説明

直線案内機構および測定装置

【課題】長ストロークに対応しつつ、良好な直線性を確保できる直線案内機構および測定装置を提供する。
【解決手段】直線案内機構は、固定部材1と、移動部材2と、固定部材1と移動部材2との間に配置され移動部材2を移動可能に支持する第1の2重平行板ばね機構11Aおよび第2の2重平行板ばね機構12Aとを備える。第1の2重平行板ばね機構11Aおよび第2の2重平行板ばね機構12Aは、移動部材2の移動軸線を中心として180度以外の角度(例えば90度)で配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直線案内機構および測定装置に関する。詳しくは、2重平行ばね機構を用いた直線案内機構およびこの直線案内機構を備えた測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
移動部材を直線的に案内する機構として、2重平行ばね機構を用いた直線案内機構が知られている。
例えば、固定部材と移動部材とを、2組(第1,第2)の2重平行ばね機構を用いて連結し、移動部材を直線案内する機構が知られている(特許文献1および特許文献2参照)。これは、第1の2重平行ばね機構と第2の2重平行ばね機構とが、移動部材の移動軸線を中心として180度の角度で配置された構成である。
【0003】
また、図7に示すように、固定部材1と移動部材2とを、単一の2重平行板ばね機構11Aで連結した直線案内機構も知られている。この2重平行板ばね機構11Aは、固定部材1と移動部材2との間に配置される中間部材21と、固定部材1と中間部材21の両端とを連結するとともに移動部材2の移動方向に対して直交しかつ互いに平行に配置された一対の第1板ばね22と、中間部材21の中間部と移動部材2の両端部とを連結するとともに移動部材2の移動方向に対して直交しかつ互いに平行に配置された一対の第2板ばね23とを備える構造である。
【0004】
【特許文献1】特開2001−281374号
【特許文献2】特開2000−19415号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した直線案内機構において、移動部材2の直線性を確保するためには、全ての板ばね22,23の復元力が同じであることが必要とされる。つまり、全ての板ばね22,23の復元力が同じでないと、良好な直線性が得られない。全ての板ばね22,23の復元力を同じくするためには、全ての板ばね22,23の厚みや長さなどを同じに管理することが要求される。
しかし、現実的には、加工精度のばらつきなどによって全ての板ばね22,23の厚みや長さなどを同じにすることは困難である。すると、図8に示すように、移動部材2が直線運動をする際に、板ばねの曲げ方向(板ばねの曲がりやすい方向)へ回転運動を起こし良好な直線性が得られない。また、加工精度のばらつきの影響は、移動部材2の移動ストロークが長くなるほど顕著になるため、長ストロークに対応できない。
【0006】
なお、2組の2重平行ばね機構を用いた直線案内機構でも、第1の2重平行ばね機構と第2の2重平行ばね機構とが、移動部材の移動軸線を中心として180度の角度で配置された構成であるため、つまり、板ばねの曲がりやすい方向が各2重平行ばね機構において一致するため、復元力のばらつきを補い合う効果が小さく、良好な直線性が得られない。
【0007】
本発明の目的は、長ストロークに対応しつつ、良好な直線性を確保できる直線案内機構および測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の直線案内機構は、固定部材と、移動部材と、前記固定部材と前記移動部材との間に配置され前記移動部材を移動可能に支持する第1の2重平行ばね機構および第2の2重平行ばね機構とを備え、前記第1の2重平行ばね機構および前記第2の2重平行ばね機構は、前記移動部材の移動軸線を中心として180度以外の角度で配置されている、ことを特徴とする。
このような構成によれば、第1の2重平行ばね機構と第2の2重平行ばね機構とが、移動部材の移動軸線を中心として180度以外の角度で配置されているから、例えば、一方の2重平行ばね機構がばね機構の曲がり方向へ回転運動しようとすると、他方の2重平行ばね機構には捻り力が作用する。2重平行ばね機構は、曲がり方向の剛性に対して捻り方向の剛性が高いため、他方の2重平行ばね機構によって一方の2重平行ばね機構の曲がりが抑制される。そのため、良好な直線性を確保できる。このことは、加工精度のばらつきにも影響されることが少なくなるから、長ストロークにも対応できる。
【0009】
本発明の直線案内機構において、前記第1の2重平行ばね機構および前記第2の2重平行ばね機構は、中間部材と、前記固定部材と前記中間部材とを連結するとともに前記移動部材の移動方向に対して直交しかつ互いに平行に配置された一対の第1板ばねと、前記中間部材と前記移動部材とを連結するとともに前記移動部材の移動方向に対して直交しかつ互いに平行に配置された一対の第2板ばねとを有し、前記第1板ばねおよび前記第2板ばねの厚み方向が前記移動部材の移動方向に一致して配置された2重平行板ばね機構により構成されている、ことが好ましい。
このような構成によれば、2重平行ばね機構が、板ばねを含んで構成されているから、安価に製造できるうえ、長ストローク化にも容易に対応できる。
【0010】
本発明の直線案内機構において、前記第1の2重平行ばね機構および前記第2の2重平行板ばね機構は、前記移動部材の移動軸線を中心として90度の角度で配置されている、ことが好ましい。
