説明

直流電源ユニット、及び直流電源システム

【課題】通常動作において必要な仕様(例えば、スイッチング素子の選定や熱設計の仕様)のままで、起動時の際に、通常動作時における定格最大電流IL以上の電流を供給できる直流電源ユニットを提供する。
【解決手段】過電流保護のために出力電流を所定の値に制限する定電流垂下動作を行う直流電源ユニット10は、負荷RLに所定の値以上(定格最大電流IL以上)の電流を供給する必要がある場合に、出力電圧を垂下させて出力電流を増加させる垂下動作を行い、所定の値以上の電流を負荷に供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直流電源ユニット、及び直流電源システムに関する。
【背景技術】
【0002】
直流電源システムには、直流電源ユニットを複数台設けて、並列冗長運転方式の直流電源システムを構成しているものがある。この方式の直流電源システムは電源ユニットが1台故障しても、予備の直流電源ユニットを作動させることにより、負荷のシステムの動作に影響を与えないようにしている。
【0003】
図9は、並列冗長運転方式の直流電源システムの例を示す図である。この図に示す直流電源システム100Aは、直流電源ユニットをn+1台搭載しており、各直流電源ユニット1〜n+1のそれぞれは、入力される交流電圧(AC入力)を直流電圧に変換して負荷RLに直流の電力を供給する直流電源装置である。また、各直流電源ユニット1〜n+1のそれぞれは、出力電圧を検出して出力電圧基準信号との差分に対応して出力トランスの一次側に接続されたスイッチング素子のON(オン)幅を制御するDC/DCコンバータ回路を有している(図5を参照)。
【0004】
この図に示す直流電源システム100Aは、通常動作時には、n台の直流電源ユニット1〜nを作動させて負荷RLに電力を供給しており、直流電源ユニット1〜nのいずれかが故障した場合に、n+1台目の直流電源ユニットを故障したユニットの代替のユニットとして使用する。また、この直流電源システム100Aは、停電の際にも負荷RLへの電力の供給を継続できるように、バッテリ61を備える蓄電装置60を有している。停電によりAC入力が失われた場合は、バッテリ61からダイオードDX1を通して負荷RLに電力を供給する。
そして、この直流電源システム100Aでは、(n+1)台目の直流電源ユニットが、予備の電源ユニットとして使用されるとともに、バッテリ61への充電器を兼ねている。
【0005】
なお、関連するDC/DCコンバータ及び直流電源システムがある(特許文献1を参照)。この特許文献1に記載のDC/DCコンバータでは、垂下の場合を除き、DC/DCコンバータの出力電圧が定格電圧を下回った際には電源ユニット故障と判断するDC/DCコンバータを提供することを目的としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−88254号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図9に示す並列冗長運転方式の直流電源システム100Aにおいて、各直流電源ユニット1〜n+1のそれぞれは、一般に過電流保護回路(出力電流制限回路)を備えている。この過電流保護回路は、負荷の過電流状態を電流検出器等により検出すると、出力電圧を低下させて過電流制限を行う、所謂、定電流垂下動作を行う。例えば、図2(B)に示すように、負荷に過電流が流れる場合には、出力電圧Voを低下させ(出力電圧を垂下させ)、所定の過電流制限値(定格最大電流)IL以上の電流が流れないようにしている。このように、直流電源ユニット1〜n+1のそれぞれは定電流垂下特性を有している。
なお、直流電源ユニットでは、定格電流(連続して負荷に流すことができる100%電流)と、過電流制限(定電流垂下動作)を行う電流とが異なる場合もあるので(勿論、一致する場合もある)、直流電源ユニットから負荷に供給できる最大電流(より正確には過電流制限(定電流垂下動作)が行われる電流)を「定格最大電流」と呼ぶ。
【0008】
ところで、図9に示す直流電源システムにより、定電力特性を持つインバータ(例えば、直流電圧を交流電圧に変換するインバータ)などの負荷RLを駆動する場合において、入力停電時のバッテリ61の放電中に復電した場合に、上記定電流垂下特性が問題になることがある。
すなわち、バッテリ61により定電力特性を持つ負荷RLに電力を供給する場合は、バッテリ61は放電により次第に電圧が低下するため、負荷RLに流れる電流が増大し、各直流電源ユニットの定格最大電流IL以上の電流が流れることがある。この負荷RLに定格最大電流IL以上の電流が流れている状態において復電した場合に、直流電源ユニットを起動して、そのまま負荷RLに連続して電流を供給しようとしても、直流電源ユニットでは過電流制限のための定電流垂下動作が行われ、出力電流が定格最大電流ILに制限されることになる。このため、負荷RLへの供給電流が足りなくなるとともに、直流電源ユニットが所要定格電圧に復旧できない状態が生じる。
【0009】
例えば、具体的な例として、直流電源ユニットの台数nは7台であり、その定格出力電圧が383Vであり、負荷が100KWの定電力特性を持つインバータの場合に、蓄電池電圧が徐々に放電して低下し270Vの手前で入力停電から復電した場合には、負荷RLに流す所要電流は370.4A(≒100KW/270V)になる。すなわち、入力電源の復電の直後には、各直流電源ユニットから52.9A(≒370.4A/7)の電流を負荷RLに供給する必要がある。
【0010】
しかしながら、各ユニットの定格出力電力は「100KW/7」であり、その定格出力電圧は383Vである。このため定格電流(この例では、定格電流と定格最大電流が同じ)は37.3A(≒100KW/(383V×7))となり、各直流電源ユニットは、その過電流保護機能として、電流制限値(37.3A)で定電流垂下特性を持つように設計されている。したがって、直流電源ユニットの復電の際には、出力電圧の立ち上がりとともに過電流保護機能(定電流垂下特性)が作動し、出力電流が定格電流(37.3A)に制限された状態(出力電圧は低下したままの状態)が続き、定格出力電圧(383V)に復旧できない事態が生じる。
【0011】
この問題を解決するためには、従来、各直流電源ユニットに定電力垂下特性を持たせる方法がある。すなわち、負荷電流の大きさに応じて出力電圧を変化させる機能を持たせる方法である。例えば、上述した例では、直流電源ユニットから52.9A(≒370.4A/7)の電流を負荷に供給する場合は、その出力電圧が270Vになるように制御し、その後、次第に出力電圧を増大(同時に出力電流を低下)させるようにする。
【0012】
しかしながら、上述した従来方法では、直流電源ユニットが定電力垂下特性を持つことが必要となり、また、定電力垂下動作が連続して発生することも考慮して、定電力垂下対応のユニットを設計しなければならない。その結果、定電力垂下動作時に流れる電流が増えることにより、これに応じた電流容量を持つスイッチング素子(スイッチィグトランジスタなど)の選定(スイッチィグトランジスタなどの大型化)が必要になる。また、垂下電流が増大することに対応した熱設計が必要になる。例えば、出力トランスの巻き線を太くする必要があり、また、スイッチィグトランジスタの熱損失が増大することに対応した放熱設計(ヒートシンクや冷却ファンの大型化)が必要になる。このため、直流電源ユニットの寸法が増大し、製造コストも増加するという問題が生じる。
【0013】
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、本発明の目的は、通常動作時において必要とされる仕様(例えば、スイッチング素子の選定や熱設計の仕様)のままで、起動の際に、通常動作時の定格最大電流以上の電流を負荷に供給することができる、直流電源ユニット、及び直流電源システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、本発明の直流電源ユニットは、過電流保護のために出力電流を所定の値に制限する定電流垂下動作を行う直流電源ユニットであって、負荷に前記所定の値以上の電流を供給する必要がある場合に、出力電圧を垂下させて出力電流を増加させる垂下動作を行い、前記所定の値以上の電流を負荷に供給することを特徴とする。
【0015】
また、本発明の直流電源ユニットは、負荷に前記所定の値以上の電流を供給する必要がある場合に、出力電流と出力電圧との積が一定となるように出力電圧を垂下させる定電力垂下動作を行い、前記所定の値以上の電流を負荷に供給することを特徴とする。
