説明

監視機能付理学療法器

【課題】 理学療法器の構成部品寿命による故障予測を行い、安全性を向上させた監視機能付理学療法器を提供する。
【解決手段】 理学療法器(2)の作動回数、又は、出力値、又は、作動時間と出力値の複合値を監視する監視機能(1)と、該監視機能(1)の監視情報を記憶する情報記憶手段(21)とを具備し、理学療法器(2)の構成部品の耐久試験データを設定する情報記憶部(23)と、該情報記憶部(23)と前記監視機能(1)の出力を比較し故障予測をする比較部(22)とを具備し、監視機能(1)が出力する信号をもとに理学療法器(2)が異常作動したことを検出する異常発生検出手段(26)と、該異常発生検出手段(26)により検出された異常情報を記憶する異常情報記憶手段(28)とを具備する監視機能付理学療法器である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者に理学療法を施す理学療法器(牽引機、マイクロ波治療器、低周波治療器、マッサージ機等)の作動情報及び異常情報を監視し記憶し報知する監視機能付理学療法器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から患者に理学療法を施す理学療法器として、牽引機、マイクロ波治療器、低周波治療器、マッサージ機がある。
前記理学療法器において、該理学療法器の作動回数を、又は理学療法器の出力値を、又は理学療法器の作動時間と出力値の複合値を、常時監視し記憶する手段を有するものは未だ提案されていない。
【0003】
特開平11−89901号公報には、マッサージ機に積算動作時間カウントするカウント回路と、表示部とを備えたものが開示されており、この構成によれば、故障時期の予測、早期メンテナンスの目安を得ることができる。しかし、前記従来装置には作動回数の情報、装置の出力値の情報、装置の出力値及び作動時間の情報等を取り込み活かす構成が開示されていない。
【特許文献1】特開平11−89901号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記従来マッサージ機は、マッサージ機の作動回数又は装置の出力値を監視し記憶する手段を有していないので、マッサージ機に含まれる構成部品の部品寿命による故障予測を行うことには不十分であった。
そこで本発明は、上記の問題点に鑑み、理学療法器の作動回数又は理学療法器の出力値を監視し記憶し比較することで、理学療法器の構成部品寿命による故障予測を行い、部品故障等の不具合が発生する以前に部品交換作業を行い、理学療法器が使用不能になるといった不都合な事態を回避し、安全性を向上させた監視機能付理学療法器を提供する。
【0005】
又、従来マッサージ機は、装置に発生した異常情報を記憶する手段を具備していない為、例えば、再現性の低い異常が発生した場合には、該異常発生を確認し異常原因を究明するメンテナンス作業に多大なる労力と時間を要するといった問題が有った。
【0006】
本発明は、上記の問題点に鑑み、理学療法器の作動状態を監視し、理学療法器に発生した異常情報を検出し記憶し、再現性の低い異常情報も確実に検出し、メンテナンスに提供し、メンテナンス作業に要する労力を軽減させ、利便性を向上させた監視機能付理学療法器を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記諸問題点を解決するものであり、本発明は、理学療法器(2)において、理学療法器(2)の作動回数を監視し、又は、出力値を監視し、又は、作動時間と出力値の複合値を監視する監視機能(1)と、該監視機能(1)の監視情報を記憶する情報記憶手段(21)とを具備する監視機能付理学療法器である。
又、監視機能(1)と、理学療法器(2)の構成部品の耐久試験データを設定する情報記憶部(23)と、該情報記憶部(23)と前記監視機能(1)の出力を比較し故障予測をする比較部(22)とを具備する。
更に、監視機能(1)が出力する信号をもとに理学療法器(2)が異常作動したことを検出する異常発生検出手段(26)と、該異常発生検出手段(26)により検出された異常情報を記憶する異常情報記憶手段(28)とを具備する。
更に又、監視機能(1)が監視する対象品は、理学療法器(2)を構成する諸消耗部品であり、該諸消耗部品の、作動回数を監視し、又は出力値を監視し、又は作動時間と出力値の複合値を監視するものである。
