説明

相対温度指数が改善されたクロロ置換ポリエーテルイミド

OH含量が0超〜100ppm以下、相対温度指数が170℃以上、塩素含量が0ppm超のポリエーテルイミドが開示される。該ポリエーテルイミドの調製方法も開示される。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本発明はポリエーテルイミド分野に関する。ポリエーテルイミドは、熱的に安定した熱可塑性エンジニアリングプラスチックであり、高温性が益々要求される中、その用途は拡大している。クロロ置換法で製造されたポリエーテルイミドが知られている。
【0002】
残念なことに、クロロ置換法で製造されたクロロ置換ポリエーテルイミドの相対温度指数特性は低く、一部の商業的用途に対応できない。相対温度指数は、熱老化後のポリマーの特性低下を示す既知の特性である。材料は、ポリマー材料の長期特性評価に対するアメリカ保険業者安全試験所規格(UL746B)に準じて行われる長期熱老化プログラムの一部として、特定の重要な特性(例えば、絶縁耐力、可燃性、衝撃強度および引張強度)の保持率について研究されている。このプログラムでの各試験温度における材料の寿命末期は、重要な特性値が初期(入手したまま)の値の50%に低下したときの時間と考えられてきた。
【0003】
従って、相対温度指数特性が改善されたクロロ置換ポリエーテルイミドと、こうしたクロロ置換ポリエーテルイミドの製造方法に対して、まだ満たされていないニーズがある。
【発明の概要】
【0004】
式(I)の構造単位を含むポリエーテルイミドであって、
【化1】

式中、RおよびR’は、直鎖または環式のC2−20アルキル基あるいは置換または未置換のC6−30アリール基であり得、nは1〜40の値であり、前記ポリエーテルイミドのOH含量は0超〜100質量ppm以下であり、前記ポリエーテルイミドの相対温度指数は170℃以上であり、前記ポリエーテルイミドの塩素含量は0ppm超であることを特徴とするポリエーテルイミドが本明細書に開示される。
【0005】
さらに、式(III)の構造単位を含むポリエーテルイミドであって、
【化2】

式中、nは1〜40の整数であり、前記ポリエーテルイミドのOH含量は0超〜100質量ppm以下であり、前記ポリエーテルイミドの相対温度指数は170℃以上であり、前記ポリエーテルイミドの塩素含量は0ppm超であることを特徴とするポリエーテルイミドも本明細書に開示される。
【0006】
さらに、希釈剤としてのo−ジクロロベンゼンまたはアニソール中、触媒活性化量の相間移動触媒の存在下で、実質的に等モル量の式HO−R’−OHのジヒドロキシ化合物の二ナトリウム塩とビスイミドのスラリーとを接触させて、ビスイミドと二ナトリウム塩を重合するステップを備える、式(I)の構造単位を有するポリエーテルイミドの製造方法であって、前記ビスイミドと二ナトリウム塩は、アルカリ金属炭酸塩、アルキル水素化物、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属リン酸塩、アルカリ金属重炭酸塩、アルカリ金属酢酸塩およびこれらの組み合わせから構成される群から選択される塩基の存在下で重合され、前記ビスイミドのスラリーは、式HN−R−NHのジアミンと、クロロフタル酸無水物と、選択的なフタル酸無水物と、o−ジクロロベンゼンまたはアニソールと、を含み、固形分含量が約5質量%以上の混合物と、選択的なイミド化触媒との反応生成物を含み、前記塩基は、前記のOH含量を有する前記ポリエーテルイミドの生成に十分な量で添加されることを特徴とする方法が本明細書に開示される。
【0007】
さらに、希釈剤としてのo−ジクロロベンゼンまたはアニソール中、相間移動触媒としてのヘキサアルキルグアニジニウムクロリドの触媒活性化量の存在下で、実質的に等モル量のビスフェノールA二ナトリウム塩と1,3−ビス[N−(4−クロロフタルイミド)]ベンゼンのスラリーとを接触させて、1,3−ビス[N−(4−クロロフタルイミド)]ベンゼンとビスフェノールA二ナトリウム塩を重合するステップを備える、式(III)の構造単位を有するポリエーテルイミドの製造方法であって、前記1,3−ビス[N−(4−クロロフタルイミド)]ベンゼンと前記ビスフェノールA二ナトリウム塩は、アルカリ金属炭酸塩、アルキル水素化物、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属リン酸塩、アルカリ金属重炭酸塩、アルカリ金属酢酸塩およびこれらの組み合わせから構成される群から選択される塩基の存在下で重合され、前記1,3−ビス[N−(4−クロロフタルイミド)]ベンゼンのスラリーは、m−フェニレンジアミンと、4−クロロフタル酸無水物と、選択的なフタル酸無水物およびo−ジクロロベンゼンまたはアニソールとを含み、固形分含量が約5質量%以上である混合物と、選択的なイミド化触媒との反応生成物を含み、前記塩基は、前記のOH含量を有する前記ポリエーテルイミドの生成に十分な量で添加されることを特徴とする方法も本明細書に開示される。
【0008】
別の実施形態では、本発明は、式(III)の構造を有するポリエーテルイミドであって、
【化3】

式中、nは1〜40の整数であり、前記ポリエーテルイミドのOH含量は0超〜100ppm以下であり、前記ポリエーテルイミドの相対温度指数は170℃以上であり、前記ポリエーテルイミドの塩素含量は0ppm超であり、前記ポリエーテルイミドは、希釈剤としてのo−ジクロロベンゼンまたはアニソール中、相間移動触媒としてのヘキサアルキルグアニジニウムクロリドの触媒活性化量の存在下で、実質的に等モル量のビスフェノールA二ナトリウム塩と1,3−ビス[N−(4−クロロフタルイミド)]ベンゼンのスラリーとを接触させて、1,3−ビス[N−(4−クロロフタルイミド)]ベンゼンとビスフェノールA二ナトリウム塩を重合させるステップを備える方法で製造され、前記1,3−ビス[N−(4−クロロフタルイミド)]ベンゼンとビスフェノールA二ナトリウム塩は、アルカリ金属炭酸塩、アルキル水素化物、アルカリ金属リン酸塩、アルカリ金属重炭酸塩、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属酢酸塩およびこれらの組み合わせから構成される群から選択される塩基の存在下で重合され、前記1,3−ビス[N−(4−クロロフタルイミド)]ベンゼンのスラリーは、m−フェニレンジアミンと、4−クロロフタル酸無水物と、選択的なフタル酸無水物と、o−ジクロロベンゼンまたはアニソールと、を含み、固形分含量が約5質量%以上である混合物と、イミド化触媒との反応生成物を含み、前記塩基は、100ppm以下の水酸末端基を有する前記ポリエーテルイミドの生成に十分な量で添加されることを特徴とするポリエーテルイミドに関する。
【0009】
本発明のこれらおよび他の特徴、様相および効果は、以下の記述および添付の請求項を参照することによってより一層理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】対照樹脂と候補樹脂の相対温度指数経年劣化の結果を示すグラフである。
【図2】相対温度指数外挿を示すグラフである。
【図3】実施例でのデータを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、特定の塩基とプロセス条件の組み合わせを用いて、ポリエーテルイミドの水酸基含量を0超〜100ppmの範囲に低減することによって、相対温度指数(RTI)が170℃以上のポリエーテルイミドが今や製造できるとの驚くべき発見に基づいている。注目すべきことには、OH基含量が0超〜約100ppm以下の範囲では、ポリエーテルイミドのRTIは170℃以上であり、OH基含量が約100ppm超では、ポリエーテルイミドのRTIは170℃未満であることが見出された。驚くべきことに、安定剤の使用は、RTIが170℃以上のポリエーテルイミドの生成に有用であることは示されていない。
【0012】
作用例を除き、あるいは別途明示がある場合を除き、明細書および請求項で用いられる成分量や反応条件等を表す数字や表現は、すべての場合について「約」という用語で修飾されるものと理解されたい。本出願においては様々な数値範囲が開示されている。これらの範囲は連続的であり、最小値と最大値間のすべての数値を含む。別途明示がある場合を除き、本出願のこうした様々な数値範囲は近似である。
【0013】
前記ポリエーテルイミドは式(I)の構造単位を有する。
【化4】

【0014】
ある実施形態では、前記ポリエーテルイミドは式(II)の構造単位をさらに含む。
【化5】

【0015】
式(I)および(II)において、Rは、それぞれが水素、または水素、ハロゲン、酸素、硫黄および窒素の組み合わせとの共有結合により飽和されている炭素の数が2〜20個の直鎖または環式アルキル基であり得る。また、Rは、下記の一般式を有する置換アリール含有ラジカルであり得る。
【化6】

式中、Zは、2つのアリール環間の共有結合、あるいは以下の結合のうちの1つであり得、Yは、水素、あるいはアルキル、ハロまたは置換アリール基であり得る。
【化7】

【0016】
多くの場合、Rは、メタまたはパラの位置で共有結合した置換アリールベンゼンラジカルである。
【化8】

Wは、水素、アルキル、ハロまたは置換アリール基であり得る。具体的には、Rは、メタまたはパラの位置で共有結合したベンゼンラジカルである。
【0017】
式(I)および(II)において、R’は、下記の一般構造を有し得る。
【化9】

式中、Qは、共有結合あるいは以下の結合のうちの1つであり得、Yは、水素、アルキル基あるいは置換アリール基であり得る。R’’およびR’’’は、水素のみか、あるいは水素と、ハロゲンまたは置換アリール基とを含むアルキル基であり得る。
【化10】

