説明

監視システム

【課題】 特定の物体が、特定の場所に位置する人によって取り扱われたことを証明することができるようにする、監視システムを提供することである。
【解決手段】 特定の場所に設置したID発信手段4と、移動可能な物体10に設けたID受信手段11とからなり、上記ID発信手段およびID受信手段には、それそれには、人体9が触れたとき、その人体9を介して電気信号を送受信可能にする電極8,12を備えるとともに、上記ID発信手段4は、設置場所に対応したIDを記憶し、そのIDを上記電極を介して発信する機能を備え、上記ID受信手段11は、ID発信手段が発信したIDを上記電極12を介して受信し、それを記憶する機能とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、物体を監視するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
特定の物が、正規のルートを通って運ばれてきたか否かを確認したり、経由場所を特定したりするためのシステムがある。
例えば、配達物に、IDを発信する通信機能つきICタグなどを添付し、このIDを、配達過程に設けた読み取り装置に読み取らせて、そのデータを管理コンピュータへ送信する。上記読取装置は、読み取ったIDとともに、自身の位置情報も管理コンピュータへ送信するようにする。
【0003】
上記のようにすることで、管理コンピュータには、位置情報と配達物のIDとが送信されることになり、管理コンピュータは、受信した位置情報から、配達中の配達物の位置を確認することができる。そして、最終的には、配達物が目的地に配達されたかどうかがわかるというものである(特許文献1参照)。
このようなシステムでは、物体から読み取ったIDと読み取り装置の位置情報とをそれぞれ管理コンピュータへ送信し、これらの対応付けを管理コンピュータで行なうようにしている。
【0004】
一方、上記管理コンピュータではなく、物体に自身の経由履歴を記憶させる方法がある。この方法では、物体の経由場所にID発信手段を設け、物体側には、IDを受信して記憶するICタグなどの記憶手段を設ける。物体側に、その物体の経由場所に対応したIDが記憶されるため、管理コンピュータなどを用いなくても、後から、物体側の記憶手段に記憶されたIDを読み出せば、そのIDから、その物体がどこを経由したのかが分かる。
【0005】
上記のようなシステムは、例えば、万引きの検出にも利用できる。すなわち、小売店において、個々の商品に、IDを受信して記憶することができるICタグを取り付け、レジでの精算時に、店員が専用のID発信装置に商品のICタグを近接させて、そのレジを特定するためのレジIDを上記ICタグに書き込むようにする。このようにすれば、精算済みの商品のICタグには、レジIDが記憶されることになる。例えば、店員がレジで代金を受け取ってから、その商品のICタグを上記ID発信装置に近づけて、レジIDを上記ICタグへ入力するようにする。従って、商品のICタグに、レジIDが記憶されているかどうかによって、レジを通過したかどうかを後から確認することができる。
そして、レジに設置されたID発信装置と商品に取り付けたICタグとの間は、近距離の非接触方式による無線通信によってIDを送受信するようにしている。
【特許文献1】特開平11−175621号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のような非接触の通信方式を用いた場合、レジに設置したID発信装置に、商品を近づけることによって、商品のICタグに、場所を特定するレジIDを書き込んで記憶させるようにする。このようにすると、例えば、万引きをしようとした万引犯は、店員が離れているレジに商品を持って行って、その商品を上記ID発信装置に近づければ、商品のICタグにレジIDを書き込ませることができる。商品のICタグにレジIDが記憶されていれば、後から、それを確認して万引の疑いを晴らすこともできる。
つまり、商品が、レジのID発信装置に近づいただけで、実際に、代金が支払われていないのに、レジIDがICタグに記憶されてしまい、レジを経由したとみなされることがなる。
また、上記ID発信装置に商品を近づける処理を店員に行なわせる必要があり、店員に作業負担がかかるとともに、店員が実際に会計をしたとしても上記ID発信装置に商品を近づける処理を忘れてレジIDがICタグに記憶されないという事故が起こる可能性がある。
【0007】
