説明

皮膚外用組成物及び皮膚外用貼付剤

【課題】 タンパク質分解酵素による表皮角質層の余分なタンパク質の除去効果が充分に発揮されるとともに、経時的安定性にも優れている、皮膚外用組成物および皮膚外用貼付剤を提供する。
【解決手段】タンパク質分解酵素と、塩化カリウムとを含む、皮膚外用組成物およびこの皮膚外用組成物を用いて構成されている皮膚外用貼付剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肌荒れに対して優れた改善・予防効果を有する皮膚外用組成物及び皮膚外用貼付剤に関し、特に、タンパク質分解酵素を含む皮膚外用組成物及び皮膚外用貼付剤に関する。
【背景技術】
【0002】
化粧料、医薬品、及び医薬部外品の分野において、様々な皮膚外用組成物が開発されている。皮膚外用組成物は、ローション剤、軟膏剤及び乳剤等の剤型とされて市販されている。
【0003】
皮膚外用組成物には、肌荒れを改善・予防し、美肌効果を有するものがある。肌荒れを改善・予防する効果を高め得る成分として、従来、例えば尿素、ビタミンE、ビタミンA、オリーブ油、スクワラン、米糠、アロエ、ヨモギエキス、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸ナトリウム、キチン、キトサン、トレハロース、セラミド、コラーゲン、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、海藻エキス、オウバクエキス、ガイヨウエキス、ジオウエキス、アロエエキス、コメヌカエキス、ヘチマエキス、ゼニアオイエキス、又はプラセンタエキス等が皮膚外用組成物に配合されている。
【0004】
また、近年、肌荒れを改善・予防する効果を高める成分として、タンパク質分解酵素が注目されている。特に、パパインやプロテアーゼなどのタンパク質分解酵素は、表皮角質層の余分なタンパク質を分解し、古い角質ごと汚れも除去する効果を有する。
【0005】
下記特許文献1には、動物性構造タンパク質と、この動物性構造タンパク質を分解する酵素と、無機塩類とを含む、水洗化粧品に添加する水離補助剤が開示されている。例えば、この水離補助剤をヘアーシャンプー等のすすぎ洗いを必要とする水洗化粧品に添加して用いた場合、タンパク質とタンパク質分解酵素との反応により、添加した動物性構造タンパク質の分解物による皮膜が皮膚表面に形成される。また、無機塩類の配合により、この動物性構造タンパク質の分解反応がより一層促進されているため、皮膜を安定的な状態で形成することができる。よってこの皮膜が、すすぎ洗い後に残留する水の離脱を促進し毛髪や皮膚面の乾きを速める。さらには、入浴時に洗剤を用いて皮膚面を洗浄する際に除去される皮膚面を覆っていた皮脂質を補うので、皮膚荒れ、特にアレルギー性湿疹に対する治療に有用とされている。
【0006】
他方、下記特許文献2には、焙煎杏仁抽出物と、植物性タンパク質分解酵素パパインとを含む洗浄用化粧品が開示されている。焙煎杏仁抽出物と、植物性タンパク質分解酵素とを組み合わせることで、皮膚の中和能を維持しつつ、パパインの皮膚浄化作用を効果的に発揮することができるとされている。
【0007】
さらに、下記特許文献3には、紫外線照射した無機顔料でパパインを包接し、このパパイン被包接物を油浸させた化粧品原料が開示されている。この化粧品原料を用いることで、充分な洗浄機能を有する含水製剤を得ることが可能とされている。
【特許文献1】特開平10−324612号公報
【特許文献2】特開平11−43428号公報
【特許文献3】特開平11−199432号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1には、タンパク質分解酵素と他の動物構造タンパク質を配合することにより、すすぎ洗い後に残留する水の離脱を促進し毛髪や皮膚面の乾きを速め、さらには入浴時に洗剤を用いて皮膚面を洗浄する際に除去される皮膚面を覆っていた皮脂質を補い、皮膚荒れ、特にアレルギー性湿疹に対する治療に有用な、分解された動物構造タンパク質が皮膜を形成することが開示されているのみである。また、この動物構造タンパク質は、それ自体がアレルギー反応を引き起こす可能性があるという問題があった。さらには皮膜を形成することから,使用者の皮膚にもともと存在する不要な角質やタンパク質汚れの除去を妨げてしまうこともあった。