又、比較部(22)により比較された信号を報知する情報報知部(24)を具備する。
更に、異常情報記憶手段(28)により記憶された情報を報知する異常表示部(29)を具備する。
更に又、比較部(22)の出力を記憶する情報記憶手段(21)が付加設置され、該情報記憶手段(21)及び/又は異常情報記憶手段(28)によって記憶された情報を外部へ出力する情報外部出力手段(40)を具備する。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、理学療法器(2)において、理学療法器(2)の作動回数を監視し、又は、出力値を監視し、又は、作動時間と出力値の複合値を監視する監視機能(1)と、該監視機能(1)の監視情報を記憶する情報記憶手段(21)とを具備するものである。
【0009】
上記構成によれば、当該理学療法器2の積算された作動回数が分かり、作動回数を要素にした部品寿命による故障予測が可能となり、又は、理学療法器2の出力値及び作動時間の複合値の積算された値が分かり、出力値及び作動時間の複合値のを要素にした部品寿命による、故障予測が可能となり、故障等の不具合が発生する以前に、部品交換を行うのに適した時機を容易に認識でき、メンテナンス上有利であり、好都合である。
【0010】
従って、前記時機に部品交換その他の修理を行なえば、継続して無事に使用でき、理学療法器2に含まれる部品が劣化故障することにより、理学療法器2が突如使用不能になるといった不都合な事態を回避することができ、好都合である。
【0011】
本発明は、監視機能1と、理学療法器2の構成部品の耐久試験データを設定する情報記憶部23と、該情報記憶部23と前記監視機能1の出力を比較し故障予測をする比較部22とを具備するものである。
上記構成によれば、耐久試験データに基づいて故障予測がなされるので保守業務の経験の深さに左右されることなく的確な故障予測が得られ、その故障予測に基づいて適正な保守対応を行なうことができ、好都合である。
【0012】
本発明は、理学療法器2に起こり得る異常情報が設定される異常情報設定部27と、理学療法器2の作動状態を監視し前記異常情報と照合して異常発生を検出する異常発生検出手段26と、該異常発生検出手段26により検出された異常情報を記憶する異常情報記憶手段28とを具備するものであるから、再現性の低い異常情報でも確実に知ることができ、故に、異常発生に対する迅速且つ的確な対応が可能となり、メンテナンスの作業能率を向上でき、好都合である。
【0013】
又、従来装置では装置に発生した異常情報を記憶する手段を具備していない為、例えば、再現性の低い異常が発生した場合には、該異常発生を確認し異常原因を究明するのに多くの労力と時間を費やしていたが、本発明ではその労力及び時間を大幅に低減でき、好都合である。
【0014】
又、動作の異常情報と部品寿命情報の二つの情報から、的確な不具合対策ができる。即ち、一部品に付いて、たまに異常を呈し、寿命に近い、この二つの情報から的確な故障予測及び不具合対応ができ、好都合である。
【0015】
又、部品の劣化故障以外の異常発生原因も的確に検出するので、適宜なメンテナンスを実施でき、そのメンテナンスの効力により継続して無事に使用でき、理学療法器2が突如長時間使用不能状態になるといった事態を防止することができ、好都合である。
【0016】
又、異常発生検出手段26は施療者が気付かない異常でも検出するので適切な処置が可能となり、理学療法器2の異常に気付かずに理学療法器2を継続使用した結果患者に不快感や危害を与えてしまうといった好ましくない事態が発生するのを防止でき、安全であり、好都合である。
【0017】
本発明に係る監視機能1は、理学療法器2を構成する諸消耗部品(具体例では、牽引機3に設けられる牽引ワイヤー9、モーター15、リミットスイッチ19、マイクロ波治療器43のマグネトロン48、同軸ケーブル54、低周波治療器56の通電用導子63、通電量調節器59、マッサージ機69の施療子71等)の作動回数を計数するものである。
【0018】
又は、理学療法器2(具体例では、牽引機3、マイクロ波治療器43、低周波治療器56、マッサージ機69等)の前記諸消耗部品の出力値又は消費電力値を積算するものである。
又は、前記諸消耗部品の出力値及び作動時間の複合値を積算するものである。
【0019】