【0018】
また、R’は下記の構造を有し得る。
【化11】

Wは、水素、アルキルまたは置換アリール基であり得る。具体的には、Wは水素であり、ベンゼンはメタまたはパラの位置で共有結合されている。
【0019】
具体的には、R’は、
【化12】

あるいは
【化13】

であり得る。
【0020】
より具体的には、ある実施形態では、前記ポリエーテルイミドは式(III)の構造単位を有しており、
【化14】

式中、nは1〜40の整数であり、前記ポリエーテルイミドのOH含量は0超〜100ppm未満であり、前記ポリエーテルイミドの相対温度指数170℃以上であり、前記ポリエーテルイミドの塩素含量は0ppm超である。
【0021】
前記ポリエーテルイミドの相対温度指数(RTI)は、アメリカ保険業者安全試験所(UL(登録商標)プロトコルUL746B)により求めて170℃以上である。該相対温度指数は、実施例で説明するように、UL746Bプロトコルに準拠した拡張試験を行うことにより直接得られ、あるいは、同じく実施例で説明するように、加速熱老化試験方法によって間接的に推定してもよい。RTIは、簡略的には、実験サンプルの最大分子量(Mp)低下量を、UL(登録商標)プロトコルUL746Bによって相対温度指数が170℃以上であることが実証された、窒素置換法(ポリエーテルイミドをビスフェノールA二無水物、フタル酸無水物およびメタフェニレンジアミンから製造する方法)で製造されたポリエーテルイミドである対照サンプルの最大(Mp)低下量と比較することによって推定される。実験サンプルの最大分子量低下パーセントが、対照サンプルのそれの10%以内であれば、該実験サンプルの相対温度指数は、170℃以上である対照サンプルの相対温度指数と同じである、といえる。一方、実験サンプルの最大分子量低下パーセントが、窒素置換法を用いて、二無水物およびメタフェニレンジアミンから製造されたポリエーテルイミドである対照サンプルのそれの10%超であれば、実験サンプルの相対温度指数は170℃未満、例えば160℃である、といえる。例えば、230℃×12〜13日での対照サンプルの最大分子量(Mp)低下が8%であれば、Mp低下が18%以下の樹脂は、対照サンプルと同等のRTI等級を有するであろう。間接的に求められたRTI等級は、UL(登録商標)プロトコルUL746Bによって検証できる。UL(登録商標)プロトコルUL746Bの継続期間(数か月かかり得る)のために、候補樹脂の相対温度指数等級をUL(登録商標)プロトコルUL746Bによって求めることは必ずしも実用的あるいは可能であるとは限らない。間接的に得られた相対温度指数等級は、好適には、有用な場合にはいつでも、UL(登録商標)プロトコルUL746Bによって検証できる。
【0022】
該ポリエーテルイミドの塩素含有量は用途に応じて変化し得る。該ポリエーテルイミドの塩素含有量は0超〜10,000ppmであり得、より具体的には0超〜4,000ppmであり得る。別の実施形態では、該ポリマーの塩素含有量は2,000以上〜3,000ppm未満である。別の実施形態では、該ポリマーの塩素含有量は1,000以上〜2,000ppm未満である。別の実施形態では、該ポリマーの塩素含有量は、0超〜1,000ppm未満である。
【0023】
ある実施形態では、該ポリマーは好都合な難燃性を有する。例えば、ある実施形態では、該ポリエーテルイミドの難燃性等級は1.5mmでV0である。別の実施形態では、該ポリエーテルイミドの難燃性等級は、0.8mmでV0である。
【0024】
該ポリエーテルイミドのOH含量は一般に、0超〜100ppm以下である。OH含量がこの範囲にあれば、好都合なことに、該ポリエーテルイミドの相対温度指数は170℃以上である。
【0025】
式(I)、(II)または(III)のポリエーテルイミドは一般に、希釈剤としてのo−ジクロロベンゼンまたはアニソール中、触媒活性化量の相間移動触媒の存在下で、実質的に等モル量の式HO−R’−OHのジヒドロキシ化合物の二ナトリウム塩とビスイミドのスラリーとを接触させて、ビスイミドと二ナトリウム塩を重合するステップを備えるプロセスであって、前記ビスイミドと二ナトリウム塩は、アルカリ金属炭酸塩、アルキル水素化物、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属リン酸塩、アルカリ金属重炭酸塩、アルカリ金属酢酸塩およびこれらの組み合わせから構成される群から選択される塩基の存在下で重合され、前記ビスイミドのスラリーは、式HN−R−NHのジアミンと、クロロフタル酸無水物と、選択的にフタル酸無水物と、o−ジクロロベンゼンまたはアニソールと、を含み、固形分含量が約5質量%以上である混合物と、選択的なイミド化触媒との反応生成物を含み、前記塩基は、前記ポリエーテルイミドの生成に十分な量で添加されることを特徴とするプロセスによって製造される。
【0026】
前記相間移動触媒は、本方法に準じて添加された場合に、十分熱的に安定してOH含量が0超〜100ppm以下のポリエーテルイミドを生成する任意の相間移動触媒であり得る。好適な相間移動触媒は、ヘキサアルキルグアニジウム塩類、テトラアルキルまたはテトラアリールホスホニウム塩類(ホスホニウム塩類)、ホスファゼニウム塩類、アルキルピリジニウム塩類、ビスアルキルピリジニウム塩類、ビグアニジニウム塩類(ビグアニド塩類)、アルキルイミダゾリウム塩類、ベンズイミダゾリウム塩類、N−アルキル−4−アルキルアミノピリジニウム塩類およびこれらの組み合わせから構成される群から選択される。前述の塩類は、該塩の示されたカチオン成分と共に、アニオン成分も含んでおり、塩化物、臭化物、ヨウ化物、硫酸塩、リン酸塩、メシラート、トシラートなど、およびこれらの組み合わせの群から選択される。
【0027】
相間移動触媒の量は用途に応じて変化する。相間移動触媒の量は一般に、重合反応に用いられるビスフェノールA二ナトリウム塩の量に対して0.5モル%以上である。別の実施形態では、相間移動触媒の量は、重合反応に用いられるビスフェノールA二ナトリウム塩の量に対して0.5〜5モル%である。
【0028】
前記選択的なイミド化触媒は、アミド酸官能性の環化イミド官能性への変換を触媒する。好適なイミド化触媒は当分野では既知であり、有機リン酸、特に、フェニルホスフィン酸ナトリウムなどのホスフィン酸塩や4−ジアミノピリジンなどの複素環アミンを含む。一部の実施形態では、イミド化触媒はフェニルホスフィン酸ナトリウムを含む。イミド化触媒の量は変わり得る。イミド化触媒を用いる場合、その量は一般に、前記ポリエーテルイミドの0超〜2質量%未満である。
【0029】
前記ビスイミドは任意の好適な方法で製造できる。ある実施形態では、ビスイミドは、クロロフタル酸無水物と過剰量または化学量論量のジアミンとの反応によって製造される。
【0030】
ある実施形態では、前記プロセスはさらに、キャッピング剤を添加するステップをさらに備える。該キャッピング剤は、使用された場合、アミン基と反応してこのアミンを「キャッピング」する1つ以上の置換基を有する任意の化合物であり得る。好適なキャッピング剤の例は、クロロフタル酸無水物、フタル酸無水物、置換無水フタル酸、アルキル無水物、環式アルキル無水物、置換アリール無水物、アシルハロゲン化アルキル、アシルハロゲン化アリール、アルデヒド、ケトン、エステル、イソシアネート、クロロギ酸エステル、スルホニルクロリドおよびこれらの組み合わせから構成される群から選択され得る。キャッピング剤の量は変わり得る。ある実施形態では、その量は例えば、該系に存在する過剰アミン(例えば、反応させたm−フェニレンジアミン)のモル当量当たり、1〜2モル当量であり得る。他の過剰量も可能である。
【0031】
前記方法で用いられる塩基は、アルカリ金属炭酸塩、アルキル水素化物、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属リン酸塩、アルカリ金属重炭酸塩、アルカリ金属酢酸塩およびこれらの組み合わせから構成される群から選択され得る。
【0032】
ある実施形態では、前記アルカリ金属リン酸塩基はKPOである。KPOは、固体または水溶液の形態で添加され得る。ある実施形態では、水溶液で添加される場合、KPOは、スラリーへの添加前に、ビスフェノールA二ナトリウム塩または1,3−ビス[N−(4−クロロフタルイミド)]ベンゼンで乾燥される。あるいは、水性KPOは、例えばo−ジクロロベンゼンなどの有機溶媒中にビスフェノールA二ナトリウム塩を含むスラリーに添加して乾燥させ得る。別の実施形態では、固体として添加する場合、添加するKPOの粒径は0超〜400μmである。別の実施形態では、添加されるKPOの粒径は0超〜75μm未満である。
【0033】
一般に、重合中に形成されるスラリーまたはその混合物は無水であり、該システムに存在する水分は、重合容器からの蒸留液で測定して20ppm未満であり得る。
【0034】
使用する塩基の量は変わり得る。塩基の量は一般に、ポリマーの質量に対して0超質量%であり、十分な量存在して、OH含量が0超〜100ppm以下、RTI等級が170℃以上のポリエーテルイミドの生成を可能とする。具体的な量は、実際に用いる塩基、使用設備、該塩基のビスフェノールA二ナトリウム塩への導入方法およびその他のファクタに応じて変化するであろう。ある実施形態では、重合中に使用される塩基の量は、ポリマーの質量に対して0超〜2質量%である。別の実施形態では、重合中に使用される塩基の量は、ポリマーの質量に対して0超〜1質量%である。別の実施形態では、重合中に使用される塩基の量は、ポリマーの質量に対して0.5以上〜1.5質量%である。
【0035】
前記塩基は通常、ヘキサアルキルグアニジウムクロリド相間移動触媒の存在下で、ビスフェノールA二ナトリウム塩を1,3−ビス[N−(4−クロロフタルイミド)]ベンゼンと混合した後に添加される。
【0036】
しかしながら、その他の添加方法も可能である。例えば、ビスフェノールA二ナトリウム塩を、ヘキサアルキルグアニジウムクロリド相間移動触媒の存在下で、1,3−ビス[N−(4−クロロフタルイミド)]ベンゼンと混合する前に、該塩基をビスフェノールA二ナトリウム塩に添加できる。前記アルカリ金属水酸化物が水酸化ナトリウムの場合、該水酸化ナトリウムを、好適にはビスフェノールA二ナトリウム塩水溶液に添加し、その後乾燥させて、BPA二ナトリウム塩の使用から調製されるポリマーの質量に対して、過剰な水酸化ナトリウムの量が0超〜0.5質量%未満、好適には0.1〜0.2質量%の、有機溶媒中のBPA(ビスフェノールA)二ナトリウム塩スラリーを得る。ある実施形態では、水酸化ナトリウムを用いる場合、該ビスフェノールA二ナトリウム塩は、過剰な水酸化ナトリウムを有しており腐食性が高い。しかしながら、当業者であれば、他の変形も可能であることは理解するであろう。
【0037】
ある実施形態では、式(III)の構造を有するポリエーテルイミドであって、
【化15】

