説明

直動案内ユニット

【課題】この直動案内ユニットは,転動体への潤滑剤の給油を方向転換路で行い,給油手段の構成を単純化し,確実に安定的に給油してメンテナンスフリーを達成する。
【解決手段】エンドキャップ4のケーシング3側の端面47に凹部31を形成し,凹部31に方向転換路30に連通する開口部37を形成する。多孔質成形体25は,凹部31の平部49や深部40に嵌入される貯留部20,連係部28に嵌合される連係供給部19,及びスペーサ7の嵌合凹溝22に嵌合する突出部26を備えている。凹部31に潤滑剤含浸の多孔質成形体25を配設し,突出部26の先端面の露出面39を方向転換路30の開口部37に露出させる。方向転換路30を転走するローラ5は,突出部26の露出面39に接触し,突出部26を通じてローラ5に潤滑剤が給油され,軌道路38を転動するローラ5が給油される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は,長尺な軌道レール及び該軌道レール上を転動体を介して相対移動するスライダから構成された直動案内ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
近年,直動案内ユニットは,半導体製造装置,工作機械,産業用ロボット等における直線往復運動機構等の各種装置の摺動部への適用が拡大している現状であり,通常,循環路において転動体に対して潤滑をスムーズにするため,潤滑剤を給油口から定期的に給油している。しかしながら,各種装置について,省エネで,ランニングコストや設備維持コストを削減するという観点からメンテナンスフリーが要求されるようになり,各種装置に組み込まれる直動案内ユニットについても,使用状態において潤滑剤の供給を行わないメンテナンスフリーの実現が要望されると共に,潤滑剤の使用量を最小限に抑えることが益々求められ,特に,転動体がローラタイプの直動案内ユニットに対して要望されている。そこで,直動案内ユニットについて,潤滑剤を適正に転動体に付着させて循環路を転動する転動体に対して金属同士の接触を防止し,耐久性を向上させるため,転動体へ潤滑剤を常に供給して潤滑させることが不可欠である。
【0003】
本出願人は,直動案内ユニットとして,転動体への潤滑剤の給油を方向転換路において行い,給油手段の構成を単純化し,確実に安定的に給油してメンテナンスフリーを達成したものを先に開発して特許出願した。該直動案内ユニットは,エンドキャップには,エンドシール側の端面に形成された凹部内に潤滑剤を含浸した多孔質成形体を嵌合し,エンドキャップの方向転換路の一部を開口して形成された開口部から方向転換路に多孔質成形体を露出状態に配置し,方向転換路を転走する転動体を多孔質成形体に接触させて転動体に潤滑剤を給油して潤滑するものである(例えば,特許文献1参照)。
【0004】
従来,潤滑剤含有ポリマ部材をを用いた潤滑リニアガイド装置が知られている。該潤滑リニアガイド装置は,エンドキャップ内の転動体循環路となる湾曲路の一部である内壁部を構成するリターンガイドを補強材と潤滑材含有ポリマで構成し,これをエンドキャップ裏側の半円柱状の凹溝に嵌合させている。方向転換路内の内周側に設けたリターンガイドは,チタン酸カリウムウィスカーからなる補強材と潤滑材含有ポリマとを金型で一体成形にて構成されている。上記リターンガイドは,機械的強度を向上させるのに補強材が占める割合を大きくしているため,潤滑剤を滲み出させる潤滑材含有ポリマ部分が小さくなって潤滑剤の含油量が不足すると共に,潤滑材含有ポリマ部材における潤滑剤が滲み出した後にポリマが収縮して潤滑材含有ポリマ部材内部での潤滑剤の流れが阻止され,転動体への潤滑剤の供給が少なくなるという問題を有している(例えば,特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−82433号公報
【特許文献2】特開平10−78032号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで,超小型,例えば,軌道レールの幅が12mmと小さな4条列のころを使用した超小形に構成した直動案内ユニットについて,本出願人に係る特許文献1と同様に,エンドキャップの方向転換路内において,エンドキャップのエンドシール側の端面に多孔質成形体を配設した場合に,多孔質成形体で形成されている貯油板の突出部をエンドキャップの開口部から方向転換路に露出させる構造を検討した。しかしながら,上記直動案内ユニットでは,エンドキャップのエンドシール側の端面には,軌道路において転動体の脱落を防止する保持板をスライダに保持する保持バンドの端部を係止するため保持バンド溝が形成されている。そのため,エンドキャップにおける保持バンド溝の占有スペースが大きくなっており,多孔質成形体における潤滑剤を貯蔵する貯留部と転動体に接触させる突出部とを大きく構成することができないので,それらを大きくすれば機械的強度を保つことができなくなることが分かった。しかも,多孔質成形体の突出部には,絶えず転動体が繰り返し衝突するため,多孔質成形体の突出部は,転動体の衝撃力に耐えるような機械的強度が強いものが求められている。
【0007】