上記構成によれば、故障等の不具合が発生する以前に部品交換のメンテナンスを行うことが容易でありそのメンテナンスを実施すれば、継続して無事に使用でき、前記各理学療法器2に設けられる諸消耗部品の一部が故障することにより、理学療法器2が突如使用不能になるか又は患者を危険に遭わせるといった不都合な事態を回避することができ、好都合である。
【0020】
例えば、理学療法器2が、牽引機3では過剰牽引、マイクロ波治療器43では過剰照射、低周波治療器56では過剰通電、マッサージ機69では過剰刺激等、当該機器特有の不都合な事態が生じるが、監視機能1に基づいて各所定部品のメンテナンスを行なった場合はこれらの不都合な事態を回避でき、好都合である。
【0021】
本発明は、比較部22により比較された信号を報知する情報報知部24を具備したものであるから、即ち、監視機能1による作動回数、又は理学療法器2の出力値、又は理学療法器2の出力値と作動時間の複合値の計数結果を報知(例えば操作パネル39に表示)させるものである。
上記構成によれば、施療者等が各消耗部品の作動回数、理学療法器2の出力値、及び作動時間等の積算値状況を容易に確認可能となり、どの消耗部品が寿命に近づいているかといった情報が、当該部品が故障する前に確認でき、部品交換等の対応処置を迅速に行うことができ、好都合である。
【0022】
又、耐久試験データ値に対する計数値の割合が所定値以上になると注意を促す音又は光を発生し、介助者に部品交換の時期が近づいている旨の報知等を行うものであるから、どの消耗部品の作動回数又は作動時間が、当該消耗部品の耐久試験データ値(寿命時期)に近づいているかといった情報を故障以前に確認でき、部品交換等を行うのに適した時機を容易に把握し部品交換処置を迅速に行うことができ、好都合である。
【0023】
本発明は、異常情報記憶手段28により記憶された情報を報知する異常表示部29を具備したものであるから、即ち、異常情報記憶手段28による異常情報の履歴を報知(例えば操作パネル39等に表示)させるものである。
【0024】
上記構成によれば、何時(年月日及び時刻)如何なる内容の異常発生が起こったのかの履歴を容易に目視確認でき、異常発生に対する迅速な対応処置が可能となり、好都合である。
又、異常情報が発生し対応に急を要するもの場合に、発音器46で注意音又は警告音等を発生し施療者に異常発生の旨を的確に知らせることができるので、好都合である。
【0025】
本発明は、比較部22の出力を記憶する情報記憶手段21が付加設置され、該情報記憶手段21及び/又は異常情報記憶手段28によって記憶された情報を外部へ出力する情報外部出力手段40を具備するものであるから、理学療法器2が設置されている福祉施設・病院等へ出向くことなく、遠隔地から当該理学療法器2に係る作動情報を入手、確認でき、作動情報の入手に要する作業時間を短縮でき、好都合である。
【0026】
又、複数施設に分散設置されている同機種の理学療法器2を能率的に管理でき、好都合である。即ち、複数施設に分散設置されている同機種の理学療法器2に係る作動情報を容易に入手・分析することができ、分析結果をフィードバックし管理できる。例えば、或る一機種の理学療法器2について入手した作動情報を系統的に集計し分析することによって、部品交換の時期が迫っている前記理学療法器2の納入先を容易に把握でき、好都合である。
更に、緊急修理要の対象の理学療法器2を保持する施設への修理実施のアナウンス連絡が能率的に行なえ、好都合である。
【0027】
更に又、或る一つの施設内の理学療法器2で発生した異常情報を入手した場合には、同様の異常が他の施設に設置されている同機種の理学療法器2にも発生していないか等について、遠隔地から早急に調査でき、好都合である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
本発明は、理学療法器2の構成部品寿命の故障予測を行い、部品故障等の不具合が発生する以前に部品交換作業を行い、理学療法器2が使用不能になるといった不都合な事態を回避し、安全性を向上させた監視機能付理学療法器を提供するという目的を、監視機能1及び情報記憶手段21によって、理学療法器2の作動回数又は理学療法器2の出力値を監視し記憶し、それらの情報を報知することにより実現した。
【0029】