前記ポリエーテルイミドのOH含量は0超〜100質量ppm以下であり、前記ポリエーテルイミドの相対温度指数は170℃以上であり、前記ポリエーテルイミドの塩素含量は0ppm超であり、希釈剤としてのo−ジクロロベンゼンまたはアニソール中、相間移動触媒として触媒活性化量のヘキサアルキルグアニジウムクロリドの存在下で、実質的に等モル量のビスフェノールA二ナトリウム塩と1,3−ビス[N−(4−クロロフタルイミド)]ベンゼンのスラリーとを接触させて、1,3−ビス[N−(4−クロロフタルイミド)]ベンゼンとビスフェノールA二ナトリウム塩とを重合させるステップを備える方法で製造されるポリエーテルイミドであって、前記1,3−ビス[N−(4−クロロフタルイミド)]ベンゼンとビスフェノールA二ナトリウム塩は、アルカリ金属炭酸塩、アルキル水素化物、アルカリ金属リン酸塩、アルカリ金属重炭酸塩、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属酢酸塩およびこれらの組み合わせから構成される群から選択される塩基の存在下で重合され、前記1,3−ビス[N−(4−クロロフタルイミド)]ベンゼンのスラリーは、m−フェニレンジアミンと、4−クロロフタル酸無水物と、選択的なフタル酸無水物およびo−ジクロロベンゼンまたはアニソールとを含み、固形分含量が約5質量%以上である混合物と、選択的なイミド化触媒との反応生成物を含み、前記塩基は、そのOH含量が前記した量である前記ポリエーテルイミドの生成に十分な量で添加されることを特徴とするポリエーテルイミドが本明細書に開示される。
【0038】
さらに、本明細書に記載のRTIが170℃以上のポリエーテルイミドと、異なるポリマーと、を含む組成物も本明細書に開示される。式(I)、(II)または(III)のポリエーテルイミドと結合可能なポリマーの例は、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリオレフィン、ポリスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリアミド、ポリアミドイミド、OH基含量が0超〜100ppm以下のポリエーテルイミド以外のポリイミドおよびこれらの組み合わせから構成される群から選択される。
【0039】
こうした追加のポリマーの量は、用途に応じて変わり得る。一般に、該別のポリマーの量は組成物の1〜99質量%であり得る。例えば、組成物は、その全質量に対して、OH含量が0超〜100ppm以下のポリエーテルイミドと、1〜50質量%の前記ポリマーと、を含み得る。他の実施形態では、その量は変わり得る。
【0040】
OH基含量が0超〜100ppm以下のポリエーテルイミドと他のポリマーとを含む組成物は、添加剤または添加剤の組み合わせをさらに含んでいてもよい。典型的な添加剤としては、導電性充填剤、強化剤、安定剤、潤滑剤、離型剤、無機顔料、UV吸収剤、酸化防止剤、可塑剤、静電防止剤、起泡剤、発泡剤、金属不活性化剤およびこれらのものの1つまたは複数を含む組み合わせが挙げられる。典型的な導電性充填剤としては、導電性カーボンブラック、炭素繊維、金属繊維、金属パウダー、カーボンナノチューブなど、およびこれらの任意の1つを含む組み合わせが挙げられる。強化剤の例としては、ガラスビーズ(中空およびまたは固形)、ガラスフレーク、粉砕ガラス、ガラス繊維、タルク、珪灰石、シリカ、雲母、カオリンまたはモンモリロナイト粘土、シリカ、石英、バライトなど、およびこれらの任意のものを含む組み合わせが挙げられる。酸化防止剤は、亜リン酸塩、亜ホスホン酸エステルおよびヒンダードフェノールなどの化合物あるいはこれらの混合物であり得る。亜リン酸トリアリールおよびホスホン酸アリールを含むリン含有安定剤は、有用な添加剤として注目すべきものである。1つまたは複数のリン原子を有する二官能性または三官能性リン含有安定剤も採用される。安定剤の分子量は300ダルトン以上であってもよい。一部の実施形態では、分子量が500ダルトン以上のリン含有安定剤は有用である。リン含有安定剤の組成物中の典型的な量は、処方剤質量の0.05〜0.5質量%である。流動助剤および型離型化合物も考慮される。
【0041】
前記強化剤の量は、組成物の全質量に対して60質量%以下であってもよい。この範囲内で、強化剤の量は10質量%以上であり、より具体的には20質量%以上である。また、この範囲内で、強化剤の量は50質量%以下であり、より具体的には40質量%以下である。
【0042】
RTI等級が170℃以上のポリエーテルイミドと、その他のポリマーと、を含む組成物は、押出機内で混合して製造されてもよい。本明細書に記載のポリエーテルイミドは、成形、フィルムおよびシート押出、射出成形、ガスアシスト射出成形、押出成形、圧縮成形、ブロー成形などの熱可塑性プロセスを用いて、物品に成形、研削あるいは型成形することも可能である。得られる物品は、例えば、フィルム(例えばオーバーモールド物品用の溶媒キャストフィルム)、シート、成形品あるいは繊維の形状であってもよい。
【0043】
本発明について、さらに以下の実施例で説明するが、ここでの部およびパーセントは、別途明示がある場合を除き、すべて質量によるものである。
実施例
実施例1〜54
【0044】
以下の実施例において、生成されたポリエーテルイミドをホスホリレーション試薬を用いて誘導体化し、その後、リン31による核磁気共鳴(P31 NMR)によって水酸末端基含量を試験した。ポリエーテルイミドの相対温度指数(RTI)等級は、「加速熱老化試験方法」、すなわち以下に説明する「アメリカ保険業者安全試験所規格UL(登録商標)相対温度指数試験方法UL746B」によって求めた。実施例で生成されたポリエーテルイミドの分子量は、ポリマー研究所の混床カラム、溶離剤としての塩化メチレン、および材料のMp(最大分子量)、Mn(数平均分子量)およびMw(質量平均分子量)を求めるための狭ポリスチレン標準を用いたゲルパーミエションクロマトグラフィ(GPC)によって求めた。
技術&手順
【0045】
アメリカ保険業者安全試験所規格UL(登録商標)相対温度指数試験:対照のポリエーテルイミドおよび実施例19、20で議論する発明的ポリエーテルイミドについて、以下のUL(登録商標)RTI試験により測定した。樹脂の相対温度指数(RTI)等級は、高温下で採用される材料の長期性能に関するUL(登録商標)によって保証される値である。RTI等級は、UL746Bプロトコルを用いて測定され、それは、材料の引張強度が100,000時間後で50%を保持する温度として定義される。
【0046】
上記のULプロトコルUL746Bで確立された前述のRTI等級を有する、ビスフェノールA二無水物とメタフェニレンジアミンから製造されたポリエーテルイミドである市販グレード:ULTEM(登録商標)1000/1000(図1で「NDU」と表記)の対照材料の成形サンプルと、発明的ポリエーテルイミド(図1で「CDU」と表記)サンプルとを、温度を制御したオーブンに入れた。定期的に試料を取り出して試験し、(i)機械的強度、(ii)衝撃強度、(iii)電気的特性および(iv)可燃性について、時間に対する保持率をプロットした。結果の一例を図1に示す。樹脂のRTI等級を求めるには、ある特性について、初期値の50%が低減するまで試料を4つの異なる温度で老化させる4点UL(登録商標)プログラムが必要であった。
【0047】
UL試験の長い時間スケールのために、高温で得られた特性保持データから外挿してRTI等級を求めた。評価した各温度に対して50%特性保持時間を求め、次に、データセットを片対数グラフにプロットした。4点UL(登録商標)プログラムでは、図2に示すように、100,000時間まで直線的に低下するデータから外挿してRTI等級を求めた。
【0048】
試験結果を既存の材料と比較するために、すべてのRTI候補試験を、パラメータ較正における変動と測定誤差の補償のための基準として用いる、既にRTIが等級付けられた対照サンプルRTIと並行して行った。候補材料と対照材料の求められたRTI温度間の差を既に求められている対照材料のRTI等級に加算または差し引いて、並行した研究における対照材料の性能を基に候補樹脂材料のRTI等級を求めた。対照材料は、UL(登録商標)によって、その動的走査熱量測定(DSC)、熱重量分析(TGA)およびフーリエ変換赤外分光(FTIR)レスポンスが、そうしたグレードに対するRTI等級を与えるために使用される材料からのものと一致することが実証されている。
【0049】
加速熱老化試験方法:加速熱老化試験方法では、樹脂サンプル(部品、ペレットあるいはパウダー形態)を230℃の強制熱風オーブンで最高24日間加熱した。オーブン内の空気は外気とした。サンプルを約6、12、18および24日目に取り出した。ビスフェノールA二無水物およびメタフェニレン基から製造され、アメリカ保険業者安全試験所によってRTI等級が170℃以上であることが実証されている、10ppm未満のOH末端を有する市販のULTEM(登録商標)1000/1000グレードサンプルを実験樹脂と同時に熱老化させた。(ULTEMは、SABIC Innovative Plastics IP B.V.の商標である。)
【0050】
次に、熱老化させたサンプルをGPC分析して、数平均分子量(Mn)、質量平均分子量(Mw)および最大分子量(Mp)を求めた。UL RTI試験で熱老化させたサンプルもGPC分析を行った。発明的ポリエーテルイミドの分子量低下(Mp、MnおよびMwによって測定される)を、市販のULTEM(登録商標)1000/1000グレードサンプルの分子量低下と比較した。
【0051】
樹脂がUL試験に不合格となった時間(試料がその引張強度の50%を失った時間)とMp低下率との間に相関性があった。実験サンプルの最大分子量低下パーセントが、対照サンプルのそれの10%以内であれば、実験サンプルの相対温度指数は、対照サンプルと同じ相対温度指数と有すると言える。例えば、対照サンプルの最大分子量(Mp)低下が8%であれば、Mp低下が18%以下の樹脂は、対照試料と同等のRTI等級を有するであろう。我々は、有用で可能な場合にはいつでも、加速熱老化試験方法から得られた結果をUL746Bプロトコルで検証した。
実施例1〜9
【0052】
実施例1〜9では、重合中の異なる塩基の存在がポリエーテルイミドの水酸末端基含量に与える影響について調査した。以下の実施例では、ヘキサエチルグアナジニウムクロリド(HEGCl)触媒の存在下で、ビスフェノールA二ナトリウム塩と1,3−ビス(N−(4−クロロフタルイミド))ベンゼン(ClPAMI)を重合させた。重合反応はすべてo−ジクロロベンゼン(ODCB)中で行った。反応は実験室規模で行った。
【0053】
ビスフェノールA二ナトリウム塩を分離し、以下のように調製した。1L−丸底フラスコに、ビスフェノールA二ナトリウム塩のo−ジクロロベンゼン(ODCB)スラリー溶液を充填した。該ODCBをロータリエバポレータ(150℃、十分な(<10mm)真空)によって除去した。大部分のODCBを集めた後、オイルバスの温度を160℃に上げ、十分な(<10mm)真空×3時間で該塩をさらに乾燥させた。室温に冷却後、フラスコに窒素ガス(N)を充填してロータリエバポレータから取り外し、真空オーブンに3日間(130℃、十分な(<10mm)真空)入れた。該オーブンを冷却後、直ちにフラスコを窒素ガスで不活性化したグローブボックスに移した。固体の二ナトリウム塩をグローブボックス内のN下で保存した。
【0054】
ClPAMIを分離し、以下のように調製した。ClPAMIのODCBスラリーのサンプルをブフナー漏斗を用いてろ過した。その後、固形分を温かいODCB(3回、80℃)および室温のヘキサン(3回)で洗浄した。空気中で1時間乾燥させた後、固形分をアルミニウム鍋に移し、アルミホイルで被覆し十分な真空下(160℃、3日間)、オーブンで乾燥させた。乾燥したClPAMIをグローブボックス内で保存した。
【0055】
重合を行い、ポリマーを以下のように分離した。オーブン乾燥させた、窒素流入用の隔膜が装備された(他の首はストッパでキャップ化された)250mL用の4首丸底フラスコに、塩基(150mg、最終ポリマーに対して1質量%)、ビスフェノールA二ナトリウム塩(6.675g、24.517mmol)および1,3−ビス(N−(4−クロロフタルイミド))ベンゼン(ClPAMI、11.070g、25.318mmol)をグローブボックスで充填した。この混合物に、ODCBを150g添加した。フラスコをグローブボックスから取り出し、ディーンスタークトラップ/凝縮器と機械的攪拌機を取り付けた。混合物を攪拌しながら還流させた(油温は200℃に維持)。この段階中に、ODCBはディーンスタークトラップに集まり始めた。ODCBを約75mL(90g)除去後、HEGCl(ODCB中20質量%、330mg、HEGCl0.245mmol)を添加した。窒素フローを上げてODCBのオーバヘッドへの回収を加速させ30%固形分を得た。混合物を攪拌し、GPC分析用として毎時間ごとにサンプリングした。最後の3時間のサンプルのMw標準偏差が500ダルトン未満の場合、混合物をODCBで希釈して10%固形分とした。油温を165℃に下げて85質量%の水性HPOを5滴添加した。30分後、混合物を室温まで冷却して、ジクロロメタン(75mL)で希釈しブフナー漏斗でろ過した。ヘキサン250mLを含むブレンダに濾液を徐々に添加した。沈殿物はホモジナイズし、ろ過してヘキサン(2×100mL)ですすいだ。白色の固形分を真空下(<10mm、165℃)で12時間以上乾燥させた。
【0056】
異なる塩基で生成されたポリマーの水酸末端基含量を表1に示す。「*」は比較実施例を示す。
【表1】