また,従来の直動案内ユニットには,転動体としてローラを使用するタイプがあるが,転動体がローラである従来の直動案内ユニットでは,転動体がボールである場合に比較して,ローラの姿勢を傾き無く整然と案内するため,ローラの転動面を案内するだけでなく,ローラの端面を摺接案内する必要があり,長期間にわたってローラを循環案内し,給油のメンテナンスフリーを安定させるには不充分であった。そこで,直動案内ユニットについて,長期間にわたって転動体のローラを滑らかに循環案内し,充分な給油を確保し,安定した給油を行うことができる簡単な構成をしたものが要望されていた。
【0008】
この発明の目的は,上記の課題を解決することであり,半導体製造装置,工作機械,産業用ロボット等の往復運動機構に使用される転動体のころ即ちローラを使用し,例えば,ローラの脱落を防止する保持板を保持する保持バンドを備えた直動案内ユニットにおいて,エンドキャップのエンドシール側の端面に保持バンド溝を形成したようなスペース上構成が厳しくても,エンドキャップのケーシング側の端面に凹部を形成し,凹部に潤滑剤を含浸した多孔質成形体を嵌入配設し,エンドキャップ本体の嵌入凹部に嵌合したスペーサに方向転換路に開口する開口部を形成してスペース上の問題を解決し,転動体への潤滑剤の給油を方向転換路内で行い,給油手段の構成を単純化し,更に,深部の凹部に追従して体積が可及的に大きくなる形状に多孔質成形体に潤滑剤の貯留部を形成し,エンドキャップが小形であっても多孔質成形体に十分な潤滑剤を含浸できる構造に構成し,転動体へ確実に安定的に給油を行ってメンテナンスフリーを実現し,転動体への給油を長期にわたって確実に容易に安定して達成できる直動案内ユニットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は,長手方向に沿って一対の第1軌道面が形成された軌道レール,及び前記軌道レールの長手方向に摺動自在なスライダから成り,前記スライダは,前記軌道レールの前記一対の第1軌道面に対向して一対の第2軌道面が形成され且つ前記第2軌道面と前記第1軌道面との間に形成される一対の軌道路に沿って延びる一対のリターン路が形成されたケーシング,前記ケーシングの両端面にそれぞれ取り付けられ且つ前記軌道路と前記リターン路とを連通する方向転換路が形成されたエンドキャップ,前記エンドキャップの両端面にそれぞれ配設されたエンドシール,並びに前記軌道路,前記リターン路及び一対の前記方向転換路で構成される循環路を転走する複数のローラでなる転動体を有する直動案内ユニットにおいて,
前記エンドキャップには,前記ケーシング側の端面に形成された凹部内に潤滑剤を含浸した多孔質成形体が嵌入配設されており,前記エンドキャップの前記方向転換路の一部を開口して形成された一対の開口部を通じて前記多孔質成形体を前記方向転換路に露出状態に配置し,前記方向転換路を転走する前記転動体が露出状態の前記多孔質成形体の少なくとも一方の露出面に接して前記潤滑剤が前記転動体に給油されることを特徴とする直動案内ユニットに関する。
【0010】
前記エンドキャップは,前記方向転換路の周面(即ち,一方が内周面で他方が外周面)を形成する一対のスペーサと前記方向転換路の外周面を形成するエンドキャップ本体とから構成され,前記スペーサには,前記多孔質成形体の一部を嵌合する嵌合凹溝と前記嵌合溝に連通する前記開口部が形成されており,前記一対のスペーサは,前記エンドキャップ本体の嵌合凹部に嵌入配設される第1スペーサと前記第1スペーサに嵌入配設される第2スペーサとから構成されている。
【0011】
前記一対のスペーサは,前記転動体が方向を転換する円弧部分と,前記円弧部分の両端と一体構造であって前記リターン路に連通するストレート部分とからそれぞれ形成され,前記ストレート部分の端面には前記嵌合凹溝が形成され,前記ストレート部分の側面には前記多孔質成形体を前記方向転換路に露出させる前記開口部が開口している。
【0012】
前記エンドキャップ本体に形成された前記凹部は,前記エンドキャップ本体の上部に広がる平部,前記平部と連通した摺動方向に延びる一対の深部,前記平部から前記スペーサの前記嵌合溝へとそれぞれ延びる一対の連係部,及び前記平部と前記連係部との底部に連通状態に形成され且つ前記エンドキャップ本体の前記上部に形成された給油口と連通する給油溝から構成されている。
【0013】
前記多孔質成形体は,前記潤滑剤を貯留するため前記深部にそれぞれ嵌合する一対の第1貯留部,前記潤滑剤を貯留するため前記平部に嵌合する平板状の第2貯留部,前記連係部にそれぞれ嵌合する一対の連係供給部,前記連係供給部から延びて前記一対のスペーサに形成された前記嵌合溝にそれぞれ嵌合し且つ前記スペーサの前記開口部へとそれぞれ延びる前記潤滑剤を前記転動体へ供給する一対の突出部を備えている。
【0014】
前記転動体は,前記方向転換路内を転走することによって前記多孔質成形体の前記突出部の先端部分の前記露出面に接触して潤滑される。
【0015】
前記エンドキャップ本体に形成された前記給油溝は,前記多孔質成形体を前記エンドキャップ本体の前記凹部に嵌合することによって潤滑油供給路を形成するものである。
【0016】
前記第1スペーサと前記第2スペーサとの前記ストレート部の外面に形成した凹部は,前記転動体の転走方向に対し,前記凹部の中央部は平面状に且つ前記凹部の両端部は円弧状に形成され,前記潤滑剤の油溜まりとなるものである。