又、再現性の高い異常情報は勿論のこと再現性の低い異常情報も確実に検出しメンテナンス業者に情報提供し、メンテナンス作業に要する労力を軽減させ、利便性を向上させた監視機能付理学療法器を提供するという目的を、異常発生検出手段26及び異常情報設定部27によって、理学療法器2の作動状態を監視し、当該理学療法器2に発生した異常情報を検出し記憶し、それらの情報を報知することにより実現した。
【実施例1】
【0030】
図1〜2に本発明の実施例1を示す。
図1は監視機能1が設けられた理学療法器2の実施例1乃至4を示すブロック図である。
図1に示す監視機能1は、検出部4と、制御部5と、設定部6と、報知手段7と、情報外部出力手段40とからなる。
【0031】
監視機能1には、作動を監視する系と、異常を監視する系と、離間地から監視する系の3個系がある。
作動を監視する系は、検出部4と、作動回数計数部20と、情報記憶手段21と、比較部22と、情報記憶部23と、情報報知部24と、注意音発生部25とからなる。
【0032】
異常を監視する系は、検出部4と、異常発生検出手段26と、異常情報設定部27と、異常情報記憶手段28と、異常表示部29と、警告音発生部30とからなる。
離間地から監視する系は、情報外部出力手段40と、公衆通信網89からなる。
【0033】
図2に示す実施例1は、理学療法器2の具体例を牽引機3としたものである。
牽引機3は、牽引ベッド41と、脇装具42と、人体に装着する腰装具8と、腰装具8に接続する牽引ワイヤー9と、牽引機筐体44とからなる。
【0034】
牽引機筐体44内には、牽引ワイヤー9を所定の牽引量で引っ張る牽引機構10と、制御回路96と、発音器46が収納される。
牽引機筐体44上面には、操作パネル39、及び牽引量を調節する牽引量調節器11、筐体温度センサー45等が設けられる。
【0035】
牽引機構10は、支持軸12に支えられるバランスアーム13と、バランスアーム13の基側に設けられ牽引ワイヤー9を巻き取る巻取機14と、巻取機14を駆動するモーター15と、モーター15に貼着される温度センサー16と、バランスアーム13の先側に設けられ牽引ワイヤー9の張力と均衡して伸縮するウエイトスプリング17と、バランスアーム13の移動に連動し牽引ワイヤー9の張力(=ウエイト)を検出するウエイトセンサー18と、バランスアーム13の先側の移動の下限を検出するリミットスイッチ19とからなる。
【0036】
牽引機3の検出部4は、ウエイトセンサー18の作動に係るウエイトセンサー信号85、リミットスイッチ19の作動に係るリミットスイッチ信号86、温度センサー16の作動に係る温度センサー信号87、モーター15の作動に係るモーター信号88等からなる。
【0037】
作動を監視する系の作動回数計数部20は、理学療法器2を構成する諸消耗部品の作動回数を計数する。即ち、具体例では、作動回数計数部20は、牽引機3のウエイトセンサー18の作動回数を計数するウエイトセンサー計数器31と、リミットスイッチ19の作動回数を計数するリミットスイッチ計数器32と、温度センサー16の作動回数を計数する温度センサー計数器33と、モーター15の作動回数を計数するモーター計数器34とからなる。上記の監視の対象要素は、各構成部品の作動回数である。
【0038】
検出部4の、ウエイトセンサー信号85、リミットスイッチ信号86、温度センサー信号87、モーター信号88等は、異常発生検出手段26を通って、それぞれ作動回数計数部20中のウエイトセンサー計数器31、リミットスイッチ計数器32、温度センサー計数器33、モーター計数器34へ至る。
作動回数計数部20の出力は比較部22へ入力される。
【0039】
図示を省略するが、監視の要素を、理学療法器2の出力値としてもよい。即ち、具体例では、監視の要素を牽引機3の出力値とし、その場合は、作動回数計数部20を、当該構成部品の作動量又は当該構成部品が消費する電力量を計数する出力値計数部に代え、モーター計数器34を、モーター34が出力する出力量(=消費電力量をもって代用する)を積算するモーター出力値積算器に代える。
【0040】
牽引機3の作動回数計数に代えて、牽引機3の牽引量(=牽引ワイヤー9に生じる張力、即ち牽引量の値)を積算する場合は、ウエイトセンサー計数器31に代えて、ウエイトセンサー18の検出値を積算するウエイト積算器(図示省略)を設け、ウエイト値を積算する。
構成部品の耐久期限(=部品寿命)に、当該構成部品の出力値又は消費電力値が密接に関与するので、出力値又は消費電力値の積算値を故障予測の要素とする。
【0041】