【0016】
また、本発明の直流電源ユニットは、起動時、または、所定の指示がされた際において、負荷に前記所定の値以上の電流を供給する必要がある場合に、出力電流と出力電圧との積が一定となるように出力電圧を垂下させる定電力垂下動作を行い、前記所定の値以上の電流を負荷に供給することを特徴とする。
【0017】
また、本発明の直流電源ユニットは、前記直流電源ユニットの出力側にはバッテリを有する蓄電装置が接続され、前記負荷は定電力特性を持つ負荷であり、停電により前記直流電源システムへ電源が供給されなくなった場合に前記蓄電装置から前記負荷に電力を供給し、復電の際の直流電源ユニットの起動時において、当該直流電源ユニットから前記負荷に前記所定の値以上の電流を供給する必要がある場合に、出力電流と出力電圧との積が一定となるように出力電圧を垂下させる定電力垂下動作を行い、前記所定の値以上の電流を負荷に供給することを特徴とする。
【0018】
また、本発明の直流電源ユニットは、前記直流電源ユニットは、出力電圧を検出して出力電圧基準信号との差分に対応して出力トランスの一次側に接続されたスイッチング素子のON幅を制御するDC/DCコンバータ回路を有し、前記DC/DCコンバータ回路には、前記出力トランスの一次側に流れる一次電流を検出し、該一次電流の検出信号と所定の一次垂下基準信号とを比較し、この比較結果を基に前記スイッチング素子のON幅を制御して垂下動作を行う一次垂下回路と、出力トランスの二次側に繋がる整流回路部から出力される出力電流を検出し、該出力電流の検出信号と所定の二次垂下基準信号とを比較し、この比較結果を基に前記スイッチング素子のON幅を制御して定電流垂下動作または定電力垂下動作を行う二次垂下回路と、を備え、前記一次垂下回路において垂下動作を開始させる一次垂下基準信号のレベルは、前記二次垂下回路において定電流垂下動作または定電力垂下動作を開始させる二次垂下基準信号のレベルよりも大きく設定され、前記二次垂下回路において定電力垂下動作を行う際には、前記一次垂下基準信号のレベルと前記二次垂下基準信号のレベルとを、前記二次垂下回路において定電流垂下動作を行う際のそれぞれのレベルよりも所定の割り合いだけ増加させることを特徴とする。
【0019】
また、本発明の直流電源ユニットは、前記二次垂下回路は、前記出力電流の検出信号と前記二次垂下基準信号とを比例積分回路を用いて比較し、所定の時定数を有して比較結果を出力し、該比較結果を基に前記定電力垂下動作を行い、前記一次垂下回路は、前記出力トランスの一次側電流の検出信号と前記一次垂下基準信号とを比較器を用いて比較し、該比較結果を基に直ちに前記垂下動作を行うことを特徴とする。
【0020】
また、本発明の直流電源ユニットは、前記一次垂下回路は、定電流垂下動作を行うことを特徴とする。
【0021】
また、本発明の直流電源システムは、上記のいずれかに記載の直流電源ユニットの複数台のそれぞれを並列に接続して構成され、前記直流電源ユニットを並列に運転して負荷に電力を供給することを特徴とする。
【0022】
また、本発明の直流電源システムは、前記負荷は定電力特性を持つ負荷であり、また、前記直流電源システムの出力側はバッテリを含む蓄電装置に接続され、停電により前記直流電源システムへ入力電源が供給されなくなった場合に、前記蓄電装置から前記負荷に電力を供給し、復電時に各直流電源ユニットが起動する際に、各直流電源ユニットから前記負荷に所定の値以上の電流を供給する必要がある場合は、各直流電源ユニットに出力電流と出力電圧との積が一定となるように出力電圧を垂下させる定電力垂下動作を行わせて、前記所定の値以上の電流を負荷に供給することを特徴とする。
【0023】
また、本発明の直流電源システムは、前記直流電源システムは、1番目から(n+1)番目までの(n+1)台の直流電源ユニットを並列に接続して構成され、通常動作時は、1番目からn番目までの直流電源ユニットを運転して前記負荷に電力を供給し、1番目からn番目までの直流電源ユニットのいずれかが故障した場合には、前記(n+1)番目の直流電源ユニットを代替のユニットとして使用するとともに、通常動作時には、前記(n+1)番目の直流電源ユニットを前記バッテリへ充電を行う充電兼用ユニットとして使用することを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明の直流電源ユニット及び直流電源システムでは、起動時のみに定電力垂下特性を持たせることで、一時的に所定の値以上の電流(例えば、通常動作時の定格最大電流以上の電流)を負荷に流せるようにする。
これにより、通常動作時において必要とされる仕様(例えば、スイッチング素子の選定や熱設計の仕様)のままで、起動の際に、通常動作時の定格最大電流以上の電流を負荷に供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本実施形態に係わる直流電源ユニットの構成を示すブロック図である。
【図2】定電力垂下特性と定電流垂下特性について説明するための図である。
【図3】垂下基準信号生成部の構成を示す図である。
【図4】起動動作シーケンスを示す図である。
【図5】DC/DCコンバータ回路の構成を示す図である。
【図6】DC/DCコンバータ回路の動作を示す図である。
【図7】垂下基準のイメージを示す図である。
【図8】本実施形態に係わる直流電源システムの構成を示すブロック図である。
【図9】並列冗長運転方式の直流電源システムの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
(直流電源ユニットの構成についての説明)
図1は、本実施形態に係わる直流電源ユニット10の構成を示すブロック図である。この図に示す直流電源ユニット10は、定電力特性を持つ負荷RLに、蓄電装置60と連動して電力を供給する場合に好適に使用できる直流電源ユニット10である。すなわち、停電の際には、蓄電装置60内のバッテリ61から負荷RLに電力を供給し、復電後は、直流電源ユニット10から負荷RLに電力を供給するものである。
【0027】
なお、定電力特性を持つ負荷とは、負荷の消費電力が電圧の変化にかかわらず一定である特性を持つ負荷(例えば、直流電圧を交流電圧に変換するインバータ等である)。また、前述のように、直流電源ユニット10では、定格電流(連続して負荷に流すことができる100%電流)と、過電流制限(定電流垂下動作)を行う電流とが異なる場合もあるので(勿論、一致する場合もある)、直流電源ユニットから負荷に供給できる最大電流(より正確には過電流制限、すなわち定電流垂下動作が行われる電流)を「定格最大電流」と呼ぶ。
【0028】
直流電源ユニット10は、AC入力側に力率改善回路(PFC)20を備え、その出力側にDC/DCコンバータ回路50が接続されている。この力率改善回路20は、DC/DCコンバータ回路50の直流電源Eの役割をする。この力率改善回路20は、交流電圧を整流回路により整流するとともに、内部のスイッチング素子(図示せず)をスイッチング制御して交流の電圧波形と電流波形とを近づけて力率を改善するための回路である。この力率改善回路20は、PFC制御部30によりその動作が制御される。なお、力率改善回路20の構成と動作については、良く知られており、また、本発明とは直接には関係しないため、その説明は省略する。
【0029】
また、直流電源ユニット10は、DC/DCコンバータ回路50の動作を制御するD/D制御回路40を備えている。このD/D制御回路40は、DC/DCコンバータ回路50の動作を制御するための制御信号を出力するD/Dコントローラ41と、後述する定電力垂下特性を示す垂下動作、及び定電流垂下特性を示す垂下動作を行う際に使用される基準信号を生成する垂下基準信号生成部42とを備えている。
なお、D/D制御回路40は、CPU、ROM、及びRAM等(所望の場合にはA/D変換器、D/A変換器、カウンタ等)を有するマイクロコントローラやマイクロコンピュータ等を用いて構成されており、PFC制御部30についても同様である。また、PFC制御部30をD/D制御回路40内に含ませるようにしてもよい。また、D/D制御回路40及びPFC制御部30は専用のハードウェアにより実現されるものであってもよい。
【0030】
図1に示す直流電源ユニット10は、通常動作時において過電流保護のために出力電流が定格最大電流ILを超えた場合に出力電圧Voを垂下させる、所謂、定電流垂下特性を持つ直流電源ユニットである(図2(B)を参照)。なお、直流電源ユニット10において、定格電流(連続して電流を流ことができる100%電流)の値と、定格最大電流IL(過電流制限が行われる電流)の値が異なる場合は、定格最大電流ILの値が、定格電流の値よりも大きく(例えば、150%)設定される。
