説明

直線・回転複合アクチュエータシステム

【課題】クローズドループ制御で移動子軸の回転角度を制御できる直線・回転複合アクチュエータシステムを提供する。
【解決手段】直線・回転複合アクチュエータシステムは、軸線方向に直線運動でき、かつ軸線の回りを回転運動できる軸部材82と、軸部材82を囲む中空の回転子88と、回転子88を収容する空間が形成されると共に、回転子88を軸線の回りを回転させる回転モータの固定子92と、回転子88と一緒に回転して回転モータの回転子88の回転を軸部材82に伝えると共に、軸部材82が直線運動するのを許容する直動軸受86,87と、回転子88の回転角度を測定する角度測定装置94と、角度測定装置94が測定した回転モータの回転子88の回転角度が指令値に一致するように、回転モータを制御する回転モータ用ドライバと、を備える。回転モータの回転子88の回転角度を制御することによって、軸部材82の回転角度を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工具等の移動体をZ軸方向へ直線運動させ、かつZ軸の回りのθ方向に回転運動させる直線・回転複合アクチュエータシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
産業用ロボットには、移動体をZ軸方向に移動させ、かつZ軸の回りをθ方向に回転させる直線・回転複合アクチュエータが組み込まれる場合がある。例えば、チップマウンタのヘッド軸には、電子部品を吸着する吸着パッド、工具等の移動体をZ軸方向に直線運動させ、かつZ軸の回りを回転させることが要求される。移動体のZ軸方向への直線運動は、プリント基板の表面に電子部品を実装するのに必要になり、移動体のθ方向への回転運動は、電子部品の回転角度を位置決めするのに必要になる。
【0003】
直線運動と回転運動が可能な直線・回転複合アクチュエータとして、特許文献1には、リニアパルスモータとロータリパルスモータとを軸線方向に結合したリニア・ロータリ複合型パルスモータが開示されている。このリニア・ロータリ複合型パルスモータにおいて、ロータリパルスモータの回転子が中空軸にされ、該中空軸内に回り止め機構付きのスプライン軸受が配置される。リニアパルスモータの移動子軸はスプライン軸受内を摺動自在に貫通し、リニアパルスモータは移動子軸をZ軸方向に直線運動させる。ロータリパルスモータの回転方向の出力は、スプライン軸受を介して移動子軸に伝動される。移動子軸は、ロータリパルスモータによってθ方向に回転運動させられる。
【0004】
このリニア・ロータリ複合型パルスモータにおいては、移動子軸の櫛歯と固定子の櫛歯とが対向するリニアステッピングモータを採用しているので、移動子軸と固定子のエアギャップを小さい一定の値に管理しなければならない。
【0005】
移動子軸と固定子との間のエアギャップの管理を容易にすべく、特許文献2には、リニアパルスモータの替わりにリニア同期モータを採用したリニア・ロータリ複合型モータが開示されている。このリニア同期モータは、軸線方向に磁化された一個以上の永久磁石を有する移動子軸と、移動子軸を囲み、軸線方向に積層される複数のコイルからなる固定子と、を備える。リニア同期モータの軸線方向の一方の端部には、回転モータが結合される。回転モータのトルクは、すべり軸受を介して移動子軸に伝動される。移動子軸に回転を伝動できるように、すべり軸受の案内孔は断面四角形に形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−237931号公報
【特許文献2】特開2006−311715号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1及び特許文献2に記載のリニア・ロータリ複合型モータにおいては、移動子軸を回転させるのにロータリパルスモータが用いられている。このロータリパルスモータは、オープンループ制御され、与えられたパルス数に比例した一定の角度だけ移動子軸を回転させる。しかし、オープンループ制御されるロータリパルスモータであるがゆえ、脱調、振動、高速回転が困難という問題がある。
【0008】
そこで本発明の他の目的は、クローズドループ制御で移動子軸の回転角度を制御できる直線・回転複合アクチュエータシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の一態様は、軸線方向に直線運動でき、かつ軸線の回りを回転運動できる軸部材と、前記軸部材を囲む中空の回転子と、前記回転子を収容する空間が形成されると共に、前記回転子を軸線の回りを回転させる回転モータの固定子と、前記回転子と一緒に回転して前記回転モータの回転子の回転を前記軸部材に伝えると共に、前記軸部材が直線運動するのを許容する直動軸受と、前記回転子の回転角度を測定する角度測定装置と、前記角度測定装置が測定した前記回転モータの回転子の回転角度が指令値に一致するように、前記回転モータを制御する回転モータ用ドライバと、を備え、前記回転モータの回転子の回転角度を制御することによって、前記軸部材の回転角度を制御する直線・回転複合アクチュエータシステムである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、中空の回転子の回転角度を測定する角度測定装置を設け、軸線方向に移動することのない回転モータの回転子の回転角度を制御することによって、軸線方向に移動する軸部材の回転角度を制御するので、軸部材の回転角度の制御が容易になる。これに対し、もし軸部材の回転角度を直接的に角度測定装置で測定すると、軸部材は回転するだけでなく軸線方向にも直線運動するので、軸部材の軸線方向の移動範囲をカバーする細長い角度測定装置が必要になるという問題が生ずる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第一の実施形態の直線・回転複合アクチュエータの斜視図
