説明

直接注入エンジンにおける吸い込みバルブの堆積物を減少させる方法

本発明は、直接注入エンジンにおける吸い込みバルブの堆積物を減少させる方法に関連し、具体的には、その方法は、基油混合物を含む潤滑油組成物を用いてエンジンを潤滑させる工程を包含し、その基油混合物は、(i)グループIIIオイル、グループIVオイル、またはそれらの混合物と、(ii)合成エステルオイルとの組み合わせを含み、(i)と(ii)との重量比は、約0.2:1〜約6:1である。この直接注入エンジンは、火花点火機関または圧縮点火機関である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直接注入エンジンにおける吸い込みバルブの堆積物を減少させる方法に関連する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
直接注入エンジンは、燃料噴射がエンジンのシリンダー内部で起こるエンジンである。燃料が直接的にシリンダーの中へ注入されるという事実は、燃焼される燃料の量および注入のタイミングの正確なコントロールを可能にする。しかし、これらのエンジンに関する問題は、吸い込みバルブの堆積物が、受け入れられないレベルまで蓄積する傾向があることである。これらの堆積物は、バルブの閉鎖、バルブの動きおよびバルブの封鎖を妨げる。それらは、エンジンの効率を減少させ、最大の力を制限する。本発明は、この問題の解決策を提供する。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0003】
(発明の要旨)
本発明は、直接注入エンジンにおける吸い込みバルブの堆積物を減少させる方法に関連し、その方法は、基油混合物を含む潤滑油組成物を用いてエンジンを潤滑させる工程を包含し、その基油混合物は、(i)グループIIIオイル、グループIVオイルまたはそれらの混合物、(ii)合成エステルオイルとの組み合わせを含み、(i)と(ii)との重量比が約0.2:1〜約6:1である。
【0004】
(発明の詳細な説明)
用語「ヒドロカルビル」および「炭化水素」とは、分子の残りに結合される基をいう場合、本発明の状況内で、純粋に炭化水素または主に炭化水素の性質を有する基をいう。そのような基としては以下が挙げられる:
(1)純粋に炭化水素基;つまり、脂肪族基、脂環式基、芳香族基、脂肪族置換芳香族基および脂環式置換芳香族基、芳香族置換脂肪族基および芳香族置換脂環式基など、ならびに環式基であり、ここで、その環は、分子の別の部分を介して完成される(つまり、任意の2つの表された置換基が、脂環式基を一緒に形成し得る)。例としては、メチル、オクチル、シクロヘキシル、フェニルなどが挙げられる。
【0005】
(2)置換炭化水素基;つまり、その基の主に炭化水素の性質を変化させない非炭化水素置換基を含む基である。例としては、ヒドロキシ、ニトロ、シアノ、アルコキシ、アシルなどが挙げられる。
【0006】
(3)ヘテロ基;つまり、主に炭化水素の性質を有するが、鎖または環において炭素以外の原子を含み、それ以外は、炭素原子から構成される基である。例としては、窒素、酸素および硫黄が挙げられる。
【0007】
一般に、約3個の置換基またはヘテロ原子だけが、ある実施形態では1個だけが、ヒドロカルビル基における各10個の炭素原子につき存在する。
【0008】
例えば、ヒドロカルビル、アルキル、アルケニル、アルコキシ、などの用語と併せて本明細書中で使用される場合、用語「低級」とは、合計で7個までの炭素原子を含むような基をいうと意図される。
【0009】
用語「油溶性」とは、25℃で1リットルにつき、少なくとも約0.5グラムの範囲まで鉱油において溶解性である物質をいう。
【0010】
用語「TBN」とは、全塩基価をいう。これは、物質の塩基性の全てまたは一部を中和するために必要とする酸(過塩素酸または塩酸)の量であり、1グラムのサンプルあたりのKOHのミリグラムとして表される。
【0011】
用語「TAN」とは、全酸価をいう。これは、物質の酸性度の全てまたは一部を中和するために必要とする塩基(NaOHまたはKOH)の量であり、1グラムのサンプルあたりのKOHのミリグラムとして表される。
【0012】
(直接注入エンジン)
直接注入エンジンは、火花点火機関または圧縮点火機関であり得る。これらのエンジンは、自動車のエンジンまたはトラックのエンジン、2サイクルエンジン、航空ピストンエンジン、海洋ディーゼルエンジンまたは鉄道ディーゼルエンジン、などであり得る。包含されるものは、オンハイウェイエンジンまたはオフハイウェイエンジンである。圧縮点火機関は、移動発電装置および固定発電装置の両方についてのエンジンを含み得る。圧縮点火機関は、都会のバス、ならびに全ての種類のトラックにおいて使用されるエンジンを含み得る。圧縮点火機関は、1サイクルにつき2ストロークのタイプであり得るか、または1サイクルタイプにつき4ストロークのタイプであり得る。圧縮点火機関は、強力なディーゼルエンジンを含み得る。
【0013】
(潤滑油組成物)
本発明の方法に従って使用される潤滑油組成物は、一般に潤滑油組成物の全重量に基づいて主要な量で存在する基油混合物を含む。この基油混合物は、潤滑油組成物の約50重量%より多い量、ある実施形態では約60重量%より多い量、ある実施形態では約70重量%より多い量で存在し得る。潤滑油組成物は、以下:代表的に分散剤として機能するアシル化された窒素含有化合物;代表的に分散剤として機能するマンニッヒ縮合物;代表的に清浄剤(detergent)として機能するアルカリ金属含有塩またはアルカリ土類金属含有塩;ならびに/あるいは代表的に耐摩耗剤もしくは耐極度圧力(EP)添加剤として機能するリン含有化合物の金属塩をさらに含み得る。潤滑油組成物は、当該分野において公知の他の添加剤をさらに含み得る。
【0014】
潤滑油組成物は、100℃で約16.3cStまで、ある実施形態では100℃で約5cSt〜約16.3cSt、ある実施形態では100℃で約6cSt〜約13cStの粘性を有し得る。
【0015】
潤滑油組成物は、5、10、20、30、40、50、60、0W−20、0W−30、0W−40、0W−50、0W−60、5W−20、5W−30、5W−40、5W−50、5W−60、10W−20、10W−30、10W−40、10W−50、15W−20、15W−30、15W−40、15W−50、20W−20、20W−30、20W−40または20W−50のSAE粘性グレードを有し得る。
【0016】
潤滑油組成物は、約1重量%まで、ある実施形態では約0.5重量%までの硫黄含量によって特徴付けられ得る。
【0017】