【0017】
前記多孔質成形体の前記突出部の前記露出面の長さは前記転動体であるローラの直径の1.0倍〜1.5倍の範囲のサイズを有し,前記多孔質成形体の前記突出部の前記露出面の幅は前記転動体であるローラの長さの30〜50%の範囲のサイズを有している。
【0018】
前記多孔質成形体は,ポリエチレン又はポリプロピレンから成る超高分子量の合成樹脂微粒子を加熱成形した焼結樹脂で形成され,前記合成樹脂微粒子間が連通状態に保形された多孔部に形成され,前記多孔部に前記潤滑剤が含浸されている。
【0019】
この直動案内ユニットは,前記エンドキャップ本体の前記エンドシール側の前記端面には,前記軌道路において前記転動体の脱落を防止する保持板を前記スライダに保持する保持バンドを嵌入して係止するための保持バンド溝が形成されているものである。
【発明の効果】
【0020】
この発明による直動案内ユニットは,上記のように,循環路を転走するローラの転動体への給油をスライダに設けた方向転換路において行うように構成するものであり,エンドキャップのエンドシール側の端面に保持バンド溝を形成したスペース上厳しい構成でも,エンドキャップのケーシング側の端面に形成した凹部に潤滑剤を含浸した多孔質成形体を嵌入配設し,エンドキャップを構成するスペーサに形成された開口部を通じて多孔質成形体の突出部の先端面を方向転換路に露出させ,露出状態の多孔質成形体の少なくとも一方の露出面に方向転換路を転走する転動体を接触させて転動体に潤滑剤を給油し,潤滑剤の転動体への給油のメンテナンスフリーを実現し,給油手段の構造そのものを簡素にシンプルに構成し,転動体への給油を確実に容易に安定して達成することができる。また,この直動案内ユニットでは,両サイドのエンドキャップに多孔質成形体を設けなくても,片側のエンドキャップのみに多孔質成形体を設けるだけで4条の軌道に全て潤滑剤を供給することができ,その場合にはコストを低減でき,再給油の際も両サイドの二箇所のエンドキャップから行わなくてもよく,1箇所だけで再給油することもできる。また,この直動案内ユニットは,高タクトで使用条件が厳しい場合等では,焼き付き防止のため両側のエンドキャップに二箇所取り付けることにより,転動体への潤滑量を多くすることもでき,潤滑剤供給溝を多孔質成形体で覆って,潤滑剤供給路を構成するので,潤滑剤の漏れ防止になり,多孔質成形体が循環路供給溝を通る潤滑剤に接するため,多孔質成形体は潤滑剤からの油分の補給も可能となる。更に,この直動案内ユニットは,エンドキャップにおける方向転換路が位置していない領域に多孔質成形体の貯留部を位置させて貯留部を可及的に体積を大きく形成し,転動体が多孔質成形体の突出部の露出面に接触して転走することによって,潤滑剤が貯留部から突出部を導出して転動体に潤滑剤を付着させて給油させることができ,極めて簡潔な構成であるにもかかわらず,長期間にわたって極めて容易に安定して転動体に潤滑剤を供給でき,転動体への給油のメンテナンスフリーを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】この発明による直動案内ユニットの一実施例を示し,エンドキャップの給油手段である多孔質成形体をエンドキャップの凹部に嵌入配設した左側の要部を示す斜視図である。
【図2】エンドキャップの凹部に組み込んだスペーサに多孔質成形体を嵌入配設し,スペーサの開口部から露出する多孔質成形体の転動体への露出面を示す図1のA−A断面の拡大斜視図である。
【図3】図1のエンドキャップに多孔質成形体を配設する状態を示し,(A)はエンドキャップの凹部に多孔質成形体を配設する前の状態を示し,(B)はエンドキャップの凹部に多孔質成形体を嵌入配設した状態を示す斜視図である。
【図4】図1のエンドキャップの凹部に多孔質成形体を配設した左側状態を示す斜視図である。
【図5】図4のエンドキャップのB−B断面を破断して示す説明図である。
【図6】この発明による直動案内ユニットの一実施例を示し,エンドキャップのケーシング側の端面を示す正面図であり,左側に方向転換路の状態を説明する図を示す。
【図7】図6のエンドキャップにおけるエンドキャップ本体のケーシング側の端面を示す正面図である。
【図8】図6のエンドキャップ本体の嵌入凹部に嵌入配設される第1スペーサを示し,(A)は平面図であり,(B)は側面図である。
【図9】図8の第1スペーサに嵌入配設される第2スペーサを示し,(A)は平面図であり,(B)は側面図である。
【図10】多孔質成形体の一実施例を示し,(A)は平面図であり,(B)は側面図である。
【図11】この発明による直動案内ユニットの別の実施例を示し,エンドキャップの凹部に別の実施例の多孔質成形体を嵌入配設した状態を示す平面図である。
【図12】この発明による直動案内ユニットの方向転換路における転走する転動体への潤滑状態を示し,(A)は転動体の側面方向を示し,(B)は転動体の平面方向を示す説明図である。
【図13】この発明による直動案内ユニットの全体図を示す側面図である。
【図14】図13の直動案内ユニットを示す平面図である。
【図15】図13の直動案内ユニットを示す正面図である。
