説明

直動転がり軸受け

【課題】簡単に製作可能であって、しかも支持体の加工が減じられている直動転がり軸受けを提供する。
【解決手段】ガイドキャリッジ1が、支持体3とヘッドピース4とを有しており、該ヘッドピースが、循環通路6の変向区分9を備えており、ガイドキャリッジの脚部が、長手方向シール部材23,24を備えており、該長手方向シール部材が循環通路6の負荷区分7をシールしており、両ヘッドピース4が各1つのシール部材支持体を備えており、該シール部材支持体が2つの保持ストリップ16,17を備えており、該保持ストリップが、ガイドレール2に沿ってガイドキャリッジ1とガイドレール2との間に延びていて、長手方向シール部材23,24を支持している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直動転がり軸受けであって、ガイドレールに沿って長手方向摺動可能に転動体を介して支承されたガイドキャリッジが設けられており、該ガイドキャリッジの脚部が、ガイドレールを部分的に取り囲んで係合しており、転動体が、ガイドレールの両長辺側に設置されたエンドレスな循環通路内にエンドレスに循環可能に配置されており、各循環通路が、1つの負荷区分と、1つの戻り区分と、該負荷区分を該戻り区分にエンドレスに接続する変向区分とを有しており、負荷区分で転動体が、ガイドキャリッジとガイドレールとに設けられた転動路に沿って転動するようになっており、該転動体が、負荷区分の終端部から変向区分と戻り区分とを介して負荷区分の始端部へ到達するようになっており、ガイドキャリッジが、負荷区分の転動路と戻り区分とを備えた支持体と、該支持体の両端面側に配置されたヘッドピースとを有しており、該ヘッドピースが、変向区分を備えており、ガイドキャリッジの脚部が、該ガイドキャリッジとガイドレールとの間の長手方向シール部材を備えており、該長手方向シール部材が、前記循環通路の負荷区分をシールしており、ガイドキャリッジの両端面側の端部が、ヘッドシール部材またはフロントストリッパを備えており、該ヘッドシール部材またはフロントストリッパが、ガイドキャリッジを端面側でシールしている形式のものに関する。
【背景技術】
【0002】
たとえばドイツ連邦共和国特許出願公開第4311515号明細書に基づき、冒頭で述べた形式の直動転がり軸受けが公知である。ガイドキャリッジは長手方向シール部材を収容するための複数の収容溝を備えており、この場合、長手方向シール部材は、「端プレート332」とも呼称されている潤滑剤分配器に接続されている。長手方向シール部材自体は基本的に、たとえばシールリップによって別の物体に密に接触するために適した軟質の材料から形成されている。それに対して、潤滑剤分配器もしくは端プレートはしばしば硬質の材料から製造されているので、潤滑剤分配器の形状安定性が保証されている。潤滑剤分配器と長手方向シール部材との間でのワンピースの一体結合がたしかに可能ではあるが、しかし材料特性に対して課せられる種々異なる要求により場合によっては困難性が生ぜしめられる。しかし、いわゆる2成分射出成形法でワンピースの一体結合を設けることが考えられる。
【0003】
ガイドキャリッジに長手方向シール部材を申し分なく配置するためには、ガイドキャリッジがこれらの長手方向シール部材のための収容溝を備えている。ガイドキャリッジは支持体あるいはまた軸受け本体を有しており、この支持体もしくは軸受け本体の両端面側は、いわゆるヘッドピースを有している。このヘッドピースは上記公知先行技術においては潤滑剤分配器または端キャップを有している。軸受け本体に長手方向シール部材を申し分なく保持するためには、大きな手間をかけてこの軸受け本体に溝が設けられなければならない。これらの溝はたいていの場合、切削加工により製作される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】ドイツ連邦共和国特許出願公開第4311515号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、冒頭で述べた形式の直動転がり軸受けを改良して、簡単に製作可能であって、しかも支持体の加工が減じられているような直動転がり軸受けを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題を解決するために本発明の構成では、両ヘッドピースが、各1つのシール部材支持体を備えており、該シール部材支持体が、ガイドレールの両長辺側にそれぞれ配置された少なくとも1つ、有利には2つの保持ストリップを備えており、該保持ストリップが、ガイドレールに沿ってガイドキャリッジとガイドレールとの間に延びており、該保持ストリップが、長手方向シール部材を支持しているようにした。