潤滑油組成物は、約0.14重量%まで、ある実施形態では約0.12重量%まで、ある実施形態では約0.03重量%〜約0.12重量%、ある実施形態では約0.03重量%〜約0.10重量%、ある実施形態では約0.03重量%〜約0.08重量%、ある実施形態では約0.03重量%〜約0.05重量%までのリン含量によって特徴付けられ得る。
【0018】
ASTM D−874−96の手順によって測定されるような潤滑油組成物の灰含量は、約1.5重量%まで、ある実施形態では約0.3重量%〜約1.4重量%、ある実施形態では約0.3重量%〜約1.2重量%、ある実施形態では約0.3重量%〜約1.0重量%までの範囲であり得る。
【0019】
潤滑油組成物は、約100ppmまで、ある実施形態では約50ppmまで、ある実施形態では約10ppmまでの塩素含量によって特徴付けられ得る。
【0020】
(基油混合物)
基油混合物は、(i)グループIIIオイル、グループIVオイル、またはそれらの混合物、(ii)合成エステルオイルとの組み合わせを含む。オイル成分(i)とオイル成分(ii)との重量比は、約0.2:1〜約6:1、ある実施形態では約0.2:1〜約5:1、ある実施形態では約0.3:1〜約4:1、ある実施形態では約0.4:1〜約3.5:1の範囲であり得る。ある実施形態では、その比は、約2.5:1〜約3.5:1、ある実施形態では約2.8:1〜約3.2:1である。ある実施形態では、その比は、約0.3:1〜約0.6:1、ある実施形態では約0.4:1〜約0.5:1である。
【0021】
グループIIIオイルおよびグループIVオイルは、American Petroleum Institute(API)Base Oil Interchangeability Guidelinesに指定されている。グループIIIオイルは、以下の最小限の特性:0.03%以下の硫黄、90%以上の飽和物、および120以上の粘度指数を有すると定義されている。ある実施形態では、飽和物含量は少なくとも約95重量%、ある実施形態では少なくとも約98重量%であり;そして硫黄含量は、約0.02重量%まで、ある実施形態では約0.01重量%までである。これらのオイルは、代表的に天然の貯蔵物由来である(合成起源から誘導されるのと対照的に)が、それらが他の合成基油の性能および粘性パラメーターを示し得るように非常に高度に精製される。
【0022】
グループIVオイルは、ポリアルファオレフィンオイルと定義される。ポリアルファオレフィン(PAO)は、約4個〜約30個の炭素原子、ある実施形態では約4個〜約20個の炭素原子、ある実施形態では約6個〜約16個の炭素原子を有するモノマーから誘導され得る。有用なPAOの例としては、オクテン、デセン、それらの混合物などから誘導されるものが挙げられる。これらのPAOは、100℃で約2cSt〜約15cSt、ある実施形態では100℃で約3cSt〜約12cSt、ある実施形態では100℃で約4cSt〜約8cSt、ある実施形態では100℃で約4cSt〜約6cStの粘性を有し得る。有用なPAOの例としては、100℃で4cStの粘性を有するPAO、100℃で6cStの粘性を有するPAOおよびそれらの混合物が挙げられる。
【0023】
合成エステルオイルは、種々のアルコールまたはポリオールとモノカルボン酸またはジカルボン酸とのエステルであり得る。モノカルボン酸およびジカルボン酸は、約40個までの炭素原子、ある実施形態では約5個〜約30個の炭素原子、ある実施形態では約5個〜約20個の炭素原子、ある実施形態では約8個〜約10個の炭素原子を含み得る。使用され得るモノカルボン酸の例としては、オクタン酸、2−エチルヘキサン酸、ネオペンタン酸、ネオデカン酸、イソデカン酸、デカン酸、トリデカン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、イソヘプタン酸、ドデカン酸、3,5,5−トリメチルヘキサン酸、などが挙げられる。使用され得るジカルボン酸の例としては、フタル酸、コハク酸、アルキルコハク酸、アルケニルコハク酸、マレイン酸、アゼライン酸、スベリン酸、セバシン酸、フマル酸、アジピン酸、リノール酸二量体、マロン酸、アルキルマロン酸、アルケニルマロン酸、これらの2つ以上の混合物、などが挙げられる。
【0024】
合成エステルオイルを製造する際に使用され得るアルコールおよびポリオールとしては、一価の炭化水素に基づいたアルコールおよび多価の炭化水素に基づいたアルコール(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、デカノールなど)が挙げられる。包含されるものとしてはまた、飽和アルコール(例えば、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコールおよびベヘニルアルコール)、および不飽和アルコール(例えば、パルミトレイル、オレイルおよびエイコセニル)を含む、脂肪アルコールおよびその混合物がある。オキソ法によって形成されるより高級な合成一価アルコールの種類(例えば、2−エチルヘキサノール)、アルドール縮合によって形成されるより高級な合成一価アルコールの種類、または有機アルミニウム触媒されたアルファオレフィン(例えば、エチレン)のオリゴマー形成、続く酸化によって形成されるより高級な合成一価アルコールの種類が使用され得る。上記のアルコールの脂環式類似体が使用され得る;例としては、シクロペンタノール、シクロヘキサノール、シクロドデカノール、などが挙げられる。
【0025】
使用され得るポリオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンチレングリコール、へキシレングリコールおよびへプチレングリコール;トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコールおよびヘプタメチレングリコールならびにその炭化水素置換類似体(例えば、2−エチル−1,3−トリメチレングリコール、ネオペンチルグリコールなど)、ならびにポリオキシアルキレン化合物(例えば、ジエチレングリコールおよび高級ポリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、ジブチレングリコール、ジペンチレングリコール、ジヘキシレングリコールおよびジヘプチレングリコール)およびそれらのモノエーテルが挙げられる。
【0026】
フェノール、ナフトール、置換フェノール(例えば、クレゾール)、およびジヒドロキシ芳香族化合物(例えば、レゾルシノール、ヒドロキノン)、ならびにベンジルアルコールおよび第2級ヒドロキシ基が直接的に芳香族炭素に結合される同様のジヒドロキシ化合物(例えば、3−HOFCHOH、ここでFは、二価のベンゼン環である)が使用され得る。一般式
HOCH(CHOH)1−5CHOH
