説明

目的のタンパク質(POI)の高発現のための細胞のスクリーニング系

本発明は、タンパク質の工業的生産に関する。さらに詳しくは本発明は、好ましくは目的のタンパク質(POI)を生産するための、抗生物質に対する耐性を付与するペプチド、又はその断片、対立遺伝子変異体、スプライス変異体、もしくはムテインと、配列番号1、2もしくは3を有する少なくとも1つの配列とを含んでなる、新規キメラ選択マーカーとしての融合タンパク質に関する。本キメラ選択マーカーは、(i)抗生物質に対する耐性と;(ii)配列番号1、2もしくは3を有する配列にリガンドが結合した時に蛍光活性とを示す。本発明はさらに、本発明の融合タンパク質をコードする核酸、及び本発明の融合タンパク質を含む発現ベクター、及びさらに目的のタンパク質(POI)に関する。最後に、目的のタンパク質(POI)の高発現について細胞をスクリーニングするための本発明のキメラ選択マーカーの使用が開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンパク質の工業的生産に関する。さらに詳しくは本発明は、好ましくは目的のタンパク質(POI)を生産するための、抗生物質に対する耐性を付与するペプチド、又はその断片、対立遺伝子変異体、スプライス変異体、もしくはムテインと、配列番号1、2もしくは3を有する少なくとも1つの配列とを含んでなる、新規キメラ選択マーカーとしての融合タンパク質に関する。本キメラ選択マーカーは、(i)抗生物質に対する耐性と;(ii)配列番号1、2もしくは3を有する配列にリガンドが結合した時に蛍光活性とを示す。本発明はさらに、本発明の融合タンパク質をコードする核酸、及び本発明の融合タンパク質を含む発現ベクター、及びさらに目的のタンパク質(POI)に関する。最後に、目的のタンパク質(POI)の高発現について細胞をスクリーニングするための本発明のキメラ選択マーカーの使用が開示される。
【背景技術】
【0002】
哺乳動物細胞へのDNAのトランスフェクションは一般的方法であり、一過性タンパク質発現の作用を研究するために、又は安定な細胞株を開発するためにしばしば使用される。このような方法は、目的のタンパク質(POI)の構造−機能関係を研究することを可能にする。しかし、反応の終点に達するまでは、これらの実験の成功を追跡することは困難である。特に一過性発現の場合は、トランスフェクション効率又は発現速度を測定することが好ましい。しかしトランスフェクション効率又は発現速度の制御に使用されるレポーター分子(例えば、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ又はβ−ガラクトシダーゼ)は典型的には、細胞を固定し、外因性基質(例えば異種遺伝子)とともにインキュベートすることが必要である。異種遺伝子を動物宿主細胞に導入し、低下した遺伝子の発現についてスクリーニングすることは、時間のかかる複雑な工程である。克服すべきいくつかの主要な問題は、例えば(i)大きな発現ベクターの構築;(ii)最終的には選択圧の非存在下での、安定な長期発現を有するクローンのトランスフェクションと選択;及び(iii)目的の異種タンパク質の高発現速度についてのスクリーニングである。
【0003】
目的の遺伝子を組み込み及び/又は目的のタンパク質を高発現するクローンの選択は典型的には、当業者が単純な選択系によりクローンをプレ選択することを可能にする1つのマーカー系を使用して行われる。
【0004】
1つの典型的なアプローチは、選択圧に対する耐性を付与する選択マーカーの使用である。これらの選択マーカーのほとんどは、抗生物質(例えば、ネオマイシン、カナマイシン、ヒグロマイシン、ゲンタマイシン、クロラムフェニコール、プロマイシン、ゼオシン、又はブレオマイシン)に対する耐性を付与する。発現ベクターから目的の遺伝子を発現する細胞クローンを作成する時、宿主細胞は典型的には、同じベクター上で目的のタンパク質と上記選択マーカーとをコードするプラスミドDNAベクターでトランスフェクトされる。しかし、遺伝子配列を取り込むプラスミド能力は通常限定されており、従って選択マーカーは第2のプラスミドにより発現する必要があり、これは目的の遺伝子を含むプラスミドと同時トランスフェクトされる。
【0005】
安定なトランスフェクションは典型的には、宿主細胞のゲノムへの発現ベクターのランダム組み込みを引き起こす。選択圧の使用(例えば、培地に抗生物質を加える)は、各抗生物質又は一般に選択圧に対する耐性を付与する選択マーカーを含有するベクターを組み込まなかったすべての細胞を排除する。選択マーカーが目的の遺伝子と同じベクター上に位置する場合、又は選択マーカーが目的の遺伝子を含むベクターと同時トランスフェクトされた第2のベクター上に位置する場合、細胞は選択マーカーと目的の遺伝子の両方を発現するであろう。しかし目的の遺伝子の発現レベルが、組み込み部位により大きく変化することがしばしば観察される。
【0006】
さらに、系から選択圧を除去すると、発現が不安定になったり消滅したりすることがしばしば観察される。従ってほんの少数の初期トランスフェクタントのみが高い安定な長期発現を与え、大きな候補集団からこれらのクローンを同定することは極めて単調である。従って、大きな候補集団を得るために、安定なトランスフェクションについての初期選択後、第1の工程で選択圧の非存在下で候補クローンを培養することがこれらの系では有益であろう。次に第2の工程で、目的の遺伝子の発現について候補クローンをスクリーニングする。しかし、先行技術の方法で公知のように、選択圧を適用すると選択を行うことができない。
【0007】
別のアプローチでは、高タンパク質量の存在を直接証明する方法により、目的のタンパク質を高発現するクローンのスクリーニングを行うことができる。典型的には細胞内又は細胞培養物上清中で組み込み生成物を検出するために、免疫学的方法(例えばELISA又は免疫組織化学染色)が適用される。これらの方法は、しばしば単調であり、高価で、時間がかかり、典型的には大量処理スクリーニング(HTS)測定法に適用できないことが多い。さらに、発現タンパク質の検出を可能にするために、発現されたタンパク質に特異的な抗体を利用しなければならない。
【0008】
また蛍光活性化細胞ソーター解析(FACS)によりタンパク質量を定量する試みも行われるが、特に分泌されたタンパク質の場合はあまり成功していない(例えば、Borthら(2000);Biotechnol.Bioeng.71,266−273を参照)。FACS技術は、細胞の亜集団を検出可能なマーカーで標識し、このマーカーで励起されたシグナルにより好適な細胞を分類する工程に基づく。
【0009】
当該分野では多くの容易に検出可能なマーカーが利用できる。これらは通常、発色もしくは発光基質に作用する酵素(例えば、β−グルクロニダーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、ノパリンシンターゼ、β−ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、及び分泌型アルカリホスファターゼ(SEAP))に対応する。例えば緑色蛍光タンパク質(GFP)のような蛍光タンパク質又はGriffinら(「生きた細胞内の組換えタンパク質分子の特異的共有結合標識」、Science,1998,Jul 10;281(5374):269−72)が記載した合成ペプチドは、FACSの検出可能マーカーとして使用される。これらのすべてのタンパク質やペプチドの活性は、大量処理スクリーニング(HTS)フォーマットで樹立される標準的測定法により測定することができる。
【0010】
目的のタンパク質の高発現速度のスクリーニングのための1つの一般的アプローチは、それぞれが選択性を有する2つの検出可能な選択マーカーの使用である。2つの別のマーカーを有するかかる選択マーカー系は、目的の遺伝子と同じベクターから発現される検出可能マーカー及び追加のマーカーを利用する(例えば、Chesnutら(1996);J.Immunol.Meth.193,17−27を参照)。そのような検出可能な選択マーカー系を使用する概念の基礎となる考えは、同じベクター上の2つの異なる遺伝子の同時発現により、目的の遺伝子の発現と追加のマーカーの相関を確立することである。
【0011】
この方法の欠点は、追加の選択マーカーのためのさらに別の発現カセットの使用である。これは、プロモーター、cDNA、及び少なくとも3つのタンパク質のポリアデニル化シグナル(すなわち、目的の遺伝子、選択マーカー、及び追加のマーカー)を含む発現単位を有することにより、発現ベクターがかなり大きくなる。複数鎖タンパク質については、状況はさらに複雑になる。あるいは、それぞれ(a)目的のタンパク質、(b)選択マーカー、及び(c)追加の選択マーカーをコードする3つの遺伝子を発現する個々のプラスミドベクターを、同時トランスフェクトすることができるであろう。しかしベクターは、異なる遺伝子座に組み込まれるか、又は変動する無関係のかつ追加的に非常に低い発現速度を示す可能性がある。さらに非常に低い発現速度で発現されるタンパク質は、無効な又は欠陥のある翻訳のために不活性で誤って折り畳まれる可能性がある。その結果、かかる構築体では、少なくともある程度は有効な翻訳を可能にするために、かさの大きな検出可能なマーカーを使用する時は、目的のタンパク質はある分子量(これは、使用される発現系に依存する)を超えてはならない。しかしこれは、上記方法の適用可能性を大きく低下させる。
【0012】
上記制限を克服するための別のアプローチは、選択マーカーと検出可能マーカーの機能性を組合せたキメラマーカーの使用である。一部のキメラマーカーは当該分野で記載されている。
【0013】
例えばBennettら(1998,Biotechniques,24,478−482)は、GFP−Zeo(登録商標)マーカーを開示し、これはゼオシン抗生物質に対する耐性を付与し、その発現は蛍光顕微鏡により追跡することができる。この論文は、GFP−Zeo(登録商標)マーカーが目的のタンパク質の発現のスクリーニングに有用であることを示唆する。しかし目的のタンパク質の発現がGFP−Zeo(登録商標)マーカーの発現と実際に相関していることを証明する実験データは無い。
【0014】
US2004/0115704は、プロ−GFPキメラマーカーと、転写制御要素の活性を測定するためのその使用を開示する。US2004/0115704は、目的のタンパク質の発現について細胞をスクリーニングするためのそのようなマーカーの使用を教示も示唆もしていない。
【0015】
WO2006/058900は、ルシフェラーゼとプロマイシンN−アセチルトランスフェラーゼを含む融合タンパク質を開示し、特に、プロマイシンN−アセチルトランスフェラーゼとフレーム内融合したホタル[例えばホチヌス・ピラリル(photinus pyralis)、ルシオラ・クルシアータ(Luciola cruciata)、ルシオラ・ラテラリス(Luciola lateralis)、又はホチヌス・ペンシルバニカ(photinus pennsylvanica)、レニラ・レインホルミス(Renilla reniformis)(ウミシイタケ)又はバルグラ・ヒルゲンドルフィイ(ウミホタル)]由来のルシフェラーゼの使用を開示する。この融合タンパク質は、選択マーカー(プロマイシン)と検出可能マーカー(ルシフェラーゼ活性)の機能性を組合せることを可能にする。
【0016】
WO01/53325は、Griffinら(1998)が記載した合成ペプチド(さらにLumio−Tagと呼ぶ)を使用する方法に関する。特にWO01/53325は、固体支持体に固定化した修飾蛍光化合物を使用して目的のタンパク質をアフィニティ精製する方法を教示する。かかる方法において目的のタンパク質はLumio−Tagに融合される。WO01/53325はさらに、(i)Lumio−Tagに融合した目的のタンパク質;及び(ii)選択マーカーを含むDNA構築体を教示し、該選択マーカーは抗生物質に対する耐性を与える遺伝子に対応する。しかしこれらのDNA構築体では、Lumio−Tagに融合した目的のタンパク質をコードする遺伝子は、抗生物質に対する耐性を与える遺伝子とは異なる。すなわちWO01/53325はLumio−Tagを含むキメラマーカーを開示せず、目的のキメラタンパク質のみを開示する。
【0017】
すなわち、最先端のマーカーの使用による問題はまだ解決されていない。効率的なキメラマーカーを提供するニーズがまだ存在する。新規の代替的かつ強力なキメラマーカーの提供は、治療用タンパク質の工業的生産および高発現クローンのスクリーニングの分野で極めて有用であろう。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
従って本発明の目的は、目的のタンパク質の厳密なサイズ制限により制限されることなく、細胞の選択と目的のタンパク質の発現の追跡の両方を可能にするキメラマーカー系を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記目的は、抗生物質に対する耐性を付与するペプチド、又はその断片、対立遺伝子変異体、スプライス変異体、もしくはムテインと、配列番号1、2もしくは3を有する少なくとも1つの配列とを含んでなる融合タンパク質として与えられ、ここで本キメラ選択マーカーは、(i)抗生物質に対する耐性と;(ii)配列番号1、2もしくは3を有する配列にリガンドが結合した時に蛍光活性とを示す。本キメラ選択マーカーは、対応する抗生物質の添加でも細胞が生存し、適切なリガンドが加えられた時蛍光を発することを特徴とする細胞に取り込む。
