説明

目標追尾装置

【課題】 従来、目標の諸元のみから予測時刻における目標の位置等を予測しているために、追随遅れを生じたり、観測された目標の位置と予測位置の差異が大きくなり、安定追尾をすることが困難となる場合があった。
【解決手段】 目標の移動先となる目的地及び予測経路を目的地の優先度、目標の運動諸元を元に推定し、その目的地に向けた移動経路を等速円運動や比例航法により予測することにより、予測位置と観測される目標との位置差を減少させ、追随遅れの解消や安定した追尾維持や追尾精度向上を実現する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、目標の将来位置を予測し、目標予測位置を元に目標を安定して追尾する目標追尾装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の目標追尾装置においては、目標の将来位置を予測する際に、現時刻での目標位置、速度等の目標諸元情報とその時点までの運動諸元を元に、等速直線運動や等速円運動等の運動モデルにより目標の将来位置を予測してきた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−209222号公報
【0004】
このため、目標の将来位置を予測するまでの時間遅れに伴い、目標に対する追随遅れが発生していた。また、目標観測装置の観測周期が長い場合、予測時刻と現在時刻との差が大きくなり、予測位置と予測時に観測された目標の位置との差異が大きくなり、追尾維持が困難になっていた。
【0005】
さらに、目標の低RCS(RCS:Radar Cross Section)化が進んでいるため、目標の観測自体が困難になり、目標を継続してかつ定期的に観測することができず、散発的観測となる頻度が高くなることで、当該目標に対する前回観測時刻と今回観測時刻との時間差が不規則となり、目標予測誤差がその都度大きく変化し、精度が安定せず、相関を取るべき観測目標を誤選択したり、新規目標を次々に生成し、継続した目標追尾を困難にする要因となっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
目標追尾においては、目標の予測位置を如何に予測時刻における目標の実際の位置に近づけられるかが追尾維持や追尾精度向上を行う際に求められる。目標が移動する際には、移動の目的があり、その移動先となる目的地が存在する。目標の移動経路は、この目的地により決定され、予測時の目標位置は前記移動経路上の地点となるので、目的位置を知ることが目標の追尾精度の向上を可能ならしめる。しかし、従来の目標追尾装置は、目標の目的地を推定していないという問題があった。
【0007】
本発明は、係る課題を解決するためになされたものであり、目標が移動先とする目的地の決定及び目的地までの目標の移動経路もしくは移動のための諸元を推定し、推定目的地を元に目標追尾を行うことで、目標の追尾精度を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明による目標追尾装置は、目標の移動先となる移動物を含む目的地、及び当該目的地に対応した優先度を有する目的地情報が格納される目的地情報管理部と、上記目的地情報管理部に格納された目的地情報の優先度を元に目的地候補を選択し、選択された目的地候補と過去時刻で得られた目標の位置及び速度情報を含む管理航跡情報に基いて、目標が等速円運動を行い移動するものと仮定して、等速円運動による目標旋回加速度を算出し、算出した目標旋回加速度が予め設定された値以下である場合に、当該目的地候補を目的地として決定する目的地決定部と、上記目的地決定部にて決定された目的地と過去時刻で得られた目標の管理航跡情報を元に、目標の将来位置を予測する目標航跡予測部と、上記目標航跡予測部により予測された目標の将来位置と、観測された目標位置及び速度に基いて、相関処理により目標を同定する目標相関判定部と、上記目標相関判定部により同定された目標について、新時刻での目標の位置及び速度情報を算出する目標航跡生成部とを備えたものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、目標の目的地を特定し、確からしい目標の予測位置の推定を行うことで、目標追尾の追随遅れを解消し、安定した目標追尾及び追尾精度の向上が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係る実施の形態1による目標追尾装置の基本構成を示す図である。
【図2】本発明に係る実施の形態1による目標追尾装置であって、目標の等速円運動モデルを元に目標の目的地を決定する目標追尾装置の構成例を示す図である。
【図3】本発明に係る実施の形態1による目的地情報管理部で管理される目的地情報の例を示す図である。
【図4】本発明に係る実施の形態1による等速円運動を考慮した目的地決定部の処理フローを示す図である。
【図5】等速円運動による目標旋回加速度の算出処理を説明するための計算モデルを示す図である。
【図6】本発明に係る実施の形態2による目標追尾装置であって、目標の比例航法運動モデルを元に目標の目的地を決定する目標追尾装置の構成例を示す図である。
【図7】本発明に係る実施の形態2による比例航法運動を考慮した的地決定部の処理フローを示す図である。
【図8】比例航法運動による目標旋回加速度の算出処理を説明するための計算モデルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施の形態1.