の糖アルコール(例えば、グリセロール、ソルビトール、マンニトールなど)およびそれの部分的にエステル化された誘導体、ならびにメチロールポリオール(例えば、ペンタエリスリトール)およびそのオリゴマー(ジペンタエリスリトールおよびトリペンタエリスリトールなど)、トリメチロールエタンおよびトリメチロールプロパンが、使用され得る。
【0027】
使用され得る合成エステルオイルの例としては、アジピン酸ジブチル、セバシン酸ジ(2−エチルヘキシル)、フマル酸ジ−n−ヘキシル、セバシン酸ジオクチル、アゼライン酸ジイソオクチル、アゼライン酸ジイソデシル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジデシル、セバシン酸ジエイコシル、リノール酸二量体の2−エチルヘキシルジエステル、1モルのセバシン酸を2モルのテトラエチレングリコールおよび2モルの2−エチルヘキサノン酸と反応させることによって形成される複合エステル、などが挙げられる。合成エステルオイルとしては、約8個〜約10個の炭素原子のモノカルボン酸およびトリメチロール(trimethyol)プロパンから誘導される合成エステルオイル;ならびに、約12個〜約20個の炭素原子、ある実施形態では約18個の炭素原子のモノカルボン酸、および約12個〜約20個の炭素原子、ある実施形態では約12個〜約14個の炭素原子のアルコールから誘導される合成エステルオイルが挙げられる。
【0028】
使用され得る商業的な合成エステルオイルとしては、Uniqemaによって提供されるProlube 1976およびProlube 3970が挙げられる。
【0029】
(アシル化された窒素含有化合物)
アシル化された窒素含有化合物は、アミノ化合物とカルボン酸アシル化剤を反応させることによって製造され得る。アシル化剤は、イミド、アミド、アミジンまたは塩結合を介してアミノ化合物に結合され得る。少なくとも約10個の脂肪族炭素原子から構成される置換基は、分子のカルボン酸アシル化剤誘導部分または分子のアミノ化合物誘導部分のいずれかにおいて存在し得る。
【0030】
少なくとも約10個の脂肪族炭素原子を含む例示的置換基としては、n−デシル、n−ドデシル、テトラプロピレン、n−オクタデシル、オレイル、クロロオクタデシル、トリイコンタニル(triicontanyl)、などが挙げられる。一般に、これらの置換基は、2個〜約10個の炭素原子を有するモノオレフィンまたはジオレフィン(例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン、ブタジエン、イソプレン、1−ヘキセン、1−オクテン、など)のホモポリマーまたはインターポリマー(例えば、コポリマー、ターポリマー)から製造されるヒドロカルビル基である。代表的に、これらのオレフィンは1−モノオレフィンである。置換基はまた、そのようなホモポリマーまたはインターポリマーのハロゲン化した(例えば、塩素化したまたは臭素化した)類似体から誘導され得る。
【0031】
置換基についての有用な起源は、ルイス酸触媒(例えば、三塩化アルミニウムまたは三フッ化ホウ素)の存在下で約35重量%〜約75重量%のブテン含量および約30重量%〜約60重量%のイソブテン含量を有するC精製装置の流れの重合によって得られるポリ(イソブテン)である。これらのポリブテンは、主にイソブテンの繰り返し単位を含む。
【0032】
ある実施形態では、置換基は、高級メチルビニリデン異性体含量を有するポリイソブテンから誘導されるポリイソブテン基である。これらは、ポリイソブテンを含み、ここで、ポリイソブテンの少なくとも約50重量%、ある実施形態では少なくとも約70重量%は、メチルビニリデン末端基を有する。そのような高級メチルビニリデン異性体含量を有する適切なポリイソブテンとしては、三フッ化ホウ素触媒を使用して調製されるポリイソブテンが挙げられる。
【0033】
アシル化剤は、ギ酸およびそのアシル誘導体から、約5,000個、10,000個または20,000個までの炭素原子の高分子量の脂肪族置換基を有するアシル化剤まで変動し得る。ある実施形態では、アシル化剤は、ヒドロカルビル置換基およびコハク酸基を含むヒドロカルビル置換コハク酸またはヒドロカルビル置換無水コハク酸であり、ここで、その置換基は、ポリアルケン(例えばポリイソブテン)から誘導される。酸または無水物は、その構造内に、置換基の各当量に対し、平均して少なくとも約0.6個のコハク酸基、ある実施形態では置換基の各当量に対し、少なくとも約0.9個のコハク酸基が存在することにより、特徴付けられ得る。ある実施形態では、酸または無水物は、その構造内に、置換基の各当量に対し、平均して約0.6個〜約2.5個のコハク酸基、ある実施形態では置換基の各当量に対し、約0.9個〜約2.5個のコハク酸基が存在することにより、特徴付けられ得る。ある実施形態ではコハク酸基と置換基の当量との比は、約0.6:1〜約1.8:1、ある実施形態では約0.9:1〜約1.8:1、ある実施形態では約0.6:1〜約1.5:1、ある実施形態では約0.9:1〜約1.5:1の範囲である。ポリアルケンは、少なくとも約700、ある実施形態では約700〜約3000、ある実施形態では約900〜約2200の数平均分子量(Mn)を有し得る。重量平均分子量(Mw)と(Mn)との間の比(つまり、Mw/Mn)は、約1〜約10、ある実施形態では約1.5〜約5、ある実施形態では約2.5〜約5の範囲であり得る。本発明の目的のための、置換基の当量の数は、置換基が誘導されるポリアルケンのMn値を、置換コハク酸または置換無水コハク酸に存在する置換基の全重量で割ることによって得られる商に相当する数であると判断される。
【0034】
アミノ化合物は、その構造内に、少なくとも1種のHN<基が存在することにより、特徴付けられ得、モノアミンまたはポリアミンであり得る。2つ以上のアミノ化合物の混合物は、1種以上のアシル化試薬との反応において使用され得る。ある実施形態では、アミノ化合物は、少なくとも1種の第1級アミノ基(すなわち、−NH)を含む。ある実施形態では、アミンはポリアミン(例えば、少なくとも2つの−NH−基を含むポリアミン)であり、そのいずれかまたは両方が第1級アミンまたは第2級アミンである。そのアミンは、脂肪族アミン、脂環式アミン、芳香族アミンまたは複素環式アミンであり得る。ヒドロキシ置換アミン(例えば、アルカノールアミン(例えば、モノエタノールアミンまたはジエタノールアミン))、およびそのようなアルカノールアミンのヒドロキシ(ポリヒドロカルビルオキシ)類似体が使用され得る。
【0035】
有用なアミンの中に、ポリアルキレンポリアミンを含む、アルキレンポリアミンがある。アルキレンポリアミンとしては、式
【0036】
【化3】

