説明

直流モータ

【課題】電流の流れを切り替え、または変更せずに回転することができる直流モータを提供する。
【解決手段】ロータ16は、円筒形に構成された永久磁石20を有し、この円筒形の外側表面をN極、内側表面をS極とする。ロータ16と同軸に円筒形のステータコア22を有するステータ18を配置する。ステータコア22にはコイル24が巻回される。ロータとステータの間の空間内に位置するコイル24の導線には1方向に電流が流れる。この導線には、力が作用するが、導線はステータコアに固定されているため、永久磁石に反力が作用し、ロータ16が回転する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直流モータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の直流モータは、ロータの回転に伴って、電流の流れを変更または切り換えることで連続した回転動作を達成している。直流モータとして代表的な整流子モータにおいては、ロータの電機子に流れる電流の向きを、整流子とブラシにより切り換えている。また、ブラシレスモータにおいては、位置センサ、レゾルバなどの検出手段によりロータの回転角度位置を検出し、ロータの位置に応じて変化する電力を供給している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−136696号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の直流モータでは、ロータの回転に伴って電流の流れを変更、または切り換えるための構成が必要であった。
【0005】
本発明は、電流の流れの変更、切り換えを行わずに、回転する直流モータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る直流モータは、ロータと、このロータの外側に、ロータと同軸に配置されたステータを有する。ロータは、外側表面が第1の極、内側表面が第2の極となる円筒形に構成された永久磁石を有する。ステータは、円筒形状のステータコアにコイルが1方向に巻回されている。コイルの、ロータとステータの間に位置する部分は、ロータおよびステータの軸線と略平行に配置され、また巻回の方向が1方向であることから、これらに流れる電流の向きも1方向である。ロータに配置されている永久磁石は、円筒の外側表面が第1の極(以下、N極とする。)のみであり、磁力線は、ロータの全周に亘ってロータからステータコアに向けて延びる。この磁界中に位置するコイルの導線には、前述のように1方向の電流が流れるので、コイルの各導線に同じ向きの周方向の力が働く。しかし、コイルはステータに固定されており動くことができないので、その反作用としてロータに回転力が作用する。これにより、ロータが回転する。
【0007】
また、本発明に係る直流モータは、ロータとステータの端面に対向して配置された、ロータに対し補助的に回転力を与える回転補助機構を有する。回転補助機構は、ロータと共に回転する円板または円環形状の内側部材と、この内側部材の周囲に配置された外側部材を有し、これらの内側部材と外側部材の互いに対向する面には、相手側の面に向けて突出し、また周方向に等間隔で配列された歯を有する。歯の数は、前記内側部材、前記外側部材のそれぞれの歯の数が3以上であって、一方が他方の整数倍にならないような数が選ばれている。また、個々の歯の形状は、軸線直交断面において扇形である。ロータが回転したとき、その向きにおいて、内側部材の歯と外側部材の歯の対向する面は、前記の扇形の半径に相当する歯面であり、この歯面の反対側の歯面が扇形の円弧に相当する歯面である。この非対称な形状が、回転補助機構の外側部材から内側部材に向かう磁力線の偏りを生じさせ、これによりロータの回転を補助する回転力が生じる。
【発明の効果】
【0008】
コイルに1方向の直流電流を供給することによりロータの連続的な回転を生じさせることができる。電流の向きを変えるための構成要素、例えば整流子、ブラシ等が不要となる。ロータの回転角度を検出する構成要素、例えばレゾルバ等が不要となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本実施形態の直流モータ10の概略構成を示す図である。
【図2】モータ本体12の軸線に直交する断面を示す図である。
【図3】直流モータ10の軸線を含む断面を示す図である。
