説明

目標測位装置

【課題】狭帯な受信機帯域で低速信号処理且つ高分解能を有し、送信局と受信局間の時刻の同期が必要なく、小口径のアンテナを備える小型の受信局からなり、運用が柔軟で低コストの目標測位装置を提供する。
【解決手段】目標測位装置は、送信局は2周波CW電波を放射し、3つ以上の受信局は、2周波CW電波と同様なローカル信号で直接波、または目標反射波をミキシングして直接差信号または目標反射差信号を求め、直接差信号の出力が最大になる直接波周波数を算出するとともに目標反射差信号の出力が最大になる目標反射波周波数を算出し、算出された直接波周波数と目標反射波周波数とに基づいて送信局と受信局との距離和と相対速度和とを推定し、目標位置・速度推定器は、距離和と相対速度和とから目標の3次元位置座標と3次元相対速度成分とを推定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、送信アンテナ7と受信アンテナ8とが異なる地点に設置され、目標20の物体の位置を測位する目標測位装置1に関する。
【背景技術】
【0002】
バイスタティックレーダは、送信アンテナ7と受信アンテナ8とを異なる地点に設置し、目標20の物体の位置を測位する。そして、目標20の物体との距離を計測するために送信局2と受信局3間の時刻が同期されていなければならないので、ロラン(Long Range Navigation)電波を用いる、時刻同期用のパルスを送信する、送信パルス周期、時刻、位相を示す送信パルス情報を生成し送受信する方法が採用されている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
また、送信局2と受信局3間の時刻同期を行わず、受信局3を複数を備え、直接波と目標反射波との相関処理により目標20反射パルスの時間差を求め、複数の時刻差から目標20の位置を特定する(例えば、特許文献3参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平7−140124号公報
【特許文献2】特開2003−156557号公報
【特許文献3】特開平6−148318号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、送信局と受信局間の時刻を同期するためには、同期パルサや送信パルス情報を必要としており、高い距離精度を得るためには、広帯域の受信系と高速の信号処理が必要である。また、受信系において角度を高精度に計測するために開口径の大きい大規模な高価なアンテナが必要となるという問題がある。
また、受信局にて直接波パルスと目標反射パルスの時刻差を高精度に求めるためには、広帯域受信機と高速の相関処理が必要であり装置規模が大きくなるという問題がある。また、ドップラ周波数を利用した高精度な相対速度の計測ができないという問題がある。
【0005】
この発明の目的は、狭帯な受信機帯域で低速信号処理且つ高分解能を有し、送信局と受信局間の時刻の同期が必要なく、小口径のアンテナを備える小型の受信局からなり、運用が柔軟で低コストの目標測位装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係わる目標測位装置は、電波を放射する送信局、直接にまたは目標物体で反射してから到達する電波を受信する3つ以上の受信局および受信する電波に基づいて目標の位置と速度とを推定する目標位置・速度推定器を備える目標測位装置において、上記送信局は、送信2周波CW信号を発生する送信2周波CW信号発生器と、電波を上記送信2周波CW信号により変調する送信信号変換器と、を備え、上記受信局は、上記2周波CWと同様な掃引傾斜および掃引時間のローカル信号を発生する受信2周波CW信号発生器と、上記送信局から直接受信される電波、または目標で反射してから受信される電波と上記受信2周波CW信号発生器9からのローカル信号とをミキシングして直接差信号または目標反射差信号を求める受信信号変換器と、上記直接差信号の出力が最大になる直接波周波数を算出する直接波周波数分析手段と、上記目標反射差信号の出力が最大になる目標反射波周波数を算出する目標反射波周波数分析手段と、上記直接波周波数と上記目標反射波周波数とに基づいて上記送信局と上記受信局との距離和と相対速度和とを推定する距離和速度和推定手段と、を備え、上記目標位置・速度推定器は、上記受信局から入力される上記距離和と上記相対速度和とから上記目標の3次元位置座標と3次元相対速度成分とを推定する。
【発明の効果】
【0007】
この発明に係わる目標測位装置の効果は、2周波CWを用い、受信局の時刻を送信局の時刻に同期する必要がなく、同期パルサや送信パルス情報を必要としないので、狭帯域の受信系と低速の信号処理であっても高精度の位置分解能を実現でき、小型で移動可能な受信局となり、運用の柔軟性を確保できる。また、2周波CWを用いているので、ドップラ現象を利用して高精度な相対速度の計測ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1に係わる目標測位装置の構成図である。図2は、送信局、受信局および目標のXY座標面上の位置を示す図である。図3は、送信局および受信局での2周波CW信号の周波数の変化の様子を示す図である。
この発明の実施の形態1に係わる目標測位装置1は、図1に示すように、1つの送信局2、3つの受信局3a、3b、3cおよび目標位置・速度推定器4を備える。各受信局3a〜3cにおいて求められる距離和および相対速度和は一般的な通信手段を用いて目標位置・速度推定器4に送られる。なお、実施の形態1に係わる目標測位装置1は、3つの受信局3を備えるが、4つ以上の受信局3を備えてもよい。
【0009】
送信局2、受信局3a〜3cおよび目標20は、図2に示すように、配置されている。送信局2の座標をXYZ座標系の原点に置くと受信局3a〜3cの位置ベクトルはXになる。nは受信局3a〜3cを識別する番号であり、3つの受信局3a〜3cが備えられているので、n=1、2、3である。この位置ベクトルXは、既知である。目標20の位置ベクトルXは、この目標測位装置1により求める未知の値である。
また、図2におけるRは、送信局2と目標20間の距離、Rは、目標20と識別番号nの受信局3間の距離、R0nは、送信局2と識別番号nの受信局3間の距離である。
また、vは、送信局2と目標20との相対速度、vは、目標20と識別番号nの受信局3との相対速度、v0nは、送信局2と識別番号nの受信局3との相対速度である。
【0010】
送信局2は、図1に示すように、送信2周波CW信号を発生する送信2周波CW信号発生器5、送信2周波CW信号発生器5から入力される送信2周波CW信号に従って電波を変調する送信信号変換器6、電波を空中に放射する送信アンテナ7を備える。
送信2周波CW信号発生器5は、送信信号変換器6において行われる周波数変調処理の周波数を指定する送信2周波CW信号を発生する。送信2周波CW信号は、図3に示すように、周波数切替周期TCC毎に周波数指定値が周波数fと周波数fに交互に切り替えられる。なお、この発明に係わる目標測位装置1では、送信時刻差に依存するドップラシフトの位相回転を小さくするために、周波数f、fを周波数切替周期TCC毎に時分割で高速に切替る。
送信信号変換器6は、送信2周期CW信号により指定される周波数の連続波に変調して送信アンテナ7に出力する。すなわち、周波数切替周期TCCでは、送信される電波の周波数は周波数fまたは周波数fである。そして、放射される電波Txは、式(1)で表される。iは、周波数fまたは周波数fを識別する番号であり、1または2である。φは、各周波数の電波の時刻t=0での任意の初期位相である。なお、説明を理解しやすくするためにエンベロープ1の一定振幅とした。
【0011】
【数1】