【0020】
本発明の融合タンパク質は、抗生物質に対する耐性を与えるペプチドを第1成分として含有する。この抗生物質は、好ましくはネオマイシン、カナマイシン、ネオマイシン−カナマイシン、ヒグロマイシン、ゲンタマイシン、クロラムフェニコール、プロマイシン、ゼオシン、又はブレオマイシンから選択される。
【0021】
第1成分として使用されるこれらの抗生物質に対する耐性を与えるペプチドは、好ましくは対応する耐性遺伝子によりコードされる。好ましくは耐性遺伝子は、上記抗生物質の耐性遺伝子、例えばネオマイシンホスホトランスフェラーゼII型をコードする遺伝子、ネオマイシン−カナマイシンホスホトランスフェラーゼII型をコードする遺伝子、ヒグロマイシンホスホトランスフェラーゼをコードする遺伝子、ゲンタマイシンアセチルトランスフェラーゼをコードする遺伝子、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼをコードする遺伝子、プロマイシンN−アセチルトランスフェラーゼ(pac)をコードする遺伝子、ゼオシン耐性タンパク質をコードする遺伝子、又はブレオマイシン耐性タンパク質をコードする遺伝子、又はその断片、対立遺伝子変異体、スプライス変異体、もしくはムテインから選択される。これらの耐性遺伝子によりコードされるペプチドの(生物)活性は、上記抗生物質に対する耐性を付与する能力である。
【0022】
さらに好ましくは本発明の融合タンパク質は、
(i)配列番号4のプロマイシンN−アセチルトランスフェラーゼ耐性遺伝子によりコードされる配列番号5のプロマイシンN−アセチルトランスフェラーゼ;
(ii)配列番号6のネオマイシン耐性遺伝子によりコードされる配列番号7のネオマイシンホスホトランスフェラーゼII型;
(iii)配列番号8のカナマイシン耐性遺伝子によりコードされる配列番号9のカナマイシンホスホトランスフェラーゼII型;
(iv)配列番号10のネオマイシン−カナマイシン耐性遺伝子によりコードされる配列番号11のネオマイシン−カナマイシンホスホトランスフェラーゼII型;
(v)配列番号12のヒグロマイシン耐性遺伝子によりコードされる配列番号13のヒグロマイシンホスホトランスフェラーゼ;
(vi)配列番号14のゲンタマイシン耐性遺伝子によりコードされる配列番号15のゲンタマイシンアセチルトランスフェラーゼ;
(vii)配列番号16のクロラムフェニコール耐性遺伝子によりコードされる配列番号17のクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ;
(viii)配列番号18のゼオシン耐性遺伝子によりコードされる配列番号19のゼオシン再狭窄タンパク質;及び/又は
(ix)配列番号20のブレオマイシン耐性遺伝子によりコードされる配列番号21のブレオマイシン耐性タンパク質
から選択される抗生物質の耐性を付与するペプチドを含む。
【0023】
さらに好ましくは、本発明の融合タンパク質は、第1成分として、プロマイシンN−アセチルトランスフェラーゼを含む。上記したように本発明のプロマイシンN−アセチルトランスフェラーゼの(生物)活性は、プロマイシンに対する耐性を付与するその能力である。プロマイシン(二塩化プロマイシン[3’(α−アミノ−p−メトキシヒドロシンナムアミド)−3’−デオキシ−N,N−ジメチルアデノシン・2HCl]、C222975・2HCl、分子量:544.43(Sambrook,J.,Fritsch,E.F.及びManiatis,T.;Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第3版、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、New York))は、ストレプトミセス・アルボニガー(Streptomyces alboniger)からのアミノヌクレオシド抗生物質である。これはアミノアシル−tRNAのアナロゴン(analogon)であり、原核生物と真核生物のリボゾームでのペプチド輸送を停止させることによりタンパク質合成を阻害する。この抗生物質はグラム陽性細菌及び異なる動物細胞の増殖を阻害する。真菌とグラム陰性菌は、プロマイシンが細胞壁を通過できないため、耐性である。プロマイシンのストック濃度は、典型的には5〜50mg/ml2回蒸留水であり、−20℃で保存され、使用濃度は典型的には1〜30μg/ml(哺乳動物細胞)である。
【0024】
さらに好ましくは、本発明の融合タンパク質の第1成分として使用されるプロマイシンN−アセチルトランスフェラーゼ(pac)は、微生物、好ましくはストレプトミセス(Streptomyces)の種、例えばストレプトミセス・アルボニガー(Streptomyces alboniger)又はストレプトミセス・コエリカラー(Streptomyces coelicolor)から得られる本来の配列である。好ましくは本発明の融合タンパク質のプロマイシンN−アセチルトランスフェラーゼ(pac)は、本来の完全長配列、さらに好ましくはストレプトミセス・アルボニガー・パック(Streptomyces alboniger pac)から得られる本来の完全長配列である。さらに好適な実施態様において、本発明の融合タンパク質のプロマイシンN−アセチルトランスフェラーゼ(pac)は、配列番号5のペプチド配列を含むか、又は配列番号4によりコードされるペプチド配列である。さらに好ましくは本発明の融合タンパク質のプロマイシンN−アセチルトランスフェラーゼ(pac)は、配列番号5のアミノ酸2〜199を含むか、又は配列番号4のヌクレオチド3〜597によりコードされる。未変性のプロマイシンN−アセチルトランスフェラーゼはまた、すべての天然に存在するスプライス変異体を包含する。上記のプロマイシンN−アセチルトランスフェラーゼ(pac)の「スプライス変異体」は、上記の未変性のプロマイシンN−アセチルトランスフェラーゼ(pac)の非スプライスペプチドの異なる非標準的スプライシングにより得られるプロマイシンN−アセチルトランスフェラーゼであると理解される。さらに好ましくはプロマイシンN−アセチルトランスフェラーゼ(pac)のかかるスプライス変異体は、プロマイシンN−アセチルトランスフェラーゼ(pac)活性を示す。
【0025】
別の実施態様において本発明の融合タンパク質は、上記の抗生物質に対する耐性を与えるペプチドの断片を第1成分として含む。本発明においてかかるペプチドの断片は、その対応する未変性のペプチドと少なくとも50%、より好ましくは少なくとも60%、そしてさらに好ましくは少なくとも70%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%の配列同一性を有する配列であると定義され、これらの断片は対応する抗生物質に対する耐性を与える(機能活性)。
【0026】
あるいは又はさらに、本発明の融合タンパク質の第1成分(又は本発明の融合タンパク質、又は後述の目的のタンパク質)は、未変性の完全長型、すなわち上記の抗生物質に対する耐性を与えるペプチド(又は本発明の融合タンパク質、又は後述の目的のタンパク質)の未変性の完全長型の少なくとも50、100、又は150個のアミノ酸の生物活性断片に対応する。この断片は、なお生物活性があり、上記の抗生物質に対する耐性を与えることが重要である。第1成分の(生物)活性は、例えば当業者に公知の慣習的な方法により測定することができる。
【0027】
さらに別の実施態様において本発明の融合タンパク質の第1成分は、上記の抗生物質に耐性を与えるペプチドの対立遺伝子変異体を含む。本発明において「対立遺伝子変異体」は、上記の第1成分の未変性型の未変性の配列の変化として理解され、ここで変化した配列は対応する抗生物質に耐性を付与する。さらに好ましくは上記の第1成分の対立遺伝子変異体は、第1成分の未変性型と、さらに好ましくは上記の配列、例えば配列番号5、さらに好ましくは配列番号5のアミノ酸2〜199と、又は配列番号7、9、11、13、15、17、19、又は21の配列と、少なくとも50%、さらに好ましくは少なくとも60%、さらに好ましくは少なくとも70%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%の配列同一性を有する。第1成分の対立遺伝子変異体、すなわち抗生物質に耐性を付与するペプチドの対立遺伝子変異体はまだ、その対応する抗生物質、すなわち、ネオマイシン、カナマイシン、ネオマイシン−カナマイシン、ヒグロマイシン、ゲンタマイシン、クロラムフェニコール、プロマイシン、ゼオシン、又はブレオマイシンに耐性を付与する。
【0028】
第1成分の(生物)活性(すなわち対応する抗生物質に耐性を付与する)はまた、第1成分のムテインによっても与えられる。本明細書において用語「ムテイン」は、天然に存在するポリペプチドの類似体、例えば上記の第1成分の未変性型の類似体、特に配列5、7、9、11、13、15、17、19、及び21(すなわち後述の本発明の融合タンパク質又は目的のタンパク質)の類似体であり、ここで天然に存在するポリペプチドの1つまたはそれ以上のアミノ酸残基は、天然に存在するポリペプチドと比較して生じた生成物の活性を大きく低下させることなく、ポリペプチドの天然に存在する配列に、異なるアミノ酸残基で置換されるか、又は欠失されるか、又は1つもしくはそれ以上のアミノ酸残基が付加される。これらのムテインは、公知の合成法及び/又は部位特異的突然変異誘発法、又はこれらに適した他の公知の方法により調製される。本発明で使用できる上記の第1成分のムテイン(又は後述の本発明の融合タンパク質又は目的のタンパク質)又はこれらのムテインをコードする核酸は、好ましくはある限定されたセットの実質的に対応する配列を、過剰の実験をすることなく、本明細書に記載の教示や指針に基づいて、当業者により慣習的に得られる置換ポリペプチドもしくはポリヌクレオチドとして含む。
【0029】
本発明の上記の第1成分のムテイン(又は後述の本発明の融合タンパク質又は目的のタンパク質)は、好ましくは核酸(例えばDNA又はRNA)によりコードされるタンパク質を含み、これは中程度又は高度ストリンジェント条件下で、DNA又はRNA(上記の第1成分(の未変性型)をコードする)にハイブリダイズする。用語「ストリンジェント条件」はハイブリダイゼーションと以後の洗浄条件を意味し、これを当業者は「ストリンジェント」であると呼ぶ。Ausubelら、Current Protocols in Molecular Biology(前述の)、Interscience,N.Y.、6.3と6.4(1987、1992)、及びSambrookら(Sambrook,J.,Fritsch,E.F.とManiatis,T.;Molecular Cloning,A Laboratory Manual、第3版、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、NY)を参照。
【0030】
特に限定されないが、ストリンジェント条件の例として、試験中のハイブリッドの計算されるTmより低い12〜20℃での、例えば2×SSCと0.5%SDS中で5分間、2×SSCと0.1%SDS中で15分間の洗浄条件;0.1×SSCと0.5%SDS中で37℃で30〜60分間、次に0.1×SSCと0.5%SDS中で68℃で30〜60分間の洗浄条件を含む。当業者は、ストリンジェント条件がDNA配列、オリゴヌクレオチドプローブ(例えば10〜40塩基)、又はこの混合オリゴヌクレオチドプローブの長さにも依存することを理解するであろう。混合プローブを使用する場合は、SSCの代わりに塩化テトラメチルアンモニウム(TMAC)を使用することが好ましい。
【0031】
上記の第1成分のムテイン(後述の本発明の融合タンパク質又は目的のタンパク質)は、その未変性型、例えば第1成分の未変性型と、少なくとも50%同一、さらに好ましくは少なくとも60%同一、さらに好ましくは少なくとも70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%同一であるアミノ酸配列を有するポリペプチドを含み、ここで第1成分のこれらのムテインは上記の抗生物質に対する耐性を付与する。
【0032】
本発明のクエリーなアミノ酸配列と少なくとも、例えば95%「同一」であるアミノ酸配列を有するポリペプチドは、対象のポリペプチド配列が、クエリーなアミノ酸配列のそれぞれ100アミノ酸について最大5つのアミノ酸の変化を含んでよいこと以外は、対象のポリペプチドのアミノ酸配列はクエリーな配列と同一である。すなわちクエリーなアミノ酸配列と少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を有するポリペプチドを得るために、対象配列中のアミノ酸残基の最大5%(100のうちの5)が、挿入、欠失されるか、又は他のアミノ酸で置換されてよい。
【0033】
正確な対応の無い配列について、第1配列の「%同一性」が第2配列に関して決定される。一般に、比較されるこれらの2つの配列は、配列間の最大相関を与えるように整列される。これは、整列の程度を上昇させるために、1つの配列又は両方の配列に「ギャップ」を挿入することを含む。%同一性は、比較される配列のそれぞれの全長にわたって決定され(いわゆる全体整列)、これは、同じ長さ又は似た長さの配列、又はより短い特定の長さ(いわゆる局所的整列)にわたって特に適しており、これは等しくない長さの配列により適している。
【0034】