【0031】
また、直流電源ユニット10は、上記定電流垂下特性に加えて、起動時に一時的にだけ作動する定電力垂下特性を持つ。この直流電源ユニット10では、停電により入力電源(AC入力)から供給される電力が遮断された後、復電により起動する際に、定格最大電流IL以上の電流を負荷RLに供給する必要がある場合に、一時的に定電力垂下動作を行う。この定電力垂下動作は、直流電源ユニット10から負荷RLに定格最大電流IL以上の電流を供給する場合に、出力電流Ioと出力電圧Voとの積が一定となるように出力電圧を垂下させて、負荷RLに電流を供給するものである。
【0032】
(定電力垂下特性と定電流垂下特性についての説明)
ここで図1に示す直流電源ユニット10が有する定電力垂下特性と、定電流垂下特性について補足して説明しておく。図2は、定電力垂下特性と定電流垂下特性について説明するための図である。図2(A)では、横軸に出力電流Io、縦軸に出力電圧Voをとり、定電力垂下特性を示している。同様に、図2(B)では、定電流垂下特性を示している。なお、前述のように、定電力垂下動作は、停電後の復電時において、定電力特性を持つ負荷に定格最大電流IL(直流電源ユニット10の通常動作時の定格最大電流)以上の電流、例えば、図2(A)に示す電流Iaの電流を流す必要がある場合において行われる垂下動作である。一方、定電流垂下動作は、直流電源ユニット10の通常動作時において、過電流制限のために出力電流Ioを定格最大電流ILに制限するために行われる垂下動作である。
【0033】
図2(A)に示すように、直流電源ユニット10は、定電力垂下動作では、負荷RLに定格最大電流IL以上の電流(例えば、電流Ia)を流す場合において、出力電圧Voと出力電流Ioとの積が一定(例えば、定格出力容量)になるように出力電圧Voを垂下させる。なお、出力電流Ioが大きくなりすぎると、後述するスイッチング素子Q1(図5を参照)の定格電流容量(例えば、短時間定格における最大電流値など)を超えるので、直流電源ユニット10は、過電流制限値IL´で電流制限をかける。
また、図2(A)では、定電力垂下動作を開始する電流を定格最大電流IL(直流電源ユニット10の通常動作時の定格最大電流)と同じにしているが、定電力垂下動作を開始する電流値を、定格最大電流ILと異なる値になるようにしてもよい。
また、図2(B)に示すように、通常動作時の定電流垂下特性では、出力電流Ioが定格最大電流IL以下の場合は出力電圧Voが一定電圧に保持されており、過電流制限値(定格最大電流IL)で出力電圧Voを垂下させて過電流制限をかける。
【0034】
上述の直流電源ユニット10における定電力垂下動作は、復電時に直流電源ユニット10が起動する際に一時的に行われる垂下動作である。例えば、この定電力垂下動作は、停電時にバッテリ61により負荷RLを駆動している状態において、負荷RLに流れている電流が、図2(A)に示す定格最大電流IL以上の場合(例えば、電流Iaの場合)に一時的に行われるものである。これは、直流電源ユニット10が、復電して起動した際に図2(B)に示す定電流垂下動作を行うと、出力電流が定格最大電流ILに制限され、負荷RLに必要な電流Iaを供給できないとともに、直流電源ユニット10の出力電圧Voが所要定格電圧に立ち上がれない状態となるためである。この事態を避けるために、直流電源ユニット10においては、復電時の起動の際に、一時的に定電力垂下動作が実行される。
【0035】
再び、図1に戻り、D/Dコントローラ41からは、DC/DCコンバータ回路50の出力電圧Voの電圧レベルを制御するための出力電圧基準信号Vrefが、DC/DCコンバータ回路50に対して出力される。DC/DCコンバータ回路50は、D/Dコントローラ41から入力された出力電圧基準信号Vrefを基に、出力電圧Voの電圧レベルが一定になるように制御する。
【0036】
また、D/Dコントローラ41からは、定電力垂下/定電流垂下の区別信号として、信号I_KINDが垂下基準信号生成部42に対して出力される。また、D/Dコントローラ41からは、定電力垂下特性の基準信号を生成するための電圧信号Iref_Mが垂下基準信号生成部42に対して出力される。そして、D/Dコントローラ41は、定電力垂下の場合は、信号I_KINDをハイレベル(I_KIND=1)とし、定電流垂下の場合は信号I_KINDをローレベル(I_KIND=0)とする。これらの信号I_KIND及びIref_Mが垂下基準信号生成部42の入力信号となる。垂下基準信号生成部42では、D/Dコントローラ41から入力された信号I_KINDと信号Iref_Mを基に、二次垂下基準信号Iref2と、一次垂下基準信号Iref1を生成し、DC/DCコンバータ回路50に出力する。
【0037】
(垂下基準信号生成部42についての説明)
図3は、垂下基準信号生成部42の構成を示す図である。この垂下基準信号生成部42は、図3(A)に示す信号I_KINDの入力回路と、図3(B)に示す、定電力垂下動作を行わせるための二次垂下基準信号Iref2を生成する二次垂下基準生成回路と、図3(C)に示す、最大出力電流を制限するための一次垂下基準信号Iref1を生成する一次垂下基準生成回路とを有している。なお、一次垂下基準信号Iref1及び二次垂下基準信号Iref2の具体的な使用例については、図5に示すDC/DCコンバータ回路50の説明において合わせて説明する。
【0038】
図3(A)に示す信号I_KINDの入力回路は、抵抗R101にフォトモスリレーの一次側PR_A、及びフォトカプラの一次側PC_Aが直列に接続されて構成されており、抵抗R101の一方の端子Aから信号I_KINDが入力される。この構成により、定電力垂下(信号I_KINDがハイレベル(I_KIND=1))の場合に、フォトモスリレーの一次側PR_A、及びフォトカプラの一次側PC_AはON(発光素子を発光)される。
【0039】
図3(B)に示す二次垂下基準生成回路は、D/Dコントローラ41から出力される二次垂下基準用の電圧信号Iref_Mと、出力電圧Voの負性信号(出力電圧(−))とにより、二次垂下基準信号Iref2を生成するための回路である。
この二次垂下基準生成回路は、D/Dコントローラ41から出力される電圧信号Iref_Mを電圧増幅部71により増幅する。この電圧信号Iref_Mは、直流電源ユニット10が定電力垂下動作をする場合と、通常動作(定電流垂下動作)をする場合とに応じて、その電圧レベルが切り替えられる。すなわち、定電力垂下動作をする場合の電圧レベルIref_M2は、通常動作(定電流垂下動作)をする場合の電圧レベルIref_M1よりも大きくなるように設定されている(Iref_M2>Iref_M1)(図4を参照)。これにより、直流電流ユニット10は、定電力垂下動作時において、通常動作時の定格最大電流IL以上の出力電流を負荷RLに流すことが可能になる。
【0040】
また、電圧増幅部71の出力側とグランドGとの間には、抵抗R102と抵抗R103の直列回路が接続されている。この抵抗R102と抵抗R103は抵抗分圧回路を構成し、この抵抗R102と抵抗R103の接続点(抵抗分圧点)Aから、二次垂下基準信号Iref2が出力される。また、上記接続点Aには、ダイオードD101のアノード側が接続され、ダイオードD101のカソード側には、抵抗R111と、R112と、フォトモスリレーの二次側PR_Bとが直列に接続されている。また、フォトモスリレーの二次側PR_Bの一端(抵抗R112が接続される端子とは反対側の端子)には、出力電圧Voの負側信号(出力電圧(−))が入力される。なお、この出力電圧Voの負側信号(出力電圧(−))は、負極性(−)の信号であり、出力電圧Voが大きくなるほど、電圧レベルが低下する。
【0041】
上述の図3(B)に示す二次垂下基準生成回路の構成により、通常動作時には、フォトモスリレーの二次側PR_BがOFF(オフ)し、二次垂下基準信号Iref2は、定電流垂下動作時にD/Dコントローラ41から出力される電圧信号Iref_M1を基に、電圧増幅部71及び抵抗R102,R103により生成される一定の値の信号(例えば、Iref2´)となる。なお、この一定の値の信号Iref2´は、信号Iref_M1の電圧レベルを変更することにより、所望の値に設定することができる。
【0042】