【0012】
各受信局3は、図1に示すように、空中を伝搬して到達する電波を受信する受信アンテナ8、受信2周波CW信号に基づいてローカル信号を発生する受信2周波CW信号発生器9、受信する電波にローカル信号をミキシングし、ローパスフィルターにより周波数の和信号を除去し、差信号を生成する受信信号変換器10、差信号を処理して距離和と相対速度和とを推定する2周波CW信号処理器11を備える。
【0013】
受信アンテナ8には、送信アンテナ7から空中に放射された電波が直接または目標20の物体で反射してから到達する。以下の説明において目標20の物体で反射してから到達する電波を目標反射波、直接に到達する電波を直接波と称す。
周波数fの目標反射波Rx1,nは、式(2)で表される。また、周波数fの目標反射波Rx2,nは、式(3)で表される。τは、時刻t=0での送信局2と目標20間の電波の伝搬時間であり、送信局2と目標20間の距離Rを用いると式(4)で表される。τは、時刻t=0での目標20と識別番号nの受信局3間の電波の伝搬時間であり、目標20と識別番号nの受信局3間の距離Rを用いると式(5)で表される。vは、時刻t=0での送信局2と目標20との相対速度、vは、時刻t=0での目標20と識別番号nの受信局3との相対速度である。cは光速である。
【0014】
【数2】

【0015】
また、直接波Rx0i,nは、式(6)で表される。また、ζは式(7)から求められる。なお、直接波を目標反射波と区別する方法は,時分割して目標20がない時に計測したり、アンテナビームスキャンによる利得差を計測したりするなどにより区別する。なお、同時に観測されたとした場合も、送信局2と受信局3間の相対速度がある程度既知(たとえばともに静止しているなど)とすることで、目標反射波と直接波を分離可能である。以下の説明では、別個に受信したものとして説明する。
【0016】
【数3】

【0017】
受信2周波CW信号発生器9は、受信した電波を受信信号変換器10においてミキシングするためのローカル信号を生成する受信2周波CW信号を生成し、その受信2周波CW信号を用いてローカル信号を生成して受信信号変換器10に出力する。受信2周波CW信号は、図3に示すように、送信2周波CW信号と同様に周波数切替周期TCC毎に周波数指定値が周波数fと周波数fと交互に切り替えられる。但し、送信局2と受信局3との間には時刻ずれがある。
受信2周波CW信号発生器9が生成するローカル信号Li,nは、式(8)で表される。なお、Φi,nは、各受信局3と送信局2との間での2周波CW信号の時刻誤差に起因する位相誤差δθi,nを用いて式(9)から求められる。
【0018】
【数4】

【0019】
受信信号変換器10は、目標反射波Rxi,nをローカル信号Li,nでミキシンングし、ローパスフィルターを通過して周波数の和信号が除去され、目標反射差信号Bi,nが得られる。目標反射差信号Bi,nは、式(10)で表される。なお、光速に比べて速度v、vは十分小さいと仮定している。
また、直接波Rx0i,nをローカル信号Li,nでミキシンングし、ローパスフィルターを通過して周波数の和信号が除去され、直接差信号B0i,nが得られる。直接差信号B0i,nは、式(11)で表される。
【0020】
【数5】

【0021】
2周波CW信号処理器11は、図1に示すように、目標反射波周波数分析手段14、直接波周波数分析手段15および距離和速度和推定手段16を有する。
目標反射波周波数分析手段14は、図3に示す周波数切替周期TCCの2倍のサンプリング間隔Tで区間Tの間をM個サンプリングした目標反射差信号Bi,nのデータを用いて離散フーリエ変換して式(12)で表される出力Fi,nを求める。そして、出力Fi,nの振幅|Fi,n|をしきい値処理し、ピークが得られる周波数番号kを、それぞれpi,nとする。この周波数番号pi,nのときの周波数fi,n(ハット)は、式(13)で表される。ここで、送信周波数f(例えば、fとfの平均値)に対し、実用上その差(f−f)は極めて小さく、周波数番号p1,nと周波数番号p2,nとが等しく周波数番号pとする。
【0022】
【数6】