【図16】図13の直動案内ユニットにおけるスライダからエンドキャップを取り外した状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
この発明による直動案内ユニットは,主として,ローラである転動体に対してエンドキャップに形成された方向転換路において潤滑剤を含浸した多孔質成形体を介して潤滑剤を長期間にわたって確実に給油するメンテナンスフリーを達成したものである。この実施例は,転動体への潤滑剤の給油手段を円筒ころのローラが使用されているタイプについて説明しているが,転動体がボールの場合にも同様に方向転換路において給油するように構成することもできる。
【0023】
以下,図面を参照して,この発明による直動案内ユニットの実施例について説明する。まず,図13〜図16を参照して,この直動案内ユニットについて,基本構成を概略的に説明する。この直動案内ユニットは,幅方向両側面42の長手方向に沿って一対の軌道面11(第1軌道面)がそれぞれ形成された長尺状の軌道レール1,軌道レール1に両袖部41が跨架して軌道レール1の長手方向に転動体のローラ5を介して摺動自在なスライダ2,並びに軌道レール1とスライダ2との間に形成される負荷軌道路である軌道路38,軌道路38に平行に延びるスライダ2に設けられたリターン路10,及び軌道路38とリターン路10とを連通する方向転換路30から成る循環路45を転走するローラ5を有している。スライダ2は,主として,軌道レール1の軌道面11に対向して袖部50にそれぞれ形成された一対の軌道面12(第2軌道面)と軌道面12に平行なリターン路10が形成されたケーシング3,ケーシング3の摺動方向両端面35に形成されたねじ穴21にねじ44を螺入して固定され且つ軌道面11,12間に形成された上下の軌道路38と上下のリターン路10とを連通する方向転換路30(30A,30B)が形成されたエンドキャップ4,エンドキャップ4の摺動方向外側の端面47に配置され且つ軌道レール1とスライダ2との隙間をシールするリップ部16を備えたエンドシール15,及び循環路45を転走する複数のローラ5を有している。この直動案内ユニットは,スライダ2の両袖部50には,一対の循環路45がそれぞれ形成されている。一対の循環路45のうち,一方の循環路45を転走するローラ5は,スライダ2の下方向の負荷を受けるケーシング3の下側の軌道路38からケーシング3の上側のリターン路10に循環し,また,他方の循環路45を転走するローラ5は,スライダ2の上方向の負荷を受けるケーシング3の上側の軌道路38から下側のリターン路10に循環して構成されている。また,軌道レール1には,ベース等に固定するための取付け用孔17が形成され,ケーシング3には他部材を固定するための取付け用ねじ孔18が形成され,スライダ2の下面には下面シール14が取り付けられている。
【0024】
方向転換路30(30A,30B)は,エンドキャップ4の袖部48に形成されており,エンドキャップ4の両袖部48において,方向転換路30Aと方向転換路30Bとがたすき掛けに交差状態にそれぞれ形成されている。エンドキャップ4は,方向転換路30の周面を形成する一対のスペーサ7と方向転換路30の外周面を形成するエンドキャップ本体8とから構成されている。図8及び図9に示すように,一対のスペーサ7は,エンドキャップ本体8の嵌合凹部46に嵌入する大きいスペーサ7A(第1スペーサ)と,スペーサ7Aの嵌合凹部36に嵌入する小さいスペーサ7B(第2スペーサ)とから構成されている。図8には,大きいサイズのスペーサ7Aが示されており,スペーサ7Aには,ストレート部51Aの外面に凹部52Aが形成され,ローラ5の転走方向に対し,凹部52Aの中央部は平面状に且つ両端部は円弧状に形成され,潤滑剤の油溜まりとなっている。図9には,スペーサ7Aに嵌合した小さいサイズのスペーサ7Bが示されており,ストレート部51Bの外面に凹部52Bが形成され,ローラ5の転走方向に対し,凹部52Bの中央部は平面状に且つ両端部は円弧状に形成され,潤滑剤の油溜まりとなっている。スペーサ7Aは,エンドキャップ4の嵌合凹部46で形成された外側の方向転換路30Aの内周面と,内側の方向転換路30Bの外周面の一部とを形成しており,スペーサ7Bは,内側の方向転換路30Bの内周面を形成している。スペーサ7Aとスペーサ7Bとは,方向転換路30A,30Bとが互いに交差状態に組み合わされるように配設されている。一対のスペーサ7には,それぞれ多孔質成形体25の突出部26が嵌入する嵌合凹溝22が形成されており,嵌合凹溝22には多孔質成形体25の一部が嵌入配設される。
【0025】
エンドキャップ4の背面において,エンドキャップ本体8に形成された嵌合凹部46に一対のスペーサ7が方向転換路30の周面(即ち,スペーサ7Aが外周面,スペーサ7Bが内周面)を形成する状態で互いに交差状態に組み合わさってそれぞれ配設されている。具体的には,スペーサ7Aは,外側の方向転換路30Aの内周面と内側の方向転換路30Bの外周面の一部分とを形成している。また,スペーサ7Bは,内側方向転換路30Bの内周面を形成している。即ち,エンドキャップ本体8の左側の袖部48における嵌合凹部46に,まず,大きいサイズのスペーサ7Aを嵌入し,次いで,スペーサ7Aに交差状態に小さいサイズのスペーサ7Bを嵌入し,それによって,左側の袖部48には,短円状でなる内側方向転換路30Bと長円状でなる外側方向転換路30Aとが交差状態に互い違いに形成される。そして,外側方向転換路30Aは,外周面を形成するエンドキャップ本体8と内周面を形成するスペーサ7Aとが共働して形成され,また,内側方向転換路30Bは,外周面を形成するエンドキャップ本体8及びスペーサ7Aと内周面を形成するスペーサ7Bとが共働して形成されている。