一方、定電力垂下動作時には、フォトモスリレーの二次側PR_BがONし、二次垂下基準信号Iref2の電圧レベルは、定電力垂下動作時にD/Dコントローラ41から出力される信号Iref_M2の電圧レベルと、出力電圧Voとで決まることになる。すなわち、信号Iref_M2は電圧増幅部71により増幅され、抵抗R102,R103の接続点Aに出力されるが、接続点Aには、ダイオードD101と、抵抗R111と、抵抗R112と、フォトモスリレーの二次側PR_Bとを介して、出力電圧Voの負側信号(出力電圧(−))が入力される。このため、接続点Aの電圧(二次垂下基準信号Iref2)は、出力電圧Voの変化と共にリニア(直線的)に変化し、定電力垂下の動作を行わせるための信号となる。
【0043】
例えば、出力電圧Voの電圧レベルが低い状態では、二次垂下基準信号Iref2の電圧レベルが高くなり、出力電圧Voの電圧レベルが高くなるにつれて、二次垂下基準信号Iref2の電圧レベルが低下する。これにより、定電力垂下特性(出力電圧Vo×出力電流が一定となる特性)を実現するための二次垂下基準信号Iref2が生成される。
なお、定電力垂下動作において流すことのできる最大電流は、信号Iref_M2の電圧レベルを変更することにより、所望の値に設定することができる。また、定電力垂下特性の傾き(出力電流Ioの変化に対する出力電圧Voの変化の割合)は、抵抗R102,R103,R111及びR112の抵抗値により設定することができる。
【0044】
また、図3(C)に示す一次垂下基準生成回路は、回路電源端子(+15V)とグランドGとの間に、抵抗R121とツェナーダイオードZD1が直列に接続される(ツェナーダイオードZD1のアノードがグランドGに接続される)。これにより、抵抗R121とツェナーダイオードZD1の接続点Aに所定の定電圧Vzが生成される。このツェナーダイオードZD1の端子間に抵抗R122と抵抗R123と抵抗R124との直列回路が接続され、ツェナーダイオードZD1により生成される定電圧Vzに対して、抵抗分圧回路が形成される。この抵抗R122と抵抗R123との接続点Bから一次垂下基準信号Iref1が出力される。また、抵抗R123と抵抗R124との接続点Cには、抵抗R132の一端が接続され、抵抗R132の他端は、トランジスタTr1のコレクタに接続され、トランジスタTr1のエミッタはグランドGに接続される。
また、回路電源端子(+15V)とグランドGとの間に、抵抗R131とフォトカプラの二次側PC_Bとの直列回路が接続される。また、抵抗R131とフォトカプラの二次側PC_Bとの接続点Dと、トランジスタTr1のベースとの間に、抵抗R133とツェナーダイオードZD2との直列回路が接続される(ツェナーダイオードZD2のアノードがトランジスタTr1のベースに接続される)。
【0045】
上記構成において、定電流垂下動作時には、フォトカプラの二次側PC_BがOFF(トランジスタTr1がON)になり、抵抗R124と抵抗R132とは並列接続されることになる。そして、抵抗R122と、抵抗R123と、抵抗R124//R132(抵抗R124とR132の並列回路)との直列回路(抵抗分圧回路)における、抵抗R124と抵抗R132の接続点Bとの電圧が一次垂下基準信号Iref1´として出力される。
【0046】
一方、定電力垂下動作時には、フォトカプラの二次側PC_BがON(トランジスタTr1がOFF)になり、抵抗R122と抵抗R123と抵抗R124との直列回路(抵抗分圧回路)における、抵抗R122と抵抗R123との接続点Bの電圧が一次垂下基準信号Iref1として出力される。このため、定電力垂下動作時における一次垂下基準信号Iref1は、定電流垂下動作時における一次垂下基準信号Iref1´よりも大きくなる。すなわち、定電力垂下動作時には、ユニットの定格最大電流IL以上の出力電流を流すために、定電力垂下動作時の一次垂下基準信号Iref1は、通常動作時(定電流垂下動作時)における一次垂下基準信号Iref1´よりも大きくなる。
【0047】
図4は、直流電源ユニット10における動作シーケンスを示す図である。図4は、横方向に時間の経過を示し、縦方向に、直流電源ユニット10の起動/停止(D/D_ON/OFF)の状態(ハレベルでON(起動))と、定電力垂下動作を行わせる信号I_KINDと、電圧信号Iref_Mと、出力電圧Voを並べて示したものである。
【0048】
図4に示すように、直流電源ユニット10は、時刻t1においてON(起動)すると、入力側および出力側にラッシュ電流(突入電流)が流れることを回避するために出力電圧Vo(及び出力電流Io)を徐々に立ち上げるカレントウオークインの動作モード(ソフトスタート)に移行する。その後、直流電源ユニット10は、カレントウオークインにより出力電圧Voがある程度立ち上がった状態の時刻t2において、信号I_KINDをON(ハイレベル)、また、信号Iref_MをIref_M2まで増大させて、定電力垂下動作を開始する。次に、直流電源ユニット10は、この定電力垂下動作の状態において出力電圧Voが所要定格電圧まで立ち上がると(時刻t3)、この数秒後に(時刻t4)、信号I_KINDをOFF(ローレベル)にし、また、信号Iref_MをIref_M1まで低下させて、定電流垂下動作を開始する。
【0049】
なお、図4に示す例では、直流電源ユニット10は、時刻t3において出力電圧Voが定格電圧まで立ち上がったことを検出した後、数秒後に定電力垂下動作から定電流垂下動作に切り替えるようにしているが、これに限定されない。例えば、直流電源ユニット10は、時刻t1においてON(起動)した後、所定の時間をタイマ等で計測し、この所定の時間の経過後に、定電力垂下動作から定電流垂下動作に切り替えるようにしてもよい。また、複数台の直流電源ユニット10が並列に運転される並列冗長運転方式の場合は、各直流電源ユニット10において出力電圧Voが所要定格電圧まで立ち上がったことを検出した後に、定電力垂下動作から定電流垂下動作に切り替えるようにしてもよい。
【0050】
(DC/DCコンバータ回路50の構成と動作についての説明)
次に、DC/DCコンバータ回路50について説明する。図5は、DC/DCコンバータ回路50の構成を示す図である。この図に示す直流電源ユニット10は、主回路がフォワードコンバータ(フォワード方式スイッチング電源装置)で構成されたものである。
図5において、Tx1は出力トランス、Q1は出力トランスTx1の一次側に接続されるスイッチング素子、Eは直流電源(力率改善回路20により生成される電源)、RLは定電力特性を持つ負荷、EA1,EA2はエラーアンプ(演算増幅器)、CMP1,CMP2は比較器(コンパレータ)、CTは出力トランスTx1の一次側電流を検出するカレントトランスで、シャントSHは2次電流検出素子である。
【0051】
また、このDC/DCコンバータ回路50は、出力定電圧制御回路51と、出力定電流制御回路(二次垂下回路)52と、瞬時過電流制御回路(一次垂下回路)53とを有している。そして、回路51,52,53の出力側は、それぞれダイオードD11,D12,D13のカソード側に接続され、このダイオードD11,D12,D13のアノード側はノードN1に共通接続されている。このノードN1は、抵抗R41を介して電源端子(Vcc)に接続され、また、ノードN1は比較器CMP2の非反転入力端子(+)に接続されている。
【0052】
従って、ダイオードD11,D12,D13の作用により、ノードN1には、出力定電圧制御回路51の出力信号AVR_Vと、出力定電流制御回路52の出力信号AVR_I2と、瞬時過電流制御回路53の出力信号AVR_I1のうちの最も信号レベルが低い信号が選択されてノードN1に出力される。このノードN1に出力された信号は、比較器CMP2により電源動作周波数キャリア三角波形と比較され、スイッチング素子(スイッチングトランジスタ)Q1の駆動信号(PWM信号)が生成される。このスイッチング素子Q1がON/OFFすることにより、出力トランスTx1の一次側のコイルに電源Eから電流が流れ、この一次側の電流により電磁誘導されて二次側のコイルに電流が流れる。この出力トランスTx1の二次側には整流回路部54が接続されている。この整流回路部54において、二次側のコイルに流れる電流がダイオードD1及びD2からなる整流回路により整流され、リアクトルL1及びコンデンサC1からなる平滑回路により平滑されて、直流電圧(出力電圧Vo)が生成される。この出力電圧Voが、シャントSHを通して負荷RLに印加される。 なお、図5に示すDC/DCコンバータ回路50では、シャントSHと負荷RLの接続点(出力電圧V(+)の端子)が制御回路のグランド(G)側になるように構成されている。
