説明

直流給電装置

【課題】交流成分に影響されずに正確に、プラス側又はマイナス側給電線のいずれかで地絡が生じたかを簡便に検出できる地絡検出機能を備える直流給電装置を提供する。
【解決手段】プラス側給電線とマイナス側給電線との間の検出電圧Vaと一方の極性の前記給電線と接地電位部間との検出電圧Vb又はVcとの電圧比率(Vb/Va)又は(Vc/Va)を演算する電圧比率演算回路を有すると共に、電圧比率(Vb/Va)もしくは(Vc/Va)が地絡判断基準信号X1以上もしくはY1以下のときは、プラス側給電線と接地電位部との間に地絡が発生した可能性があるものとして第1の地絡検出信号を出力し、又は、前記電圧比率(Vb/Va)もしくは(Vc/Va)が地絡判断基準信号X2以下もしくはY2以上のときは、マイナス側給電線と接地電位部との間に地絡が発生した可能性があるものとして第2の地絡検出信号を発生する地絡判別回路を備える直流給電装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、直流電力を供給する装置、特に地絡の発生を検出する直流地絡検出回路を備える直流給電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の通信用電源装置は、一般的にDC48Vの出力電圧対応のものが多いが、最近ではそれよりも大幅に高い直流電圧、例えば400V程度の直流電圧を出力する直流電力供給装置の利用が提案されている。このように直流出力電圧がDC400V程度に高くなっても、通信用電源の性格から無停電が要求されるために、電力供給状態(活線状態)で保守・点検など種々の作業を行わなければならない。DC48V系の場合には、人体による地絡が発生しても、通常では感電の危険性が低いために直接接地が主流である。
【0003】
しかし、直流出力電圧がDC400V程度の高電圧になると、人体による地絡が発生する場合、感電の危険性が高いので、人体の安全性を確保することが最優先に考えられなければならない。交流系統の地絡検出では、変流器(CT)を使用する方法が一般的であり、高電圧交流の地絡を検出する一例として、例えば零相変流器(ZCT)で地絡電流を監視する地絡検出方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
当該文献の発明によれば、回路に地絡が生じていない正常な状態では、往復の電流はそれぞれほぼ同じであるので、零相変流器を流れる電流は行きと帰りの電流値は同じであり、差は発生しないが、回路に地絡が生じると、回路を流れる行きと帰りの電流の大きさが異なり、零相変流器がこの電流の大きさの差異を検出して地絡の発生を検出する。このような零相変流器を用いた地絡方法は、交流電力系統における地絡の発生を検出する方法としては有効であるが、プラス側給電線とマイナス側給電線のいずれで地絡が生じたのかを判別できないので、直流電力系統の地絡を検出するのは不向きである。
【0005】
直流電力系統の地絡を検出する方法として、プラス側給電線、マイナス側給電線それぞれを高抵抗値の抵抗を介して接地する両端抵抗接地方法が知られている。この両端抵抗接地方法においては、プラス側給電線と接地との間、マイナス側給電線と接地との間に電圧検出器を接続し、それらの間の電圧を検出して地絡の検出を行っている。例えば、太陽電池を使用する直流電源の場合、出力が大きく変動することがあり、両端抵抗接地方法をもってしても、このように大きく変動する給電系統の地絡を正確に検出することは難しい。この問題を解決するために、特定の回路構成のホーイストンブリッジをプラス側給電線とマイナス側給電線との間に接続して電圧を検出し、入力電圧の変動に影響されない地絡抵抗の検出レベルを得るものがある(例えば、特許文献2参照)。このような特定の回路構成のホーイストンブリッジでは種々の抵抗とダイオードとを組み合わせて、検出レベルを調整している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2008/026276号
【特許文献2】特開平09―215175号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、商用交流電力を整流して直流に変換する整流器を備える直流電源の場合には接地電位に交流分が重畳されるので、太陽電池を使用する直流電源、つまり交流分が重畳されない直流系統の地絡を検出する場合に比べて、地絡が生じたかを正確に検出するのは難しいことである。また、感電事故が発生したときに大事に至らないように地絡対象物を流れる電流を制限した上で、どちらの極性の給電線側で地絡が生じたかを正確に検出するのは難しいことである。前掲の特許文献2では、プラス給電線側で発生する地絡を検出するP側検出部とマイナス給電線側で発生する地絡を検出するN側検出部とを備えているが、前記P側検出部と前記N側検出部とが共通の一つの基準電圧を用い、それぞれの電圧検出値と一つの基準電圧とを比較して地絡の発生を検出しているので、実際上、どちら側で地絡が発生したかを判別するのが難しい場合がある。また、各地絡検出装置毎に最適な検出レベルを設定するのが煩わしく、かつ難しいという課題がある。
【0008】
本発明は上記の課題に鑑み、接地電位に交流電圧分が重畳されていても、どちらの極性の給電線側で地絡が生じたかを正確かつ容易に検出する機能を有する直流給電装置を提案することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の発明は、プラス側給電線とマイナス側給電線との間に直流電力を供給する直流給電回路と、接地される接地電位部と前記プラス側給電線との間に接続される第1の接地用抵抗と、前記接地電位部と前記マイナス側給電線との間に接続される第2の接地用抵抗と、 