【0057】
これらの実施例によって、すべての塩基がポリマーの水酸末端基の減少をもたらすものではないことが示されている。驚いたことに、NaHやNaOHなどのより強い塩基では、水酸末端基含量が減少しなかった。NaPO無水物では、水和物バージョンに対して、上記に示された結果と同様な結果が得られた。
実施例10〜12
【0058】
実施例10〜12では、塩基の添加時点がポリエーテルイミドの水酸末端基含量に与える影響について調査した。塩基としてKPOを用いた。塩基をそれぞれ、ビスフェノールA二ナトリウム塩、ClPAMIスラリー、および重合中に添加した。
【0059】
以下の実施例では、ヘキサエチルグアナジニウムクロリド(HEGCl)触媒の存在下で、ビスフェノールA二ナトリウム塩と1,3−ビス(N−(4−クロロフタルイミド))ベンゼン(ClPAMI)を重合させた。ClPAMIは4−モノアミンリッチであった。化学量論では、アミンリッチなClPAMIでは、ビスフェノールA二ナトリウム塩との重合が等しく良好に行えた。重合反応はすべてo−ジクロロベンゼン(ODCB)中で行った。反応は上記と同様、実験室規模で行った。
【0060】
ビスフェノールA二ナトリウム塩を、実施例1〜9で説明したように分離し調製した。
【0061】
ClPAMIは4−モノアミン(4−MA)リッチであり、以下のように調製した。3首丸底フラスコに、m−フェニレンジアミン(2.743g、25.365mmol)、4−クロロフタル酸無水物(4−ClPA)(9.225g、50.531mmol)、フェニルホスフィン酸ナトリウム(12mg、0.0731mmol)およびODCB(65g)を充填した。このフラスコに、機械的攪拌機、ディーンスタークトラップおよび窒素流入口を取り付け、あらかじめ加熱したオイルバス(170℃)に入れた。この混合物を攪拌し、油温を180℃に上げた。窒素フローを徐々に増加させて、水/ODCB混合物をディーンスタークトラップへ安定的に集めた。約10mlのODCBがトラップに集められた時点で窒素フローを下げた。残留4−ClPAおよび4−MA(最終の残留含量:HPLC分析で求めて、4−MAが0.4〜0.7モル%、4−CIPAが0.00〜0.02モル%)にさらなる変化が起きなくなるまで混合物を攪拌した。混合物をN下、180℃で保存し重合用に準備した。
【0062】
塩基添加場所に関して、実施例1〜9で説明した方法とは以下のように変更して重合を行った。実施例10では、ビスフェノールA二ナトリウム塩パウダーをKPOパウダーと混合した。固形分をClPAMIスラリーを含むフラスコに定量的に移した。実施例11では、KPOパウダーをClPAMIスラリーを含むフラスコに添加した。混合物を、窒素下、180℃×1時間以上攪拌した。ビスフェノールA二ナトリウム塩パウダーを該混合物に添加した。反応混合物サンプルを一時間ごとに取り出しGPC分析を行った。
【0063】
実施例12では、最後の3つの時間ごとサンプル(最後の3時間)のサンプルの分子量標準偏差が500ダルトン未満になった時点で、KPOを重合反応に添加した。最後の3つの時間ごとサンプル(最後の3時間)のMw標準偏差が500ダルトン未満になった時点で、混合物をODCBで希釈して10%固形分とした。
【0064】
PO塩基の添加が異なる方法で生成されたポリマーの水酸末端基含量を以下の表2に示す。ポリマーの分子量およびこの分子量が最大となる時間(反応が「水平状態」に達する時間)も示す。これらの結果から、塩基の添加時点は、水酸末端基含量に大きな影響を及ぼさないことが示されている。
実施例13
【0065】
実施例13では、固体KPOの代わりに、KPO水溶液の使用について調査した。ビスフェノールA二ナトリウム塩を分離し、実施例1〜9で上記したように調製した。
【0066】
ClPAMIは4−モノアミンリッチであり、実施例10〜12に説明したように調製した。
【0067】
磁気スターラとN流入手段とを装備した3首丸底フラスコに、ビスフェノールA二ナトリウム塩(6.675g、24.518mmol)および乾燥ODCBを充填し20%固形分とした。該フラスコにディーンスタークトラップを取り付け、攪拌しながら120℃に加熱した。この混合物に、水性KPO(375mg、40%水溶液)を徐々に添加した。このスラリーを混合し、25%固形分になるまで十分な量のODCBを徐々に蒸留した。混合物を12時間以上攪拌した。緩やかなNフロー下で攪拌しながら混合物を冷却した。このスラリーを重合用に準備した。このビスフェノールスラリーを、ClPAMIスラリーを含んだフラスコに定量的に移した。混合物を加熱して還流・攪拌し、窒素フローを上げてODCBのオーバヘッドへの集めを加速させて30%固形分を得た。この段階では、ヘキサエチルグアナジニウムクロリド(HEGCl、790mg、8.3%ODCB溶液)を添加して反応を進行させた。混合物を攪拌し、GPC分析用として毎時間ごとにサンプリングした。最後の3つの時間ごとサンプルの質量平均分子量(Mw)標準偏差が500のダルトン未満になった時点で、混合物をDSCBで希釈し10%固形分とした。該ポリマーを急冷し、実施例1〜9で説明したように分離した。
【0068】
生成されたポリマーの水酸末端基含量を以下の表2に示す。ポリマーの分子量およびこの分子量が最大となる時間(反応が「水平状態」に達する時間)も示す。これらの結果から、水酸末端基含量が低いポリエーテルイミドの製造に水性KPOが使用できることが示されている。
【表2】