【0053】
(出力定電圧制御回路51についての説明)
図5に示す出力定電圧制御回路51は、出力電圧Voの検出信号と、D/Dコントローラ41から入力した出力電圧基準信号Vref(図1を参照)との差分に対応してスイッチング素子Q1のON(オン)幅を制御する制御回路である。この出力定電圧制御回路51は、抵抗R11とR12が直列に接続された抵抗分圧回路で構成された出力電圧検出部を有し、また、エラーアンプEA1を有している。抵抗R11の一端は、正側の出力電圧(+)端子に接続され、抵抗R11の他端は抵抗R12の一端に接続され、抵抗R12の他端は負側の出力電圧(−)端子に接続される。抵抗R11とR12の接続点は、抵抗R13を介して、エラーアンプEA1の非反転入力端子(+)に接続されている。また、エラーアンプEA1の反転入力端子(−)には、D/Dコントローラ41から出力される出力電圧基準信号Vrefが入力される。
【0054】
このエラーアンプEA1の非反転入力端子(+)と出力端子との間には、抵抗R14(比例要素)が接続され、また、コンデンサC11と抵抗R15の直列回路(成分要素)が接続される。したがって、エラーアンプEA1は比例積分回路(一次遅れ回路)となり、出力電圧値Vo(より正確には出力電圧V(−)の検出信号)と出力電圧基準信号Vrefとの差分が所定の時定数を持って差動増幅され、差動増幅された信号AVR_Vが出力される。このため、エラーアンプEA1の出力は、所定の時定数を持って徐々に変化するため、後述する瞬時過電流制御回路53と比較して応答が遅くなる。
【0055】
そして、通常動作時、すなわち、出力定電流制御回路52及び瞬時過電流制御回路53による出力電圧の垂下動作が行われていない場合は、出力定電圧制御回路51の出力信号AVR_VがノードN1に出力され、この出力信号AVR_Vが比較器CMP2により電源動作周波数キャリア三角波形と比較され、スイッチング素子Q1のON/OFF駆動信号(PWM信号)が生成される。
【0056】
例えば、図6は、DC/DCコンバータ回路50の動作を示す図であり、横軸に時間の経過を示し、縦方向に、ノードN1に回路51,52,53から出力される電圧(AVR_V、AVR_I2、またはAVR_I1)と、キャリア三角波形と、比較器CMP2の出力(ハイレベルでスイッチング素子Q1がON)と、出力電圧Voを並べて示したものである。
【0057】
この図において、図6(A)に示すように、通常動作時(出力電圧正常範囲制御時)においては、ノードN1の出力電圧は、出力定電圧制御回路(エラーアンプEA1)51からの出力電圧AVR_Vとなり、この出力信号AVR_VがノードN1に出力される。この出力信号AVR_Vが比較器CMP2により電源動作周波数キャリア三角波形と比較され、比較器CMP2からスイッチング素子Q1のON/OFF駆動信号が生成される。これにより、出力電圧Voが一定の値になるように制御される。
【0058】
(出力定電流制御回路52についての説明)
図5に示す出力定電流制御回路52は、定電力垂下動作(直流電源ユニット10から負荷RLに流れる出力電流を検出して垂下させる二次垂下動作)を制御する制御回路である。この出力定電流制御回路52において、出力電流Ioの検出素子であるシャントSHにより検出された出力電流の検出信号Cが抵抗R21を介してエラーアンプEA2の反転入力端子(−)に入力される。また、エラーアンプEA2の非反転入力端子(+)には、垂下基準信号生成部42から出力される二次垂下基準信号Iref2(図3(B)を参照)が入力される。このように、出力定電流制御回路52において、エラーアンプEA2には、出力電流Ioの検出信号Cと二次垂下基準信号Iref2とが入力され、エラーアンプEA2により差動増幅された信号AVR_I2を出力する。
【0059】
なお、このエラーアンプEA2の反転入力端子(−)と出力端子との間には、抵抗R22(比例要素)が接続され、また、コンデンサC21と抵抗R23の直列回路(積分要素)が接続されている。したがって、エラーアンプEA2は比例積分回路(一次遅れ回路)となり、出力電流値の信号Cと二次垂下基準信号Iref2との差分が所定の時定数を持って差動増幅される。すなわち、エラーアンプEA2の出力は所定の時定数を持って徐々に変化し、エラーアンプEA2の応答は、後述する瞬時過電流制御回路53と比較して応答が遅くなるように設定されている。
この出力定電流制御回路52の構成により、出力電流Ioが増加すると、差動増幅したEA2の出力信号AVR_I2が徐々に下がり、信号AVR_V及び信号AVR_I1より低くなると、この出力信号AVR_I2がノードN1に出力される。
【0060】
図6(B)に、出力定電流制御回路52の回路動作を示す。図6(B)に示すように、出力定電流制御回路52において、出力電流Ioの検出信号Cが二次垂下基準信号Iref2の電圧レベルを超えると、エラーアンプEA2の出力信号AVR_I2が徐々に低下し、信号AVR_Vより低くなると、出力信号AVR_I2がノードN1に出力され、信号AVR_I2が比較器CMP2により電源動作周波数キャリア三角波形と比較され、スイッチング素子Q1の駆動信号(PWM信号)が生成される。
このように、出力電流Ioが増大するにつれて、出力信号AVR_I2が徐々に低下し、二次垂下動作が開始される。
【0061】
(瞬時過電流制御回路53についての説明)
図5に示す瞬時過電流制御回路53は、定電流垂下動作(出力トランスTx1の一次側の電流を検出して垂下させる一次垂下動作)を制御する制御回路である。この瞬時過電流制御回路53において、出力トランスTx1の一次側の電流検出素子であるカレントトランスCTにより検出された電流信号A,BをダイオードD31と抵抗R31により整流して一次側電流検出信号Isを生成し、この生成した信号Isが比較器CMP1の反転入力端子(−)に入力される。なお、信号Isはパルス状の電圧信号である。また、比較器CMP1の非反転入力端子(+)には、垂下基準信号生成部42により生成された一次垂下基準信号Iref1(図3(C)を参照)が入力される。
【0062】
この瞬時過電流制御回路53の構成により、出力トランスTx1の一次側電流が増加し、信号Isが一次垂下基準信号Iref1を超えると(信号Is>Iref1)、比較器CMP1の出力信号AVR_I1は直ちにローレベルの信号となる。この比較器CMP1から出力されるローレベルの信号AVR_I1は、常に、出力定電圧制御回路51の出力信号AVR_V及び出力定電流制御回路52の出力信号AVR_I2よりも信号レベルが低くなるように設定されており、瞬時過電流制御回路53が過電流を検出した際には、信号AVR_I1が直ちにノードN1に出力される。
【0063】
このように、DC/DCコンバータ回路50が瞬時過電流により垂下動作に入る場合、カレントトランスCTにより検出した電流値の信号Isと、一次垂下基準信号Iref1とを瞬時過電流制御回路53内の比較器CMP1により比較し、信号Isが一次垂下基準Iref1を超えたら、直ちに比較器CMP1の出力信号をローレベルとし、出力電圧を低下させる。この瞬時過電流制御回路53における動作は出力定電流制御回路(二次垂下)52よりも応答が早く、過渡的な過電流制限を行うことで電源を保護している。
【0064】
図6(C)に、瞬時過電流制御回路53の回路動作を示す。図6(C)に示すように、瞬時過電流制御回路53では、出力トランスTx1の一次側電流の検出信号Isが一次垂下基準信号Iref1を超えると、比較器CMP1の出力信号AVR_I1が直ちにローレベルまで低下し、ローレベルの信号AVR_I1がノードN1に出力され、信号AVR_I1が比較器CMP2により電源動作周波数キャリア三角波形と比較され、スイッチング素子Q1の駆動信号(PWM信号)が生成される。この垂下動作の場合には、CMP2の出力(パルス幅)は、大幅に狭くなり、出力電圧Voが大幅に低下することになる。
【0065】
このように、DC/DCコンバータ回路50では、定電力垂下動作における電流制限(二次垂下動作)は、出力定電流制御回路52(エラーアンプEA2)により制御を行う。また、定電流垂下動作(瞬時過電流保護)による電流制限(一次垂下動作)は、瞬時過電流制御回路53(比較器CMP1)により制御を行う。また、常に、2次垂下基準信号Iref2が一次垂下基準信号Iref1よりも小さくなるように、すなわち「2次垂下基準信号Iref2<一次垂下基準信号Iref1」の関係となるように設定されている。
【0066】