2つまたはそれ以上の配列の同一性と相同性を比較する方法は当該分野で公知である。すなわち例えば、Wisconsin Sequence Analysis Package、バージョン9.1(Devereuxら、1984,Nucleic Acids Res.12,387−395)で入手できるプログラム、例えばプログラムBESTFITとGAPを使用して、2つのポリヌクレオチド間の%同一性、及び2つのポリペプチド配列間の%同一性と%相同性を決定することができ(SmithとWaterman(1982)、J.Mol.Biol.147,195−197)、2つの配列間の類似性の最適の単一の領域が見つかる。配列間の同一性及び/又は類似性を決定するための他のプログラムも当該分野で公知であり、例えばBLASTファミリのプログラム(Altschul,S.F.ら、1990,J.Mol.Biol.215:403−410)(world wide web site ncbi.mlm.nih.govでNCBIのホームページからアクセスできる)やFASTA(Person(1990)、Methods Enzymol.183,63−98;PearsonとLipman(1988)、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85,2444−2448)がある。
【0035】
本発明の融合タンパク質のムテインの好適な変化は、「保存的」置換である。上記の第1成分(後述の本発明の融合タンパク質又は目的のタンパク質)の保存的アミノ酸置換には、グループのメンバー間の置換でも分子の生物学的機能が保存されるように、十分に似ている生理化学的性質を有する群内の同義のアミノ酸を含む(例えば、Grantham,R.(1974),Science 185,862−864)。特に挿入及び/又は欠失が数個のアミノ酸(例えば30未満、好ましくは10未満)のみを含み、かつ機能活性に決定的に重要なアミノ酸(例えばシステイン残基)を除去したり排除したりしないなら、その機能を変化させることなく、(上記で)定義した配列にアミノ酸を挿入及び/又は欠失させてもよいことは当業者に明らかであろう。
【0036】
好ましくは、同じグループに分類され典型的には交換可能な同義のアミノ酸は、表Iで定義される。さらに好ましくは同義のアミノ酸は表IIで定義され、さらに好ましくは表IIIで定義される。
【0037】
表I
同義のアミノ酸の好適な群
アミノ酸 同義の群
Ser Ser, Thr, Gly, Asn
Arg Arg, Gln, Lys, Glu, His
Leu Ile, Phe, Tyr, Met, Val, Leu
Pro Gly, Ala, Thr, Pro
Thr Pro, Ser, Ala, Gly, His, Gln, Thr
Ala Gly, Thr, Pro, Ala
Val Met, Tyr, Phe, Ile, Leu, Val
Gly Ala, Thr, Pro, Ser, Gly
Ile Met, Tyr, Phe, Val, Leu, Ile
Phe Trp, Met, Tyr, Ile, Val, Leu, Phe
Tyr Trp, Met, Phe, Ile, Val, Leu, Tyr
Cys Ser, Thr, Cys
His Glu, Lys, Gln, Thr, Arg, His
Gln Glu, Lys, Asn, His, Thr, Arg, Gln
Asn Gln, Asp, Ser, Asn
Lys Glu, Gln, His, Arg, Lys
Asp Glu, Asn, Asp
Glu Asp, Lys, Asn, Gln, His, Arg, Glu
Met Phe, Ile, Val, Leu, Met
Trp Trp
【0038】
表II
同義のアミノ酸のより好適な群
アミノ酸 同義の群
Ser Ser
Arg His, Lys, Arg
Leu Leu, Ile, Phe, Met
Pro Ala, Pro
Thr Thr
Ala Pro, Ala
Val Val, Met, Ile
Gly Gly
Ile Ile, Met, Phe, Val, Leu
Phe Met, Tyr, Ile, Leu, Phe
Tyr Phe, Tyr
Cys Cys, Ser
His His, Gln, Arg
Gln Glu, Gln, His
Asn Asp, Asn
Lys Lys, Arg
Asp Asp, Asn
Glu Glu, Gln
Met Met, Phe, Ile, Val, Leu
Trp Trp
【0039】
表III
同義のアミノ酸の最も好適な群
アミノ酸 同義の群
Ser Ser
Arg Arg
Leu Leu, Ile, Met
Pro Pro
Thr Thr
Ala Ala
Val Val
Gly Gly
Ile Ile, Met, Leu
Phe Phe
Tyr Tyr
Cys Cys, Ser
His His
Gln Gln
Asn Asn
Lys Lys
Asp Asp
Glu Glu
Met Met, Ile, Leu
Trp Met
【0040】
本発明で使用される上記の第1成分(又は後述の本発明の融合タンパク質又は目的のタンパク質)のムテインを得るために使用できるタンパク質のアミノ酸置換の作成例には、公知の方法、例えばMarkらの米国特許第4,959,314号、4,588,585号、及び4,737,462号;Kothsらの5,116,943号、Namenらの4,965,195号;Chongらの4,879,111号;及びLeeらの5,017,691号に記載のもの;及び米国特許第4,904,584号(Shawら)又はSambrookら,2001,Molecular Cloning:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor、NY、に記載のリジン置換タンパク質がある。
【0041】
好ましくは本発明のムテインは、対応する天然に存在するポリペプチドと実質的に同じ生物活性を示す。
【0042】
第2成分として本発明の融合タンパク質は、アミノ酸位置1、2、5、及び6に4つのシステインのセットを有する配列番号1の少なくとも1つのコア配列(Cys Cys Xaa Xaa Cys Cys)を含む。配列番号1の3位と4位のアミノ酸は、天然に存在するアミノ酸であるアラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン、及びバリンから選択されるアミノ酸、又は天然に存在しないこれらの変異体(例えば、セレノシステイン)から選択されるアミノ酸を含む。さらに好ましくは、配列番号1の3位と4位のアミノ酸はプロリン又はグリシンを含む(配列番号2)。従って本発明の融合タンパク質は、第2成分として配列番号2を含む少なくとも1つの配列を含む。さらに好ましくは配列番号2においてプロリンはアミノ酸3位に位置し、グリシンはアミノ酸4位に位置する。さらに配列番号1と2のいずれも、そのN末端及び/又はC末端に、好ましくはグリシンから選択されるさらなるアミノ酸を含む。本発明の融合タンパク質中に少なくとも1回存在する好適な配列の例は、配列番号3で示される。
【0043】
本発明の融合タンパク質に含有される第2成分は、好ましくは6〜50個のアミノ酸の長さ、さらに好ましくは6〜30個のアミノ酸の長さ、さらに好ましくは6〜20個のアミノ酸の長さを含む。
【0044】
上記の抗生物質に対する耐性を付与するペプチド、又はその断片、対立遺伝子変異体、スプライス変異体、もしくはムテインと、配列番号1、2もしくは3を有する少なくとも1つの配列とを含有する融合タンパク質は、配列番号1、2もしくは3を有する配列のリガンドに結合することができる。
【0045】
本発明において「リガンド」は、好ましくは配列番号1、2もしくは3を有する配列に結合することができる化合物である。さらに好ましくはかかるリガンドは、フルオレセイン又はその誘導体であり、最も好ましくはリガンドは、膜透過性重ヒ素化フルオレセイン誘導体、例えば膜透過性フルオレセイン誘導体4’,5’−ビス(1,3,2−ジチオアルソラン−2−イル)フルオレセイン、又は同じ結合性と蛍光性を示すその任意の誘導体である。
【0046】
リガンド自体は、その非結合状態では非蛍光性であるが、配列番号1、2もしくは3に結合すると蛍光性となる。配列番号1は、リガンドが結合に必要とする一般的コア配列である。しかし配列番号1のコア配列は、種々の特異的変異体となり易く、これらは上記したようにコア配列に包含される。結合状態のリガンドの蛍光は、蛍光シグナルを検出するのに適した公知の蛍光検出法を使用して検出される。好適な方法は、蛍光シグナルの特異的生成、すなわち規定の波長によるリガンドの蛍光の励起と、次に生成されるシグナルの検出とを含む。リガンドの蛍光シグナルの同時又は時差的生成と検出も同様に、本発明に含まれる。好ましくは蛍光検出は、レーザー誘導蛍光検出(LIF)、レーザー誘導時差的蛍光検出(LI2F)、蛍光寿命イメージング顕微鏡(FLIM)、分光光学的方法、フローサイトメトリー、白色液体蛍光分光法、又は蛍光活性化細胞ソーター解析(FACS)を用いて行われる。
【0047】
第1成分として、上記の抗生物質に耐性を付与するペプチドを、配列番号1、2もしくは3の少なくとも1つの配列、又は配列番号1、2もしくは3のさらに多くの配列に融合すると融合タンパク質が得られ、これは、配列番号1、2もしくは3の1つのみの配列を有する融合タンパク質より、リガンドに結合するとより強い蛍光シグナルを示す。上記リガンド結合配列の2つ以上のタグ付けは、例えば低蛍光シグナルが予測される時(例えば、プローブ中に他の蛍光成分も存在する時)はシグナル対ノイズ比を上昇させるために使用される。
【0048】
本発明の融合タンパク質又はその変異体の第1成分が、本発明の融合タンパク質の第2成分としての配列番号1、2もしくは3を含む1つのみのリガンド結合配列に融合すると、第1成分、又はその断片、対立遺伝子変異体、スプライス変異体、もしくはムテインの3’末端は、配列番号1、2もしくは3を含むリガンド結合配列の5’末端に結合するか、又は好ましくは配列番号1、2もしくは3を含むリガンド結合配列の3’末端は、第1成分、又はその断片、対立遺伝子変異体、スプライス変異体、もしくはムテインの5’末端に融合する。
【0049】
あるいは、上記第1成分又はその変異体、及び配列番号1、2もしくは3を含む2つ以上のリガンド結合配列が本発明の融合タンパク質に含有される場合、配列番号1、2もしくは3を含むリガンド結合配列は、配列番号1、2もしくは3のリガンド結合配列の5’末端を介して、第1成分、又はその断片、対立遺伝子変異体、スプライス変異体、もしくはムテインの3’末端にブロックとして配置されるか、又はその逆でもよい。別の態様において配列番号1、2もしくは3を含む2つまたはそれ以上のリガンド結合配列が、第1成分の配列のいずれかの末端に存在してもよい。
【0050】
本発明の融合タンパク質は、上記第1成分と第2成分とを空間的に分離するリンカーを含有してもよい。あるいは(又はさらに)かかるリンカーは、本発明の融合タンパク質中に複数のリガンド結合配列が存在する場合は、配列番号1、2もしくは3を含むリガンド結合配列を空間的に分離するのに使用される。典型的にはかかるリンカーは、オリゴペプチド又はポリペプチドである。好ましくはリンカーは、1〜20個のアミノ酸の長さ、さらに好ましくは1〜10個のアミノ酸の長さ、最も好ましくは1〜5個のアミノ酸の長さを有する。本発明の融合体は、2次構造形成性を持たない(すなわち、らせん又はシート構造形成傾向が無い)リンカーを有利に含む。さらに好ましくはリンカーは、少なくとも50%のグリシン及び/又はプロリン残基からなる。最も好ましくはリンカーは、もっぱらグリシン残基からなる。
【0051】
上記の本発明の融合タンパク質又はその成分(又は後述の目的のタンパク質)は、さらなる検出のために標識してもよい。かかる標識物は、好ましくは:
(i)放射性標識、すなわちイオウ、水素、炭素、窒素などを用いる放射性リン酸化又は放射性標識
(ii)着色色素(例えば、ジゴキシゲニンなど)
(iii)蛍光グループ(例えばフルオレセインなど)
(iv)化学発光グループ
(v)固相への固定化用グループ(例えば、Hisタグ、ビオチン、strepタグ、flagタグ、抗体、抗原など)、及び
(vi)(i)〜(v)の標識物の2つまたはそれ以上の標識物の組合せ、
を含む標識物よりなる群から選択される。
【0052】
特に好適な実施態様において本発明の融合タンパク質は、配列番号23の配列を含むか、又は配列番号22の配列によりコードされる。
【0053】
本発明の第2の態様は、上記の融合タンパク質をコードする核酸に関する。本発明の融合タンパク質をコードする本発明の核酸は、mRNA、RNA、ゲノムDNA、サブゲノミックDNA、cDNA、合成DNA、及び/又はこれらの組合せを含む。本発明の核酸はまた、(遺伝暗号の縮重のために)本発明の融合タンパク質の所望のアミノ酸配列をコードする任意のヌクレオチド配列変異体を含む。例えばこれらの代替核酸配列は、選択された宿主生物中のコードされた融合タンパク質の改良された発現につながる。核酸配列を適切に調整するための表は、当業者に公知である。かかる核酸及び/又は誘導体の調製と精製は通常、標準的方法を使用して行われる(Sambrookら、2001,Molecular Cloning:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor、NYを参照)。好ましくは該核酸は、配列番号23を含む融合タンパク質をコードする。最も好ましくは該核酸は、配列番号22を含む。