【発明の効果】
【0007】
両ヘッドピースが、各1つのシール部材支持体を備えており、該シール部材支持体が、ガイドレールの両長辺側にそれぞれ配置された少なくとも1つ、有利には2つの保持条片もしくは保持ストリップを備えており、該保持ストリップが、ガイドレールに沿ってガイドキャリッジとガイドレールとの間に延びており、該保持ストリップが、長手方向シール部材を支持していることにより、一方ではガイドキャリッジの支持体に溝を別個に形成することが不要となる。なぜならば、保持ストリップが長手方向シール部材を支持しているからである。保持ストリップを備えたシール部材支持体は、たとえば射出成形法でプラスチックから成るワンピースの一体の構成部分として製作され得る。次いで、このシール部材支持体はガイドキャリッジの支持体に問題なく取り付けられ得る。
【0008】
本発明による直動転がり軸受けが、冒頭で挙げた公知先行技術と同様に潤滑剤分配器を備えている場合には、潤滑剤分配器のための材料の選択を、長手方向シール部材のための材料の選択とは別個に独立して行うことができる。
【0009】
本発明の特に有利な改良形では、両ヘッドピースが、複数の潤滑剤通路を備えた各1つの潤滑剤分配器を有しており、これらの潤滑剤通路が、前記循環通路に接続されており、前記シール部材支持体が、潤滑剤分配器によって形成されている。したがって、本発明は自体公知の潤滑剤分配器を長手方向シール部材のためのシール部材支持体として利用し、この場合、保持ストリップは潤滑剤分配器に取り付けられている。
【0010】
両潤滑剤分配器がそれぞれ、ガイドレールの両長辺側のそれぞれに配置された少なくとも1つ、有利には少なくとも2つの保持ストリップを備えており、該保持ストリップが、ガイドレールに沿ってガイドキャリッジとガイドレールとの間に延びており、該保持ストリップが、長手方向シール部材を支持していることにより、一方では支持体の加工が減じられている。すなわち、支持体の端面側に配置された潤滑剤分配器が、本発明による保持ストリップを備えているので、長手方向シール部材を収容するために支持体に設けられる別個の溝またはその他の収容部が不要になるからである。長手方向シール部材は申し分なく保持ストリップに保持されて位置決めされている。
【0011】
他方では、しばしば射出成形法で製作される潤滑剤分配器が簡単に保持ストリップにワンピースに一体に結合されていてよく、この場合、保持ストリップと潤滑剤分配器とのために共通の材料を使用することができる。
【0012】
すなわち、本発明は公知先行技術に比べて、支持体の簡単化された製作を達成すると同時に、潤滑剤分配器のための材料の選択に関して妥協を成立させる必要なしに長手方向シール部材のための理想的な材料の選択を可能にする。
【0013】
本発明による直動転がり軸受けでは、ヘッドピースが、前記変向区分と、掻取り器もしくはストリッパと、保持ストリップを備えた潤滑剤分配器またはシール部材支持体と、ヘッドピースを支持体に着脱自在または着脱不能に取り付けるための取付け手段とを有していてよい。
【0014】
変向区分の輪郭はこの場合、内側変向部と外側変向部とによって画定されている。内側変向部は、支持体の端面に続いている内側の変向ピースもしくは変向部材に形成されていてよい。外側変向部は変向シェルにより形成されていてよいが、しかし外側変向部は直接に潤滑剤分配器に一体成形されていてもよい。この場合、この潤滑剤分配器はプレート状に形成されていてよい。内側変向部は内側の変向路を備えており、外側変向部は外側の変向路を備えており、この場合、転動体はこれら両変向路において変向される。変向シェルが設けられている場合、この変向シェルはヘッドピースなしでも直接に支持体に保持されていてよい。たとえば、この変向シェルはクリップ式に装着されていてよい。この場合には、転動体が変向部から落下する危険なしに潤滑剤分配器を備えたヘッドピースを取り外すことができる。
【0015】
ストリッパは公知の形式でU字形に形成されていてよく、ストリッパ面はガイドレールと掻取り接触していてよい。ストリッパ自体はヘッドピースに保持されていてよい。ストリッパ面はシールリップとして形成されていてもよい。
【0016】
本発明の別の改良形では、ガイドレールの長手方向で相前後して配置された前記保持ストリップのペアが設けられており、この場合、各ペアはそれぞれ前記循環通路の負荷区分のうちの1つの負荷区分の長さにわたって延びている。1つのペアの両保持ストリップの互いに向かい合わされた端部は移行個所を形成することができる。この移行個所においても、保持ストリップとガイドレールとの申し分のない密な接触が保証されている。
