多糖類と、コラーゲン、エラスチン等の線維性タンパク質で構成されている。
【0004】
細胞外マトリクスは、皮膚の弾力性、はり、みずみずしさ、新陳代謝等に直接的に関わっており、線維芽細胞等における細胞外マトリクスの産生が鈍ると、皮膚の弾力性やみずみずしさが失われ、菲薄化し、シワ、小ジワ、肌荒れが発生しやすくなり皮膚老化がもたらされる一員となる。したがって、コラーゲン及びヒアルロン酸の産生を促進させて、細胞外マトリクスを維持することが、しわ・たるみの予防・改善に有効であると考えられる。
【0005】
従来、コラーゲンやヒアルロン酸の産生を促進させることで皮膚の加齢変化を予防・改善するために、多くの植物由来物質が試験されており、例えば、ダイズゼイン、ダイズジン、ゲニスタイン、およびゲニスチンから選ばれるイソフラボン化合物やフィトステロールがコラーゲンを産生する物質として報告されていた(特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−39849号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし近年においては、さらなる顕著なコラーゲン産生及びヒアルロン酸産生の促進作用を有する物質が強く望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、皮膚線維芽細胞のコラーゲン生合成及びヒアルロン酸生合成を強く促進させる作用を有する物質を鋭意研究した結果、植物脂肪酸の一種である特定のケトール脂肪酸が、驚くべきことに皮膚線維芽細胞においてコラーゲン生合成及びヒアルロン酸生合成を促進することを見出した。
【0009】
すなわち本発明は、当該特定のケトール脂肪酸、又はその誘導体を有効成分として含有することを特徴とする、細胞外マトリクス、具体的にはヒアルロン酸等の酸性ムコ多糖と、コラーゲン等の線維性タンパク質の産生を促進する皮膚外用剤に関する。
【0010】
本発明は、皮膚外用剤を提供するものであり、その有効成分である特定のケトール脂肪酸は、炭素原子数が5〜24のケトール脂肪酸であって、炭素原子間の二重結合の数が0〜6個であり、かつαケトール構造又はγケトール構造の脂肪酸、又はその誘導体である。
【0011】
上記特定のケトール脂肪酸については、本発明者らにより優れた植物賦活効果を有すること(WO2005/102048号公報を参照のこと)、さらに花芽形成を促進すること(特開平10-324602号公報及び特開2006−151830を参照のこと)が見出されていたが、植物に対する賦活効果や花芽形成促進効果からは動物細胞に対する効果は全く想像すらできないものである。上記特定のケトール脂肪酸の誘導体については、植物の賦活作用を有すること(特開2001−342191号公報を参照のこと)が見出されていた。
【発明の効果】
【0012】
本発明の皮膚外用剤は、細胞外マトリクスを形成するコラーゲンとヒアルロン酸の両方の産生を促進する効果に優れている。特にI型及びIV型コラーゲンとヒアルロン酸の両方の産生を促進する効果に優れている。よって本発明の皮膚外用剤を用いることにより、コラーゲン及びヒアルロン酸の産生を促進して、これらの量を維持することができ、シワ、たるみの予防・改善し、ひいては皮膚の老化を防止するという効果を有する。従って本発明の皮膚外用剤は、細胞外マトリクス促進剤、抗しわ剤、抗たるみ剤、抗老化剤として用いられるが、これに限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、KODA又はFNRのヒト線維芽細胞を用いたヒアルロン酸産生能試験の結果を示すグラフである。
【図2】図2は、KODA又はFNRのヒト線維芽細胞を用いたI型コラーゲン産生能試験の結果を示すグラフである。
【図3】図3は、KODA又はFNRのヒト線維芽細胞を用いたIV型コラーゲン産生能試験の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に本発明の実施の態様に関し詳述する。
本発明は、特定のケトール脂肪酸、又はその誘導体を有効成分として含有することを特徴とする、細胞外マトリクス、具体的にはヒアルロン酸等の酸性ムコ多糖と、コラーゲン等の線維性タンパク質の産生を促進する皮膚外用剤に関する。また、本発明は、特定のケトール脂肪酸、又はその誘導体を用いる細胞外マトリクスの産生促進法、しわ、たるみの治療法、及び抗老化治療法にも関する。
【0015】
本発明の皮膚外用剤の有効成分である特定のケトール脂肪酸は、炭素原子数が5〜24のケトール脂肪酸である(以下、このケトール脂肪酸を「特定ケトール脂肪酸」ともいう)。すなわち、特定ケトール脂肪酸は、その炭素原子数が5〜24であることを特徴とする、アルコールの水酸基とケトンのカルボニル基とを同一分子内に有する脂肪酸である。
【0016】
また、本発明において、特定ケトール脂肪酸は、カルボニル基を構成する炭素原子と水酸基が結合した炭素原子がα位またはγ位の位置にあることが好ましく、特に、α位であることが好ましい。
【0017】
また、特定ケトール脂肪酸は、炭素間の二重結合が0〜6か所(ただし、この二重結合数は、ケトール脂肪酸の炭素結合数を超えることはない)存在することが好ましい。
【0018】
また、特定ケトール脂肪酸は、炭素間の二重結合の位置に二重結合に代わりシクロプロパンが形成されてもよい。
【0019】
上記特定ケトール脂肪酸は一般式でも表すことができ、それによって表すとαケトール構造を持つケトール脂肪酸は、以下の一般式(I)及び(II)、γケトール構造を持つケトール脂肪酸は、以下の一般式(III)及び(IV)となる。
【化1】