【0054】
本発明の第3の態様は、(発現)ベクターに関する。用語「ベクター」は本明細書において、環状又は線状DNAもしくはRNA(これは2本鎖又は1本鎖であり、かつ細胞宿主又は単細胞もしくは多細胞宿主生物に伝達される少なくとも1つの本発明の核酸を含む)を示す。本発明のベクターは、上記の本発明の融合タンパク質をコードする本発明の核酸、および目的のタンパク質(POI)又はそのムテインをコードする核酸を含む。
【0055】
本発明の目的のタンパク質は、その産生が望ましい任意のポリペプチドである。目的のタンパク質は、医薬、農業関連産業、又は研究室の装備の分野で応用される。好適な目的のタンパク質は医薬分野で使用される。例えば目的のタンパク質は、例えば天然に分泌されるタンパク質、細胞質タンパク質、膜貫通タンパク質、又はヒトもしくはヒト化抗体でもよい。目的のタンパク質が細胞質タンパク質又は膜貫通タンパク質である時、このタンパク質は好ましくは可溶性になるように改変される。そのような改変は、当業者に公知の任意の方法により行われる。好ましくはそのような改変は、例えばコード核酸配列中の親水性アミノ酸をコードするコドンの数を増やすことにより、例えば親油性及び/又は両新媒性アミノ酸をコードするコドンのヌクレオチドを(保存的に)置換し及び/又は欠失させることにより行われる。コード核酸中の置換は、好ましくは表I〜IIIのいずれかに記載のアミノ酸置換を引き起こす。
【0056】
目的のタンパク質の起源は任意である。好適な目的のタンパク質はヒト起源であり、例えば血液凝固系に関与する(ポリ)ペプチドホルモン、サイトカイン、タンパク質や、造血系に関与する成長因子から選択される。
【0057】
好ましくは目的のタンパク質は、絨毛性性腺刺激ホルモン、卵胞刺激ホルモン、ルトロピン−絨毛性性腺刺激ホルモン、甲状腺刺激ホルモン、ヒト成長ホルモン、インターフェロン(例えば、インターフェロンベータ−1a、インターフェロンベータ−1b)、インターフェロン受容体(例えば、インターフェロンガンマ受容体)、TNF受容体p55とp75、インターロイキン(例えば、インターロイキン−2、インターロイキン−11)、インターロイキン結合タンパク質(例えば、インターロイキン−18結合タンパク質)、抗CD11a抗体、エリスロポエチン、顆粒球コロニー刺激因子、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子、下垂体ペプチドホルモン、更年期性腺刺激ホルモン、インスリン様増殖因子(例えば、ソマトスタチン−C)、ケラチン細胞成長因子、グリア細胞由来神経栄養因子、トロンボモジュリン、塩基性繊維芽細胞増殖因子、インスリン、第VII因子、第VIII因子、第IX因子、ソマトロピン、骨形成蛋白質−2、タンパク質−3、タンパク質−4、タンパク質−5、タンパク質−6、タンパク質−8、タンパク質−9、タンパク質−10、血小板由来増殖因子、ヒルジン、エリスロポエチン、組換えLFA−3/IgG1融合タンパク質、グルコセレブロシダーゼ、及びムテイン、これらの断片、可溶性型、機能性誘導体、融合タンパク質よりなる群から選択され、ここで本発明の目的のタンパク質の「ムテイン」は、「ムテイン」の一般的定義で上記で定義される。
【0058】
さらなる好適な実施態様において目的のタンパク質は、さらなる検出のために、上記の任意の標識物を使用して標識される。かかる標識物を目的のタンパク質に導入する方法は当業者に公知であり、例えばSambrook,J.C.,Fritsch,E.F.及びManiatis,T.(2001),Molecular Cloning:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、NYに記載されている。
【0059】
好ましくは本発明のベクターは発現ベクターである。本発明の「発現ベクター」は、好ましくは上記のベクターを含み、宿主細胞中の挿入されたポリヌクレオチドの発現を駆動するウイルス、細菌、植物、哺乳動物、及び他の真核生物源からのエンハンサー/プロモーター、例えばインシュレーター、境界要素、LCR(例えば、BlackwoodとKadonaga(1988)、Science 281,61−63)、又はマトリックス/足場結合領域(例えば、Li,Harju、及びPeterson,(1999)、Trends Genet.15,403−408に記載されている)のような適切な要素を、発現支持体としてさらに含む。
【0060】
本明細書において使用される用語「プロモーター」は、1つまたはそれ以上のDNA配列の転写を制御するように機能し、かつ他のDNA配列(これはプロモーター機能を制御するように相互作用する)のDNA依存性RNAポリメラーゼの結合部位の存在により構造的に同定される、DNAの領域を意味する。プロモーターの機能性発現促進断片は、プロモーターとしての活性を保持する短縮されたか又は末端切断されたプロモーター配列である。プロモーター活性は当該分野で公知の任意の測定法により測定され、例えばレポーター遺伝子としてルシフェラーゼを使用するレポーターアッセイにより測定される(Wood,de Wet,Dewji,及びDeLuca,(1984)、Biochem.Biophys.Res.Commun.124,592−596;SeligerとMcElroy,(1960)、Arch.Biochem.Biophys.88,136−141)、又はPromega(登録商標)から販売されている)。
【0061】
好適な実施態様において本発明の発現ベクターは、マウスCMV前初期領域の少なくとも1つのプロモーターを含む。プロモーターは例えば、CMV IE1遺伝子のプロモーター(「IE1プロモーター」)でもよく、これは例えばWO87/03905により公知である。プロモーターはまた、mCMV IE2遺伝子のプロモーター(「IE2プロモーター」)でもよく、mCMV IE2遺伝子自体は、例えばMesserle,Keil,及びKoszinowski,1991,J.Virol.65,1638−1643から公知である。IE2プロモーターとIE2エンハンサー領域は、PCT/EP2004/050280に詳細に記載されている。
【0062】
本発明の発現ベクターで使用される「エンハンサー領域」は、典型的には1つまたはそれ以上の遺伝子の転写を上昇させるように機能するDNAの領域を意味する。さらに詳しくは本明細書において用語「エンハンサー」は、発現される遺伝子の位置や配向に無関係に遺伝子の発現を上昇、増強、改良、又は改善するDNA制御要素であり、2つ以上のプロモーターの発現を上昇、増強、改良、又は改善してもよい。
【0063】
さらに本発明の発現ベクターは増幅マーカーを含んでよい。この増幅マーカーは、例えばアデノシンデアミナーゼ(ADA)、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)、多剤耐性遺伝子(MDR)、オルニチン脱炭酸酵素(ODC)及びN−(ホスホンアセチル)−L−アスパラギン酸耐性(CAD)よりなる群から選択される。上記タンパク質、すなわち目的のタンパク質(POI)及び/又は本発明の融合タンパク質をコードする遺伝子の増幅は、ベクターが細胞に組み込まれるとこれらのタンパク質の発現レベルが上昇することを可能にする(Kaufmanら(1985)、Mol.Cell.Biol.5,1750−1759)。
【0064】
ある実施態様において本発明の発現ベクターは、1つのプロモーター又はプロモーターアセンブリーを含み、このプロモーター又はプロモーターアセンブリーは、目的のタンパク質(POI)又はそのムテインと本発明の融合タンパク質の両方の発現を指令する。従って目的のタンパク質と本発明の融合タンパク質は好ましくは、本発明の発現ベクター中の1つの発現カセット中に「フレーム内」で含有され、両方のコード領域は内部リボゾーム侵入部位(IRES)により分離され、こうして本発明のベクター中で2シストロン性核酸配列を形成する。かかる(内部リボゾーム侵入部位)配列は、リボゾーム機構が単一の転写体内の2次部位から翻訳を開始することを可能にし、こうして1つのみのプロモーター/プロモーターアセンブリーを使用する時、目的のタンパク質と本発明の融合タンパク質の両方を2つの別のタンパク質として発現することを可能にする。この実施態様は、本発明の融合タンパク質の発現とPOIの発現との最適な相関を確実にする。POIの高発現について細胞をスクリーニングするための本発明の融合タンパク質を使用する時、このような相関は必須である。
【0065】
あるいは本発明の発現ベクターは少なくとも2つのプロモーター又はプロモーターアセンブリーを含み、ここでこれらのプロモーターの1つは本発明の融合タンパク質の発現を指令し、他の1つは目的のタンパク質(POI)の発現を指令する。この実施態様において発現ベクターは好ましくは2つの発現カセットを有し、第1のカセットは本発明の融合タンパク質を運搬し、第2のカセットは目的のタンパク質を運搬し、ここで各発現カセットは、上記のプロモーター及び/又はエンハンサー配列に機能的に結合している。従って本実施態様は、IRES配列により連結された目的のタンパク質と本発明の融合タンパク質の両方を含む1つのみの転写体は産生しない。その代わり、2つの転写体が提供される。このような系は、目的のタンパク質の分子量が決定的に重要な値を超えると有利に使用される。この代替の好適な実施態様において、マウスCMV前早期領域のプロモーターは、目的のタンパク質をコードする遺伝子の発現を制御し、本発明の融合タンパク質はベクター骨格中に挿入された追加の発現カセットから発現される。mCMV(IE1)及びmCMV(IE2)プロモーターは、目的のタンパク質をコードする遺伝子の2つの同一のコピー、又は抗体やペプチドホルモンのようなマルチマー性の目的のタンパク質の2つのサブユニットの2つの同一のコピーのいずれかの発現を制御する。
【0066】
本発明の第4の態様は、本発明の(発現)ベクターでトランスフェクトされた宿主細胞に関する。多くの細胞が本発明のこのようなトランスフェクションに適しており、例えば多種類の真核生物(植物、酵母、ヒト、及び動物細胞を含む)ならびに原核生物、ウイルス、もしくは細菌細胞からの初代細胞又は樹立細胞株がある。好ましくは本発明の宿主細胞は、例えばサッカロミセス・セレビッシェ(Saccharomyces cerevisiae)のような真核細胞微生物から得られる真核細胞である(Stinchcombら、Nature,282:39,(1997))。さらに好ましくは多細胞生物からの細胞は、本発明の核酸配列の発現のための宿主細胞として選択される。コードされるタンパク質の翻訳後修飾(例えばグリコシル化)が必要な場合(N及び/又はO結合)、多細胞生物からの細胞は特に好適である。原核細胞と比較して、高等真核細胞は、これらの修飾を可能にする。この目的に適した複数の樹立された細胞株、例えば293T(胚腎臓細胞株)、HeLa(ヒト子宮頚癌細胞)、及び別の細胞株、特に実験室用途で樹立された細胞株HEK293−、Sf9−、又はCOS細胞、又は免疫系の細胞、又は成体幹細胞、例えば造血系の幹細胞(骨髄由来)を、当業者は周知している。さらに好ましくは細胞は哺乳動物細胞である。最も好ましくは該細胞は、チャイニーズハムスター細胞又はヒト細胞である。例えば適切な細胞には、NIH−3T3細胞、COS細胞、MRC−5細胞、BHK細胞、VERO細胞、CHO細胞、rCHO−tPA細胞、rCHO−HepB表面抗原細胞、HEK293細胞、rHEK293細胞、rC127−HepB表面抗原細胞、CV1細胞、マウスL細胞、HT1080細胞、LM細胞、YI細胞、NS0及びSP2/0マウスハイブリドーマ細胞など、RPMI−8226細胞、Vero細胞、WI−38細胞、MRC−5細胞、正常ヒト繊維芽細胞、ヒト間質細胞、ヒト肝細胞、ヒト骨肉腫細胞、Namalwa細胞、ヒト網膜芽細胞、PER.C6細胞、及び他の不死化及び/又は形質転換哺乳動物細胞がある。好ましくは該ベクターは、配列番号23を含む融合タンパク質をコードする配列を含む。最も好ましくは該ベクターは、配列番号22の配列を含む。
【0067】
本発明の第5の態様は、目的のタンパク質の発現又は高発現について細胞をスクリーニングする方法であって、
(i)細胞を本発明の発現ベクターでトランスフェクトする工程;
(ii)上記の抗生物質に耐性の細胞クローンを選択する工程;
(iii)工程(ii)で選択された細胞をリガンド含有溶液とインキュベートする工程;そして
(iv)工程(ii)で選択された細胞クローンの蛍光活性をリガンドの蛍光により検出する工程、
を含んでなる方法に関する。
【0068】
本発明の細胞スクリーニング法の工程(i)において、細胞は上記本発明の発現ベクターでトランスフェクトされる。すなわち工程(i)でトランスフェクトされる細胞は、好ましくは、成功的なトランスフェクトにおいて、本発明の融合タンパク質と目的のタンパク質(POI)の両方を発現する細胞である。さらに好ましくはトランスフェクトされる細胞は、上記細胞株から選択される。トランスフェクションは、当業者に公知の先行技術に記載の方法により行われ(Sambrook,J.C.,Fritsch,E.F.及びManiatis,T.(2001),Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor、NY)、該ベクターは、配列番号23を含む融合タンパク質をコードする配列を含む。最も好ましくは該ベクターは配列番号22の配列を含む。