【0017】
本発明のさらに別の改良形では、長手方向シール部材ケージが形成されており、該長手方向シール部材ケージの長手方向シール部材の一方の端部が、それぞれほぼU字形のブラケットにワンピースに続いており、該U字形のブラケットがガイドレールを取り囲んで係合している。これらの長手方向シール部材がU字形のブラケットにワンピースに一体に結合されていると有利である。本発明による長手方向シール部材ケージは単独の個別部分として交換され得る。
【0018】
2つの長手方向シール部材ケージが設けられていると有利である。両長手方向シール部材ケージの、ワンピースに一体成形された長手方向シール部材の自由端部は互いに向かい合わされており、この場合、一方のU字形のブラケットは一方のヘッドピースに対応配置されており、他方のU字形のブラケットは他方のヘッドピースに対応配置されている。保持ストリップおよび長手方向シール部材の移行個所は循環通路の負荷区分の始端部と終端部との間のほぼ真ん中に配置されていると有利である。
【0019】
ガイドレールの長手方向で相前後して配置された2つの長手方向シール部材が1つのペアを形成していてよい。このペアは前記循環通路の負荷区分のうちの1つの負荷区分の長さにわたって延びており、該ペアの一方の長手方向シール部材が、一方の長手方向シール部材ケージに対応配置されており、該ペアの他方の長手方向シール部材が、他方の長手方向シール部材ケージに対応配置されている。本発明によるこのような直動転がり軸受けでは、両長手方向シール部材ケージをガイドキャリッジに組み付けることができる。この場合、一方の長手方向シール部材ケージはガイドキャリッジの一方の端面側から、他方の長手方向シール部材ケージはガイドキャリッジの他方の端面側からそれぞれ導入され得る。
【0020】
前記保持ストリップの各1つのペアに前記長手方向シール部材の1つのペアが対応配置されていてよい。この場合、両保持ストリップの自由端部の間に形成された移行個所はガイドレールの長手方向で、両長手方向シール部材の自由端部の間に形成された移行個所に対してずらされて配置されていてよい。このようにガイドレールの長手方向において両移行個所をずらすことにより、保持ストリップおよび長手方向シール部材の端部の構成に応じて周辺環境に対する負荷区分の改善されたシールが可能となる。
【0021】
本発明のさらに別の改良形では、長手方向シール部材ケージが、潤滑剤分配器に差し被せられている。この改良形では、潤滑剤分配器を備えたヘッドピースを取り外すことなしにガイドキャリッジから長手方向シール部材ケージを必要に応じて引き出すことが可能になり得る。
【0022】
さらに上で既に述べたように、複数の長手方向シール部材が1つのU字形のブラケットを介して互いに結合されているので、1つの長手方向シール部材ケージが形成されている。このU字形のブラケットはヘッドシール部材として形成されていてよく、ガイドレールと密に接触していてよい。したがって、場合によっては別の別個のヘッドシール部材を不要にすることができる。しかし、同じくヘッドピースに接続されている付加的なストリッパを設けることも可能である。
【0023】
本発明のさらに別の改良形では、ガイドレールの両長辺側に沿ってそれぞれ2つの循環通路が配置されており、両循環通路の循環平面が互いに角度を成して配置されており、両負荷区分が、負荷区分をその長辺側に沿ってシールする2つの長手方向シール部材の間に配置されている。冒頭で説明した公知の直動転がり軸受けの場合とは異なり、本発明のこの改良形では、ガイドレールの一方の側の互いに隣接し合った2つの負荷区分の間に長手方向シール部材は設けられていない。それどころか、これら両負荷区分を、外側に位置する両長手方向シール部材の間に潤滑剤密に封入するだけで十分となる。
【0024】
したがって、本発明によるこのような直動転がり軸受けでは、4つのエンドレスな循環通路が設けられており、この場合、転動体はガイドレールに設けられた転動路とガイドキャリッジに設けられた転動路との間に配置されている。本発明のこのような改良形では、転動体がいわゆるX字形配置で配置されている。
【0025】
長手方向シール部材の簡単な組付けのためには、保持ストリップが、長手方向シール部材を保持するための長手方向収容部を備えていてよい。有利には、保持ストリップが、長手方向シール部材に設けられたシールリップを貫通案内するための長手方向スリットを備えている。この場合には、保持ストリップが、長手方向収容部をも、長手方向スリットをも有していてよい。
【0026】