【0020】
上記αケトール構造を持つケトール脂肪酸については、前記一般式(I)及び(II)において、R1は、直鎖アルキル基、二重結合を含み任意的に水酸基により置換される直鎖不飽和炭化水素基、環状アルカンを含み任意的に水酸基により置換される飽和炭化水素基、及び二重結合及び環状アルカンを含む不飽和炭化水素基からなる群から選ばれ、R2は直鎖アルキレン又は二重結合を含む直鎖不飽和炭化水素鎖であり、しかもケトール脂肪酸の全炭素数が5〜24で、炭素間の全二重結合が0〜6であるように選択されることが必要である。好ましくは、当該環状アルカンはシクロプロパンである。
【0021】
また、γケトール構造を持つケトール脂肪酸については、前記一般式(III)及び(IV)において、R3は直鎖状アルキル基又は二重結合を含む直鎖不飽和炭化水素基、及び環状アルカンを含む飽和又は不飽和炭化水素基からなる群から選ばれ、R4は直鎖状アルキレン又は二重結合を持つ直鎖状不飽和炭化水素鎖であり、しかもケトール脂肪酸の全炭素数が7〜24で、炭素間の二重結合が1〜6であるように選択されることが必要である。好ましくは、当該環状アルカンはシクロプロパンである。
【0022】
前記特定ケトール脂肪酸については、炭素原子数が18であり、かつ、炭素間の二重結合が2か所存在することが好ましい。好ましくは、二重結合は12位と15位に形成される。当該炭素間の二重結合のうち、1の二重結合−CH=CH−の代わりに、−CHOH−CHOH−が形成されてもよい。そして、当該炭素間の二重結合に代わりシクロプロパンが形成されてもよい。ここでシクロプロパンの形成と、−CHOH−CHOH−の形成が同時にされてもよく、その場合ケトール脂肪酸内に二重結合が含まれなくなることもある。
【0023】
好ましくは、R1は以下の式:
【化2】

{式中、
1が以下の:
【化3】

であり、
2が以下の:
【化4】

であり、かつ
5は、炭素数1〜5の直鎖アルキル基又は炭素数2〜5で1若しくは2の二重結合を含む直鎖不飽和炭化水素基を表す。}
で表される。
【0024】
さらに好ましくは、R1は以下の式:
【化5】

{式中、R5は、炭素原子数1〜5の直鎖状アルキル基、又は炭素数2〜5で1若しくは2の二重結合を有する直鎖状不飽和炭化水素基を表す。}
からなる群から選ばれる。ここで、R5がCH3CH2-であることが好ましい。
【0025】
本発明の好ましい特定ケトール脂肪酸は、前記一般式(II)においてR1が上記基のいずれかの基(ここで、R5がCH3CH2-である)であり、かつR2が-C714-である化合物である。
【0026】
特定ケトール脂肪酸の具体例としては、例えば13−ヒドロキシ−12−オキソ−9(Z),15(Z)−オクタデカジエン酸〔以下,特定ケトール脂肪酸(Ia)ということもある〕、9−ヒドロキシ−10−オキソ−12(Z),15(Z)−オクタデカジエン酸〔以下,特定ケトール脂肪酸(IIa)又はKODAということもある〕、13−ヒドロキシ−10−オキソ−11(E),15(Z)−オクタデカジエン酸〔以下、特定ケトール脂肪酸(IIIa)ということもある〕、9−ヒドロキシ−12−オキソ−10(E),15(Z)−オクタデカジエン酸〔以下、特定ケトール脂肪酸(IVa)ということもある〕等を挙げることができる。
【0027】
以下に、特定ケトール脂肪酸(Ia)〜(IVa)の化学構造式を記載する。
【化6】