【0009】
他方、上記特許文献2にも、焙煎杏仁抽出物と植物性タンパク質分解酵素との組み合わせと、剤型として粉末状の洗浄用化粧品が開示されているのみである。よって、使用の際に、洗浄用化粧品を一旦水などに溶解させる必要があった。また、さらに優れた効果と経時的な安定性の確保が望まれていた。
【0010】
上記特許文献2に記載のように、タンパク質分解酵素を用いる化粧品が粉末状とされているのは、タンパク質分解酵素を一旦水などに溶解させると、タンパク質分解作用が徐々に失活し、その機能を充分に発揮できなくなるためである。すなわち、含水製剤とした場合には、タンパク質分解酵素の活性を、経時的に安定に保つことが困難なためである。
【0011】
一方、上記特許文献3に記載の化粧品原料を用いれば、含水製剤とすることが可能とされている。しかしながら、この化粧品原料は、紫外線照射した無機顔料でパパインを包接したものであるため、含水製剤を使用する際にパパインが充分に溶解されないことがあった。すなわち、包接している無機顔料によって、パパインのタンパク質分解作用が阻害されがちであった。
【0012】
また、特許文献3に記載の含水製剤では、製剤の経時的安定性が充分でないことがあった。さらに、製剤中に含まれる水分によって、タンパク質分解酵素のタンパク質分解作用が徐々に失活し、その効果が充分に発揮されないこともあった。
【0013】
上記問題点以外にも、製剤中には水を実質的に含有しない製剤であっても、製造工程で水の添加を必要とする場合、製造工程で失活し、製剤化したもので効果が十分に発揮されないことがあった。故に、製造工程で水を添加する製造方法を採用することができず、製造方法が限定されてしまうという問題もあった。
【0014】
本発明の目的は、上述した従来技術の現状に鑑み、タンパク質分解酵素による表皮角質層の余分なタンパク質の除去効果が充分に発揮されるとともに、製剤の経時的安定性や製造時安定性にも優れた皮膚外用組成物及び皮膚外用貼付剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明に係る皮膚外用組成物は、タンパク質分解酵素と、塩化カリウムとを含むことを特徴とする。さらに、本発明に係る皮膚外用組成物のある特定の局面では、水をさらに含んでおり、具体的には、皮膚外用組成物全量100重量部中、水を5重量部以上99.5
重量部以下含んでいる。
【0016】
本発明に係る皮膚外用組成物のさらに他の特定の局面では、タンパク質分解酵素はパパインである。
【0017】
本発明に係る皮膚外用組成物のさらに別の特定の局面では、タンパク質分解酵素と、塩化カリウムとの重量配合比は、1:0.02〜1:3の範囲である。
【0018】
本発明に係る皮膚外用貼付剤は、本発明に従って構成された皮膚外用組成物を用いて構成されている。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る皮膚外用組成物は、タンパク質分解酵素と塩化カリウムを含んでいるので、表皮角質層の余分なタンパク質や古い角質層の除去効果に優れている。さらに、塩化カリウムが配合されているため、製剤中のタンパク質分解酵素の角質除去効果の経時的な低下が抑制されている。また、皮膚外用組成物の製造時に水分が存在する場合にあってもタンパク質分解酵素の角質除去効果が低下することがなく、故に、本発明に係る皮膚外用組成物は製造方法が限定されることがなく、生産性、取り扱い性等にも優れている。
【0020】
本発明に係る皮膚外用組成物が水をさらに含んでいる場合には、使用する際に余計な手間を必要とせず、直接皮膚に塗布することができる剤型とすることが容易となる。さらに、本発明では、タンパク質分解酵素に加えて、塩化カリウムを含んでいるので水に分散・溶解したタンパク質分解酵素の活性を、長期間安定に保つことができる。特に、皮膚外用組成物全量100重量部中、水が5重量部以上99.5重量部以下の範囲で含まれている