例えば、図7に示すように、期間T1に示す定電力垂下動作を行う際には、二次垂下基準信号Iref2を信号レベルA2(定電力垂下動作における出力電流の最大値を一時的に信号レベルA2)まで増加させ、これに比例して一次垂下基準信号Iref1も信号レベルA1(出力トランスTx1の一次側電流の電流制限値を一時的に信号レベルA1)まで増加させることになる。また、期間T2に示す定電流垂下動作を行う際には、一次垂下基準信号Iref1を、通常動作時の定格最大電流に相当する信号レベルB1にし、二次垂下基準信号Iref2は、一次垂下基準信号Iref1の信号レベルB1より小さい信号レベルB2にすることになる。
【0067】
なお、期間T2の定電流垂下動作時における一次垂下基準信号Iref1の信号レベルB1と、二次垂下基準信号Iref2の信号レベルB2との関係については、例えば、二次垂下基準信号Iref2の信号レベルB2を定格電流(連続して流すことができる100%電流)に一致するように設定する。また、例えば、一次垂下基準信号Iref1の信号レベルB1を定格最大電流(短時間定格で流すことができる電流、例えば、定格電流の150%)に一致するように設定する。これにより、過電流状態が生じる場合に、応答の速い瞬時過電流制御回路53により、出力電流を瞬時に定格最大電流IL(例えば、150%)に制限し、その後、瞬時過電流制御回路52により、所定の時定数を有して、出力電流を定格電流(100%)に制限することができる。
【0068】
(直流電源システムについての説明)
次に、本発明の直流電源ユニットを複数台用いた直流電源システム100について説明する。本実施形態に係わる直流電源システム100は、上述したDC/DCコンバータ回路50を用いて直流電源ユニット10を構成し、この直流電源ユニット10を複数台設けて、それぞれを並列に接続して、並列冗長運転方式で構成されている。これの一例を図8に示している。図8では、直流電源システム100を構成する直流電源ユニット10A,10B,10Cのブロック図を示す。この直流電源ユニット10A,10B,10Cは、U相、V相、W相の3相交流(例えば、AC3相200V)を入力電源とするように構成されている。なお、この例では3相交流を入力電源とするように構成してあるが、単相交流入力であっても本発明の直流電源システム100を構成することができる。
【0069】
図8に示す直流電源システム100は、各直流電源ユニット10A,10B,10C入力側に力率改善回路20A,20B,20Cを備え、その出力にDC/DCコンバータ回路50A,50B,50Cが接続されている。即ち、力率改善回路20A,20B,20CがDC/DCコンバータ回路50A,50B,50Cの直流電源Eの役割をする。また、直流電源システム100は、これとは別途にD/D制御回路40Aを備えている。D/D制御回路40Aは、図1に示したD/Dコントローラ41、垂下基準信号生成部42を備えた回路である。また、D/D制御回路40Aは各DC/DCコンバータ回路50A,50B,50Cに接続されている。
【0070】
なお、各DC/DCコンバータ回路50A,50B,50Cの構成と動作とは、図5に示したDC/DCコンバータ回路50と同様であり、重複する説明は省略する。また、D/D制御回路40Aの構成と動作とについても、図1に示したD/D制御回路40と同様であるが、このD/D制御回路40Aでは、複数のDC/DCコンバータ回路50A,50B,50Cを制御する点が異なる。このD/D制御回路40Aからは、DC/DCコンバータ回路50A,50B,50Cに対して、出力電圧基準信号Vref、一次垂下基準信号Iref1及び二次垂下基準信号Iref2が出力される。この場合に、DC/DCコンバータ回路50A,50B,50Cに対して出力する一次垂下基準信号Iref1及び二次垂下基準信号Iref2は、各回路50A,50B,50の容量や特性に応じて、それぞれの回路50A,50B,50ごとに設定することもできる。
【0071】
上記直流電源システム100の構成により、複数の直流電源ユニット10A,10B,10Cを用いて負荷RL(定電力特性を持つ負荷)に電力を供給する場合において、停電によりバッテリ61から負荷RLに電力を供給している途中に復電した際に、各直流電源ユニット10A,10B,10Cが一時的に定電力垂下動作を行う。これにより、各直流電源ユニット10A,10B,10Cから定格最大電流IL(通常動作時の定格最大電流)以上の電流を負荷RLに供給しながら、各直流電源ユニット10A,10B,10Cの出力電圧Voを所要定格電圧まで立ち上げることができる。
【0072】
以上、説明したように、従来方法では、直流電源ユニットが定電力垂下特性を持つことが必要となり、定電力垂下動作が連続して発生することも考慮して、定電力垂下対応のユニットを設計しなければならない。その結果、定電力垂下動作時に流れる垂下電流が増えることにより、これに応じたスイッチィグトランジスタの選定(スイッチィグトランジスタの大型化)が必要になり、また、出力トランスの巻き線を太くする必要があり、さらには、スイッチィグトランジスタの熱損失が増大することに対応した放熱設計を行うことが必要になる。このため、直流電源ユニットの寸法が増大し、製造コストも増加する。
【0073】
これに対して、本実施形態の直流電源ユニット10、及び直流電源システム100においては、起動時のみに一時的に定電力垂下特性を持たせる事で、必要以上の設計(定電力垂下動作に対応した設計)を不要とする。すなわち、通常動作時の定電流垂下動作に応じた設計で済ませることができ、直流電源ユニット10、及び直流電源システム100の小型化を図り、製造コストを低減できる。
【0074】
なお、ここで、本発明と上記実施形態との対応関係について補足して説明しておく。本発明における直流電源ユニットは、図1に示す直流電源ユニット10が対応する。また、本発明における直流電源システムは、図8に示す直流電源システム100が対応する。また、本発明における負荷は、図1及び図8に示す定電力特性を持つ負荷RLが対応する。また、本発明における出力トランスは、図5に示す出力トランスTx1が対応し、本発明におけるスイッチング素子は、図5に示すスイッチング素子(スイッチングトランジスタ)Q1が対応する。また、本発明におけるDC/DCコンバータ回路は、図1及び図5に示すDC/DCコンバータ回路50が対応する。
【0075】
また、本発明における一次垂下回路は、図5に示す瞬時過電流制御回路53が対応し、本発明における二次垂下回路は、出力定電流制御回路52が対応し、本発明における整流回路部は、整流回路部54が対応する。また、本発明における出力電圧基準信号は、出力電圧基準信号Vrefが対応し、本発明における一次垂下基準信号は、一次垂下基準信号Iref1が対応し、本発明における二次垂下基準信号は、二次垂下基準信号Iref2が対応する。
【0076】
(1)そして、上記実施形態において、直流電源ユニット10は、通常動作時に過電流保護のために出力電流を所定の電流値(通常動作時の定格最大電流IL)に制限する定電流垂下動作を行う直流電源ユニット10であって、起動時において、負荷RLに所定の電流値(通常動作時の定格最大電流IL)以上の電流を供給する必要がある場合に、出力電流と出力電圧との積が一定となるように出力電圧を垂下させる定電力垂下動作を行うことにより、所定の電流値(通常動作時の定格最大電流IL)以上の電流を負荷RLに供給する。
このような構成の直流電源ユニット10では、起動時のみに定電力垂下動作を行うことで、一時的に所定の値(通常動作時の定格最大電流IL)以上の電流を負荷RLに流すようにする。
これにより、通常動作時において必要とされる仕様(例えば、スイッチング素子Q1の選定や熱設計の仕様)のままで、定電力垂下特性を持つ直流電源ユニット10を構成することができる。このため、必要以上の設計(定電力垂下動作に対応した設計)が不要となり、直流電源ユニット10の寸法を小さくし、製造コストを低減できる。
【0077】
(2)また、上記実施形態において、直流電源ユニット10の出力側にはバッテリ61を有する蓄電装置60が接続され、負荷RLは定電力特性を持つ負荷であり、停電により直流電源ユニット10へ電源が供給されなくなった場合に、蓄電装置60から負荷RLに電力を供給する。そして、復電の際の直流電源ユニット10の起動時において、直流電源ユニット10から負荷RLに所定の値(通常動作時の定格最大電流IL)以上の電流を供給する必要がある場合は、出力電流と出力電圧との積が一定となるように出力電圧を垂下させる定電力垂下動作を行うことにより、負荷RLに所定の値以上の電流を供給する。