【0026】
また,循環路45は,負荷路である軌道路38,リターン路10,エンドキャップ本体8とスペーサ7Aで形成された長円状の外側方向転換路30A,並びにエンドキャップ本体8,スペーサ7A及びスペーサ7Bで形成された短円状の内側方向転換路30Bによってそれぞれ形成される。また,エンドキャップ4の左右側即ち摺動方向に直交する方向では,内側方向転換路30Aと外側方向転換路30Bとの交差状態が互い違いの構造に構成されている。従って,方向転換路30では,ケーシング3の右側の袖部41において,外側方向転換路30Aが下側の軌道路38と上側のリターン路10とを連通するように形成され,また,内側方向転換路30Bが上側の軌道路38と下側のリターン路10とを連通するように形成されている。また,ケーシング3の左側の袖部41において,外側方向転換路30Aが上側の軌道路38と下側のリターン路10とを連通するように形成され,また,内側方向転換路30Bが下側の軌道路38と上側のリターン路10とを連通するように形成されている。
【0027】
エンドキャップ本体8には,リターン路10に接続する連結凸部33が形成されている。連結凸部33は,方向転換路30の外周面側に形成され,スペーサ7と共働してリターン路10へと連通し,エンドキャップ4の方向転換路30とケーシング3のリターン路10とが滑らかに連通している。エンドキャップ4には,中央部にグリースニップル43がねじ込まれる給油口29が形成され,必要以外の給油口29は埋栓を配設して閉鎖している。また,エンドキャップ4は,ケーシング3に対して位置決めされて固定されるので,スリーブ6がエンドキャップ4の連結凸部33に当接することによってスリーブ6とエンドキャップ4とが位置合わせされ,ケーシング3のリターン路10とエンドキャップ4の連結凸部33とは合致するようになる。従って,スリーブ6とエンドキャップ4の連結凸部33とが端面同士が当接することによって,リターン路10と方向転換路30との断面矩形状の循環路45が段差無く接続されている。エンドキャップ4に形成された方向転換路30とケーシング3の嵌挿孔9に嵌合したスリーブ6に形成されたリターン路10とが段差無く連通することにより,ローラ5は,方向転換路30からリターン路10へ,及びリターン路10から方向転換路30へとスムーズに転動循環することができる。
【0028】
この直動案内ユニットは,転動体がローラ5でなる小形の直動案内ユニットであり,軌道路38を転走するローラ5は,保持板13によって保持され,スライダ2を軌道レール1から外した場合に,スライダ2からローラ5が脱落しないように構成されており,保持板13は,保持バンド23によりケーシング3の軌道路38に保持され,保持バンド23の両端がエンドキャップ4の保持バンド溝34に嵌入して係止することによって,スライダ2に固着されている。
【0029】
特に,図1〜図10を参照して,この直動案内ユニットについての特徴とする構成について説明する。この直動案内ユニットは,特に,スライダ2を構成するエンドキャップ4のケーシング3側の端面47に形成された凹部31に潤滑剤を含浸した多孔質成形体25を配設し,多孔質成形体25から方向転換路30を転走するローラ5に潤滑剤を給油することに特徴を有している。凹部31は,端面47から形成された外側枠部24と内側枠部24Aに囲まれて形成された領域に位置しており,エンドキャップ4の左右両側に形成されているので,多孔質成形体25は,左右両側の凹部31に跨がって延びて嵌合されている。この実施例では,エンドキャップ4自体が小形に形成されているので,凹部31は,エンドキャップ4の幅方向即ち摺動方向に直交する方向の左右両側に延びて形成されている。また,凹部31は,エンドキャップ本体8に形成された給油口29の両側の摺動方向に延びる深さが大きい深部40,深部40から端面47側に広がる平部49,平部49に連通してスペーサ7の嵌合凹溝22へと延びる連係部28,及び連係部28と連通してスペーサ7を嵌合する嵌合凹部46が形成されている。更に,方向転換路30に開口する開口部37は,エンドキャップ本体8の嵌合凹部46に嵌入配設されたスペーサ7に形成されている。開口部37は,長方形状に形成されており,開口部37には,多孔質成形体25の突出部26の先端部の露出面39が露出すると共に,露出面39に隣接してスペーサ7の嵌合凹溝22の底部でなる油孔54が開口している。従って,エンドキャップ4がケーシング3の両端面35に固着されているので,それぞれ一対の循環路45について,それぞれの循環路45では外側方向転換路30A及び/又は内側方向転換路30Bを通じて潤滑剤が給油されるものになっている。
【0030】