によって表されるものが挙げられ、ここで、式(I)において、nは1〜約14であり;各Rは、独立して、水素原子、約30個までの原子を有するヒドロカルビル基またはヒドロキシ置換ヒドロカルビル基もしくはアミン置換ヒドロカルビル基であるか、あるいは、異なる窒素原子上の2つのR基は、一緒に結合してU基を形成し得、但し、少なくとも1つのR基は、水素原子であり、Uは約2個〜約10個の炭素原子のアルキレン基である。Uはエチレンまたはプロピレンであり得る。各Rが、水素またはエチレンポリアミンおよびエチレンポリアミンの混合物を有するアミン置換ヒドロカルビル基であるアルキレンポリマーは有用である。通常、nは約2個〜約10個の平均値を有する。そのようなアルキレンポリアミンとしては、メチレンポリアミン、エチレンポリアミン、プロピレンポリアミン、ブチレンポリアミン、ペンチレンポリアミン、へキシレンポリアミン、へプチレンポリアミン、などが挙げられる。そのようなアミンの高級ホモログおよび関連したアミノアルキル置換ピペラジンもまた挙げられる。
【0037】
有用なアルキレンポリアミンとしては、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、プロピレンジアミン、トリメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ジ(ヘプタメチレン)トリアミン、トリプロピレンテトラミン、トリメチレンジアミン、ジ(トリメチレン)トリアミン、N−(2−アミノエチル)ピペラジン、1,4−ビス(2−アミノエチル)ピペラジン、などが挙げられる。高級ホモログ(例えば、2種以上の上に示したアルキレンアミンを縮合することによって得られる高級同族体)が使用され得る。2種以上の任意の上記のポリアミンの混合物が使用され得る。
【0038】
有用なポリアミンとしては、ポリアミン混合物のストリッピングから生じるポリアミンが挙げられる。この場合には、低分子量ポリアミンおよび揮発性の汚染物質は、アルキレンポリアミン混合物から除去されて、「ポリアミンボトムス」としばしば呼ばれる残留物として残る。一般に、アルキレンポリアミンボトムスは、約200℃以下で沸騰する物質を、約2重量%をこえない量、ある実施形態では約1重量%をこえない量で有するものとして、特徴付けられ得る。
【0039】
アシル化された窒素含有化合物としては、アミン塩、アミド、イミド、アミジン、アミド酸、アミド塩およびイミダゾリンならびにそれらの混合物が挙げられる。アシル化剤およびアミノ化合物からアシル化された窒素含有化合物を調製するために、1種以上のアシル化試薬および1種以上のアミノ化合物は、必要に応じて、80℃から反応物または生成物のいずれかの分解点までの範囲の温度で、通常は液体(実質的に不活性の有機液体溶剤/希釈液)の存在下で、加熱され得るが、しかし、通常、約100℃〜約300℃(但し、300℃は反応物または生成物のいずれかの分解点をこえない)までの範囲の温度で、加熱され得る。約125℃〜約250℃の温度が使用され得る。アシル化剤およびアミノ化合物は、アシル化剤の1当量あたり、約0.5モル〜約3モルのアミノ化合物を提供するために、十分な量で反応され得る。アシル化剤の当量の数は、そこに存在するカルボキシ基の数と一緒に変化する。アシル化剤の当量の数を決定する際に、カルボン酸アシル化剤として反応し得ないこれらのカルボキシル官能基は、考慮されない。しかし、一般に、アシル化剤中の各カルボキシ基に対して、1当量のアシル化剤がある。
【0040】
ある実施形態では、アシル化された窒素含有化合物は、ポリイソブテン置換無水コハク酸またはポリイソブテン置換コハク酸およびポリアミンから誘導されるポリイソブテン置換スクシンイミドであり得、ポリイソブテン置換無水コハク酸またはポリイソブテン置換コハク酸由来のC=Oとポリアミン由来のNの比は、約1.18:1まで、ある実施形態では約1.15:1まで、ある実施形態ではその比は約1.1:1までである。
【0041】
ある実施形態では、アシル化された窒素含有化合物は、ポリイソブテン置換無水コハク酸またはポリイソブテン置換コハク酸およびポリアミンから誘導されるポリイソブテン置換スクシンイミドであり得、そのポリイソブテンは、約1500〜約3000、ある実施形態では約1800〜約3000の範囲の数平均分子量を有し、ポリイソブテン置換無水コハク酸またはポリイソブテン置換コハク酸由来のC=Oとポリアミン由来のNとの比は、約1:2まで、ある実施形態では約1:1.7までであり、ある実施形態ではその比は約1:1.4までである。
【0042】
アシル化された窒素含有化合物は、約20重量%、ある実施形態では約1重量%〜約10重量%、ある実施形態では約2重量%〜約8重量%までの範囲の濃度で潤滑油組成物に使用され得る。
【0043】
(マンニッヒ縮合物)
マンニッヒ縮合物は、少なくとも1種のアルデヒドまたはアルデヒド誘導物質(例えば、ホルムアルデヒド前駆物質)および少なくとも1つのNH基を有する少なくとも1種のモノアミンまたはポリアミンと、芳香族炭素に結合した少なくとも1種の水素原子を有するヒドロカルビル置換フェノール(例えば、アルキルフェノール、ここで、アルキル基は、約12個〜約400個の炭素原子、ある実施形態では約30個〜約400個の炭素原子の平均値を有する)との縮合反応から誘導される生成物であり得る。モノアミンとしては、1個〜約30個の炭素原子の炭化水素置換基、または1個〜約30個の炭素原子のヒドロキシ置換炭化水素置換基を有する第1級モノアミンまたは第2級モノアミンが挙げられる。例としては、メチルエチルアミン、メチルオクタデシルアミン、アニリン、ジエチルアミン、ジエタノールアミン、ジプロピルアミン、などが挙げられる。ポリアミンは、アシル化された窒素含有化合物に関する考察で上記の任意のポリアミンであり得る。
【0044】
これらの縮合物は、約1モル部のフェノール化合物を、約1モル部〜約2モル部のアルデヒドおよび約1当量部〜約5当量部のアミノ化合物(1当量のアミノ化合物は、存在する=NH基の数で割られたその分子量である)と反応させることによって調製され得る。そのような縮合反応が行われる下での条件は、当業者に周知である。
【0045】
マンニッヒ縮合物は、約20重量%まで、ある実施形態では約0.5重量%〜約10重量%、ある実施形態では約0.5重量%〜約5重量%の範囲の濃度で、潤滑油組成物に使用され得る。
【0046】
(アルカリ金属塩清浄剤またはアルカリ土類金属塩清浄剤)
アルカリ金属塩清浄剤またはアルカリ土類金属塩清浄剤は、酸性有機化合物のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩であり得る。酸性有機化合物は、有機硫酸、カルボン酸もしくはその誘導体、フェノールまたはヒドロカルビル置換サリゲニンであり得る。酸性有機化合物は、サリキサレート(salixarate)誘導体であり得る。これらの塩は、中性または過塩基性(overbased)であり得る。前者は、塩のアニオンに存在する酸性基を中和するために、ちょうど十分な一定量の金属カチオンを含む;後者は、過剰の金属カチオンを含み、しばしば塩基性、過塩基性(hyperbased)または超塩基性(superbased)の塩と呼ばれる。これらの塩は、約30〜約500、ある実施形態では約100〜約400、ある実施形態では約200〜約400、ある実施形態では約300〜約400の範囲のTBNを有し得る。
【0047】
有機硫酸は、油溶性有機硫酸(例えば、スルホン酸、スルファミン酸、チオスルホン酸、スルフィン酸、スルフェン酸、部分的な硫酸エステル、亜硫酸およびチオ硫酸)であり得る。一般に、それらは、脂肪族または芳香族スルホン酸の塩である。スルホン酸としては、単環式(mononuclear)もしくは多環式(polynuclear)の芳香族化合物または脂環式化合物が挙げられる。
【0048】
カルボン酸としては、脂肪族系、脂環式系、ならびに芳香族の一塩基および多塩基カルボン酸(例えば、ナフテン酸、アルキルまたはアルケニル置換シクロペンタン酸、アルキルまたはアルケニル置換シクロヘキサン酸、アルキルまたはアルケニル置換芳香族カルボン酸)が挙げられる。脂肪族系の酸は、一般に、少なくとも約8個の炭素原子、ある実施形態では少なくとも約12個の炭素原子を含む。通常、それらは、約400個の炭素原子しか有さない。脂環式および脂肪族カルボン酸は、飽和または不飽和であり得る。
【0049】
カルボン酸の有用な基は、油溶性芳香族カルボン酸である。これらの酸は、式:
【0050】
【化4】