このような構成によれば、第1の2重平行ばね機構および第2の2重平行板ばね機構が、移動部材の移動軸線を中心として90度の角度で配置されているから、互いの曲がり方向が互いの捻り方向に相当する。つまり、第1の2重平行ばね機構の曲がり方向が、第2の2重平行ばね機構の捻り方向に相当し、逆に、第2の2重平行ばね機構の曲がり方向が、第1の2重平行ばね機構の捻り方向に相当する。そのため、板ばねの復元力のばらつきから生じる回転運動が互いに抑制される結果、良好な直線性が得られる。
【0011】
本発明の測定装置は、上述した直線案内機構と、この直線案内機構によって直線移動される可動部材とを備えた、ことを特徴とする。
ここで、直線案内機構によって直線移動される可動部材とは、測定装置を構成する部材のうち、移動可能な部材であればどのような部材でも適用可能であるが、直線性が要求される部材、例えば、被測定物に当接されるスピンドルや、被測定物を載置するステージなどが好適である。
このような構成によれば、可動部材の移動に関して、良好な直線性が確保されるから、高精度な測定装置を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
<直線案内機構の説明(図1および図2参照)>
図1は本実施形態の直線案内機構を示す斜視図である。
本実施形態の直線案内機構は、固定部材1と、移動部材2と、固定部材1と移動部材2との間に配置され移動部材2を移動可能に支持する第1の2重平行ばね機構11および第2の2重平行ばね機構12とを備える。
固定部材1は、正面から見てC字形状の部材によって形成され、開口部側に2つの接続端1A,1Bが対向して配置されている。
移動部材2は、固定部材1の2つの接続端1A,1Bの間に配置された角柱状の部材によって構成されている。
【0013】
第1の2重平行ばね機構11および第2の2重平行ばね機構12は、移動部材2の移動軸線を中心として180度以外の角度で配置されている。この例では、第1の2重平行ばね機構11および第2の2重平行ばね機構12が、移動部材2の移動軸線を中心として90度の角度で配置されている。
2重平行ばね機構11,12は、固定部材1と移動部材2との間に配置された中間部材21と、固定部材1と中間部材21とを連結するとともに移動部材2の移動方向に対して直交しかつ互いに平行に配置された一対の第1板ばね22と、中間部材21と移動部材2とを連結するとともに移動部材2の移動方向に対して直交しかつ互いに平行に配置された一対の第2板ばね23とを有し、第1板ばね22および第2板ばね23の厚み方向が移動部材2の移動方向に一致して配置された2重平行板ばね機構11A,12Aによって構成されている。
【0014】
中間部材21は、固定部材1の2つの接続端1A,1Bの間に略相当する長さを有する角柱状の部材によって構成されている。
一対の第1板ばね22は、固定部材1の接続端1A,1Bと中間部材21の両端とを連結するとともに、厚さおよび長さ寸法が略等しく形成されている。
一対の第2板ばね23は、中間部材21の中間部と移動部材2の両端とを連結するとともに、厚さおよび長さ寸法が略等しく形成されている。なお、図1では、一対の第2板ばね23と移動部材2との間に連結部材24を介在させたが、連結部材24を省略し、一対の第2板ばね23を移動部材2に直接連結させてもよい。
【0015】
一般に、板ばね22,23は、捻り方向の剛性が曲がり方向の剛性よりも高い。第1の2重平行板ばね機構11Aと第2の2重平行板ばね機構12Aとが、移動部材2の移動軸線を中心として90度の角度で配置されると、互いの曲がり方向が互いの捻り方向に相当する。
つまり、図2に示すように、第1の2重平行板ばね機構11Aの曲がり方向B1が、第2の2重平行板ばね機構12Aの捻り方向T2に相当し、逆に、第2の2重平行板ばね機構12Aの曲がり方向B2が、第1の2重平行板ばね機構11Aの捻り方向T1に相当する。そのため、板ばねの復元力のばらつきから生じる回転運動が互いに抑制される結果、良好な直線性が得られる。
【0016】
<測定装置の説明(図3および図4参照)>
測定装置30は、上述した直線案内機構と、この直線案内機構によって直線移動される可動部材とを備えている。
可動部材としては、測定装置30を構成する部材のうち、移動可能な部材であればどのような部材でも適用可能であるが、直線性が要求される部材、例えば、被測定物の当接されるスピンドルや、被測定物を載置するステージなどが好適である。
【0017】
図3に示す測定装置30では、移動部材2に、その移動部材2の移動方向に沿って伸びるスピンドル31が取り付けられている。移動部材2を移動させると、スピンドル31も同方向へ移動され被測定物に当接される。スピンドル31が被測定物に当接したときの移動部材2の変位量を変位検出器(図示省略)から読み取れば、被測定物の寸法(例えば、厚み寸法など)を測定することができる。
つまり、スピンドル31は、第1の2重平行板ばね機構11Aおよび第2の2重平行板ばね機構12Aによって良好な直線性が確保された状態で移動されるから、高精度な測定装置が得られる。
【0018】
図4に示す測定装置30では、移動部材2に、被測定物を載置するステージ32が取り付けられている。移動部材2を移動させると、ステージ32も同方向へ移動されるから、このステージ32あるいは移動部材2の変位量を変位検出器(図示省略)で検出するように構成すれば、同様に、高精度な測定装置として構成することができる。
なお、図3および図4の測定装置において、移動部材2を移動させるには、手動操作でもよいが、駆動機構を設けて自動で移動させるようにしてもよい。
【0019】
