説明

皮膚洗浄剤組成物

【課題】角層を除去し、肌表面のつるつる感が得られる皮膚洗浄剤組成物を提供する。
【解決手段】本発明の皮膚洗浄剤組成物は、次の成分(A)〜(D):
(A)炭素数12〜22の脂肪酸またはその塩 0.25質量%以上25質量%以下、
(B)グリセリルエーテル2エチルヘキシル 0.04質量%以上10質量%以下、
(C)(C−1)炭素数8〜16の炭化水素基を有する高級アルコール及び/又は(C−2)炭素数8〜16の炭化水素基を有するモノグリセリン脂肪酸エステル 0.02質量%以上5質量%以下、
(D)水
を含有し、
0.92≧(A)/((A)+(B)+(C))≧0.68(質量比)
であって、5質量%となるように水で希釈したときのpHが7以上12以下(25℃)の範囲である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚洗浄剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
理想的な肌状態として、肌表面のきめが細かく、つるつる滑らかになることが挙げられる。しかし、現実には、外部環境からの刺激、肌の老化や炎症によりこのような肌状態を維持することは難しい。そこで、理想的な肌状態を得るため様々な化粧料組成物が提案されている。
【0003】
その一つに皮膚洗浄剤が挙げられる。皮膚洗浄剤には、肌表面のざらつきの原因となる古くなった角層(肌の最表面に存在する角層で、皮膚の基底層から細胞分裂し、角層となり、垢となって放出される最終段階の状態。角層の接着部分が壊れ、浮き上がったり、めくれて白化した角層をいう。)を取り除くことが求められている。
【0004】
このような皮膚洗浄剤の具体的な例として、顆粒状物質(スクラブ剤)を配合した皮膚洗浄剤が挙げられる(例えば、特許文献1,2)。スクラブ剤を配合した皮膚洗浄剤は、洗浄性が高く、特に古い角層を除去できるため、洗浄後には、肌表面のざらざら感をなくすことが期待されている。例えば特許文献1には、古い角層を除去等するために、平均粒径150〜10μmの顆粒を配合した、ざらつき直しペースト化粧料が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−60356号公報
【特許文献2】特開平6−239733号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来のスクラブ剤を用いた皮膚洗浄剤では、スクラブ剤が角層をこすりとることにより、スクラブ剤が当たった角層部分のみが塊となって取れる。そのため、スクラブ剤が当たらなかった部分の角層は除去されないこととなり、肌全体の角層を均一に取ることができなかった。また、角層除去量においても不十分で、肌表面のつるつるした感じも得られなかった。
【0007】
本発明は、かかる事情を鑑みてなされたものであり、洗浄によって、古くなった角層を均一に除去し、洗浄後の肌表面がつるつるする感じが得られる皮膚洗浄剤組成物を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、特定のアニオン界面活性剤と、グリセリルエーテル2エチルヘキシルとの組み合わせに、更に特定の高級アルコール、又は特定のモノグリセリン脂肪酸エステルを組み合わせて用いることにより、上記課題を解決できる皮膚洗浄剤組成物が得られることを見出した。
【0009】
すなわち、本発明によれば、
次の成分(A)〜(D):
(A)炭素数12〜22の脂肪酸またはその塩 0.25質量%以上25質量%以下、
(B)グリセリルエーテル2エチルヘキシル 0.04質量%以上10質量%以下、
(C)(C−1)炭素数8〜16の炭化水素基を有する高級アルコール及び/又は(C−2)炭素数8〜16の炭化水素基を有するモノグリセリン脂肪酸エステル 0.02質量%以上5質量%以下、
(D)水
を含有し、
0.92≧(A)/((A)+(B)+(C))≧0.68(質量比)
