説明

相互接続バックボーンを備えたマイクロリアクター組立体

流体相互接続バックボーン(10)及び複数の流体微細構造体(20、30、40)を備えたマイクロリアクター組立体(100)が提供される。流体微細構造体(20、30、40)が流体相互接続バックボーン(10)のそれぞれの部分によって支持される。マイクロリアクター組立体(100)が、相互接続入出力ポート(12、14)に関係する複数の非ポリマー相互接続封止体(50)を備えている。流体相互接続バックボーン(10)の相互接続入力ポート(12)が、前記非ポリマー相互接続封止体(50)の1つにおいて、第1流体微細構造体(20)のマイクロチャンネル出力ポート(24)に連結される流体相互接続バックボーン(10)の相互接続出力ポート(14)が、別の非ポリマー相互接続封止体(50)において、第2流体微細構造体(30)のマイクロチャンネル入力ポート(32)に連結される。相互接続マイクロチャンネル(15)が流体相互接続バックボーン(10)によって完全に規定され、別の封止接合体が介在することなく、第1流体微細構造体(20)のマイクロチャンネル出力ポート(24)の非ポリマー相互接続封止体(50)から第2流体微細構造体(30)のマイクロチャンネル入力ポート(32)の非ポリマー相互接続封止体(50)に延びるよう構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はマイクロリアクター技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、マイクロリアクターは微細構造リアクター、マイクロチャンネル・リアクター、あるいはマイクロ流体装置と呼ばれている。それぞれの呼称に関わらず、マイクロリアクターは対象とする移動又は静止サンプルを封入して処理する装置である。場合により、処理には化学反応分析が含まれることがある。また、別の場合には、2つの異なる反応物を用いた製造工程の一部として処理が行われる。いずれの場合も、密封空間の寸法は約1mmである。マイクロチャンネルがこのような閉じ込めの最も一般的な形態であり、通常マイクロリアクターは、バッチ・リアクターとは対照的な連続フローリアクターである。マイクロチャンネルの内寸が小さくなったことにより、物質の移動速度及び伝熱速度が著しく改善された。また、従来の大型リアクターと比較して、マイクロリアクターは、エネルギー効率、反応速度、反応収率、安全性、信頼性、拡張性等における大幅な改善など多くの利点がある。
マイクロリアクターは、2つの異なる反応物を共通のマイクロチャンネル網に導入するのに使用されることが多い。一般に、マイクロチャンネル網及び反応物を網中の適切なマイクロチャンネルに向けるための関連部品はかなり複雑であり、また高温高圧下で動作できるよう構成する必要もある。そのため、特許文献1に開示されているような、従来のマイクロリアクターの構成においては、様々な流体ダクト、接続金具、アダプター、Oリング、ネジ、留め具、及びその他の接続素子を用いて、マイクロリアクターの様々な微細構造体が相互接続される。これ等の素子によってシステムの複雑度が増し、それがシステム内の漏洩やその他の誤りの潜在的な原因となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2007/036513号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は前記部品の多くを要しないマイクロリアクター組立体の設計に関するものであり、前記設計上の問題に対処するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の1つの実施の形態によれば、流体相互接続バックボーン及び複数の流体微細構造体を備えたマイクロリアクター組立体が提供される。流体微細構造体は流体相互接続バックボーンのそれぞれの部分によって支持される。各々の流体微細構造体はそれぞれマイクロチャンネル入力ポート及びマイクロチャンネル出力ポートを備えた複数のマイクロ流体チャンネルを有している。流体相互接続バックボーンは、相互接続入力ポート及び相互接続出力ポートを備えた少なくとも1つの相互接続マイクロチャンネルを有している。
マイクロリアクター組立体は相互接続入力ポート及び出力ポートに関係する複数の非ポリマー相互接続封止体を備えている。流体相互接続バックボーンの相互接続入力ポートが、1つの非ポリマー相互接続封止体において、第1流体微細構造体のマイクロチャンネル出力ポートに連結されている。流体相互接続バックボーンの相互接続出力ポートが、別の非ポリマー相互接続封止体において、第2流体微細構造体のマイクロチャンネル入力ポートに連結されている。相互接続マイクロチャンネルは流体相互接続バックボーンによって完全に規定され、別の封止接合体が介在することなく、第1流体微細構造体のマイクロチャンネル出力ポートの非ポリマー相互接続封止体から第2流体微細構造体のマイクロチャンネル入力ポートの非ポリマー相互接続封止体に延びるよう構成されている。