場合には、皮膚外用組成物を使用する際に、のびやなじみに優れる。さらに製造時においては、配合される固形成分を充分に分散・溶解させたり造粒・塗工することが容易となる。
【0021】
タンパク質分解酵素がパパインである場合には、角質除去効果が一層良好となる。
【0022】
タンパク質分解酵素と、塩化カリウムとの重量配合比が、1:0.02〜1:3の範囲である場合には、タンパク質分解酵素の角質除去効果がより一層高く、経時的な低下をより一層抑制することができる。
【0023】
本発明に係る皮膚外用組成物を用いて構成されている皮膚外用貼付剤は、使用時に塗り広げる必要がないため、利便性に優れている。さらに、使用時に乾燥・液だれも生じ難いため、長時間皮膚に効果的に作用させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の詳細を説明する。
【0025】
本発明に係る皮膚外用組成物は、皮膚外用組成物中にタンパク質分解酵素及び塩化カリウムを含んでいる。
【0026】
タンパク質分解酵素は、表皮角質層の余分なタンパク質を分解し、古い角質ごと汚れも除去する効果を有する。一方、塩化カリウムは、タンパク質分解酵素の角質除去効果を高めることができる。また、塩化カリウムは、皮膚外用組成物の製造時の安定性や製剤化後の経時的安定性を高めるとともに、タンパク質分解酵素の角質除去効果の経時的な低下を抑制する効果も有する。
【0027】
上記タンパク質分解酵素としては、タンパク質分解作用のある酵素であれば特に限定されないが、パパイヤから抽出されたパパイン、化粧品種別許可基準に収載されている化粧品原料として入手可能なプロテアーゼ(1)又はプロテアーゼ(2)等が挙げられる。これらの中で、パパインが角質除去効果に優れるため好適に用いられる。これらの成分は、単独で用いられてもよく、複数組み合わされて用いられてもよい。なお、皮膚外用組成物中に含まれるタンパク質分解酵素の配合量は、特に限定されず、使用目的や用法・用量により適宜設定することができる。
【0028】
上記塩化カリウムとしては、化粧品種別許可基準に収載されている化粧品原料として入手可能な塩化カリウムが好適に用いられる。実質的に塩化カリウムを含む混合原料を用いて、塩化カリウムが配合されてもよい。なお、皮膚外用組成物中に含まれるタンパク質分解酵素の配合量は、特に限定されず、使用目的や用法・用量により適宜設定することができる。
【0029】
上記タンパク質分解酵素と、上記塩化カリウムとの重量配合比は、1:0.02〜1:3の範囲とすることが好ましい。タンパク質分解酵素1重量部に対して、塩化カリウムが0.02重量部よりも少ないと、タンパク質分解酵素の角質除去効果が十分に向上されないことがあり、効果の経時的な低下を充分に抑制できないことがある。タンパク質分解酵素1重量部に対して、塩化カリウムが3重量部よりも多いと、塩化カリウムが過剰となり、それ以上添加しても添加による効果があがらないことがある。
【0030】
上記タンパク質分解酵素と、上記塩化カリウムとの重量配合比は、より好ましくは1:0.05〜1:2の範囲である。上記タンパク質分解酵素と、上記塩化カリウムとの重量
配合比を1:0.05〜1:2の範囲とすることで、タンパク質分解酵素の角質除去効果
をより一層高め、経時的な低下をより一層効果的に抑制することができる。
【0031】
皮膚外用組成物中には、上記タンパク質分解酵素及び上記塩化カリウムの他にも様々な成分を配合することができる。肌荒れの改善・予防効果を高めるために、例えば尿素、ビタミンE、ビタミンA、オリーブ油、スクワラン、米糠、アロエ、ヨモギエキス、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸ナトリウム、キチン、キトサン、トレハロース、セラミド、コラーゲン、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、海藻エキス、オウバクエキス、ガイヨウエキス、ジオウエキス、アロエエキス、コメヌカエキス、ヘチマエキス、ゼニアオイエキス、又はプラセンタエキス等を配合することができる。また、皮膚外用組成物の諸性能を確保するために、着色剤、着香剤、充填剤、殺菌剤、又は防腐剤等を配合することもできる。