実施例14〜17
【0069】
実施例14〜17では、KPO粒径が、ポリエーテルイミドの水酸末端基含量および重合化反応速度に与える影響について調査した。
【0070】
POを、以下のように異なる粒径に分画した。計量した量のKPO(100g、Acros)を250ml用のガラスビーカに入れアルミホイルでカバーした。その後、ビーカをあらかじめ加熱した真空オーブン(150℃)入れ、3日間以上十分な真空下に置いた。オーブンの温度を室温に下げ、取り出したビーカをNの連続フローを備えたドライボックスに移した。ドライボックス内に、予め設定されたステンレス篩鍋(上端から下端に向かって、850、425、250、150、75μmに設定)を入れた。KPOを上端に注ぎ、材料がこれ以上通過しなくなるまで(5時間未満)篩鍋を振動させた。パウダーを集めてグローブボックス内に保存した。
【0071】
実施例10または12に準じて行う重合に、分画したKPOを用いた。生成されたポリマーの水酸末端基含量を表3に示す。
【表3】

【0072】
データから、KPOの粒径は重合反応速度に影響を与え、粒径が小さいほど重合反応が速くなることが示されている。
実施例18〜21
【0073】
実施例18〜21では、ポリエーテルイミド上の水酸末端基量低減のために、大規模(パイロットプラント規模)反応における重合中のKPOの使用について調査した。実施例18では、KPOを使用する場合の粒径の重要性について評価した。実施例19〜20は、微細に分割したKPOを用いて成功した試行を示す。実施例21は、水性KPOの使用、アミンリッチなClPAMIの利用およびアミン基のキャップ化によって、低OH材料が得られることを示している。対照材料と実施例19および20で用いたポリエーテルイミドのRTI等級は、UL(登録商標)相対温度指数試験方法UL746Bに準拠して求めた。実施例18〜21の結果を以下に要約する。実施例18〜21の結果から、厳密な無水状態下で、かつ、微細に分割した塩基およびまたは微細に分割したビスフェノールA二ナトリウム塩を用いて重合反応を行うことが望ましいことが示されている。
【0074】
前記ビスフェノールA二ナトリウム塩を以下のように調製した。攪拌機、蒸気ジャケット、温度表示、材料充填用の適切な接続金具、窒素不活性化システムおよび凝縮器を備えたオーバヘッドラインを装備した、350ガロン(第1の容器)用のバッフルおよび蒸気ジャケット付ステンレスリアクタに、474kg(1045ポンド)の水と、191kg(422ポンド、839モル)のビスフェノールA(BPA)とを充填した。混合物を窒素で1時間、攪拌・不活性化した。混合物を1時間以上かけて50℃まで加熱した。その後、この容器に、134kg(295.9ポンド、1678モル)の50%水酸化ナトリウム(NaOH)を攪拌しながら加えた。その後、混合物を1時間以上かけて90〜92℃まで加熱し、ビスフェノールAを二ナトリウム塩として分解させた。この溶液をこの温度で1時間攪拌後、サンプリングした。この材料は化学量論的に平衡(NaOHのリッチ量は0.1モル%以下)であった。
【0075】
温度表示、厳密な窒素雰囲気維持手段、可変速度ポンプとオイルジャケット付スパイラル熱交換器とを含むポンプアラウンドループおよび凝縮器を備えたオーバヘッドラインを装備した、500ガロン用のバッフル付絶縁ステンレスリアクタに、977kg(2150ポンド)のODCBを充填した。再循環ループは、リボイラの排出上に背圧制御弁を装備した。熱交換器上の高温オイルを用いて、窒素下、ODCBを150℃にした。ビスフェノールA二ナトリウム塩の水性混合物を、リボイラ上で維持されている22psiの背圧により、1.8〜3.1kg/分(4〜7ポンド/分)でODCB内に噴霧した。これによって、リボイラ自体の沸騰を防いだ。窒素圧力を原動力として、第1の容器中の水性塩を塩ドライヤに移した。ポンプは、再循環ループを経由するフローが250g/分(gpm)になるように設定した。オイル温度を218℃に維持した。水とODCBを蒸留・凝縮してデカンタ内に集めた。水をデカンタから除き、ODCBを塩ドライヤに再循環した。リアクタのオーバヘッドストリーム(凝縮器前の)を周期的に集めて水分分析した。これは、オーバヘッドライン上のバルブを開にし、蒸気を外部から冷却されたコイルに入れることによって実現した。凝縮蒸気をコイル端のドライジャーに集め、カールフィッシャー滴定によって水分分析した。680kg(1500ポンド)のODCBを集めた後、オーバヘッド内の水分含量は20ppm未満であった。さらに、227kg(500ポンド)のODCBを第2のリアクタから蒸留し、次に、オイルをバルブ調節によりリボイラから取り出して、24%固形分のODCB内のビスフェノールA二ナトリウム塩の乾燥スラリーを得た。この塩をリボイラ上の冷温オイルで周囲温度まで冷却した。
【0076】
乾燥したビスフェノールA二ナトリウム塩スラリー(24%固形分スラリー29.2kg、7.18kg、26.37モルの乾重量ビスフェノールA二ナトリウム塩)の一部を第3の容器に入れた。該第3の容器は、撹拌機、バッフル、窒素雰囲気維持手段および凝縮器を備えたオーバヘッドラインを装備した、50ガロン用のオイルジャケット付ステンレスリアクタである。スラリーを十分なODCBで希釈して10%固形分のスラリーを得た。容器のジャケット上に高温オイルを循環させて、システムを乾燥させる試みとして、オーバヘッドのODCBを少量蒸留した。塩基を添加する場合は、リン酸カリウム(微細に粉砕)を用いた。窒素下で攪拌しながら、スラリーを静かに10時間還流させた。
【0077】
ClPAMIを以下のように調製した。第4の容器、すなわち、機械的な撹拌機、窒素雰囲気維持手段、原材料充填用の適切な接続金具および凝縮器を備えたオーバヘッドラインを装備した、50ガロン用の、ガラスで裏打ちされた、オイルジャケット付、バッフル付リアクタに、5質量%の3−クロロフタル酸無水物を含む9.5227kg(52.16モル)の精製4−クロロフタル酸無水物(4ClPA)と、100.8g(0.68モル)のフタル酸無水物と、3.000kg(27.74モル)のメタフェニレンジアミン(mPD)と、0.0110kg(0.067モル)のフェニルホスフィン酸ナトリウムと、周囲温度の60kgのo−ジクロロベンゼン(ODCB)と、を充填した。窒素で1時間、混合物を攪拌・不活性化した。その後、混合物を3時間以上かけて内部温度140℃に加熱し、その温度に30分間維持した。イミド化によって生成した水と一部の溶剤とを容器から蒸留して凝縮させた。その後、反応混合物を2時間以上かけて180℃まで加熱しその温度に1時間維持した。混合物をサンプリングし、HPLC(高圧液体クロマトグラフィ)分析によりClPAMIモノマー純度を求めた。この材料はClPA不足であることが判明し、9.8g(0.054モル)の4−クロロフタル酸無水物をリアクタに添加した。該反応をさらに1時間加熱して再度サンプリングした。この材料は、「化学量論では」、0.19モル%の残留ClPAおよび0.002モル%の残留モノアミン(MA)であると判断された。その後、容器からODCBを蒸留させることにより23%固形分(%固形分は、ClPAMIモノマーと溶剤の合計質量でClPAMIモノマーの質量を割ったものとして定義される)。蒸留液をカールフィッシャー滴定によって水分分析し、容器内で23%固形分が達成されれば、その値は20ppm未満であることがわかった。該反応混合物からサンプルを取りHPLC分析を行って、モノアミド酸(MAA)の存在量を求めた。MAAの量が0.1モル%未満であるため、本反応は完全であると判断された。
【0078】
重合を行い、ポリマーを以下のように分離した。第3の容器内のビスフェノールA二ナトリウム塩スラリーを冷却し、第4の容器(ClPAMIスラリーを含む上記の50ガロン用リアクタ)に移した。ビスフェノールA二ナトリウム塩およびClPAMIの混合物を、容器上の高温オイルジャケットを用いてODCBをオーバヘッドに蒸留することによって10時間以上かけて乾燥させて、約25%固形分のスラリーを得た。その後、触媒(HEGCl、73.19g、0.28モル、292gのODCBに溶解、触媒溶液の水分含量はカールフィッシャー滴定で求めて20ppm)をスラリーに添加して、容器上の高温オイルジャケットを用いて還流(180〜185℃)させた。