前記プラス側給電線と前記マイナス側給電線との間に生じる電圧に比例する検出電圧Vaを出力する第1の電圧検出器と、前記プラス側給電線と前記接地電位部との間に生じる電圧に比例する検出電圧Vc、又は前記マイナス側給電線と前記接地電位部との間に生じる電圧に比例する検出電圧Vbを出力する第2の電圧検出器と、前記検出電圧Vaと前記検出電圧Vbとの電圧比率(Vb/Va)、又は前記検出電圧Vaと前記検出電圧Vcとの電圧比率(Vc/Va)を演算して求める電圧比率演算回路とを備え、前記第1の接地用抵抗の抵抗値をr1とし、前記第2の接地用抵抗の抵抗値をr2とし、地絡が発生したときの地絡抵抗をr3とし、誤検出防止用の安全電圧をVsとし、r1×r3/(r1+r3)をr13で表し、r2×r3/(r2+r3)をr23で表すと、第1の地絡判断基準信号X1は、r2/(r13+r2)−Vs/Vaの式から求められる数値以下の範囲から選定される値で、r2/(r1+r2)+Vs/Vaの式から求められる数値より大きい範囲から選定される値に対応する信号であり、前記電圧比率演算回路側から入力される前記電圧比率(Vb/Va)が前記第1の地絡判断基準信号X1以上になるとき、前記プラス側給電線と前記接地電位部との間に地絡が発生した可能性があるものとして第1の地絡検出信号を出力し、もしくは、第2の地絡判断基準信号X2はr23/(r1+r23)+Vs/Vaの式から求められる数値以上の範囲から選定される値で、r2/(r1+r2)−Vs/Vaの式から求められる数値より小さい範囲から選定される値に対応する信号であり、前記電圧比率演算回路側から入力される前記電圧比率(Vb/Va)が前記第2の地絡判断基準信号X2以下になるとき、前記マイナス側給電線と前記接地電位部との間に地絡が発生した可能性があるものとして第2の地絡検出信号を出力し、又は、別の第1の地絡判断基準信号Y1は、r13/(r13+r2)+Vs/Vaの式から求められる数値以上の範囲から選定される値で、r1/(r1+r2)−Vs/Vaから求められる数値より小さい範囲から選定される値に相当する信号であり、前記電圧比率演算回路側から入力される前記電圧比率(Vc/Va)が前記第1の地絡判断基準信号Y1以下になるとき、前記プラス側給電線と前記接地電位部との間に地絡が発生した可能性があるものとして第1の地絡検出信号を出力し、もしくは、別の第2の地絡判断基準信号Y2は、r1/(r1+r23)−Vs/Vaの式から求められる数値以下の範囲から選定される値で、r1/(r1+r2)+Vs/Vaの式から求められる数値より大きい範囲から選定される値に対応する信号であり、前記電圧比率演算回路側から入力される前記電圧比率(Vc/Va)が前記第2の地絡判断基準信号Y2以上になるとき、前記マイナス側給電線と前記接地電位部との間に地絡が発生した可能性があるものとして第2の地絡検出信号を出力する地絡判別回路と、前記第1の地絡検出信号又は前記第2の地絡検出信号が予め決めた設定時間を越えて継続しないときには、前記第1の地絡検出信号又は前記第2の地絡検出信号に対応する次の段階の地絡検出信号を発生しないマスク回路とを有することを特徴とする直流給電装置を提案する。
【0010】
第2の発明は、請求項1に記載の直流給電装置において、前記直流給電回路の故障又は停電などの不都合が発生していない状態を示す条件信号を受信しないときには、前記地絡判別回路が前記第1の地絡検出信号又は前記第2の地絡検出信号を出力していても、前記第1の地絡検出信号又は前記第2の地絡検出信号に対応する最終段階の地絡検出信号が出力されないことを特徴とする直流給電装置を提案する。
【0011】
第3の発明は、請求項1又は請求項2に記載の直流給電装置において、前記接地電位部と前記プラス側給電線との間に接続される第1のスイッチと、前記接地電位部と前記マイナス側給電線との間に接続される第2のスイッチと、前記第1の地絡検出信号又は前記第2の地絡検出信号に対応する前記次の段階の地絡検出信号もしくは前記最終段階の地絡検出信号を受けるとき、前記第1のスイッチ又は前記第2のスイッチを閉じる駆動信号を出力するスイッチ用駆動回路とを備えることを特徴とする直流給電装置を提案する。
【0012】
第4の発明は、請求項1から請求項3のいずれかに記載の直流給電装置において、前記第1の地絡検出信号又は前記第2の地絡検出信号に対応する前記次の段階の地絡検出信号もしくは前記最終段階の地絡検出信号を受けるとき、前記プラス側給電線に地絡が生じたことを示す第1の警報、又は前記マイナス側給電線に地絡が生じたことを示す第2の警報を出力する警報手段を備えることを特徴とする直流給電装置を提案する。
【0013】
第5の発明は、請求項1から請求項4のいずれかに記載の直流給電回路において、前記直流給電回路は、商用交流電源を入力電源とし、前記商用交流電源からの電力を直流に変換する整流回路又は前記商用入力電源が停電したときに前記プラス側給電線と前記マイナス側給電線との間に無停電で直流電力の供給を可能にする蓄電池を備えることを特徴とする直流給電装置を提案する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、後述する検出電圧Vaと検出電圧Vbとの電圧比率(Vb/Va)が接地用抵抗などの値によって決められる所定の範囲から選定される第1の地絡判断基準信号X1もしくは第2の地絡判断基準信号X2と比較され、プラス側給電線もしくはマイナス側給電線に地絡が発生されているかを検出することができる。ノイズ電圧や交流電圧分によって影響されず、誤検出する可能性が非常に小さく、プラス側給電線又はマイナス側給電線に地絡が発生したかを正確に検出できる。又は、検出電圧Vaと検出電圧Vcとの電圧比率(Vc/Va)が接地用抵抗などの値によって決められる所定の範囲から選定される別の第1の地絡判断基準信号Y1もしくは第2の地絡判断基準信号Y2と比較され、プラス側給電線もしくはマイナス側給電線に地絡が発生しているかを検出することができる。ノイズ電圧や交流電圧分によって影響されず、誤検出する可能性が非常に小さく、プラス側給電線又はマイナス側給電線に地絡が発生したかを正確に検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る実施形態1の直流給電装置を説明するための図面である。
【図2】本発明に係る実施形態2の直流給電装置を説明するための図面である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、直流給電系統の出力側のいずれかの極性の給電線に地絡が発生したとき、プラス側給電線で生じた地絡か、又はマイナス側給電線で生じた地絡かを正確かつ迅速に検出する機能を備えた直流給電装置である。双方の給電線間の検出電圧と、プラス側又はマイナス側のいずれか一方の給電線と接地電位部との間に接続された高抵抗の接地用抵抗の検出電圧との電圧比率を求め、その電圧比率が第1の地絡判断基準信号X1もしくはY1よりも大きいか小さいかを比較し、又は、第2の地絡判断基準信号X2もしくはY2よりも大きいか小さいかを比較することによって、どちらの給電線側で地絡が生じたかを正確かつ迅速に検出することができる。なお、本発明は、以下に示す実施形態に限定されるものではない。また、本発明を説明するのに特に必要とされない機構や回路などについては図示するのを省略する。他の実施形態でも同様である。