多孔質成形体25は,特に,図10に示すように,凹部31内に嵌合する形状に形成されており,凹部31における平板状の平部49及び平部49と連通した摺動方向転換路に延びる深部40に嵌入して潤滑剤を多量に貯留する貯留部20を形成する第1貯留部20A,潤滑剤を貯留するため平部49に嵌合する平板状の貯留部20を形成する第2貯留部20B,連係部28にそれぞれ嵌合して下方へ延びる平らな一対の連係供給部19,及び連係供給部19に一体に構成されて突出し且つスペーサ7の嵌合凹溝22に嵌合して方向転換路30の開口部37へ潤滑剤を導出する導出部を構成する突出部26を備えている。突出部26は,八の字状に枝分かれしており,上側と下側の方向転換路30へと分かれ,その先端部がローラ5との露出面39に構成されている。突出部26の露出面39は,スペーサ7の嵌合凹溝22に設けた凹部52Aより僅かに出っ張っており,ローラ5に接触することにより,潤滑剤を供給するように嵌入配設されている。なお,スペーサ7に配設した露出面39とストレート部51Aとのつなぎ部には,段差が無く面一となっており,ローラ5が引っ掛かったりすることがなく,ローラ5がスムーズに循環する。また,多孔質成形体25の貯留部20は,エンドキャップ4の両側部即ち袖部48に形成された方向転換路30が位置していない領域の上部27に形成された平部49と深部40に嵌入して位置しており,エンドキャップ4に形成された凹部31に追従して可及的に体積が大きくなるように形成されている。エンドキャップ4の上部27のケーシング3側の領域は,その中央部に給油口29が形成されており,その周囲は外側枠体24及び内側枠体24Aで囲まれており,十分な剛性と強度を確保できているので,大きな肉ぬすみを形成することができ,深部40や平部49を深さの深い状態に形成することができる。従って,貯留部20は,具体的には,エンドキャップ4の中央部に形成された給油口29と方向転換路30が位置していない領域に形成された平部49と,給油口29に沿って摺動方向に延びる深部40に位置し,可及的に大きな体積に形成されている。
【0031】
多孔質成形体25は,潤滑剤を最大限に含浸できるように,可及的に体積を大きくするために,凹部31の深部40と平部49を最大限に利用する形状に対応して嵌合する貯留部20が設けられている。また,エンドキャップ4の右側の凹部31に嵌合された多孔質成形体25は,ローラ5に対する露出面39を備えた突出部26が二股に拡がって,言い換えれば,先端に向って八の字状に拡がって形成されている。また,エンドキャップ4の左側の凹部31に嵌合された多孔質成形体25は,ローラ5に対する露出面39を備えた突出部26が下部に形成されている。従って,この直動案内ユニットが小形に構成されたとしても,多孔質成形体25には多量の潤滑剤が貯留部20に保留できるものになっており,凹部31に多孔質成形体25を嵌合するだけで,長期にわたる潤滑のメンテナンスフリーが実現できるものになっている。
【0032】
多孔質成形体25は,保持バンド溝34が形成されたエンドシール15側の端面47とは反対側のケーシング3側の端面47に形成されているので,スライダ2の組み立てにあたっては,エンドキャップ4をケーシング3の端面35に配設するのに先立って,多孔質成形体25をエンドキャップ4の凹部31に嵌入し係止し,次いでエンドキャップ4をケーシング3の端面35に固定すればよく,多孔質成形体25は,エンドキャップ4の凹部31に嵌合した状態でスライダ2に組み込むことができるように構成されている。
【0033】
また,多孔質成形体25は,超高分子量の合成樹脂微粒子を加熱成形された焼結樹脂で形成され,焼結樹脂の合成樹脂微粒子間が連通状態に保形された多孔部に形成されており,潤滑剤が多孔部に含浸されて構成されている。従って,多孔質成形体25の潤滑剤の保持性が良好になっているので,凹部31に多孔質成形体25を嵌合するだけで,澗滑剤が自然に漏れ出てしまう現象が無いものになっている。また,合成樹脂微粒子が,ポリエチレン又はポリプロピレンからなる場合には,多孔質成形体25は,成形体として寸法精度も高精度に形成でき,複雑な形状でなる凹部31への嵌合が適合可能になり,ローラ5と接触する部分での多孔即ちポアへの目詰まりが無く,接触するローラ5へ潤滑剤を限りなく安定して給油できるものになっている。また,多孔質成形体25の突出部26に形成された露出面39は,ローラ5の方向転換路30を転走する方向に沿って細長形状に形成されており,例えば,多孔質成形体25の突出部26の露出面39の長さは,ローラ5の直径の1.0倍〜1.5倍の範囲のサイズを有し,多孔質成形体25の突出部26の露出面39の幅は,ローラ5の長さの30〜50%の範囲のサイズを有している。それによって,転走するローラ5が露出面39に接触している時間を長くすることができ,ローラ5へ潤滑剤を限りなく安定して給油できるものになっている。
【0034】
図12には,リターン路10を構成するスリーブ6と方向転換路30との境界領域においてローラ5が多孔質成形体25の突出部26に接する状態が示されている。ローラ5は,方向転換路30内で,千鳥状態になって転走することによって内周部分にある多孔質成形体30の突出部26に接触し,その表面から染み出す潤滑剤により潤滑されることになる。ローラ5は,例えば,直径1.6mmであり,長さ2.1mmである。多孔質成形体25の突出部26の露出面39の長さが1.9mmであり,ローラ5の径の約1.2倍であり,接触幅が0.8mmであり,ローラ5の長さの約40%を占めている。