であって、5質量%となるように水で希釈したときのpHが7以上12以下(25℃)の範囲である皮膚洗浄剤組成物が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、古い角層を均一に除去し、これまでにない肌表面のつるつる感が得られる皮膚洗浄剤組成物を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施例及び比較例における成分(A)、(B)、(C)の質量比と効果を表した三角図表である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の皮膚洗浄剤組成物について説明する。
【0013】
[成分(A)]
本発明の成分(A)は、炭素数12〜22の脂肪酸またはその塩であり、直鎖又は分岐鎖のアルキル基を有するものである。特に、炭素数12〜16の直鎖脂肪酸またはその塩が、泡立ち性および角層を取り除く効果の観点から好ましい。具体的には、ラウリル酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸などが挙げられ、ラウリル酸、ミリスチン酸がより好ましい。
【0014】
また、成分(A)の塩としては、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属;アンモニウム;アミノメチルプロパノール等のアルカノールアミン;リジン、アルギニン等の塩基性アミノ酸が挙げられる。これらの中で、カリウム等のアルカリ金属、及びアンモニウムが本発明の皮膚洗浄剤組成物が経時での着色が少ない観点から好ましい。
【0015】
成分(A)の含有量は、本発明の皮膚洗浄剤組成物全体に対して、洗浄性の観点から0.25質量%以上25質量%以下が好ましい。さらに使用方法により以下の含有量とすることがより好ましい。
【0016】
使用方法として、(i)本発明の皮膚洗浄剤組成物を手にとり、水で希釈し、泡立てて使用する場合は、泡立ち性の観点から、成分(A)を5質量%より大きく25質量%以下含有することが好ましい。(ii)本発明の皮膚洗浄剤組成物を希釈せずにそのまま使用する場合は、成分(A)を0.25質量%以上5質量%以下含有することが好ましい。具体的には、本発明の皮膚洗浄剤組成物をフォーマーなどの容器に入れて泡状に吐出し、希釈せずに使用する場合である。
【0017】
[成分(B)]
本発明の成分(B)は、グリセリルエーテル2エチルヘキシルである。成分(B)は、後述する成分(C)と共に成分(A)とミセルを形成して可溶化された状態にあることが重要である。この状態の皮膚洗浄剤は、角層表面と相互作用し、角層を除去する作用がある。
【0018】
成分(B)の含有量は、角層除去能を得る観点から、本発明の皮膚洗浄剤組成物全体に対して、好ましくは0.04質量%以上10質量%以下、より好ましくは0.04質量%以上4質量%以下である。
【0019】
[成分(C)]
本発明の成分(C)は、(C−1)炭素数8〜16の炭化水素基を有する高級アルコール及び/又は、(C−2)炭素数8〜16の炭化水素基を有するモノグリセリン脂肪酸エステルである。成分(C)は、成分(A)および成分(B)とともにミセルを形成し、可溶化されていることによって、成分(C)の角層表面への作用を高めることができ、角層を除去する作用を高めることができる。
【0020】
(C−1)炭素数8〜16の炭化水素基を有する高級アルコールとしては、カプリルアルコール、カプリンアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール等が挙げられる。
【0021】
(C−2)炭素数8〜16の炭化水素基を有するモノグリセリン脂肪酸エステルとしては、モノグリセリンカプリル酸エステル、モノグリセリンカプリン酸エステル、モノグリセリンラウリン酸エステル、モノグリセリンミリスチン酸エステル、モノグリセリンパルミチン酸エステルが挙げられる。
【0022】