さらに、上記化学構造式において、二重結合に代わりシクロプロパンが形成されてもよい。好ましくは、式(IIa)中において、12位と13位の間の二重結合に代わり、シクロプロパンが形成される。
【0028】
なお、その他の特定ケトール脂肪酸の化学構造式並びにこれらの特定ケトール脂肪酸の化学合成法については特開2001−131006号公報、特開2006−151822号公報に開示されている通りである。
【0029】
前記特定ケトール脂肪酸の他、特定ケトール脂肪酸の誘導体もヒト線維芽細胞においてヒアルロン酸及びコラーゲン産生能を有する。当該誘導体の例として、特定ケトール脂肪酸のカテコールアミン誘導体が挙げられる。当該カテコールアミン誘導体の例として、以下の一般式(Ib):
【化7】

[式中、R6は炭素原子数が1〜5の直鎖状アルキル基を、R7は水素原子、水酸基、メチル基又はエチル基を、R8は水素原子又はカルボキシル基を、R9は、水素原子、メチル基、エチル基、イソプロピル基、アセチル基又はtert−ブチル基を、R10は水素原子、水酸基、メトキシ基、エトキシ基、ホルミル基又はヒドロキシメチル基を表し、結合数nは、3〜15の整数であり、A位及びB位の炭素原子の立体配置は(R)配置であっても、(S)配置であってもよい]
で表される化合物が挙げられる。当該カテコールアミン誘導体は、前記特定ケトール脂肪酸とカテコールアミン類を混合し、中性〜塩基性条件下でインキュベートすることにより生成する。好ましくは当該カテコールアミン類として、ノルエピネフリンが用いられる。
【0030】
さらに好ましくは、特定ケトール脂肪酸の誘導体は、9−ヒドロキシ−10−オキソ−12(Z),15(Z)−オクタデカジエン酸とノルエピネフリンとの反応生成物であり、以下の式:
【化8】

で表される化合物である(以下、この誘導体を「FNR」と呼ぶ)。
【0031】
特定ケトール脂肪酸のカテコールアミン誘導体について、特開2001−342191号公報において、植物賦活活性を有することが記載されており、化学合成法などは当該特許文献に開示されている。
【0032】
特定ケトール脂肪酸において、二重結合の代わりにシクロプロパンが形成された化合物は、以下の構造を有する。
【化9】

