直交周波数分割多重変調伝送装置
【課題】 伝送環境の変化に強く、しかも回路規模増大の虞れがない同期変調によるOFDM方式の伝送装置を提供すること。
【解決手段】 OFDM方式の複数本のキャリアを同期検波を用いる変調方式の伝送装置において、複数本のキャリア□からなる帯域の両端の一定本数のキャリアDについては、その変調方式を差動検波変調方式にしたり、中央部のキャリアの変調方式の多値数より低い多値数にしたり、或いは誤り訂正能力の高い訂正符号にしたりしたもの。
【効果】 回路規模の増加を伴うことなく、復調された符号の符号誤り率を低減することができる。
【解決手段】 OFDM方式の複数本のキャリアを同期検波を用いる変調方式の伝送装置において、複数本のキャリア□からなる帯域の両端の一定本数のキャリアDについては、その変調方式を差動検波変調方式にしたり、中央部のキャリアの変調方式の多値数より低い多値数にしたり、或いは誤り訂正能力の高い訂正符号にしたりしたもの。
【効果】 回路規模の増加を伴うことなく、復調された符号の符号誤り率を低減することができる。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、直交周波数分割多重変調方式の伝送装置に係り、特に64QAM方式など同期変調による直交周波数分割多重変調方式の伝送装置に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、無線装置の分野では、マルチパスフェージングに強い変調方式としてOFDM方式が脚光を集めており、次世代のテレビ放送、FPU、無線LANなどの分野で多くの応用研究が、欧州や日本を初めとして各国で進められている。
【0003】ここで、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)方式とは、互いに直交する複数本のキャリア(搬送波)を用いて情報符号を伝送する直交周波数分割多重変調方式の略称である。
【0004】この内、UHF帯の地上ディジタル放送の開発動向と方式については、“映像情報メディア学会誌”(1998 Vol.52,No.11)に詳しく開示されている。そこで、従来技術の一例として、日本におけるUHF帯の地上ディジタル放送方式を取り上げて説明する。但し、この方式は極めて複雑な構成であるため、ここでは、本発明の理解に必要な範囲で簡略化して説明する。
【0005】まず、この放送システムにおけるキャリア構造について説明すると、このシステムでは、図4に示すように、13セグメントの区間に分割した約1400本のキャリアが用いられ、これにより、3チャンネル(3階層)の情報符号まで同時に伝送できるようになっている。
【0006】このとき、各階層で使用するセグメント数と変調方式は幾つかのモードを自由に選択できるが、この選択可能なモードの内、全セグメントが、64QAMなどの同じ同期変調方式で変調されるモードの場合は、そのままFPUなどの他の伝送装置にも適用可能である。
【0007】そこで、このような同期変調によるOFDM方式の従来技術として、全セグメントを同じ64QAM方式で変調して、1階層の情報符号を伝送する場合を例にして、図5により更に詳しく説明すると、この図は、同期変調方式により変調するセグメントのキャリア構造を更に詳しく表わした図で、ここでは、帯域の左端部分(低周波数側)だけが示されている。
【0008】ここで、1階層の情報符号の伝送に全セグメントを使用するモードの場合は、同様の構造が全帯域に渡って繰り返されると考えて良い。この図5において、横方向は周波数、縦方向は時間の経過を表し、横と縦の方向に並んだ四角印「□」は、それぞれが1本のキャリアを表わしている。従って、横方向に並んだ四角印「□」の1列がOFDM信号を構成する1つのシンボルを表わす。
【0009】更に、ここで、キャリア「□」の中で、SPと記入されているのは、復調の際の基準信号の再生に使用されるパイロット信号の位置を表わし、何も記入されていないものは、64QAMで変調された信号の位置を表わしている。ここで、このパイロット信号は、図示のように、周波数方向と時間方向にばらまかれた配置になっているため、SP(Scattered Pilot)と呼ばれているものである。
【0010】なお、この図5は、パイロット信号SPの配置を模式的に示しただけである点に留意すべきであり、且つ、ここでは、本来は記載してなければならない制御信号伝送用のTMCC(Transmission and Multiplexing Configuration Control)キャリアは省略してある。
【0011】また、地上ディジタル放送方式では、時間方向にSPがあるキャリアの横方向の間隔は3本間隔であるに対して、この図5では5本間隔に変更してあるが、これは、後述する本発明の説明に際して、本発明が表現し易いように変更したものであり、本質的な内容には変わりがなく、従来技術の1バリエーションであると考えられるものである。
【0012】そして、64QAM方式の信号点は、図6の直交座標面に破線の丸印「○」で示してある64個の信号点で構成され、各信号点は、それぞれ6bitからなる互いに異なる符号列に対応させられている。ここで、64QAM方式による変調処理は、入力された符号列を6bit単位に分割し、上記64個の信号点の中から分割した各6bitの符号に対応する信号点、例えば、実線の丸印「○」の信号点を選択し、選択された信号点に対応する変調信号を出力することである。
【0013】一方、受信された変調信号は伝送過程で雑音その他の影響を受け、歪みが生じており、このため、受信信号の信号点は、例えば図6の実線の丸印「○」から、バツ印「×」の位置に移動してしまう。ここで、64QAM方式での復調処理は、破線の丸印「○」で示してある64QAMの信号点の中から、バツ印「×」で示す受信信号の信号点に最も近い信号点を選択し、選択した信号点に対応する6bitの符号を出力することであり、従って、このためには、受信信号に対する破線の丸印「○」の正しい信号点位置を知る必要がある。
【0014】ところで、この正しい信号点位置の再生には、例えば図6の信号空間上の座標点aの正確な位置を表わす基準信号ベクトルの向きと大きさが判ればよいが、受信信号の基準信号ベクトルの向きと大きさは、伝送系で発生するマルチパスなどの影響を受け、図7に示すように、位相が回転し、振幅も変化してしまう。
【0015】ここで、この基準信号ベクトルの位相と大きさは、各時間毎に、或いは各キャリア毎に変化するが、その変化の仕方は、通常、滑らかな曲線を描き、時間方向とキャリア方向に強い相関を持ち、このため、図5R>5における任意のシンボルの任意のキャリアの変調信号Aに対する基準信号ベクトルは、まばらに伝送された複数のSP信号を内挿することにより求めることができる。
【0016】そして、図5では、この内挿演算が効率的に得られるようにSPを配置した例が示されている。ところで、この図5に示したキャリア構造の信号から基準信号ベクトルを再生する方法については、地上ディジタル放送方式では特に規定されていないが、例えば図8に示す回路を用いればよい。
【0017】この図8の回路は、OFDM方式の伝送システムにおける受信側で基準信号ベクトルの再生に使用されている回路の一例で、この回路では、まず、受信信号はFFT(高速フーリエ変換:Fast Fourier Transform)5から出力され、時間方向内挿回路6と遅延回路7に共通に入力される。
【0018】そして、まず、時間方向内挿回路6では、受信信号からSP信号を取り出し、図9に斜線を付して示してあるように、時間方向にSPを含むキャリア毎に、所定のタップ数のLPFで処理し、時間方向に内挿された基準信号ベクトル信号として出力する。なお、この図9は、図5と同じく同期変調方式で変調するセグメントのキャリア構造を更に詳しく表わした図であり、ここで、SPが配置されているキャリアを、以下、SPキャリアと記す。
【0019】次に、図10は、図5に一点鎖線3で示してあるキャリアについて、上記した時間方向の内挿について模式的に示した図で、この図10において、横軸は時間軸で、シンボル毎に目盛りが付してあり、○印が付されている縦線は、受信されたSPの信号ベクトルを表わしている。
【0020】そして、或るSP、例えばSP1が受信された後、次のSP、すなわち、この場合はSP2が受信されるまでの間のシンボルの基準信号ベクトル信号については、各基準信号ベクトル信号毎に当該信号に対して時間的に前後する位置にある複数のSPのベクトル信号を用い、一定のタップ数のLFPにより内挿して求めるのである。