【0023】
直接波周波数分析手段15は、図3に示す周波数切替周期TCCの2倍のサンプリング間隔Tで区間Tの間をM個サンプリングした直接差信号B0i,nのデータを用いて離散フーリエ変換して式(14)で表される出力F0i,nを求める。そして、出力F0i,nの振幅|F0i,n|をしきい値処理し、ピークが得られる周波数番号kを、それぞれqi,nとする。この周波数番号qi,nのときの周波数f0i,n(ハット)は、式(15)で表される。なお、周波数番号q1,nと周波数番号q2,nは等しく、周波数番号qとする。
【0024】
【数7】

【0025】
距離和速度和推定手段16は、送信局2と目標20および目標20と各受信局3間の距離の和ξ(ハット)を、式(16)から求める。なお、argとは位相を求める操作を表す。
式(16)において、周波数f、fは設定値であり、出力F2,n(p)、F1,n(p)、F02,n(q)、F01,n(q)は離散フーリア変換により求められている。そして、送信局2と各受信局3間の距離R0nは既知であるので、時間遅延τ0nは既知となり、式(16)から距離和ξ(ハット)が求められる。
【0026】
【数8】

【0027】
また、距離和速度和推定手段16は、目標反射波周波数分析手段14で検出された周波数番号pを用いて、各受信局3での送信局2と目標20および目標20と各受信局3間の相対速度和V(ハット)を式(17)から求める。
また、距離和速度和推定手段16は、直接波周波数分析手段15で検出された周波数番号qを用いて、各受信局3での各受信局3と送信局2間の相対速度V0n(ハット)を式(18)から求める。
【0028】
【数9】

【0029】
目標位置・速度推定器4は、以下の手順により目標20の3次元座標と3次元相対速度成分を推定する。
既知の送信局2の位置ベクトル、既知の各受信局3の位置ベクトルおよび推定対象の未知の目標20の位置ベクトルは、それぞれX、X、Xであるので、式(16)の距離和ξを用いることにより、式(19)の関係式が成り立つ。
そして、目標20の位置ベクトルXの推定値X(ハット)は、3つの受信局3での距離和ξ(ハット)を用いて、共役勾配法、準Newton法、Levenberg−Marquardt法などの一般的な非線形手法を用いて求められる。
また、目標20の相対速度ベクトルをVとすると、式(17)の線形方程式は式(20)に書き直せる。
そして、目標20の相対速度ベクトルVの推定値V(ハット)は、3つの受信局3での相対速度和V(ハット)と推定値X(ハット)を用いて、逆行列や一般逆行列を用いて求められる。
【0030】
【数10】