によって表され得、ここで、式(II)において、Rは、約4個〜約400個の炭素原子の脂肪族ヒドロカルビル基であり、aは1〜4の整数であり、Arは、約14個までの炭素原子の多価芳香族炭化水素核であり、各Xは、独立して、硫黄原子または酸素原子であり、mは、1〜4の整数であり、但し、Rおよびaは、各酸分子に対するR基によって提供される、平均して少なくとも約8個の脂肪族炭素原子があるようなものである。Arはヒドロキシル置換芳香族核であり得る。
【0051】
カルボン酸の有用な基は、各脂肪族炭化水素置換基が、各置換基につき、平均して少なくとも約8個の炭素原子、ある実施形態では少なくとも約16個の炭素原子を含み、酸は各分子につき、1個〜3個の置換基を含む、脂肪族炭化水素置換サリチル酸である。有用な脂肪族炭化水素置換サリチル酸は、C16〜C18アルキルサリチル酸である。有用なカルボン酸誘導体の基は、式
【0052】
【化5】

によって表されるラクトンであり、ここで、式(III)において、R、R、R、R、RおよびRは、独立して、H、1個〜約30個の炭素原子のヒドロカルビル基またはヒドロキシ置換ヒドロカルビル基であり、但し、炭素原子の全数は、ラクトンを油溶性にするために、十分な量でなければならず;RおよびRは、脂肪族環または芳香族環を形成するために、一緒に結合され得;そして、aは、0〜4の範囲の数である。
【0053】
有用なラクトンは、約2:1のモル比で、アルキル(例えば、ドデシル)フェノールをグリオキシル酸と反応させることによって調製され得る。
【0054】
フェノールの中性塩および塩基性塩(一般に、石炭酸塩として公知である)もまた、本発明の組成物に有用であり、当業者に周知である。これらの石炭酸塩が形成されるフェノールは、一般式
【0055】
【化6】

であり、ここで、式(IV)において、R、a,Ar、およびmは、式(II)を参照して、上記と同じ意味を有する。
【0056】
ヒドロカルビル置換サリゲニンは、式
【0057】
【化7】

によって表され得、ここで、式(V)において:各Xは、独立して、−CHOまたは−CHOHである;各Yは、独立して、−CH−または−CHOCH−である;ここで、−CHO基は、少なくとも約10モル%のXおよびY基を含む;各Mは、独立して、二価金属イオンの一価である;各Rは、独立して、1個〜約60個の炭素原子を含むヒドロカルビル基である;mは0〜約10である;nは0または1であり、但し、nが0である場合、MはHと置換される;そして、各pは、独立して、0、1、2、または3である;但し、少なくとも1種の芳香族環は、R置換基を含み、全てのR基における炭素原子の全数は、少なくとも7である;そしてさらに、但し、mが1以上である大きい場合、X基の1種は、−Hであり得る。nは、約0.1〜約10、ある実施形態では約2〜約9の平均値を有する。各Rは、約7個〜約28個の炭素原子、ある実施形態では約9個〜約18個の炭素原子を含み得る。
【0058】
サリキサレート誘導体は、式(VI−A)または式(VI−B)
の少なくとも1単位を含む実質的に直鎖状化合物であり得、式(VI−C)または式(VI−D):
の末端基を有する化合物の各末端は、二価の架橋基Aによって結合される基であり、それは、各結合に対して同じであっても異なっていてもよく;ここで、式(VI−A)〜式(VI−D)において、Rは、水素またはヒドロカルビル基であり;Rは、水酸基またはヒドロカルビル基であり、jは、0、1、または2であり;Rは、水素、ヒドロカルビル基、またはヘテロ置換ヒドロカルビル基であり;Rのいずれかは水酸基であり、RおよびRは、独立して、水素、ヒドロカルビル基、またはヘテロ置換ヒドロカルビル基のいずれかであるか、あるいは他のRおよびRは、両方、水酸基であり、Rは、水素、ヒドロカルビル基、またはヘテロ置換ヒドロカルビル基である;但し、R、R、RおよびRのうちの少なくとも1つは、少なくとも8個の炭素原子を含むヒドロカルビル基であり;そしてここで、平均して分子は、少なくとも1つの(VI−A)単位または(VI−C)単位および少なくとも1つの(VI−B)単位または(VI−D)単位を含み、組成物中の(VI−A)単位および(VI−C)単位の全数と(VI−B)単位および(VI−D)単位の全数との比は、約0.1:1〜約2:1である。二価の架橋基Aは、各存在において同じであっても異なっていてもよく、−CH−(メチレン架橋)および−CHOCH−(エーテル架橋)が挙げられ、そのいずれかは、ホルムアルデヒドまたはホルムアルデヒド当量(例えば、パラホルム、ホルマリン)から誘導され得る。サリキサレート誘導体およびそれらの調製の方法は、米国特許第6,200,936号およびPCT公開番号WO 01/56968により詳細に記載されており、それらは、本明細書中に参考として援用される。サリキサレート誘導体は、直鎖状と環状の両方の構造が用語「サリキサレート」によって包含されると意図されるが、大環状の構造というよりむしろ、主に直鎖状であると考えられる。
【0059】
上記した酸性有機化合物の2種以上の中性金属塩または塩基性金属塩の混合物は、潤滑油組成物に使用され得る。
【0060】
有用なアルカリ金属およびアルカリ土類金属としては、ナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム、ストロンチウムおよびバリウムが挙げられ、ナトリウム、リチウムおよびカルシウムは特に有用である。
【0061】
アルカリ金属またはアルカリ土類金属を含む清浄剤は、約0.1重量%〜約10重量%、ある実施形態では約0.2重量%〜約5重量%、ある実施形態では約0.3重量%〜約3重量%、ある実施形態では約0.5重量%〜約2重量%、の範囲の濃度で潤滑油組成物に使用され得る。
【0062】
(リン含有金属塩)
リン含有金属塩を製造する際に有用なリン含有酸は、式
【0063】
【化8】