図1は、本発明に係る実施の形態1による目標追尾装置の基本構成を示す図である。図において、目標追尾装置101は、観測目標情報入力部103と、目標相関判定部104と、目標航跡生成及び更新部105と、航跡情報管理部106と、目標航跡予測部107より構成される。目標観測装置102は目標追尾装置への入力となる観測目標情報を生成する。観測目標情報入力部103は、目標観測装置102からの観測目標情報が入力され、入力される観測目標情報を目標追尾装置内で使用する情報形式に変換する。観測目標情報入力部103は、観測目標情報を入力情報として装置内部に保存する。目標航跡予測部107は、航跡情報管理部106に保存されている管理航跡情報を元に、観測情報入力時刻に合わせて目標位置を予測する処理を行い、目標予測諸元を得る。目標相関判定部104は、観測目標情報入力部103から入力された観測目標情報と、目標航跡予測部107の装置内部で管理している目標予測諸元とが同一のものか否かを判定する相関処理を行う。目標航跡生成及び更新部105は、目標相関判定部104からの相関結果に応じ、観測目標情報と管理航跡情報とから管理航跡情報の更新や生成を行い、生成及び更新された管理航跡情報を、航跡情報管理部106や外部の装置に配布する航跡生成及び更新部である。航跡情報管理部106は、目標航跡生成及び更新部105からの管理航跡情報を装置内部のデータとして管理する。
【0012】
次に、目標が目的地に向かう運動モデル別に、目標航跡予測部の目的地予測決定処理と、目標航跡生成及び更新部の目標航跡予測決定の処理例について、詳細に説明する。
本実施の形態1では、目標が目的地に向かう運動として、等速円運動を行う場合についての目的地及び目標航跡予測決定の動作について説明する。
【0013】
図2は、実施の形態1による目標追尾装置の一例を示す図であって、目標の等速円運動モデルを元に、目標の目的地を決定する目標追尾装置の構成例を示す図である。図2の目標追尾装置201は、図1の目標追尾装置101の目標航跡予測部として、目的地情報入力装置207と、目的地情報管理部208と、目的地決定部209と、目標航跡予測部210を設けたことを特徴とする。図2では、図1の各構成について、新たに符号を付け直して説明を行う。
【0014】
図2において、目標追尾装置201は、観測目標情報入力部203と、目標相関判定部204と、目標航跡生成及び更新部205と、航跡情報管理部206と、目標航跡予測部210より構成される。目標観測装置202は、レーダ装置や撮像装置によって目標を観測し、観測した目標の位置、速度等の観測目標情報を、目標追尾装置への入力情報として生成する。観測目標情報入力部203は、目標観測装置202からの観測目標情報が入力され、入力される観測目標情報を目標追尾装置内で使用する情報形式に変換する。観測目標情報入力部203は、観測目標情報を入力情報として装置内部に保存する。目標航跡予測部210は、航跡情報管理部206に保存されている管理航跡情報を元に、観測情報入力時刻に合わせて目標位置を予測する処理を行い、目標予測諸元を得る。目標相関判定部204は、観測目標情報入力部203から入力された観測目標情報と、目標航跡予測部210の装置内部で管理している目標予測諸元とが同一のものか否かを判定する相関処理を行う。目標航跡生成及び更新部205は、目標相関判定部204からの相関結果に応じ、観測目標情報と管理航跡情報とから管理航跡情報の更新や生成を行い、生成及び更新された管理航跡情報を、航跡情報管理部206や外部の装置に配布する航跡生成及び更新部である。航跡情報管理部206は、目標航跡生成及び更新部105からの位置、速度等の管理航跡情報を装置内部のデータとして管理する。
【0015】
目的地情報入力装置207は、目標の目的地となり得る目的地名の設定と、移動している目的地の場合はその移動する目的地における目的地諸元の設定と、各目的地に対する優先度の設定とを行う目的地情報入力装置である。なお、目的地は、地点の場合も移動物の場合もあり得る。
【0016】