【0031】
このような目標測位装置1は、電波として2周波CWを用い、3つ以上の受信局を備えており、受信局3の時刻を送信局2の時刻に同期する必要がなく、同期パルサや送信パルス情報を必要としないので、狭帯域の受信系と低速の信号処理系であっても高精度の位置分解能を実現でき、小型で移動可能な受信局3となり、運用の柔軟性を確保できる。また、2周波CWを用いているので、ドップラ現象を利用して高精度な相対速度の推定ができる。
【0032】
なお、送信局2が送信機能とともに受信機能を有するときには、3つの受信局3の1つを送信局2に負わせることができるので、受信局3は2つでよい。
また、目標20の位置および相対速度の推定を水平面座標上の2次元推定を行うときには、受信局3を2つとしてもよい。
また、受信局3が2つのときに、式(16)で求めた2つの距離和ξを用い、目標位置・速度推定器4では、回転楕円体の交点として目標20の位置を測位することも可能である。すなわち、目標20は送信局2と受信局3とを焦点とした距離和ξの2つの回転楕円体の交点に存在するが、水平面座標を正とするなどの制約条件を付加することで、2つの回転楕円体の交点の中で目標20の位置として妥当な解を選択することにより目標20位置を推定できる。
【0033】
また、2周波CWをパルス化した2周波パルス(2周波ICW(2周波 Interrupted CW)とも呼ばれる。)とし、距離ゲート化により、更なる狭帯域、直接波と目標反射波の分離、多目標の分離、近距離クラッタの回避などができる。
【0034】
実施の形態2.
図4は、この発明の実施の形態2に係わる目標測位装置の構成図である。図5は、送信局、受信局および目標のXY座標面上の位置を示す図である。
この発明の実施の形態2に係わる目標測位装置1Bは、実施の形態1に係わる目標測位装置1と送信局2と受信局3Bの局数が異なっており、それ以外は同様であるので、同様な部分に同じ符号を付記して説明は省略する。
実施の形態2に係わる目標測位装置1Bは、図4に示すように、3つの送信局2a〜2cと1つの受信局3Bとを備える。なお、実施の形態2に係わる目標測位装置1Bは、3つの送信局2を備えるが、4つ以上を備えても同様な効果が得られる。
【0035】
送信局2a〜2c、受信局3Bおよび目標20は、図5に示すように、配置されている。受信局3Bの座標をXYZ座標系の原点に置くと送信局2a〜2cの位置ベクトルはXになる。nは送信局2a〜2cを識別する番号であり、3つの送信局2a〜2cが備えられているので、n=1、2、3である。この位置ベクトルXは、既知である。目標20の位置ベクトルXは、この目標測位装置1Bにより求める未知の値である。
【0036】
各送信局2a〜2cからは、3つの目標反射波を分離するために、送信を時分割している。なお、送信局2a〜2c毎に異なる周波数の2周波CWの電波を放射し、受信局3Bの受信信号変換器10でそれぞれの2周波CWのローカル信号に対しミキシングしてもよい。
【0037】
各送信局2a〜2cと受信局3Bとの2周波CW信号の時刻誤差に起因する位相誤差δθi,nとすると、目標反射差信号Bi,nは、式(10)と同様に表される。
そして、目標反射波周波数分析手段14は、実施の形態1と同様にして、周波数切替周期TCCの2倍のサンプリング間隔Tで区間Tの間をM個サンプリングした目標反射差信号Bi,nのデータを用いて離散フーリエ変換して式(12)で表される出力Fi,nを求める。そして、出力Fi,nの振幅|Fi,n|をしきい値処理し、ピークが得られる周波数番号kを、それぞれpi,nとする。この周波数番号pi,nのときの周波数fi,n(ハット)は、式(13)で表される。
【0038】
また、直接波周波数分析手段15は、実施の形態1と同様にして、周波数切替周期TCCの2倍のサンプリング間隔Tで区間Tの間をM個サンプリングした直接差信号B0i,nのデータを用いて離散フーリエ変換して式(14)で表される出力F0i,nを求める。そして、出力F0i,nの振幅|F0i,n|をしきい値処理し、ピークが得られる周波数番号kを、それぞれqi,nとする。この周波数番号qi,nのときの周波数f0i,n(ハット)は、式(15)で表される。
【0039】
このようにして求められた周波数fi,n(ハット)、周波数f0i,n(ハット)を用いて、実施の形態1と同様に、目標20の位置ベクトルの推定値X(ハット)、相対速度ベクトルの推定値V(ハット)を推定することができる。
【0040】
このような目標測位装置1Bは、送信局2を3つ以上備えれば、実施の形態1と同様に、受信局3の時刻を送信局2の時刻に同期する必要がなく、同期パルサや送信パルス情報を必要としないので、狭帯域の受信系と低速の信号処理系であっても高精度の位置分解能を実現でき、小型で移動可能な受信局3となり、運用の柔軟性を確保できる。
なお、送信局数が2であっても、2つの距離和ξから回転楕円体の交点を求めることで目標20位置座標を推定可能である。
【0041】
実施の形態3.
図6は、この発明の実施の形態3に係わる目標測位装置の構成図である。図7は、送信局、受信局および目標のXY座標面上の位置を示す図である。
この発明の実施の形態3に係わる目標測位装置1Cは、図6に示すように、実施の形態1に係わる目標測位装置1の3つの受信局3a〜3cの受信信号変換器10に共通の受信2周波CW信号発生器9からローカル信号が供給され、それに伴って2周波CW信号処理器11Cが異なっており、それ以外は同様であるので、同様な部分に同じ符号を付記して説明は省略する。
実施の形態3に係わる2周波CW信号処理器11Cは、実施の形態1に係わる2周波CW信号処理器11から直接波周波数分析手段15が削除されている。
【0042】
実施の形態3に係わる目標測位装置1Cでは、図7に示すように、目標反射波だけを受信する。
各受信局3Ca〜3Ccには、1つの受信2周波CW信号発生器9から受信2周波CW信号がケーブル長の違いによる遅延などを補正して位相が一定値となるよう調整されながらケーブル18で接続されている。
【0043】
この実施の形態3に係わる受信2周波CW信号は、各受信局3Ca〜3Cc間で位相が揃っているので、送信局2と各受信局3Ca〜3Ccの位相誤差δθi,nは等しく、位相誤差δθとなる。従って、各受信局3Ca〜3Ccでの受信信号変換器10でミキシングされた後の目標反射差信号Bi,nは、式(21)で表される。
【0044】
目標反射波周波数分析手段14Cは、周波数切替周期TCCの2倍のサンプリング間隔Tで区間Tの間をM個サンプリングした目標反射差信号Bi,nのデータを用いて離散フーリエ変換して式(12)で表される出力Fi,nを求める。そして、出力Fi,nの振幅|Fi,n|をしきい値処理し、ピークが得られる周波数番号kを、それぞれpi,nとする。この周波数番号pi,nのときの周波数fi,n(ハット)は、式(13)で表される。ここで、送信周波数f(例えば、fとfの平均値)に対し、実用上その差(f−f)は極めて小さく、周波数番号p1,nと周波数番号p2,nとが等しく周波数番号pとする。
距離和速度和推定手段16Cは、検出した周波数番号pの位相αi,n(ハット)を、式(22)から求める。周波数fの周波数番号pの位相α1,n(ハット)と周波数fの周波数番号pの位相α2,n(ハット)との位相差は、式(23)の関係が成り立つ。
【0045】
【数11】

【0046】
そして、距離和速度和推定手段16Cは、計測された位相差を用いて式(24)から送信局2と目標20間と目標20と各受信局3Ca〜3Cc間の距離の和ξ(ハット)を求める。なお、式(24)は、式(16)と異なり、固定項{−(1/2π)×(ζ−ζ+δθ−δθ)/(f−f)}を含んでいる。
また、距離和速度和推定手段16Cは、式(25)から相対速度和V(ハット)を求める。
【0047】
【数12】

【0048】
目標位置・速度推定器4Cは、以下の手順により目標20の3次元座標と3次元相対速度成分を推定する。
既知の送信局2の位置ベクトル、既知の各受信局3の位置ベクトルおよび推定対象の未知の目標20の位置ベクトルを、それぞれX、X、Xとすると、式(24)の距離和ξを用いることにより、位相誤差を消去可能な式(26)〜式(28)が成り立つ。
そして、目標20の位置ベクトルXの推定値X(ハット)は、3つの受信局3Ca〜3Ccでの距離和ξ(ハット)を用いて、共役勾配法、準Newton法、Levenberg−Marquardt法などの一般的な非線形手法を用いて求められる。
【0049】
【数13】