【0079】
ポリマーがGPC分析で求めて所望の分子量に達すると、反応混合物を165℃まで冷却し、攪拌しながら、85%の水性HPO(193g、ポリマーの存在量に対して1質量%)で1時間処理した。その後、反応混合物をODCBで希釈してポリマーの10質量%ODCB溶液を得、これを120〜135℃に冷却した。その後、この材料を2μmの焼結金属フィルタでろ過し、沈殿した塩化ナトリウムおよびリン酸塩類を除去して透明な琥珀色のポリマーのODCB溶液を得た。ろ液を攪拌機を装備したオイルジャケット付ステンレス容器に集めた。
【0080】
その後、ポリマー溶液を329gの90℃水に接触させた。容器に移す前に、少量のHPOを水に添加してpHを4〜5に調節した。該二相系を160rpmで5分間混合後、2時間静置した。有機相を別の同じ容器に移した。水相は廃棄した。前述のように、有機相を149kg(329ポンド)の弱酸性水で再度洗浄した。その後、ODCBを蒸留して有機相を30%固体分まで濃縮した。その後、濃縮液を33kg/時(72ポンド/時)で液化真空押出機に供給した。押出機のスクリュ回転数は525rpmであり、押出機バレル上の真空ポートを3mmHgに維持し、ポリマーの融点は430℃であった。ポリマーのストランドを水浴内で冷却し、該ストランドを装置に送って表面水を飛ばし、その後、チョッパーに供給して樹脂ペレットを製造した。実施例18〜21の具体的な条件を下記する。
実施例18
【0081】
実施例18では、KPOを粉砕してビスフェノールA二ナトリウム塩スラリーに添加し、攪拌しながら、還流(180℃)で10時間加熱した。KPOを有するビスフェノールA二ナトリウム塩スラリーをClPAMIスラリーに添加する場合、主としてKPOを構成する大きな粒子(粒径が約1〜5mm)が生成混合物中に存在した。KPOは最終的に分割されないために、OH末端基が309ppmのポリマーが分離されることになった。少量の水がビスフェノールA二ナトリウム塩とKPOが加熱されるリアクタに入って、KPOを凝集させることがその後見出された。水の存在によって、KPOの有効性が低下した(凝集によって)ものと考えられる。
実施例19
【0082】
実施例19では、1質量%の量の水分を含む入手したままのKPOを用い、KPO添加中はこの系への水分の侵入を回避した。ビスフェノールA二ナトリウム塩およびKPOを加熱し180℃で12時間攪拌して、微細に分割されたスラリーを得た。重合反応にこの材料を用いることによって低OH含有材料(63ppmOH)が得られた。
実施例20
【0083】
実施例20では、使用前にKPOを乾燥させて水分含量を100ppm未満とした。ビスフェノールA二ナトリウム塩とKPOを加熱し180℃で12時間攪拌して微細に分割されたスラリーを得た。重合反応にこの材料を用いることによって、低OH含有材料(25ppmOH)が得られた。
実施例21
【0084】
実施例21では、固形KPOの代わりに水性KPOの使用、およびアミン末端基のキャップ化のためのキャッピング剤の使用について調査した。
【0085】
POを有するビスフェノールA二ナトリウム塩を以下のように調製した。実施例18〜20で説明したように、ビスフェノールA二ナトリウム塩を調製した。50ガロン用のオイルジャケット付ステンレスリアクタに、ODCB中の塩の%固形分が15質量%(7.822kgのビスフェノールA二ナトリウム塩が存在)であるビスフェノールA二ナトリウム塩のODCBスラリーを充填した。このスラリーに窒素を70分間散布し、次に170℃まで加熱した。50質量%のリン酸カリウム水溶液(KPO、420.8gの溶液中210.4g、0.99mole)を高温のODCB混合物内に50分間以上噴霧した。噴霧は、平均粒径が40μの微細滴噴霧とした。噴霧は、容器内の材料の表面に向けて行った。水とODCBをオーバヘッドではね散らせ濃縮した。容器には、容器に返送する遠心ポンプに接続された底部接続金具を装備した。容器の内容物をポンプを経由して再循環させて、ビスフェノールA二ナトリウム塩とKPO固形分の粒径を効果的に低減させた。ODCBをオーバヘッドで蒸留させてこの混合物を20%まで濃縮した。容器内の材料が19.9%固形分のとき、オーバヘッドにおける水分量は16ppmであった。容器を120℃まで冷却して12時間撹拌し、その後、室温まで冷却した。
【0086】
以下の量を用い、実施例18〜20で説明したようにClPAMIを調製した。4−ClPA(9.8769kg、54.10モル)、3−ClPA(0.5045kg、2.76モル)、フタル酸無水物(PA、4.9g、0.033モル)、m−フェニレンジアミン(mPD、3.000kg、27.74モル)、SPP(11g、0.067モル)および68.7kgのODCB。ODCBを蒸留して最終生成物を20%固体分まで濃縮した。生成物の最終化学量論は、0.33mol%の過剰4−MA(0.184mol)と検知不能量の4−ClPAであった。混合物を周囲温度まで冷却した。
【0087】
POを含むビスフェノールA二ナトリウム塩スラリーとClPAMIを配合し、少量のODCBを容器から蒸留させることによって配合した混合物を乾燥させ、その後、重合触媒(HEGCl、75.8g、300mLの乾燥ODCB中0.287モル)を添加することによって重合反応を進行させた。発熱反応が続いて起こった。反応を180℃×6時間で行い、分析(ゲルパーミエションクロマトグラフィ、GPC)から、ポリマーのMwは21,000ダルトンであることが示された。その後、KPOで処理された追加割当のビスフェノールA二ナトリウム塩スラリー(387g、1.42モル)を容器に添加し、混合物をさらに6時間加熱してMwを34,350ダルトンとした。その後、KPOで処理した追加割当のビスフェノールA二ナトリウム塩スラリー(105g、0.386モル)を容器に添加し、混合物をさらに12時間加熱してMwを46,930ダルトンとした。その後、フタル酸無水物(PA、50g、0.34モル、出発ClPAMI混合物に存在する4−MA量に対して1.85当量)を容器に添加して遊離アミン末端基をキャップした。反応をさらに3時間×180℃で加熱した。その後、ポリマーをリン酸で処理し、実施例18〜20で説明したように分離した。
【0088】
得られたポリマーの分子量は46,700ダルトンであり、水酸末端基含量は57ppm、アミン末端基含量は13ppm、加速熱老化試験方法により求めたRTI等級は170℃であった。
【0089】
この実施例によって、水性KPOを用いたビスフェノールA二ナトリウム塩の処理、遠心ポンプを用いた塩粒子の粒径低減、重合反応混合物の乾燥の重要性、アミンリッチな重合反応を行い、その後アミンをPAでキャップ化し、合理的な時間内で、最終的に低OHおよびNH末端含量の樹脂を得る能力が実証された。
【0090】
実施例18〜21の結果を以下の表4に要約する。
【表4】

実施例22〜49
【0091】
実施例22〜40では、ビスフェノールA二ナトリウム塩の化学量論がポリエーテルイミドの水酸末端基量に与える影響について調査した。
【0092】
ビスフェノールA二ナトリウム塩を以下のように調製した。2L用の3首丸底フラスコに必要量のビスフェノールAを入れて、約15%固形分の所望の化学量論(表5参照)の水性二ナトリウム塩約0.5モルを調製した。ビスフェノールAは、秤量直前に基準分銅でチェックした有能な天秤で計量してフラスコに入れた。一般に、ビスフェノールAは400ppm未満の水分を含んでいるが、この誤差は無視した。脱気水とフラスコ、および1NのAnachemia Acculute(部品番号83112−000、0.998〜1.002モルのNaOHを含む)を、窒素下のグローブボックスに入れた。小数点第2位の能力を備えた天秤もグローブボックスに入れた。
【表5】