【図2】リニアモータの斜視図(一部断面を含む)
【図3】コイルホルダに保持されたコイルユニットを示す斜視図
【図4】リニアモータの作動原理を示す図
【図5】回転モータの斜視図
【図6】回転モータの断面図
【図7】ハウジングを取り外した状態の回転モータの斜視図
【図8】スプラインナットを示す斜視図(一部断面を含む)
【図9】第一の筒状部材の斜視図
【図10】第二の筒状部材の斜視図
【図11】回転モータの永久磁石及びコイルの側面図
【図12】本発明の第二の実施形態における直線・回転複合アクチュエータの回転モータの斜視図
【図13】図12の回転モータの断面図
【図14】図13のXVI部拡大図
【図15】軸受固定部の詳細図
【図16】嵌合部の斜視図
【図17】二つのスプラインナットをねじってスプライン軸に組み付けた状態を示す斜視図
【図18】本発明の一実施形態における直線・回転複合アクチュエータシステムのシステム構成図
【図19】回転モータの制御系のブロック図
【図20】磁気センサと回転子との位置関係を示す図
【発明を実施するための形態】
【0012】
添付図面に基づいて本発明の第一の実施形態における直線・回転複合アクチュエータを詳細に説明する。図1は直線・回転複合アクチュエータの斜視図を示す。この直線・回転複合アクチュエータは直線駆動と回転駆動が可能な複合アクチュエータであり、リニアモータ1と回転モータ2とを軸線方向に結合させてなる。直線・回転複合アクチュエータのハウジング1a,2aには、軸線方向に直線運動可能にかつ軸線の回りを回転可能に軸部材3が支持される。軸部材3は、リニアモータ1の移動子軸としてのロッド5と、スプライン軸4と、を軸線方向に接続させてなる。リニアモータ1が軸部材3を直線運動させ、回転モータ2が軸部材3を回転運動させる。軸部材3の長手方向の一端部3aはハウジングから露出する。この軸部材3の一端部3aには、吸着パッド、工具等の移動体が取り付けられる。直線・回転複合アクチュエータは一軸のみで使用されてもよいし、作業効率を上げるために多軸、すなわち複数の直線・回転複合アクチュエータを軸部材3が平行になるように組み合わせた状態で使用されてもよい。
【0013】
図2はリニアモータ1の斜視図(一部断面を含む)を示す。図2に示されるように、リニアモータ1は、N極及びS極が軸線方向に交互に形成されるように複数の永久磁石6が配列される移動子軸としてのロッド5と、ロッド5を囲み、ロッド5の軸線方向に積層される固定子としての複数のコイル12と、複数のコイル12が収容されるハウジング1aと、を備えるリニア同期モータ1である。コイル12は3つでU・V・W相からなる一組の三相コイル12となる。永久磁石6に発生する磁界と三相コイル12に流す三相交流電流によって、ロッド5が直線運動するための推力が発生する。
【0014】
リニアモータ1のロッド5は、ハウジング1aにロッド5の軸線方向に移動可能に支持される。コイルユニットはコイルホルダ7に保持される。コイルユニット及びコイルホルダ7はハウジング1aに収容される。ロッド5は、例えばステンレス等の非磁性材からなり、中空空間を有する。ロッド5の中空空間には、円柱状の複数の永久磁石6が互いに同極が対向するように、すなわちN極とN極が、S極とS極とが対向するように積層される。永久磁石6の間には、例えば鉄等の磁性体からなるポールシュー9が介在される。
【0015】
コイル12は銅線を環状に巻いたもので、コイルホルダ7に保持されている。図3は、コイル12、及びコイル12を保持するコイルホルダ7の詳細図を示す。コイルホルダ7は樹脂の射出成形品であり、コイル12の配列方向に細長く伸びる板状のホルダ本体部7aと、ホルダ本体部7aから垂下する薄肉の複数のスペーサ部7bとから構成される。隣接するコイル12同士を絶縁する必要があるので、コイル12間には絶縁材として樹脂製のスペーサ部7bが介在される。スペーサ部7bはコイル12の正面形状と同様に円環形状に形成される。ホルダ本体部7aの上面には、プリント基板8が取り付けられる。ホルダ本体部7aの側面には、射出成形するときにコイルホルダ7を金型に固定するための突起7c(図3参照)が設けられる。射出成形時の圧力により、コイルホルダ7がずれるのを防止するためである。リード線12aをプリント基板8のスルーホール(図3にはスルーホールにコイル12のリード線12aが半田付けされた状態が示されている)まで導くために、ホルダ本体部7aにはプリント基板8のスルーホールと同じ位置に複数の配線用孔が空けられる。
【0016】
この実施形態では、コイル12及びコイルホルダ7を射出成型の金型にセットし、溶融した樹脂又は特殊セラミックスを金型内に流すインサート成形によって、ハウジング1aが形成される。成形品を金型から取り出すと、コイル12の周囲がハウジング1aで覆われている状態になる。インサート成形によってハウジング1aを形成することで、ハウジング1aの肉厚を薄くできるという利点がある。ハウジング1aには、リニアモータ1を例えばチップマウンタのヘッドに取り付けるための取付け部としてねじ孔1b(図2参照)が後加工される。またハウジング1aには、ヘッドに対するハウジング1aの位置決めをするためのピンが挿入される位置決め穴1cが開けられる。コイル12との絶縁を保つ必要があるため、ハウジング1aの材料には絶縁性の高い樹脂が使用される。ハウジング1aには、放熱性を高めるためにフィン1dが形成される。