皮膚(角層)に高浸透し、洗浄性を向上させる観点から成分(C−1)としては、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコールが好ましく、成分(C−2)としては、モノグリセリンカプリン酸エステルが好ましいものとして挙げられる。
【0023】
成分(C)の含有量は、本発明の皮膚洗浄剤組成物全体に対して、良好な洗浄性、泡立性、及び溶け崩れ防止の観点から、好ましくは0.02質量%以上5質量%以下である。
【0024】
[成分(D)]
成分(D)水は溶媒であり、皮膚洗浄剤組成物の残部となる。本発明の皮膚洗浄剤組成物の使用方法、使用形態等に応じて、適宜調整して用いることができる。
【0025】
ここで、本発明は上記成分(A)〜(D)を混合した際、成分(A)、(B)、(C)がミセルを形成し、可溶化した透明な溶液になることが、古くなった角層を均一に取り除く観点から重要である。さらに、高い角層除去能を得る観点から、本発明の皮膚洗浄剤組成物を使用して洗浄している間、更には水で濯いでいる間、その洗浄液が透明な状態であることがより好ましい。このメカニズムの詳細は明らかではないが、次のように推測される。
【0026】
洗浄溶液が白濁した場合、成分(A)、(B)、(C)が形成する洗浄粒子は大きいことを意味する。そして、洗浄粒子が角層間に浸透し難いことを示しており、古くなった角層の洗浄性が低下することを示す。したがって、本発明の皮膚洗浄剤組成物を使用して洗浄している間は、その洗浄液が白濁せず透明な状態が維持されていることが重要である。
【0027】
そこで、本発明の皮膚洗浄剤組成物が、洗浄過程で透明な溶液を維持するために、成分(A)〜(C)の質量比は下記式(1)の関係を満たすことが重要である。
【0028】
0.92≧(A)/((A)+(B)+(C))≧0.68(質量比) (1)
【0029】
さらに、古くなった角層除去能を高める観点から、成分(A)〜(C)の質量比は下記式(2)の関係を満たすことがより好ましい。
【0030】
0.82≧(A)/((A)+(B)+(C))≧0.68(質量比) (2)
【0031】
以上のような質量比で成分(A)〜(C)を用いることにより、古くなり浮き上がったり、めくれて白化した角層細胞をきれいに取り除くことができる。
【0032】
また、成分(A)〜(D)の混合時や使用時においても透明な溶液とする観点から、成分(B)、(C)は下記式(3)または(4)の関係を満たすことがより好ましい。
【0033】
(B)/((A)+(B)+(C))≧0.1(質量比) (3)
(C)/((A)+(B)+(C))≧0.07(質量比) (4)
【0034】
本発明者が、従来のスクラブ剤が配合された皮膚洗浄剤について評価した。スクラブ剤が配合された皮膚洗浄剤で肌を洗浄後、すすぎ液を顕微鏡で観察すると、角層細胞が多数結合した塊状態であることが観察された。これは、スクラブ剤が肌表面に当たった際、スクラブ剤が角層をえぐるように接し除去することを示すと考えられる。そして、スクラブ剤が当たらなかった部分の角層は除去されないこととなり、肌全体の角層を均一に取ることができないといえる。また、このように角層が除去された場合は、肌感触があまり改善せず、つるつる感が持続しない。
【0035】
これに対し、本発明の皮膚洗浄剤組成物で洗浄後、すすぎ液を顕微鏡で観察すると、塊状の角層はほとんど観察されず、角層細胞が細かくばらばらになった様子が観察された。更に、本発明の皮膚洗浄剤組成物と、スクラブ剤を使用した洗浄剤組成物とを比較すると、本発明の皮膚洗浄剤組成物で洗浄した場合の方が角層の除去量が高いことが確認された。また、洗浄後の肌感は、本発明の皮膚洗浄剤組成物で洗浄した肌の方がつるつる感の持続性にも優れていることがわかった。これより、本発明の皮膚洗浄剤組成物では古い角層が均一に除去され、その結果、古い角層が原因と考えられる角層の浮き上がりや、めくれによる肌のざらつき感が消え、つるつるした肌感触が得られるものと考えられる。更には、均一に古い角層が除かれているので、経時でもつるつる感が持続するものと考えられる。