【0017】
[実施形態1]
図1を用いて本発明に係る実施形態1の直流給電装置について説明する。図1において、商用の単相交流電力又は三相交流電力などを入力電力として受電する直流給電回路1は、プラス側給電線2とマイナス側給電線3との間に、従来の通信用直流電源が給電する直流電圧に比べて高い直流電圧、例えば400V又はこれを超える大きさの直流電圧を給電し得る構成となっている。直流給電回路1は、具体的な回路構成は示さないが、商用交流電力を直流電力に変換する整流器などからなる電力変換部を有する直流電源、又は前記電力変換部と、複数の蓄電池を少なくとも直列に接続した蓄電池ユニットなどを備える無停電直流電源からなる。前記蓄電池ユニットは、従来に比べて高い直流電圧に対応する直列個数の蓄電池を接続したものからなる。なお、本発明は直流給電回路1の構成に限定されるものではなく、任意の構成の直流電源でよい。
【0018】
プラス側給電線2、マイナス側給電線3の一端はそれぞれプラス側負荷端子4、マイナス側負荷端子5に接続される。プラス側負荷端子4、マイナス側負荷端子5には、図示しない1個以上の負荷が接続される。負荷端子4、5に接続される負荷は、単体で、又は複数個並列に、あるいは直並列に配置される各種の情報機器などである。プラス側給電線2と接地電位部6との間には、第1の接地用抵抗7が接続されている。マイナス側給電線3と接地電位部6との間には、第2の接地用抵抗8が接続されている。接地電位部6は接地された部分に接続され、固定電位にある。
【0019】
図1では、第1の接地用抵抗7及び第2の接地用抵抗8は、直流給電回路1と負荷端子4、5との間に挿入されているが、負荷端子4、5の外側、つまり図1では負荷端子4、5の右側に接続されている接地用抵抗を利用してもよい。第1の接地用抵抗7及び第2の接地用抵抗8は任意の高抵抗でよいが、一例としては感電事故が生じても大事に至らない程度の抵抗値であることが好ましい。例えば、人体の抵抗はほぼ4kΩ程度であると言われているので、感電事故時には地絡が生じたプラス側給電線2又はマイナス側給電線3と接地電位部6との間に4kΩ程度の抵抗が接続されたものと等価であるとみることができる。
【0020】
この場合、プラス側給電線2と接地電位部6との間で感電事故が起こったときには、第1の接地用抵抗7と並列に前記4kΩの抵抗が接続されたことになり、前記4kΩの抵抗を流れる電流を感電事故が生じても大事に至らない程度の電流値以下(例えば10mA以下)に制限すればよい。プラス側給電線2とマイナス側給電線3との間の直流電圧がほぼ400Vであるとき、第1の接地用抵抗7及び第2の接地用抵抗8は、一例として45〜50kΩの抵抗値の範囲で選定される。第1の接地用抵抗7及び第2の接地用抵抗8は、電力損失の低減という面から見ると、前述した45〜50kΩの抵抗値の範囲よりも高い抵抗値のものを選定するのが好ましい。
【0021】
第1の電圧検出器9は、プラス側給電線2とマイナス側給電線3との間に接続され、プラス側給電線2とマイナス側給電線3との間の電圧、つまり直列に接続される第1の接地用抵抗7と第2の接地用抵抗8との両端の電圧を検出する。なお、具体的な構成は図示しないが、第1の電圧検出器9は、第1の接地用抵抗7及び第2の接地用抵抗8双方の抵抗値を合算した抵抗値よりも大幅に高い抵抗値を有する高電圧抵抗と電圧検出用抵抗とを直列接続した一般的な構成のものである。したがって、第1の接地用抵抗7及び第2の接地用抵抗8と、これらに並列に接続された第1の電圧検出器9とからなる並列回路にあっては、第1の接地用抵抗7及び第2の接地用抵抗8に対する第1の電圧検出器9の影響は小さい。
【0022】
第2の電圧検出器10は、マイナス側給電線3と接地電位部6との間に、第2の接地用抵抗8と等価的に並列になるように接続され、マイナス側給電線3と接地電位部6との間の電圧、つまり第2の接地用抵抗8の両端の電圧を検出する。なお、具体的な構成は図示しないが、第2の電圧検出器10は、第2の接地用抵抗8の抵抗値よりも大幅に高い抵抗値を有する高電圧抵抗と電圧検出用抵抗とを直列接続した一般的な構成のものである。したがって、第2の接地用抵抗8とこれに並列に接続された第2の電圧検出器10とからなる並列回路にあっては、第2の接地用抵抗8に対する第2の電圧検出器10の影響は小さい。したがって、第1の電圧検出器9及び第2の電圧検出器10が地絡の検出に悪影響を与えることはほとんど無い。
【0023】
第1の電圧検出器9によって検出されるプラス側給電線2とマイナス側給電線3との間の電圧に比例する検出電圧をVaとする。また、第2の電圧検出器10によって検出されるマイナス側給電線3と接地電位部6との間の電圧に比例する検出電圧をVbとする。これらの検出電圧Va及びVbは地絡が発生するとき当然に変化する。検出電圧Va、検出電圧Vbは、図示しないフィルタ回路を通してノイズを除去した後、不図示のパルストランス又はホトカプラなどからなる信号絶縁手段を通して電圧比率演算回路11に入力される。
【0024】
この電圧比率演算回路11は一般的な除算回路などでもよく、検出電圧Vbを検出電圧Vaで除算して電圧比率(Vb/Va)を求め、その電圧比率(Vb/Va)を示す電圧比率信号Srを地絡極性判別回路12に入力する。なお、検出電圧Va及び検出電圧Vbは電圧サージなどのノイズ電圧によっても当然に変化するが、互いにほぼ同様な割合で変化することが多く、電圧比率(Vb/Va)がノイズ電圧などで大きく変化することがほとんど無いので、ノイズ電圧によって誤検出する可能性は低い。
【0025】
実施形態1では、第2の接地用抵抗8の両端の電圧に比例する検出電圧Vbと、第1、第2の接地用抵抗7と8の両端の電圧に比例する検出電圧Vaとの電圧比率(Vb/Va)の大きさによって、地絡発生の可能性の有無を判断することを基本としている。地絡が発生していないときには、検出電圧Va、検出電圧Vbは第1の接地用抵抗7と第2の接地用抵抗8に関連する。地絡が生じたときには、検出電圧Va、検出電圧Vbはいずれも第1の接地用抵抗7、第2の接地用抵抗8及び地絡対象物の地絡抵抗に関連する。これら抵抗の抵抗値からなる関係式に、誤検出防止用の安全電圧比率(マージン)をそれぞれ関連付けた式からなる数値の範囲内で選定された基準値と電圧比率(Vb/Va)とを比較することによって、プラス側給電線2又はマイナス側給電線3のいずれで地絡が発生した可能性があるか否かを正確に検出することができる。