【0017】
ロッド5はリニアモータ1の作動中、コイル12内で浮いている状態になっている。ロッド5の直線運動及び回転運動を案内するために、ロッド5の軸線方向におけるハウジング1aの両端部には、すべり軸受として樹脂製のブッシュ10が設けられる。ブッシュ10とロッド5との間のすきまは、コイル12とロッド5との間のすきまよりも小さく設定される。ブッシュ10は、コイル12とロッド5とが接触するのを防止する役割を持つ。ブッシュ10は、ハウジング1aの両端に一体に成形されたエンド部材11に取り付けられる。リニアモータとしてリニア同期モータを用いることで、コイル12とロッド5との間のすきまの管理が容易になる。このため、直動軸受と回転軸受を組み合わせる必要もなくなり、ブッシュ10によってロッド5の直線運動及び回転運動を案内することが可能になる。一対のブッシュ10を設けることで、ストロークが長い場合でも、永久磁石6の吸引によるロッド5の撓みを解消することができる。なお、この実施形態では、ハウジング1aの両端部にブッシュ10を設けているが、移動体に近い側にスプラインナット14が配置されるので、回転モータ2に近い側のブッシュ10を省略することもできる。
【0018】
図4はリニアモータ1の作動原理の概念図を示す。ロッド5の周囲には、ロッド5を囲む複数のコイル12が積層される。コイル12は3つでU・V・W相からなる一組の三相コイルとなる。三相コイル12を複数組み合わせてコイルユニットが構成される。三相コイル12に120度ずつ位相が異なる三相交流電流を流すと、コイル12の軸線方向に移動する移動磁界が発生する。ロッド5は移動磁界により推力を得て、移動磁界の速さと同一の速さでコイル12に対して相対的に直線運動を行う。
【0019】
図5は回転モータ2の斜視図を示す。回転モータ2のハウジング2aにはスプライン軸4が回転可能に収納される。スプライン軸4の端部はロッド5の端部に互いの軸線を一致させた状態で結合される。スプライン軸4はロッド5によって軸線方向に駆動され、回転モータ2によって回転駆動される。
【0020】
図6は回転モータ2の断面図を示し、図7はハウジング2aから取り出した回転モータ2の斜視図を示す。回転モータ2のハウジング2aはリニアモータ1のハウジング1aに結合される。図6に示されるように、ハウジング2aにはスプライン軸4が回転可能にかつ直線運動可能に収容される。スプライン軸4の一方の端部4a(図6左側)にはリニアモータ1のロッド5に接続され、他方の端部4b(図6右側)には移動体が取り付けられる。スプライン軸4は、ねじ等の接合手段によってロッド5に接合されてもよいし、ロッド5と一体であってもよい。スプライン軸4の外周面には軸線方向に伸びるボール転走溝が形成され、スプライン軸4にはスプライン軸4が直線運動するのを案内するスプラインナット14が組み付けられる(図8参照)。スプラインナット14は筒状の回転子16に収容され、回転子16と一緒に回転する。ハウジング2aには、回転子16を収容する空間が形成される固定子35が取り付けられる。回転子16の軸線方向の両端部とハウジング2aとの間には、回転子16が軸線の回りに回転するのを案内する一対の軸受31が取り付けられる。
【0021】
回転子16は、回転モータ2の固定子35によって回転駆動される本体部16cと、本体部に連結され、スプラインナット14の軸線方向の一端部が収容されるスプラインナット一端部収容部16bと、スプラインナット14の移動体側の軸線方向の他端部が収容されるスプラインナット他端部収容部16aと、から構成される。この実施形態では、本体部16cとスプラインナット一端部収容部16bとは一体である。スプラインナット他端部収容部16aは、スプラインナット一端部収容部16bからスプラインナット14が抜けるのを防止する。スプラインナット他端部収容部16aとスプラインナット一端部収容部16bとの間には、軸線方向にすきまが空いている。回転子16の本体部16cの外周面には、周方向にN極及びS極の磁極が交互に形成されるように複数の永久磁石22が貼り付けられる。
【0022】
ハウジング2aに取り付けられる回転モータ2の固定子35は、永久磁石22に対向する三相コイル21と、筒状のヨーク32と、からなる。三相コイル21に三相交流電流を流すと回転子16が回転する。回転子16が回転すると回転子16と一緒にスプラインナット14が回転する。スプラインナット14が回転するとスプラインナット14に組み付けられるスプライン軸4が回転する。
【0023】
回転モータ2のハウジング2aは、スプラインナット14が収容されるナットハウジング2a1と、回転モータ2が収容されるモータハウジング2a2とを軸線方向に結合させてなる。ナットハウジング2a1は、円筒形状に形成され、軸線方向の両端部にフランジ23を有する。ナットハウジング2a1の中央の小径部にスプラインナット14が収容される。一方、モータハウジング2a2は中空の筒形状に形成される。モータハウジング2a2の内側に回転モータ2の固定子35が固定される。
【0024】
図8は、スプライン軸4に係合するスプラインナット14を示す。スプライン軸4の外周面には、長手方向に伸びる転動体転走部として複数条のボール転走溝4aが形成される。スプラインナット14の内周面にはスプライン軸4の複数条のボール転走溝4aに対向する複数条の負荷ボール転走溝14cが形成される。スプライン軸4は中実又は中空丸棒からなる。スプライン軸4の外周面のボール転走溝4aの断面形状はボール25の曲率よりも若干大きいサーキュラーアーク溝形状に形成される。スプライン軸4の材質には、好ましくは軸受け鋼、炭素工具鋼などの焼入れに適した材質が用いられる。