レジでは、代金の支払いが終了した時点で、店員が商品をID発信装置に近づけて、レジIDをICタグへ入力するようにしなければならないが、上記のシステムでは、店員以外の者が商品をID発信装置に近づけてもレジIDがICタグへ書き込まれるので、店員が処理したのかどうかを確認することができなかった。
なお、上記ID発信装置を、レジカウンターを境にして店員側に設置して、客側から離した位置に設けることも考えられるが、カウンター内に店員がいない時に、万引犯は、手を伸ばしてID発信装置から商品にIDを受信させることもできる。
【0008】
そして、このような問題は、IDの送受信関係を反対にした場合でも同様に起こる可能性がある。すなわち、商品側にID発信機能を設けて、レジカウンターにID受信装置を設けた場合でも、店員以外の者が手を伸ばして、代金精算を行なっていない商品のIDを上記受信装置へ読み込ませることができるという問題がある。
この発明の目的は、商品などの特定の物体が、特定の場所に位置する人によって取り扱われたことを証明することができるようにする、監視システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の発明は、特定の場所に設置したID発信手段と、移動可能な物体に設けたID受信手段とからなり、上記ID発信手段およびID受信手段のそれぞれには、人体が触れたとき、その人体を介して電気信号を送受信可能にする電極を備えるとともに、上記ID発信手段は、設置場所に対応したIDを記憶し、そのIDを上記電極を介して発信する機能を備え、上記ID受信手段は、ID発信手段が発信したIDを上記電極を介して受信し、それを記憶する機能を備えた点に特徴を有する。
【0010】
第2の発明は、第1の発明を前提とし、上記ID発信手段を、特定の動作を行なうべき1または複数の特定の場所であって、人が立つことができる平面に設けた点に特徴を有する。
【0011】
第3の発明は、特定の動作を行なうべき複数の特定の場所のそれぞれであって、人が立つことができる平面に、ID発信手段あるいはID受信手段のいずれか一方を設け、ID発信手段あるいはID受信手段のいずれか一方を設けたそれぞれの場所を区画する仕切りを備え、上記ID発信手段およびID受信手段のそれぞれには、人体が触れたとき、その人体を介して電気信号を送受信可能にする電極を備えるとともに、上記ID発信手段は、記憶したIDを上記電極を介して発信する機能を備え、上記ID受信手段は、ID発信手段が発信したIDを上記電極を介して受信し、それを記憶する点に特徴を有する。
【0012】
第4の発明は、上記第1〜第3の発明を前提とし、上記ID受信手段は、ID発信手段から受信したIDに、そのIDの発信時刻または受信時刻を対応付けて記憶する機能を有する点に特徴を有する。
なお、上記受信時刻は、ID受信手段がIDを受信した時刻であり、ID受信手段が時計機能を備え、自身がIDを受信した時点で特定する時刻である。また、上記発信時刻は、ID発信手段がIDを発信した時刻であり、ID発信手段が時計機能を備え、IDを発信する際に、その時刻を特定し、IDとともに発信するようにする。ただし、両時刻は、ほとんどの場合、同時刻とみなせる。
【0013】
第5の発明は、上記第1〜第4の発明を前提とし、上記物体には取っ手を設け、この取っ手に上記ID発信手段の電極またはID受信手段の電極を備えた点に特徴を有する。
上記取っ手には、物品本体に突出させて取り付けたようなものだけでなく、物品を持つときに、その部分に手が触れるようになっているものも含むものとする。例えば、指を引っ掛けるための凹部なども取っ手に含む。
【0014】
第6の発明は、上記第1、第2、第4および第5の発明のいずれかを前提とし、上記物体が、特定の場所において利用される手段である点に特徴を有する。
上記特定の場所において利用される手段とは、特定の場所で人が行なう作業に用いる工具や、装置などである。
【0015】
第7の発明は、上記第6の発明を前提とし、上記手段は、それを機能させるためのスイッチを備えるとともに、このスイッチを手段に設けたID発信手段またはID受信手段と連係し、上記スイッチを入れたときに、上記ID発信手段またはID受信手段が動作する構成にした点に特徴を有する。
【発明の効果】
【0016】
第1〜第7の発明によれば、特定の場所において、物体が人に触れられたことを後から確認することができる。
特に、ID発信手段からID受信手段へのIDの送信を、人体を介した通信に限っているので、物体が人の手に触れたことを証明できる。