【0036】
また、特許文献2に記載されているように、角層を除去するためにスクラブ剤を配合した皮膚洗浄剤は、人によって嗜好がわかれ、使用時にスクラブ剤が刺激となったり、スクラブ剤の種類によっては異物感を生じる場合があった。しかしながら、本発明の皮膚洗浄剤組成物は、このようなスクラブ剤を用いなくても、高い角層除去量が得られる。
【0037】
[成分(E)]
本発明の皮膚洗浄剤組成物は、泡立ちの観点から成分(E)炭素数8〜16の炭化水素基を有するアルキルグルコシドを含有することが好ましい。アルキルグルコシドは糖類と高級アルコールとから誘導される非イオン界面活性剤であり、例えば次式(5)で表されるものが挙げられる。
【0038】
R−O(CHCHO)−Z (5)
(式(5)中、Rは炭素数6〜20のアルキル基を示し、mは平均で0〜10の数を示し、Zは炭素数5又は6の糖残基を示し、xは平均で1〜5の数を示す。)
【0039】
成分(E)は、本発明の皮膚洗浄剤組成物中に1質量%以上12質量%以下含有することができ、洗浄時の泡立ちを早くし、泡の感触を変える効果がある。
【0040】
[その他成分]
本発明の皮膚洗浄剤組成物は、上記の成分以外に、通常の皮膚洗浄剤に用いられる他の界面活性剤を含有することもできる。例えば、アルキルベンゼンスルホン酸、α−オレフィンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、α−スルホ脂肪酸エステル塩、モノアルキルリン酸エステル塩、アシルグリシン、アシル−L−グルタミン酸塩等のアニオン界面活性剤;ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、脂肪酸モノ又はジアルカノールアミド、ポリオキシアルキレン型ブロックポリマー等の非イオン界面活性剤;第4級アンモニウム塩等のカチオン界面活性剤;カルボベタイン系、スルホベタイン系、イミダゾリニウムベタイン系、ヒドロキシベタイン系、脂肪酸アミドベタイン系等の両性界面活性剤などが挙げられる。
【0041】
またさらに、本発明の皮膚洗浄剤組成物は、必要に応じて、通常の皮膚洗浄剤に用いられる各種成分を含有することができる。例えば、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、ソルビトール等の保湿剤;メチルセルロース、ポリオキシエチレングリコールジステアレート等の粘度調整剤;トリクロサン、トリクロロカルバン等の殺菌剤;グリチルリチン酸カリウム、酢酸トコフェロール等の抗炎症剤;メチルパラベン、ブチルパラベン、フェノキシエタノール、安息香酸塩等の防腐剤;その他、色素、香料、紫外線吸収剤、酸化防止剤等を適宜含有することができる。
【0042】
また、本発明の皮膚洗浄剤組成物は、洗浄性の観点から、5質量%になるように水で希釈したときのpHが、25℃で7以上12以下の範囲であり、より好ましくは8以上10以下の範囲である。
【0043】
本発明の皮膚洗浄剤組成物は、洗顔料、クレンジング剤、メイク落とし、シェービングフォーム、身体洗浄剤等に用いることができる。特に、洗顔料として有用である。
【0044】
本発明の皮膚洗浄剤組成物の剤型は、特に限定されるものではなく、クリーム、液状、ジェル、ポンプフォーム等とすることができる。
【0045】
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【実施例】
【0046】
次に、本発明を実施例及び比較例によって更に具体的かつ詳細に説明するが、本発明はこの実施例によって限定されない。
【0047】
(実施例1〜14、比較例1〜8)
表1〜3に示す組成の皮膚洗浄剤について、下記の製造方法により製造し、角層除去量の測定、及び官能評価を行った。また、皮膚洗浄剤を5質量%となるように水で希釈したときの25℃でのpHを測定した。結果を、表1〜3に併せて示した。