【0026】
マイコンなどで構成される地絡極性判別回路12は、第1の比較回路13と第2の比較回路14、基準値設定回路15を有する。基準値設定回路15は、第1の接地用抵抗7の抵抗値r1と、第2の接地用抵抗8の抵抗値r2と、地絡が発生したときの地絡発生の原因となる地絡対象物の抵抗値r3と、誤検出防止用の安全電圧Vsとから決まる数値に相当する第1の地絡判断基準信号X1、第2の地絡判断基準信号X2を出力する機能を有する。この実施形態1では、比較される信号が電圧比率(Vb/Va)に相当するので、第1の地絡判断基準信号X1、第2の地絡判断基準信号X2も上述の抵抗値に関連する電圧比率から求められた数値に対応する信号である。
【0027】
第1の地絡判断基準信号X1は、プラス側給電線2に地絡が発生した可能性があるか否かを決める判断基準である。第2の地絡判断基準信号X2は、マイナス側給電線3に地絡が発生した可能性があるか否かを決める判断基準である。第1の地絡判断基準信号X1の上限は、プラス側給電線2に地絡が発生したときのマイナス側給電線3と接地電位部6との間に現出する電圧から誤検出防止用の安全電圧Vsを減算した電圧値を検出電圧Vaで除算した電圧比率に相当する値とする。また、第1の地絡判断基準信号X1の下限は、地絡を発生していない通常状態におけるマイナス側給電線3と接地電位部6との間の電圧値に誤検出防止用の安全電圧Vsを考慮して加算した電圧値を検出電圧Vaで除算した電圧比率に相当する値とする。
【0028】
具体的な数式で表すと、第1の地絡判断基準信号X1は、r2/(r13+r2)−Vs/Vaの式から求められる数値以下の範囲から選定される値で、r2/(r1+r2)+Vs/Vaの式から求められる数値より大きい範囲から選定される値に対応する信号とする。ここで、r13はr1×r3/(r1+r3)とする。つまり、第1の地絡判断基準信号X1は、r2/(r1+r2)+Vs/Va<X1≦r2/(r13+r2)−Vs/Vaを満足する数値をもつ信号である。第1の地絡判断基準信号X1の選定については、例えば、上記数式で求められる範囲内でr2/(r13+r2)−Vs/Vaの式から求められる数値よりも若干小さい値とする。
【0029】
この場合には、地絡発生の原因となる地絡対象物の抵抗値r3や安全電圧Vsを適切に決めれば、これらの値と第1の接地用抵抗7の抵抗値r1と第2の接地用抵抗8の抵抗値r2とで第1の地絡判断基準信号X1は決まるので、第1の地絡判断基準信号X1を自動的に算出できる。第1の地絡判断基準信号X1は、r2/(r1+r2)+Vs/Va<X1≦r2/(r13+r2)−Vs/Vaを満足する数値であれば、直流給電回路1の出力特性などを考慮して随意に選定しても勿論よい。
【0030】
他方、マイナス側給電線3に地絡が発生した可能性があるか否かを決める判断基準である第2の地絡判断基準信号X2の下限は、マイナス側給電線3に地絡が発生したときのマイナス側給電線3と接地電位部6との間に現出する電圧に誤検出防止用の安全電圧Vsを考慮して加算した電圧値を検出電圧Vaで除算した電圧比率に相当する値とする。また、第2の地絡判断基準信号X2の上限は、地絡を発生していない通常状態におけるマイナス側給電線3と接地電位部6との間の電圧値から誤検出防止用の安全電圧Vsを考慮して減算した電圧値を検出電圧Vaで除算した電圧比率に相当する値とする。
【0031】
具体的な数式で表すと、第2の地絡判断基準信号X2は、r23/(r1+r23)+Vs/Vaの式から求められる数値以上の範囲から選定される値で、r2/(r1+r2)−Vs/Vaの式から求められる数値より小さい範囲から選定される値に対応する信号とする。ここで、r23はr2×r3/(r2+r3)とする。つまり、第2の地絡判断基準信号X2は、r23/(r1+r23)+Vs/Va≦X2<r2/(r1+r2)−Vs/Vaを満足する数値をもつ信号である。第2の地絡判断基準信号X2の選定については、前述したように例えば、上記数式で求められる範囲内でr23/(r1+r23)+Vs/Vaの式から求められる数値よりも若干大きい値とする。
【0032】
この場合には、地絡発生の原因となる地絡対象物の抵抗値r3や安全電圧Vsを適切に決めれば、これらの値と第1の接地用抵抗7の抵抗値r1と第2の接地用抵抗8の抵抗値r2とで第2の地絡判断基準信号X2は決まるので、第2の地絡判断基準信号X2を自動的に設定することができる。なお、第2の地絡判断基準信号X2は、r23/(r1+r23)+Vs/Va≦X2<r2/(r1+r2)−Vs/Vaを満足する数値であれば、直流給電回路1の出力特性などを考慮して随意に選定しても勿論よい。
【0033】
地絡極性判別回路12において、第1の比較回路13は基準値設定回路15から入力される第1の地絡判断基準信号X1と電圧比率演算回路11から入力される電圧比率(Vb/Va)を示す電圧比率信号Srとを比較する。そして、電圧比率信号Srが第1の地絡判断基準信号X1以上になるときには、プラス側給電線2に地絡が発生した可能性を示す第1段階の第1の地絡検出信号D1をマスク回路16に出力する。電圧比率信号Srが第1の地絡判断基準信号X1よりも小さい場合には、プラス側給電線2に地絡が発生していないものとして、第1の比較回路13が第1段階の第1の地絡検出信号D1を発生することは無い。
【0034】
第2の比較回路14は基準値設定回路15から入力される第2の地絡判断基準信号X2と電圧比率演算回路11から入力される電圧比率(Vb/Va)を示す電圧比率信号Srとを比較する。そして、電圧比率信号Srが第2の地絡判断基準信号X2以下になるときには、マイナス側給電線3に地絡が発生した可能性を示す第1段階の第2の地絡検出信号D2をマスク回路16に出力する。電圧比率信号Srが第2の地絡判断基準信号X2よりも大きい場合には、マイナス側給電線3に地絡が発生していないものとして、第2の比較回路14が第1段階の第2の地絡検出信号D2を発生することは無い。
【0035】