【0025】
スプライン軸4の外周面にボール転走溝4aを形成することによって、例えばスプライン軸4の先端の工具にスプライン軸4の軸線に直交する方向の荷重がかかったり、軸線回りのモーメント荷重がかかったりする場合でも、これらの荷重を負荷できるようになる。また、スプラインナット14にかかるトルクをスプライン軸4に伝動することが可能になる。さらに、スプライン軸4の案内の精度を上げることができ、移動体を正確に位置決めすることができる。
【0026】
スプラインナット14とスプライン軸4との間に介在されるボール25は、一般の軸受けに用いられる転動体と同様に鋼製である。スプラインナット14は中空の筒体に形成される。スプラインナット14の内径には、軸線方向に伸びる負荷ボール転走溝14cが形成される。スプラインナット14の材質には、好ましくは軸受け鋼、炭素工具鋼などの焼入れに適した材質が用いられる。スプラインナット14には保持器26が組み込まれる。保持器26には、スプラインナット14の負荷ボール転走溝14cの条数に合わせた条数の転動体循環路として複数のボール循環路27が形成される。ボール循環路27は、スプラインナット14の負荷ボール転走溝14cに沿った負荷ボール転走路27a、負荷ボール転走路27aと平行に伸びるボール戻し通路27b、負荷ボール転走路27aの端とボール戻し通路27bの端とを接続する円弧形状の方向転換路27cとでサーキット状に構成される。ボール25はスプラインナット14の負荷ボール転走溝14cとスプライン軸4のボール転走溝4aに接触しながら転がり運動し、ボール循環路27を循環する。保持器26は、ボール循環路27に配列・収容されたボール列を循環可能に保持し、スプラインナット14をスプライン軸4から外したときにボール25が脱落するのを防止する。この保持器26は、止め輪29によってスプラインナット14の所定位置に固定される。
【0027】
図9はスプラインナット他端部収容部16aの斜視図を示す。スプラインナット他端部収容部16aは、径違いの大径部16a1及び小径部16a2を有する。スプラインナット他端部収容部16aの大径部16a1の内側には、スプラインナット14の軸線方向の他端部14aが収容される。スプラインナット他端部収容部16aとスプラインナット14とはねじ止め又は接着により一体にされる。スプラインナット他端部収容部16aの小径部16a2の外側には軸受31(図7参照)が嵌め込まれる。図6に示されるように、軸受31は、外輪31a、内輪31b及びこれらの間に転がり運動可能に介在されるボール31cを備える。この軸受31はスプラインナット他端部収容部16aを回転可能に支持する。軸受31には例えば深溝玉軸受が用いられる。軸受31はナットハウジング2a1のフランジ23に嵌められた後、蓋部材34によってナットハウジング2a1に固定される。蓋部材34の替わりに止め輪で軸受31をナットハウジング2a1に固定してもよい。
【0028】
図10は、回転子16の本体部16c及びスプラインナット一端部収容部16bの斜視図を示す。本体部16cは、スプラインナット一端部収容部16bよりも小径に形成される。スプラインナット一端部収容部16bの内側には、スプラインナット14の軸線方向の一端部14bが収容される(図6参照)。スプラインナット一端部収容部16bとスプラインナット14とはねじ止め又は接着により一体にされる。図7に示されるように、本体部16cの外周面には周方向に複数の永久磁石22が貼り付けられる。この永久磁石22に周方向に配列された複数のコイル21が対向する。本体部16cの軸線方向の他端部には軸受31が嵌め込まれる。軸受31はスプラインナット他端部収容部16aを支持する軸受31と同一の構成である。図6に示されるように、軸受31はモータハウジング2a2の一端部に嵌められた後、蓋部材33によってモータハウジング2a2に固定される。蓋部材33の替わりに止め輪で軸受を固定してもよい。
【0029】
図11は、回転モータ2の複数の永久磁石22及び複数の永久磁石22に対向する複数のコイル21を示す。回転モータ2は、複数の永久磁石22に複数のコイル21が対向する回転同期モータである。回転同期モータを使用することで、櫛歯を必要とするステッピングモータを使用する場合に比べ、半径方向の寸法を小さくすることができ、またすきまの管理も容易になる。各永久磁石22は細長い板状に形成される。各永久磁石22は半径方向に着磁、すなわち外周面側がN極及びS極の一方に着磁され、内周面側がN極及びS極の他方に着磁される。複数の永久磁石22は周方向にN極及びS極が交互に形成されるように配列される。円筒状に配列された永久磁石22は鉄等の磁性材料からなる筒状のヨーク32に囲まれる。ヨーク32には半径方向の内側に突出するコア32a(図7参照)が形成される。コア32aはヨーク32の軸線方向に細長く伸びる。コア32aにはコイル21が巻かれる。コイル21は銅線を環状に巻いたものであり、長方形の枠状に形成される。コイル21は3つで一組のU・V・W相からなる三相コイル21となる。この実施形態ではコイル21の数は六個であり、二組の三相コイル21が構成される。三相コイル21に三相交流電流を流すと、円筒状に配列された永久磁石22の周方向に回転磁界が発生する。永久磁石22が取り付けられる回転子16は回転磁界によってトルクを得て、その軸線の回りを回転する。
【0030】