目的地情報管理部208は、目的地情報入力装置207からの目的地情報を目標追尾装置内で管理する。等速円運動を考慮した目的地決定部209は、目標が等速円運動を行うと仮定し、航跡情報管理部206からの位置、速度等の管理航跡情報と、目的地情報管理部208からの優先度付けされた目的地とから、目標が等速円運動を行うとして移動可能な目的地及び目標旋回加速度を決定する。目的地を考慮した目標航跡予測部210は、航跡情報管理部206からの管理航跡情報と、等速円運動を考慮した目的地決定部209からの目標旋回加速度より、次観測時刻の目標位置を予測する。
【0017】
図3は、目的地情報管理部208に保存される目的地情報の例を示す図である。目的地情報は、目的地名301、目的地諸元302、重要度303より構成され、目的地諸元302にては、目的地が固定地点の場合はその位置、移動体の場合は移動諸元と移動諸元が報告された時刻が記録される、重要度303には目的地の重要度に応じ重要度のランクが記録される。
【0018】
図4は、等速円運動を考慮した目的地決定部209の処理フローを示したものである。 本処理は、航跡情報管理部206に航跡情報が登録されたとき、もしくは観測目標情報入力部203に観測目標情報が入力されたときに実施される。本処理への入力情報は、航跡情報管理部206からの管理航跡情報、目的地情報管理部208からの目的地情報及び予め与えられた目標旋回運動の限界値を決める最大旋回加速度である。
【0019】
目的地決定部209の処理は、(1)目的地の存在有無、(2)目的地の選定、(3)目標旋回加速度算出、(4)目的地、目標旋回加速度の決定からなる、4つの部分処理によって構成される。以下、各部分処理について説明する。
【0020】
(1)目的地の存在有無処理
目的地の存在有無処理では、目的地情報管理部208からの目的地情報に目的地が存在しているかの判定を行う(処理401)。
処理401にて、目的地が存在していないと判定された場合、目的地なしとし、目標は現在の管理航跡情報に従って運動すると判断する(処理406)。
一方、処理401にて、目的地が存在している場合、次の(2)目的地選定処理を行う。
【0021】
(2)目的地選定処理
目的地選定処理では、図3に示す目的地情報の内、重要度が高いものを選択し、複数の候補がある場合は管理航跡に近い目的地を優先して選定する(処理402)。例えば、重要度が高い目的地情報とは、図3の目的地Bと移動体Aが該当する(Aの方がBよりも重要度大)。
【0022】
(3)目標旋回加速度算出処理
目標旋回加速度算出処理では、管理航跡情報及び目的地情報より目標が等速円運動を行うと仮定し、目標旋回加速度を算出する(処理403)。
【0023】
(4)目的地、目標旋回加速度の決定処理
目的地、目標旋回加速度の決定処理では、目標旋回加速度が予め設定された最大旋回加速度以内であるかの判定を実施する(処理404)。
処理404にて、目標旋回加速度が最大旋回加速度以内と判定された場合、処理402で選定された目的地と、処理403で計算された目標旋回加速度とを、管理航跡の目的地及び目標旋回加速度とする(処理405)。
一方、処理404にて、算出された目標旋回加速度が、最大旋回加速度を超えると判定された場合は、次の目的地の選定を行うため、処理401からの処理を繰り返す。
【0024】
図5は、等速円運動による目標旋回加速度の算出処理(処理403)を説明するための計算モデルを示す図である。
図において、符号501は管理航跡情報に登録されている当該目標の位置P、符号502は管理航跡情報に登録されている目標の速度ベクトルV(図5ではベクトルVに矢印符号を併記)、符号503は目的地Pである。
これら目標位置P、目標速度ベクトルV、目的地Pは、本計算時に予め与えられる情報である。
符号504は目標が等速円運動を行う際の旋回中心位置Pであり、前記予め与えられる情報と、下記2つの条件より算出する。
【0025】
条件1:旋回中心Pは目標位置Pと目的地Pを通る円である。
条件2:旋回中心Pは目標位置Pを通る目標速度ベクトルVに対して法線方向のベクトルを持つ直線上に存在する。
【0026】
符号505は旋回半径rであり、目標位置Pと旋回中心P間の距離として計算される。符号506は目標旋回加速度aであり、次式(1)で与えられる(式(1)ではベクトルVに矢印符号を併記)。