このように、物体の移動履歴だけでなく、個々の場所で、その物体に人が触れた事を確認できるため、人によって何らかの処理が行なわれたか否かを推測することができる。
例えば、商品の料金精算を行なうレジと、商品との間でIDの送受信を行うようにすれば、その商品がレジで店員に取り扱われたかどうかを、後から確認することもできる。
【0017】
物体側にID受信手段を設け、特定の場所側にID発信手段を設けた場合には、物体のID受信手段が記憶しているデータから、その物体が特定の場所で人に扱われたかどうかを確認することができる。
反対に、物体側にID発信手段を設けて、特定の場所側にID受信手段を設けた場合には、ID受信手段が記憶しているデータから、その場所で取り扱われた物体がどれなのかを特定できる。
どちらにしても、特定の物体が、特定の場所で人に扱われたどうかを確認することができる。
【0018】
第1の発明では、物体側にID受信手段を設けているため、物体に設けたID受信手段が記憶しているデータから、その物体が特定の場所で扱われたがどうかを確認できる。
例えば、商品側にID受信手段を設けた場合には、万引などで、商品がレジで店員に取り扱われなかったときには、商品のID受信手段に、レジに対応したIDが記憶されない。従って、万引犯に商品を持ち出されそうになったときに、その商品にレジのIDが記憶されていないことから、商品代の精算が行なわれていないことを推測することができる。
反対に、商品にレジのIDが記憶されていれば、万引の疑いを晴らすこともできる。
【0019】
第2の発明によれば、特定の場所で特定の物体を取り扱う人が、特に意識しないでも、場所に対応したIDを物体に設けたID受信手段が受信することができる。
例えば、ID発信手段の設置位置を、上記人(例えば、店員など)が処理をする際に存在すべき場所の床面にすることによって、上記人はIDを読み取らせるという処理を特別に行なわずにIDを確実に読み取らせることができる。
【0020】
また、上記第1および第2の発明では、特定の位置が複数ある場合にも、物体の移動履歴などを、ひとつのID受信手段が記憶している情報だけで確認することができる。
場所に受信手段を設けた場合に、特定の物体の移動履歴を確認するためには、その物体が取り扱われた複数の場所に設置されたID受信手段が受信したID情報を総合化する必要があるが、この発明では、そのような必要がない。
【0021】
例えば、ID受信手段が受信したIDを総合化するために、管理コンピュータを用いる場合には、複数のID発信手段と管理コンピュータとを接続するネットワークを形成する必要があるが、上記第1、第2の発明では、上記のようなネットワークを形成する必要がない。このように、ネットワークの形成が不要なので、新たな場所へのID発信手段の設置を容易に行なうことができる。
【0022】
第3の発明によれば、それぞれ特定の動作を行なうべき複数の特定の場所と、物体との間のIDの受信情報から、特定の目的を持った場所に物体が位置したことを確認することができる。これにより、特定の動作が行なわれたことを推測することができる。
また、上記特定の場所の間に仕切りを設けることによって、特定の動作を行なう場所を明確に区分し、物体が特定の場所に位置しただでなく、その物体を触った人が特定の動作を行なったと推測する際の確度を高めることができる。
【0023】
第4の発明によれば、物体の移動履歴を確認することができる。
第5の発明によれば、特定の物体を手に取る場合に、人は意識しないで、ID発信手段またはID受信手段に手を触れるようになる。そのため、特に意識しないでも、特定の場所で、IDの送受信が確実にできるようになる。
【0024】
第6の発明によれば、道具などの手段に記憶された場所のIDから、その手段が、特定の場所で人に触れた状態でその位置にあったか否かを確認できる。そのため、例えば、特定の作業の手段としての道具を利用する作業現場へ、作業者が必要な道具を持って行ったかどうかを確認することができる。しかも、その道具が、単にその場所に置かれたのではなく、人がその道具を持った状態で、その位置にいたことが分かるので、作業者が必要な作業を行なったかどうかを推測することもできる。
【0025】
第7の発明によれば、特定の場所で利用されるべき手段が、実際に機能したかどうかを確認することができる。これにより、作業者などが、その場所で行なうべき作業を行なったかどうかを、推測することができる。