【0069】
本発明の細胞スクリーニング法の工程(ii)において、上記の抗生物質に対して耐性の細胞が選択され、すなわち工程(i)で成功的にトランスフェクトされ、上記の抗生物質(すなわちネオマイシン、カナマイシン、ネオマイシン−カナマイシン、ヒグロマイシン、ゲンタマイシン、クロラムフェニコール、プロマイシン、ゼオシン、又はブレオマイシン)の耐性を付与するペプチドを発現する細胞が選択される。従って細胞は、好ましくは培養培地中で選択条件下で、すなわち培養の最初から選択圧を及ぼすための対応する抗生物質の存在下で、1時間〜最大3週間増殖される。あるいは細胞は、典型的には培養培地中で非選択条件下で1時間〜最大3週間増殖され、対応する抗生物質は好ましくは所定の時点に、例えば特定の光学密度(OD値)を示す時、加えられる。適切な培養条件は、好ましくは当業者に公知であり、先行技術に記載されている(例えば、Sambrook,J.C.,Fritsch,E.F.及びManiatis,T.(2001),Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor、NY)。最も好ましくは成功的にトランスフェクトされた細胞は、配列番号23を含む融合タンパク質を発現し、プロマイシンの耐性を付与する。
【0070】
次の工程(iii)において、工程(ii)で選択された細胞は典型的には、膜透過性フルオレセイン誘導体4’,5’−ビス(1,3,2−ジチオアルソラン−2−イル)フルオレセイン又は同じ結合性を示すその誘導体を含有する溶液でインキュベートされる。従って本発明の融合タンパク質は、その成分(配列番号1、2もしくは3の少なくとも1つの配列を含む)に結合するリガンド(又はその誘導体)で標識される。リガンドによる標識は、実施例2(後述)の標識プロトコールを使用して行われる。あるいはInvitrogen CorporationのLumio(登録商標)In−Cell標識キットを製造業者の説明書に従って使用してもよい。同様にリガンドの誘導体による標識は、これらのプロトコールに従って行われる。
【0071】
最終工程(iv)では、リガンド又はその誘導体の獲得蛍光を介して、標識細胞の蛍光が励起される。本発明の融合タンパク質の配列番号1、2もしくは3のいずれに結合した時のリガンドの蛍光は、励起後に誘発される。放射された蛍光スペクトルは、蛍光を検出するための任意の上記方法(最も好ましくはFACS)を使用して検出することができる。励起波長は典型的には、450〜650nmであり、蛍光の発光は典型的には450〜700nmの範囲で観察される。
【0072】
このような方法により、任意の数の細胞がスクリーニングされる。好ましくは少なくとも20、50、100、500、1,000、5,000、10,000、50,000、100,000、500,000、又は1,000,000細胞の蛍光活性が、工程(iv)で検出される。最も好ましくは、抗生物質に耐性の少なくとも1,000〜10,000,000の独立したトランスフェクタントを得るのに十分な細胞集団が、スクリーニングされる。これらのうちの抗生物質に耐性の少なくとも10〜1,000,000の候補クローンが、これらの細胞の蛍光活性を評価することによりソーティングされる。好ましくは工程(iv)で最も高い蛍光を示す約20%の細胞が、該目的のタンパク質の最も高い発現を示す細胞として選択される。さらに好ましくは工程(iv)で最も高い蛍光を示す約10%の細胞は、該目的のタンパク質の最も高い発現を示す細胞を含む。さらに好ましくは工程(iv)で最も高い蛍光を示す約5%の細胞は、該目的のタンパク質の最も高い発現を示す細胞を含む。好ましくは細胞はFACSを使用して細胞毎にスクリーニングされる。
【0073】
本発明において「高発現」は、スクリーニングされる他の細胞より高い発現レベルである、細胞の発現レベルを意味する。例えば商業的に生産される組換えタンパク質の最終発現レベルは、タンパク質、必要な年間の量、及び投与量に依存して、1〜2,000mg/l(細胞培養物)の範囲である。スクリーニングの間、目的のタンパク質の発現レベルは典型的には最終発現レベルより低い。
【0074】
上記スクリーニング法の最後に得られる細胞は、目的のタンパク質(POI)の発現レベルについて互いにランク付けされる。特に、上記スクリーニング法の最後に最も高い蛍光を示す細胞が選択される。例えば本発明のエクスプレッサーの上位5〜20%に対応する蛍光活性を示す個々の細胞は、以後の工程で目的の遺伝子の発現のさらなる解析のために選択される。
【0075】
好適な実施態様において上記スクリーニング法は、工程(iv)で測定される細胞の約5%〜20%を選択することを含み、ここで選択される細胞は工程(iv)で最も高い蛍光活性を示すものである。あるいは工程(iv)で測定される細胞の約5%〜約30%、40%、50%、60%、70%、又は80%が、目的のタンパク質の最も高い活性に基づいて選択される。次に、最も高い蛍光活性を示す細胞の選択により、該選択された細胞中の目的のタンパク質の発現レベルがさらに測定される。
【0076】
別の実施態様において上記スクリーニング法は、マルチウェルマイクロタイタープレート又は同様のものを使用して行われる。
【0077】
本発明の第6の態様は、目的のタンパク質を発現する細胞株を得る方法であって、
(i)上記の本発明の細胞スクリーニング法のいずれかにより細胞をスクリーニングする工程;
(ii)好ましくは上記の本発明の方法のいずれかにより、該目的のタンパク質の最も高い発現を示す細胞を選択する工程;そして
(iii)該細胞から細胞株を樹立する工程、
とを含んでなる方法に関する。
【0078】
本明細書において用語「細胞株」は、実験室で増殖できるある特定のタイプの細胞、すなわち上記の細胞からの細胞株を意味する。細胞株は通常、永久樹立された細胞培養物中で増殖させることができ、適切な新鮮な培地と空間が与えられれば無期限に増殖するであろう。単離された細胞から細胞株を樹立する方法は当業者に公知である。好ましくは細胞株は上記したように細胞から調製される。
【0079】
第7の態様は、目的のタンパク質を生産する方法であって、
(i)得られた細胞株を、上記の本発明の方法により該目的のタンパク質の発現を(選択的に)可能にする条件下で培養する工程;及び
(ii)該目的のタンパク質を単離する工程、
を含んでなる方法に関する。
【0080】
目的のタンパク質の発現を(選択的に)可能にする条件は、標準的方法により当業者が容易に樹立することができる。あるいは発現される目的のタンパク質に適しており当業者に公知の任意の条件を使用することができる。かかる方法は、Sambrook,J.C.,Fritsch,E.F.及びManiatis,T.(2001),Molecular Cloning:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor、NYに開示されている。
【0081】
本発明において「単離する」は典型的には、目的のタンパク質を精製することを含む。精製は当業者に公知の任意の方法、例えば親和性クロマトグラフィー(HPLC、FPLC,・・・)、サイズ排除クロマトグラフィーなどのクロマトグラフィーのような従来の生化学的方法、ならびに細胞ソーティング測定法、抗体検出など、又はSambrookら(2001,前述)に開示の任意の方法により行われる。目的のタンパク質が医薬として応用される場合、これは好ましくは医薬組成物に調製される。好ましくはかかる医薬組成物は、上記の目的のタンパク質を含む。さらにかかる医薬組成物は、本発明の医薬的に許容される担体、補助剤、又はビヒクル(これらは、一緒に調製される目的のタンパク質の薬理活性を破壊しない非毒性の担体、補助剤、又はビヒクルである)を含有してもよい。本発明の組成物で使用される医薬的に許容される担体、補助剤、又はビヒクルには、特に限定されないが、交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、血清タンパク質(例えばヒト血清アルブミン)、緩衝物質、例えばリン酸塩、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、飽和植物性脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、塩、又は電解質、例えば硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素ナトリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイドシリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロースベースの物質、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリレート、蝋、ポリエチレン−ポリオキシプロピルブロックポリマー、ポリエチレングリコール、及び羊毛脂がある。
【0082】
さらに本発明の第8の態様は、本発明の融合タンパク質を生産する方法であって、
(i)本発明の融合タンパク質の発現を(選択的に)可能にする条件下で、上記細胞(例えば、本発明の融合タンパク質をコードする核酸を含む)を培養する工程;及び
(ii)本発明の融合タンパク質を単離する工程、
を含んでなる方法に関する。
【0083】
好適な実施態様において核酸は、配列番号23の配列を含む融合タンパク質をコードするか、又は配列番号22の配列を含む。
【0084】
本発明において「単離する」はまた、必要であれば本発明の融合タンパク質を精製することを含む。精製は、上記の任意の方法により行われる。さらにかかる方法は、例えば実施例1に記載のように行われる。
【0085】
本発明の融合タンパク質を生産するためのかかる上記方法は、例えば特に限定されないが、本発明の融合タンパク質のインビトロの性質(例えば、膜透過性フルオレセイン誘導体、結合により示されるシグナル強度、生理学的条件下での融合タンパク質の溶解度)を発見するのに適している。
【0086】
本発明の第9の態様は、目的のタンパク質を生産するための上記の本発明の核酸を含む上記細胞の使用に関する。好ましくは該本発明の核酸は、ベクター又は発現ベクター、好ましくは上記の本発明の(発現)ベクター中に含有される。
【0087】
本発明の第10の態様は、目的のタンパク質の発現もしくは高発現について細胞をスクリーニングするための、上記本発明の融合タンパク質、本発明の核酸、又は本発明の(発現)ベクターの使用に関する。好ましくは細胞は、まず高蛍光活性について1次スクリーニングでスクリーニングされる。次に蛍光活性は、干渉により目的のタンパク質の発現と相関付けられる。これは、低蛍光活性に基づいて試験した細胞の80〜95%の迅速な除去と、目的の遺伝子の発現の分析について残りの5〜20%の保持とを、1つの工程で行うことを可能にする。最も好ましくは本発明の融合タンパク質は配列番号23の配列を含み、及び/又は配列番号22の配列によりコードされる。
【0088】
本発明を十分に説明したが、当業者は、本発明の精神と範囲を逸脱することなく、かつ過度の実験をすることなく、広範囲の同等のパラメータ、濃度、及び条件内で本発明を実施できることを理解するであろう。
【0089】
本発明は具体例に関連して説明されているが、さらなる修飾が可能であることは理解されるであろう。本出願は、一般に、本発明の原理に従って、及び本発明が関係する分野内の公知の又は習慣的実施内で、及び請求の範囲に記載したような前記の基本的特徴に適用される、本発明の開示内容からの発展を含んで、本発明の任意の変更態様、用途、又は適用を包含する。
【0090】
雑誌の論文又は抄録、公開もしくは非公開の特許出願、発行された特許又は任意の他の文献を含む本明細書で引用されるすべての文献は、引用文献中で提示されたすべてのデータ、表、図、及び本文を含んで、参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる。さらに本明細書の引用文献内で引用された文献の全内容も、参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる。公知の方法の工程、従来法の工程、公知の方法、又は従来法への参照は、本発明のいかなる態様、説明、又は実施態様も、関連分野で教示又は示唆されていることを認めるものではない。
【0091】
具体例の上記説明は、本発明の一般的性質を十分に明らかにするものであり、他の研究者は、当該分野の知識(引用された文献の内容を含む)を応用することにより、過度の実験をすることなく、本発明の一般的概念を逸脱することなく、かかる具体例を種々の応用のために、容易に修飾及び/又は改変できるであろう。従ってかかる改変及び修飾は、本明細書の教示と指針に基づき、開示された状態の同等物の意味と範囲内にあると企図される。本明細書の表現又は用語は、説明のためであって限定のためではなく、本明細書の用語又は表現は、本明細書の教示と指針を当業者の知識と組合せて理解されるものである。
【0092】
配列表の配列の簡単な説明
配列番号1は、配列番号1、2もしくは3のリガンドの一般的結合配列に対応する。
配列番号2は、配列番号1、2もしくは3のリガンドのより多くの特異的結合配列に対応し、ここで配列番号2の3位と4位のアミノ酸はそれぞれプロリンとグリシンとして定義される。
配列番号3は、配列番号1、2もしくは3のリガンドのより多くの特異的結合配列に対応し、これは配列番号2についてN末端とC末端が延長される。