【図面の簡単な説明】
【0006】
本発明の具体的な実施の形態の詳細な説明は、以下の図面と併せて読むことによりよく理解できる。図において、同様の構造体には同様の符号が付してある。
【図1】本発明の1つの実施の形態によるマイクロリアクター組立体の概略図。
【図2】図1のマイクロリアクター組立体の一部の詳細を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
図1及び2は本発明の1つの実施の形態によるマイクロリアクター組立体100を示す図である。マイクロリアクター組立体100は流体相互接続バックボーン10及び複数の流体微細構造体20、30、40を備えている。本発明は特定の種類の流体微細構造体の使用のみに限定されるものではないが、図示の実施の形態においては、反応物A及びBが、温度調整のため、まずそれぞれの熱交換微細構造体20に通される。次に、第1反応物Aは反応物分配微細構造体30に導入され、そこで反応物Aの流体流路が複数の反応物流路31に分岐される。その後、各々の反応物流路31は混合微細構造体40に向かい、そこで反応物AとBとが反応することができる。
【0008】
既に述べたように、図1に示す具体的な流体微細構造体の構成により本発明が限定されると解釈されるものではない。むしろ、図1の特定の微細構造体は、本発明のマイクロリアクター組立体が流体相互接続バックボーン10を用いて、図1の微細構造体を含みこれに限定されない多様な流体微細構造体を支持し動作可能に相互接続できることを一般的に示すことを意図したものである。
【0009】
図1及び2において、流体微細構造体20、30、40の各々は、それぞれマイクロチャンネル入力ポート22、32、42及びマイクロチャンネル出力ポート24、34、44を備えた複数の流体マイクロチャンネル25、35、45を有している。これに対応して、流体相互接続バックボーン10は、各々が相互接続入力ポート12及び相互接続出力ポート14を備えた、相互接続マイクロチャンネル15を有している。また、マイクロリアクター組立体100は相互接続入力及び出力ポート12、14に関係する複数の非ポリマー相互接続封止体50を有している。
【0010】
図2から分かるように、流体相互接続バックボーン10の相互接続入力ポート12が、1つの非ポリマー相互接続封止体50において、第1流体微細構造体20のマイクロチャンネル出力ポート24に連結されている。同様に、流体相互接続バックボーン10の相互接続出力ポート14が、別の非ポリマー相互接続封止体50において、第2流体微細構造体30のマイクロチャンネル入力ポート32に連結されている。相互接続マイクロチャンネル15は流体相互接続バックボーン10によって完全に規定され、別の封止接合体が介在することなく、第1流体微細構造体のマイクロチャンネル出力ポート24の非ポリマー相互接続封止体50から第2流体微細構造体30のマイクロチャンネル入力ポート32の非ポリマー相互接続封止体50に延びるよう構成されている。このため、マイクロリアクター組立体100は、相互接続バックボーン10を用いて、耐化学性、動作圧力、及び動作温度の面において高性能に流体微細構造体を相互接続することができる。また、相互接続バックボーン10により微細構造体間の外部接続数及び関連する固定及び封止ハードウェアの数を大幅に低減することができ、マイクロリアクター組立体100が簡素化される。
【0011】
更に、相互接続バックボーン10は熱相互接続マイクロチャンネル16を備えているため、マイクロリアクター組立体のプロセス制御を改善できる。具体的には、図1及び2において、各々の流体微細構造体20、30、40は熱流体マイクロチャンネル26、46を有することができ、流体マイクロチャンネル25、35、45の反応物流体と熱流体マイクロチャンネル26、46の熱流体との間の熱交換を行うことができる。同様に、相互接続マイクロチャンネル15は、対応する非ポリマー相互接続封止体を介して、流体微細構造体20、30、40の熱流体マイクロチャンネル26、46のための熱相互接続マイクロチャンネル16を有することができる。
【0012】
図2に示すように、流体相互接続バックボーン10は、層横断開口部18とそれぞれの層を複数の独立した相互接続マイクロチャンネルに分離するよう構成された層間閉塞体19との網から成る多層多岐管として構成されている。そのため、流体相互接続バックボーン10は、複雑度が異なる多種多様な流体微細構造体を補完するよう構成することができる。層横断開口部18の各々の位置は、相互接続入力及び出力ポート12、14が様々なマイクロ流体構造体の標準の入出力パターン又は特殊な用途における特注の入出力パターンを補完するよう選択することができる。