によって表され得、ここで、式(VII)において:X、X、XおよびXは、独立して、酸素または硫黄であり、aおよびbは、独立して、0または1であり、RおよびRは、独立して、ヒドロカルビル基である。例示的例としては:ジヒドロカルビルホスフィノジチオ酸、S−ヒドロカルビルヒドロカルビルホスホノトリチオ酸、O−ヒドロカルビルヒドロカルビルホスフィノジチオ酸、S,S−ジヒドロカルビルホスホロテトラチオ酸、O,S−ジヒドロカルビルホスホロトリチオ酸、O,O−ジヒドロカルビルホスホロジチオ酸、などが挙げられる。
【0064】
有用なリン含有酸は、リン含有酸および硫黄含有酸である。これらは、式(VII)において、少なくとも1種のXまたはXは硫黄であり、ある実施形態ではXおよびXの両方は、硫黄であり、少なくとも1種のXまたはXは、酸素または硫黄であり、ある実施形態ではXおよびXの両方は、酸素であり、aおよびbは、各々1である、酸が挙げられる。これらの酸の混合物は、本発明に従って使用され得る。
【0065】
式(VII)のRおよびRは、独立して、ヒドロカルビル基であり、好ましくは、アセチレン性不飽和および通常はエチレン性不飽和もなく、ある実施形態では約1個〜約50個の炭素原子、ある実施形態では約1個〜約30個の炭素原子、ある実施形態では約3個〜約18個の炭素原子、ある実施形態では約3個〜約8個の炭素原子を有する。RおよびRの各々は、異なり得、いずれかまたは両方は混合物であり得るが、それらは他方と同じであり得る。R基およびR基の例としては、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、アミル、4−メチル−2−ペンチル、イソオクチル、デシル、ドデシル、テトラデシル、2−ペンテニル、ドデセニル、フェニル、ナフチル、アルキルフェニル、アルキルナフチル、フェニルアルキル、ナフチルアルキル、アルキルフェニルアルキル、アルキルナフチルアルキル、およびその混合物が挙げられる。有用な混合物の特定の例としては、例えば、イソプロピル/n−ブチル;イソプロピル/第2級ブチル;イソプロピル/4−メチル−2−ペンチル;イソプロピル/2−エチル−1−ヘキシル;イソプロピル/イソオクチル;イソプロピル/デシル;イソプロピル/ドデシル;およびイソプロピル/トリデシルが挙げられる。
【0066】
ある実施形態では、式(VII)によって表されるリン含有化合物は、aおよびbが、各々1であり、XおよびXが、各々Oであり、RおよびRが、1種以上の第1級アルコール、1種以上の第2級アルコール、または少なくとも1種の第1級アルコールと少なくとも1種の第2級アルコールとの混合物から誘導される、化合物である。有用なアルコール混合物の例としては:イソプロピルアルコールとイソアミルアルコール;イソプロピルアルコールとイソオクチルアルコール;第2級ブチルアルコールとイソオクチルアルコール;n−ブチルアルコールとn−オクチルアルコール;n−ペンチルアルコールと2−エチル−1−ヘキシルアルコール;イソブチルアルコールとn−ヘキシルアルコール;イソブチルアルコールとイソアミルアルコール;イソプロピルアルコールと2−メチル−4−ペンチルアルコール;イソプロピルアルコールとsec−ブチルアルコール;イソプロピルアルコールとイソオクチルアルコール;イソプロピルアルコール、n−ヘキシルアルコールとイソオクチルアルコール、などが挙げられる。これらは、約40モル%〜約60モル%の4−メチル−2−ペンチルアルコールと約60モル%〜約40モル%のイソプロピルアルコールとの混合物;約40モル%のイソオクチルアルコールと約60モル%のイソプロピルアルコールとの混合物;約40モル%の2−エチルヘキシルアルコールと約60モル%のイソプロピルアルコールとの混合物;および約35モル%の第1級アミルアルコールと約65モル%のイソブチルアルコールとの混合物が挙げられる。
【0067】
リン含有酸の金属塩の調製は、金属または金属酸化物との反応によりもたらされ得る。これらの2つの反応物を簡単に混合および加熱することが、反応を発生させるために十分であり、その結果として生じた生成物は、本発明の目的のために十分に純粋である。代表的に、塩の形成は、希釈液(例えば、アルコール、水または希釈油)の存在下で行われる。中性塩は、1当量の金属酸化物または水酸化物を1当量の酸と反応させることによって調製される。塩基性金属塩は、過剰の(1当量より多い)金属酸化物または水酸化物を1当量のリン含有酸に添加することによって調製される。
【0068】
式(VII)によって表される有用なリン含有酸の金属塩は、第IA族金属、第IIA族金属もしくは第IIB族金属、アルミニウム、鉛、スズ、鉄、モリブデン、マンガン、コバルト、ニッケルまたはビスマスを含むそれらの塩が挙げられる。亜鉛は有用な金属である。これらの塩は、中性塩または過塩基性の塩であり得る。リン含有酸の有用な金属塩の例、およびそのような塩を調製するための方法は、先行技術(例えば、米国特許第4,263,150号、同第4,289,635号;同第4,308,154号;同第4,322,479号;同第4,417,990号;および同第4,466,895号)に見い出されており、これらの特許の開示は参考として本明細書中に援用される。これらの塩としては、ホスホロジチオ酸第II族金属(例えば、ジシクロヘキシルホスホロジチオ酸亜鉛、ジオクチルホスホロジチオ酸亜鉛、ジ(ヘプチルフェニル)−ホスホロジチオ酸バリウム、ジノニルホスホロジチオ酸カドミウム、およびイソプロピルアルコールとn−ヘキシルアルコールの等モルの混合物と五硫化リンの反応によって生成されるホスホロジチオ酸の亜鉛塩)が挙げられる。
【0069】
リン含有金属塩は、約0.12重量%まで、ある実施形態では約0.03重量%〜約0.12重量%、ある実施形態では約0.03重量%〜約0.10重量%、ある実施形態では約0.03重量%〜約0.08重量%、ある実施形態では約0.03重量%〜約0.05重量%の範囲のリン濃度を提供するために十分な濃度で、潤滑油組成物に使用され得る。
【0070】
(さらなる潤滑油添加剤)
潤滑油組成物はまた、当該分野に公知である他の潤滑油添加剤を含み得る。これらとしては、例えば、腐食阻害剤、酸化防止剤、粘性調整剤、分散性の粘度指数調整剤、流動点降下剤、摩擦調整剤、上記で考察したもの以外の耐摩耗剤、上記で考察したもの以外のEP剤、上記で考察したもの以外の分散剤、上記で考察したもの以外の清浄剤、流動性調整剤、銅の不動態化剤(passivator)、消泡剤、などが挙げられる。酸化防止剤としては、硫化オレフィン、ヒンダードフェノール、アルキル化されたジフェニルアミン、モリブデン化合物、などが挙げられる。各々の前記の添加剤は、使用される場合、潤滑剤に所望の性質を与えるために、機能的に有効な量で使用される。一般に、これらの添加剤の各々の濃度は、使用される場合、潤滑油組成物の全重量に基づいて約0.001重量%〜約20重量%、ある実施形態では約0.01重量%〜約10重量%の範囲である。
【0071】
(濃縮物および希釈液)
前記の潤滑油添加剤は、潤滑油組成物を形成するために、基油に直接的に添加され得る。しかし、ある実施形態では、さらなる濃縮物を形成するために、1種以上の添加剤は実質的に不活性な、通常は液体の有機希釈液(例えば、鉱油、合成油、ナフサ、アルキル化された(例えば、C10〜C13アルキル)ベンゼン、トルエンまたはキシレン)で希釈される。これらの濃縮物は、通常、約1重量%〜約99重量%、ある実施形態では10重量%〜90重量%のそのような希釈液を含む。その濃縮物は、潤滑油組成物を形成するために、基油に添加され得る。
【実施例】
【0072】
(実施例1)
表1に開示した潤滑油組成物を、Mitsubishi GDIエンジン試験を使用して試験した。そのエンジンは、1.8リットル、4気筒、直接注入ガソリンエンジンである。以下の試験サイクルを、60時間の試験時間の間、60回繰り返した:
【0073】
【数1】