回転子16に配列される複数の永久磁石22は、回転子16を回転させるためのトルクを発生させる駆動用の永久磁石22である。図11に示されるように、回転子16の回転角度を測定する磁気センサ51は、駆動用の永久磁石22の軸線方向の端部が発生する磁界を検出する。磁気センサ51の特性については後述する。基板に実装された磁気センサ51は箱形状の収納容器42に収められた後、その周囲が充填剤で埋められる。図5に示されるように、収納容器42は止めねじによってハウジング2aに固定される。磁気センサ51は温度特性を持ち、温度の変化によって出力が変化する。コイル21から発生する熱の影響を低減するため、収納容器42及び充填剤には、ハウジング2aよりも熱伝導率の低い材料が使用される。例えば、ハウジングにはエポキシ系の樹脂が使用され、収納容器42及び充填剤にはポリフェニレンサルファイド(PPS)が使用される。
【0031】
図1に示されるように、本実施形態によれば、直線・回転複合アクチュエータを構成する構成部品が移動体に近い側からトルク伝達用のスプラインナット14、ロータリパルスモータ2、リニア同期モータ1の順番になる。移動体に最も近い位置にスプラインナット14が配置されるので、移動体にかかる荷重やモーメントを負荷することができ、移動体を正確に位置決めできる。また、スプラインナット14の回転運動を移動体に近い位置の軸受31(図6参照)で支持することで、移動体からスプライン軸4にかかる荷重やモーメントをより確実に受けることができる。スプラインナット14の隣に回転モータ2を配置し、回転モータ2の隣にリニアモータ1を配置するので、スプラインナット14と一体の回転子16を回転させ、スプラインナット14によって案内されるスプライン軸4を軸線方向に移動させることが可能になる。
【0032】
スプラインナット14がスプラインナット他端部収容部16aの大径部16a1の内側に配置され、軸受がスプラインナット他端部収容部16aの小径部16a2の外側に配置されるので、スプラインナット14及び軸受31が半径方向に積層されることがない。また、スプラインナット14がスプラインナット一端部収容部16bの内側に配置され、回転モータ2が本体部16cの外側に配置されるので、スプラインナット14及び回転モータ2も半径方向に積層されることがない。このため、直線・回転複合アクチュエータの半径方向の寸法をコンパクトにできる。
【0033】
さらに、回転モータ2及びスプラインナット14を組み合わせた部分の両端部にのみ一対の軸受31を配置し、回転子16を本体部16c及びスプラインナット一端部収容部16b側と、スプラインナット他端部収容部16a側とに二分割することで、回転モータ2の組み立てが容易になる。
【0034】
図12は、本発明の第二の実施形態における直線・回転複合アクチュエータの回転モータの斜視図を示す。第一の実施形態における直線・回転複合アクチュエータの回転モータと同様に、ハウジング81には、スプライン軸82が回転運動可能かつ直線運動可能に収容される。スプライン軸82の両端部はハウジング81から突出している。スプライン軸82の一方の端部82aはリニアモータ1のロッド5に接続され、スプライン軸82の他方の端部82bは移動体に接続される。ハウジング81は、スプラインナットが収容されるナットハウジング83と、回転モータの固定子が収容されるモータハウジング84とに二分割される。ナットハウジング83の四角形のフランジ83aのコーナ部には、ナットハウジング83をモータハウジング84にねじで固定するとき、ドライバやレンチをねじに向かって真っ直ぐ(図中破線方向)に入れることができるよう円弧形状の逃げ83bが形成される。
【0035】
回転モータ80単体で見た場合、スプライン軸82が回転モータ80の回転軸になる。スプライン軸80は軸線方向に自由に移動することができ、スプライン軸80の直線運動はスプラインナットによって案内される。
【0036】
図13は、回転モータ80の断面図を示す。この実施形態の回転モータでは、移動体側(図13左側)のスプラインナット86に加えて、第二のスプラインナット87が追加されている。第二のスプラインナット87は、回転モータの固定子よりもリニアモータ側(図13右側)に配置される。スプラインナット86及び第二のスプラインナット87は、中空の回転子88に収容されていて回転子88と一緒に回転する。スプラインナット86及び第二のスプラインナット87には、直線運動可能にスプライン軸82が組み付けられている。スプライン軸4の外周面には、第一の実施形態のスプライン軸と同様に軸線方向に伸びるボール転走溝が形成される。回転子88の回転はスプラインナット86及び第二のスプラインナット87を介してスプライン軸82に伝動される。
【0037】
ハウジング81には、回転モータの固定子92が取り付けられる。回転子88の軸線方向の両端部とハウジングとの間には一対の軸受93が配置され、回転子88の回転運動は一対の軸受93によって案内される。回転子88は、回転モータの固定子92によって回転駆動される本体部89と、スプラインナット86が収容されるスプラインナット収容部91と、第二のスプラインナット87が収容される第二のスプラインナット収容部90と、から構成される。本体部89の外周面には第一の実施形態の本体部と同様に、周方向に複数の永久磁石89aが貼り付けられる。ハウジング81には、本体部89の回転角度を検知する磁気センサ94が取り付けられる。スプラインナット収容部91及び第二のスプラインナット収容部90は、本体部89の軸線方向の両端部に連結される。
【0038】