【0032】
上記皮膚外用組成物の製造方法は特には限定されず、得られる皮膚外用組成物の剤型に応じて適宜選択することができる。また、製造途中に水を含有させる方法、又は水を含有させない方法のいずれでもよいが、製造途中に水を含有させる方法が、配合される固形成分を十分に分散・溶解させることができ、或いは造粒・塗工が容易となるので好ましい。製造途中に水を含有させる方法において、その水分量は各剤型により適宜設定し得るが、皮膚外用組成物全量100重量部に対し、5重量部以上99.5重量部以下の範囲である
ことが好ましい。水が5重量部より少ないと、配合される固形成分が充分に分散・溶解されなかったり、或いは造粒・塗工できないことがあり、皮膚外用組成物が得られないことがある。また、水が99.5重量部より多いと、得られる皮膚外用組成物の諸性能を発揮するための他の成分を必要量配合できないことがある。さらに、得られる皮膚外用組成物は乾燥させてもよいし、乾燥させずにそのまま用いてもよく、最終的に、皮膚外用組成物全量100重量部に対し、水分量が5重量部以上99.5重量部以下の範囲となるように
するのが好ましい。
【0033】
本発明に係る皮膚外用組成物の剤型は、使用方法や消費者の嗜好により適宜設定することができ、特に限定されない。皮膚外用組成物の剤型としては、例えば使用時に水と混練させたり、水に分散・溶解させて使用する顆粒剤、粉剤又はペレット剤が挙げられる。さらに、使用時に水を必要とせずそのまま使用できるゲル剤、液剤、乳液剤、クリーム剤又は貼付剤も挙げられる。中でも、製造時や使用時に水を使用せず、個体原料を単にそのまま混合した粉剤等よりも、製造時や使用時に水を必要とする粒剤、粉剤、ペレット剤、ゲル剤、液剤、乳液剤、クリーム剤及び貼付剤が好適である。
【0034】
水が含まれているゲル剤、液剤、乳液剤又はクリーム剤は、直接皮膚に塗布することができるため使用する際に余計な手間を必要としない。さらに、皮膚に対してのびやなじみにも優れる。皮膚外用組成物中に含まれる水は、各剤型により適宜設定し得るが、皮膚外用組成物全量100重量部中、5重量部以上99.5重量部以下の範囲で含まれているこ
とが好ましい。水が5重量部より少ないと、使用時に皮膚外用組成物ののびやなじみが悪くなることがあり、さらに、製造時に配合される固形成分が充分に分散・溶解されなかったり、造粒・塗工できないことがあり、皮膚外用組成物が得られないことがある。また、水が99.5重量部より多いと、皮膚外用組成物の諸性能を発揮するための他の成分を必要量配合できないことがある。
【0035】
上記顆粒剤は、例えば以下のようにして得ることができる。粉末成分であるタンパク質分解酵素、塩化カリウム、及びポリビニルアルコール、さらにその他の賦形剤としてデンプン、糖類、ステアリン酸マグネシウム、及びタルク等を均一になるように混合する。混合した後、攪拌しながら水やエタノールで希釈したグリセリンを徐々に加えて造粒する。しかる後、乾燥させて顆粒剤が得られる。上記粉剤は、例えば、上記顆粒剤を得るのに用いた成分等を混合したり、得られた上記顆粒剤を粉砕することで得られる。上記ペレット剤は、例えば上記顆粒剤または上記粉剤等を圧縮成形して得られる。
【0036】
上記液剤は、例えばタンパク質分解酵素、塩化カリウム、ポリビニルアルコール、及びグリセリン等を、水に溶解または分散させて得られる。上記ゲル剤は、上記液剤にポリアクリル酸を加えて均一になるように攪拌・ゲル化することにより得られる。
【0037】
上記乳液剤は、上記液剤に、例えば流動パラフィンのような油性成分と、モノステアリン酸等を加えた後、攪拌・乳化することにより得られる。
【0038】