【0021】従って、この時間方向の内挿演算により、図9に斜線を付して示してあるように、5本間隔のキャリアの基準信号ベクトルが算出されることになる。このときのLPFによる演算では、タップ数と同じシンボル数の信号が必要になり、内挿された信号はタップ数の約半分のシンボル数遅れて出力される。そこで、遅延回路7を設け、この内挿信号のタイミングに、受信信号のタイミングが合うようにしてある。
【0022】一方、SPが配置されていないキャリアにある変調信号Aの基準信号ベクトルは、SPキャリアの基準信号ベクトルをキャリア方向に内挿して求める。このため、時間方向内挿回路6の出力信号は更にキャリア方向内挿回路8に入力され、ここでキャリア方向の内挿演算により基準信号ベクトル信号が再生される。
【0023】図11は、図9に一点鎖線4で示してあるシンボルを取り上げ、ここでのキャリア方向の内挿方法を模式的に示した図で、この図11において、横軸は周波数で、キャリア位置毎に目盛りが付してあり、縦方向の太い矢印は、上記の時間軸方向に内挿して求めたキャリア、すなわち図9に斜線を付して示してあるキャリアの基準信号ベクトルW(1)、W(5+1)、W(2×5+1)、……を表わしている。ここで括弧内の数字はキャリア番号である。
【0024】この図11において、太い矢印が無いキャリア位置Aの基準信号ベクトルは、次のようにして算出する。すなわち、図11において、太い矢印が無いキャリアのベクトルの大きさを0とし、これにより得られる信号W(1)、0、……、0、W(5+1)、0、……、0、W(2×5+1)、……を、例えばタップ数が23の通常のディジタルLPFで処理することによって、破線で示されているように、滑らかな内挿信号を算出するのである。
【0025】従って、キャリア方向内挿回路8で再生された基準信号ベクトル信号を、遅延回路7でタップ数の約半分のシンボル数だけ遅延された受信信号と共に64QAM復調回路9に入力することにより、図7に示すように変位が与えられてしまった信号点位置を、図6に示す正しい位置に補正することができ、正確な情報符号を復調することができる。
【0026】
【発明が解決しようとする課題】上記従来技術は、キャリア方向の内挿に必要なキャリア本数の欠如に配慮がされておらず、再生された基準信号ベクトルに歪が残存してしまうという問題があった。
【0027】すなわち、キャリア方向の内挿により基準信号ベクトルを正しく再生するためには、対象となるキャリアの前後(低周波数側と高周波数側)に所定の本数以上のキャリアがそれぞれ存在していることが条件となるが、必要な本数のキャリアが常に確保できるとはいえず、従って、上記の問題が生じてしまうのである。
【0028】ここで、キャリアの内挿には、複数のタップを備えたディジタルフィルタからなるLPFが使用される。従って、例えばタップ数が23のディジタルフィルタを用いたとすると、任意のキャリア番号の内挿値を求めるには、図11に示すように、そのキャリア番号Aの位置の前後に11キャリア分の信号が必要になる。
【0029】ここで、本件の発明者は、この内挿演算に以下の問題が内在していることを見い出した。すなわち、キャリア帯域の内部にあるキャリアの内挿値を算出する際は、当該キャリアの前後には必ず必要な本数、例えば上記したように、前後11本のキャリアがあるので、特に問題はないが、しかし、帯域の境界近傍では状況が上記の状況と異なると言う点である。
【0030】図12に示すように、帯域の境界近傍では、内挿値を求めようとしているキャリア位置の一方、この図12の場合は低周波数側の方にはキャリアが存在しなくなる。つまり、この場合、正しい内挿演算をするためには、太い破線の矢印で示す基準信号ベクトルが必要であるが、実際には存在してないので、正しい内挿値が得られなくなってしまうのである。
【0031】このとき、本来あるべき基準信号ベクトルと内挿値との差である歪みベクトルの大きさを図示すると図13のようになる。この図では周波数軸上のキャリア位置に目盛りが付してあり、このときSPキャリアの位置については、周波数軸上に丸印「○」で示してある。
【0032】この図13から、キャリア方向の内挿値の正しい基準信号ベクトルからの歪みは、キャリア方向の内挿に用いるディジタルLPFのタップ数のほぼ1/2のキャリア本数の範囲で、キャリアが帯域の端に近づくに従って急激に増加していることが判る。
【0033】そして、一番端のSPキャリア10と2番目のSPキャリア11の間のキャリアにおいては、伝送系で混入するマルチパスの条件によっては、正しい基準信号ベクトルの大きさの1/7を越える歪みが生じてしまうことも考えられる。ここで発生する歪みには、基準信号ベクトルを回転させる成分と大きさを変える成分があるが、何れにしても、この基準信号ベクトルに現れる歪みの影響は、以下に説明するように極めて大きい。
【0034】例えば図14は、基準信号ベクトルの大きさに約1/7の歪みが生じた場合の信号点のずれを示したもので、ここで、内挿演算で求めた基準信号ベクトルにより算出した信号点は実線の丸印で表わされ、正しい基準信号ベクトルにより算出される筈の信号点は破線の丸印で表わされている。
【0035】この図14から明らかなように、この場合、たとえ正しい信号点bの近傍にあるバツ印「×」で示す位置に信号が受信されたとしても、隣の信号点cであると誤って復調されてしまうことになり、極めて高い頻度で符号誤りが発生してしまう。
【0036】例えば変調方式が64QAM方式で、キャリア本数が1400本のOFDMの場合、帯域の端で基準信号ベクトルに大きな歪みを発生させてしまうであろうキャリアの本数が、両サイド合わせても僅か約6本であったとしても、システム全体としての符号誤り率は6/(1400×6)=約7×10-4 以上にも達してしまう。
【0037】これでは、特にビタビ復号などによる誤り訂正を施したシステムの場合には到底対応できない。このような誤り訂正を施した場合、誤り訂正前の符号誤り率については、通常、10-3 程度以下の性能が要求されるからである。なお、ここでは、端部にある6本のキャリアは信号点に対応する6ビットの符号の内の1ビットだけ誤るものとした。
【0038】そして、このキャリアの欠如による符号誤りは、マルチパスが存在しているときは、受信信号に全く雑音が含まれていない場合でも生じる。従って、このことは、受信状態を改善しても、符号誤り率は一定値以下に下げられないことを意味する。
【0039】このとき、再生された基準信号ベクトルに大きな歪みが生じるか否かは、伝送系で混入するマルチパス成分の大きさと遅延時間に依存するので、常時、発生するものではないことは確かであるが、だからといって、上記従来技術が伝送系の環境の変化に非常に弱いシステムになることには変わりはない。
【0040】ここで、この問題に対処する方法として、帯域の端近くのSPキャリアの基準信号ベクトルの位相と大きさから、その外側のSPキャリアが存在しないキャリア位置での基準信号ベクトルの位相と大きさを予想し、これを外挿することにより、LPFで生じる波形の歪みを軽減する方法を考えることができる。
【0041】しかし、詳細は省略するが、この外挿により歪みの軽減が得られる場合は特殊な条件のときに限られる上、外挿演算のために64QAM復調回路とほぼ同程度の大きな規模の回路が必要であり、これが新たな問題になってしまう。本発明の目的は、伝送環境の変化に強く、しかも回路規模増大の虞れがない同期変調によるOFDM方式の伝送装置を提供することにある。
【0042】
【課題を解決するための手段】上記の目的は、位相が相互に直交した複数本の搬送波を同期検波が適用できる変調方式で変調することにより、情報符号を伝送する方式の直交周波数分割多重変調伝送装置において、前記複数本の搬送波を含む周波数帯域の両端から所定本数内にある搬送波の中で、前記同期検波が適用できる変調方式で変調された搬送波の復調のための基準信号ベクトルの再生に用いる搬送波を除いた残りの搬送波の内の少なくとも一部については、差動検波が適用できる変調方式で変調して伝送するようにして達成される。
【0043】同じく上記目的は、位相が相互に直交した複数本の搬送波を同期検波が適用できる変調方式で変調することにより、情報符号を伝送する方式の直交周波数分割多重変調伝送装置において、前記複数本の搬送波を含む周波数帯域の両端から所定本数内にある搬送波の中で、前記同期検波が適用できる変調方式で変調された搬送波の復調のための基準信号ベクトルの再生に用いる搬送波を除いた残りの搬送波の内の少なくとも一部については、前記同期検波が適用できる変調方式における多値数よりも小さい多値数の同期検波が適用できる変調方式で変調して伝送するようにしても達成される。