潤滑剤分配器は潤滑剤供給のための複数の接続部ならびに潤滑剤を個々の循環通路に分配するための十分な複数の潤滑剤通路を有していてよい。本発明による保持ストリップは、有利にはプレート状に形成された潤滑剤分配器にワンピースに一体成形されているか、あるいはまた別個のエレメントとして潤滑剤分配器に組み付けられ得る。
【0027】
本発明のさらに別の改良形では、ガイドレールの両長辺側にそれぞれ唯一つの保持ストリップまたは相前後して配置された唯一つのペアの保持ストリップと、それぞれ唯一つの長手方向シール部材または相前後して配置された唯一つの長手方向シール部材のペアとが、ガイドキャリッジの両脚部の両端部に設けられていれば十分となる。この改良形は、特に合計4つのエンドレスな循環通路を備えた本発明による直動転がり軸受けにおいても、両外側の循環通路の負荷区分がシールされていれば十分となり得るという思想を前提としている。
【0028】
シール作用を一層向上させるためには、付加的に本発明による保持ストリップがギャップシール部材として形成されていてよい。この場合、保持ストリップとガイドレールとの間にギャップシール部材が形成されている。
【0029】
長手方向シール部材ケージは特別な取付け手段によって潤滑剤分配器に結合されていてよい。
【0030】
潤滑剤分配器ならびに長手方向シール部材ケージは別の付属部品、たとえばシール部材またはアタッチメント部材の位置固定および/またはセンタリングのためのエレメントをも有していてよい。
【0031】
保持ストリップの自由端部はセンタリングエレメントまたは位置固定エレメントを備えていてよい。たとえば端面側でガイドキャリッジに配置された両潤滑剤分配器が、該潤滑剤分配器に配置された保持ストリップと共にガイドキャリッジに組み付けられると、両潤滑剤分配器の保持ストリップの互いに向かい合わされた自由端部を前記位置固定エレメントまたはセンタリングエレメントによって申し分なく互いに対して位置決めすることができる。たとえば、一方の自由端部が円錐形の先端部を備えていて、他方の自由端部が円錐形の切欠きを備えていることが考えられる。この場合、円錐形の先端部を備えた自由端部がこの円錐形の切欠き内に係合するので、両潤滑剤分配器の相前後して配置された両保持ストリップは申し分なく互いに対してセンタリングされて配置されている。
【0032】
潤滑剤分配器はさらに、支持体の長さ補償のためのエレメントを備えていてよい。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明による直動転がり軸受けを部分的に分解された状態で示す斜視図である。
【図1a】図1に示した本発明による直動転がり軸受けの一部を示す縦断面図である。
【図2】本発明による直動転がり軸受けの横断面図である。
【図3】本発明による直動転がり軸受けのヘッドピースの潤滑剤分配器を示す斜視図である。
【図4】図3に示した潤滑剤分配器を、カバープレートを取り外した状態で示す斜視図である。
【図5】図3に示した潤滑剤分配器を別の角度から見た斜視図である。
【図6】本発明による直動転がり軸受けの長手方向シール部材ケージを示す斜視図である。
【図7】図6に示した長手方向シール部材ケージを別の角度から見た斜視図である。
【図8】本発明による潤滑剤分配器の別の実施例を示す斜視図である。
【図9】本発明による潤滑剤分配器のさらに別の実施例を示す斜視図である。
【図10】図9に示した潤滑剤分配器と協働する本発明による潤滑剤分配器のさらに別の実施例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下に、本発明を実施するための形態を図面につき詳しく説明する。
【0035】
図1、図1aおよび図2には、本発明による直動転がり軸受けが図示されている。図1には、直動転がり軸受けの斜視図が、図2には直動転がり軸受けの横断面図がそれぞれ図示されている。ガイドキャリッジ1がガイドレール2に沿って長手方向移動可能に支承されている。
【0036】
ガイドキャリッジ1は支持体3と、この支持体3の両端面側に配置されたヘッドピース4とを有している。図1には、両ヘッドピース4のうちの1つしか図示されていない。
【0037】
ガイドキャリッジ1は複数のローラ5を介してガイドレール2に沿って転がり支承されている。図1aに示した部分縦断面図から判るように、ローラ5はエンドレスな循環通路6内でエンドレスに循環する。合計4つのエンドレスな循環通路6が設けられている(図2)。ガイドレール2の長手方向に延びる両長辺側には、各側にそれぞれ2つのエンドレスな循環通路6が配置されており、この場合、ガイドレール2の一方の長辺側に配置された両循環通路6の循環平面は互いに直角を成して配置されている。合計4つの循環通路6内に配置された負荷伝達ローラ5の向きはこの場合、互いにx字を成すようにx字形配置の形に調整されている。