上記クリーム剤は、上記液剤に、例えばヒドロキシセルロース、ステアリン酸トリグリセリド、ベヘニルアルコール、ミネラルオイル、ミツロウ、ポリソルベート60、及びパルミチン酸セチル等を加えた後、攪拌・乳化することにより得られる。
【0039】
上述した皮膚外用組成物を支持体表面に塗工又は散布した皮膚外用貼付剤、または上述した皮膚外用組成物を例えばフィルム状やシート状に成形した皮膚外用貼付剤もまた本発明の1つである。
【0040】
上記皮膚外用貼付剤は、例えば以下のようにして得ることができる。アクリル系のエマルジョンなどの水系の粘着剤にタンパク質分解酵素、塩化カリウム、ポリビニルアルコール及びグリセリン、さらにその他の成分を溶解又は懸濁させて塗工液を得る。この塗工液を塗工展延させた後、乾燥してシート状の皮膚外用貼付剤を得ることができる。該シート状の皮膚外用貼付剤に対してさらに支持体が必要に応じて用いられてもよい。
【0041】
本発明の皮膚外用組成物は、上述した皮膚外用貼付剤に用いられて使用されることが好ましい。皮膚外用貼付剤は、使用時に塗り広げる必要がないため、簡便に使用することができる。さらに、皮膚外用貼付剤に支持体が用いられている場合には、皮膚外用組成物を手指で直接触れることがない。よって、使用時に衣服や寝具に付着したり、汚染するおそれがない。さらに、乾燥・液だれも生じ難いため、長時間皮膚に作用させることができる。
【0042】
上記皮膚外用貼付剤に粘着剤が用いられる場合には、水系の粘着剤が好ましく使用される。溶剤系やホットメルト系の粘着剤が用いられると、タンパク質分解酵素の作用が失活してしまうおそれがある。
【0043】
一方、水系の粘着剤を使用した場合は、製造時の塗工後に乾燥しても水分が製剤に残存する可能性があるが、本発明であれば残存する水分のために、経時的に効果が減弱することもない。
【0044】
上記水系の粘着剤としては、例えばアクリル系エマルジョン粘着剤等が挙げられる。水系の粘着剤は、例えば以下のようにして得られる。水を主成分とする分散媒中で、n−ブチル(メタ)アクリレートや2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートなどのアルキル(メタ)アクリレートを主モノマーとし、該主モノマーと共重合可能な(メタ)アクリル酸や、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどの水酸基含有(メタ)アクリレート
などを副モノマーとし、常法により、主モノマーを単独で乳化重合させるか、または主モノマーと副モノマーとを乳化重合させることにより得られる。なお、(メタ)アクリレートは、アクリレートまたは(メタ)アクリレートを意味するものとする。
【0045】
上記アクリル系エマルジョン粘着剤の市販品としては、例えば、日本アクリル社製の商品名「プライマル」シリーズ等が挙げられる。
【0046】
なお、後述する実施例及び比較例において、上記アクリル系エマルジョン粘着剤が用いられている場合には、膏体層中のアクリル系エマルジョン粘着剤の配合割合は、固形分としての重量比を意味するものとする。
【0047】
上記皮膚外用貼付剤に用いられる支持体としては、特に限定されず、従来公知のプラスター剤等に用いられている様々な材料からなる支持体を適宜用いることができる。もっとも、皮膚外用貼付剤は、かかとや肘などの屈曲している部分に貼付されるため、柔軟性を有する支持体が好適に用いられる。
【0048】
上記支持体としては、例えばポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリウレタン、ポリエチレンテレフタレート、及びエチレン−酢酸ビニル共重合体等からなるプラスチックフィルムもしくはシートが挙げられる。さらに、アルミニウム箔などの金属箔、不織布、織布、及びこれらを組み合わせたラミネートフィルムもしくはシート等も挙げられる。
【0049】
上記支持体の透湿性は、200g/m2・24hr以下であることが好ましい。透湿性
が200g/m2・24hrを越えると、タンパク質分解酵素の効果を発揮するために必
要な水分の確保が困難なことがある。
【0050】