【0050】
また、目標20の相対速度ベクトルをVとすると、式(25)の線形方程式は式(29)に書き直せる。
そして、目標20の相対速度ベクトルVの推定値V(ハット)は、3つの受信局3での相対速度和V(ハット)と推定値X(ハット)を用いて、逆行列や一般逆行列を用いて求められる。
【0051】
【数14】

【0052】
このような目標測位装置1Cは、各受信局3Ca〜3Ccへの受信2周波CW信号間に位相誤差の差異が発生しないので、直接波を計測する必要がなくなる。
なお、複数の受信2周波CW信号を備え、それらが時刻同期している構成でも同様である。
【0053】
実施の形態4.
図8は、この発明の実施の形態4に係わる目標測位装置の構成図である。図9は、送信局、受信局および目標のXY座標面上の位置を示す図である。
この発明の実施の形態4に係わる目標測位装置1Dは、実施の形態2に係わる目標測位装置1Bと送信2周波CW信号が同期されて供給され、それにともなって2周波CW信号処理器11Dが異なっており、それ以外は同様であるので、同様な部分に同じ符号を付記して説明は省略する。
実施の形態4に係わる目標測位装置1Dは、3つの送信局2Da〜2Dcと1つの受信局3Dとを備える。なお、実施の形態4に係わる目標測位装置1Dは、3つの送信局2Da〜2Dcを備えるが、4つ以上の送信局2を備えても同様な効果が得られる。
各送信局2Da〜2Dcには、1つの送信2周波CW信号発生器5から送信2周波CW信号がケーブル長の違いによる遅延などを補正して位相が一定値となるよう調整されながらケーブル18で接続されている。また、各送信局2Da〜2Dcからは、目標反射波を分離するために、送信を時分割している。
【0054】
この実施の形態4に係わる送信2周波CW信号は、各送信局2Da〜2Dc間で位相が揃っているので、各送信局2Da〜2Dcと受信局3Dの位相誤差δθi,nは等しく、位相誤差δθとなる。従って、受信局3Dの受信信号変換器10でミキシングされた後の目標反射差信号Bi,nは、式(21)で表される。
【0055】
目標反射波周波数分析手段14Dは、周波数切替周期TCCの2倍のサンプリング間隔Tで区間Tの間をM個サンプリングした目標反射差信号Bi,nのデータを用いて離散フーリエ変換して式(12)で表される出力Fi,nを求める。そして、出力Fi,nの振幅|Fi,n|をしきい値処理し、ピークが得られる周波数番号kを、それぞれpi,nとする。この周波数番号pi,nのときの周波数fi,n(ハット)は、式(13)で表される。ここで、送信周波数f(例えば、fとfの平均値)に対し、実用上その差(f−f)は極めて小さく、周波数番号p1,nと周波数番号p2,nとが等しく周波数番号pとする。
【0056】
距離和速度和推定手段16Dは、検出した周波数番号pの位相αi,n(ハット)を、式(22)から求める。周波数fの周波数番号pの位相α1,n(ハット)と周波数fの周波数番号pの位相α2,n(ハット)との位相差は、式(23)の関係が成り立つ。
【0057】
そして、距離和速度和推定手段16Dは、計測された位相差を用いて式(24)から各送信局2と目標20間と目標20と受信局3間の距離の和ξ(ハット)を求める。
また、距離和速度和推定手段16Dは、式(25)から相対速度和V(ハット)を求める。
【0058】
目標位置・速度推定器4Dは、以下の手順により目標20の3次元座標と3次元相対速度成分を推定する。
既知の受信局3Dの位置ベクトル、既知の各送信局2Da〜2Dcの位置ベクトルおよび推定対象の未知の目標20の位置ベクトルを、それぞれX、X、Xとすると、式(24)の距離和ξを用いることにより、位相誤差を消去可能な式(26)〜式(28)が成り立つ。
そして、目標20の位置ベクトルXの推定値X(ハット)は、3つの送信局2Da〜2Dcからの距離和ξ(ハット)を用いて、共役勾配法、準Newton法、Levenberg−Marquardt法などの一般的な非線形手法を用いて求められる。
【0059】
また、目標20の相対速度ベクトルをVとすると、式(25)の線形方程式は式(29)に書き直せる。
そして、目標20の相対速度ベクトルVの推定値V(ハット)は、3つの送信局2Da〜2Dcでの相対速度和V(ハット)と推定値X(ハット)を用いて、逆行列や一般逆行列を用いて求められる。
【0060】
このような目標測位装置1Dは、各送信局2Da〜2Dcへの送信2周波CW信号間に位相誤差の差異が発生しないので、直接波を計測する必要がなくなる。
なお、複数の送信2周波CW信号を備え、それらが時刻同期している構成でも同様である。
【0061】
実施の形態5.
図10は、この発明の実施の形態5に係わる目標測位装置の構成図である。図11は、目標である送信局および受信局のXY座標面上の位置を示す図である。
この発明の実施の形態5に係わる目標測位装置1Eは、1つの送信局2、3つの受信局3Ea、3Eb、3Ecおよび目標位置・速度推定器4Eを備え、送信局2の位置と相対速度とを推定する。各受信局3Ea〜3Ecにて求められる距離和および相対速度和は通信手段を用いて目標位置・速度推定器4Eに送られる。なお、実施の形態5に係わる目標測位装置1Eは、3つの受信局3Ea〜3Ecを備えるが、4つ以上の受信局を備えても同様な効果が得られる。
【0062】
また、実施の形態5に係わる目標測位装置1Eでは、3つの受信局3Ea〜3Ecの受信信号変換器10に共通の受信2周波CW信号発生器9から受信2周波CW信号が供給されている。各受信局3Ea〜3Ecには、1つの受信2周波CW信号発生器9から受信2周波CW信号がケーブル長の違いによる遅延などを補正して位相が一定値となるよう調整されながらケーブル18で接続されている。この実施の形態5に係わる受信2周波CW信号は、各受信局3Ea〜3Ec間で位相が揃っているので、送信局2と各受信局3Ea〜3Ecの位相誤差δθi,nは等しく、位相誤差δθとなる。
【0063】
送信局2は、実施の形態1に係わる送信局2と同様であるので、説明は省略する。そして、放射される電波Txは、式(30)で表される。iは、周波数fまたは周波数fを示し、1または2である。φは、各周波数の電波の時刻t=0での任意の初期位相である。なお、説明を理解しやすくするためにエンベロープ1として一定振幅とした。
【0064】
【数15】