【0093】
NaOHを注意深くフラスコに添加し、脱気水を用いて腐食剤をAcculuteプラスティックボトルからフラスコに移し終えた。水とAcculuteボトルの内容物を混合した合計の質量は約800gであった。ドライボックス内でフラスコの栓をし、研究所フードに移した。
【0094】
フラスコには、機械的攪拌機と上端に還流凝縮器が付いたディーンスターク受液器とが取り付けられた。フラスコに取り付けられたディーンスタークの腕を電気的に加熱したテープで包んだ。第3の首に窒素アダプタを取り付けた。窒素の緩やかな流れを起こした。その後、研究室ジャッキに据えられた、温度が制御されたオイルバス中にフラスコを浸した。丸底フラスコの底部からオイルバスを完全に下げられるようにセットアップした。
【0095】
ビスフェノールAが溶解するまで混合物を室温で攪拌した。ビスフェノールAリッチな塩では、ビスフェノールAの溶解を有効とするために、周期的に緩やかな加熱が必要となる。液面と側面のネックジョイントの底部間に約1インチのヘッドスペースができる時点まで、フラスコに脱気試薬グレードのトルエンを添加する。次に、油温を145℃に上げた。トルエンと水をフラスコから蒸留し、水を受液器の腕に集めた。水を除去し、フラスコに戻らないようにした。このように約6時間かけて大量の水を除去した。約2/3の水を除去後、新鮮な脱気トルエンを添加した。6時間の還流の後、非常に僅かな水を蒸留した。ビスフェノールA二ナトリウム塩が容器側面に凝集した。熱を除去し、窒素下、材料を一晩かけて室温まで冷却した。
【0096】
塩スラリー上に窒素を維持しながら、フラスコの側面と撹拌軸を大きな湾曲したへらで注意深くこすった。ケーキ化した塩を除去した時点で、ディーンスターク受液器と窒素アダプタを初期の構成に戻した。ほぼフラスコを満たすまででありながら、蒸気逃がしに十分なヘッドスペースが残るように、脱気トルエンをフラスコに添加した。温度を145〜150℃に設定した温度制御オイルバスに容器を戻し、収集アーム内のトルエンを容器に戻しながら、かつサイドアームに集められた水を取り除きながら、緩やかな窒素スイープでトルエン/水を蒸留した。還流を4〜5時間行った後、大部分の水を除去して受液器の収集アーム内のトルエンはほとんど透明であった。この時点で、1Lのトルエンをオーバヘッドで蒸留し、サイドアームから回収した(トルエンは容器内には戻されない)。約500mLの脱気されたボトル入りの試薬グレードトルエンをフラスコに添加し、約500mLのスラリーが容器内に残るまで蒸留により除去した。
【0097】
この系での窒素スイープを維持しながら、オイルバスを容器から取り除いた。材料を冷却した。容器に栓をして窒素下に維持されているグローブボックスに移した。その後、スラリーを1L用の1−首丸底フラスコに移した。
【0098】
その後、フラスコを素早くロータリエバポレータ上に置き、徐々に75〜100mmHgの真空とした。フラスコを、温度を50〜60℃に設定した温度制御オイルバス内に沈めた。大量のトルエンを除去して乾燥した塩を得た。フラスコをオイルバスから取り除き、窒素を後からエバポレータに添加した。フラスコを取り除いて振動させ、ケーキを砕いた。ロータリエバポレータ上のバキュームトラップとバルブレシーバを空にし、アセトンですすいで風で乾燥させて元に戻した。フラスコを再度、ロータリエバポレータ上に載せて、十分な真空下(<25mmHg)に置いた。フラスコを150℃に設定したオイルバス内で1時間加熱して乾燥した流動性のない固体ビスフェノールA二ナトリウム塩を得た。
【0099】
実施例18〜21で説明したようにClPAMIを合成した。ClPAMI/ODCBスラリーの一部(2kg)を室温まで冷却した。大きなブフナー漏斗上にWhatman Number1濾紙を用いてスラリーを真空ろ過し、ウエットケーキを得た。1Lの温ODCB(90℃)をフィルタ内のケーキに添加した。別の1Lの90℃ODCBを用いてすすぎを繰り返した。その後、1Lの室温トルエンを用いて漏斗内のウエットケーキをすすいで、ケーキから大部分のODCBを除去した。その後、ケーキをアルミニウム鍋に入れた。この鍋を、150℃の真空(10mm)オーブン内に12時間入れた。鍋をオーブンから取り出し冷却して乾燥したClPAMIモノマーを得た。
【0100】
重合を以下のように行った。充填はすべてガラス器を組み立てて、ドライボックスの中で行った。栓とガスバルブ7を装備した、250mL用の3首丸底フラスコに、6.09g(0.0224モル)の特定の化学量論ビスフェノールA二ナトリウム塩と10g(0.0228モル)のClPAMI(上記のように調製)を充填した。フラスコに65gのODCBを充填した。その後、フラスコに撹拌軸と軸受を取り付けた。フラスコをドライボックスから取り出し、側面の首に窒素アダプタを直ちに取り付けた。残りの栓を浮かせて圧力を逃がした。その後、容器に、上端に還流凝縮器が付いたディーンスターク受液器を取り付けた。容器のヘッドスペースを経由して窒素を緩やかにスイープさせた。その後、外部のオイルバスを用いて反応を200℃に加熱し、緩やかな窒素スイープを行って、ODCB混合物を共沸的に乾燥させた。ODCBを混合物から除去してその濃度を30質量%固形分(ODCB25g未満)とした。材料がフラスコの側面上や攪拌軸上に跳ねないように、混合物を緩やかに攪拌した。カールフィッシャー分析によりオーバヘッドが乾燥した時点で、90mg(1モル%)のHEGClを溶液に入れると、溶液は、30分以内に褐色を帯び、90分後には最終的に金色になった。2時間後に混合物をサンプリングしてMwを測定し、その後、反応が水平状態(水平状態=最後の3つの時間ごとサンプルの標準偏差が500ダルトン未満)に達するまで、毎時間ごと測定した。Mwが45K未満であれば、140mgのビスフェノールA二ナトリウム塩による修正を行ってポリマーのMwを55,000とした。
【0101】
その後、反応を160℃に加熱し、170mg(ポリマーに対して1質量%)の85%水性HPOで処理した。その酸を添加した時点で、混合物を窒素でパージして(5分間)水分を除去した。反応をさらに1時間加熱した。その後、反応は冷却して、CHCl(約70mL)で10質量%に希釈した。その後、Whatman1μmガラスフィルタディスクを用いたブフナー漏斗上で混合物をろ過した。その後、濾液をブレンダに移して等モル量のヘキサンを添加して混合し、溶液からポリマーを沈殿させた。混合物をろ過し、分離したポリマーを、真空下、165℃×24時間で乾燥させて乾燥ポリマーパウダーを得た。
【0102】
得られたポリマーのOH末端含量をP31NMRで分析した。結果を表6に示す。
【表6】

実施例41〜49の考察
【0103】
この結果から、一部のポリエーテルイミドだけのOH含量が0超〜100ppm以下であり、相対温度指数が170℃以上であることが示されている。2%〜4%NaOH過剰の腐食性が高い塩類は、OH末端基含量が60ppmまでのポリマーを生成した。アミン末端基組成物はわずかに上昇した。分離されたポリマーは加速熱老化試験方法で熱老化し、OH末端含量が非常に低い樹脂と同様に、熱老化することが示された。2モル%以上過剰のNaOHリッチのビスフェノールA二ナトリウム塩は、良好に熱老化するポリマーが得られるレベルまでOH末端量を低下させることが必要であった。さらに、実施例41〜49で製造されたポリマーは、アミン末端基の上昇を示した。
実施例50〜52
【0104】
上記のように重合を行い、2つの異なる形態の4−ClPAで処理した。1つの形態では、Mw形成の終了1時間後に、1質量%(生成されたポリマーの質量に対して)の4−ClPAを180℃で添加した。混合物を2時間加熱後、リン酸で処理して上記のように分離した。もう1つの形態では、Mw形成の終了1時間後に、重合混合物をリン酸で急冷し、その後、1質量%(生成したポリマーの質量に対して)の4−ClPAを180℃で反応混合物に添加し、180℃×2時間攪拌した。次に、ポリマーを加速熱老化試験方法で熱老化させ、そのデータを表7に示す。
【表7】

実施例53〜56
【0105】
OHが100ppm未満の樹脂を生成するための、添加KPOと腐食性が高い塩との相乗効果について調査した。上記のように重合を行った。水酸化ナトリウムが1モル%リッチなBPA二ナトリウム塩を調製した。この塩を厳密に乾燥させた後、0.25〜1.0質量%(生成したポリマー質量に対して)の固体KPOと相間移動触媒(ヘキサエチルグアニジニウムクロリド、ビスフェノールA二ナトリウム塩の量に対して1モル%)の存在下、ClPAMIと重合させた。BPA二ナトリウム塩の製造に用いた過剰腐食剤の量は、生成したポリマー量に対して0.12質量%であった。
【0106】
結果を以下の表8に示す。
【表8】

代替実施例
【0107】
これらの実施例の目的は、安定剤の使用によってクロロ置換ポリエーテルイミドのRTI特性が改善するかどうかを判断することであった。不思議なことに、さらに以下に説明するように、安定剤の使用では、RTIが170℃以上のクロロ置換ポリエーテルイミドは得られなかった。
【0108】
より具体的には、水酸末端基含量が100ppm超のポリエーテルイミド樹脂の熱的安定性問題に対処するために、安定剤の使用について調査した。これらの実施例はすべて比較例であり、前述の比較実施例と区別するために「代替実施例」と呼ぶ。
【0109】
異なる2つのポリエーテルイミド樹脂を用いた。クロロ置換プロセスで製造された1つのポリエーテルイミド樹脂(樹脂III)の、塩素末端基を含む水酸末端基の含量は350ppmであり、それは、相間移動触媒の存在下、ClPAMIとODCB中のビスフェノールA二ナトリウム塩との最初の反応から分離され、RTI等級は160℃であった。もう1つのポリエーテルイミドは、米国特許第4,417,044号(権利者:SABIC Innovative Plastics)に記載されているように、ビスフェノールA二無水物、m−フェニレンジアミンおよびフタル酸無水物から調製された市販グレードULTEM(登録商標)1000−1000材料であり、水酸末端基含量は10ppm未満で塩素末端基はなく、RTI等級は170℃である。
代替実施例1〜15
【0110】
表9に示す安定剤の表に示した量を、OH末端基含量が350ppmの式(III)のポリマーに配合した。これらの量は、組成物の全質量に対する質量%である。
【表9】