特に、上記手段を機能させたときにだけ、IDの送受信が行なわれるので、単にその場所で、道具などの手段を触ったというだけでなく、その手段を利用しで作業したかどうかをより正確に推測できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
図1〜図5に、この発明の第1実施形態を示す。この第1実施形態は、この発明のシステムを万引の監視に利用する例である。
図1は、このシステムを導入した店舗Aの平面図である。複数の商品陳列棚1と、代金精算を行なうためのレジカウンター2とを備えている。このレジカウンター2は、店内の一角を囲むように設けられていて、その内側に、店員が入って商品を購入する客と対応するようにしている。そして、上記レジカウンター2の上には、通常のPOS装置3を設けるとともに、人が立つことができる平面であるレジカウンター2の内側の床には、この発明のID発信手段としてのID発信装置4が埋め込まれている。
【0027】
このID発信装置4は、図2に示すように、その場所を特定する場所IDを記憶した記憶部5と、これに接続したCPU6、発信回路7、発信電極8とを備えている。上記CPU6は、記憶部5が記憶している場所IDを、発信回路7および発信電極8を介して発信させる機能を備え、上記発信回路7は、上記場所IDを電気信号として出力する機能を備えている。上記電気信号としては、発信電極8から人体を介さず空気中を無線で発信される電波ではなく、電流、電界、電圧など、発信電極8から人体を介して伝達されるものなら、どのようなものでも利用できる。ただし、人がゴム底など、非導電性の靴や手袋を着用している場合には、人体に電流信号を流すのは難しいので、電界信号を利用するようにする。
【0028】
なお、上記ID発信装置4の記憶部5、CPU6および発信回路7は、ICチップで構成することができる。上記発信回路7などを構成するICチップは、発信電極8より下方や、発信電極8から離れた場所で、発信電極8上に立つ店員9の重量の影響を受けない場所に設けることもできる。
【0029】
一方、図3のように、この発明の物体にあたる商品10には、ID受信手段としてのICシール11を貼付している。このICシール11は、図4のように、受信電極12と、受信回路13と、CPU14と、記憶部15とを備えている。上記受信電極12は、上記ID発信装置4の発信電極8から発信された場所IDを受信する電極である。
【0030】
また、受信回路13は、受信した信号を場所IDとしてCPU14に入力し、CPU14は、それを記憶部15に記憶させる機能を備えている。なお、上記CPU14は、受信した場所IDを記憶部15に記憶させる際に、上記場所IDに、その受信日時を対応付けて記憶させる機能を備えてもよい。
さらに、上記CPU14は、図示しない入出力部を介して、記憶部15が記憶しているデータを出力する機能も備えている。
【0031】
上記システムの作用を説明する。
商品10を購入しようとした客は、商品10をレジカウンター2へ持っていく。図5のように、レジカウンター2内の店員9は、上記ID発信装置4の発信電極8の上に立って、客から商品10を受け取り、商品10に貼付されたICシール11部分に手9bを触れる。それから、店員9は、POS装置3を用いて、通常の代金精算処理を行なう。
店員9の手9bが、受信電極12に接触しているとき、足9aは床に設置されている発信電極8と接触している。そこで、上記発信電極8と受信電極12との間は、店員9の人体を介して接続され、ID発信装置4から発信された場所IDが、図5に示す破線の矢印Bのように受信電極12へ送信される。
【0032】
上記受信電極12を介して場所IDを受信したICシール11では、CPU14が受信した場所IDに受信時刻を対応付けて記憶部15に記憶させる。
このように、レジカウンター2内の店員9は、通常の処理を行なうだけで、特別な作業をしなくても、商品10には、レジカウンター2内の場所IDが記憶されることになる。
そして、レジカウンター2内の場所IDは、発信電極8と受信電極12とが人体を介して接続された場合にのみ、上記ICシール11に記憶される。
【0033】
従って、上記商品10のICシール11が記憶している場所IDを、後から読み出すことによって、その商品10がレジカウンター2内の発信装置4の位置に立っていた店員9によって触られたことが確認できる。