配列番号4、5は、抗生物質プロマイシンの耐性遺伝子と、ストレプトミセス・アルボニガー(Streptomyces alboniger)のコードされるプロマイシンN−アセチルトランスフェラーゼに対応する。
配列番号6、7は、抗生物質ネオマイシンの耐性遺伝子と、コードされるネオマイシンホスホトランスフェラーゼII型に対応する。
配列番号8、9は、抗生物質カナマイシンの耐性遺伝子と、コードされるカナマイシンホスホトランスフェラーゼII型に対応する。
配列番号10、11は、抗生物質ネオマイシン−カナマイシンの耐性遺伝子と、コードされるネオマイシン−カナマイシンホスホトランスフェラーゼII型に対応する。
【0093】
配列番号12、13は、抗生物質ヒグロマイシンの耐性遺伝子と、コードされるヒグロマイシンホスホトランスフェラーゼに対応する。
配列番号14、15は、抗生物質ゲンタマイシンの耐性遺伝子と、コードされるゲンタマイシンアセチルトランスフェラーゼに対応する。
配列番号16、17は、抗生物質クロラムフェニコールの耐性遺伝子と、コードされるクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼに対応する。
配列番号18、19は、抗生物質ゼオシンの耐性遺伝子と、コードされるゼオシン耐性タンパク質に対応する。
配列番号20、21は、抗生物質ブレオマイシンの耐性遺伝子と、コードされるブレオマイシン耐性タンパク質に対応する。
配列番号22、23は、本発明のキメラ選択マーカー例をコードする核酸配列と、本発明のキメラ選択マーカーに対応する。
配列番号24、25は、本発明の融合タンパク質例を構築するのに使用されるプライマーoSerono1206とoSerono1239に対応する。
【実施例】
【0094】
1.実施例1:PCRによる本発明の融合タンパク質例の構築
プロマイシンN−アセチルトランスフェラーゼ(pac)の読みとり枠を配列番号3に融合させ、SEAPをコードする第1の読みとり枠と次にポリオウイルスIRESを含む発現ベクターにPCRクローニングすることにより、プロマイシンN−アセチルトランスフェラーゼ(pac)と配列番号3、及び目的のタンパク質(ここではSEAP、分泌型アルカリホスファターゼ)を含む融合タンパク質をコードする遺伝子を構築した。ポリオウイルスIRESは、2つの読みとり枠を分離することを可能にし、これらは同じプロモーターであるが2つの別のタンパク質として発現される。
【0095】
1.1.pSV40−SEAP−IRES−puroLT−260の核酸のクローニング
従って、プロマイシン耐性遺伝子のC末端へのペプチド(−GCCPGCCGGG、配列番号3)の融合体をコードする遺伝子を、オリゴoSerono1206(5’−GTGGCTGCTTATGGTGACAATC−3’、配列番号24)とoSerono1239(5’−CGCGCTAGCTCATTACTAGCCGCCACCGCAACAGCCAGGACAACAGCCGGCACCGGGCTTGCGGGTC−3’、配列番号25)を使用してポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により作成した。得られた遺伝子(PuroLTと呼ぶ)をpSV40−SEAP−IRES−puro−227ベクター中にクローン化し、これはプロマイシンに対する耐性を付与し、SV40プロモーターの制御下でSEAP読みとり枠を含む。生じたプラスミドをpSV40−SEAP−IRES−PuroLT−260と呼んだ。挿入された断片を配列決定により確認した。
【0096】
pSV40−SEAP−IRES−puro−227とpSV40−SEAP−IRES−PuroLT−260のSV40プロモーターをマウスCMVIE1プロモーター(mCMV(IE1)、例えばWO87/03905に記載されている)で置換して、それぞれpmCMV(IE1)−SEAP−IRES−PuroLT−279とpmCMV(IE1)−SEAP−IRES−PuroLT−280を得た。
【0097】
PCR条件は以下の通りであった:
・pacの増幅:配列番号24と25のプライマー25pmolを、pac読みとり枠を含むベクターからの約20ngのXbaI/Mfel断片、200Mの各dNTP、1×KOD、2単位のKOD DNAポリメラーゼ(KODホットスタートDNAポリメラーゼ、カタログ番号71086−3、Novagen)と混合した。最終容量は100μlであった。
【0098】
・サイクリング:
− 第1工程:94℃で3分
− 12サイクル:(i)94℃で15秒の変性;(ii)55℃で15秒のハイブリダイゼーション;及び(iii)72℃で1分の重合;
− 最終工程:72℃で7分。
【0099】
PuroLTについて得られたPCR産物をまずPAGE解析により解析した。各PCR反応物は、QIAquick PCR精製キット(カタログ番号28106,Qiagen)を使用して製造業者のプロトコールに従って精製した。
pSV40−SEAP−IRES−puro−227ベクターへのクローニングのために、PCR断片をMinEluteゲル抽出キット(カタログ番号28606,Qiagen)を使用して製造業者のプロトコールに従って精製した。
【0100】
1.2.pmCMV(IE1)−SEAP−IRES−PuroLT−280の核酸のクローニング
pSV40−SEAP−IRES−puroLT−260ベクター配列(1.1を参照)を証明した後に、SV40プロモーター配列をマウスCMVプロモーターで置換してpmCMV(IE1)−SEAP−IRES−PuroLT−280を作成した。
【0101】
1.3.pmCMV(IE1)−SEAP−IRES−puro−279の核酸のクローニング
pmCMV(IE1)−SEAP−IRES−PuroLT−279の核酸のクローニングを、pmCMV(IE1)−SEAP−IRES−PuroLT−280について上記したように行い、本発明の融合タンパク質をコードする核酸の代わりにプロマイシンN−アセチルトランスフェラーゼ(puro)をコードする核酸をベクター中にクローン化した。
【0102】
2.実施例2:リガンドを用いる標識プロトコール
以下のプロトコールを使用して、本発明の融合タンパク質をリガンドで標識した。
【0103】
・細胞をまずHBSS(ハンクス液、Gibcoカタログ番号14025−050)で1回洗浄した。細胞をProCHO5で増殖させた場合、最終濃度0.05%のプルロニック酸を含めた。
【0104】
・細胞は、1×標識溶液中で室温で暗所で30分インキュベートした細胞である。1×標識溶液は、HBSS(Gibcoカタログ番号14025−050)を含む。1μMの4’,5’−ビス(1,3,2−ジチオアルソラン−2−イル)フルオレセイン、及び50μMのEDT(1,2−エタンジチオール、Sigmaカタログ番号39,802−0)。ProCHO5で増殖させた細胞を使用した場合、最終濃度0.1%のプルロニック酸を加えた。
【0105】
・標識溶液を除去した(そして適切に廃棄した)。次に細胞をHBSS+50μM EDT中で1回洗浄した。ProCHO5で増殖させた細胞を使用した場合、最終濃度0.1%のプルロニック酸を使用した。
【0106】
・次に細胞を、HBSS+20μM Disperse Blue3(LumioGreen Kit、Invitrogenカタログ番号45−7510とともに供給される)に加えたか又は再懸濁した。ProCHO5で増殖させた細胞を使用した場合、最終濃度0.1%のプルロニック酸を含めた。
【0107】
本発明の融合タンパク質を発現する細胞中の配列番号1、2もしくは3に対するリガンドの蛍光を検出するために、細胞を29℃でo/n〜24時間プレインキュベート後、4’,5’−ビス(1,3,2−ジチオアルソラン−2−イル)フルオレセインで標識した。
【0108】
4’,5’−ビス(1,3,2−ジチオアルソラン−2−イル)フルオレセインで標識後、細胞を蛍光顕微鏡(DP50デジタルカメラを取り付けたOlympus CKX41顕微鏡)下で標準的FITCフィルターセットを使用して観察した。
【0109】
3.実施例3:ベクターのトランスフェクション
3.1.本発明の融合タンパク質をコードするベクターのトランスフェクション
トランスフェクションの1日前に、ProCHO5培地で増殖させた細胞を0.75×106 細胞/mlで継代した。トランスフェクションの直前に8〜10×106 個の細胞を遠心分離し、RPMI1640+Glutamaxで洗浄し、15mlの同じ培地に再懸濁し、6ウェルプレート(2.5ml/ウェル)又は24ウェルプレート(0.5ml/ウェル)に分注した。
【0110】
トランスフェクション剤として線状PE125(分子量25000,Polysciences,カタログ番号23966)を、1μgのDNA当たり3〜3.5μlの1mg/ml PE125溶液で使用した。PE125の1mg/ml溶液をろ過滅菌し、1ml画分でアリコートし、−70℃で保存した。
【0111】
150mM NaCl中のプラスミドDNAをPE125と混合し、室温で10分インキュベートし、細胞に加えた。37℃で2時間後、トランスフェクション培地を除去し、4mMグルタミンと1×HTを補足した3mlのProCHO5で置換した。プレートを60rpmで振盪してo/n 37℃でインキュベートした。すべてのウェルからの細胞をプールし、P150シャーレ中の0.5×106 細胞/mlのProCHO5(4mMグルタミンと1×HTを補足)で蒔いた。トランスフェクションの48時間後、細胞を計測し、使用した培地を遠心分離して除去し、次に細胞を選択培地(4.5mM L−グルタミン、1×HT、及び10μg/mlのプロマイシンを補足したProCHO5)で1.0×106 生存細胞/mlに希釈した。培地を1日置きに交換した。細胞密度を経時的に追跡し、生存細胞の数が0.1×106 細胞/mlより小さくなった時、細胞をより少量に濃縮した。そうでない場合は生存細胞の数を増加させ、細胞を0.4〜0.5×106 細胞/mlに希釈した。プールの生存活性が90%に達するまで、この操作を繰り返した。
【0112】
プラスミドpmCMV(IE1)−SEAP−IRES−PuroLT−280で選択しトランスフェクトしたプールを、4つの384ウェルプレートで、4mMグルタミン、1×HT、及び10μg/mlプロマイシンを補足したProCHO5培地中に1細胞/ウェルで接種した。96ウェルプレートに176個のクローンを回収した。
【0113】
3.2.プロマイシンに対する耐性についての選択
細胞を15mlのFalconチューブに移し、遠心分離し、細胞ペレットを6ウェルプレート中で5%胎児牛血清(FBS)を含有する2mlの培地に再懸濁した。培地を10μg/mlのプロマイシン(Sigma,P−8833)を含有するProCHO5/HT/グルタミン/5%FBSで交換することにより、トランスフェクションの48時間後に選択を行った。1日置きに、古い培地を捨て、1×PBSで洗浄し、新鮮な選択培地を加えることにより、培地交換を行った。2週間の選択後、細胞をトリプシン処理し、計測し、6ウェルフォーマットの1000、500、100、50、20、10細胞/ウェルに対応する一連の希釈を行った。10日後、すべての希釈物で増殖しているコロニーを計測し、そのすべてを取り上げ、クローン解析のために血清無しで懸濁増殖させた。
【0114】
結果から、融合タンパク質により付与されるプロマイシン耐性は、野生型のプロマイシン耐性遺伝子により付与されるプロマイシン耐性に匹敵すると結論付けられた。結論として、本発明の融合体は、SEAPとpac含有融合タンパク質の活性と機能の組合せを示す。
【0115】
4.実施例4:SEAP発現レベルの測定と細胞力価アッセイ
4.1.SEAPアッセイ(Pierceホスファターゼ基質キット、カタログ番号37620)
100μlの1×ホスファターゼ基質溶液を、SEAPを含有する10μlの希釈細胞培養培地(HBSS Gibcoカタログ番号14025−050で1/10希釈した)に加えた。
【0116】
1×ホスファターゼ基質溶液:
(Pierceホスファターゼ基質キット、カタログ番号37620)
4ml H2
1ml 5×濃縮ジエタノールアミン基質緩衝液
1 PNPP基質錠剤
【0117】
次に溶液を37℃で10〜20分インキュベートした。分光光度計マイクロプレートリーダーで405nmでODを読んだ。
【0118】
4.2.細胞力価アッセイ(Promega CellTiter98 Aqueous One Cell増殖アッセイ、カタログ番号G3580)
20μlのCellTiter 96 Aqueous One溶液試薬(Promega、カタログ番号G3580)を、50μlのRPMI1640(Gibco、カタログ番号61870−010)を含有する96ウェルプレート中の50μlの細胞懸濁物に加えた。溶液を混合し、37℃で20〜30分インキュベートし、分光光度計マイクロプレートリーダーで490nmでODを読んだ。
【0119】
5.実施例5:SEAP HTスクリーニング
解析すべき細胞を96ウェルプレート(ウェル当たり5000〜20000細胞)のProCHO5/4.5mM L−グルタミン/10%胎児牛血清に移し、37℃で一晩インキュベートして、細胞をウェルの底に付着させた。
【0120】
翌日、細胞をProCHO5/4.5mM L−グルタミンで2回洗浄し、150μlの同じ培地中で37℃で24時間パルスし、次に上清を採取した。
【0121】
5.1.SEAP発現レベルの測定