図14は、本体部89とスプラインナット収容部91(及び第二のスプラインナット87)との嵌め合い構造の詳細図を示す。スプラインナット収容部91には、半径の異なる二つの半円を組み合わせた異形の孔91aが形成され、本体部89には、孔91aの大径の半円に嵌まる半円状の突起89bが形成される。本体部89の突起はスプラインナット収容部91の孔91aに歯車のように噛み合うので、本体部89の回転をスプラインナット収容部91に伝動することができる。また、本体部89とスプラインナット収容部91との間には、本体部89からスプラインナット収容部91に回転を伝動しながら、本体部89に対してスプラインナット収容部91が軸線方向に移動できるように遊びがある。もちろん、本体部89とスプラインナット収容部91の嵌め合い構造は、本体部89の回転をスプラインナット収容部91に伝動することができ、本体部89とスプラインナット収容部91との間に軸線方向の遊びがあるものであれば、上記の異形の孔91aと半円形の突起89bに限られることはない。本体部89と第二のスプラインナット収容部90も同一の嵌め合い構造である。
【0039】
図13に示されるように、スプラインナット収容部91は、本体部89に連結され、スプラインナット86の軸線方向の一端部が収容されるスプラインナット一端部収容部91bと、スプラインナット86の軸線方向の他端部が収容されるスプラインナット他端部収容部91aと、に二分割される。第二のスプラインナット収容部90も、本体部89に連結され、第二のスプラインナット87の軸線方向の一端部が収容される第二のスプラインナット一端部収容部90bと、第二のスプラインナット87の軸線方向の他端部が収容される第二のスプラインナット他端部収容部90aと、に二分割される。スプラインナット収容部91及び第二のスプラインナット収容部90は袋状の大径部を有し、この大径部にスプラインナット86及び第二のスプラインナット87が収容される。スプラインナット収容部91及び第二のスプラインナット収容部90の小径部の外周面には、一対の軸受93が配置される。
【0040】
回転モータを組み立てるときは、まず、本体部89の周囲に複数の永久磁石89aを貼り付ける。次に、スプラインナット86を二分割されたスプラインナット収容部91で覆い、第二のスプラインナット87を第二のスプラインナット収容部90で覆う。次に、本体部89の両端部にスプラインナット収容部91及び第二のスプラインナット収容部90を連結する。次に、スプラインナット収容部91及び第二のスプラインナット収容部90の外側に一対の軸受93を嵌め込む。このように回転子88を組み立てた状態で、回転子88をハウジング81内に挿入する。その後、ハウジング81の両端部に蓋95,96を取り付けることで、組み立てが完了する。
【0041】
回転モータ80を組み立てる際、軸受93はハウジング81側からも位置決めされ、回転子88側からも位置決めされることになる。回転子88やハウジング81に寸法誤差が生じると、軸受93に寸法誤差が集中するので、軸受93の玉に押し潰す力が作用してしまい、軸受93の円滑な回転を阻害する。本実施形態によれば、回転子88の本体部89とスプラインナット収容部91(及び第二のスプラインナット収容部90)とを上述の嵌め合い構造にすることで、回転子88側で寸法誤差を吸収することができ、ハウジング81に合わせて一対の軸受93を正確に位置決めすることができる。また、コイルを含む回転モータの固定子92が発熱したとき、ハウジング81側は回転子88側よりも高熱になる。アルミ製のハウジング81の熱膨張係数が鋼製の回転子88の線膨張係数よりも大きいのと相俟って、ハウジング81の熱膨張量は回転子88のそれよりも大きくなる。上述の嵌め合い構造にすることで、このハウジング81の熱膨張も吸収することができる。
【0042】
図15及び図16は、軸受93の固定部の詳細図を示す。一対の軸受93の内輪93bの内側93b1に回転子88が当接し、一対の軸受93の外輪93aの外側93a1にハウジング81が当接する(当接箇所を破線の円で示す)。そして、一対の軸受93は、回転子88とハウジング81との間に挟まれる。こうすることで、回転モータの固定子92の熱によってハウジング81が軸線方向に伸びたとき、ハウジング81の当接部が回転子88の接触部から離れる方向に移動するので、軸受93に玉を押し潰す力が作用するのを防止することができる。
【0043】
本実施形態によれば、スプラインナット86,87を回転モータの固定子92を挟んで二個使用しているので、スプラインナット86を一個使用した場合に比べ、スプライン軸82の振れをより防止することができ、スプライン軸82の剛性をより高めることができる。このため、サーボループの応答性を良くするために回転モータやリニアモータのゲインを上げた場合でも、スプライン軸82が震えてしまうのを防止でき、応答性の高いサーボループを実現できる。
【0044】
図17は、スプライン軸82の剛性をさらに高めた例を示す。この例では、スプラインナット86及び第二のスプラインナット87がスプライン軸82に対して互いに反対方向にねじられた状態で回転子88に固定される。図中上側のスプラインナット86はスプライン軸82に対して時計方向のトルクを与えられた状態で、下側の第二のスプラインナット87は反時計方向のトルクを与えられた状態で回転子88に固定される。スプラインナット86及び第二のスプラインナット87に収容されるボールが互いに反対方向に圧縮されるので、ボールに予圧を付与した状態を保つことができ、スプライン軸82の周方向の剛性を向上させることができる。
【0045】