反対に、商品10が万引された場合には、そのICシール11には、上記場所IDが記憶されないため、場所IDを商品のICシールから読み出すことができない。そのため、商品が無断で持ち出されたところを発見した場合、店員は、持ち出した人を止めて、その商品のICシールに場所IDが記憶されていないことを確認して、その商品がレジを通らないで持ち出されたと主張する材料にすることもできる。
また、場合によっては、客が万引を疑われた場合、商品10に貼付されているICシール11から、そこに記憶されている場所IDを読み出して、それがレジカウンター2内のものであることが確認できれば、不当な疑いを晴らすこともできる。
【0034】
このシステムでは、ID発信装置4から発信される場所IDが、従来のように無線通信で発信されるものではないので、商品10がレジカウンター2の付近を通過したというだけでは、上記ICシール11が、場所IDを受信することはできない。そのため、店員9がその商品10を処理したかどうかを、より正確に推測することができる。
ただし、レジカウンター2内には、店員以外は簡単に立ち入ることができないようにしておくことが望ましい。
なお、この第1実施形態では、レジカウンター2内の店員9の立ち位置が、この発明の特定の場所である。
【0035】
図6、図7に、この発明の第2実施形態を示す。
この第2実施形態では、図6に示すように、ハンドランプ16のグリップ16aにこの発明のID受信手段であるICシール11を貼付している。このハンドランプ16は、夜間、警備員がビル内を巡回する際に利用するハンドランプであり、スイッチ16bによって点灯するようにしている。
そして、上記ICシール11は、図4に示す第1実施形態のICシール11と同じものであり、警備員がグリップ16aを握ったとき、その手の平と受信電極12とが接触するようにしている。ただし、このICシール11の受信回路13(図4参照)には、上記スイッチ16bが接続され、ランプが点灯したときにのみ動作するようにしている。
【0036】
一方、図7に示すように、上記警備員が巡回すべき経路には、ID発信装置4a,4b,4cを設置している。ここでは、廊下17に面した各部屋18a,18b,18c内の床に、それぞれID発信装置4a,4b,4cを設けている。これらのID発信装置は図2に示す第1実施形態のID発信装置4と同様の装置である。そして、各ID発信装置4a,4b,4cの記憶部5は、それぞれの設置場所を特定する場所IDを記憶し、発信電極8を床面に露出させている。
なお、上記ID発信装置4a,4b,4cを設置した場所は、警備員がビル内を巡回する際に行かなければならない場所である。すなわち、各部屋18a,18b,18cのドアを開けて、廊下17から中を覗くだけでなく、中に入ってから、上記ハンドランプ16で室内を照らして異常が無いかどうか確認しなければならないようにしている。
【0037】
警備員が、ハンドランプ16のスイッチ16bを入れて点灯させると、上記ICシール11がID受信手段として機能する。そこで、上記警備員が、点灯したハンドランプ16を携帯して、ビル内の巡回を行ない、各部屋18a,18b,18cのID発信装置4a,4b,4c上に立ったときには、警備員の足がID発信装置の発信電極8と接触するので、発信電極8と受信電極12とが警備員の人体を介して電気的に接続される。従って、ID発信装置4a,4b,4cの設置場所に対応した場所IDが、発信電極8から人体を介して、ハンドランプ16に貼付したICシール11の受信電極12へ送信される。上記ICシール11では、CPU14が、受信電極12および受信回路13を介して受信した場所IDに受信日時を対応付けて記憶部15に記憶させる。
【0038】
例えば、警備員が、部屋18aのID発信装置4a上で、室内をハンドランプ16で照らして見回した時には、部屋18aの場所IDと時刻がハンドランプ16のICシール11の記憶部15に記憶される。同様に、他の部屋や、その他、ID発信装置が設置されている場所に、警備員が立った時に、その場所の場所IDが上記ICシール11へ送信される。
【0039】
そのため、後から、ICシール11の記憶部15が記憶しているデータを図示しない装置で読み出せば、そのデータに含まれる場所IDから、警備員が立ち寄った場所が確認できるし、場所IDに対応した時刻データから、立ち寄り時刻や経路を確認することもできる。
しかも、上記ハンドランプ16のICシール11は、ランプを点灯させたときにのみ、ID受信手段として機能するので、警備員がID発信発装置4a,4b,4c,4d上に立っても、きちんとハンドランプ16を点灯させなければ、場所IDがICシール11に記憶されることがない。