【0044】更に、上記目的は、位相が相互に直交した複数本の搬送波を同期検波が適用できる変調方式で変調することにより、誤り訂正符号が付加された情報符号を伝送する方式の直交周波数分割多重変調伝送装置において、前記複数本の搬送波を含む周波数帯域の両端から所定本数内にある搬送波の中で、前記同期検波が適用できる変調方式で変調された搬送波の復調のための基準信号ベクトルの再生に用いる搬送波を除いた残りの搬送波の内の少なくとも一部により伝送される情報符号については、 前記誤り訂正符号よりも訂正能力の高い誤り訂正符号を付加して伝送するようにしても達成される。
【0045】上記手段によれば、同期変調方式を用いるOFDM方式の伝送装置であり、しかも伝送系の環境の変化にも強い良好な伝送装置を構成することができる効果が得られる。
【0046】このとき、境界部のキャリアの変調方式として差動変調方式を用いる場合、別種の差動変調方式の復調回路が新たに必要になるが、差動変調方式の復調回路は同期変調方式の復調回路の様な基準信号ベクトルの再生が必要でないため、回路規模の増加は外挿演算の回路規模に比べ小さく、従って、回路規模の増加を抑えることができる。
【0047】また、本発明の手段においては、帯域の境界部のキャリアの信号を復調するために、中央部のキャリアの変調方式の復調回路とは異なる変調方式の復調回路が必要になる。しかし、境界部のキャリアの変調方式が同じ同期変調方式の場合、復調回路の信号点配置を変更するだけで同じ回路を共用することができ、回路規模の増加はほとんど無視できる。
【0048】更に、キャリア方向の内挿演算で算出した基準信号ベクトルの歪みは、図13からも分かるように、帯域の端のSPキャリアと2つ目のSPキャリアの間のキャリアに対する基本信号ベクトルの歪みが最も大きく、キャリア方向の内挿に用いるディジタルLPFのタップ数2M+1の約1/2である約M本の範囲内である境界部のキャリアの基本信号ベクトルの歪みが無視できないレベルになる。
【0049】しかし、本発明による手段では、この範囲内にあって特に歪みの大きいキャリアは、基本信号ベクトルの歪みの影響が無い差動変調方式で、或いは歪みの影響が少ない多値数の低い同期変調方式で変調され、更には誤り訂正能力の高い誤り訂正符号を用いて訂正されるので、符号誤り率が少ない同期変調方式を用いたOFDM方式の伝送装置を構成することができる。
【0050】
【発明の実施の形態】以下、本発明による直交周波数分割多重変調伝送装置について、図示の実施の形態により詳細に説明する。図1は、本発明の第1の実施形態におけるキャリア構造の一例で、図5の従来技術の場合と同じく、横方向は周波数で、縦方向は時間の経過を表しており、横と縦の方向に並んだ四角印「□」は、それぞれが1本のキャリアを表わしている。従って、縦方向に並んだキャリア「□」の1列がOFDM信号を構成する1つのシンボルを表わしている。
【0051】更に、キャリア「□」の中で、SPと記入されているのは、復調の際の基準信号の再生に使用されるパイロット信号の位置を表わし、何も記入されていないものは、64QAMで変調された信号の位置を表わしている点も、図5と同じである。ここで、この図1の実施形態におけるSPキャリアの間隔は、地上ディジタル放送方式と同様の3本間隔も含め、任意の本数間隔の場合でも同様に成り立つものである。
【0052】この図1実施形態が、図5に示した従来技術と異なっている点は、帯域の両端近傍にある一部のキャリア「□」が、符号Dが書き込まれているキャリア「□」に置き換えられている点にある。
【0053】以後、この符号Dが書き込まれているキャリア「□」が表わしているキャリアについては、Dキャリアと呼び、これらDキャリアとSPキャリア以外の何も書き込まれていないで白抜き(ブランク)のままになっているキャリア「□」が表わしているキャリアについては、Cキャリアと呼ぶことにする。
【0054】そして、Dキャリアのシンボル位置及びキャリア位置にある情報符号については、64QAM方式などの同期変調方式を用いるのではなく、DBPSK方式、DQPSK方式、8DPSK方式、或いは16DAPSK方式などの復調に基準信号ベクトルを必要としない差動変調方式で変調して伝送されるように構成してある。
【0055】一方、Cキャリアについてのシンボル位置及びキャリア位置にある情報符号については、上記したように、従来技術と同じく64QAM方式などの同期変調方式で変調して伝送されるようにし、この同期変調方式のキャリアの復調に使用する基準信号ベクトルについても、従来技術と同様にして内挿処理により再生するように構成してある。
【0056】従って、この実施形態では、図13の特性図で、歪みが特に大きくなっている帯域端部のキャリアは、同期変調方式で変調されるキャリア位置から除かれ、Dキャリア位置が割り当てられている点が、従来技術と大きく異なっていることになり、この結果、歪みの大きい基準信号ベクトルを用いるキャリアから復号された情報符号も含まれる従来の方式の場合に比べ、同期変調方式で変調されているキャリアから復号された情報符号の符号誤り率を低減することができる。
【0057】また、ここで、差動変調方式で変調されているDキャリアは、その復調に基準信号ベクトルを必要としないので、基準信号ベクトルに大きな歪みがあっても、復号した情報符号の誤り率には何ら影響がなく、従って、良好な情報符号が容易に復号できることになる。
【0058】このとき、Dキャリアにより伝送すべき情報符号としては、Cキャリアで伝送する情報符号の一部、例えばデータ圧縮された画像符号等の一部の符号を伝送するようにしても良いが、音声信号やカメラ雲台のコントロール信号など、Cキャリアで伝送される情報符号とは独立した、別の情報符号を伝送するようにしても良い。なお、極端な場合、Dキャリアでは情報符号を伝送しないようにしても良い。
【0059】従って、この実施形態によれば、同期変調方式で変調されているキャリアから復号された情報符号の符号誤り率を充分に低減することができる。しかも、このとき、差動変調方式の復調回路は、同期変調方式の復調回路のように基準信号ベクトルを再生する必要がないので、回路規模の増加は外挿演算の回路規模に比べ小さく、従って、この実施形態によれば、回路規模の増加を抑えることができる。
【0060】ここで、Dキャリアは、図1に示すように配置するだけでなく、例えば図2に示すように、使用される内挿フィルタのタップ数2M+1から決まる帯域の端から一定の本数M本までの間の連続する任意本数のデータキャリアを全てDキャリアに設定しても良い。
【0061】或いは図3に示すように、歪みの小さいSPキャリアの両隣のキャリアについてはCキャリアとして残し、両端近傍の残りのキャリアをDキャリアに設定しても良い。このように、本発明によるキャリア構造の実施形態には、幅広い自由度があるが、何れの場合も、少なくとも歪みが最も大きくなるキャリア、或いはそれに続いて歪みの大きい一定本数のキャリアを含んでいることが要件である。
【0062】次に、本発明の第2の実施形態について説明する。ここで、まず、この第2の実施形態でも、キャリア構造については第1の実施形態と同じで、図1、図2R>2、図3に示した何れかのキャリア構造と同一のキャリア構造を用いる。そして、このとき、Cキャリアは64QAM方式の同期変調方式で変調して伝送する点も同じである。
【0063】しかして、この第2の実施形態が、第1の実施形態と異なる点は、DキャリアをQPSK方式、又は16QAM方式、或いは32QAM方式など、Cキャリアを変調する同期変調方式の多値数より低い多値数の同期変調方式で変調するようにした点にある。
【0064】ここで、OFDM方式の場合、同期変調方式の多値数が多い程、雑音や基準信号ベクトルの歪みに弱くなり、従って、64QAM方式から32QAM方式、16QAM方式、それにQPSK方式の順に雑音や基準信号ベクトルの歪みに強くなっている。
【0065】そうすると、この第2の実施形態の場合も、歪みが特に大きなキャリアは雑音や基準信号ベクトルの歪みに弱い多値数の高い同期変調方式で変調されているCキャリアから除かれていて、Dキャリアに割り当てられていることになり、この結果、歪みが大きい基準信号ベクトルを用いるキャリアから復号された情報符号も含まれてしまう従来技術の場合に比較して、キャリアCから復号された情報符号の符号誤り率を低減することができる。