図18は本発明の一実施形態における直線・回転複合アクチュエータシステムを示す。この直線・回転複合アクチュエータシステムは、回転モータ制御系及びリニアモータ制御系から構成される。回転モータ制御系は、回転モータ2の回転子16の回転角度を検出する磁気センサ51と、磁気センサ51が出力する信号を内挿処理する角度算出回路としてのインターポレータ52と、インターポレータ52が算出した回転角の信号に基づいて回転モータ2を制御する回転モータ用ドライバ56と、から構成される。回転モータ用ドライバ56は、回転子16の回転角度が指令値に一致するように回転モータ2を制御する。磁気センサ51とインターポレータ52とはエンコーダケーブル58によって接続され、回転モータ2のコイル21と回転モータ用ドライバ56の電力変換器とは動力ケーブル59によって接続される。インターポレータ52及び回転モータ用ドライバ56は、制御盤60に収容される。
【0046】
リニアモータ制御系も同様に、リニアモータ1のロッド5の軸線方向の位置を検出する磁気センサ54と、磁気センサ54が出力する信号を内挿処理する位置算出回路55と、位置算出回路55が算出した位置の信号に基づいてリニアモータ1を制御するリニアモータ用ドライバ57と、から構成される。リニアモータ用ドライバ57は、ロッド5の位置が指令値に一致するようにリニアモータ1を制御する。磁気センサ54と位置算出回路55とはエンコーダケーブル61によって接続される。リニアモータ1のコイル12とリニアモータ用ドライバ57の電力変換器とは動力ケーブル62によって接続される。位置算出回路55及びリニアモータ用ドライバ57は、制御盤60に収容される。
【0047】
角度測定装置は、直線・回転複合アクチュエータの回転子16の回転角度を検出する磁気センサ51と、磁気センサ51が出力する信号を内挿処理するインターポレータ52と、から構成される。磁気センサ51は、回転子16の磁界の方向を検出し、90度位相がずれた正弦波状及び余弦波状の電圧信号を出力する。磁気センサ51が出力する電圧信号は、インターポレータ52に出力される。インターポレータ52は、正弦波状及び余弦波状の電圧信号に基づいて、回転子16の角度情報を算出する。リニアモータ1の位置を測定する位置測定装置は角度測定装置と同様に、ロッド5の位置情報を出力する。
【0048】
図19は、回転モータ2の制御系のブロック図を示す。インターポレータ52が算出した角度情報は、回転モータ用ドライバ56の制御器65に出力される。回転モータ用ドライバ56には、リニアモータ1を制御するのに適した形態をした電力を供給するPWMインバータ(PWM:Pulse Width Modulation)などの電力変換器64、及び電力変換器64を制御する制御器65が組み込まれる。制御器65は、インターポレータ52からの信号及び上位コンピュータなどの指令器66からの指令によって、電力変換器64を制御する。具体的には、制御器65は回転子16の回転角度が指令値に一致するように電力変換器64を制御する。リニアモータ用ドライバ57の構成も回転モータ用ドライバと同様である。
【0049】
回転モータ2の回転子16とスプライン軸4とはスプラインナット14を介して連結されているので、回転子16の回転角度とスプライン軸4の回転角度とは等しい。軸線方向に移動することのない回転モータ2の回転子16の回転角度を制御することによって、軸線方向に移動するスプライン軸4の回転角度を制御するので、スプライン軸4の回転角度の制御が容易になる。また本来、推力を発生させるための駆動用の永久磁石22を磁気スケールとして流用するので、安価で小型な磁気センサ51を実現できる。
【0050】
図20に示されるように、磁気センサ51は、回転モータ2の永久磁石22から所定のすきまを開けて配置され、永久磁石22の回転運動によって生ずる永久磁石22の磁界の方向(磁気ベクトルの方向)の変化を検出する。磁界の方向の変化を検出することから、磁気センサ51が実装される基板は、回転子16の回転中心に直交する平面内に位置する。
【0051】
なお、本発明は上記実施形態に限られることはなく、本発明の要旨を変更しない範囲で様々な実施形態に具現化できる。例えば本実施形態の直線・回転複合アクチュエータはチップマウンタに限られることはなく、様々なロボットの直線・回転複合アクチュエータとして用いることができる。また、直線・回転複合アクチュエータシステムの発明において、リニア同期モータの替わりにリニアステッピングモータを用いてもよい。
【符号の説明】
【0052】
1…リニアモータ,2…回転モータ,2a,81…ハウジング,3a…軸部材の一端部,3…軸部材,4,82…スプライン軸,4a…ボール転走溝(転動体転走部),5…ロッド,6…永久磁石,10…ブッシュ(すべり軸受),12…コイル(リニアモータの固定子),14,86…スプラインナット,14a…スプラインナットの他端部,14b…スプラインナットの一端部,16,88…回転子,16a…スプラインナット他端部収容部,16b…スプラインナット一端部収容部,16a1…大径部,16a2…小径部,16b1…大径部,16b2…小径部,16c,89…本体部,21…コイル,22,89a…永久磁石,25…ボール(転動体),27…ボール循環路(転動体循環路),31,93…軸受,32…ヨーク,35,92…回転モータの固定子,51…磁気センサ(角度測定装置),52…インターポレータ(角度測定装置,角度算出回路),56…回転モータ用ドライバ,87…第二のスプラインナット,90…第二のスプラインナット収容部,90a…第二のスプラインナット他端部収容部,90b…第二のスプラインナット一端部収容部,91…スプラインナット収容部,91a…スプラインナット他端部収容部,91b…スプラインナット一端部収容部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線方向に直線運動でき、かつ軸線の回りを回転運動できる軸部材と、