マイクロリアクター技術の精通者なら理解できるように、反応物及び熱交換マイクロチャンネルの複雑度は大幅に変化する可能性があり、図1及び2は比較的単純化したものを概略的に示しているに過ぎない。本発明の説明のため及び本発明を明確にするため、相互接続反応物マイクロチャンネル15、25、35、45が、1つ以上の反応生成物Cを生成する反応を促進するために、2つ以上の反応物A、Bをマイクロリアクター組立体100の1つ以上の共通部分に移動する様子を示しているに過ぎない。熱流体マイクロチャンネル16、26、46に熱流体Hを循環させることにより、マイクロリアクター組立体100及びその内部を循環する各種流体の温度が制御される。本発明の特定の実施の形態において、流入熱流体HINの温度が所定の温度範囲において変更可能とされ、異なるモード又は異なる条件下での動作を容易にしている。
【0013】
相互接続封止体50には非ポリマーが用いられ、比較的高い温度又は比較的低い温度、即ち、ポリマー封止体が機能しない温度又は機能が低下する温度における性能を向上している。本発明を実施する上において、非ポリマー相互接続封止体50を様々な方法で形成できる。例えば、1つ以上の非ポリマー相互接続封止体50が、流体微細構造体20、30、40のうちの1つの材料と、流体相互接続バックボーン10の材料と、介在非ポリマー結合材料とを組み合せて形成された封止接合体から成ることができる。別の方法として、1つ以上の非ポリマー相互接続封止体50が、流体微細構造体20、30、40のうちの1つのガラスと流体相互接続バックボーン10のガラスとを組み合せて形成されたガラス/ガラス封止接合体から成ることができる。本発明の別の実施の形態によれば、1つ以上の非ポリマー相互接続封止体50が、流体微細構造体20、30、40のうちの1つのガラスと、流体相互接続バックボーン10のガラスと、ガラスフリットから成る介在層とを組み合せて形成されたガラス/フリット/ガラス封止接合体から成ることができる。別の考えられる実施の形態において、1つ以上の非ポリマー相互接続封止体50が、流体微細構造体20、30、40のうちの1つのガラス又はセラミックと流体相互接続バックボーン10ガラス又はセラミックとを組み合せて形成されたガラス/セラミック封止接合体から成ることができる。更に別の実施の形態において、1つ以上の非ポリマー相互接続封止体50が、流体微細構造体20、30、40のうちの1つのセラミックと流体相互接続バックボーン10のセラミックとを組み合せて形成されたセラミック/セラミック封止接合体から成ることができる。更に別の実施の形態において、1つ以上の非ポリマー相互接続封止体50が、ガラス/ガラス、ガラス/セラミック、又はセラミック/セラミック封止接合体と介在非ポリマー結合材料とから成ることができる。
【0014】
本明細書において、特定の特性又は機能を特定の方法で具体化するために、特定の方法で“構成”された本発明の構成要素は、使用目的を記述したものではなく、構造を記述したものである。具体的には、構成要素を“構成”する方法の記述はその構成要素の現存する物理的状態を意味するものであり、その構成要素の構造的特性の明確な記述であると解釈されるべきである。
【0015】
これまで特定の実施の形態を参照しながら本発明を詳細に説明してきたが、添付の請求項に規定する本発明の範囲を逸脱せずに種々の修正及び変更が可能であることは明白である。具体的には、本発明の特定の態様を好ましい又は特に有益であると説明したが、本発明は必ずしもこれらの好ましい態様に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0016】
10 流体相互接続バックボーン
12 相互接続入力ポート
14 相互接続出力ポート
15 相互接続マイクロチャンネル
16 熱相互接続マイクロチャンネル
18 層横断開口部
19 層間閉塞体
20、30、40 流体微細構造体
22、32、42 マイクロチャンネル入力ポート
24、34、44 マイクロチャンネル出力ポート
15、35、45 流体マイクロチャンネル
26、46 熱流体マイクロチャンネル
50 非ポリマー相互接続封止体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体相互接続バックボーン(10)及び複数の流体微細構造体(20、30、40)を備えたマイクロリアクター組立体(100)であって、
前記流体微細構造体(20、30、40)が前記流体相互接続バックボーン(10)のそれぞれの部分によって支持され、
前記流体微細構造体(20、30、40)の各々が、それぞれマイクロチャンネル入力ポート(22、32、42)及びマイクロチャンネル出力ポート(24、34、44)を備えた複数の流体マイクロチャンネル(25、35、45)を有し、