又、図示を省略するが、監視の要素を、理学療法器2の作動時間と出力値の複合値としてもよい。即ち、具体例では、監視の要素を牽引機3の作動時間と出力値の複合値とし、その場合は、作動回数計数部20を、当該構成部品の作動時間及び当該構成部品が消費する電力量を積算する作動時間・出力値積算部に代え、モーター計数器34をモーター作動時間・出力値積算器に代える。
構成部品の耐久期限(=部品寿命)に、当該構成部品の出力値と作動時間の複合値が密接に関与するので、前記複合値を故障予測の要素とする。
【0042】
牽引機3の作動回数計数に代えて、牽引機3のウエイトスプリング17の使用時間を積算する場合は、ウエイトセンサー計数器31に代えて、ウエイトセンサー18の作動時間を計数するウエイトセンサー作動時間積算器(図示省略)で積算する。
【0043】
前記情報記憶部23には各部品の耐久試験データ値が設定される。
具体的には、耐久試験データ値を設定した、ウエイトセンサー設定部35、リミットスイッチ設定部36、温度センサー設定部37及びモーター設定部38からなる。
【0044】
比較部22は、作動回数計数部20の出力と、前記情報記憶部23の出力とを比較するものである。
比較部22は、前記比較の結果、耐久試験データ値に対する作動回数計数値の割合が所定値以上になると報知手段7へ出力を送る。
又、比較部22の出力は情報記憶手段21へ至り、該情報記憶手段21に記憶される。
【0045】
報知手段7は、情報報知部24と注意音発生部25とからなる。
報知手段7の情報報知部24は、施療者に部品交換の時期が近づいている旨を、文字又は図形に表示する。
報知手段7の注意音発生部25は、施療者に部品交換の時期が近づいている旨をメロディー音で報知する。メロディー音の代わりに、ブザー音、音声等も適宜用いられる。
【0046】
異常を監視する系の異常情報設定部27には、牽引機3に起こる可能性のある異常情報(具体例では、異常範囲値)が予め記憶されている。
制御部5の異常発生検出手段26は、検出部4の出力信号と異常情報設定部27の出力信号とを常時比較するものであり、検出部4からの出力信号が異常範囲値に属すると当該部品又は当該作動状況が異常であると判断するものである。
【0047】
検出部4のウエイトセンサー信号85、リミットスイッチ信号86、温度センサー信号87、モーター信号88の各信号のいずれかが、異常情報設定部27の各部品の異常範囲値に属した時、異常発生検出手段26は前記信号に係る部品に異常が発生したと判断する。該判断の信号は、異常情報記憶手段28へ出力される。
【0048】
前記異常情報記憶手段28は、前記判断の信号を記憶する。
牽引機3に発生した異常は、時計(図示省略)の信号と共に時系列的に異常履歴として異常情報記憶手段28に記憶される。
【0049】
異常情報記憶手段28の出力は、異常表示部29及び警告音発生部30へ入力される。
異常表示部29は、牽引機筐体44に設けられた操作パネル39に配設される。該異常表示部29に、異常情報記憶手段28から得た情報を文字及び図形で表示する。
【0050】
警告音発生部30は異常情報記憶手段28から得た情報を音又は音声で表示し、施療者に警告する。
施療者は表示された異常情報を確認することによって、牽引機3に発生した異常を把握する。
【0051】
離間地から監視する系の情報外部出力手段40は、情報記憶手段21及び異常情報記憶手段28に記憶された情報を外部機器(図示省略)へ出力するものである。
前記記憶された情報は、電話回線、インターネット等の公衆通信網89に接続された情報送信機能を有する情報外部出力手段40を介して、離間地又は遠隔地にあるメンテナンス業者等のパーソナルコンピュータ(図示省略)へ送信が可能とされている。
【0052】
又、離間地のメンテナンス業者等が、前記パーソナルコンピュータから公衆通信網89を経由して、牽引機3の情報外部出力手段40に情報送信指令を定期的に入力し、牽引機3は情報外部出力手段40から前記指令情報を取り込むといったことも可能である。
【0053】
従って、遠隔地から定期的に牽引機3の作動状態、即ち、牽引機3の作動回数及び諸部品の作動回数、牽引機3の作動時間及び諸部品の作動時間、又は装置の出力値及び諸部品の出力値、を監視し、適宜なメンテナンスを実施することによって、部品の劣化故障等に起因する牽引機3に発生する突如の故障及び不具合を低減させることができる。
【0054】