【0048】
<製造方法>
精製水に水酸化カリウムを添加した水溶液を75℃に加温した。この水溶液に、70℃で予備溶解した炭素数12〜22の炭化水素基を有する脂肪酸を添加し、次に、高級アルコール、モノグリセリン脂肪酸エステルを添加し、全て溶解させ均一にした。さらに、グリセリルエーテル2エチルヘキシル及びアルキルグルコシドを添加して、完全に均一になるまで攪拌した。その後、室温まで冷却して、皮膚洗浄剤を得た。また、比較例4は、精製水に水酸化カリウムを添加した水溶液を75℃に加温した。この水溶液に、70℃で予備溶解した炭素数12〜22の炭化水素基を有する脂肪酸を添加し、次に、スクラブを添加し、均一になるまで攪拌した。その後、室温まで冷却して、皮膚洗浄剤を得た。
【0049】
<角層除去量の測定>
(i)成分(A)の含有量(質量%)>5(質量%)の場合
前腕内側部に筒状のガラスのカップ(皮膚との接触部が3cmφ、容積30mL)をとりつけ、バンドで固定した。次に、実施例及び比較例で得られた皮膚洗浄剤をイオン交換水で20倍に希釈したもの5mLを、漏れないようにカップに注ぎこみ、液がこぼれないように、1分間に30〜60回程度の速さで腕を前後に振ることで振動を与え、1分間カップ内の液を攪拌し続けた。続けて、攪拌された液を容積10mLのガラス管に全て回収し、振動機で液が均一になるよう振動させてから、液を1mL採取してチューブに入れ、遠心分離(10,000回転、遠心力5,200×g)を10分間おこなった。上澄みを800μL採取して捨て、残りを攪拌後20μL採取して20μLの細胞染色液(クリスタルバイオレット5%と塩素フクシン5%水溶液を等量、混ぜ合わせた液)と混ぜ合わせ、血球計算盤(ビルケルチュルクタイプ)にて、角層細胞数を数えた。皮膚が液と接触した面積から換算して、一定単位皮膚面積あたりのとれた角層細胞の数として算出し、角層除去数とした。なお、本手順を3回繰り返し、平均の値を角層除去量として算出した。
【0050】
(ii)0.1(質量%)≦成分(A)の含有量(質量%)≦5(質量%)の場合
前腕内側部に筒状のガラスのカップ(皮膚との接触部が3cmφ、容積30mL)をとりつけ、バンドで固定した。次に、皮膚洗浄剤5mLを、漏れないようにカップに注ぎこみ、液がこぼれないように、1分間に30〜60回程度の速さで腕を前後に振ることで振動を与え、1分間カップ内の液を攪拌し続けた。続けて、攪拌された液を容積10mLのガラス管に全て回収し、振動機で液が均一になるよう振動させてから、液を1mL採取してチューブに入れ、遠心分離(10,000回転、遠心力5,200×g)を10分間おこなった。上澄みを800μL採取して捨て、残りを攪拌後20μL採取して20μLの細胞染色液(クリスタルバイオレット5%と塩素フクシン5%水溶液を等量、混ぜ合わせた液)と混ぜ合わせ、血球計算盤(ビルケルチュルクタイプ)にて、角層細胞数を数えた。皮膚が液と接触した面積から換算して、一定単位皮膚面積あたりのとれた角層細胞の数として算出し、角層除去数とした。なお、本手順を3回繰り返し、平均の値を角層除去量として算出した。
【0051】
(iii)スクラブを含有している場合
前腕内側部に筒状のガラスのカップ(皮膚との接触部が3cmφ、容積30mL)をとりつけ、バンドで固定した。次に、成分(A)を5質量%以上含有している場合は、皮膚洗浄剤を20倍に希釈したもの5mLを、あるいは成分(A)を5質量%未満含有している場合は、皮膚洗浄剤5mLを漏れないようにカップに注ぎこみ、液がこぼれないように、テフロン(登録商標)製あるいはガラス製の、先端が丸くなった棒を用いて、カップ内の皮膚とスクラブがこすれる程度の強さで1分間マッサージをおこなった。続けて、攪拌された液を容積10mLのガラス管に全て回収し、振動機で液が均一になるよう振動させてから、液を1mL採取してチューブに入れ、遠心分離(10,000回転、遠心力5,200×g)を10分間おこなった。上澄みを800μL採取して捨て、残りを攪拌後20μL採取して20μLの細胞染色液(クリスタルバイオレット5%と塩素フクシン5%水溶液を等量、混ぜ合わせた液)と混ぜ合わせ、血球計算盤(ビルケルチュルクタイプ)にて、角層細胞数を数えた。皮膚が液と接触した面積から換算して、一定単位皮膚面積あたりのとれた角層細胞の数として算出し、角層除去数とした。なお、本手順を3回繰り返し、平均の値を角層除去量として算出した。