【0065】
受信局3Ea〜3Ecは、それぞれ、空中を伝搬して到達する電波を受信する受信アンテナ8、受信する電波に受信2周波CW信号をミキシングし、ローパスフィルターにより周波数の和信号を除去し、差信号を生成する受信信号変換器10、差信号を処理して距離和と相対速度和とを推定する2周波CW信号処理器11Eを備える。また、受信局3Eaは、受信2周波CW信号を発生する受信2周波CW信号発生器9を備え、受信信号変換器10にはケーブル18が接続されている。
【0066】
受信アンテナ8には、送信アンテナ7から空中に放射された電波が直接に到達する。以下の説明において、直接に到達する電波を直接波と称す。直接波Rx0i,nは、式(31)で表される。なお、τ0nは、送信局と受信局間を電波が伝搬する伝搬時間であり、送信局と受信局間の距離R0nと式(32)の関係式が成り立つ。
【0067】
【数16】

【0068】
受信2周波CW信号発生器9は、受信した直接波を受信信号変換器10においてミキシングするためのローカル信号を生成する受信2周波CW信号を生成し、その受信2周波CW信号を用いてローカル信号を生成して受信信号変換器10に出力する。受信2周波CW信号は、送信2周波CW信号と同様に周波数切替周期TCC毎に周波数指定値が周波数fと周波数fと交互に切り替えられる。但し、送信局2と受信局3との間には時刻ずれがある。
受信2周波CW信号発生器9Eが生成するローカル信号Li,nは、式(33)で表される。なお、Φi,nは、各受信局3と送信局2との間での2周波CW信号の時刻誤差に起因する位相誤差δθを用いて式(34)から求められる。
【0069】
【数17】

【0070】
受信信号変換器10Eは、直接波Rx0i,nをローカル信号Li,nでミキシンングし、ローパスフィルターを通過して周波数の和信号が除去され、直接差信号B0i,nが得られる。直接差信号B0i,nは、式(35)で表される。
【0071】
【数18】

【0072】
2周波CW信号処理器11Eは、直接波周波数分析手段15および距離和速度和推定手段16を有する。
直接波周波数分析手段15Eは、周波数切替周期TCCの2倍のサンプリング間隔Tで区間Tの間をM個サンプリングした直接差信号B0i,nのデータを用いて離散フーリエ変換して式(36)で表される出力F0i,nを求める。そして、出力F0i,nの振幅|F0i,n|をしきい値処理し、ピークが得られる周波数番号kを、それぞれqi,nとする。この周波数番号qi,nのときの周波数f0i,n(ハット)は、式(37)で表される。なお、周波数番号q1,nと周波数番号q2,nは等しく、周波数番号qとする。
【0073】
【数19】

【0074】
距離和速度和推定手段16Eは、検出した周波数番号qの位相αi,n(ハット)を、式(38)から求める。周波数fの周波数番号qの位相α1,n(ハット)と周波数fの周波数番号qの位相α2,n(ハット)との位相差は、式(39)の関係が成り立つ。
そして、距離和速度和推定手段16Eは、計測された位相差を用いて式(40)から送信局2と目標20間と目標20と各受信局3間の距離の和ξ(ハット)を求める。
また、距離和速度和推定手段16Eは、式(41)から相対速度和Vn(ハット)を求める。
【0075】
【数20】

【0076】
目標位置・速度推定器4Eは、以下の手順により送信局2の3次元座標と3次元相対速度成分を推定する。
推定対象の未知の送信局2Eの位置ベクトルおよび既知の各受信局3の位置ベクトルを、それぞれX、Xとすると、式(40)の距離和ξを用いることにより、時刻誤差δtが消去されて、式(42)〜式(44)の関係式が成り立つ。
そして、送信局2の位置ベクトルXの推定値X(ハット)は、3局の受信局3Ea〜3Ecでの距離和ξ(ハット)を用いて、共役勾配法、準Newton法、Levenberg−Marquardt法などの一般的な非線形手法を用いて求められる。
【0077】
【数21】

【0078】
また、送信局2の相対速度ベクトルをVとすると、相対速度ベクトルVは、式(45)の関係式が成り立つ。
そして、送信局2の相対速度ベクトルVの推定値V(ハット)は、3つの受信局3Ea〜3Ecでの相対速度和V(ハット)と推定値X(ハット)を用いて、逆行列や一般逆行列を用いて求められる。
【0079】
【数22】