又、牽引機3に異常が発生した場合でも、早期に異常発生に係る情報を入手することができ、迅速且つ的確に対応処置が図れるので、施療者は安心して牽引機3を使用できる。
【0055】
牽引機3で腰椎牽引治療を行なう場合は、患者は腰部に腰装具8を装着して牽引ベッド41に仰臥する。患者の両脇に脇装具42を当てる。牽引ワイヤー9の先端を腰装具8に連結する。牽引量調節器11で牽引量(=ウエイト)を設定する。
【0056】
牽引機構10を始動させて、牽引ワイヤー9を牽引機構10内に巻き込み、腰装具8を引き、設定した牽引量で患者の腰部を牽引し、腰椎牽引治療をする。
牽引機3を始動させると、牽引作動が間歇的に繰り返し行なわれ、10分程度の所定時間治療する。
検出部4内のウエイトセンサー信号85を例に取って以下に監視機能1を説明する。
【0057】
検出器4が擁するウエイトセンサー信号85は、牽引量(=牽引ワイヤー9に生じる張力)を検出するウエイトセンサー18の作動状況を検出する信号である。
ウエイトセンサー計数器31は、ウエイトセンサー信号85を得てウエイトセンサー18の作動回数を計数し、積算する。ウエイトセンサー設定部35には、ウエイトセンサー18の耐久試験データを予め記憶させている。
【0058】
比較部22はウエイトセンサー計数器31からの出力データと、ウエイトセンサー設定部35からのウエイトセンサー耐久試験データとを比較する。
比較部22が出力する比較結果の信号を、情報報知部24で表示し、施療者に故障予測等のメンテナンス情報を報知し、注意音発生部25で注意音を発生する。
【0059】
異常情報設定部27に、ウエイトの上限値を記憶させておき、異常発生検出手段26は、異常情報設定部27の出力データと、検出器4内のウエイトセンサー信号85とを照合する。
異常発生検出手段26が、ウエイトセンサー信号85が異常(例えば、ウエイトセンサー信号85が、予め設定したウエイトの上限値を超えた場合)になったと判断すると、その旨の信号が、異常情報記憶手段28から異常表示部29及び警告音発生部30へ至り、異常表示部29及び警告音発生部30から施療者に報知される。
【実施例2】
【0060】
図3に示す実施例2は、理学療法器2の具体例をマイクロ波治療器43としたものである。
マイクロ波治療器43は、マイクロ波治療器筐体47内に、マグネトロン48と、電源部49とを設け、マイクロ波治療器筐体47の上面に照射量調節器50を設け、マイクロ波治療器筐体47の側壁47aに、アンテナ支持部51と、アンテナ部52と、導波部53とを設ける。
【0061】
導波部53は同軸ケーブル54と、導波管55とからなる。マイクロ波治療器43は、マグネトロン48が発生するマイクロ波をアンテナ部52から患部に向けて照射し、温熱治療を施す。検出部4は、マグネトロン48の駆動に係るマグネトロン信号90と、同軸ケーブル54の通電に係る同軸ケーブル信号91とを有する。
【0062】
作動回数計数部20は、マグネトロン48の駆動回数を計数するマグネトロン計数器92、同軸ケーブル54の通電回数を計数する同軸ケーブル計数器93を有する。
情報記憶部23は、マグネトロン48の点燈寿命に係るマグネトロン設定部64と、同軸ケーブル54の耐久試験データに係る同軸ケーブル設定部65を有する。
これらの設定部64、65の出力を比較部22へ入力し、作動回数計数部20の出力と比較し、マグネトロン48及び同軸ケーブル54の故障予測を行なう。
故障予測は、情報報知部24及び注意音発生部25から施療者に報知される。
【0063】
異常情報設定部27には、マグネトロン48の通電電流の上限値、電源部49内の諸パーツの温度上限値等の異常状態に係る情報が記憶されている。
異常情報設定部27からの出力に検出部4からの出力を異常発生検出手段26で照合する。
検出部4からの出力が異常であると異常発生検出手段26が判断した場合、その旨の信号が、異常発生検出手段26から異常情報記憶手段28へ出力され、更に、異常情報記憶手段28から異常表示部29及び警告音発生部30へ出力され、更に、異常表示部29及び警告音発生部30から施療者に報知される。
図3中、97は同調棒、98は駆動装置、99は極大演算制御部である。
【実施例3】
【0064】
実施例3は、理学療法器2の具体例を低周波治療器56としたものである。
低周波治療器56は、低周波治療器筐体57内に、低周波発生部58を備え、側面57aに通電量調節器59及び接続用受け具60が取り付けられている。