<変形例(図5および図6参照)>
本発明は、前述の実施形態に限定されるものでなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良などは本発明に含まれる。
前記実施形態では、第1の2重平行板ばね機構11Aと第2の2重平行板ばね機構12Aとを移動部材2の移動軸線を中心として90度の角度で配置したが、180度以外の角度なら90度の角度に限られない。例えば、図5に示すように、第1の2重平行板ばね機構11A(第1の2重平行ばね機構11)と第2の2重平行板ばね機構12A(第2の2重平行ばね機構12)とを135度の角度で配置してもよい。
このような構成でも、例えば、第1の2重平行板ばね機構11Aが曲がり方向へ曲がろうとすると、第2の2重平行板ばね機構12Aには捻り力が作用する。すると、第2の2重平行板ばね機構12Aによって第1の2重平行板ばね機構11Aの曲がりが抑制されるから、前記実施形態と略同様な効果が期待できる。
【0020】
更に、図6に示すように、4つの2重平行板ばね機構11A,12A,13A,14Aを、移動部材2の移動軸線を中心にして90度角度間隔で配置してもよい。つまり、移動部材2の移動軸線を中心にして、4つの2重平行板ばね機構11A,12A,13A,14A(2重平行ばね機構11,12,13,14)を十字状に配置してもよい。
このように構成すれば、剛性をより高めることができる。従って、比較的重量物の移動部材2を直線案内する機構に適する。
【0021】
前記実施形態では、平行板ばねを用いた2重平行板ばね機構11A,12A,13A,14Aで構成したが、必ずしも板ばねに限られない。例えば、板状の両端を薄肉状に切り欠いてヒンジ部を形成し、これを平行に配置した2重平行ヒンジ機構であってもよい。
【0022】
前記実施形態では、直線案内装置を測定装置の可動部材に適用した例を説明したが、測定装置に限られない。例えば、工作機械を含む産業機械などの直線案内機構にも適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明は、測定装置のほか、加工機械など可動部材の直線性が要求される直線案内機構に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係る直線案内機構の一実施形態を示す斜視図。
【図2】同上実施形態の作用を説明するための図。
【図3】本発明に係る測定装置(スピンドル直線案内機構)を示す斜視図。
【図4】本発明に係る測定装置(ステージ直線案内機構)を示す斜視図。
【図5】本発明に係る直線案内機構の変形例を示す斜視図。
【図6】本発明に係る直線案内機構の他の変形例を示す斜視図。
【図7】従来の2重平行板ばね機構を示す図。
【図8】従来の2重平行板ばね機構の問題点を示す図。
【符号の説明】
【0025】
1…固定部材、
2…移動部材、
11…第1の2重平行ばね機構、
11A…第1の2重平行板ばね機構、
12…第2の2重平行ばね機構、
12A…第2の2重平行板ばね機構、
13…第3の2重平行ばね機構、
13A…第3の2重平行板ばね機構、
14…第4の2重平行ばね機構、
14A…第4の2重平行板ばね機構、
21…中間部材、
22…第1板ばね、
23…第2板ばね、
30…測定装置、
31…スピンドル(可動部材)、
32…ステージ(可動部材)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定部材と、
移動部材と、
前記固定部材と前記移動部材との間に配置され前記移動部材を移動可能に支持する第1の2重平行ばね機構および第2の2重平行ばね機構とを備え、
前記第1の2重平行ばね機構および前記第2の2重平行ばね機構は、前記移動部材の移動軸線を中心として180度以外の角度で配置されている、
ことを特徴とする直線案内機構。
【請求項2】
請求項1に記載の直線案内機構において、
前記第1の2重平行ばね機構および前記第2の2重平行ばね機構は、中間部材と、前記固定部材と前記中間部材とを連結するとともに前記移動部材の移動方向に対して直交しかつ互いに平行に配置された一対の第1板ばねと、前記中間部材と前記移動部材とを連結するとともに前記移動部材の移動方向に対して直交しかつ互いに平行に配置された一対の第2板ばねとを有し、前記第1板ばねおよび前記第2板ばねの厚み方向が前記移動部材の移動方向に一致して配置された2重平行板ばね機構により構成されている、ことを特徴とする直線案内機構。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の直線案内機構において、
前記第1の2重平行ばね機構および前記第2の2重平行板ばね機構は、前記移動部材の移動軸線を中心として90度の角度で配置されている、ことを特徴とする直線案内機構。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれかに記載の直線案内機構と、
この直線案内機構によって直線移動される可動部材とを備えた、ことを特徴とする測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−164410(P2010−164410A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−6635(P2009−6635)
【出願日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【出願人】(000137694)株式会社ミツトヨ (979)
【Fターム(参考)】