マスク回路16は、過渡的な現象やノイズなどによって地絡が発生したと誤検出するのを防いで、より正確に地絡検出を行うためのフリップフロップ回路のような遅延動作を行う回路である。マスク回路16は、第1段階の第1の地絡検出信号D1を受ける第1のマスク部16Aと、第1段階の第2の地絡検出信号D2を受ける第2のマスク部16Bとを有する。第1のマスク部16Aは、第1段階の第1の地絡検出信号D1が予め決められた設定時間を超えて持続するときには、地絡発生の可能性がより大きいことを示す第2段階の第1の地絡検出信号Daを出力する。第1段階の第1の地絡検出信号D1が予め決めた設定時間に達しない時点で消滅した場合には、第1のマスク部16Aは地絡発生の可能性が大きなことを示す第2段階の第1の地絡検出信号Daを出力しないので、この時点でプラス側給電線2に地絡が発生していないものとして判断される。
【0036】
他方、第2のマスク部16Bは、第1段階の第2の地絡検出信号D2が予め決められた設定時間を超えて持続するとき、地絡発生の可能性がより大きな第2段階の第2の地絡検出信号Dbを出力する。第1段階の第2の地絡検出信号D2が予め決めた設定時間に達しない時点で消滅した場合には、第2のマスク部16Bは地絡発生の可能性の大きな第2段階の第2の地絡検出信号Dbを出力しないので、この時点でマイナス側給電線3に地絡が発生していないものとして判断される。
【0037】
AND回路17は、第1のマスク部16Aから出力される第2段階の第1の地絡検出信号Daと条件信号SaとをAND論理する第1のAND部17Aと、第2のマスク部16Bから出力される第2段階の第2の地絡検出信号Dbと条件信号SaとをAND論理する第2のAND部17Bとで構成される。第1のAND部17Aは、第2段階の第1の地絡検出信号Daと条件信号Saとが存在するときのみ、最終段階の第1の地絡検出信号Sxを出力する。また、第2のAND部17Bは、第2段階の第2の地絡検出信号Dbと条件信号Saとが存在するときのみ、最終段階の第2の地絡検出信号Syを出力する。
【0038】
条件信号Saによって地絡信号を出力させる場合の条件を設定することができる。ここで、条件信号Saが発生するのは、例えば直流給電回路1が正常であり、かつ商用交流電源が入力異常(停電、欠相、入力電圧が操作範囲外)ではない場合とすることができる。したがって、第1のAND部17Aは第2段階の第1の地絡検出信号Daと条件信号Saとが持続する限り、最終段階の第1の地絡検出信号Sxを継続して発生する。同様に、第2のAND部17Bは第2段階の第2の地絡検出信号Dbと条件信号Saとが持続する限り、最終段階の第2の地絡検出信号Syを継続して発生する。つまり、直流給電回路の故障又は停電などの不都合が発生していない状態を示す条件信号Saを受信しないときには、地絡判別回路12が第1段階の第1の地絡検出信号D1又は第2の地絡検出信号D2を出力していても、AND回路17は最終段階の第1の地絡検出信号Sa又は第2の地絡検出信号Syを発生しないことになる。このように、AND回路17を用いて、装置全体として地絡の判断が必要な条件の場合にのみ、地絡検出信号を出力するように動作させることができる。
【0039】
AND回路17から出力される最終段階の第1の地絡検出信号Sx又は第2の地絡検出信号Syは、警報用作動回路18に入力される。なお、AND回路17を備えない場合は、第1のマスク部16Aから出力される第2段階の第1の地絡検出信号Da又は第2のマスク部16Bから出力される第2段階の第2の地絡検出信号Dbは、最終段階の第1の地絡検出信号Sx又は第2の地絡検出信号Syとして警報用作動回路18に入力される。
【0040】
この実施形態1では、電圧比率(Vb/Va)を利用して地絡の発生状況を検出するので、交流分やノイズなどに影響されること無く、プラス側給電線2、マイナス側給電線3のいずれかで地絡が生じたかを正確にかつ高速で検出することが可能である。また、短時間で地絡の発生原因である地絡対象物を流れる電流を小さな値又はほぼゼロに制限できるので、感電によるダメージをより小さくすることができ、さらに、地絡による出火を確実に防ぐことができる。なお、一般的に、プラス側給電線2とマイナス側給電線3とが同時に地絡する場合は、負荷短絡として判断される。
【0041】
警報用作動回路18は、第1の作動部18Aと第2の作動部18Bとからなる。警報用作動回路18が最終段階の地絡検出信号Sx又はSyを受けるとき、図示しないラッチ回路などによって、警報手段19に継続する作動信号を与える。警報手段19は第1の警報部19Aと第2の警報部19Bとからなり、これら第1の警報部19A、第2の警報部19Bはそれぞれブザー又はブザーとランプとの組み合わせなどからなる。第1の警報部19Aは、最終段階の第1の地絡検出信号Sxを受けるときに継続する警報を発する。
【0042】
また、第2の警報部19Bは最終段階の第2の地絡検出信号Syを受けるときに継続する警報を発する。例えば、第1の作動部18Aが第1の地絡検出信号Sxを受けるとき、第1の警報部19Aは、断続的な警報音又は点滅光などを発してプラス側給電線2に地絡が発生したことを警報する。また、第2の作動部18Bが第2の地絡検出信号Syを受けるとき、第2の警報部19Bは、例えば連続的な警報音又は連続的に発光する光などを発してマイナス側給電線3に地絡が発生したことを継続して警報する。警報手段19は、プラス側給電線2又はマイナス側給電線3のどちらに地絡が生じたことを示すもので、音声によって警報する構成のものであっても勿論よい。
【0043】
[実施形態2]
次に、図2を用いて本発明に係る実施形態2の直流給電装置について説明する。図2において、図1で示した符号と同じ符号の構成要素は、相互に同一の名称の部材を示すものとする。また、本発明の実施形態2に係る直流給電装置において、上述した実施形態1と同様の構成及び動作については省略するものとする。
【0044】
先ず、第2の電圧検出器10がプラス側給電線2と接地電位部6との間に、第1の接地用抵抗7と並列になるように接続されるところが実施形態1と異なる。第2の電圧検出器10は、プラス側給電線2と接地電位部6との間の電圧を検出し、その電圧に比例する検出電圧Vcを電圧比率演算回路11に入力する。なお、具体的な構成は図示しないが、実施形態1で説明したのと同様に、第2の電圧検出器10は、第1の接地用抵抗7の抵抗値よりも大幅に高い抵抗値を有する高電圧抵抗と電圧検出用抵抗とを直列接続した一般的な構成のものである。したがって、第1の接地用抵抗7とこれに並列に接続された第2の電圧検出器10とからなる並列回路にあっては、第1の接地用抵抗7に対する第2の電圧検出器10の影響は小さい。また、第1の電圧検出器9は、実施形態1と同様にプラス側給電線2とマイナス側給電線3との間の電圧を検出する。なお、第1の電圧検出器9及び第2の電圧検出器10が地絡の検出に悪影響を与えることはほとんど無い。