上記貼付剤では、使用されるまで粘着剤層を保護するために、皮膚外用組成物からなる膏体層に剥離紙が積層されていることが好ましい。剥離紙は、使用時に膏体層から剥離される。従って、適度な剥離性を有するものであれば、適宜の材料からなる剥離紙を用いることができる。このような、剥離紙としては、例えばポリエステルフィルム、上質紙又はグラシン紙などの片面もしくは両面にシリコーン樹脂を塗布したもの等が用いられる。
【0051】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0052】
(実施例及び比較例で用いた原材料)
(1)パパイン(和光純薬工業株式会社製)
(2)プロテアーゼ(和光純薬工業株式会社製)
(3)塩化カリウム(和光純薬工業株式会社製)
(4)塩化ナトリウム(和光純薬工業株式会社製)
(5)塩化カルシウム(和光純薬工業株式会社製)
(6)硫酸ナトリウム(和光純薬工業株式会社製)
(7)ポリビニルアルコール(日本酢ビ・ポバール社製、商品名「JF−17」)
(8)グリセリン(濃グリセリン、阪本薬品工業社製)
(9)コーンスターチ(試薬特級、和光純薬工業社製)
(10)タルク(試薬特級、和光純薬工業社製)
(11)パラフィン(試薬特級、和光純薬工業社製)
(12)セタノール(試薬特級、和光純薬工業社製)
(13)ワセリン(試薬特級、和光純薬工業社製)
(14)流動パラフィン(日本薬局方、日興製薬製)
(15)乳化剤A(モノステアリン酸グリセリン、日光ケミカルズ株式会社製)
(16)乳化剤B(ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、花王株式会社製)
(17)水(蒸留水)
(18)水系粘着剤(メタクリル酸−アクリル酸n−ブチルコポリマー、日本アクリル社製、商品名「プライマルN−580NF」)
(19)支持体(厚さ70μmのポリウレタンフィルム)
(20)剥離紙(離型PETフィルム、シリコーン系離型剤により離型処理が施されたポリエチレンテレフタレートフィルム)
【0053】
(実施例1:顆粒剤)
パパイン10重量部と、塩化カリウム4重量部と、ポリビニルアルコール10重量部と、コーンスターチ64重量部と、タルク2重量部とを、汎用混合機を用いて均一となるように混合した。しかる後、さらに攪拌しながら、グリセリンと水との1:1混液20重量部を少しずつ添加し造粒した。この造粒を風乾させた後、20メッシュのふるいを用いて荒粒子を除去すると共に、軽く粉砕して顆粒剤を得た。
【0054】
(実施例2:顆粒剤)
塩化カリウムの配合量を20重量部、及びコーンスターチの配合量を48重量部としたこと以外は、実施例1と同様にして顆粒剤を得た。
【0055】
(実施例3:乳液剤)
パラフィン5重量部と、セタノール1.3重量部と、ワセリン18重量部と、流動パラフィン26重量部と、グリセリン8重量部と、乳化剤A3重量部と、乳化剤B3重量部とを混合した。しかる後、60℃に加温して更に均一となるように混合し第1の混合液を得た。
【0056】
別に、水29.3重量部にポリビニルアルコール5重量部と、塩化カリウム0.4重量部とを加えて50℃に加温し、攪拌して完全に溶解させた。溶解した後、パパイン1重量部をさらに加えて、均一となるように混合し、第2の混合液を得た。
【0057】
60℃に加温した上記第1の混合液を攪拌しながら、上記第2の混合液を添加した。さらに、ホモミキサーを用いて乳化させた後、冷却し乳液剤を得た。
【0058】
(実施例4:乳液剤)
水の配合量を27.7重量部、及び塩化カリウムの配合量を2重量部としたしたこと以外は、実施例3と同様にして乳液剤を得た。
【0059】
(実施例5:皮膚外用貼付剤)
固形分として86.9重量部の水系粘着剤に対し、パパイン1重量部と、塩化カリウム0.1重量部と、ポリビニルアルコール2重量部と、グリセリン10重量部とを添加した。しかる後、均一になるように混合し、塗工液を得た。
【0060】
次に、剥離紙の離型処理がされた面に、上記塗工液を乾燥後の厚みが80μmとなるように塗工した。塗工した後、80℃で10分間乾燥し、皮膚外用組成物からなる膏体層を形成した。しかる後、膏体層を支持体の片面に積層し、皮膚外用貼付剤を得た。