【0040】
つまり、上記ICシールが記憶している場所IDから、その場所で、ハンドランプ16を点灯させていたことも確認できる。
なお、上記第2実施形態では、ID発信装置の設置場所を、立ち寄るべき場所としているので、上記記憶部15が記憶しているデータから、警備員が、ハンドランプ16を点灯させて、決められた場所をきちんと巡回したかどうかを確認することができる。
【0041】
上記のように、この発明のシステムを利用すると、特定の物体が人の手を介して、特定の場所に位置したという履歴を確認することができる。このシステムでは、上記物体を手にした人の特定や、人の動作までは特定できないが、上記発信電極8と受信電極12との間に人体が介在したことと、物品の位置データとに基づいて、特定の場所で、人によって行なわれる特定の処理、例えば、商品代の受け取りや、室内の見回りなどが、行なわれたことを推測できる。
【0042】
なお、上記第2実施形態では、ハンドランプ16が、この発明の特定の場所において利用される手段である。そして、ハンドランプ16を点灯させるためのスイッチ16bが、この発明の手段を機能させるスイッチであり、ID受信手段を機能させるスイッチである。
ただし、特定の場所である床面にID受信手段を設けて、ハンドランプ16にID発信手段を設けてもかまわない。その場合、上記スイッチ16bが、ID発信手段を動作させるスイッチとなる。
【0043】
さらに、上記ハンドランプのような特定場所において利用される手段としては、例えば、清掃用具、点検工具などが考えられる。上記清掃用具にID発信手段あるいはID受信手段を設け、清掃すべき場所にID発信手段あるいはID受信手段を設ければ、ID受信手段が記憶しているデータから、その場所で、清掃用具を手にしたか否かを確認することができる。その確認結果に基づいて、その場所で清掃作業が行なわれたかどうかを推測できる。
また、工事現場や、鉄道の線路などで、安全確認のために用いる点検工具にID受信手段あるいはID発信手段を設けて、点検の際に立つべき場所にID発信手段あるいはID受信手段を設ければ、その場所で、必要な点検工具を手にしたか否かを、後から確認することができる。そして、必要な点検作業が行なわれたかどうかを推測できる。
そして、上記いずれの手段にも、それを機能させるためのスイッチがあれば、そのスイッチをID発信手段やID受信手段に連係させて、その動作のスイッチとすることができる。
【0044】
図8、図9に示す第3実施形態は、複数の特定の場所間に仕切りを設けた店舗の例である。
図8に示す店舗Cは、商品の陳列棚1と、レジカウンター2とを備え、レジカウンター1には、POS装置3を備えている。また、このレジカウンター2の内外の床面には、ID受信装置11a、11bを備えている。これらのID受信装置11a,11bは、それぞれ図4に示すICシール11と同様の構成をして、受信電極12a,12bを床面に設けている。
【0045】
一方、商品10には、表面に発信電極8を備えたID発信装置4を取り付けている。このID発信装置4は、図2に示す第1実施形態のものと同様の構成をしている。ただし、記憶部5は、この発明の物体である商品10を特定する商品IDを記憶している。
そして、商品10のID発信装置4の発信電極8と、床面の受信電極12aまたは12bとの間に人体が介在したときに、商品IDがID受信装置11a、またはID受信装置11bに受信されるようにしている。
【0046】
以下に、このシステムの作用を説明する。
客19が、陳列棚1から好みの商品10を、レジカウンター2へ持っていく。このとき、商品10側の発信電極8は客19の手19bと接触している。そして、客19が、レジカウンター2の前で、上記ID受信装置11b上に立つと、受信電極12bに客19の足19aが接触し、ID発信装置4の発信電極8と上記受信電極12bとが、客19の人体を介して接続され、商品10の商品IDが、図9に示す破線の矢印Dのように受信電極12bへ送信される。
受信装置11bでは、受信した商品IDに受信時刻を対応付けて記憶する。
【0047】
次に、レジカウンター2内の受信装置11a上に立っている店員9が、客19から商品10を受け取る。このとき、店員9の足9aと受信電極11aとが接触しているので、商品10のID発信装置4の発信電極8に手9bが触れると、この発信電極8と上記受信電極12aとの間が店員9の人体を介して接続される。
そこで、上記発信電極8から受信電極12aへ商品IDが送信される。商品IDを受信した受信装置11aは、受信した商品IDに受信時刻を対応付けて記憶する。