【0035】
ケーシング3に形成されたリターン路10は,スライダ2を構成するケーシング3に形成された嵌挿孔9に嵌挿された長手状でなるスリーブ6の通し孔で形成されている。スリーブ6は,合成樹脂製であって,ケーシング3の嵌挿孔9に遊嵌状態に配設されており,ケーシング3の両端面35に配置されたエンドキャップ4の連結凸部33によってスライダ2に固定状態に取り付けられている。また,図7に示すように,エンドキャップ4のエンドキャップ本体8の凹部31には,グリースニップル等がねじ込まれ配設される中央に形成された給油口29,及び給油口29から連通して左右の袖部48へと延びる円弧状の給油溝32が形成されており,円弧状の給油溝32からは,方向転換路30へ延びる幅の狭い給油溝32が形成されている。給油溝32は多孔質成形体25をエンドキャップ本体8の凹部31に嵌合することによって潤滑油供給路を形成し,従来と同様にスペーサ7に設けた油孔54を通して循環路45に潤滑剤が給油できるものになっている。また,多孔質成形体25は,貯留部20を備えて十分な潤滑剤を長期にわたって供給できるので,場合によっては,潤滑剤を補給するための給油口29及び給油溝32は,場合によっては設けなくてもよいものである。一方,多孔質成形体25が給油溝32を通る潤滑剤に接するため,多孔質成形体25には給油溝32内の潤滑剤からの油分が補給され,潤滑のメンテナンスフリーの期間を更に延長することが可能に成る。
【0036】
次に,図11を参照して,エンドキャップ4の凹部31に嵌入配設する多孔質成形体25の別の実施例を説明する。別の実施例では,多孔質成形体25は,スペーサ7の第1スペーサ7に嵌入配設される一方の突出部26が短く形成され,スペーサ7Aの開口部37に届かない長さに形成されている。図11に示す実施例では,下側の軌道路38用の突起部26の長さを短くし,そなため方向転換路30を転走するローラ5との間に隙間53が存在し,突出部26の先端部である露出部39が転走するローラ5に接触しない,言い換えれば,露出面39を無くしたタイプであるが,逆に上側の軌道路38用の突起部26の長さを短くしてもよいことは勿論である。直動案内ユニットの使用状況により,多孔質成形体25の潤滑剤が早く出過ぎて,残油量が少なくなる場合等は,このように接触部を削減することにより,潤滑量を調整することができる。このタイプの場合には,スペーサ7のストレート部に構成される嵌合凹溝22を無くして隙間53を埋め,ローラ5が嵌合凹溝22に引っかからないように構成することもできる。また,このタイプでは,突出部26からローラ5に供給される潤滑剤は,ケーシング3の反対側の端面35において,方向転換路30に同じ形状の多孔質成形体25の突出部26が形成されているので,1つの循環路45を通してみれば,潤滑剤がスペーサ7のいずれかの開口部37からローラ5に供給されることになる。
【0037】
この直動案内ユニットは,上記のように,潤滑剤を含浸した多孔質成形体25をエンドキャップ4のケーシング3側の端面47の凹部31に嵌合して配設するだけで,ローラ5に給油することを可能にした簡素で簡単な構成になっている。また,ローラ5への給油の目的は,直動案内ユニットが負荷を受ける軌道路38に潤滑剤を供給されることであり,方向転換路30を通るローラ5が給油を受けることによって,給油された状態即ち潤滑剤が塗布された状態のローラ5が軌道路38に循環することによって達成されることになる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
この発明による直動案内ユニットは,工作機械,各種組立装置,搬送機械,各種ロボット,半導体製造装置,精密機械,測定・検査装置,医療機器,マイクロマシーン等の各種装置における摺動部に組み込んで利用され,潤滑剤のメンテナンスフリーを達成し,転動体への良好な潤滑,循環路での転動体の滑らかな転走を発揮できる。
【符号の説明】
【0039】
1 軌道レール
2 スライダ
3 ケーシング
4 エンドキャップ
5 ローラ(転動体)
7 スペーサ
7A 第1スペーサ
7B 第2スペーサ
8 エンドキャップ本体
10 リターン路
11 軌道面(第1軌道面)
12 軌道面(第2軌道面)
13 保持板
15 エンドシール
19 連係供給部
20 貯留部
20A 第1貯留部
20B 第2貯留部
22 嵌合凹溝
23 保持バンド
25 多孔質成形体
26 突出部
27 上部
28 凹部の連係部
29 給油口
30 方向転換路
30A 外側方向転換路
30B 内側方向転換路
31 凹部
32 給油溝
34 保持バンド溝
35 端面
37 開口部
38 軌道路
39 露出面
40 深部
45 循環路
46 嵌合凹部
47 端面
49 平部
51A,51B ストレート部
52A,52B 凹部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に沿って一対の第1軌道面が形成された軌道レール,及び前記軌道レールの長手方向に摺動自在なスライダから成り,