このような構成の直流電源ユニット10では、定電力特性を持つ負荷RL(例えば、直流電圧を交流電圧に変換するインバータ)に電力を供給し、停電時には蓄電装置60から負荷RLに電力を供給する。そして、復電時において直流電源ユニット10を起動する際に、直流電源ユニット10から負荷RLに所定の値(通常動作時の定格最大電流IL)以上の電流を供給する必要がある場合は、定電力垂下動作を行うことにより、一時的に所定の値以上の電流を負荷RLに流せるようにする。
これにより、直流電源ユニット10の起動の際に、定電力特性を持つ負荷RLに所定の値(通常動作時の定格最大電流IL)以上の電流を供給する必要がある場合においても、この電流を負荷RLに供給できるとともに、直流電源ユニット10の出力電圧を所要定格電圧まで立ち上げることができる。
【0078】
(3)また、上記実施形態において、直流電源ユニット10は、出力電圧Voを検出して出力電圧基準信号Vrefとの差分に対応して出力トランスTx1の一次側に接続されたスイッチング素子Q1のON幅を制御するDC/DCコンバータ回路50を有し、このDC/DCコンバータ回路50には、出力トランスTx1の一次側に流れる一次電流を検出し、該一次電流の検出信号と所定の一次垂下基準信号Iref1とを比較し、この比較結果を基にスイッチング素子Q1のON幅を制御して定電流垂下動作を行う瞬時過電流制御回路(一次垂下回路)53と、出力トランスTx1の二次側に繋がる整流回路部54から出力される出力電流を検出し、該出力電流の検出信号と所定の二次垂下基準信号Iref2とを比較し、この比較結果を基にスイッチング素子Q1のON幅を制御して定電流垂下動作または定電力垂下動作を行う出力定電流制御回路(二次垂下回路)52と、を有し、瞬時過電流制御回路(一次垂下回路)53において定電流垂下動作を開始させる一次垂下基準信号Iref1のレベルは、出力定電流制御回路(二次垂下回路)52において定電流垂下動作または定電力垂下動作を開始させる二次垂下基準信号Iref2のレベルよりも大きく設定され、出力定電流制御回路(二次垂下回路)52において定電力垂下動作を行う際、すなわち直流電源ユニット10の起動時には、一次垂下基準信号Iref1のレベルと二次垂下基準信号Iref2のレベルとを、出力定電流制御回路(二次垂下回路)52において定電流垂下動作を行う際、すなわち通常動作時のそれぞれのレベルよりも所定の割り合いだけ増加させる。
このような構成の直流電源ユニット10では、定電流垂下動作を行う瞬時過電流制御回路(一次垂下回路)53と、定電流垂下動作または定電力垂下動作を行う出力定電流制御回路(二次垂下回路)52とを備える。そして、直流電源ユニット10の起動時には、瞬時過電流制御回路(一次垂下回路)53の動作基準となる一次垂下基準信号Iref1と、定電力垂下動作を行う出力定電流制御回路(二次垂下回路)52の動作基準となる二次垂下基準信号Iref2とを、通常動作時のレベルよりも一時的に増加させる。
これにより、直流電源ユニット10の起動の際に、定電力特性を持つ負荷RLに所定の値(通常動作時の定格最大電流IL)以上の電流を供給する必要がある場合においても、定電力垂下動作を行うことにより負荷RLに電流を供給できる。
【0079】
(4)また、上記実施形態において、出力定電流制御回路(二次垂下回路)52は、出力電流Ioの検出信号と二次垂下基準信号Iref2とを比例積分回路を用いて比較し、所定の時定数を有して比較結果を出力し、該比較結果を基に前記定電力垂下動作を行い、瞬時過電流制御回路(一次垂下回路)53は、出力トランスTx1の一次側電流の検出信号Isと一次垂下基準信号Iref1とを比較器CMP1を用いて比較し、該比較結果を基に直ちに定電流垂下動作を行う。
このような構成の直流電源ユニット10は、出力定電流制御回路(二次垂下回路)52における定電力垂下動作(二次垂下動作)は応答を遅くし、瞬時過電流制御回路(一次垂下回路)53における定電流垂下動作(一次垂下動作)は応答を早くする。
これにより、直流電源ユニット10の起動の際に定電力垂下動作を行わせることができるとともに、高速応答する定電流垂下動作により、直流電源ユニット10を過電流から確実に保護することができる。
【0080】
(5)また、上記実施形態において、直流電源システム100は、直流電源ユニット10(より正確には、図8に示す直流電源ユニット10A,10B,10C)の複数台のそれぞれを並列に接続して構成され、直流電源ユニット10を並列に運転して負荷RLに電力を供給する。
このような構成の直流電源システム100では、各直流電源ユニット10が、起動時のみに定電力垂下動作を行うことで、一時的に所定の値(各直流電源ユニット10の通常動作時の定格最大電流IL)以上の電流を負荷RLに流せるようにする。
これにより、直流電源システム100を構成する各直流電源システム100を、通常動作時において必要とされる仕様(例えば、スイッチング素子Q1の選定や熱設計の仕様)のままで、定電力垂下特性を持つ直流電源ユニットとして構成することができる。このため、各直流電源ユニット10において必要以上の熱設計が不要となり、各直流電源ユニット10の寸法を小さくし、製造コストを低減できる。その結果、直流電源システム100においても、寸法を小さくし、製造コストを低減できる。
【0081】
(6)また、上記実施形態において、負荷RLは定電力特性を持つ負荷であり、また、直流電源システム100の出力側はバッテリ61を含む蓄電装置60に接続され、停電により直流電源システム100へ入力電源が供給されなくなった場合に、蓄電装置60から負荷RLに電力を供給し、復電時に各直流電源ユニット10が起動する際に、各直流電源ユニット10から負荷RLに所定の値(各直流電源ユニット10の通常動作時の定格最大電流IL)以上の電流を供給する必要がある場合は、各直流電源ユニット10に出力電流Ioと出力電圧Voとの積が一定となるように出力電圧Voを垂下させる定電力垂下動作を行わせて、所定の値以上の電流を負荷RLに供給する。
このような構成の直流電源システム100では、停電時には蓄電装置60から負荷RLに電力を供給する。そして、復電時において直流電源システム100内の各直流電源ユニット10を起動する際に、負荷RLに所定の値(各直流電源ユニット10の通常動作時の定格最大電流IL)以上の電流を供給する必要がある場合は、各直流電源ユニット10に定電力垂下動作を行わせることにより、一時的に所定の値以上の電流を負荷RLに流せるようにする。
これにより、復電により直流電源システム100内の直流電源ユニット10を起動する際に、各直流電源ユニット10から負荷RLに所定の値(各直流電源ユニット10の通常動作時の定格最大電流IL)以上の電流を供給する必要がある場合においても、この電流を負荷RLに供給しつつ、直流電源システム100の出力電圧(より正確には各直流電源ユニット10の出力電圧)を所要定格電圧まで立ち上げることができる。
【0082】
(7)また、上記実施形態において、直流電源システム100は、1番目から(n+1)番目までの(n+1)台の直流電源ユニット10を並列に接続して構成され、通常動作時は、1番目からn番目までの直流電源ユニット10を運転して負荷RLに電力を供給し、1番目からn番目までの直流電源ユニット10のいずれかが故障した場合には、(n+1)番目の直流電源ユニットを代替のユニットとして使用するとともに、通常動作時には、(n+1)番目の直流電源ユニット10をバッテリ61へ充電を行う充電兼用ユニットとして使用する。
このような構成の直流電源システム100では、(n+1)台の直流電源ユニット10を並列に接続して構成される。通常動作時は、1番目からn番目までの直流電源ユニット10を運転して負荷RLに電力を供給する。1番目からn番目までの直流電源ユニット10のいずれかが故障した場合は、(n+1)番目の直流電源ユニットを代替のユニットとして使用する。また、通常動作時(故障ユニットが発生していない時)には、(n+1)番目の直流電源ユニット10をバッテリ61へ充電を行う充電兼用ユニットとして使用する。
これにより、直流電源システム100を並列冗長運転方式の直流電源装置として構成するとともに、蓄電装置60(バッテリ61)を備える無停電電源装置として構成できる。そして、復電時等の直流電源システム100内の各直流電源ユニット10を起動する際に、各直流電源ユニット10から負荷RLに所定の値(各直流電源ユニット10の通常動作時の定格最大電流IL)以上の電流を供給する必要がある場合においても、この電流を負荷RLに供給しつつ、直流電源システム100の出力電圧(より正確には各直流電源ユニット10の出力電圧)を所要定格電圧まで立ち上げることができる。