接続用受け具60に、プラグ61が差し込まれ、該プラグ61に導電線62、通電用導子63が接続される。
患者に通電用導子63を貼り、該通電用導子63に低周波発生部58から出力する低周波電力を付与し、該電力を患者に通電し、通電治療を施す。
【0065】
検出部4は、通電量調節器59の作動に係る通電量調節器信号94、通電用導子63の使用に係る通電用導子信号95を有する。
作動回数計数部20は、通電量調節器59の作動回数を計数する通電量調節器計数器80と、通電用導子63の使用回数を計数する通電用導子計数器79とを有する。
【0066】
情報記憶部23は、通電量調節器59の耐久試験データを設定する通電量調節器設定部66、通電用導子63の耐久試験データを設定する通電用導子設定部68を有する。
これらの設定情報を比較部22へ入力し、その入力値と作動回数計数部20の出力とを比較し、通電量調節器59、通電用導子63の故障予測を行なう。
故障予測は、情報報知部24及び注意音発生部25から施療者に報知される。
【0067】
図示を省略するが、検出部4は、導電線62の通電信号に係る導電線検出部(図示省略)を有し、作動回数計数部20は、導電線62の通電回数を計数する導電線62(図示省略)を有し、情報記憶部23は、導電線62の耐久試験データを設定する導電線設定部(図示省略)を有しており、この設定部の情報を比較部22へ入力し、作動回数計数部20の出力と比較し、導電線62の故障予測を行なう。故障予測は、情報報知部24及び注意音発生部25から施療者に報知する。
【0068】
異常情報設定部27には、患者への通電電流の上限値、通電用導子63の接触不良状態値等の情報が記憶されており、異常情報設定部27からの出力に検出部4からの出力を異常発生検出手段26で照合する。
異常発生検出手段26が、前記照合の結果検出部4からの出力が異常であると判断すると、その旨の信号が、異常発生検出手段26から異常情報記憶手段28へ出力され、更に、異常情報記憶手段28から異常表示部29及び警告音発生部30へ出力され、更に、異常表示部29及び警告音発生部30から施療者に報知される。
【実施例4】
【0069】
実施例4は、理学療法器2の具体例をマッサージ機69としたものである。
マッサージ機69は、マッサージ機筐体70内に、施療子71と、マッサージ機構72と、移動台車73と、走行軌道84と、押圧力調節器74とを装備している。マッサージ機筐体70の上面にシート75が張設される。施療子71が、シート75上の患者を押圧しマッサージを施す。
【0070】
検出部4は、施療子71の圧力信号に係る圧力調節機信号78を有する。
作動回数計数部20は、施療子71の作動回数を計数する施療子計数器82を有する。
情報記憶部23は、施療子71の耐久試験データを設定する施療子設定部83、を有しており、この施療子設定部83の情報を比較部22へ入力し、作動回数計数部20の出力と比較し、施療子71の故障予測を行なう。
故障予測は、情報報知部24及び注意音発生部25から施療者に報知される。
【0071】
図示を省略するが、検出部4は、マッサージ用モーター76の駆動信号に係るマッサージ用モーター検出部(図示省略)、走行用モーター77の駆動信号に係る走行用モーター検出部(図示省略)、マッサージ機構72の作動を検出するマッサージ機構検出器(図示省略)を有する。
【0072】
作動回数計数部20は、マッサージ用モーター76の駆動回数を計数するマッサージ用モーター計数器(図示省略)、走行用モーター77の駆動回数を計数する走行用モーター計数器(図示省略)、マッサージ機構72の作動回数を計数するマッサージ機構計数器(図示省略)を有する。
【0073】
情報記憶部23は、マッサージ用モーター76の耐久試験データを設定するマッサージ用モーター設定部(図示省略)、走行用モーター77の耐久試験データを設定する走行用モーター設定部(図示省略)、マッサージ機構72の耐久試験データに係るマッサージ機構設定部(図示省略)等も有する。
【0074】
これらの設定部の情報を比較部22へ入力し、作動回数計数部20の出力と比較し、マッサージ機構72、移動台車73、走行軌道84、及び押圧力調節器74等の故障予測を行なう。故障予測は、情報報知部24及び注意音発生部25から施療者に報知する。
【0075】