当該特定ケトール脂肪酸は、シクロプロパンが形成されていない親化合物に比べて安定性が著しく増加し、かつ活性が維持された化合物である。当該ケトール脂肪酸は、親化合物における活性部位である12位におけるシス位の二重結合を、安定性を高めるためシス位を維持しつつシクロプロパンで置き換えた化合物である(以下、KODA類縁体という)。親化合物である特定ケトール脂肪酸、9−ヒドロキシ−10−オキソ−12(Z),15(Z)−オクタデカジエン酸が、ヒト線維芽細胞を用いたヒアルロン酸産生能試験及びI型・IV型コラーゲン産生能試験においてヒアルロン酸及びコラーゲン産生を高めることが本願により示されたため、安定性を高めるために改変された12位においてシクロプロパンを形成させた特定ケトール脂肪酸も活性を有する蓋然性が高い。当該シクロプロパンが形成された特定ケトール脂肪酸の合成方法については以下の実施例において詳述する。
【0033】
本発明の皮膚外用剤は、コラーゲン産生能及びヒアルロン酸産生能を有する特定ケトール酸、及びその誘導体を含むことを特徴としており、当該特徴のため、本発明の皮膚外用剤は、皮膚の正常な構造の維持に役立ち、皮膚老化の防止又は改善(抗老化)、また皮膚のしわ、たるみの予防・改善に有効である。
【0034】
本発明の皮膚外用剤には、上記必須成分以外に、通常化粧品や医薬品等の皮膚外用剤に用いられる成分、例えば、美白剤、保湿剤、酸化防止剤、油性成分、紫外線吸収剤、界面活性剤、増粘剤、アルコール類、粉末成分、色材、水性成分、水、各種皮膚栄養剤等を必要に応じて適宜配合することができる。
【0035】
その他、エデト酸二ナトリウム、エデト酸三ナトリウム、クエン酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム、グルコン酸等の金属封鎖剤、カフェイン、タンニン、ベラパミル、トラネキサム酸及びその誘導体、甘草抽出物、グラブリジン、火棘の果実の熱水抽出物、各種生薬、酢酸トコフェロール、グリチルリチン酸及びその誘導体またはその塩等の薬剤、ビタミンC、アスコルビン酸リン酸マグネシウム、アスコルビン酸グルコシド、アルブチン、コウジ酸等の他の美白剤、グルコース、フルクトース、マンノース、ショ糖、トレハロース等の糖類、レチノイン酸、レチノール、酢酸レチノール、パルミチン酸レチノール等のビタミンA誘導体類、ヒオウギエキス、ブナエキス、トウニンエキス、ヒポタウリン、シリカ被覆酸化亜鉛、イチヤクソウエキス、アミノメチルシクロヘキサンカルボンアミド、キシリトール、アルギニン、セリン、トリメチルグリシン、α−グルコシルヘスペリジン、アンズエキス、ヒドロキシプロリン等も適宜配合することができる。
【0036】
本発明は、外皮に適用される化粧料、医薬部外品等、特に好適には化粧料に広く適用することが可能であり、その剤型も水溶液系、可溶化系、乳化系、粉末系、油液系、ゲル系、軟膏系、エアゾール系、水−油2層系、水−油−粉末3層系等、幅広い剤型を採り得る。すなわち、基礎化粧品であれば、洗顔料、化粧水、乳液、クリーム、ジェル、エッセンス(美容液)、パック、マスク等の形態に、上記の多様な剤型において広く適用可能である。また、メーキャップ化粧品であれば、ファンデーション等、トイレタリー製品としてはボディーソープ、石けん等の形態に広く適用可能である。さらに、医薬部外品であれば、各種の軟膏剤等の形態に広く適用が可能である。そして、これらの剤型及び形態に、本発明の皮膚外用剤のとり得る形態が限定されるものではない。
【実施例】
【0037】
以下、実施例を用いて本発明を更に詳細に説明する。なお、本発明はこれにより限定されるものではない。配合量は重量%である。実施例に先立ち、効果の試験方法とその結果について説明する。
【0038】
実施例1:KODA類縁体の合成法
本発明のKODA類縁体の合成法は下記のスキームにしたがって合成した。
【化10】