【0080】
このような目標測位装置1Eは、推定する対象の目標が送信局2である運用形態においても、実施の形態1と同様に、受信局3Ea〜3Ecの時刻を送信局2の時刻に同期する必要がなく、同期パルサや送信パルス情報を必要としないので、狭帯域の受信系と低速の信号処理系であっても高精度の位置分解能を実現でき、小型で移動可能な受信局3Ea〜3Ecとなり、運用の柔軟性を確保できる。
【0081】
実施の形態6.
図12は、この発明の実施の形態6に係わる目標測位装置の構成図である。図13は、目標である受信局および送信局のXY座標面上の位置を示す図である。
この発明の実施の形態6に係わる目標測位装置1Fは、3つの送信局2Fa〜2Fc、1つの受信局3Fおよび目標位置・速度推定器4Fを備え、受信局3Fの位置と相対速度とを推定する。受信局3Fにて求められる距離和および相対速度和は通信手段を用いて目標位置・速度推定器4Fに送られる。なお、実施の形態6に係わる目標測位装置1Fは、3つの送信局3Fa〜3Fcを備えるが、4つ以上の送信局を備えても同様な効果が得られる。
【0082】
また、実施の形態6に係わる目標測位装置1Fでは、3つの送信局2Fa〜2Fcの送信信号変換器6に共通の送信2周波CW信号発生器5から送信2周波CW信号が供給されている。各送信局2Fa〜2Fcには、1つの送信2周波CW信号発生器5から送信2周波CW信号がケーブル長の違いによる遅延などを補正して位相が一定値となるよう調整されながらケーブル18で接続されている。この実施の形態6に係わる送信2周波CW信号は、各送信局2Fa〜2Fc間で位相が揃っているので、送信局2Fa〜2Fcと受信局3Fの位相誤差δθi,nは等しく、位相誤差δθとなる。
【0083】
受信2周波CW信号発生器9は、受信した直接波を受信信号変換器10においてミキシングするためのローカル信号を生成する受信2周波CW信号を生成し、その受信2周波CW信号を用いてローカル信号を生成して受信信号変換器10に出力する。受信2周波CW信号は、送信2周波CW信号と同様に周波数切替周期TCC毎に周波数指定値が周波数fと周波数fと交互に切り替えられる。但し、送信局2と受信局3との間には時刻ずれがある。
受信2周波CW信号発生器9が生成するローカル信号Li,nは、式(33)で表される。なお、Φは、各送信局2Fa〜2Fcと受信局3Fとの間での2周波CW信号の時刻誤差に起因する位相誤差δθを用いて式(34)から求められる。
【0084】
受信信号変換器10は、直接波Rx0i,nをローカル信号Li,nでミキシンングし、ローパスフィルターを通過して周波数の和信号が除去され、直接差信号B0i,nが得られる。直接差信号B0i,nは、式(35)で表される。
【0085】
直接波周波数分析手段15Fは、周波数切替周期TCCの2倍のサンプリング間隔Tで区間Tの間をM個サンプリングした直接差信号B0i,nのデータを用いて離散フーリエ変換して式(36)で表される出力F0i,nを求める。そして、出力F0i,nの振幅|F0i,n|をしきい値処理し、ピークが得られる周波数番号kを、それぞれqi,nとする。この周波数番号qi,nのときの周波数f0i,n(ハット)は、式(37)で表される。なお、周波数番号q1,nと周波数番号q2,nは等しく、周波数番号qとする。
【0086】
距離和速度和推定手段16Fは、検出した周波数番号qの位相αi,n(ハット)を、式(38)から求める。周波数fの周波数番号qの位相α1,n(ハット)と周波数fの周波数番号qの位相α2,n(ハット)との位相差は、式(39)の関係が成り立つ。
そして、距離和速度和推定手段16Fは、計測された位相差を用いて式(40)から各送信局2Fa〜2Fcと目標20間と目標20と受信局3間の距離の和ξ(ハット)を求める。
また、距離和速度和推定手段16Fは、式(41)から相対速度和Vn(ハット)を求める。
【0087】
目標位置・速度推定器4Fは、以下の手順により受信局3Fの3次元座標と3次元相対速度成分を推定する。
推定対象の未知の受信局3Fの位置ベクトルおよび既知の各送信局2Fa〜2Fcの位置ベクトルを、それぞれX、Xとすると、式(40)の距離和ξを用いることにより、時刻誤差δtが消去されて、式(42)〜式(44)の関係式が成り立つ。
そして、受信局3Fの位置ベクトルXの推定値X(ハット)は、3つの送信局2Fa〜2Fcとの距離和ξ(ハット)を用いて、共役勾配法、準Newton法、Levenberg−Marquardt法などの一般的な非線形手法を用いて求められる。
【0088】
また、受信局3Fの相対速度ベクトルをVとすると、相対速度ベクトルVは、式(45)の関係式が成り立つ。
そして、受信局3Fの相対速度ベクトルVの推定値V(ハット)は、3つの送信局2Fa〜2Fcでの相対速度和V(ハット)と推定値X(ハット)を用いて、逆行列や一般逆行列を用いて求められる。
【0089】
このような目標測位装置1Fは、位置および速度を推定する目標が受信局3Fであるような運用形態でも、送信局2Fa〜2Fcの時刻を受信局3Fの時刻に同期する必要がなく、同期パルサや送信パルス情報を必要としないので、狭帯域の受信系と低速の信号処理系であっても高精度の位置分解能を実現でき、小型で移動可能な受信局3Fとなり、運用の柔軟性を確保できる。
【0090】
なお,実施の形態1乃至6における距離和速度和推定手段を用い、かつ受信局で角度計測を行うことが可能とした場合の目標位置推定法と組み合わせることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】この発明の実施の形態1に係わる目標測位装置の構成図である。
【図2】送信局、受信局および目標のXY座標面上の位置を示す図である。
【図3】送信局および受信局での2周波CW信号の周波数の変化の様子を示す図である。
【図4】この発明の実施の形態2に係わる目標測位装置の構成図である。