【0027】
【数1】

【0028】
符号507は、目標位置Pを起点とし、目標旋回加速度aで旋回したときの、次観測時刻の目標予測位置PT1、符号508は目標予測位置PT1における目標予測速度ベクトルVT1(図5ではベクトルVT1に矢印符号を併記)である。図2にて示した目的地を考慮した目標航跡予測部210では、ここで計算された目標予測位置PT1及び目標予測速度ベクトルVを出力する。
【0029】
実施の形態1による目標追尾装置は以上のように構成され、目標追尾装置の目標移動予測において、現時刻での位置、速度等の目標諸元、移動先目的地の重要度、目的地への移動運動方式を元に、目標が移動する目的地を推定、その推定された目的地に対する移動経路を予測し、目標の位置予測精度を高め、また安定して精度の良い追尾を継続することができる。
【0030】
また、観測周期の長い目標観測装置からの目標情報に対する追尾や、低RCS特性を持つ目標に対しての追尾のような、目標観測時刻の差が大きくなる目標追尾もしくは観測が散発的となる目標追尾に対して、その目標予測位置と観測位置との誤差を軽減し、目標追尾を安定して行うことが可能となる。
【0031】
実施の形態2.
本発明に係る実施の形態2の目標追尾装置では、目標が目的地に向かう運動モデルとして、比例航法運動を行う場合についての目的地及び目標航跡予測決定の動作を行う。以下、実施の形態2の目標追尾装置の構成及び動作について説明する。
【0032】
図6は、実施の形態2による目標追尾装置の一例を示す図であって、目標の比例航法運動モデルを元に、目標の目的地を決定する目標追尾装置の構成例を示す図である。図6の目標追尾装置601は、図1の目標追尾装置101の目標航跡予測部として、目的地情報入力装置607と、目的地情報管理部608と、目的地決定部609と、目標航跡予測部610を設けたことを特徴とする。図6では、図1の各構成について、新たに符号を付け直して説明を行う。
【0033】
図6において、目標追尾装置601は、観測目標情報入力部603と、目標相関判定部604と、目標航跡生成及び更新部605と、航跡情報管理部606と、目標航跡予測部610より構成される。目標観測装置602は、レーダ装置や撮像装置によって目標を観測し、観測した目標の位置、速度等の観測目標情報を、目標追尾装置への入力情報として生成する。観測目標情報入力部603は、目標観測装置602からの観測目標情報が入力され、入力される観測目標情報を目標追尾装置内で使用する情報形式に変換する。観測目標情報入力部603は、観測目標情報を入力情報として装置内部に保存する。目標航跡予測部610は、航跡情報管理部606に保存されている管理航跡情報を元に、観測情報入力時刻に合わせて目標位置を予測する処理を行い、目標予測諸元を得る。目標相関判定部604は、観測目標情報入力部603から入力された観測目標情報と、目標航跡予測部610の装置内部で管理している目標予測諸元とが同一のものか否かを判定する相関処理を行う。目標航跡生成及び更新部605は、目標相関判定部604からの相関結果に応じ、観測目標情報と管理航跡情報とから管理航跡情報の更新や生成を行い、生成及び更新された管理航跡情報を、航跡情報管理部606や外部の装置に配布する航跡生成及び更新部である。航跡情報管理部606は、目標航跡生成及び更新部605からの位置、速度等の管理航跡情報を時刻とともに装置内部のデータとして管理する。
【0034】
目的地情報入力装置607は、目標の目的地となり得る目的地、移動している目的地の場合はその移動諸元の設定や各目的地に対する優先度の設定を行う目的地情報入力装置である。なお、目的地は、地点の場合も移動物の場合もある。
目的地情報管理部608は、目的地情報入力装置607からの目的地情報を目標追尾装置内で管理する。
比例航法運動を考慮した目的地決定部609は、目標が目的地に対して比例航法運動を行うと仮定し、航跡情報管理部606からの管理航跡情報(位置、速度等)と目的地情報管理部608からの優先度付けされた目的地とから目標が比例航法運動を行うとして移動可能な目的地及び目標旋回加速度を決定する。