【0066】一方、この第2の実施形態の場合、Dキャリアについては、Cキャリアと同じ同期変調方式ではあっても、雑音や基準信号ベクトルの歪みに比較的に強い多値数の低い同期変調方式で変調されており、従って、このキャリアの基準信号ベクトルに大きな歪みが有っても、このキャリアをCキャリアに設定した場合に比較して、復号した情報符号の誤り率はそれほど高くならず、良好な情報符号を復号することができる。
【0067】なお、この第2の実施形態では、帯域の境界部のキャリアDの信号を復調するために、中央部のキャリアCの変調方式の復調回路とは異なる変調方式の復調回路が必要になる。しかし、境界部のキャリアの変調方式が同じ同期変調方式の場合、復調回路の信号点配置を変更するだけで同じ回路を共用することができるので、回路規模の増加はほとんど無視できる。
【0068】ここで、このDキャリアで伝送する情報符号の内容、及びキャリア構造における幅広い自由度については、この第2の実施形態でも、第1の実施形態と同じであるので、説明は省略するが、この第2の実施形態によるキャリア構造においても、第1の実施形態と同様、同期変調方式で変調されているキャリアから復号された情報符号の符号誤り率を充分に低減することができる。
【0069】次に、本発明の第3の実施形態について説明する。ここで、まず、この第3の実施形態でも、キャリア構造については第1と第2の実施形態と同じで、図1R>1、図2、図3に示したキャリア構造の何れかを用い、キャリアがCキャリアとDキャリアに分けてある点は同じである。
【0070】しかして、この第3の実施形態が、第1と第2の実施形態と異なる点は、これら分割したCキャリアで伝送される情報符号に付加すべき誤り訂正符号と、Dキャリアで伝送される情報符号に付加すべき誤り訂正符号を、異なった訂正能力にした点にある。
【0071】具体的には、このとき、Dキャリアで伝送する情報符号に用いる誤り訂正符号の訂正能力を、Cキャリアで伝送する情報符号に用いる誤り訂正符号の訂正能力よりも高くなるように構成したもので、例えばCキャリアで伝送する情報符号に対する誤り訂正符号には3/4の畳み込み符号を用い、Dキャリアで伝送する情報符号に用いる誤り訂正符号には3/4の畳み込み符号より訂正能力が高い1/2の畳み込み符号を用いている。
【0072】従って、この第3の実施形態の場合も、歪みが特に大きくなる虞れのあるキャリアは、雑音や基準信号ベクトルの歪みに弱く、訂正能力の低い誤り訂正符号を用いているCキャリアから除かれており、この結果、歪みの大きい基準信号ベクトルを用いるキャリアから復号された情報符号も含まれてしまう従来技術の場合に比較して、同期変調方式で変調されているキャリアから復号された情報符号の符号誤り率を低減することができる。
【0073】一方、Dキャリアにより伝送される情報符号には、Cキャリアで伝送する情報符号に用いられている誤り訂正符号より誤り訂正能力の高い誤り訂正符号が付加されているので、たとえ復号された情報符号に誤りが生じても、その誤りは高い精度で訂正できるため、良好な情報符号を復号することができる。
【0074】そして、この第3の実施形態でも、Dキャリアで伝送する情報符号の内容、及びキャリア構造における幅広い自由度については、第1の実施形態と同じであるので、説明は省略するが、この第3の実施形態によるキャリア構造においても、第1の実施形態と同様、同期変調方式で変調されているキャリアから復号された情報符号の符号誤り率を充分に低減することができる。
【0075】ここで、以上の説明では特に断らなかったが、境界領域の幅を規定する一定本数Mの値は、例えば64QAMで変調する場合を想定すると、内挿フィルタの歪みに対するS/Nと、64QAMで確保すべきC/Nの大きさから、SPキャリア間隔のおよそ5倍程度になるので、これから決定してやればよい。
【0076】また、以上の実施形態では、何れもパイロット信号が時間方向に間欠的にSPとして挿入されている場合についてだけ説明したが、パイロット信号が時間方向に連続的に挿入され、時間方向の内挿演算が不要なキャリア構造の場合についても同様に本発明が適用できることは明らかである。
【0077】
【発明の効果】本発明によれば、歪みの大きい基準信号ベクトルから再生したキャリアにより復号される符号を用いていないので、同期変調方式で変調されているキャリアから復号された情報符号の符号誤り率が充分に低減でき、同期変調方式を用いたOFDM方式の伝送装置を、回路規模の増加を伴うことなく容易に提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による直交周波数分割多重変調伝送装置の実施形態におけるキャリア配置の一例を示す説明図である。
【図2】本発明による直交周波数分割多重変調伝送装置の実施形態におけるキャリア配置の他の一例を示す説明図である。
【図3】本発明による直交周波数分割多重変調伝送装置の実施形態におけるキャリア配置の更に別の一例を示す説明図である。
【図4】地上ディジタル放送方式で採用されているキャリア構造の一例を示す説明図である。
【図5】地上ディジタル放送方式で採用されているキャリア配置の一例を示す説明図である。
【図6】64QAM方式における信号点配置の説明図である。
【図7】受信信号における基準信号ベクトルの位相回転の説明図である。
【図8】OFDM方式の従来技術において基準信号ベクトルの再生に使用されている回路の一例を示すブロック図である。
【図9】地上ディジタル放送方式で採用されているキャリア配置の一例を示す説明図である。
【図10】キャリアの時間方向の内挿について模式的に示した説明図である。
【図11】キャリアの周波数方向の内挿について模式的に示した説明図である。
【図12】キャリアの周波数方向の内挿における問題点の説明図である。
【図13】キャリアの周波数方向の内挿による歪み量の一例を示す特性図である。
【図14】大きな歪みを生じたときの信号点の位置の説明図である。
【符号の説明】
□ キャリア
D キャリヤの中で、同期検波による変調方式で変調されたキャリアの復調のための基準信号ベクトルの再生に用いるキャリアを除いた残りのキャリアの内の少なくとも一部のキャリア
SP キャリアのなかで、復調の際の基準信号の再生に使用されるパイロット信号となるキャリヤ
1、2、10、11 SPの位置
5 FFT回路
6 時間方向内挿回路
7 遅延回路
8 キャリア方向内挿回路
9 64QAM復調回路。
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、直交周波数分割多重変調方式の伝送装置に係り、特に64QAM方式など同期変調による直交周波数分割多重変調方式の伝送装置に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、無線装置の分野では、マルチパスフェージングに強い変調方式としてOFDM方式が脚光を集めており、次世代のテレビ放送、FPU、無線LANなどの分野で多くの応用研究が、欧州や日本を初めとして各国で進められている。
【0003】ここで、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)方式とは、互いに直交する複数本のキャリア(搬送波)を用いて情報符号を伝送する直交周波数分割多重変調方式の略称である。
【0004】この内、UHF帯の地上ディジタル放送の開発動向と方式については、“映像情報メディア学会誌”(1998 Vol.52,No.11)に詳しく開示されている。そこで、従来技術の一例として、日本におけるUHF帯の地上ディジタル放送方式を取り上げて説明する。但し、この方式は極めて複雑な構成であるため、ここでは、本発明の理解に必要な範囲で簡略化して説明する。
【0005】まず、この放送システムにおけるキャリア構造について説明すると、このシステムでは、図4に示すように、13セグメントの区間に分割した約1400本のキャリアが用いられ、これにより、3チャンネル(3階層)の情報符号まで同時に伝送できるようになっている。
【0006】このとき、各階層で使用するセグメント数と変調方式は幾つかのモードを自由に選択できるが、この選択可能なモードの内、全セグメントが、64QAMなどの同じ同期変調方式で変調されるモードの場合は、そのままFPUなどの他の伝送装置にも適用可能である。