【0052】
<官能評価>
[つるつる感]
専門パネリスト5名に、実施例及び比較例で得られた各皮膚洗浄剤1gを手に取らせ、水で希釈して手の上で泡立て、普段顔を洗うのと同様に実際に洗顔させた。その後、タオルドライ直後の肌のつるつるする感じを(I)3段階評価基準に基づき官能評価した。その評点の合計をつるつる感の評価結果とした。
なお、実施例4、8、比較例5に関してはポンプフォーマー容器(YF−9413 吉野工業株式会社)を用いて、各皮膚洗浄剤をポンプを2回分押し出し、普段顔を洗うのと同様に実際に洗顔させ、タオルドライ直後の肌のつるつるする感じを(I)3段階評価基準に基づき官能評価した。その評点の合計をつるつる感の評価結果とした。
【0053】
[つるつる感の持続性]
専門パネリスト5名に、上記同様に、実施例及び比較例で得られた各皮膚洗浄剤1gで実際に洗顔させ、洗顔後8時間後の肌のつるつるする感じを(I)3段階評価基準に基づき官能評価させた。その評点の合計をつるつる感の持続性の評価結果とした。
なお、実施例4、8、比較例5に関しては、上記同様に、ポンプフォーマー容器(YF−9413 吉野工業株式会社)を用い、実際に洗顔させ、洗顔後8時間後の肌のつるつるする感じを(I)3段階評価基準に基づき官能評価させた。その評点の合計をつるつる感の持続性の評価結果とした。
【0054】
[泡性能]
(i)成分(A)の含有量(質量%)>5(質量%)の場合
専門パネリスト5名に、実施例及び比較例で得られた各皮膚洗浄剤を実際に使用してもらい、手で泡立てるときの泡立ちについて、(II)4段階評価基準に基づき官能評価した。その評点の合計を泡性能の評価結果とした。
【0055】
(ii)0.1(質量%)≦成分(A)の含有量(質量%)≦5(質量%)の場合
専門パネリスト5名に、実施例及び比較例で得られた各皮膚洗浄剤をポンプフォーマー容器(YF−9413 吉野工業株式会社)を用いて各皮膚洗浄剤をポンプを2回分押し出し、普段顔を洗うのと同様に実際に使用してもらい、泡質について、(II)4段階評価基準に基づき官能評価した。その評点の合計を泡性能の評価結果とした。
【0056】
(I)3段階評価基準
2;肌がつるつるする
1;肌がややつるつるする
0;肌がつるつるしない
【0057】
(II)4段階評価基準
3;泡立ちが非常に良い
2;泡立ちがやや良い
1;泡立ちがやや悪い
0;泡立ちが悪い
【0058】
<pHの測定方法>
実施例、比較例で得られた各組成物をイオン交換水で20倍希釈して5質量%水溶液とし、25℃でpHメーター(堀場製作所製、型番F−22)を用いて測定した。
【0059】
【表1】

【0060】
【表2】

【0061】
【表3】

【0062】
表中の符号は、それぞれ以下を示す。
*1 グリセリン脂肪酸エステル:モノグリセリンカプリン酸エステル
製品名:サンソフト No.760H
製造元:太陽化学株式会社
*2 アルキルグルコシド:アルキル(8−16)ポリグルコシド
製品名:AG−10LK
製造元:花王株式会社
*3 スクラブ:材料:低密度ポリエチレン
製品名:フロービーズCL−5007
製造元:住友精化株式会社
【0063】
上記、各実施例及び比較例より得られた角層除去量を3段階で評価し、図1の成分(A)、(B)、(C)の質量比をそれぞれ軸とした三角図表中に、その評価結果をプロットした。なお、図1において、成分(A)、(B)、(C)の質量比は、成分(A)、(B)、(C)の総量を20質量%とし、残量を水とした場合の値とした。
【0064】
図1中の記号は、それぞれ以下を示す。
◎;角層除去量(×10,000cells/cm)が1.5以上