【図4】回転補助機構の作用を説明するための図である。
【図5】直流モータ10を発電機として利用する場合の回路構成の一部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を、図面に従って説明する。図1は、本実施形態の直流モータ10の概略構成を示す図である。直流モータ10は、モータ本体12とモータ本体12の側方に配置される回転補助機構14を有する。図1(a)は直流モータ10の全体を概観する斜視図であり、図1(b)は回転補助機構14を図1(a)において左方から見たときの断面図である。モータ本体12は、円柱形状のロータ16と、ロータ16を囲むように配置され、ロータ16の円柱の軸線と同軸の円筒形状のステータ18を有する。
【0011】
ロータ16は、円筒形に配置された永久磁石20を含み、ロータ16の円柱形状の端から外側に向けて円柱軸線に沿って延びるモータ軸21が配置される。モータ軸は、円筒形に配置された永久磁石20の内側を貫通するように配置することができ、永久磁石20の内側に位置する部分が、永久磁石20と共に円柱形状を呈する。永久磁石20は、円筒の外側がN極、内側がS極となるように配置される。この極の配置は逆向きでもよい。ステータ18は、磁性鋼製の円筒形のステータコア22と、ステータコア22に巻回されたコイル24を含む。ステータコア22は、ロータ16の周囲を囲むように、また径方向にロータと間隔をあけて配置される。コイル24の導線は、ステータコア22の軸線を含む断面を囲むように巻回している。また、コイル24の導線は、ステータコア22の周方向に順次移動して巻かれている。
【0012】
ロータ16およびステータコア22の、これらの軸線方向において隣接する位置に、回転補助機構14が配置される。回転補助機構14は、ロータ16と共に回転する内側部材26と、内側部材の周囲を囲んで配置される固定された外側部材28を有する。内側部材26は略円板形状であり、モータ軸21に固定されている。外側部材28は円環形状を有している。内側部材26と外側部材28の対向する面には、相手側の部材に向けて突出する歯30,32が設けられている。この直流モータ10においては、内側部材の歯30は、内側部材26の外周面に6個が周方向に等間隔で配置され、外側部材の歯32は、外側部材28の内周面に8個が周方向に等間隔で配置されている。内側部材の歯30と外側部材の歯32の数はこれに限らず、それぞれ3個以上であって、一方が他方の整数倍にならない組み合わせを採用することができる。
【0013】
内側および外側部材に設けられた歯30,32の個々の断面形状は、扇形である。内側部材26は、後述するように、図1(b)において時計方向に回転する。内側部材の歯30は、この回転方向に対し前面が扇形の半径に対応する歯面であり、反対側の面が扇形の円弧に対応する歯面である。外側部材の歯32は、回転する内側部材の歯30の前面に対向する側の面が扇形の半径に対応する面であり、反対側の面が扇形の円弧に対応する面である。
【0014】
図2は、ロータ本体12部分の軸線に直交する概略断面図であり、図3は、直流モータ10の軸線を含む概略断面図である。コイル24を形成する導線34は、ロータ16とステータコア22の間をモータの軸線に沿う方向に延びる部分34aと、ステータコア22の外側を軸線に沿う方向に延びる部分34bを含む。導線の部分34aを流れる電流は、図2においては、紙面の奥から手前に貫く方向に流れ、図3においては、右から左へと流れる。磁束は、図中、破線で示すように流れる。ロータ16とステータコア22の間の空間においては、半径方向外側に向けて延びる。導線の部分34aは、この磁界の中に位置し、電流が流れると、個々の導線の部分34aは、図2において反時計回りの力F1を受ける。しかし、導線34は固定されており動かない。この導線の部分34aに作用する力の反作用として、永久磁石20、すなわちロータ16を時計回りに回転させようとする力(F2)が発生する。これにより、ロータ16が回転する。
【0015】
回転補助機構14は、図3に示すように、磁気回路の一部を構成する。直流モータ10においては、永久磁石20、ステータコア22、回転補助機構14の外側部材28、同内側部材26を通って永久磁石20に戻る磁気回路が形成されている。回転補助機構14において、外側部材の歯32から内側部材の歯30に向かって流れる磁束により、これらの歯の間に力が作用する。この力は、個々の歯の形状および配列ピッチにより内側部材26を時計回り、すなわちロータ16と同じ向きに回転させる方向が優勢となるようにされている。