【0038】
エンドレスな循環通路6はそれぞれ1つの負荷区分7と、1つの戻り区分8と、負荷区分7を戻り区分8にエンドレスに接続する2つの変向区分9とから形成されている(図1a)。ローラ5は変向区分9と戻り区分8とを介して負荷区分7の終端部から負荷区分の始端部へ案内される。
【0039】
ヘッドピース4は上記変向区分9を有しており、変向区分9はこの場合、ヘッドピース4内に収納されている。変向区分9は内側変向部10と外側変向部11とにより形成されており、この場合、内側変向部10は内側の変向軌道もしくは変向路12を備えており、外側変向部11は外側の変向軌道もしくは変向路13を備えている。内側変向部10は変向部材14として支持体3に保持されている。外側変向部11は変向シェル15として形成されており、この変向シェル15は同じく支持体3に保持されている。この場合、変向シェル15はクリップ式に装着されている。変向シェル15は図1の概略図および図1aの縦断面図に図示されている。
【0040】
ヘッドピース4は、この場合ほぼプレート状の潤滑剤分配器15aを備えている。この潤滑剤分配器15aは、特に図3、図4および図5から判るように、条片状の上側の保持ストリップ16と下側の保持ストリップ17とを備えている。図3および図4には、ワンピースに一体成形された下側の保持ストリップ17および上側の保持ストリップ16が明瞭に図示されている。図3には、カバープレート18を備えた潤滑剤分配器15aが図示されており、図4にはカバープレート18が取り除かれた状態が図示されている。
【0041】
図5には、潤滑剤分配器15aの別の斜視図が図示されている。この場合、図5には、下側の保持ストリップ17も上側の保持ストリップ16も明瞭に図示されている。両上側の保持ストリップ16は互いにワンピースに一体に結合されているので、所望の剛性を達成することができる。
【0042】
潤滑剤分配器15aは潤滑剤接続部19を備えている。この潤滑剤接続部19は複数の潤滑剤通路20にハイドロリック的に接続されている。これらの潤滑剤通路20は合計4つの循環通路6に接続されており、この場合、これらの潤滑剤通路20は循環通路6の変向区分9に開口する。
【0043】
潤滑剤分配器15aならびにこの潤滑剤分配器15aにワンピースに形成された保持ストリップ16,17はプラスチックから射出成形法で製作されている。この場合、潤滑剤通路20は開いた通路として形成されており、これらの開いた潤滑剤通路20は支持体3とは反対の側に向けられている。開いた潤滑剤通路20は既に説明したカバ―プレート18によって潤滑剤密にカバーされている。潤滑剤通路20のこのような配置では、ヘッドピース4および潤滑剤分配器15aの組付け時に潤滑剤通路20のシールに配慮しなくて済む。なぜならば、潤滑剤通路20は既に前もって、つまりガイドキャリッジ1における組付けの前に、既に述べたカバープレート18によって申し分なくシールされているからである。
【0044】
図6および図7には、長手方向シール部材ケージ21の斜視図が示されている。この場合、本実施例において説明している本発明によるガイドキャリッジ1のためには2つの長手方向シール部材ケージ21が設けられている。
【0045】
長手方向シール部材ケージ21は、ほぼU字形に成形された、ガイドレール2を取り囲んで係合するブラケット22と、2つの上側の長手方向シール部材23および2つの下側の長手方向シール部材24とを有している。上側および下側の長手方向シール部材23,24はガイドレール2に対して平行に配置されている。上側および下側の長手方向シール部材23,24の一方の端部はU字形のブラケット22にワンピースに一体に結合されている。この長手方向シール部材ケージ21を製作するための材料としては、あらゆる汎用のシール材料を使用することができる。本発明によるシール部材ケージ21はプラスチックから射出成形法で製作されていると好都合である。
【0046】
U字形のブラケット22はこの場合、フロントストリッパ25として形成されている。このフロントストリッパ25はヘッドピース4内に収納されていて、ガイドレール2に密に接触している。
【0047】
特に図1から判るように、長手方向シール部材ケージ21を、潤滑剤分配器15aを備えたヘッドピース4内にガイドレール2の長手方向で押し嵌めることができる。この場合、長手方向シール部材23,24は潤滑剤分配器15aの保持ストリップ16,17内に保持されている。