試験の終わりに、エンジンを急停止させて、堆積物の重さを測定するために、堆積物を有する吸気バルブと有さない吸気バルブの重さを量った。その結果を表Iに示した。例1〜3は、本発明の範囲内である。例C−1は、比較上の目的として提供した。
【0074】
【表1−1】

【0075】
【表1−2】

(実施例2)
表IIに開示した潤滑油組成物を、VW FSIエンジン試験を使用して試験した。そのエンジンは、1.1リットル、4気筒、直接注入ガソリンエンジンである。試験サイクルは、Braunschweigサイクルである。試験サイクルは、10分間であり、それを600回繰り返した。試験時間は100時間である。試験の終わりに、エンジンを急停止させて、堆積物の重さを測定するために、堆積物を有する吸気バルブと有さない吸気バルブの重さを量った。例4〜6は、本発明の範囲内である。例C−2は、比較の目的のために、提供した。その結果を表IIに示す。
【0076】
【表2−1】

【0077】
【表2−2】

本発明は、特定の実施形態に関して説明しているが、その種々の改変が、本明細書を読むことにより、当業者に明白になることが理解される。従って、本明細書中に開示された発明は、添付の特許請求の範囲内に収まるような改変を包含することを意図されることは、理解されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直接注入エンジンにおける吸い込みバルブの堆積物を減少させる方法であって、該方法が、基油混合物を含む潤滑油組成物を用いてエンジンを潤滑させる工程を包含し、該基油混合物が、(i)グループIIIオイル、グループIVオイル、またはその混合物、(ii)合成エステルオイルとの組み合わせを含み、(i)と(ii)との重量比が約0.2:1〜約6:1である、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、前記直接注入エンジンが、火花点火機関である、方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法であって、前記直接注入エンジンが、圧縮点火機関である、方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法であって、前記潤滑油組成物が、100℃で約16.3cStまでの粘性を有する、方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法であって、前記潤滑油組成物が、5、10、20、30、40、50、60、0W−20、0W−30、0W−40、0W−50、0W−60、5W−20、5W−30、5W−40、5W−50、5W−60、10W−20、10W−30、10W−40、10W−50、15W−20、15W−30、15W−40、15W−50、20W−20、20W−30、20W−40または20W−50のSAE粘性グレードを有する、方法。
【請求項6】
請求項1に記載の方法であって、前記グループIIIオイルが、少なくとも約95重量%の飽和含有量および約0.02重量%までの硫黄含有量を有する、方法。
【請求項7】
請求項1に記載の方法であって、前記グループIVオイルが、約4個〜約30個の炭素原子を有する1種以上のモノマーから誘導されるポリアルファオレフィンオイルである、方法。
【請求項8】
請求項1に記載の方法であって、前記グループIVオイルが、100℃で約2cSt〜約15cStの粘性を有するポリアルファオレフィンオイルである、方法。
【請求項9】
請求項1に記載の方法であって、前記合成エステルオイルが、モノカルボン酸またはジカルボン酸およびアルコールまたはポリオールから誘導される、方法。
【請求項10】
請求項1に記載の方法であって、前記合成エステルオイルが、アジピン酸ジブチル、セバシン酸ジ(2−エチルヘキシル)、フマル酸ジ−n−ヘキシル、セバシン酸ジオクチル、アゼライン酸ジイソオクチル、アゼライン酸ジイソデシル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジデシル、セバシン酸ジエイコシル、リノール酸二量体の2−エチルヘキシルジエステル、1モルのセバシン酸を2モルのテトラエチレングリコールおよび2モルの2−エチルヘキサン酸と反応させることによって形成されるエステル、またはそれらの2種以上の混合物を含む、方法。
【請求項11】
請求項1に記載の方法であって、前記合成エステルオイルが、約8個〜約10個の炭素原子のモノカルボン酸およびトリメチロールプロパンから誘導される、方法。
【請求項12】
請求項1に記載の方法であって、前記合成エステルオイルが、約12個〜約20個の炭素原子のモノカルボン酸および約12個〜約20個の炭素原子のアルコールから誘導される、方法。
【請求項13】
請求項1に記載の方法であって、前記潤滑油組成物が、少なくとも約10個の脂肪族炭素原子の置換基を有するアシル化された窒素含有化合物をさらに含む、方法。
【請求項14】
請求項13に記載の方法であって、前記アシル化された窒素含有化合物が、カルボン酸アシル化剤および少なくとも1種の−NH−基を含む少なくとも1種のアミノ化合物から誘導され、該アシル化剤が、イミド、アミド、アミジンまたは塩結合を介して該アミノ化合物に結合される、方法。
【請求項15】
請求項14に記載の方法であって、前記アミノ化合物が、式:
【化1】