【0045】
実施形態2では、第1の接地用抵抗7の両端の電圧に比例する検出電圧Vc、プラス側給電線2とマイナス側給電線3との間の電圧に比例する検出電圧Vaの電圧比率(Vc/Va)の大きさによって、地絡発生の有無を判断することを基本としている。前述したように地絡が発生していないときには、検出電圧Va、検出電圧Vcは第1の接地用抵抗7、第2の接地用抵抗8に関連する。地絡が生じたときには、検出電圧Va、検出電圧Vcはいずれも第1の接地用抵抗7、第2の接地用抵抗8及び地絡対象物の地絡抵抗に関連する。これら抵抗の抵抗値からなる関係式に、誤検出防止用の安全電圧比率(マージン)をそれぞれ関連付けた式からなる数値の範囲内で選定された第1の地絡判断基準信号Y1又は第2の地絡判断基準信号Y2と電圧比率(Vc/Va)とを比較することによって、プラス側給電線2又はマイナス側給電線3のいずれで地絡が発生した可能性があるか否かを正確に検出することができる。
【0046】
マイコンなどで構成される地絡極性判別回路12は、前述したように第1の比較回路13、第2の比較回路14、基準値設定回路15を有する。基準値設定回路15は、第1の接地用抵抗7の抵抗値r1と、第2の接地用抵抗8の抵抗値r2と、地絡が発生したときの地絡発生の原因となる地絡対象物の抵抗値r3と、誤検出防止用の安全電圧Vsとから決まる数値に相当する第1の地絡判断基準信号Y1、第2の地絡判断基準信号Y2を出力する機能を有する。この実施形態2では、比較される信号が電圧比率(Vc/Va)に相当するので、第1の地絡判断基準信号Y1、第2の地絡判断基準信号Y2も電圧比率から求められた数値に対応する信号である。実施形態2の第1の地絡判断基準信号Y1又は第2の地絡判断基準信号Y2は、実施形態1の第1の地絡判断基準信号X1又は第2の地絡判断基準信号X2とは異なる検出値を用いることから、基本的に別の信号となる。
【0047】
電圧比率演算回路11は、第2の電圧検出器10からの検出電圧Vcを第1の電圧検出器9からの検出電圧Vaで除算した電圧比率(Vc/Va)を演算して求め、電圧比率(Vc/Va)を示す電圧比率信号Srを出力する。電圧比率信号Srは、実施形態1と同様な回路構成の地絡極性判別回路12に入力される。この実施形態2では、基準値設定回路15が、第1の接地用抵抗7の抵抗値r1と、第2の接地用抵抗8の抵抗値r2と、地絡が発生したときの地絡発生の原因となる地絡対象物の抵抗値r3と、誤検出防止用の安全電圧Vsとから決まる数値に相当する第1の地絡判断基準信号Y1、第2の地絡判断基準信号Y2を出力する機能を有する。この実施形態2では、比較される電圧比率信号Srが電圧比率(Vc/Va)に相当するので、第1の地絡判断基準信号Y1、第2の地絡判断基準信号Y2も前記抵抗値に関連する電圧比率から求められた数値に対応する信号である。
【0048】
第1の地絡判断基準信号Y1は、プラス側給電線2に地絡が発生した可能性があるか否かを決める判断基準である。第2の地絡判断基準信号Y2は、マイナス側給電線3に地絡が発生した可能性があるか否かを決める判断基準である。第1の地絡判断基準信号Y1の下限は、プラス側給電線2に地絡が発生したときのプラス側給電線2と接地電位部6との間の電圧値に誤検出防止用の安全電圧Vsを考慮して加算した電圧値を検出電圧Vaで除算した電圧比率に相当する値となる。また、第1の地絡判断基準信号Y1の上限は、地絡を発生していない通常状態におけるプラス側給電線2と接地電位部6との間の電圧から誤検出防止用の安全電圧Vsを減算した電圧値を検出電圧Vaで除算した電圧比率に相当する値とする。
【0049】
具体的な数式で表すと、第1の地絡判断基準信号Y1は、r13/(r13+r2)+Vs/Vaの式から求められる数値以上の範囲から選定される値で、r1/(r1+r2)−Vs/Vaから求められる数値より小さい範囲から選定される値に相当する信号とする。ここで、実施形態1と同様に、r13はr1×r3/(r1+r3)とする。つまり、第1の地絡判断基準信号Y1は、r13/(r13+r2)+Vs/Va≦Y1<r1/(r1+r2)−Vs/Vaを満足する数値に相当する信号である。第1の地絡判断基準信号Y1の選定については、例えば、上記数式で求められる範囲内でr13/(r13+r2)+Vs/Vaの式から求められる数値よりも若干大きい値とする。
【0050】
この場合には、第1の地絡判断基準信号X1と同様に、地絡発生の原因となる地絡対象物の抵抗値r3や安全電圧Vsを適切に決めれば、これらの値と第1の接地用抵抗7の抵抗値r1と第2の接地用抵抗8の抵抗値r2とで第1の地絡判断基準信号Y1は決まるので、第1の地絡判断基準信号Y1を自動的に算出できる。第1の地絡判断基準信号Y1は、r13/(r13+r2)+Vs/Va≦Y1<r1/(r1+r2)−Vs/Vaを満足する数値であれば、直流給電回路1の出力特性などを考慮して任意に選定しても勿論よい。
【0051】
他方、第2の地絡判断基準信号Y2の上限は、マイナス側給電線3に地絡が発生したときのプラス側給電線2と接地電位部6との間の電圧値から誤検出防止用の安全電圧Vsを減算した電圧を検出電圧Vaで除算した電圧比率に相当する値になる。また、マイナス側給電線3に地絡が発生した可能性があるか否かを決める判断基準である第2の地絡判断基準信号Y2の下限は、通常状態におけるプラス側給電線2と接地電位部6との間に現出する電圧に誤検出防止用の安全電圧Vsを加算した電圧を検出電圧Vaで除算した電圧比率に相当する値とする。
【0052】
具体的な数式で表すと、第2の地絡判断基準信号Y2は、r1/(r1+r23)−Vs/Vaの式から求められる数値以下の範囲から選定される値で、r1/(r1+r2)+Vs/Vaの式から求められる数値より大きい範囲から選定される値に対応する信号とする。ここで、実施形態1と同様に、r23はr2×r3/(r2+r3)とする。つまり、第2の地絡判断基準信号Y2は、r1/(r1+r2)+Vs/Va<Y2≦r1/(r1+r23)−Vs/Vaを満足する数値をもつ信号である。第2の地絡判断基準信号Y2の選定については、前述したように例えば、上記数式で求められる範囲内でr1/(r1+r23)−Vs/Vaの式から求められる数値よりも若干小さい値とする。