【0048】
したがって、本発明によれば、潤滑剤分配器15aがシール部材キャリヤとして働く。このシール部材キャリヤには、長手方向シール部材23,24を収容するための保持ストリップ16,17がワンピースに一体成形されている。本発明の変化形では、シール部材キャリヤと潤滑剤分配器とを別個の構成部分として形成することが有利になり得る。この場合、両構成部分はヘッドピースの一部であってよい。
【0049】
特に図2に示したように、上側の保持ストリップ16は長手方向収容部を備えている。この長手方向収容部内には上側の長手方向シール部材23が収容されている。この場合、この上側の保持ストリップ16は長手方向スリット27を備えているので、上側の長手方向シール部材23のシールリップ28はこれらの長手方向スリット27に貫通係合していて、ガイドレール2に密に接触している。
【0050】
下側の保持ストリップ17も、それぞれ1つの長手方向収容部29と長手方向スリット30とを備えているので、両下側の長手方向シール部材24のシールリップ31はこれらの長手方向スリット30に貫通係合していて、ガイドレール2に密に接触している。
【0051】
さらに図2から判るように、ガイドレール2の両側では、両負荷区分7が直接に相並んで配置されており、この場合、これら両負荷区分7は外側に位置する2つの長手方向シール部材23,24によってしかシールされていない。
【0052】
本発明による直動転がり軸受けを用いると、長手方向シール部材23,24の摩耗時に新しい長手方向シール部材23,24への交換を簡単に行うことができる。すなわち、潤滑剤分配器15aを備えたヘッドピース4が引き出され、ただしこの場合に変向シェル15は支持体3に保持されたままとなり、次いで新しい潤滑剤分配器15aと新しい長手方向シール部材ケージ21とを備えた新しいヘッドピース4に交換され得るか、あるいは潤滑剤分配器15aは支持体3に取り付けられたままとなって、長手方向シール部材ケージ21だけが引き出されて、新しい長手方向シール部材ケージ21と交換される。
【0053】
さらに図1から判るように、ヘッドピース4は付加的なフロントストリッパ32を備えているので、ガイドキャリッジ1は端面側でフロントストリッパ32,25によってシールされている。
【0054】
図8には、改良された潤滑剤分配器32が斜視図で図示されている。この潤滑剤分配器32は、この潤滑剤分配器32にワンピースに一体成形された上側の保持ストリップ33と下側の保持ストリップ34とを備えており、これらの保持ストリップ33,34は長手方向シール部材23,24を収容している。この潤滑剤分配器32は、保持ストリップ33,34の自由端部ならびに長手方向シール部材23,24の自由端部が変えられている点でのみ、上記潤滑剤分配器15aと異なっている。図8から判るように、これらの自由端部はすべて斜めに面取りされており、このことは特に下側の保持ストリップ34においてはっきりと判る。両下側の保持ストリップ34における斜めの面取り部は互いに逆向きに形成されているので、同一構造の2つの潤滑剤分配器32を、相前後して配置された2つの保持ストリップの斜め面取り部が申し分なく互いに接触するように嵌め合わせることができる。
【0055】
これら両潤滑剤分配器32がガイドキャリッジ1に組み付けられていると、両潤滑剤分配器の相前後して配置された保持ストリップはガイドキャリッジ1の負荷区分7の全長にわたって延びている。
【0056】
長手方向シール部材23,24は保持ストリップ33,34と同様に斜めに面取りされている。
【0057】
図9および図10には、2つの別の改良された潤滑剤分配器35,36が図示されている。両潤滑剤分配器35,36は同じく一緒にガイドキャリッジ1に組み付けられ得る。図8に示した潤滑剤分配器とは異なり、これらの潤滑剤分配器35,36は同一構造を有していない。このことについて以下に詳しく説明する。
【0058】
図9に示した一方の潤滑剤分配器35は、ワンピースに一体成形された上側の保持ストリップ37および下側の保持ストリップ38を備えている。前で説明した実施例の場合と同様に、これらの保持ストリップ37,38は長手方向シール部材39,40を支持している。図9から判るように、長手方向シール部材39,40はガイドレールの長手方向で保持ストリップ37,38を越えて突出している。さらに、これらの長手方向シール部材39,40の自由端部は斜めに面取りされているので、導入斜面41,42が形成されている。
【0059】