目的地を考慮した目標航跡予測部610は、航跡情報管理部606からの管理航跡情報と比例航法運動を考慮した目的地決定部609からの目標旋回加速度より、次観測時刻の目標位置を予測する。
【0035】
図7は、比例航法運動を考慮した目的地決定部609の処理フローを示したものである。
本処理は、航跡情報管理部606に航跡情報が登録されたとき、もしくは観測目標情報入力部603に観測目標情報が入力されたときに実施される。本処理への入力情報は、航跡情報管理部606からの管理航跡情報、目的地情報管理部608からの目的地情報、比例航法計算時に使用する予め与えられた比例航法定数N及び目標旋回運動の限界値を決める最大旋回加速度である。
目的地決定部609の処理は、(1)目的地の存在有無、(2)目的地の選定、(3)目標旋回加速度算出、(4)目的地、目標旋回加速度の決定からなる、4つの部分処理によって構成される。以下、各部分処理について説明する。
【0036】
(1)目的地の存在有無処理
目的地の存在有無処理では、目的地情報管理部608からの目的地情報に目的地が存在しているかの判定を行う(処理701)。
処理701にて、目的地が存在していないと判定された場合、目的地なしとし、目標は現在の管理航跡情報に従って運動すると判断する(処理706)。
一方、処理701にて、目的地が存在している場合、次の(2)目的地選定処理を行う。
【0037】
(2)目的地選定処理
目的地選定処理では、図3に示す目的地情報の内、重要度が高いものを選択し、複数の候補がある場合は管理航跡に近い目的地を優先して選定する(処理702)。例えば、重要度が高い目的地情報とは、図3の目的地Bと移動体A(Aの方がBよりも重要度大)が該当する。
【0038】
(3)目標旋回加速度算出処理
目標旋回加速度算出処理では、管理航跡情報及び目的地情報より目標が比例航法運動を行うと仮定し、目標旋回加速度を算出する(処理703)。
【0039】
(4)目的地、目標旋回加速度の決定処理
目的地、目標旋回加速度の決定処理では、目標旋回加速度が予め設定された最大旋回加速度以内であるかの判定を実施する(処理704)。
処理704にて、目標旋回加速度が最大旋回加速度以内と判定された場合、処理402で選定された目的地と、処理403で計算された目標旋回加速度とを、管理航跡の目的地及び目標旋回加速度とする(処理705)。
一方、処理704にて、算出された目標旋回加速度が、最大旋回加速度を超えると判定された場合は、次の目的地の選択を行うため、処理701からの処理を繰り返す。
【0040】
図8は、比例航法運動による目標旋回加速度の算出処理(処理703)を説明するための計算モデルを示す図である。ここでは簡単のために2次元座標系にて示す。
図において、符号801は1時刻前の目標航跡位置P、符号802は1時刻前の目標航路角φ、符号803は目標位置P、符号804は目標速度ベクトルV(図8ではベクトルVに矢印符号を併記)、符号805は目的地P、符号806は目的地の速度ベクトルV(図8ではベクトルVに矢印符号を併記)である。
また、符号807は目標と目的地間の距離R、符号808は1時刻前の目標航路角φを基準としたLOS(Line of Sight)の回転角λ、符号809は1時刻前の目標航路角φを基準とした目標速度ベクトルVの回転角γである。
ここで、符号801〜806の物理量は管理航跡情報及び目的地情報より与えられる値であり、符号807〜809の物理量は符号801〜806の物理量より求められる値である。
【0041】
この比例航法運動は、目標速度ベクトルの回転角速度(dγ/dt)をLOSの回転角速度(dλ/dt)に比例させる運動であり、その比例定数として、図7に示した予め与えられた定数である比例航法定数Nを用い、以下の式(2)を満足させる運動となる。
【0042】
【数2】

【0043】
ここで、符号810は前記比例航法運動の結果、目標が取るべき目標旋回速度aであり、以下の式(3)で与えられる。
【0044】
【数3】

【0045】
この旋回加速度aを用い、図6で示した目的地を考慮した目標航跡予測部610では、次観測時刻の目標予測位置及び目標予測ベクトルを算出する。
【0046】