【0007】そこで、このような同期変調によるOFDM方式の従来技術として、全セグメントを同じ64QAM方式で変調して、1階層の情報符号を伝送する場合を例にして、図5により更に詳しく説明すると、この図は、同期変調方式により変調するセグメントのキャリア構造を更に詳しく表わした図で、ここでは、帯域の左端部分(低周波数側)だけが示されている。
【0008】ここで、1階層の情報符号の伝送に全セグメントを使用するモードの場合は、同様の構造が全帯域に渡って繰り返されると考えて良い。この図5において、横方向は周波数、縦方向は時間の経過を表し、横と縦の方向に並んだ四角印「□」は、それぞれが1本のキャリアを表わしている。従って、横方向に並んだ四角印「□」の1列がOFDM信号を構成する1つのシンボルを表わす。
【0009】更に、ここで、キャリア「□」の中で、SPと記入されているのは、復調の際の基準信号の再生に使用されるパイロット信号の位置を表わし、何も記入されていないものは、64QAMで変調された信号の位置を表わしている。ここで、このパイロット信号は、図示のように、周波数方向と時間方向にばらまかれた配置になっているため、SP(Scattered Pilot)と呼ばれているものである。
【0010】なお、この図5は、パイロット信号SPの配置を模式的に示しただけである点に留意すべきであり、且つ、ここでは、本来は記載してなければならない制御信号伝送用のTMCC(Transmission and Multiplexing Configuration Control)キャリアは省略してある。
【0011】また、地上ディジタル放送方式では、時間方向にSPがあるキャリアの横方向の間隔は3本間隔であるに対して、この図5では5本間隔に変更してあるが、これは、後述する本発明の説明に際して、本発明が表現し易いように変更したものであり、本質的な内容には変わりがなく、従来技術の1バリエーションであると考えられるものである。
【0012】そして、64QAM方式の信号点は、図6の直交座標面に破線の丸印「○」で示してある64個の信号点で構成され、各信号点は、それぞれ6bitからなる互いに異なる符号列に対応させられている。ここで、64QAM方式による変調処理は、入力された符号列を6bit単位に分割し、上記64個の信号点の中から分割した各6bitの符号に対応する信号点、例えば、実線の丸印「○」の信号点を選択し、選択された信号点に対応する変調信号を出力することである。
【0013】一方、受信された変調信号は伝送過程で雑音その他の影響を受け、歪みが生じており、このため、受信信号の信号点は、例えば図6の実線の丸印「○」から、バツ印「×」の位置に移動してしまう。ここで、64QAM方式での復調処理は、破線の丸印「○」で示してある64QAMの信号点の中から、バツ印「×」で示す受信信号の信号点に最も近い信号点を選択し、選択した信号点に対応する6bitの符号を出力することであり、従って、このためには、受信信号に対する破線の丸印「○」の正しい信号点位置を知る必要がある。
【0014】ところで、この正しい信号点位置の再生には、例えば図6の信号空間上の座標点aの正確な位置を表わす基準信号ベクトルの向きと大きさが判ればよいが、受信信号の基準信号ベクトルの向きと大きさは、伝送系で発生するマルチパスなどの影響を受け、図7に示すように、位相が回転し、振幅も変化してしまう。
【0015】ここで、この基準信号ベクトルの位相と大きさは、各時間毎に、或いは各キャリア毎に変化するが、その変化の仕方は、通常、滑らかな曲線を描き、時間方向とキャリア方向に強い相関を持ち、このため、図5R>5における任意のシンボルの任意のキャリアの変調信号Aに対する基準信号ベクトルは、まばらに伝送された複数のSP信号を内挿することにより求めることができる。
【0016】そして、図5では、この内挿演算が効率的に得られるようにSPを配置した例が示されている。ところで、この図5に示したキャリア構造の信号から基準信号ベクトルを再生する方法については、地上ディジタル放送方式では特に規定されていないが、例えば図8に示す回路を用いればよい。
【0017】この図8の回路は、OFDM方式の伝送システムにおける受信側で基準信号ベクトルの再生に使用されている回路の一例で、この回路では、まず、受信信号はFFT(高速フーリエ変換:Fast Fourier Transform)5から出力され、時間方向内挿回路6と遅延回路7に共通に入力される。
【0018】そして、まず、時間方向内挿回路6では、受信信号からSP信号を取り出し、図9に斜線を付して示してあるように、時間方向にSPを含むキャリア毎に、所定のタップ数のLPFで処理し、時間方向に内挿された基準信号ベクトル信号として出力する。なお、この図9は、図5と同じく同期変調方式で変調するセグメントのキャリア構造を更に詳しく表わした図であり、ここで、SPが配置されているキャリアを、以下、SPキャリアと記す。
【0019】次に、図10は、図5に一点鎖線3で示してあるキャリアについて、上記した時間方向の内挿について模式的に示した図で、この図10において、横軸は時間軸で、シンボル毎に目盛りが付してあり、○印が付されている縦線は、受信されたSPの信号ベクトルを表わしている。
【0020】そして、或るSP、例えばSP1が受信された後、次のSP、すなわち、この場合はSP2が受信されるまでの間のシンボルの基準信号ベクトル信号については、各基準信号ベクトル信号毎に当該信号に対して時間的に前後する位置にある複数のSPのベクトル信号を用い、一定のタップ数のLFPにより内挿して求めるのである。
【0021】従って、この時間方向の内挿演算により、図9に斜線を付して示してあるように、5本間隔のキャリアの基準信号ベクトルが算出されることになる。このときのLPFによる演算では、タップ数と同じシンボル数の信号が必要になり、内挿された信号はタップ数の約半分のシンボル数遅れて出力される。そこで、遅延回路7を設け、この内挿信号のタイミングに、受信信号のタイミングが合うようにしてある。
【0022】一方、SPが配置されていないキャリアにある変調信号Aの基準信号ベクトルは、SPキャリアの基準信号ベクトルをキャリア方向に内挿して求める。このため、時間方向内挿回路6の出力信号は更にキャリア方向内挿回路8に入力され、ここでキャリア方向の内挿演算により基準信号ベクトル信号が再生される。
【0023】図11は、図9に一点鎖線4で示してあるシンボルを取り上げ、ここでのキャリア方向の内挿方法を模式的に示した図で、この図11において、横軸は周波数で、キャリア位置毎に目盛りが付してあり、縦方向の太い矢印は、上記の時間軸方向に内挿して求めたキャリア、すなわち図9に斜線を付して示してあるキャリアの基準信号ベクトルW(1)、W(5+1)、W(2×5+1)、……を表わしている。ここで括弧内の数字はキャリア番号である。
【0024】この図11において、太い矢印が無いキャリア位置Aの基準信号ベクトルは、次のようにして算出する。すなわち、図11において、太い矢印が無いキャリアのベクトルの大きさを0とし、これにより得られる信号W(1)、0、……、0、W(5+1)、0、……、0、W(2×5+1)、……を、例えばタップ数が23の通常のディジタルLPFで処理することによって、破線で示されているように、滑らかな内挿信号を算出するのである。
【0025】従って、キャリア方向内挿回路8で再生された基準信号ベクトル信号を、遅延回路7でタップ数の約半分のシンボル数だけ遅延された受信信号と共に64QAM復調回路9に入力することにより、図7に示すように変位が与えられてしまった信号点位置を、図6に示す正しい位置に補正することができ、正確な情報符号を復調することができる。
【0026】
【発明が解決しようとする課題】上記従来技術は、キャリア方向の内挿に必要なキャリア本数の欠如に配慮がされておらず、再生された基準信号ベクトルに歪が残存してしまうという問題があった。
【0027】すなわち、キャリア方向の内挿により基準信号ベクトルを正しく再生するためには、対象となるキャリアの前後(低周波数側と高周波数側)に所定の本数以上のキャリアがそれぞれ存在していることが条件となるが、必要な本数のキャリアが常に確保できるとはいえず、従って、上記の問題が生じてしまうのである。
【0028】ここで、キャリアの内挿には、複数のタップを備えたディジタルフィルタからなるLPFが使用される。従って、例えばタップ数が23のディジタルフィルタを用いたとすると、任意のキャリア番号の内挿値を求めるには、図11に示すように、そのキャリア番号Aの位置の前後に11キャリア分の信号が必要になる。