【図5】送信局、受信局および目標のXY座標面上の位置を示す図である。
【図6】この発明の実施の形態3に係わる目標測位装置の構成図である。
【図7】送信局、受信局および目標のXY座標面上の位置を示す図である。
【図8】この発明の実施の形態4に係わる目標測位装置の構成図である。
【図9】送信局、受信局および目標のXY座標面上の位置を示す図である。
【図10】この発明の実施の形態5に係わる目標測位装置の構成図である。
【図11】目標である送信局および受信局のXY座標面上の位置を示す図である。
【図12】この発明の実施の形態6に係わる目標測位装置の構成図である。
【図13】目標である受信局および送信局のXY座標面上の位置を示す図である。
【符号の説明】
【0092】
1 目標測位装置、2 送信局、3 受信局、4 目標位置・速度推定器、5 送信2周波CW信号発生器、6 送信信号変換器、7 送信アンテナ、8 受信アンテナ、9 受信2周波CW信号発生器、10 受信信号変換器、11 2周波CW信号処理器、14 目標反射波周波数分析手段、15 直接波周波数分析手段、16 距離和速度和推定手段、18 ケーブル、20 目標。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電波を放射する送信局、直接にまたは目標物体で反射してから到達する電波を受信する3つ以上の受信局および受信する電波に基づいて目標の位置と速度とを推定する目標位置・速度推定器を備える目標測位装置において、
上記送信局は、
送信2周波CW信号を発生する送信2周波CW信号発生器と、
電波を上記送信2周波CW信号により変調する送信信号変換器と、
を備え、
上記受信局は、
上記2周波CWと同様な掃引傾斜および掃引時間のローカル信号を発生する受信2周波CW信号発生器と、
上記送信局から直接受信される電波、または目標で反射してから受信される電波と上記受信2周波CW信号発生器9からのローカル信号とをミキシングして直接差信号または目標反射差信号を求める受信信号変換器と、
上記直接差信号の出力が最大になる直接波周波数を算出する直接波周波数分析手段と、
上記目標反射差信号の出力が最大になる目標反射波周波数を算出する目標反射波周波数分析手段と、
上記直接波周波数と上記目標反射波周波数とに基づいて上記送信局と上記受信局との距離和と相対速度和とを推定する距離和速度和推定手段と、
を備え、
上記目標位置・速度推定器は、上記受信局から入力される上記距離和と上記相対速度和とから上記目標の3次元位置座標と3次元相対速度成分とを推定することを特徴とする目標測位装置。
【請求項2】
上記受信局の上記受信2周波CW信号発生器は、他の上記受信局の上記受信2周波CW信号発生器と同期する受信2周波CW信号を発生し、
上記距離和速度和推定手段は、上記目標反射波周波数での2周波の間の位相差に基づいて上記送信局と上記受信局との距離和と相対速度和とを推定することを特徴とする請求項1に記載する目標測位装置。
【請求項3】
上記受信局の上記受信2周波CW信号発生器は、他の上記受信局の上記受信2周波CW信号発生器と同期する受信2周波CW信号を発生し、
上記距離和速度和推定手段は、上記直接波周波数での2周波の間の位相差に基づいて上記送信局と上記受信局との距離和と相対速度和とを推定することを特徴とする請求項1に記載する目標測位装置。
【請求項4】
電波を放射する3つ以上の送信局、直接にまたは目標物体で反射してから到達する電波を受信する受信局および受信する電波に基づいて目標の位置と速度とを推定する目標位置・速度推定器を備える目標測位装置において、
上記送信局は、
送信2周波CW信号を発生する送信2周波CW信号発生器と、
電波を上記送信2周波CW信号により変調する送信信号変換器と、
を備え、
上記受信局は、
上記2周波CWと同様な掃引傾斜および掃引時間のローカル信号を発生する受信2周波CW信号発生器と、
上記送信局から直接受信される電波、または目標で反射してから受信される電波と上記受信2周波CW信号発生器9からのローカル信号とをミキシングして直接差信号または目標反射差信号を求める受信信号変換器と、
上記直接差信号の出力が最大になる直接波周波数を算出する直接波周波数分析手段と、
上記目標反射差信号の出力が最大になる目標反射波周波数を算出する目標反射波周波数分析手段と、
上記直接波周波数と上記目標反射波周波数とに基づいて上記送信局と上記受信局との距離和と相対速度和とを推定する距離和速度和推定手段と、
を備え、
上記目標位置・速度推定器は、上記受信局から入力される上記距離和と上記相対速度和とから上記目標の3次元位置座標と3次元相対速度成分とを推定することを特徴とする目標測位装置。
【請求項5】
上記送信局の上記送信2周波CW信号発生器は、他の上記送信局の上記送信2周波CW信号発生器と同期する送信2周波CW信号を発生し、
上記距離和速度和推定手段は、上記目標反射波周波数での2周波の間の位相差に基づいて上記送信局と上記受信局との距離和と相対速度和とを推定することを特徴とする請求項4に記載する目標測位装置。
【請求項6】
上記送信局の上記送信2周波CW信号発生器は、他の上記送信局の上記送信2周波CW信号発生器と同期する送信2周波CW信号を発生し、
上記距離和速度和推定手段は、上記直接波周波数での2周波の間の位相差に基づいて上記送信局と上記受信局との距離和と相対速度和とを推定することを特徴とする請求項4に記載する目標測位装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2007−192573(P2007−192573A)
【公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−8793(P2006−8793)
【出願日】平成18年1月17日(2006.1.17)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】