その後、代金の精算が済んだら、再び、商品10は、客19に手渡されるが、客19が商品10を受け取った時点で、再度、発信電極8と受信電極12bとの間が客19の人体で接続され、商品IDが受信装置11b送信され、受信時刻を対応付けて記憶される。
【0048】
このように、受信装置11a,11bには、受信時刻を対応付けた商品IDが記憶される。従って、受信装置11a,11bが記憶している商品IDを読み出せば、いつその商品がその場所で取り扱われたかが分かる。例えば、客19が陳列棚からレジカウンター2へ商品を持ってきたときをt1、店員9がそれを受け取ったときをt2、代金の精算後に客が受け取ったときをt3とすれば、特定の商品IDに対応付けられた時刻t1,t2,t3が、それぞれ、受信装置11b、11a、11bに記憶されていることになる。これらのデータから、商品10が、上記レジカウンター2越しに、客から店員に渡り、また客に渡ったことが確認できる。これにより、商品10が、レジを通って正規に持ち出されたと推測できる。
【0049】
もしも、客が代金を支払わなかった場合には、受信装置11bに商品IDが記憶されたt1の後に、受信装置11aにその商品IDが記憶されていないので、レジカウンター2内の店員がその商品10を手にとっていないことが分かり、不正に持ち出されてしまった可能性があることが分かる。
また、店員が、自店の商品10を不正に持ち去ろうとした場合、客の変わりにレジカウンター2の外側に設置されたID受信装置11bの上に立ち、次にレジカウンター2内の店員が立つべき場所に設置されたID受信装置11a上に立ち、さらに、レジカウンター2の外側でID受信装置11bの上に立って、商品IDを3回読み込ませることが考えられる。しかし、このような場合には、一人の不正者が、レジカウンター2の内外を行ったり来たりしなければならない。このような不正を行った場合には、正規に、レジカウンター2越しに商品10をやり取りする場合と比べて、受信時刻t1,t2,t3の間隔が長くなるので、不正を疑うことができる。同様に、レジカウンター2内の景品等を客に提供する場合においても、自店の店員が、不正に景品を持ち出した場合には、そのことを推測することもできる。このように、レジカウンター2内から、景品等を提供する場合は、レジカウンター2内のID受信装置11aが最初に商品IDを受信し、その後にID受信装置11bが商品IDを受信するので、これらの受信時刻t2とt3の間隔から、従業員がレジカウンター2の外に回って客に成りすましたかどうかを推測すればよい。
【0050】
なお、上記商品IDおよび時刻データを判断するためには、複数の特定の場所であるレジカウンター2の内外に設置された2つのID受信装置11a,11bからデータを読み出す必要がある。個々のID受信装置11a,11bから別々にデータを読み出してもよいし、ID受信装置11a,11bに管理コンピュータを接続して、その管理コンピュータを介して、データを出力するようにしてもよい。
また、上記第3実施形態では、店員9が立つべき特定の場所と、客19が立つべき特定の場所との間にレジカウンター2を設けて、それぞれの特定の場所を区画している。つまり、このレジカウンター2がこの発明の仕切りである。このような仕切りによって、両者が立つべき場所で物体に触ったかどうかをより正確に把握できるようになる。
【0051】
以上の実施形態において、ID発信手段とID受信手段のどちらを、物体に設けてもかまわない。この発明のシステムの使い方によって、どちらにID発信手段を設けるか決めればよい。
例えば、物体側に場所IDを記憶させた場合には、その物体側のIDを検出することで、正しく持ち出されたか否か判断することができる。しかし、その物体がなくなってしまうと、記憶したIDデータを読み出すことができなくなってしまうことになる。
反対に、物体が持ち出されてしまうことを監視し、持ち出されてしまった物体があることを後から確認したい場合には、特定の場所にID受信手段を設け、特定の場所に物体のIDを記憶させるようにすれば、特定の物体が、不正に持ち出されてしまったことを後から確認することができる。
【0052】
また、点検作業などに必要な道具を持って行ったかどうかを、後から確認するためには、物体側にID受信手段を設けた方が、個々の物体が、自身が必要な場所へ持っていかれたかどうかを記憶しているので、データの読み出し処理が簡単である。