異常情報設定部27には、患者への施療子71の押圧力の上限値、マッサージ用モーター76の温度の上限値、走行用モーター77の温度の上限値等の情報が記憶されており、異常発生検出手段26で、異常情報設定部27からの出力に検出部4からの出力を照合する。
【0076】
異常発生検出手段26が検出部4からの出力が異常であると判断すると、その旨の信号が、異常発生検出手段26から異常情報記憶手段28へ出力され、更に、異常情報記憶手段28から異常表示部29及び警告音発生部30へ出力され、更に、異常表示部29及び警告音発生部30から施療者に報知される。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明は、理学療法器2の作動状態を監視し、理学療法器2に発生した異常情報を検出し記憶し、再現性の低い異常情報も確実に検出しメンテナンスに提供し、メンテナンスに要する労力を軽減させ、利便性を向上させた監視機能付理学療法器2に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明の実施例1のブロック図である。
【図2】本発明の実施例1の斜視図である。
【図3】本発明の実施例2の内部を透視した正面図である。
【図4】本発明の実施例3の斜視図である。
【図5】本発明の実施例4の内部を透視した正面図である。
【符号の説明】
【0079】
1 監視機能
2 理学療法器
3 牽引機
9 牽引ワイヤー
10 牽引機構
15 モーター
11 牽引量調節器
19 リミットスイッチ
21 情報記憶手段
22 比較部
23 情報設定部
24 情報報知部
27 異常情報設定部
26 異常発生検出手段
28 異常情報記憶手段
29 異常表示部
40 情報外部出力手段
43 マイクロ波治療器
48 マグネトロン
49 電源部
50 照射量調節器
52 アンテナ部
53 導波部
54 同軸ケーブル
56 低周波治療器
58 低周波発生部
59 通電量調節器
62 導電線
63 通電用導子
67 装具
69 マッサージ機
71 施療子
72 マッサージ機構
74 押圧力調節器
81 ベッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
理学療法器(2)において、理学療法器(2)の作動回数を監視し、又は、出力値を監視し、又は、作動時間と出力値の複合値を監視する監視機能(1)と、該監視機能(1)の監視情報を記憶する情報記憶手段(21)とを具備する監視機能付理学療法器。
【請求項2】
監視機能(1)と、理学療法器(2)の構成部品の耐久試験データを設定する情報記憶部(23)と、該情報記憶部(23)と前記監視機能(1)の出力を比較し故障予測をする比較部(22)とを具備する請求項1記載の監視機能付理学療法器。
【請求項3】
監視機能(1)が出力する信号をもとに理学療法器(2)が異常作動したことを検出する異常発生検出手段(26)と、該異常発生検出手段(26)により検出された異常情報を記憶する異常情報記憶手段(28)とを具備する請求項1記載の監視機能付理学療法器。
【請求項4】
監視機能(1)が監視する対象品は、理学療法器(2)を構成する諸消耗部品であり、
該諸消耗部品の、作動回数を監視し、又は出力値を監視し、又は作動時間と出力値の複合値を監視するものである請求項1乃至3記載の監視機能付理学療法器。
【請求項5】
比較部(22)により比較された信号を報知する情報報知部(24)を具備した請求項1乃至4記載の監視機能付理学療法器。
【請求項6】
異常情報記憶手段(28)により記憶された情報を報知する異常表示部(29)を具備した請求項1乃至8記載の監視機能付理学療法器。
【請求項7】
比較部(22)の出力を記憶する情報記憶手段(21)が付加設置され、該情報記憶手段(21)及び/又は異常情報記憶手段(28)によって記憶された情報を外部へ出力する情報外部出力手段(40)を具備することを特徴とする請求項1又は2記載の監視機能付理学療法器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−204653(P2006−204653A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−22393(P2005−22393)
【出願日】平成17年1月31日(2005.1.31)
【出願人】(000103471)オージー技研株式会社 (109)
【Fターム(参考)】