10μlの希釈上清(HBSS中1/10)を96ウェルプレート中の100μlのホスファターゼ基質溶液(Pierce、カタログ番号37620)に加えた。プレートを37℃で10〜15分インキュベートし、ODを490nmで読んだ。
【0122】
5.2.細胞力価アッセイ
パルス後、100μlのRPMI1640培地(Gibco、カタログ番号61870−010)+20μlのCellTiter 96 Aqueous One溶液(Promega、カタログ番号G3580)の混合物で交換し、37℃で30分インキュベートした。490nmでODを読んだ。
490nmでのSEAP OD/490nmでのCellTiter ODの比に従って、クローンをランク付けした。
【0123】
6.実施例6:本発明のPuroLt融合タンパク質の2重機能
CHO細胞を、実施例3.1.に記載したようにpmCMV(IE1)−SEAP−IRES−puro−279又はpmCMV(IE1)−SEAP−IRES−PuroLT−280でトランスフェクトした。非トランスフェクト細胞を対照として使用した。
【0124】
プロマイシンで選択すると、pmCMV(IE1)−SEAP−IRES−puro−279又はpmCMV(IE1)−SEAP−IRES−PuroLT−280でトランスフェクトされた細胞から生存細胞のプールが得られた(図2、5、及び6を参照)。反対に、非トランスフェクト細胞からは生存細胞は得られなかった。これは、puroLTがプロマイシンに対する耐性を付与したことを示す。
【0125】
pmCMV(IE1)−SEAP−IRES−puro−279又はpmCMV(IE1)−SEAP−IRES−PuroLT−280でトランスフェクトした細胞を、実施例2に記載のように4’,5’−ビス(1,3,2−ジチオアルソラン−2−イル)フルオレセインで標識した。細胞を37℃又は29℃でプレートインキュベートした後、標識した。
【0126】
結果を図8に示す。pmCMV(IE1)−SEAP−IRES−puro−279でトランスフェクトした細胞では、細胞を29℃でプレインキュベートした時も37℃でプレインキュベートした時も、蛍光は検出されなかった。反対にpmCMV(IE1)−SEAP−IRES−puro−279でトランスフェクトした細胞では、細胞を29℃でプレインキュベートした時、蛍光が検出された。これは、4’,5’−ビス(1,3,2−ジチオアルソラン−2−イル)フルオレセインに結合するとpuroLTが蛍光性になることを示す。
【0127】
結論として、puroLTが、pacの機能と、4’,5’−ビス(1,3,2−ジチオアルソラン−2−イル)フルオレセインに結合した時の蛍光性を組合せていることが証明された。従って本発明の「PuroLT」マーカーは、そのpac活性によりトランスフェクションの選択マーカーとして使用でき、その蛍光活性により容易に検出可能なマーカーとして使用できる。
【0128】
7.実施例7:目的のタンパク質の高発現についての細胞のスクリーニング用の2官能性マーカーとしてのPuroLTの使用
作成した融合タンパク質の2重機能は、これが2重の影響を有することを示唆する。本発明の融合タンパク質は、まずプロマイシンに対する耐性により、安定にトランスフェクトされたクローンの単離を可能にし、次に該融合体の発現レベルは、蛍光活性の測定により、物理的に結合した目的の遺伝子の発現レベルを反映する。この仮説を検証するために、本発明のベクターで安定にトランスフェクトした細胞のプールから一連のクローンを作成した。コードされたタンパク質の蛍光活性と発現レベルを測定した。
【0129】
CHO細胞を実施例3.1.に記載したように、pmCMV(IE1)−SEAP−IRES−PuroLT−280でトランスフェクトした。クローンを実施例5に記載のように古典的大量処理スクリーニングを使用してスクリーニングしたか、又は4’,5’−ビス(1,3,2−ジチオアルソラン−2−イル)フルオレセインで標識して、蛍光顕微鏡下で蛍光強度を視覚的にスクリーニングした。
【0130】
古典的大量処理スクリーニングを使用して、高レベルのSEAPを発現する8つのクローンが選択された(「HTスクリーン」と呼ぶ)。4’,5’−ビス(1,3,2−ジチオアルソラン−2−イル)フルオレセインによる標識の蛍光強度に基づいて、12個の高蛍光性クローンと10個の中程度蛍光性クローンが視覚的に選択された(それぞれ「高Lumio−Tag」と「低Lumio−Tag」と呼ぶ)。
【0131】
高Lumio−Tagと低Lumio−Tagクローンを、実施例4に記載のようにSEAP発現についてさらに試験した。
HTスクリーンクローンは、4’,5’−ビス(1,3,2−ジチオアルソラン−2−イル)フルオレセインでさらに標識し、蛍光顕微鏡下で観察した。
【0132】
古典的大量処理スクリーニングを使用して選択されたクローンについて得られたSEAP発現レベルと蛍光強度、又は4’,5’−ビス(1,3,2−ジチオアルソラン−2−イル)フルオレセインで標識した蛍光強度について比較した。結果を図3に示す。
【0133】
実験は、高SEAP発現レベルがたえず高蛍光と相関することを示す。例えば、高Lumio−TagクローンNo.10とHTスクリーンクローンNo.3はいずれも、他のクローンより高い蛍光と高いSEAP発現レベルを示す。
【0134】
実験は、4’,5’−ビス(1,3,2−ジチオアルソラン−2−イル)フルオレセインで標識して本発明の融合タンパク質を使用するスクリーニングは、SEAP発現レベルについての標準的大量処理スクリーニングを使用して単離されるものより良好なSEAPエクスプレッサーであるクローンを単離することを可能にすることを、さらに示す。
【0135】
8.実施例8:FACSを使用する高蛍光発現のスクリーニング
実施例7では、高蛍光性クローンのスクリーニングを蛍光顕微鏡を使用して用手法で行った。本実験は、高蛍光性クローンのスクリーニングを蛍光活性化細胞ソーター解析(FACS)を使用して自動で行うことができることを示す。
【0136】
CHO細胞を実施例3.1に記載のようにpmCMV(IE1)−SEAP−IRES−PuroLT−280でトランスフェクトし、「nb507」と呼ぶ細胞のプールが得た。プロマイシン遺伝子がLumio−Tagに融合していない対照(プラスミドpmCMV(IE1)−SEAP−IRES−puro−279)を使用して、対照プール(「nb505」と呼ぶ)を作成した。
【0137】
高蛍光性の細胞亜集団を選択するために、2つのプールを実施例2に記載のように標識し、1回目の解析を行い、次に最終的にBecton Dickinson FACS(FACSAria(登録商標)細胞ソーティングシステム)を使用して高蛍光レベルについて連続的に濃縮した。当業者は、高蛍光性クローンが、自動単細胞設置装置(ACDU)を取り付けたFACSを使用して直接選択できることを周知している。
【0138】
図8に示すように、4’,5’−ビス(1,3,2−ジチオアルソラン−2−イル)フルオレセインで標識後に、高い平均蛍光強度レベル(MFI)を示す細胞集団をフローサイトメトリーにより観察することができる。より高いMFIを示す細胞集団を、ソーティングによりさらに濃縮することができる。濃縮集団の平均蛍光は、連続ソーティング後に上昇する。
【0139】
本実験は、高蛍光に基づく濃縮操作とFACSを使用する自動ソーティングが、キメラマーカーの高平均プール発現レベルと相関することを示す。この実験では、キメラマーカーの高発現レベルが、実施例7の実験と同様に、POIの高発現レベルにより反映されることが予測される。
【0140】
利点
本発明は、配列番号1、2もしくは3を含む少なくとも1つの配列に融合した、抗生物質に対する耐性を付与するペプチド、又はその断片、対立遺伝子変異体、スプライス変異体、もしくはムテインを含む融合タンパク質に対応する新規キメラ選択マーカーであって、該融合タンパク質は、(i)該抗生物質に対する耐性と;(ii)配列番号1、2もしくは3のリガンドに結合すると蛍光活性とを示すことを特徴とする、キメラ選択マーカーに関する。
【0141】
本発明の融合体は、蛍光測定の機能性と抗生物質選択とを組合せていることが証明された(例えば、pac、実施例2参照)。従って本発明のマーカーは、その抗生物質耐性のために安定なトランスフェクションの選択マーカーとして、かつその蛍光性のために容易に検出可能なマーカーとして使用することができる。
【0142】
HTSにおいて本発明の融合タンパク質を使用することはさらに、例えば標識抗体のようなPOIの発現を直接検出することを可能にする低処理能力法を使用してスクリーニングする時のように、高発現クローンを選択するための少なくとも同じ確率を維持することを可能にする。すなわちHTSにおいて本発明の融合タンパク質は、時間と資源を減少させる。古典的HTSクローン作成アプローチでは最適クローンは典型的には、2,000を超えるクローンのスクリーニングにより、分泌されたタンパク質の高力価に基づいて選択される。本発明の融合タンパク質を使用することは特に、試料サイズを低下させる。この低下は、本アプローチの使用の容易さと、ELISA大量処理スクリーニングに関連するサンプリングエラーとアッセイ変動の関連する低下に関連する。さらにプレート当たり5〜10個の最適クローンを選択することにより、プレート当たり最適なクローンが選択されると予測される。すなわち1,000クローンをスクリーニングするために本発明の融合タンパク質を使用することは、解析されるクローンの数を50〜100に低下させ、従って第2のHTSを避けることを可能にする。
【0143】
さらに、配列番号1、2もしくは3を有する配列への、抗生物質に対する耐性を付与するペプチド、又はその断片、対立遺伝子変異体、スプライス変異体、もしくはムテインの融合は、小さな従って効率的な発現カセットにつながるため、本発明の融合タンパク質との関連で発現されるPOIはそのサイズを限定されない。さらに活性と起源が大きく異なる2つの酵素は、本明細書に記載のように本発明の融合タンパク質中では驚くべきことにその機能を保持している。本発明の融合タンパク質は安定なトランスフェクションで選択性を与えるために真に使用することができ、目的の遺伝子の高発現について候補クローンをスクリーニングするためのキメラ選択マーカーとして作用するため、保持された2重機能は、明らか2重の影響を与える。
【0144】
上記を要約すると、目的のタンパク質(POI)、例えば治療用タンパク質の高発現クローンの単離のための、本発明の追加の選択マーカーの有用性が証明された。これは、(i)標準化された生成物非依存性の簡便な解析が行われ;そして(ii)蛍光活性の測定が安価な測定法であるため、時間、コスト、及び資源を減少させる。従って本発明は、安定なトランスフェクションで選択性を与えるために使用することができ、目的の遺伝子の高発現について候補クローンをスクリーニングするための検出マーカーとして作用する、強力なマーカーを提供する。
【0145】
文献
1.Altschulら,(1990),J.MoI.Biol.215, 403−410;
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21.米国特許第4,737,462号(Markら);
22.米国特許第5,116,943号(Kothsら);
23.米国特許第4,965,195号(Namenら);
24.米国特許第4,879,111号(Chongら);
25.米国特許第5,017,691号(Leeら);
26.米国特許第4,904,584号(Shawら);
27.米国特許公報2004/0115704号;
28.WO 87/03905;
29.WO 01/53325;
30.WO 2006/058900;及び
31.Wood,de Wet,DewjiとDeLuca,(1984),Biochem Biophys.Res.Commun.124,592−596
【図面の簡単な説明】
【0146】
【図1】本発明の融合タンパク質の配列番号1、2もしくは3(1A)へのリガンドの結合の原理を示す。配列番号1、2もしくは3のいずれかに結合すると、リガンドは蛍光性になり、一般的な蛍光検出法を使用して検出される。 図1Bでは、本発明の融合タンパク質と目的のタンパク質とをコードする2シストロン性mRNAが開示され、両方のコード配列はIRES配列により分離される。2シストロン性mRNA上の融合タンパク質への目的の遺伝子(例えばSEAP)の発現の連結は、両方のタンパク質の相関した発現を可能にする。従って本発明の融合タンパク質の高発現は、強い蛍光と相関し、これは高SEAP生産を示す。
【図2】プラスミドpmCMV(IE1)−SEAP−IRES−Puro−279(さらなる詳細は図6に開示される)とpmCMV(IE1)−SEAP−IRES−PuroLT−280(さらなる詳細は図5に開示される)のCHO−S細胞(PE125/懸濁物)へのトランスフェクションを示す。第1成分としてプロマイシンを使用する安定なトランスフェクタントの選択により、2又は3週間後に生存能力が最大100%まで回復する。細胞がプロマイシン耐性ではないプラスミドを含む対照では、すべての細胞が消滅した。
【図3】30個の異なるクローンについてSEAP発現レベル(上の列)と4’,5’−ビス(1,3,2−ジチオアルソラン−2−イル)フルオレセイン(下の列)で標識した後の蛍光強度との相関を示す。左の欄(「低Lumio−Tag」)と真ん中の欄(「高Lumio−Tag」)は、実施例7に詳述されるように、2官能性マーカーとして本発明の融合タンパク質を使用してスクリーニングされたクローンを示す。右の欄(「HTスクリーン」)は、古典的大量処理スクリーニングアプローチを使用してスクリーニングされたクローンを示す。