図10に示した他方の潤滑剤分配器36では、同じく上側および下側の保持ストリップ43,44がワンピースに一体成形されている。これらの保持ストリップ43,44は長手方向シール部材45,46を収容している。図10から判るように、この場合、保持ストリップ43,44はガイドレールの長手方向で見て長手方向シール部材45,46を越えて突出しており、この場合、一方の別の潤滑剤分配器35の長手方向シール部材39,40はこの潤滑剤分配器36の保持ストリップ43,44内に係合する。長手方向シール部材39,40に設けられた導入斜面41,42はこのときに保持ストリップ43,44内への導入を容易にする。
【0060】
したがって、互いに協働し合う潤滑剤分配器35,36は他方の潤滑剤分配器36の保持ストリップ43,44と一方の潤滑剤分配器35の保持ストリップ37,38との間の移行個所47を有している。他方の潤滑剤分配器36の長手方向シール部材45,46と一方の潤滑剤分配器35の長手方向シール部材39,40との間には、別の移行個所48が形成されている。両移行個所47,48は互いに対してずらされて配置されている。移行個所47,48のずらされた配置は一方では組付けを助成する。なぜならば、他方の潤滑剤分配器36の保持ストリップ43,44内に一方の潤滑剤分配器35の長手方向シール部材39,40をいわば手繰り込ませることができるからである。他方において、移行個所47,48のずらされた配置はシール作用を助成する。
【符号の説明】
【0061】
1 ガイドキャリッジ
2 ガイドレール
3 支持体
4 ヘッドピース
5 ローラ
6 循環通路
7 負荷区分
7a 転動路
7b 転動路
8 戻り区分
9 変向区分
10 内側変向部
11 外側変向部
12,13 変向部
14 変向部材
15 変向シェル
15a 潤滑剤分配器
16,17 保持ストリップ
18 カバープレート
19 潤滑剤接続部
20 潤滑剤通路
21 長手方向シール部材ケージ
22 ブラケット
23,24 長手方向シール部材
25 フロントストリッパ
26 長手方向収容部
27 長手方向スリット
28 シールリップ
29 長手方向収容部
30 長手方向スリット
31 シールリップ
32 潤滑剤分配器
33,34 保持ストリップ
35,36 潤滑剤分配器
37,38 保持ストリップ
39,40 長手方向シール部材
41,42 導入斜面
43,44 保持ストリップ
45,46 長手方向シール部材
47,48 移行個所

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直動転がり軸受けであって、ガイドレール(2)に沿って長手方向摺動可能に転動体を介して支承されたガイドキャリッジ(1)が設けられており、該ガイドキャリッジ(1)の脚部が、ガイドレール(2)を部分的に取り囲んで係合しており、
−転動体が、ガイドレール(2)の両長辺側に設置されたエンドレスな循環通路(6)内にエンドレスに循環可能に配置されており、各循環通路(6)が、1つの負荷区分(7)と、1つの戻り区分(8)と、該負荷区分(7)を該戻り区分(8)にエンドレスに接続する変向区分(9)とを有しており、負荷区分(7)で転動体が、ガイドキャリッジ(1)とガイドレール(2)とに設けられた転動路(7a,7b)に沿って転動するようになっており、該転動体が、負荷区分(7)の終端部から変向区分(9)と戻り区分(8)とを介して負荷区分(7)の始端部へ到達するようになっており、
−ガイドキャリッジ(1)が、負荷区分(7)の転動路(7a)と戻り区分(8)とを備えた支持体(3)と、該支持体(3)の両端面側に配置されたヘッドピース(4)とを有しており、該ヘッドピース(4)が、変向区分(9)を備えており、
−ガイドキャリッジ(1)の脚部が、該ガイドキャリッジ(1)とガイドレール(2)との間の長手方向シール部材(23,24)を備えており、該長手方向シール部材(23,24)が、前記循環通路(6)の負荷区分(7)をシールしており、
−ガイドキャリッジ(1)の両端面側の端部が、ヘッドシール部材またはフロントストリッパ(25)を備えており、該ヘッドシール部材またはフロントストリッパ(25)が、ガイドキャリッジ(1)を端面側でシールしている
形式のものにおいて、
両ヘッドピース(4)が、各1つのシール部材支持体を備えており、該シール部材支持体が、ガイドレール(2)の両長辺側にそれぞれ配置された少なくとも1つ、有利には2つの保持ストリップ(16,17,33,34,43,44)を備えており、該保持ストリップ(16,17,33,34,43,44)が、ガイドレール(2)に沿ってガイドキャリッジ(1)とガイドレール(2)との間に延びており、該保持ストリップ(16,17,33,34,43,44)が、長手方向シール部材(23,24,39,40,45,46)を支持していることを特徴とする直動転がり軸受け。