【0029】ここで、本件の発明者は、この内挿演算に以下の問題が内在していることを見い出した。すなわち、キャリア帯域の内部にあるキャリアの内挿値を算出する際は、当該キャリアの前後には必ず必要な本数、例えば上記したように、前後11本のキャリアがあるので、特に問題はないが、しかし、帯域の境界近傍では状況が上記の状況と異なると言う点である。
【0030】図12に示すように、帯域の境界近傍では、内挿値を求めようとしているキャリア位置の一方、この図12の場合は低周波数側の方にはキャリアが存在しなくなる。つまり、この場合、正しい内挿演算をするためには、太い破線の矢印で示す基準信号ベクトルが必要であるが、実際には存在してないので、正しい内挿値が得られなくなってしまうのである。
【0031】このとき、本来あるべき基準信号ベクトルと内挿値との差である歪みベクトルの大きさを図示すると図13のようになる。この図では周波数軸上のキャリア位置に目盛りが付してあり、このときSPキャリアの位置については、周波数軸上に丸印「○」で示してある。
【0032】この図13から、キャリア方向の内挿値の正しい基準信号ベクトルからの歪みは、キャリア方向の内挿に用いるディジタルLPFのタップ数のほぼ1/2のキャリア本数の範囲で、キャリアが帯域の端に近づくに従って急激に増加していることが判る。
【0033】そして、一番端のSPキャリア10と2番目のSPキャリア11の間のキャリアにおいては、伝送系で混入するマルチパスの条件によっては、正しい基準信号ベクトルの大きさの1/7を越える歪みが生じてしまうことも考えられる。ここで発生する歪みには、基準信号ベクトルを回転させる成分と大きさを変える成分があるが、何れにしても、この基準信号ベクトルに現れる歪みの影響は、以下に説明するように極めて大きい。
【0034】例えば図14は、基準信号ベクトルの大きさに約1/7の歪みが生じた場合の信号点のずれを示したもので、ここで、内挿演算で求めた基準信号ベクトルにより算出した信号点は実線の丸印で表わされ、正しい基準信号ベクトルにより算出される筈の信号点は破線の丸印で表わされている。
【0035】この図14から明らかなように、この場合、たとえ正しい信号点bの近傍にあるバツ印「×」で示す位置に信号が受信されたとしても、隣の信号点cであると誤って復調されてしまうことになり、極めて高い頻度で符号誤りが発生してしまう。
【0036】例えば変調方式が64QAM方式で、キャリア本数が1400本のOFDMの場合、帯域の端で基準信号ベクトルに大きな歪みを発生させてしまうであろうキャリアの本数が、両サイド合わせても僅か約6本であったとしても、システム全体としての符号誤り率は6/(1400×6)=約7×10-4 以上にも達してしまう。
【0037】これでは、特にビタビ復号などによる誤り訂正を施したシステムの場合には到底対応できない。このような誤り訂正を施した場合、誤り訂正前の符号誤り率については、通常、10-3 程度以下の性能が要求されるからである。なお、ここでは、端部にある6本のキャリアは信号点に対応する6ビットの符号の内の1ビットだけ誤るものとした。
【0038】そして、このキャリアの欠如による符号誤りは、マルチパスが存在しているときは、受信信号に全く雑音が含まれていない場合でも生じる。従って、このことは、受信状態を改善しても、符号誤り率は一定値以下に下げられないことを意味する。
【0039】このとき、再生された基準信号ベクトルに大きな歪みが生じるか否かは、伝送系で混入するマルチパス成分の大きさと遅延時間に依存するので、常時、発生するものではないことは確かであるが、だからといって、上記従来技術が伝送系の環境の変化に非常に弱いシステムになることには変わりはない。
【0040】ここで、この問題に対処する方法として、帯域の端近くのSPキャリアの基準信号ベクトルの位相と大きさから、その外側のSPキャリアが存在しないキャリア位置での基準信号ベクトルの位相と大きさを予想し、これを外挿することにより、LPFで生じる波形の歪みを軽減する方法を考えることができる。
【0041】しかし、詳細は省略するが、この外挿により歪みの軽減が得られる場合は特殊な条件のときに限られる上、外挿演算のために64QAM復調回路とほぼ同程度の大きな規模の回路が必要であり、これが新たな問題になってしまう。本発明の目的は、伝送環境の変化に強く、しかも回路規模増大の虞れがない同期変調によるOFDM方式の伝送装置を提供することにある。
【0042】
【課題を解決するための手段】上記の目的は、位相が相互に直交した複数本の搬送波を同期検波が適用できる変調方式で変調することにより、情報符号を伝送する方式の直交周波数分割多重変調伝送装置において、前記複数本の搬送波を含む周波数帯域の両端から所定本数内にある搬送波の中で、前記同期検波が適用できる変調方式で変調された搬送波の復調のための基準信号ベクトルの再生に用いる搬送波を除いた残りの搬送波の内の少なくとも一部については、差動検波が適用できる変調方式で変調して伝送するようにして達成される。
【0043】同じく上記目的は、位相が相互に直交した複数本の搬送波を同期検波が適用できる変調方式で変調することにより、情報符号を伝送する方式の直交周波数分割多重変調伝送装置において、前記複数本の搬送波を含む周波数帯域の両端から所定本数内にある搬送波の中で、前記同期検波が適用できる変調方式で変調された搬送波の復調のための基準信号ベクトルの再生に用いる搬送波を除いた残りの搬送波の内の少なくとも一部については、前記同期検波が適用できる変調方式における多値数よりも小さい多値数の同期検波が適用できる変調方式で変調して伝送するようにしても達成される。
【0044】更に、上記目的は、位相が相互に直交した複数本の搬送波を同期検波が適用できる変調方式で変調することにより、誤り訂正符号が付加された情報符号を伝送する方式の直交周波数分割多重変調伝送装置において、前記複数本の搬送波を含む周波数帯域の両端から所定本数内にある搬送波の中で、前記同期検波が適用できる変調方式で変調された搬送波の復調のための基準信号ベクトルの再生に用いる搬送波を除いた残りの搬送波の内の少なくとも一部により伝送される情報符号については、 前記誤り訂正符号よりも訂正能力の高い誤り訂正符号を付加して伝送するようにしても達成される。
【0045】上記手段によれば、同期変調方式を用いるOFDM方式の伝送装置であり、しかも伝送系の環境の変化にも強い良好な伝送装置を構成することができる効果が得られる。
【0046】このとき、境界部のキャリアの変調方式として差動変調方式を用いる場合、別種の差動変調方式の復調回路が新たに必要になるが、差動変調方式の復調回路は同期変調方式の復調回路の様な基準信号ベクトルの再生が必要でないため、回路規模の増加は外挿演算の回路規模に比べ小さく、従って、回路規模の増加を抑えることができる。
【0047】また、本発明の手段においては、帯域の境界部のキャリアの信号を復調するために、中央部のキャリアの変調方式の復調回路とは異なる変調方式の復調回路が必要になる。しかし、境界部のキャリアの変調方式が同じ同期変調方式の場合、復調回路の信号点配置を変更するだけで同じ回路を共用することができ、回路規模の増加はほとんど無視できる。
【0048】更に、キャリア方向の内挿演算で算出した基準信号ベクトルの歪みは、図13からも分かるように、帯域の端のSPキャリアと2つ目のSPキャリアの間のキャリアに対する基本信号ベクトルの歪みが最も大きく、キャリア方向の内挿に用いるディジタルLPFのタップ数2M+1の約1/2である約M本の範囲内である境界部のキャリアの基本信号ベクトルの歪みが無視できないレベルになる。
【0049】しかし、本発明による手段では、この範囲内にあって特に歪みの大きいキャリアは、基本信号ベクトルの歪みの影響が無い差動変調方式で、或いは歪みの影響が少ない多値数の低い同期変調方式で変調され、更には誤り訂正能力の高い誤り訂正符号を用いて訂正されるので、符号誤り率が少ない同期変調方式を用いたOFDM方式の伝送装置を構成することができる。
【0050】
【発明の実施の形態】以下、本発明による直交周波数分割多重変調伝送装置について、図示の実施の形態により詳細に説明する。図1は、本発明の第1の実施形態におけるキャリア構造の一例で、図5の従来技術の場合と同じく、横方向は周波数で、縦方向は時間の経過を表しており、横と縦の方向に並んだ四角印「□」は、それぞれが1本のキャリアを表わしている。従って、縦方向に並んだキャリア「□」の1列がOFDM信号を構成する1つのシンボルを表わしている。