【図4】6303bpを有するpSV40−SEAP−IRES−PuroLT−260のプラスミド地図を示す。pSV40−SEAP−IRES−PuroLT−260は、SV40プロモーター、SEAPコード配列、及び本発明の融合タンパク質例(ここではpuroLTを呼ぶ)をコードする配列を含む。両方のコード配列は、ポリオウイルスIRES配列により分離される。
【図5】6638bpを有するpmCMV(IE1)−SEAP−IRES−PuroLT−280のプラスミド地図を示す。pmCMV(IE1)−SEAP−IRES−PuroLT−280は、SV40プロモーターの代わりにmCMV(IE1)を使用した点で、pSV40−SEAP−IRES−PuroLT−260(図4)とは異なる。
【図6】6613bpを有するpmCMV(IE1)−SEAP−IRES−Puro−279のプラスミド地図を示す。pmCMV(IE1)−SEAP−IRES−Puro−279は、本発明の融合タンパク質の配列の代わりにプロマイシンN−アセチルトランスフェラーゼを使用した点で、pmCMV(IE1)−SEAP−IRES−PuroLT−280とは異なる。pmCMV(IE1)−SEAP−IRES−Puro−279は好ましくは、実験の陰性対照として作用する。
【図7】4435bpを有するpmCMV(IE1)−PuroR−LT−273のプラスミド地図を示す。pmCMV(IE1)−PuroR−LT−273は、SEAPのコード配列とIRES配列が欠失している点で、pmCMV(IE1)−SEAP−IRES−Puro−279とは異なる。pmCMV(IE1)−SEAP−IRES−Puro−279も好ましくは、実験の陰性対照として作用する。
【図8】リガンド(ここでは4’,5’−ビス(1,3,2−ジチオアルソラン−2−イル)フルオレセイン)による標識とCHO細胞中の一過性トランスフェクションを示す。実験から明らかなように、染色の前に温度が変化される。さらに本発明の融合タンパク質は、発現レベルが十分高い場合に検出される。以下の結果は本発明の構築体について得られた: 37℃ 29℃ pmCMV(IE1)-SEAP-IRES-PuroLT-279 +++ +++ pmCMV(IE1)-SEAP-IRES-PuroLT-280 - ++ pmCMV(IE1)−SEAP−IRES−PuroLT−279の発現レベルは、温度変化を示さなかった。しかし、SEAP配列とIRES配列との本発明の融合タンパク質を含むpmCMV(IE1)−SEAP−IRES−PuroLT−280の発現については、温度変化が観察された。この点で29℃でのより高いPuroLTレベルは、転写又はIRES活性、mRNA又はタンパク質安定性の上昇に起因するかも知れない。結論としてo/n〜24hrの誘導時間は十分であった。
【図9】pmCMV(IE1)−SEAP−IRES−PuroLT−280プラスミドでトランスフェクトしたCHO細胞の、4’,5’−ビス(1,3,2−ジチオアルソラン−2−イル)フルオレセインで標識後の、FACSで測定した平均蛍光強度レベル(MFI)を示す。高蛍光に基づきベクトンディッキンソン(Becton Dickinson)FACSを使用して細胞の連続ソーティングにより、MFIが上昇した細胞集団が得られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1、2もしくは3を含む少なくとも1つの配列に融合した、抗生物質に対する耐性を付与するペプチド配列、又はその断片、対立遺伝子変異体、スプライス変異体、もしくはムテインを含む融合タンパク質であって、
(i)該抗生物質に対する耐性;及び
(ii)配列番号1、2もしくは3を含む該配列に対するリガンドの結合における蛍光活性、を示すことを特徴とする、融合タンパク質。
【請求項2】
前記融合タンパク質が、ネオマイシン、カナマイシン、ネオマイシン−カナマイシン、ヒグロマイシン、ゲンタマイシン、クロラムフェニコール、プロマイシン、ゼオシン、又はブレオマイシンのいずれかから選択される抗生物質に対する耐性を示す、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項3】
前記抗生物質に対する耐性を付与するペプチドが、配列番号5、7、9、11、13、15、17、19、又は21の配列のいずれかと、少なくとも85%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%同一である配列から選択される、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項4】
前記抗生物質に対する耐性を付与するペプチドが、配列番号4、6、8,10、12、14、16、18又は20の配列のいずれかと、少なくとも85%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%同一である配列によりコードされる、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項5】
前記抗生物質に対する耐性を付与するペプチドが、ストレプトミセス・アルボニガー(Streptomyces alboniger)から得られるプロマイシンN−アセチルトランスフェラーゼ(pac)である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項6】
前記プロマイシンN−アセチルトランスフェラーゼ(pac)が、配列番号5のアミノ酸2〜199を含む、請求項5に記載の融合タンパク質。
【請求項7】
前記配列番号1、2もしくは3の3’末端が、抗生物質に対する耐性を付与する該ペプチドの5’末端に融合している、請求項1〜6のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項8】
前記抗生物質に対する耐性を付与するペプチドの3’末端が、該配列番号1、2もしくは3の5’末端に融合している、請求項1〜6のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項9】
前記融合タンパク質が、配列番号23の配列を含むか、又は配列番号22の配列によりコードされる、請求項1〜6のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の融合タンパク質をコードする核酸。
【請求項11】
請求項10に記載の核酸を含むベクター。
【請求項12】
前記ベクターが発現ベクターである、請求項11に記載のベクター。
【請求項13】
前記ベクターが、目的のタンパク質をコードする核酸をさらに含む、請求項12に記載のベクター。
【請求項14】
請求項6の核酸と目的のタンパク質(POI)をコードする核酸が、IRES配列により分離される、請求項13に記載のベクター。
【請求項15】
前記ベクターが、請求項1〜9のいずれか1項の融合タンパク質の発現と目的のタンパク質(POI)の発現とを制御する、1つのプロモーター又はプロモーターアセンブリーを含む、請求項11〜14のいずれか1項に記載のベクター。
【請求項16】
前記ベクターが、1つのプロモーターが請求項1〜9のいずれか1項に記載の融合タンパク質の発現を制御し、他のプロモーターが目的のタンパク質(POI)の発現を制御する、少なくとも2つのプロモーターを含む、請求項11〜14のいずれか1項に記載のベクター。
【請求項17】
前記プロモーターがマウスCMV前初期領域のプロモーターである、請求項15〜16のいずれか1項に記載のベクター。
【請求項18】
前記プロモーターがIE1及び/又はIE2プロモーターである、請求項15〜16のいずれか1項に記載のベクター。
【請求項19】
前記ベクターが、アデノシンデアミナーゼ(ADA)、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)、多剤耐性遺伝子(MDR)、オルニチン脱炭酸酵素(ODC)及びN−(ホスホンアセチル)−L−アスパラギン酸耐性(CAD)よりなる群から選択される増幅マーカーをさらに含む、請求項11〜18のいずれか1項に記載のベクター。
【請求項20】
請求項10の核酸又は請求項11〜19のいずれか1項に記載のベクターを含む、細胞。
【請求項21】
前記細胞が、非ヒト哺乳動物細胞又はヒト細胞よりなる群から選択される、請求項20に記載の細胞。
【請求項22】
目的のタンパク質の発現のために細胞をスクリーニングする方法であって、
(i)請求項11〜19のいずれか1項のベクターで細胞をトランスフェクトする工程;
(ii)抗生物質ネオマイシン、カナマイシン、ネオマイシン−カナマイシン、ヒグロマイシン、ゲンタマイシン、クロラムフェニコール、プロマイシン、ゼオシン、又はブレオマイシンのいずれかから選択される抗生物質に耐性である細胞クローンを選択する工程;
(iii)工程(ii)で選択された細胞を、配列番号1、2もしくは3を有する配列に対する結合親和性を有し、結合すると蛍光性となるリガンドを含有する溶液とともにインキュベートする工程;そして
(iv)リガンドの蛍光により工程(ii)で選択された細胞クローンの蛍光活性を検出する工程、
を含んでなる上記方法。
【請求項23】
前記リガンドがフルオレセイン誘導体である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記リガンドが膜透過性過性の重ヒ素化フルオレセイン誘導体である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記リガンドが4’,5’−ビス(1,3,2−ジチオアルソラン−2−イル)フルオレセイン又はその誘導体を含む群から選択される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記蛍光活性は工程(iv)でFACSにより検出される、請求項22〜25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
少なくとも20、50、100、500、1,000、5,000、10,000、50,000、100,000、又は1,000,000細胞の蛍光活性が工程(iv)で検出される、請求項22〜26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
(i)工程(iv)で測定される細胞の約5%〜約20%を選択する工程をさらに含み、選択される細胞は工程(iv)で最も高い蛍光活性を示す細胞である、請求項22〜27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
(i)選択される細胞中の目的のタンパク質の発現レベルを工程(v)の最後に測定する工程をさらに含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
目的のタンパク質を発現する細胞株を得る方法であって、
(i)請求項22〜29のいずれか1項に記載の方法により細胞をスクリーニングする工程;
(ii)該目的のタンパク質の最も高い発現を示す細胞を選択する工程;そして
(iii)該細胞から細胞株を樹立する工程、
を含んでなる方法。
【請求項31】
目的のタンパク質を産生する方法であって、
(i)請求項30の方法で得られる細胞株を、該目的のタンパク質の発現を可能にする条件下で培養する工程;及び
(ii)該目的のタンパク質を単離する工程、
を含んでなる方法。
【請求項32】
目的のタンパク質を精製する工程をさらに含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
目的のタンパク質を医薬組成物に調製する工程をさらに含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の融合タンパク質を産生する方法であって、
(i)請求項20〜21のいずれか1項に記載の細胞を、融合タンパク質の発現を可能にする条件下で培養する工程;及び
(ii)該融合タンパク質を単離する工程、
を含んでなる方法。
【請求項35】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の該融合タンパク質を精製する工程をさらに含む、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
目的のタンパク質の発現のために細胞をスクリーニングするための、請求項1〜9のいずれか1項に記載の融合タンパク質、請求項10に記載の核酸、請求項11〜19のいずれか1項に記載のベクター、又は請求項20又は21のいずれか1項に記載の細胞の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2009−505647(P2009−505647A)
【公表日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−527472(P2008−527472)
【出願日】平成18年8月25日(2006.8.25)
【国際出願番号】PCT/EP2006/065682
【国際公開番号】WO2007/023184
【国際公開日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【出願人】(507348713)ラボラトワール セローノ ソシエテ アノニム (29)
【Fターム(参考)】