前記流体相互接続バックボーン(10)が、相互接続入力ポート(12)及び相互接続出力ポート(14)を備えた少なくとも1つの相互接続マイクロチャンネル(15)を有し、
前記マイクロリアクター組立体(100)が、前記相互接続入出力ポート(12、14)に関係する複数の非ポリマー相互接続封止体(50)を有し、
前記流体相互接続バックボーン(10)の相互接続入力ポート(12)が、前記非ポリマー相互接続封止体(50)の1つにおいて、第1流体微細構造体(20)のマイクロチャンネル出力ポート(24)に連結され、
前記流体相互接続バックボーン(10)の相互接続出力ポート(14)が、前記非ポリマー相互接続封止体(50)の1つにおいて、第2流体微細構造体(30)のマイクロチャンネル入力ポート(32)に連結され、
前記相互接続マイクロチャンネル(15)が前記流体相互接続バックボーン(10)によって完全に規定され、別の封止接合体が介在することなく、前記第1流体微細構造体(20)のマイクロチャンネル出力ポート(24)の非ポリマー相互接続封止体(50)から前記第2流体微細構造体(30)のマイクロチャンネル入力ポート(22)の非ポリマー相互接続封止体(50)に延びるよう構成されて成る
ことを特徴とする組立体(100)。
【請求項2】
前記流体相互接続バックボーン(10)が複数の独立した相互接続マイクロチャンネル(15)を有し、層横断開口部(18)とそれぞれの層を複数の独立した相互接続マイクロチャンネル(15)に分離するよう構成された層間閉塞体(19)とで構成される網から成る多層多岐管として構成されて成ることを特徴とする請求項1記載の組立体(100)。
【請求項3】
少なくとも1つの前記流体微細構造体(20、30、40)の流体マイクロチャンネル(25、35、45)が、反応物流体をマイクロチャンネル入力ポート(32)からマイクロチャンネル出力ポート(34)に移動するよう構成された少なくとも1つの反応物マイクロチャンネル(35)と該反応物マイクロチャンネル(35)内の反応物流体と内部の熱流体との熱交換を行うよう構成された少なくとも1つの熱流体マイクロチャンネル(26、46)とから成ることを特徴とする請求項1又は2記載の組立体(100)。
【請求項4】
前記非ポリマー相互接続封止体(50)の少なくとも1つが、前記流体微細構造体(20、30、40)のうちの1つのガラスと前記流体相互接続バックボーン(10)のガラスとを組み合せて形成されたガラス/ガラス封止接合体から成ることを特徴とする請求項1〜3いずれか1項記載の組立体(100)。
【請求項5】
前記非ポリマー相互接続封止体(50)の少なくとも1つが、前記流体微細構造体(20、30、40)のうちの1つのガラスと、前記流体相互接続バックボーン(10)のガラスと、ガラスフリットから成る介在層とを組み合せて形成されたガラス/フリット/ガラス封止接合体から成ることを特徴とする請求項1〜4いずれか1項記載の組立体(100)。
【請求項6】
前記非ポリマー相互接続封止体(50)の少なくとも1つが、前記流体微細構造体(20、30、40)のうちの1つのガラス又はセラミックと、前記流体相互接続バックボーン(10)のガラス又はセラミックとを組み合せて形成されたガラス/セラミック封止接合体から成ることを特徴とする請求項1〜5いずれか1項記載の組立体(100)。
【請求項7】
前記非ポリマー相互接続封止体(50)の少なくとも1つが、前記流体微細構造体(20、30、40)のうちの1つのセラミックと、前記流体相互接続バックボーン(10)のセラミックとを組み合せて形成されたセラミック/セラミック封止接合体から成ることを特徴とする請求項1〜6いずれか1項記載の組立体(100)。
【請求項8】
前記非ポリマー相互接続封止体(50)の少なくとも1つがガラス/ガラス、ガラス/セラミック、又はセラミック/セラミック封止接合体から成り、
前記封止接合体が前記流体微細構造体(20、30、40)のうちの1つのガラス又はセラミックと、前記流体相互接続バックボーン(10)のガラス又はセラミックと、介在非ポリマー結合材料とを組み合せて形成されて成ることを特徴とする請求項1〜7いずれか1項記載の組立体(100)。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2011−507681(P2011−507681A)
【公表日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−539492(P2010−539492)
【出願日】平成20年12月19日(2008.12.19)
【国際出願番号】PCT/US2008/013882
【国際公開番号】WO2009/085201
【国際公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【出願人】(397068274)コーニング インコーポレイテッド (1,222)
【Fターム(参考)】