【0016】
図4は、回転補助機構14の内側、外側部材の歯30,32の位置関係と、磁束の向きの関係を展開して示す図である。内側部材の連続する二つの歯を符号30a、30bで示し、外側部材の連続する二つの歯を符号32a、30bで示す。また、内側部材の角度ピッチがpi、外側部材の角度ピッチがpoである。前述のように、内側部材の歯30は6個、外側部材の歯32は8個であるので、角度ピッチはpi>poとなる。図4(a)は、内側部材の歯30aの前面36aと、この前面に対向する外側部材の歯32aの対向面38aがほぼ一致した位置を示している。歯32aから歯30aに向かう磁束Φ1は、図示するように径方向に対し斜めになり、このため、歯30aを右に動かす吸引力(ロータを回転させる力)が発生する。これが、内側部材26を回転させる力F3となる。
【0017】
図4(b)は、図4(a)の状態から、内側部材26が若干回転した状態を示している。この位置では、歯30aの前面36aの反対側の面である後面40aの一部と、歯32aの対向面38aの反対側の面である背面42aの一部(特に歯の頂部付近)が対向している。この対向する後面40aと背面42aの間で磁束Φ2が流れる。磁束Φ2は、ほぼ径方向を向くため、内側部材26を回転させる力はほとんど発生しない。
【0018】
図4(c)は、内側部材26が更に回転した状態を示している。歯30aと歯32aにおいては、まだ後面40aと背面42aが対向しており、磁束Φ3はほぼ径方向に向く。一方、次の歯、すなわち歯30bと歯32bが接近し、このためこれらの歯の間にも磁束Φ4が流れる。この磁束Φ4は、径方向に対し傾き、このため、歯30bを右に動かす吸引力が生じる。歯30bと歯32bの最短距離が、歯30aと歯32aの最短距離より短くなると、主磁束が通る歯が、歯30a,32aから歯30b,32bへと切り替わる。このようにして回転補助機構14において発生するロータを回転させようとする力は、増減はあるものの一定方向に作用する。
【0019】
図5は、直流モータ10を発電機として作用させるための回路である。直流モータ10のコイル24の両端のトランジスタTrをオフにして、ロータ16を正方向に回転させると、ダイオードD1、コイル24、ダイオードD2を順に通って、負母線50から正母線52へと電流が流れる。また、ロータ16が逆方向に回転する場合、ダイオードD3、コイル24、ダイオードD4を順に通って負母線50から正母線52に電流が流れる。このように、ロータ16の回転方向にかかわらず、負母線50から正母線52に電流が流れる。
【符号の説明】
【0020】
10 直流モータ、12 モータ本体、14 回転補助機構、16 ロータ、18 ステータ、20 永久磁石、22 ステータコア、24 コイル、26 内側部材、28 外側部材、30,32 歯。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒外側表面が第1の極、円筒内側表面が第2の極となる円筒形に構成された永久磁石を有するロータと、
ロータの周囲に配置される円筒形状のステータコアと、このステータコアに1方向に巻回されたコイルと、を有するステータと、
ロータおよびステータの端面に対向して配置され、ロータに対し補助的に回転力を与える回転補助機構と、
を有し、
回転補助機構は、
ロータと共に回転する円板また円環形状の内側部材と、内側部材の周囲に固定配置される円環形状の外側部材とを有し、
前記内側部材と前記外側部材の互いに対向する面には、相手側の面に向けて突出し、周方向に等間隔で配列された歯を有し、
前記内側部材の歯の数と、前記外側部材の歯の数は、それぞれ3以上であって、一方が他方の整数倍とならない数とされ、
前記歯は、軸線直交断面において扇形であり、ロータの回転方向において前記内側部材と前記外側部材の前記扇形の半径に相当する歯面が対向し、この対向する歯面の反対側の歯面が扇形の円弧に相当する歯面である、
直流モータ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2012−70550(P2012−70550A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−213706(P2010−213706)
【出願日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】