前記軸部材を囲む中空の回転子と、
前記回転子を収容する空間が形成されると共に、前記回転子を軸線の回りを回転させる回転モータの固定子と、
前記回転子と一緒に回転して前記回転モータの回転子の回転を前記軸部材に伝えると共に、前記軸部材が直線運動するのを許容する直動軸受と、
前記回転子の回転角度を測定する角度測定装置と、
前記角度測定装置が測定した前記回転モータの回転子の回転角度が指令値に一致するように、前記回転モータを制御する回転モータ用ドライバと、を備え、
前記回転モータの回転子の回転角度を制御することによって、前記軸部材の回転角度を制御する直線・回転複合アクチュエータシステム。
【請求項2】
前記軸部材は、軸線方向に伸びる転動体転走部を有するスプライン軸であり、
前記直動軸受は、前記スプライン軸の前記転動体転走部に対向する負荷転動体転走部を含む転動体循環路、及びこの転動体循環路に配列される複数の転動体を有するスプラインナットであることを特徴とする請求項1に記載の直線・回転複合アクチュエータシステム。
【請求項3】
前記スプラインナットは、前記回転モータの固定子を挟んで二個設けられることを特徴とする請求項2に記載の直線・回転複合アクチュエータシステム。
【請求項4】
前記直線・回転複合アクチュエータシステムはさらに、
前記回転モータの固定子が取り付けられるハウジングと、
前記回転子の軸線方向の両端部と前記ハウジングとの間に設けられ、前記回転子が軸線の回りに回転するのを案内する一対の軸受と、を備え、
前記回転子は、前記回転モータの固定子によって回転駆動される本体部と、前記本体部の一方の端部に連結され、前記スプラインナットが収容されるスプラインナット収容部と、を有し、
前記本体部の回転を前記スプラインナット収容部に伝動することができ、かつ前記本体部に対して前記スプラインナット収容部が軸線方向に移動できる遊びがあるように、前記本体部が前記スプラインナット収容部に嵌合することを特徴とする請求項2又は3に記載の直線・回転複合アクチュエータシステム。
【請求項5】
前記回転子が前記一対の軸受の内輪の軸線方向の内側に当接し、
前記ハウジングが前記一対の軸受の外輪の軸線方向の外側に当接し、
前記一対の軸受のそれぞれは、前記回転子と前記ハウジングとの間に軸線方向に挟まれることを特徴とする請求項4に記載の直線・回転複合アクチュエータシステム。
【請求項6】
前記直線・回転複合アクチュエータシステムはさらに、
前記回転モータの固定子が取り付けられるハウジングと、
前記回転子の軸線方向の両端部と前記ハウジングとの間に設けられ、前記回転子が軸線の回りに回転するのを案内する一対の軸受と、を備え、
前記回転子は、前記回転モータの固定子によって回転駆動される本体部と、前記スプラインナットの軸線方向の一端部が収容されるスプラインナット一端部収容部と、前記スプラインナットの軸線方向の他端部が収容されるスプラインナット他端部収容部と、を有し
前記スプラインナット他端部収容部は、径違いの大径部及び小径部を有し、
前記スプラインナット他端部収容部の大径部に前記スプラインナットの前記他端部が収容され、
前記スプラインナット他端部収容部の小径部の外周面と前記ハウジングとの間に、前記一対の軸受のいずれか一方が配置されることを特徴とする請求項2ないし5のいずれかに記載の直線・回転複合アクチュエータシステム。
【請求項7】
二つの前記スプラインナットが前記スプライン軸に対して互いに反対方向にねじられた状態で前記回転子に収容されることを特徴とする請求項2ないし6のいずれかに記載の直線・回転複合アクチュエータシステム。
【請求項8】
前記回転モータは、周方向にN極及びS極の磁極が形成されるように複数の永久磁石を有する前記回転モータの回転子と、前記複数の永久磁石に対向する前記回転モータの固定子としての複数のコイルと、を有する回転同期モータであり、
前記角度測定装置は、前記回転モータの回転子にトルクを発生させる駆動用の前記複数の永久磁石の磁界を検出することを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の直線・回転複合アクチュエータシステム。
【請求項9】
前記角度測定装置は、
磁界の方向によって抵抗値が変化する磁気抵抗素子を有し、前記回転モータの回転子の回転運動によって生ずる前記複数の永久磁石の磁界の方向の変化に伴って、90度の位相差を持つ正弦波状信号及び余弦波状信号を出力する磁気センサと、
前記正弦波状信号及び前記余弦波状信号に基づいて、前記回転モータの固定子に対する前記回転子の回転角度を算出する角度算出回路と、を有することを特徴とする請求項1ないし8のいずれかに記載の直線・回転複合アクチュエータシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2011−155827(P2011−155827A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−219968(P2010−219968)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【分割の表示】特願2010−531864(P2010−531864)の分割
【原出願日】平成21年9月29日(2009.9.29)
【出願人】(390029805)THK株式会社 (420)
【Fターム(参考)】