実施の形態2による目標追尾装置は以上のように構成され、目標追尾装置の目標移動予測において、現時刻での位置、速度等の目標諸元、移動先目的地の重要度、目的地への移動運動方式を元に、目標が移動する目的地を推定、その推定された目的地に対する移動経路を予測し、目標の位置予測精度を高め、また安定した追尾の継続を実現することができる。
【0047】
また、観測周期の長い目標観測装置からの目標情報に対する追尾や、低RCS特性を持つ目標に対しての追尾のような、目標観測時刻の差が大きくなる目標追尾もしくは観測が散発的となる目標追尾に対して、その目標予測位置と観測位置との誤差を軽減し、目標追尾を安定して行うことが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、航空管制や対空センサ等を用いて目標追尾を行い、その目標情報の管理や目標情報を使用して各種サービス処理を行うための計算処理システムにおいて利用可能である。
【符号の説明】
【0049】
101 目標追尾装置、102 目標観測装置、103 観測目標情報入力部、104 目標相関判定部、105 目標航跡生成及び更新部、106 航跡情報管理部、107 目標航跡予測部、201 目標追尾装置、202 目標観測装置、203 観測目標情報入力部、204 目標相関判定部、205 目標航跡生成及び更新部、206 航跡情報管理部、207 目的地情報入力装置、208 目的地情報管理部、209 等速円運動を考慮した目的地決定部、210 目標航跡予測部、601 目標追尾装置、602 目標観測装置、603 観測目標情報入力部、604 目標相関判定部、605 目標航跡生成及び更新部、606 航跡情報管理部、607 目的地情報入力装置、608 目的地情報管理部、609 比例航法運動を考慮した目的地決定部、610 目標航跡予測部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
目標の移動先となる移動物を含む目的地、及び当該目的地に対応した優先度を有する目的地情報が格納される目的地情報管理部と、
上記目的地情報管理部に格納された目的地情報の優先度を元に目的地候補を選択し、選択された目的地候補と過去時刻で得られた目標の位置及び速度情報を含む管理航跡情報に基いて、目標が等速円運動を行い移動するものと仮定して、等速円運動による目標旋回加速度を算出し、算出した目標旋回加速度が予め設定された値以下である場合に、当該目的地候補を目的地として決定する目的地決定部と、
上記目的地決定部にて決定された目的地と過去時刻で得られた目標の管理航跡情報を元に、目標の将来位置を予測する目標航跡予測部と、
上記目標航跡予測部により予測された目標の将来位置と、観測された目標位置及び速度に基いて、相関処理により目標を同定する目標相関判定部と、
上記目標相関判定部により同定された目標について、新時刻での目標の位置及び速度情報を算出する目標航跡生成部と、
を備えた目標追尾装置。
【請求項2】
目標の移動先となる移動物を含む目的地と、当該目的地に対応した優先度とを有する目的地情報が格納される目的地情報管理部と、
上記目的地情報管理部に格納された目的地情報の優先度を元に目的地候補を選択し、選択された目的地候補と過去時刻で得られた目標の位置及び速度情報を含む管理航跡情報に基いて、目標が比例航法運動を行い移動するものと仮定して、比例航法運動による目標旋回加速度を算出し、算出した目標旋回加速度が予め設定された値以下である場合に、当該目的地候補を目的地として決定する目的地決定部と、
上記目的地決定部にて決定された目的地と過去時刻で得られた目標の管理航跡情報を元に、目標の将来位置を予測する目標航跡予測部と、
上記目標航跡予測部により予測された目標の将来位置と、観測された目標位置及び速度に基いて、相関処理により目標を同定する目標相関判定部と、
上記目標相関判定部により同定された目標について、新時刻での目標の位置及び速度情報を算出する目標航跡生成部と、
を備えた目標追尾装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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