によって表されるアルキレンポリアミンであり、ここで、Uは、約2個〜約10個の炭素原子のアルキレン基であり;各Rは、独立して、水素原子、ヒドロカルビル基、ヒドロキシ置換ヒドロカルビル基、または約30個までの炭素原子を含むアミン置換ヒドロカルビル基であり、但し、少なくとも1種のRは、水素原子であり;nは1〜約14である、方法。
【請求項16】
請求項13に記載の方法であって、前記アシル化された窒素含有化合物が、ポリイソブテン置換スクシンイミドであり、コハク酸基とポリイソブテンとの当量の比が、約0.6:1〜約1.8:1の範囲である、方法。
【請求項17】
請求項13に記載の方法であって、前記アシル化された窒素含有化合物が、ポリイソブテン置換スクシンイミドであり、コハク酸基とポリイソブテンとの当量の比が、約0.9:1〜約1.5:1の範囲である、方法。
【請求項18】
請求項13に記載の方法であって、前記アシル化された窒素含有化合物が、ポリイソブテン置換スクシンイミドであり、該ポリイソブテン置換スクシンイミドが、ポリイソブテン置換無水コハク酸またはポリイソブテン置換コハク酸および少なくとも1種のポリアミンから誘導され、該ポリイソブテン置換無水コハク酸由来のC=Oと該ポリアミン由来のNとの比が、約1.18:1までである、方法。
【請求項19】
請求項13に記載の方法であって、前記アシル化された窒素含有化合物が、ポリイソブテン置換スクシンイミドであり、該ポリイソブテン置換スクシンイミドが、ポリイソブテン置換無水コハク酸またはポリイソブテン置換コハク酸および少なくとも1種のポリアミンから誘導され、該ポリイソブテン置換無水コハク酸由来のC=Oと該ポリアミン由来のNとの比が、約1.1:1までである、方法。
【請求項20】
請求項13に記載の方法であって、前記アシル化された窒素含有化合物が、ポリイソブテン置換スクシンイミドであり、該ポリイソブテン置換スクシンイミドが、ポリイソブテン置換無水コハク酸またはポリイソブテン置換コハク酸および少なくとも1種のポリアミンから誘導され、該ポリイソブテン置換基が、約1500〜約3000の範囲の数平均分子量を有し、該ポリイソブテン置換無水コハク酸またはポリイソブテン置換コハク酸由来のC=Oと該ポリアミン由来のNとの比が、約1:2までである、方法。
【請求項21】
請求項13に記載の方法であって、前記アシル化された窒素含有化合物が、ポリイソブテン基において少なくとも約50個の脂肪族炭素原子を含むポリイソブテン置換スクシンイミドである、方法。
【請求項22】
請求項1に記載の方法であって、前記潤滑油組成物が、マンニッヒ(Mannich)縮合物をさらに含む、方法。
【請求項23】
請求項1に記載の方法であって、前記潤滑油組成物が、式
【化2】

によって表される化合物の金属塩をさらに含み、ここで、X、XならびにXおよびXは独立して、OまたはSであり、aおよびbは、独立して、0または1であり、ならびにRおよびRは、独立して、ヒドロカルビル基である、方法。
【請求項24】
請求項1に記載の方法であって、前記潤滑油組成物が、アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩の清浄剤をさらに含む、方法。
【請求項25】
請求項1に記載の方法であって、前記潤滑油組成物が、少なくとも1種の清浄剤、分散剤、腐食阻害剤、酸化防止剤、粘性改良剤、EP剤、流動点降下剤、摩擦調整剤、流動性調整剤、消泡剤、またはその2つ以上の混合物をさらに含む、方法。
【請求項26】
請求項1に記載の方法であって、前記潤滑油組成物が、約1.8重量%までの硫酸化の灰含有量を有する、方法。
【請求項27】
直接注入エンジンにおける吸い込みバルブの堆積物を減少させる方法であって、該方法が、以下:
ポリアルファオレフィンオイルおよび合成エステルオイルを含む基油混合物であって、該ポリアルファオレフィンオイルと該合成エステルオイルとの重量比が、約0.2:1〜約6:1である、基油混合物;ならびに
ポリイソブテン置換スクシンイミドであって、該ポリイソブテン置換スクシンイミドが、ポリイソブテン置換無水コハク酸またはポリイソブテン置換コハク酸および少なくとも1種のポリアミンから誘導され、コハク酸基とポリイソブテンとの当量の比が、約0.9:1〜約1.8:1の範囲であり、該ポリイソブテンの数平均分子量が、約750〜約3000の範囲である、ポリイソブテン置換スクシンイミド
を含む潤滑油組成物を用いてエンジンを潤滑させる工程を包含する、方法。
【請求項28】
直接注入エンジンにおける吸い込みバルブの堆積物を減少させる方法であって、該方法が、以下:
ポリアルファオレフィンオイルおよび合成エステルオイルを含む基油混合物であって、該ポリアルファオレフィンオイルと該合成エステルオイルとの重量比が、約0.2:1〜約6:1である、基油混合物;ならびに
ポリイソブテン置換スクシンイミドであって、該ポリイソブテン置換スクシンイミドが、ポリイソブテン置換無水コハク酸またはポリイソブテン置換コハク酸および少なくとも1種のポリアミンから誘導され、ポリイソブテン置換無水コハク酸由来のC=Oとポリアミン由来のNとのモル比が、約1.18:1までであり、ポリイソブテンの数平均分子量が、約750〜約3000の範囲である、ポリイソブテン置換スクシンイミド
を含む潤滑油組成物を用いてエンジンを潤滑させる工程を包含する、方法。

【公表番号】特表2006−522204(P2006−522204A)
【公表日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−508780(P2006−508780)
【出願日】平成16年2月19日(2004.2.19)
【国際出願番号】PCT/US2004/005073
【国際公開番号】WO2004/094573
【国際公開日】平成16年11月4日(2004.11.4)
【出願人】(591131338)ザ ルブリゾル コーポレイション (203)
【氏名又は名称原語表記】THE LUBRIZOL CORPORATION
【住所又は居所原語表記】29400 Lakeland Boulevard, Wickliffe, Ohio 44092, United States of America
【Fターム(参考)】