【0061】
(実施例6:皮膚外用貼付剤)
水系粘着剤の固形分としての配合量を85.6重量部、パパインの配合量を2重量部、及び塩化カリウムの配合量を0.4重量部としたこと以外は、実施例5と同様にして皮膚外用貼付剤を得た。
【0062】
(実施例7:皮膚外用貼付剤)
水系粘着剤の固形分としての配合量を81重量部、パパインの配合量を5重量部、及び塩化カリウムの配合量を2重量部としたこと以外は、実施例5と同様にして皮膚外用貼付剤を得た。
【0063】
(実施例8:皮膚外用貼付剤)
水系粘着剤の固形分としての配合量を86.98重量部、及び塩化カリウムの配合量を0.02重量部としたこと以外は、実施例5と同様にして皮膚外用貼付剤を得た。
【0064】
(実施例9:皮膚外用貼付剤)
水系粘着剤の固形分としての配合量を86.95重量部、及び塩化カリウムの配合量を0.05重量部としたこと以外は、実施例5と同様にして皮膚外用貼付剤を得た。
【0065】
(実施例10:皮膚外用貼付剤)
水系粘着剤の固形分としての配合量を86重量部、及び塩化カリウムの配合量を1重量部としたこと以外は、実施例5と同様にして皮膚外用貼付剤を得た。
【0066】
(実施例11:皮膚外用貼付剤)
水系粘着剤の固形分としての配合量を84重量部、及び塩化カリウムの配合量を3重量部としたこと以外は、実施例5と同様にして皮膚外用貼付剤を得た。
【0067】
(実施例12:皮膚外用貼付剤)
タンパク質分解酵素として、パパインに替えてプロテアーゼを用いたこと以外は実施例5と同様にして皮膚外用貼付剤を得た。
【0068】
(比較例1:クリーム剤)
手足の荒れ防止等を効能とする尿素を10重量部含有する市販のクリーム剤である尿素軟膏を用いた。なお、このクリーム剤は、タンパク質分解酵素及び塩化カリウムを含んでいなかった。
【0069】
(比較例2:ゲル剤)
パパイン含有の市販の乳液状のゲル剤であるナチュレス・WHクレンジングジェル(レキオパラダイス社製)を用いた。なお、このゲル剤は、塩化カリウムを含んでいなかった
【0070】
(比較例3:顆粒剤)
塩化カリウムを配合量しなかったこと、及びコーンスターチの配合量を68重量部としたこと以外は、実施例1と同様にして顆粒剤を得た。
【0071】
(比較例4:顆粒剤)
パパインを配合しなかったこと及びコーンスターチの配合量を74重量部としたこと以
外は、実施例1と同様にして顆粒剤を得た。
【0072】
(比較例5:乳液剤)
塩化カリウムを配合しなかったこと、及び水の配合量を29.7重量部としたこと以外は、実施例3と同様にして乳液剤を得た。
【0073】
(比較例6:乳液剤)
パパインを配合しなかったこと、及び水の配合量を30.3重量部としたこと以外は、実施例3と同様にして乳液剤を得た。
【0074】
(比較例7:皮膚外用貼付剤)
塩化カリウムを配合しなかったこと、及び水系粘着剤の固形分としての配合量を83重量部としたこと以外は、実施例7と同様にして皮膚外用貼付剤を得た。
【0075】
(比較例8:皮膚外用貼付剤)
パパインを配合しなかったこと、及び水系粘着剤の固形分としての配合量を87.6重量部としたこと以外は、実施例6と同様にして皮膚外用貼付剤を得た。
【0076】
(比較例9:顆粒剤)
塩化カリウムを塩化ナトリウムに替えたこと以外は、実施例1と同様にして顆粒剤を得た。
【0077】
(比較例10:乳液剤)
塩化カリウムを塩化ナトリウムに替えたこと以外は、実施例3と同様にして乳液剤を得た。
【0078】
(比較例11:皮膚外用貼付剤)
塩化カリウムを塩化ナトリウムに替えたこと以外は、実施例5と同様にして皮膚外用貼付剤を得た。
【0079】
(比較例12:皮膚外用貼付剤)
塩化カリウムを塩化カルシウムに替えたこと以外は、実施例5と同様にして皮膚外用貼付剤を得た。
【0080】
(比較例13:皮膚外用貼付剤)
塩化カリウムを硫酸ナトリウムに替えたこと以外は、実施例5と同様にして皮膚外用貼付剤を得た。
【0081】
(使用方法及び評価方法)