なお、上記実施形態では、ID発信手段の発信電極およびID受信手段の受信電極をともに、表面に設けて、人体に接触させるようにしているが、人体との間にID信号を伝達可能な物質を介在させてもかまわない。特に、ID信号を、電界信号にすれば、上記発信電極と受信電極との間に、靴など、非導電性の物質が介在してもかまわない。
【0053】
また、上記各実施形態において、ID受信手段は、受信したIDに受信時刻を対応付けて記憶しているようにしているが、受信時刻の代わりに、発信時刻を対応付けるようにしてもよい。この場合の発信時刻は、ID発信手段がIDを発信する際に特定して、IDとともに発信するようにする。
ただし、これらの時刻を記憶しなくてもかまわない。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】第1実施形態におけるID発信手段の位置を示した店舗の平面図である。
【図2】第1実施形態のID発信手段のブロック図である。
【図3】第1実施形態の商品の斜視図である。
【図4】第1実施形態のID受信手段のブロック図である。
【図5】第1実施形態の作用を説明するための模式図である。
【図6】第2実施形態のハンドランプの斜視図である。
【図7】第2実施形態におけるID発信手段の位置を示したビル内の平面図である。
【図8】第3実施形態におけるID発信手段の位置を示した店舗の平面図である。
【図9】第3実施形態の作用を説明するための模式図である。
【符号の説明】
【0055】
4 ID発信装置
4a,4b,4c ID発信装置
5 記憶部
8 発信電極
9 店員
9a 足
9b 手
10 商品
11 ICシール
12 受信電極
15 記憶部
16 ハンドランプ
16a 取っ手
16b スイッチ
11a,11b ID受信装置
12a,12b 受信電極
19 客
19a 足
19b 手

【特許請求の範囲】
【請求項1】
特定の場所に設置したID発信手段と、移動可能な物体に設けたID受信手段とからなり、上記ID発信手段およびID受信手段のそれぞれには、人体が触れたとき、その人体を介して電気信号を送受信可能にする電極を備えるとともに、上記ID発信手段は、設置場所に対応したIDを記憶し、そのIDを上記電極を介して発信する機能を備え、上記ID受信手段は、ID発信手段が発信したIDを上記電極を介して受信し、それを記憶する機能を備えた監視システム。
【請求項2】
上記ID発信手段を、特定の動作を行なうべき1または複数の特定の場所であって、人が立つことができる平面に設けた請求項1に記載の監視システム。
【請求項3】
特定の動作を行なうべき複数の特定の場所のそれぞれであって、人が立つことができる平面に、ID発信手段あるいはID受信手段のいずれか一方を設け、ID発信手段あるいはID受信手段のいずれか一方を設けたそれぞれの場所を区画する仕切りを備え、上記ID発信手段およびID受信手段のそれぞれには、人体が触れたとき、その人体を介して電気信号を送受信可能にする電極を備えるとともに、上記ID発信手段は、記憶したIDを上記電極を介して発信する機能を備え、上記ID受信手段は、ID発信手段が発信したIDを上記電極を介して受信し、それを記憶する機能を備えた監視システム。
【請求項4】
上記ID受信手段は、ID発信手段から受信したIDに、そのIDの発信時刻または受信時刻を対応付けて記憶する機能を有する請求項1〜3のいずれか1に記載の監視システム。
【請求項5】
上記物体には取っ手を設け、この取っ手に上記ID発信手段の電極またはID受信手段の電極を備えた請求項1〜4のいずれか1に記載の監視システム。
【請求項6】
上記物体が、特定の場所において利用される手段であることを特徴とする請求項1,2,4,5に記載の物体の監視システム。
【請求項7】
上記手段は、それを機能させるためのスイッチを備えるとともに、このスイッチを手段に設けたID発信手段またはID受信手段と連係し、上記スイッチを入れたときに、上記ID発信手段またはID受信手段が動作する構成にした請求項6に記載の監視システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−34911(P2007−34911A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−220628(P2005−220628)
【出願日】平成17年7月29日(2005.7.29)
【出願人】(000106690)サン電子株式会社 (161)
【Fターム(参考)】