○;角層除去量(×10,000cells/cm)が0.8以上1.5未満
●;角層除去量(×10,000cells/cm)が0.8未満
【0065】
図1より、0.92≧(A)/((A)+(B)+(C))≧0.68の範囲において角層除去量が0.8以上、さらに0.82≧(A)/((A)+(B)+(C))≧0.68、(B)/((A)+(B)+(C))≧0.1(質量比)、(C)/((A)+(B)+(C))≧0.07の範囲において角層除去量が1.5以上であることが分かった。
【0066】
スクラブ剤を用いた比較例4は、スクラブ剤を用いない比較例1よりも角層除去量が多かった。また、各実施例はいずれも、比較例4より角層除去量が多く、十分な角層除去効果が得られたことが分かった。
【0067】
<角層細胞の形状観察>
実施例3と比較例4で得られた皮膚洗浄剤を1.0gずつとり、水で希釈して泡立てて、前腕内側部を30秒間マッサージして洗浄後、洗浄部位に筒状のガラスのカップ(皮膚との接触部が3cmφ、容積30mL)をとりつけ、バンドで固定した。次に、水5mLを、漏れないようにカップに注ぎこみ、液がこぼれないように、テフロン(登録商標)製あるいはガラス製の、先端形状が丸い棒を用いて、カップ中の皮膚とスクラブがこすれる程度の強さで1分間マッサージをおこなった。容積10mLのガラス管に液を全て回収し、振動機で液が均一になるよう振動させてから、液を1mL採取してチューブに入れ、遠心分離(10,000回転、遠心力5,200×g)を10分間おこなった。上澄みを800μL採取して捨て、残りを攪拌後20μL採取して20μLの細胞染色液(クリスタルバイオレット5%と塩素フクシン5%水溶液を等量、混ぜ合わせた液)と混ぜ合わせ、スライドガラスに乗せて光学顕微鏡により角層細胞の形状を観察した。
【0068】
その結果、実施例3の洗浄剤を用いた場合では、角層細胞がバラバラに1つずつ存在しているのに対し、比較例4の洗浄剤を用いた場合では、角層細胞が集合して塊として存在していることが確認できた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)〜(D):
(A)炭素数12〜22の脂肪酸またはその塩 0.25質量%以上25質量%以下、
(B)グリセリルエーテル2エチルヘキシル 0.04質量%以上10質量%以下、
(C)(C−1)炭素数8〜16の炭化水素基を有する高級アルコール及び/又は(C−2)炭素数8〜16の炭化水素基を有するモノグリセリン脂肪酸エステル 0.02質量%以上5質量%以下、
(D)水
を含有し、
0.92≧(A)/((A)+(B)+(C))≧0.68(質量比)
であって、5質量%となるように水で希釈したときのpHが7以上12以下(25℃)の範囲である皮膚洗浄剤組成物。
【請求項2】
さらに、成分(E)として炭素数8〜16の炭化水素基を有するアルキルグルコシドを1質量%以上12質量%以下含有する請求項1記載の皮膚洗浄剤組成物。
【請求項3】
さらに、0.82≧(A)/((A)+(B)+(C))≧0.68(質量比)である請求項1または2記載の皮膚洗浄剤組成物。
【請求項4】
さらに、(B)/((A)+(B)+(C))≧0.1(質量比)である請求項1乃至3いずれか一項に記載の皮膚洗浄剤組成物。
【請求項5】
さらに、(C)/((A)+(B)+(C))≧0.07(質量比)である請求項1乃至4いずれか一項に記載の皮膚洗浄剤組成物。

【図1】
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【公開番号】特開2012−87072(P2012−87072A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−232950(P2010−232950)
【出願日】平成22年10月15日(2010.10.15)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】