前記スライダは,前記軌道レールの前記一対の第1軌道面に対向して一対の第2軌道面が形成され且つ前記第2軌道面と前記第1軌道面との間に形成される一対の軌道路に沿って延びる一対のリターン路が形成されたケーシング,前記ケーシングの両端面にそれぞれ取り付けられ且つ前記軌道路と前記リターン路とを連通する方向転換路が形成されたエンドキャップ,前記エンドキャップの両端面にそれぞれ配設されたエンドシール,並びに前記軌道路,前記リターン路及び一対の前記方向転換路で構成される循環路を転走する複数のローラでなる転動体を有する直動案内ユニットにおいて,
前記エンドキャップには,前記ケーシング側の端面に形成された凹部内に潤滑剤を含浸した多孔質成形体が嵌入配設されており,
前記エンドキャップの前記方向転換路の一部を開口して形成された一対の開口部を通じて前記多孔質成形体を前記方向転換路に露出状態に配置し,前記方向転換路を転走する前記転動体が露出状態の前記多孔質成形体の少なくとも一方の露出面に接して前記潤滑剤が前記転動体に給油されることを特徴とする直動案内ユニット。
【請求項2】
前記エンドキャップは,前記方向転換路の周面を形成する一対のスペーサと前記方向転換路の外周面を形成するエンドキャップ本体とから構成され,前記スペーサには,前記多孔質成形体の一部を嵌合する嵌合凹溝と前記嵌合溝に連通する前記開口部が形成されており,前記一対のスペーサは,前記エンドキャップ本体の嵌合凹部に嵌入配設される第1スペーサと前記第1スペーサに嵌入配設される第2スペーサとから構成されていることを特徴とする請求項1に記載の直動案内ユニット。
【請求項3】
前記一対のスペーサは,前記転動体が方向を転換する円弧部分と,前記円弧部分の両端と一体構造であって前記リターン路に連通するストレート部分とからそれぞれ形成され,前記ストレート部分の端面には前記嵌合凹溝が形成され,前記ストレート部分の側面には前記多孔質成形体を前記方向転換路に露出させる前記開口部が開口していることを特徴とする請求項2に記載の直動案内ユニット。
【請求項4】
前記エンドキャップ本体に形成された前記凹部は,前記エンドキャップ本体の上部に広がる平部,前記平部と連通した摺動方向に延びる一対の深部,前記平部から前記スペーサの前記嵌合溝へとそれぞれ延びる一対の連係部,及び前記平部と前記連係部との底部に連通状態に形成され且つ前記エンドキャップ本体の前記上部に形成された給油口と連通する給油溝から構成されていることを特徴とする請求項2又は3に記載の直動案内ユニット。
【請求項5】
前記多孔質成形体は,前記潤滑剤を貯留するため前記深部にそれぞれ嵌合する一対の第1貯留部,前記潤滑剤を貯留するため前記平部に嵌合する平板状の第2貯留部,前記連係部にそれぞれ嵌合する一対の連係供給部,前記連係供給部から延びて前記一対のスペーサに形成された前記嵌合溝にそれぞれ嵌合し且つ前記スペーサの前記開口部へとそれぞれ延びる前記潤滑剤を前記転動体へ供給する一対の突出部を備えていることを特徴とする請求項4に記載の直動案内ユニット。
【請求項6】
前記転動体は,前記方向転換路内を転走することによって前記多孔質成形体の前記突出部の先端部分の露出面に接触して潤滑されることを特徴とする請求項5に記載の直動案内ユニット。
【請求項7】
前記エンドキャップ本体に形成された前記給油溝は,前記多孔質成形体を前記エンドキャップ本体の前記凹部に嵌合することによって潤滑油供給路を形成することを特徴とする請求項3〜5のいずれか1項に記載の直動案内ユニット。
【請求項8】
前記第1スペーサと前記第2スペーサとの前記ストレート部の外面に形成した凹部は,前記転動体の転走方向に対し,前記凹部の中央部は平面状に且つ前記凹部の両端部は円弧状に形成され,前記潤滑剤の油溜まりとなることを特徴とする請求項3〜7のいずれか1項に記載の直動案内ユニット。
【請求項9】
前記多孔質成形体の前記突出部の前記露出面の長さは前記転動体であるローラの直径の1.0倍〜1.5倍の範囲のサイズを有し,前記多孔質成形体の前記突出部の前記露出面の幅は前記転動体であるローラの長さの30〜50%の範囲のサイズを有していることを特徴とする請求項6〜8のいずれか1項に記載の直動案内ユニット。
【請求項10】
前記多孔質成形体は,ポリエチレン又はポリプロピレンから成る超高分子量の合成樹脂微粒子を加熱成形した焼結樹脂で形成され,前記合成樹脂微粒子間が連通状態に保形された多孔部に形成され,前記多孔部に前記潤滑剤が含浸されていることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の直動案内ユニット。
【請求項11】
前記エンドキャップ本体の前記エンドシール側の前記端面には,前記軌道路において前記転動体の脱落を防止する保持板を前記スライダに保持する保持バンドを嵌入して係止するための保持バンド溝が形成されていることを特徴とする請求項2〜10のいずれか1項に記載の直動案内ユニット。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate


【公開番号】特開2011−149469(P2011−149469A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−10123(P2010−10123)
【出願日】平成22年1月20日(2010.1.20)
【出願人】(000229335)日本トムソン株式会社 (96)
【Fターム(参考)】