【0051】更に、キャリア「□」の中で、SPと記入されているのは、復調の際の基準信号の再生に使用されるパイロット信号の位置を表わし、何も記入されていないものは、64QAMで変調された信号の位置を表わしている点も、図5と同じである。ここで、この図1の実施形態におけるSPキャリアの間隔は、地上ディジタル放送方式と同様の3本間隔も含め、任意の本数間隔の場合でも同様に成り立つものである。
【0052】この図1実施形態が、図5に示した従来技術と異なっている点は、帯域の両端近傍にある一部のキャリア「□」が、符号Dが書き込まれているキャリア「□」に置き換えられている点にある。
【0053】以後、この符号Dが書き込まれているキャリア「□」が表わしているキャリアについては、Dキャリアと呼び、これらDキャリアとSPキャリア以外の何も書き込まれていないで白抜き(ブランク)のままになっているキャリア「□」が表わしているキャリアについては、Cキャリアと呼ぶことにする。
【0054】そして、Dキャリアのシンボル位置及びキャリア位置にある情報符号については、64QAM方式などの同期変調方式を用いるのではなく、DBPSK方式、DQPSK方式、8DPSK方式、或いは16DAPSK方式などの復調に基準信号ベクトルを必要としない差動変調方式で変調して伝送されるように構成してある。
【0055】一方、Cキャリアについてのシンボル位置及びキャリア位置にある情報符号については、上記したように、従来技術と同じく64QAM方式などの同期変調方式で変調して伝送されるようにし、この同期変調方式のキャリアの復調に使用する基準信号ベクトルについても、従来技術と同様にして内挿処理により再生するように構成してある。
【0056】従って、この実施形態では、図13の特性図で、歪みが特に大きくなっている帯域端部のキャリアは、同期変調方式で変調されるキャリア位置から除かれ、Dキャリア位置が割り当てられている点が、従来技術と大きく異なっていることになり、この結果、歪みの大きい基準信号ベクトルを用いるキャリアから復号された情報符号も含まれる従来の方式の場合に比べ、同期変調方式で変調されているキャリアから復号された情報符号の符号誤り率を低減することができる。
【0057】また、ここで、差動変調方式で変調されているDキャリアは、その復調に基準信号ベクトルを必要としないので、基準信号ベクトルに大きな歪みがあっても、復号した情報符号の誤り率には何ら影響がなく、従って、良好な情報符号が容易に復号できることになる。
【0058】このとき、Dキャリアにより伝送すべき情報符号としては、Cキャリアで伝送する情報符号の一部、例えばデータ圧縮された画像符号等の一部の符号を伝送するようにしても良いが、音声信号やカメラ雲台のコントロール信号など、Cキャリアで伝送される情報符号とは独立した、別の情報符号を伝送するようにしても良い。なお、極端な場合、Dキャリアでは情報符号を伝送しないようにしても良い。
【0059】従って、この実施形態によれば、同期変調方式で変調されているキャリアから復号された情報符号の符号誤り率を充分に低減することができる。しかも、このとき、差動変調方式の復調回路は、同期変調方式の復調回路のように基準信号ベクトルを再生する必要がないので、回路規模の増加は外挿演算の回路規模に比べ小さく、従って、この実施形態によれば、回路規模の増加を抑えることができる。
【0060】ここで、Dキャリアは、図1に示すように配置するだけでなく、例えば図2に示すように、使用される内挿フィルタのタップ数2M+1から決まる帯域の端から一定の本数M本までの間の連続する任意本数のデータキャリアを全てDキャリアに設定しても良い。
【0061】或いは図3に示すように、歪みの小さいSPキャリアの両隣のキャリアについてはCキャリアとして残し、両端近傍の残りのキャリアをDキャリアに設定しても良い。このように、本発明によるキャリア構造の実施形態には、幅広い自由度があるが、何れの場合も、少なくとも歪みが最も大きくなるキャリア、或いはそれに続いて歪みの大きい一定本数のキャリアを含んでいることが要件である。
【0062】次に、本発明の第2の実施形態について説明する。ここで、まず、この第2の実施形態でも、キャリア構造については第1の実施形態と同じで、図1、図2R>2、図3に示した何れかのキャリア構造と同一のキャリア構造を用いる。そして、このとき、Cキャリアは64QAM方式の同期変調方式で変調して伝送する点も同じである。
【0063】しかして、この第2の実施形態が、第1の実施形態と異なる点は、DキャリアをQPSK方式、又は16QAM方式、或いは32QAM方式など、Cキャリアを変調する同期変調方式の多値数より低い多値数の同期変調方式で変調するようにした点にある。
【0064】ここで、OFDM方式の場合、同期変調方式の多値数が多い程、雑音や基準信号ベクトルの歪みに弱くなり、従って、64QAM方式から32QAM方式、16QAM方式、それにQPSK方式の順に雑音や基準信号ベクトルの歪みに強くなっている。
【0065】そうすると、この第2の実施形態の場合も、歪みが特に大きなキャリアは雑音や基準信号ベクトルの歪みに弱い多値数の高い同期変調方式で変調されているCキャリアから除かれていて、Dキャリアに割り当てられていることになり、この結果、歪みが大きい基準信号ベクトルを用いるキャリアから復号された情報符号も含まれてしまう従来技術の場合に比較して、キャリアCから復号された情報符号の符号誤り率を低減することができる。
【0066】一方、この第2の実施形態の場合、Dキャリアについては、Cキャリアと同じ同期変調方式ではあっても、雑音や基準信号ベクトルの歪みに比較的に強い多値数の低い同期変調方式で変調されており、従って、このキャリアの基準信号ベクトルに大きな歪みが有っても、このキャリアをCキャリアに設定した場合に比較して、復号した情報符号の誤り率はそれほど高くならず、良好な情報符号を復号することができる。
【0067】なお、この第2の実施形態では、帯域の境界部のキャリアDの信号を復調するために、中央部のキャリアCの変調方式の復調回路とは異なる変調方式の復調回路が必要になる。しかし、境界部のキャリアの変調方式が同じ同期変調方式の場合、復調回路の信号点配置を変更するだけで同じ回路を共用することができるので、回路規模の増加はほとんど無視できる。
【0068】ここで、このDキャリアで伝送する情報符号の内容、及びキャリア構造における幅広い自由度については、この第2の実施形態でも、第1の実施形態と同じであるので、説明は省略するが、この第2の実施形態によるキャリア構造においても、第1の実施形態と同様、同期変調方式で変調されているキャリアから復号された情報符号の符号誤り率を充分に低減することができる。
【0069】次に、本発明の第3の実施形態について説明する。ここで、まず、この第3の実施形態でも、キャリア構造については第1と第2の実施形態と同じで、図1R>1、図2、図3に示したキャリア構造の何れかを用い、キャリアがCキャリアとDキャリアに分けてある点は同じである。
【0070】しかして、この第3の実施形態が、第1と第2の実施形態と異なる点は、これら分割したCキャリアで伝送される情報符号に付加すべき誤り訂正符号と、Dキャリアで伝送される情報符号に付加すべき誤り訂正符号を、異なった訂正能力にした点にある。
【0071】具体的には、このとき、Dキャリアで伝送する情報符号に用いる誤り訂正符号の訂正能力を、Cキャリアで伝送する情報符号に用いる誤り訂正符号の訂正能力よりも高くなるように構成したもので、例えばCキャリアで伝送する情報符号に対する誤り訂正符号には3/4の畳み込み符号を用い、Dキャリアで伝送する情報符号に用いる誤り訂正符号には3/4の畳み込み符号より訂正能力が高い1/2の畳み込み符号を用いている。
【0072】従って、この第3の実施形態の場合も、歪みが特に大きくなる虞れのあるキャリアは、雑音や基準信号ベクトルの歪みに弱く、訂正能力の低い誤り訂正符号を用いているCキャリアから除かれており、この結果、歪みの大きい基準信号ベクトルを用いるキャリアから復号された情報符号も含まれてしまう従来技術の場合に比較して、同期変調方式で変調されているキャリアから復号された情報符号の符号誤り率を低減することができる。
【0073】一方、Dキャリアにより伝送される情報符号には、Cキャリアで伝送する情報符号に用いられている誤り訂正符号より誤り訂正能力の高い誤り訂正符号が付加されているので、たとえ復号された情報符号に誤りが生じても、その誤りは高い精度で訂正できるため、良好な情報符号を復号することができる。