【0039】
出発物質として、シクロプロパン誘導体1を用いた。この化合物は、対応するmeso−ジブチレートのリパーゼによる加水分解で得た。化合物1を四臭化炭素とトリフェニルホスフィンを用い、臭素化物を得た。この臭素化物をリチウムアセチリドエチレンジアミン複合体により処理し、化合物2を得た。C8−炭素鎖を導入する為、n−ブチルリチウムで処理した化合物2のリチウムアセチリドを、8−ベンジルオキシ−1−ヨードオクタンでアルキル化し、アルキル化化合物を得た。この化合物を、Lindlar触媒存在下で水素化し、(Z)−アルケン(3)を得た。C−9,10位に(9R)−立体配置のジオールを導入する為、AD−mix−βを用いジアステレオ選択的なSharpless非対称ジヒドロキシ化(AD)を行い、化合物3から化合物4を得た。ベンズアルデヒドジメチルアセタールを用いた化合物4のアセタール化と、それに続くジイソブチルヒドリド(DIBAL−H)還元を行うことで、シリル基が脱保護されたジベンジルエステルを得た。そのジベンジルエステルをtert−ブチルジメチルシリルクロリド(TBSCl)により、ジシリル化し目的のdi−TBSエーテルを得た。このdi−TBSエーテルの1級TBSエーテル部分をピリジニウムp−トルエンスルホン酸(PPTS)、MeOH−CHCl3中で選択的に脱保護し、化合物5を得た。化合物5をヨウ素化した後に、アセチリドエチレンジアミン複合体により、目的の末端アルキン化合物を得た。これに次ぐヨードエタンとのアルキル化を行い、目的産物を得た後に、部分水素化を行い、(Z)−アルケン(6)を得た。2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノ−p−ベンゾキノン(DDQ)を用いて化合物6の酸化的脱保護を行い、1,10−ジオールを得た。次いでDess−Martin periodinate(DMP)を用い1,10−ジオールを酸化することで、目的のケト−アルデヒドを得た。さらにこのケト−アルデヒドを次亜塩素酸で酸化することで、目的のケト−カルボン酸を得た。最後にケト−カルボン酸のTBS基の脱保護をテトラ−n−ブチルアンモニウムフルオリ(TBAF)を用いて行い、目的のKODA類縁体を得た。
【0040】
実施例2:ヒアルロン酸産生促進作用の測定
96穴プレートにヒト線維芽細胞を10%牛胎児血清添加DMEM培地にて2×104細胞/ウェルで播種し、37℃、CO2雰囲気下でインキュベートした。播種1日後に、KODA又はFNRを各濃度(1×10-3%、1×10-4%、1×10-5%)になるように溶解した0.5%血清添加DMEM培地に置換した。細胞播種より4日後に、培地上清中のヒアルロン酸量を、ヒアルロン酸測定キット(中外製薬(株)製)を用いてELISA法にて測定した。
【0041】
結果を図1に示す。KODAおよびFNRについては、1×10-5〜1×10-3%において、未添加の対照に比べて、明らかなヒアルロン酸産生促進効果が認められた。
【0042】
実施例3:I型コラーゲン産生促進作用の測定
96穴プレートにヒト線維芽細胞を10%牛胎児血清添加DMEM培地にて2×104細胞/ウェルで播種し、37℃、CO2雰囲気下でインキュベートした。播種1日後にKODA又はFNRを各濃度(1×10-3%、1×10-4%、1×10-5%)になるように溶解した0.5%血清添加DMEM培地に置換した。細胞播種より4日後に、タカラバイオ社製キットMK−101を用いてELISA法にて培地上清中のI型コラーゲン量を測定した。
【0043】
結果を図2に示す。KODAおよびFNRについては、1×10-5〜1×10-3%において、未添加の対照に比べて、明らかなI型コラーゲン産生促進効果が認められた。
【0044】
実施例4:IV型コラーゲン産生促進作用の測定
96穴プレートにヒト線維芽細胞を10%牛胎児血清添加DMEM培地にて2×104細胞/ウェルで播種し、37℃、CO2雰囲気下でインキュベートした。播種1日後にKODAを各濃度(5.0×10-3%、5.0×10-4%、5.0×10-5%)になるように溶解した0.5%血清添加DMEM培地に置換した。細胞播種より4日後に、培地上清中のIV型コラーゲン量をサンドイッチELISA法によって測定した。当該測定において使用した抗体は、IV型コラーゲン特異的抗体;モノクローナル抗体JK−199及びポリクローナル抗体MO−S−CLIVである。
【0045】
結果を図3に示す。KODAについて、5×10-5〜5×10-3%において、KODAの未添加の対照に比べて、明らかなIV型コラーゲン産生促進効果が認められた。特に、5×10-3%の濃度において、IV型コラーゲン産生は極めて高かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の一般式(II):
【化1】

{式中、R1は、直鎖アルキル基、二重結合を含み任意的に水酸基により置換される直鎖不飽和炭化水素基、環状アルカンを含み任意的に水酸基により置換される飽和炭化水素基、及び二重結合及び環状アルカンを含む不飽和炭化水素基からなる群から選ばれ、R2は直鎖アルキレン又は二重結合を含む直鎖不飽和炭化水素鎖であり、ここでケトール脂肪酸の全炭素数が5〜24であり、炭素間の二重結合が0〜6であり、そして水酸基の数が0〜3である}
で表されるケトール脂肪酸又はそのカテコールアミン誘導体を含んでなる、皮膚外用剤。
【請求項2】
前記R1が、以下の式:
【化2】

{式中、
1が以下の:
【化3】

であり、
2が以下の:
【化4】

であり、かつ
5は、炭素数1〜5の直鎖アルキル基を表す。}
である、請求項1に記載の皮膚外用剤。
【請求項3】
前記R1が、以下の式:
【化5】

[式中、R5はエチル基である]
からなる群から選ばれ、かつ前記R2が-C714-である、請求項1に記載の皮膚外用剤。
【請求項4】
前記ケトール脂肪酸のカテコールアミン誘導体が、以下の式:
【化6】

で表される化合物である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の皮膚外用剤。
【請求項5】
ヒアルロン酸及びコラーゲンの産生を促進する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の皮膚外用剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−63536(P2011−63536A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−214684(P2009−214684)
【出願日】平成21年9月16日(2009.9.16)
【出願人】(000001959)株式会社資生堂 (1,748)
【Fターム(参考)】