【0083】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明の直流電源ユニット及び直流電源システムは、上述の図示例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、上述のDC/DCコンバータ回路はフォワードコンバータで構成することに限定されず、種々の形式のDC/DCコンバータにより構成することができる。また、上述のDC/DCコンバータ回路は、一次垂下動作として定電流垂下動作を行う一次垂下回路で構成することに限定されず、その他の垂下動作を行う一次垂下回路で構成してもよい。
【0084】
なお、上記実施形態において、直流電源ユニット10は、起動時に定電力垂下動作を行う場合について説明したが、これに限られるものではない。直流電源ユニット10は、起動時に代えて、所定の指示がされた際に、定電力垂下動作を行ってもよい。これにより、直流電源ユニット10は、起動時のみならず、操作者により所定の指示(直流電源ユニット10に強制的に定電力垂下動作をさせる指示)がされた際に、強制的に定電力垂下動作を行うことで、一時的に所定の値(通常動作時の定格最大電流IL)以上の電流を負荷RLに流すことができる。
【0085】
なお、上記実施形態において、直流電源ユニット10は、出力電流と出力電圧との積が一定となるように出力電圧を垂下させる定電力垂下動作を行うことにより、所定の電流値(通常動作時の定格最大電流IL)以上の出力電流を負荷RLに供給する場合について説明したが、これに限られるものではない。直流電源ユニット10は、出力電流と出力電圧との積が一定とならない垂下動作であっても、出力電圧を垂下させて出力電流を増加させる垂下動作を行うことにより、所定の電流値(通常動作時の定格最大電流IL)以上の出力電流を負荷RLに供給してもよい。
【符号の説明】
【0086】
10,10A,10B,10C・・・直流電源ユニット
20,20A,20B,20C・・・力率改善回路
30・・・PFC制御部
40,40A・・・D/D制御回路
41・・・D/Dコントローラ
42・・・垂下基準信号生成部
50,50A,50B,50C・・・DC/DCコンバータ回路
51・・・出力定電圧制御回路
52・・・出力定電流制御回路(二次垂下回路)
53・・・瞬時過電流制御回路(一次垂下回路)
54・・・整流回路部
60・・・蓄電装置
61・・・バッテリ
71・・・電圧増幅部
100・・・直流電源システム
Tx1・・・出力トランス
Q1・・・スイッチング素子
EA1,EA2・・・エラーアンプ
CMP1,CMP2・・・比較器
CT・・・カレントトランス
SH・・・シャント
RL・・・負荷
Vref・・・出力電圧基準信号
Iref1・・・一次垂下基準信号
Iref2・・・二次垂下基準信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
過電流保護のために出力電流を所定の値に制限する定電流垂下動作を行う直流電源ユニットであって、
負荷に前記所定の値以上の電流を供給する必要がある場合に、出力電圧を垂下させて出力電流を増加させる垂下動作を行い、前記所定の値以上の電流を負荷に供給することを特徴とする直流電源ユニット。
【請求項2】
負荷に前記所定の値以上の電流を供給する必要がある場合に、出力電流と出力電圧との積が一定となるように出力電圧を垂下させる定電力垂下動作を行い、前記所定の値以上の電流を負荷に供給する
ことを特徴とする請求項1に記載の直流電源ユニット。
【請求項3】
起動時、または、所定の指示がされた際において、負荷に前記所定の値以上の電流を供給する必要がある場合に、出力電流と出力電圧との積が一定となるように出力電圧を垂下させる定電力垂下動作を行い、前記所定の値以上の電流を負荷に供給する
ことを特徴とする請求項2に記載の直流電源ユニット。
【請求項4】
前記直流電源ユニットの出力側にはバッテリを有する蓄電装置が接続され、
前記負荷は定電力特性を持つ負荷であり、
停電により前記直流電源システムへ電源が供給されなくなった場合に前記蓄電装置から前記負荷に電力を供給し、
復電の際の直流電源ユニットの起動時において、当該直流電源ユニットから前記負荷に前記所定の値以上の電流を供給する必要がある場合に、出力電流と出力電圧との積が一定となるように出力電圧を垂下させる定電力垂下動作を行い、前記所定の値以上の電流を負荷に供給する
ことを特徴とする請求項2または請求項3に記載の直流電源ユニット。
【請求項5】
前記直流電源ユニットは、出力電圧を検出して出力電圧基準信号との差分に対応して出力トランスの一次側に接続されたスイッチング素子のON幅を制御するDC/DCコンバータ回路を有し、前記DC/DCコンバータ回路には、前記出力トランスの一次側に流れる一次電流を検出し、該一次電流の検出信号と所定の一次垂下基準信号とを比較し、この比較結果を基に前記スイッチング素子のON幅を制御して垂下動作を行う一次垂下回路と、出力トランスの二次側に繋がる整流回路部から出力される出力電流を検出し、該出力電流の検出信号と所定の二次垂下基準信号とを比較し、この比較結果を基に前記スイッチング素子のON幅を制御して定電流垂下動作または定電力垂下動作を行う二次垂下回路と、を備え、前記一次垂下回路において垂下動作を開始させる一次垂下基準信号のレベルは、前記二次垂下回路において定電流垂下動作または定電力垂下動作を開始させる二次垂下基準信号のレベルよりも大きく設定され、前記二次垂下回路において定電力垂下動作を行う際には、前記一次垂下基準信号のレベルと前記二次垂下基準信号のレベルとを、前記二次垂下回路において定電流垂下動作を行う際のそれぞれのレベルよりも所定の割り合いだけ増加させることを特徴とする請求項2から請求項4のいずれか1項に記載の直流電源ユニット。
【請求項6】
前記二次垂下回路は、前記出力電流の検出信号と前記二次垂下基準信号とを比例積分回路を用いて比較し、所定の時定数を有して比較結果を出力し、該比較結果を基に前記定電力垂下動作を行い、
前記一次垂下回路は、前記出力トランスの一次側電流の検出信号と前記一次垂下基準信号とを比較器を用いて比較し、該比較結果を基に直ちに前記垂下動作を行う
ことを特徴とする請求項5に記載の直流電源ユニット。
【請求項7】
前記一次垂下回路は、定電流垂下動作を行うことを特徴とする請求項5または請求項6に記載の直流電源ユニット。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の直流電源ユニットの複数台のそれぞれを並列に接続して構成され、前記直流電源ユニットを並列に運転して負荷に電力を供給する
ことを特徴とする直流電源システム。
【請求項9】
前記負荷は定電力特性を持つ負荷であり、
また、前記直流電源システムの出力側はバッテリを含む蓄電装置に接続され、
停電により前記直流電源システムへ入力電源が供給されなくなった場合に、前記蓄電装置から前記負荷に電力を供給し、
復電時に各直流電源ユニットが起動する際に、各直流電源ユニットから前記負荷に所定の値以上の電流を供給する必要がある場合は、各直流電源ユニットに出力電流と出力電圧との積が一定となるように出力電圧を垂下させる定電力垂下動作を行わせて、前記所定の値以上の電流を負荷に供給する
ことを特徴とする請求項8に記載の直流電源システム。
【請求項10】
前記直流電源システムは、1番目から(n+1)番目までの(n+1)台の直流電源ユニットを並列に接続して構成され、
通常動作時は、1番目からn番目までの直流電源ユニットを運転して前記負荷に電力を供給し、1番目からn番目までの直流電源ユニットのいずれかが故障した場合には、前記(n+1)番目の直流電源ユニットを代替のユニットとして使用するとともに、
通常動作時には、前記(n+1)番目の直流電源ユニットを前記バッテリへ充電を行う充電兼用ユニットとして使用する
ことを特徴とする請求項9に記載の直流電源システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−130221(P2012−130221A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−281831(P2010−281831)
【出願日】平成22年12月17日(2010.12.17)
【出願人】(000002037)新電元工業株式会社 (776)
【出願人】(593063161)株式会社NTTファシリティーズ (475)
【Fターム(参考)】