【0074】そして、この第3の実施形態でも、Dキャリアで伝送する情報符号の内容、及びキャリア構造における幅広い自由度については、第1の実施形態と同じであるので、説明は省略するが、この第3の実施形態によるキャリア構造においても、第1の実施形態と同様、同期変調方式で変調されているキャリアから復号された情報符号の符号誤り率を充分に低減することができる。
【0075】ここで、以上の説明では特に断らなかったが、境界領域の幅を規定する一定本数Mの値は、例えば64QAMで変調する場合を想定すると、内挿フィルタの歪みに対するS/Nと、64QAMで確保すべきC/Nの大きさから、SPキャリア間隔のおよそ5倍程度になるので、これから決定してやればよい。
【0076】また、以上の実施形態では、何れもパイロット信号が時間方向に間欠的にSPとして挿入されている場合についてだけ説明したが、パイロット信号が時間方向に連続的に挿入され、時間方向の内挿演算が不要なキャリア構造の場合についても同様に本発明が適用できることは明らかである。
【0077】
【発明の効果】本発明によれば、歪みの大きい基準信号ベクトルから再生したキャリアにより復号される符号を用いていないので、同期変調方式で変調されているキャリアから復号された情報符号の符号誤り率が充分に低減でき、同期変調方式を用いたOFDM方式の伝送装置を、回路規模の増加を伴うことなく容易に提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による直交周波数分割多重変調伝送装置の実施形態におけるキャリア配置の一例を示す説明図である。
【図2】本発明による直交周波数分割多重変調伝送装置の実施形態におけるキャリア配置の他の一例を示す説明図である。
【図3】本発明による直交周波数分割多重変調伝送装置の実施形態におけるキャリア配置の更に別の一例を示す説明図である。
【図4】地上ディジタル放送方式で採用されているキャリア構造の一例を示す説明図である。
【図5】地上ディジタル放送方式で採用されているキャリア配置の一例を示す説明図である。
【図6】64QAM方式における信号点配置の説明図である。
【図7】受信信号における基準信号ベクトルの位相回転の説明図である。
【図8】OFDM方式の従来技術において基準信号ベクトルの再生に使用されている回路の一例を示すブロック図である。
【図9】地上ディジタル放送方式で採用されているキャリア配置の一例を示す説明図である。
【図10】キャリアの時間方向の内挿について模式的に示した説明図である。
【図11】キャリアの周波数方向の内挿について模式的に示した説明図である。
【図12】キャリアの周波数方向の内挿における問題点の説明図である。
【図13】キャリアの周波数方向の内挿による歪み量の一例を示す特性図である。
【図14】大きな歪みを生じたときの信号点の位置の説明図である。
【符号の説明】
□ キャリア
D キャリヤの中で、同期検波による変調方式で変調されたキャリアの復調のための基準信号ベクトルの再生に用いるキャリアを除いた残りのキャリアの内の少なくとも一部のキャリア
SP キャリアのなかで、復調の際の基準信号の再生に使用されるパイロット信号となるキャリヤ
1、2、10、11 SPの位置
5 FFT回路
6 時間方向内挿回路
7 遅延回路
8 キャリア方向内挿回路
9 64QAM復調回路。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 位相が相互に直交した複数本の搬送波を同期検波が適用できる変調方式で変調することにより、情報符号を伝送する方式の直交周波数分割多重変調伝送装置において、前記複数本の搬送波を含む周波数帯域の両端から所定本数内にある搬送波の中で、前記同期検波が適用できる変調方式で変調された搬送波の復調のための基準信号ベクトルの再生に用いる搬送波を除いた残りの搬送波の内の少なくとも一部については、差動検波が適用できる変調方式で変調して伝送するように構成したことを特徴とする直交周波数分割多重変調伝送装置。
【請求項2】 位相が相互に直交した複数本の搬送波を同期検波が適用できる変調方式で変調することにより、情報符号を伝送する方式の直交周波数分割多重変調伝送装置において、前記複数本の搬送波を含む周波数帯域の両端から所定本数内にある搬送波の中で、前記同期検波が適用できる変調方式で変調された搬送波の復調のための基準信号ベクトルの再生に用いる搬送波を除いた残りの搬送波の内の少なくとも一部については、前記同期検波が適用できる変調方式における多値数よりも小さい多値数の同期検波が適用できる変調方式で変調して伝送するように構成したことを特徴とする直交周波数分割多重変調伝送装置。
【請求項3】 位相が相互に直交した複数本の搬送波を同期検波が適用できる変調方式で変調することにより、誤り訂正符号が付加された情報符号を伝送する方式の直交周波数分割多重変調伝送装置において、前記複数本の搬送波を含む周波数帯域の両端から所定本数内にある搬送波の中で、前記同期検波が適用できる変調方式で変調された搬送波の復調のための基準信号ベクトルの再生に用いる搬送波を除いた残りの搬送波の内の少なくとも一部により伝送される情報符号については、前記誤り訂正符号よりも訂正能力の高い誤り訂正符号を付加して伝送するように構成したことを特徴とする直交周波数分割多重変調伝送装置。
【請求項1】 位相が相互に直交した複数本の搬送波を同期検波が適用できる変調方式で変調することにより、情報符号を伝送する方式の直交周波数分割多重変調伝送装置において、前記複数本の搬送波を含む周波数帯域の両端から所定本数内にある搬送波の中で、前記同期検波が適用できる変調方式で変調された搬送波の復調のための基準信号ベクトルの再生に用いる搬送波を除いた残りの搬送波の内の少なくとも一部については、差動検波が適用できる変調方式で変調して伝送するように構成したことを特徴とする直交周波数分割多重変調伝送装置。
【請求項2】 位相が相互に直交した複数本の搬送波を同期検波が適用できる変調方式で変調することにより、情報符号を伝送する方式の直交周波数分割多重変調伝送装置において、前記複数本の搬送波を含む周波数帯域の両端から所定本数内にある搬送波の中で、前記同期検波が適用できる変調方式で変調された搬送波の復調のための基準信号ベクトルの再生に用いる搬送波を除いた残りの搬送波の内の少なくとも一部については、前記同期検波が適用できる変調方式における多値数よりも小さい多値数の同期検波が適用できる変調方式で変調して伝送するように構成したことを特徴とする直交周波数分割多重変調伝送装置。
【請求項3】 位相が相互に直交した複数本の搬送波を同期検波が適用できる変調方式で変調することにより、誤り訂正符号が付加された情報符号を伝送する方式の直交周波数分割多重変調伝送装置において、前記複数本の搬送波を含む周波数帯域の両端から所定本数内にある搬送波の中で、前記同期検波が適用できる変調方式で変調された搬送波の復調のための基準信号ベクトルの再生に用いる搬送波を除いた残りの搬送波の内の少なくとも一部により伝送される情報符号については、前記誤り訂正符号よりも訂正能力の高い誤り訂正符号を付加して伝送するように構成したことを特徴とする直交周波数分割多重変調伝送装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2002−9728(P2002−9728A)
【公開日】平成14年1月11日(2002.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2000−189870(P2000−189870)
【出願日】平成12年6月23日(2000.6.23)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【出願人】(000004352)日本放送協会 (2,206)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成14年1月11日(2002.1.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成12年6月23日(2000.6.23)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【出願人】(000004352)日本放送協会 (2,206)
【Fターム(参考)】
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