【0053】
この場合には、第2の地絡判断基準信号X2と同様に、地絡発生の原因となる地絡対象物の抵抗値r3や安全電圧Vsを適切に決めれば、これらの値と第1の接地用抵抗7の抵抗値r1と第2の接地用抵抗8の抵抗値r2とで第2の地絡判断基準信号Y2は決まるので、第2の地絡判断基準信号Y2を自動的に設定することができる。なお、第2の地絡判断基準信号Y2は、r1/(r1+r2)+Vs/Va<Y2≦r1/(r1+r23)−Vs/Vaを満足する数値であれば、直流給電回路1の出力特性などを考慮して適宜に選定しても勿論よい。
【0054】
前述したように、感電事故による地絡が生じた場合でも、地絡対象物の抵抗値を考慮してその地絡対象物を流れる電流を大事に至らない程度の電流値に制限できるよう、第1、第2の接地用抵抗7、8が適切な抵抗値r1、r2を有している。したがって、電圧比率(Vc/Va)を第1の地絡判断基準信号Y1又は第2の地絡判断基準信号Y2と比較することによって、どちらの極性の給電線で地絡が発生した可能性があるかを検知できるだけでなく、その地絡が感電事故に起因するものであっても、感電事故が大事に至る可能性は小さい。
【0055】
地絡極性判別回路12において、第1の比較回路13は基準値設定回路15から入力される第1の地絡判断基準信号Y1と電圧比率演算回路11から入力される電圧比率(Vc/Va)を示す電圧比率信号Srとを比較する。電圧比率信号Srが第1の地絡判断基準信号Y1以下の値であるときには、第1段階の第1の地絡検出信号D1をマスク回路16に出力する。第2の比較回路14は、基準値設定回路15から入力される第2の地絡判断基準信号Y2と電圧比率演算回路11から入力される電圧比率(Vc/Va)を示す電圧比率信号Srとを比較する。電圧比率信号Srが第2の地絡判断基準信号Y2以上の値であるときには、第1段階の第2の地絡検出信号D2をマスク回路16に出力する。
【0056】
マスク回路16及びAND回路17についての構成及び動作は、上述の実施形態1と同様である。第1のマスク部16Aから出力される第2段階の第1の地絡検出信号Daと第2のマスク部16Bから出力される第2段階の第2の地絡検出信号Dbと条件信号SaとがAND回路17に入力される。AND回路17から出力される最終段階の第1の地絡検出信号Sx又は第2の地絡検出信号Syは、警報用作動回路18及びスイッチ用駆動回路22に供給される。警報用作動回路18及び警報手段19は、上述の実施形態1と同様である。
【0057】
スイッチ用駆動回路22は、第1の駆動部22Aと第2の駆動部22Bとからなる。第1の駆動部22Aが第1段階の第1の地絡検出信号D1に対応する最終段階の第1の地絡検出信号Sxを受けるとき、プラス側給電線2と接地電位部6との間に接続される第1のスイッチ20に駆動信号を与え、このスイッチ20を閉じる。他方、第2の駆動部22Bは、第1段階の第2の地絡検出信号D2に対応する最終段階の第2の地絡検出信号Syを受けるとき、マイナス側給電線3と接地電位部6との間に接続される第2のスイッチ21に駆動信号を与え、このスイッチ21を閉じる。このように、地絡が生じたときに、地絡が生じた側のプラス側給電線2又はマイナス側給電線3と接地電位部6との間を第1のスイッチ20又は第2のスイッチ21を用いて短絡させることで、地絡が生じた側の給電線で感電事故が生じていても人体に電流が流れないように安全性を図ることができる。
【0058】
なお、直流給電回路1の故障など、地絡の発生に起因しない別の不都合が生じていることを示す信号が発生しているときには、その信号を利用して、最終段階の地絡検出信号Sx、Syを発生させない構成としてもよい。あるいは地絡の発生に起因しない別の不都合が生じていることを示す前記信号によって、スイッチ用駆動回路22が駆動信号を出力するのを禁止し、また、警報用作動回路18が作動信号を出力するのを禁止する構成としてもよい。このようにすることによって、直流給電回路1の故障など、地絡の発生に起因しない別の不都合が生じているときには、スイッチ20、21を導通させることはなく、また、警報手段19が地絡の発生を警報することも無いので、より信頼性の高い地絡検出を行うことができる。
【0059】
上述した実施形態1において、実施形態2と同様に、第1のスイッチ20、第2のスイッチ21及びスイッチ用駆動回路22を用いてもよい。この場合に、第1のスイッチ20、第2のスイッチ21及びスイッチ用駆動回路22の構成及び動作は実施形態2と同様である。また、上述した実施形態2において、実施形態1と同様に、第1のスイッチ20、第2のスイッチ21及びスイッチ用駆動回路22を用いない構成としてもよい。
【0060】
本発明の直流給電装置における各部の構成、構造、数、配置、形状、材質などに関しては、上記具体例に限定されず、当業者が適宜選択的に採用したものも、本発明の要旨を包含する限り、本発明の範囲に包含される。より具体的には、例えば、コンパレータ、論理回路などの具体的な構成や、直流供給回路、整流回路、蓄電池、抵抗、スイッチ、検出器、接地部、配線、端子をはじめとする各回路素子の数や配置関係などについて例示や図示したものなどは、これら特定の電気素子には限定されず、同様の機能または作用を有する単一の電気素子あるいは複数の電気素子を含む電気回路として構成することができ、当業者が適宜設計変更したものは本発明の範囲に包含される。その他、本発明の要素を具備し、当業者が適宜設計変更しうるすべての直流給電装置は本発明の範囲に包含される。
【産業上の利用可能性】
【0061】
電話機など種々の情報機器に直流電力を供給する直流給電装置に利用できる。
【符号の説明】
【0062】
1・・・直流給電回路
2・・・プラス側給電線
3・・・マイナス側給電線
4、5・・・負荷端子
6・・・接地電位部
7・・・第1の接地用抵抗
8・・・第2の接地用抵抗
9・・・第1の電圧検出器
10・・・第2の電圧検出器
11・・・電圧比率演算回路
12・・・地絡極性判別回路
13・・・第1の比較回路
14・・・第2の比較回路
15・・・基準値設定回路
16・・・マスク回路
16A・・・第1のマスク部
16B・・・第2のマスク部
17・・・AND回路
17A・・・第1のAND部
17B・・・第2のAND部
18・・・警報用作動回路