【請求項2】
両ヘッドピース(4)が、複数の潤滑剤通路(20)を備えた各1つの潤滑剤分配器(15a,32,35,36)を有しており、潤滑剤通路(20)が、前記循環通路(6)に接続されており、シール部材支持体が、前記潤滑剤分配器(15a,32,35,36)によって形成されている、請求項1記載の直動転がり軸受け。
【請求項3】
ガイドレール(2)の長手方向で相前後して配置された前記保持ストリップ(16,17,33,34,43,44)のペアが、それぞれ前記循環通路(6)の負荷区分(7)のうちの1つの負荷区分の長さにわたって延びている、請求項1記載の直動転がり軸受け。
【請求項4】
長手方向シール部材ケージ(21)が形成されており、該長手方向シール部材ケージ(21)の長手方向シール部材(23,24)が、ほぼU字形のブラケット(22)にワンピースに続いており、該U字形のブラケット(22)がガイドレール(2)を取り囲んで係合している、請求項1記載の直動転がり軸受け。
【請求項5】
その自由端部が互いに向かい合わされた2つの長手方向シール部材ケージ(21)が設けられており、両長手方向シール部材ケージ(21)のU字形のブラケット(22)が、それぞれ両ヘッドピース(4)の1つに配置されている、請求項4記載の直動転がり軸受け。
【請求項6】
ガイドレール(2)の長手方向で相前後して配置された長手方向シール部材(23,24,39,40,45,46)のペアが、それぞれ前記循環通路(6)の負荷区分(7)のうちの1つの負荷区分の長さにわたって延びており、該ペアの一方の長手方向シール部材(23,24,39,40,45,46)が、一方の長手方向シール部材ケージ(21)に対応配置されており、該ペアの他方の長手方向シール部材が、他方の長手方向シール部材ケージ(21)に対応配置されている、請求項5記載の直動転がり軸受け。
【請求項7】
保持ストリップ(16,17,33,34,43,44)の各1つのペアに長手方向シール部材(23,24,39,40,45,46)の1つのペアが対応配置されており、両保持ストリップ(16,17,33,34,43,44)の自由端部の間に形成された移行個所(47,48)が、ガイドレール(2)の長手方向で、両長手方向シール部材(23,24,39,40,45,46)の自由端部の間に形成された移行個所(47,48)に対してずらされて配置されている、請求項3記載の直動転がり軸受け。
【請求項8】
長手方向シール部材ケージ(21)が、潤滑剤分配器(15a)に差し被せられている、請求項2記載の直動転がり軸受け。
【請求項9】
長手方向シール部材ケージ(21)のU字形のブラケット(22)が、ガイドレール(2)の輪郭に適合されていて、ヘッドシール部材として形成されており、該ヘッドシール部材が、ガイドレール(2)と密に接触している、請求項4記載の直動転がり軸受け。
【請求項10】
ガイドレール(2)の両長辺側にそれぞれ2つの循環通路(6)が配置されており、両循環通路(6)の循環平面が互いに角度を成して配置されており、両負荷区分(7)が、負荷区分(7)をその長辺側に沿ってシールする2つの長手方向シール部材(23,24,39,40,45,46)の間に配置されている、請求項1記載の直動転がり軸受け。
【請求項11】
保持ストリップ(16,17)が、長手方向シール部材(23,24)を保持するための長手方向収容部(26)を備えている、請求項1記載の直動転がり軸受け。
【請求項12】
保持ストリップ(16,17)が、長手方向シール部材(23,24)のシールリップ(28)を貫通案内するための長手方向スリット(27)を備えている、請求項1記載の直動転がり軸受け。

【図1】
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【図1a】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−107043(P2010−107043A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−247350(P2009−247350)
【出願日】平成21年10月28日(2009.10.28)
【出願人】(390009623)シエツフレル コマンディートゲゼルシャフト (99)
【氏名又は名称原語表記】Schaeffler KG
【住所又は居所原語表記】Industriestrasse 1−3, D−91074 Herzogenaurach, Germany
【Fターム(参考)】