実施例及び比較例の各試験サンプルについて、試用試験を以下の方法で行い、美肌効果及び経時的安定性を評価した。
【0082】
(1)試用試験における使用方法
モニター8名が、下記の使用方法で5日間試用した。5日間試用後の肌の状態を、不処置の左右対称部位の状態と比較して評価した。
【0083】
顆粒剤:大さじ1杯の顆粒剤を手のひらに取り、水道水を少量ずつ加えて混練し、塗り広げられる柔らかさとした。これを、顔の左半分に塗り広げた後、お湯で湿らせた小さなタオルで覆った。10分間放置した後、水で洗い流し、タオルで水分を除去した。水分を除去した後、1時間後の状態を判定した。
【0084】
乳液剤:小豆程度の大きさの乳液を指先にとり、顔の左半分に塗り広げた後、1時間後の状態を判定した。
【0085】
皮膚外用貼付剤:5cm×5cmに裁断した皮膚外用貼付剤を、就寝前に左足のかかとに粘着包帯を用いて貼付した。一晩経過した後、剥離し、さらに1時間経過したときの状
態を判定した。
【0086】
(2)美肌効果の評価方法及び判定基準
試用後の肌の状態と、5日間試用後の試用部位と左右対称部位の不処置部分の肌の状態とを比較し、以下の判定基準に従って比較評価した。なお、この評価は、後述の1ヶ月経時的安定性試験を実施した後にも実施した。
【0087】
顔における判定基準
評点3…肌のきめが明らかに細かく、透明感が高い。
【0088】
評点2…肌のきめが細かく、透明感が高いと感じる。
【0089】
評点1…差を認めない。
【0090】
かかとにおける判定基準
評点3…角質のガサガサ感が明らかになく、評価した後に、さらに24時間経過した後にも効果が認められる。
【0091】
評点2…角質のガサガサ感が少ない。
【0092】
評点1…差を認めない。
【0093】
(3)経時的安定性の評価方法及び判定基準
各試験サンプルをアルミラミネート袋に入れて密封した。1ヶ月経時的安定性試験として、これを50℃条件下、1ヶ月間保存した後の外観安定性を以下の判定基準に従って比較評価した。さらに、1ヶ月間経時的安定性試験を実施した後に、各試験サンプルの美肌効果を上記判定基準に従って評価した。
【0094】
○:差を認めない。
【0095】
△:色調等にわずかな差を認める。
【0096】
×:色調等に明らかな差を認める。
【0097】
(実施例及び比較例の評価結果)
上記実施例及び比較例の各試験サンプルの評価結果を下記表1,表2に示す。
【0098】
【表1】

【0099】
【表2】

【0100】
表1に示されたように、実施例の各試験サンプルは、比較例の各試験サンプルよりも美肌効果に優れていた。さらに、実施例の各試験サンプルは、経時的安定性にも優れており、50℃条件下、1ヶ月間保存した後にも美肌効果が高かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンパク質分解酵素と、塩化カリウムとを含むことを特徴とする、皮膚外用組成物。
【請求項2】
前記皮膚外用組成物全量100重量部中、水を5重量部以上、99.5重量部以下含む
、請求項1に記載の皮膚外用組成物。
【請求項3】
前記タンパク質分解酵素がパパインである、請求項1または2に記載の皮膚外用組成物。
【請求項4】
前記タンパク質分解酵素と、前記塩化カリウムとの重量配合比が、1:0.02〜1:3の範囲である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の皮膚外用組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の皮膚外用組成物を用いて構成されている、皮膚外用貼付剤。


【公開番号】特開2006−160711(P2006−160711A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−358576(P2004−358576)
【出願日】平成16年12月10日(2004.12.10)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】