18A・・・第1の作動部
18B・・・第2の作動部
19・・・警報手段
19A・・・第1の警報部
19B・・・第2の警報部
20・・・第1のスイッチ
21・・・第2のスイッチ
22・・・スイッチ用駆動回路
22A・・・第1の駆動部
22B・・・第2の駆動部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラス側給電線とマイナス側給電線との間に直流電力を供給する直流給電回路と、
接地される接地電位部と前記プラス側給電線との間に接続される第1の接地用抵抗と、
前記接地電位部と前記マイナス側給電線との間に接続される第2の接地用抵抗と、
前記プラス側給電線と前記マイナス側給電線との間に生じる電圧に比例する検出電圧Vaを出力する第1の電圧検出器と、
前記プラス側給電線と前記接地電位部との間に生じる電圧に比例する検出電圧Vc、又は前記マイナス側給電線と前記接地電位部との間に生じる電圧に比例する検出電圧Vbを出力する第2の電圧検出器と、
前記検出電圧Vaと前記検出電圧Vbとの電圧比率(Vb/Va)、又は前記検出電圧Vaと前記検出電圧Vcとの電圧比率(Vc/Va)を演算して求める電圧比率演算回路とを備え、
前記第1の接地用抵抗の抵抗値をr1とし、
前記第2の接地用抵抗の抵抗値をr2とし、
地絡が発生したときの地絡抵抗をr3とし、
誤検出防止用の安全電圧をVsとし、
r1×r3/(r1+r3)をr13で表し、r2×r3/(r2+r3)をr23で表すと、
第1の地絡判断基準信号X1は、r2/(r13+r2)−Vs/Vaの式から求められる数値以下の範囲から選定される値で、r2/(r1+r2)+Vs/Vaの式から求められる数値より大きい範囲から選定される値に対応する信号であり、
前記電圧比率演算回路側から入力される前記電圧比率(Vb/Va)が前記第1の地絡判断基準信号X1以上になるとき、前記プラス側給電線と前記接地電位部との間に地絡が発生した可能性があるものとして第1の地絡検出信号を出力し、
もしくは、第2の地絡判断基準信号X2はr23/(r1+r23)+Vs/Vaの式から求められる数値以上の範囲から選定される値で、r2/(r1+r2)−Vs/Vaの式から求められる数値より小さい範囲から選定される値に対応する信号であり、
前記電圧比率演算回路側から入力される前記電圧比率(Vb/Va)が前記第2の地絡判断基準信号X2以下になるとき、前記マイナス側給電線と前記接地電位部との間に地絡が発生した可能性があるものとして第2の地絡検出信号を出力し、
又は、
別の第1の地絡判断基準信号Y1は、r13/(r13+r2)+Vs/Vaの式から求められる数値以上の範囲から選定される値で、r1/(r1+r2)−Vs/Vaから求められる数値より小さい範囲から選定される値に相当する信号であり、
前記電圧比率演算回路側から入力される前記電圧比率(Vc/Va)が前記第1の地絡判断基準信号Y1以下になるとき、前記プラス側給電線と前記接地電位部との間に地絡が発生した可能性があるものとして第1の地絡検出信号を出力し、
もしくは、別の第2の地絡判断基準信号Y2は、r1/(r1+r23)−Vs/Vaの式から求められる数値以下の範囲から選定される値で、r1/(r1+r2)+Vs/Vaの式から求められる数値より大きい範囲から選定される値に対応する信号であり、
前記電圧比率演算回路側から入力される前記電圧比率(Vc/Va)が前記第2の地絡判断基準信号Y2以上になるとき、前記マイナス側給電線と前記接地電位部との間に地絡が発生した可能性があるものとして第2の地絡検出信号を出力する地絡判別回路と、
前記第1の地絡検出信号又は前記第2の地絡検出信号が予め決めた設定時間を越えて継続しないときには、前記第1の地絡検出信号又は前記第2の地絡検出信号に対応する次の段階の地絡検出信号を発生しないマスク回路とを有することを特徴とする直流給電装置。
【請求項2】
請求項1に記載の直流給電装置において、
前記直流給電回路の故障又は停電などの不都合が発生していない状態を示す条件信号を受信しないときには、前記地絡判別回路が前記第1の地絡検出信号又は前記第2の地絡検出信号を出力していても、前記第1の地絡検出信号又は前記第2の地絡検出信号に対応する最終段階の地絡検出信号が出力されないことを特徴とする直流給電装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の直流給電装置において、
前記接地電位部と前記プラス側給電線との間に接続される第1のスイッチと、
前記接地電位部と前記マイナス側給電線との間に接続される第2のスイッチと、
前記第1の地絡検出信号又は前記第2の地絡検出信号に対応する前記次の段階の地絡検出信号もしくは前記最終段階の地絡検出信号を受けるとき、前記第1のスイッチ又は前記第2のスイッチを閉じる駆動信号を出力するスイッチ用駆動回路とを備えることを特徴とする直流給電装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の直流給電装置において、
前記第1の地絡検出信号又は前記第2の地絡検出信号に対応する前記次の段階の地絡検出信号もしくは前記最終段階の地絡検出信号を受けるとき、前記プラス側給電線に地絡が生じたことを示す第1の警報、又は前記マイナス側給電線に地絡が生じたことを示す第2の警報を出力する警報手段を備えることを特徴とする直流給電装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載の直流給電回路において、
前記直流給電回路は、商用交流電源を入力電源とし、前記商用交流電源からの電力を直流に変換する整流回路又は前記商用入力電源が停電したときに前記プラス側給電線と前記マイナス側給電線との間に無停電で直流電力の供給を可能にする蓄電池を備えることを特徴とする直流給電装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2012−78289(P2012−78289A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−225760(P2010−225760)
【出願日】平成22年10月5日(2010.10.5)
【出願人】(000103976)オリジン電気株式会社 (223)
【出願人】(593063161)株式会社NTTファシリティーズ (475)
【Fターム(参考)】