技術&手順
【0111】
安定剤を、水酸末端基含量が350ppmのポリエーテルイミドと乾燥混合し、12バレルを備えた、18mmCoperion ZSK−18MegaLab二軸スクリュ押出機(高温バージョン)に押出した。この押出機は、バレルNo.1に供給、バレルNo.2に二軸スクリュ側フィーダおよびバレルNo.11に吸引孔を有し、長さと径比(L/D)は48であり、調整可能な回転スクリュフィーダによって供給される。この押出機を表10に示す以下の条件下で運転した。
【表10】

【0112】
温度230℃での加熱老化試験方法、すなわち、前述の加熱老化試験方法を用いて、分離したペレット老化させた。配合されたペレットの最大分子量をゲルパーミエションクロマトグラフィ(GPC)で、熱老化前、老化6日後および13日後に測定した。水酸末端基含量が350ppmのポリエーテルイミドの、熱老化前、老化6日後および13日後の分子量を比較のために示す。同様に、水酸末端基含量が10ppm未満のポリエーテルイミドの、熱老化前、老化6日後および13日後の分子量も示す。熱老化結果を表11に示す。
【表11】

【0113】
種々の安定剤を含む、水酸末端基含量が350ppmの樹脂の熱老化性能には明らかな改善は見られず、MZPおよびSPPだけが、Mpの時間変化における低下で測定して、熱安定性のわずかな改善を示した。しかしながら、ポリマー中にMZPおよびSPPを配合すると、外観がかすんだ製品ができるため、安定剤として使用できない。どの安定剤からも、水酸末端基含量が10ppm未満の樹脂の熱安定性能は得られなかった。
代替実施例16〜51
【0114】
表12に示す量の安定剤のさらなる組み合わせを、実施例1〜15で説明したように、350ppmの水酸末端基を含む式(III)の樹脂に配合した。この配合プロセスによってペレット形態の樹脂を得た。樹脂中に配合される安定剤の量は、組成物の全質量に対する質量%である。
【表12】

【0115】
温度230℃での加熱老化試験方法、すなわち、前述の加熱老化試験方法を用いて、得られた配合ペレットを老化させた。配合されたペレットの、熱老化前、老化6日後および13日後の分子量を測定した。水酸末端基含量が350ppmのポリエーテルイミドの、熱老化前、老化6日後および13日後の分子量を比較のために示す。出発ペレットおよび熱老化ペレットをゲルパーミエションクロマトグラフィ(GPC)で分析して最大分子量(Mp)を求めた。結果を表13に示す。
【表13】

【0116】
Irgafos12、Naugard445およびポリフェニレンスルフィドを用いることによって、樹脂の熱老化性能のある程度の改善が見られた。無機塩基である炭酸ナトリウムおよびリン酸三ナトリウムも改善を示したが、ペレットはかすむかあるいは不透明であり、安定剤として使用できない。有用な熱安定剤は、樹脂のヘイズや、不透明性あるいは色に影響を与えられない。これらの実施例16〜51での最も好ましい安定剤についてさらに研究した。
代替実施例52〜94
【0117】
表14および15に示した安定剤および安定剤の組み合わせを、表に示した量で、350ppmの水酸末端基を含む式(III)の樹脂に配合した。量は、組成物の全質量に対する質量%である。
【表14】

【表15】

【0118】
代替実施例1〜15で上記に説明したように、得られた配合樹脂ペレットを試験した。結果を表16に示す。
【表16】

【0119】
ガラス転移点、多分散度指数、樹脂色、樹脂色熱安定性、ヘイズまたは不透明性の存在、配合時の臭気、相分離、成形上の問題およびその他の要因を基にした評価に加えて、上記のスクリーニングから、Irgafos12、Naugard445およびUltranox626が、全体として、熱老化性能の最良の改善を示すとの結論に至り、従って、それらを実際のRTI試験用の処方剤として選択した。残念なことに、さらに以下に議論する代替実施例95〜100に見られるように、選択した安定剤は機能しなかった。
代替実施例95〜100
【0120】
表17に示す量のIrgafos12、Naugard445およびUltranox626を、代替実施例1〜15で説明したように、350ppmの水酸末端基を含む式(III)の樹脂に配合した。その後、対照材料と共に、配合されたペレットをアメリカ保険業者安全試験所RTI試験UL746Bによって試験した。押出条件の試験を含む広範囲な試験後で、安定剤を含む組成物のRTI値は、安定剤を含まないベースのポリエーテルイミド(水酸末端基含量は350ppm)と比較して、改善が見られなかった。表17に示したすべての材料のRTIは160℃以下であった。100ppm超の水酸末端基を含む式(III)の樹脂の相対温度指数を上げるための安定剤によるアプローチは放棄した。
【表17】

【0121】
本発明を特定の好適なバージョンを参照して詳細に説明したが、他の変形も可能である。従って、添付の請求項の精神および範囲は、本明細書に含まれるバージョンの記載に限定されるべきではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の構造単位を含むポリエーテルイミドであって、
【化1】

式中、RおよびR’は、直鎖または環式のC2−20アルキル基あるいは置換または未置換のC6−30アリール基であり得、nは1〜40の値であり、
前記ポリエーテルイミドのOH含量は0超〜100質量ppm以下であり、
前記ポリエーテルイミドの相対温度指数は170℃以上であり、
前記ポリエーテルイミドの塩素含量は0ppm超であることを特徴とするポリエーテルイミド。
【請求項2】
塩素含量が0超〜4,000ppmであることを特徴とする請求項1に記載のポリマー。
【請求項3】
前記ポリエーテルイミドの難燃性等級は、1.5mmでV0であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のポリマー。
【請求項4】
前記ポリエーテルイミドの難燃性等級は、0.8mmでV0であることを特徴とする請求項3に記載のポリマー。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のポリエーテルイミドと追加のポリマーとを含むことを特徴とする組成物。
【請求項6】
前記ポリマーは、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリオレフィン、ポリスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリアミド、ポリアミドイミド、請求項1に記載のポリエーテルイミド以外のポリイミドおよびこれらの組み合わせから構成される群から選択されることを特徴とする請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
式(III)の構造単位を有し、
【化2】

式中、nは1〜40の整数であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のポリエーテルイミド。
【請求項8】
請求項7に記載のポリエーテルイミドと追加のポリマーとを含むことを特徴とする組成物。
【請求項9】
前記ポリマーは、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリオレフィン、ポリスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリアミド、ポリアミドイミド、請求項1に記載のポリエーテルイミド以外のポリイミドおよびこれらの組み合わせから構成される群から選択されることを特徴とする請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
希釈剤としてのo−ジクロロベンゼンまたはアニソール中、触媒活性化量の相間移動触媒の存在下で、実質的に等モル量の式HO−R’−OHのジヒドロキシ化合物の二ナトリウム塩とビスイミドのスラリーとを接触させて、前記ビスイミドと二ナトリウム塩を重合するステップを備える請求項1に記載のポリエーテルイミドの調製方法であって、
前記ビスイミドと二ナトリウム塩は、アルカリ金属炭酸塩、アルキル水素化物、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属リン酸塩、アルカリ金属重炭酸塩、アルカリ金属酢酸塩およびこれらの組み合わせから構成される群から選択される塩基の存在下で重合され、
前記ビスイミドのスラリーは、式HN−R−NHのジアミンと、クロロフタル酸無水物と、o−ジクロロベンゼンまたはアニソールと、を含み、固形分含量が約5質量%以上の混合物と、選択的なイミド化触媒との反応生成物を含み、
前記塩基は、請求項1に記載のポリエーテルイミドの生成に十分な量で添加されることを特徴とする方法。
【請求項11】
前記ビスイミドは、クロロフタル酸無水物と過剰量または化学量論ジアミンとの反応によって製造されることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記方法は、キャッピング剤を添加するステップとアミン基をキャップ化するステップとをさらに備えることを特徴とする請求項10または請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記キャッピング剤は、クロロフタル酸無水物、フタル酸無水物、置換無水フタル酸、アルキル無水物、環式アルキル無水物、置換アリール無水物、アシルハロゲン化アルキル、アシルハロゲン化アリール、アルデヒド、ケトン、エステル、イソシアネート、クロロギ酸エステル、スルホニルクロリドおよびこれらの組み合わせから構成される群から選択されることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記二ナトリウム塩は、過剰な水酸化ナトリウムを有し腐食性が高いことを特徴とする請求項10乃至請求項13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記塩基はKPOであることを特徴とする請求項10乃至請求項14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
前記KPOは、固体または水溶液の形態で添加されることを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記KPOは水溶液の形態で添加され、前記スラリーへの添加前に、ビスフェノールA二ナトリウム塩または1,3−ビス[N−(4−クロロフタルイミド)]ベンゼンで乾燥されることを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記KPOは固体として添加されることを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項19】
添加された前記KPOの粒径は0超〜400μmであることを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項20】
添加された前記KPOの粒径は0超〜75μm未満であることを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記アルカリ金属水酸化物は水酸化ナトリウムであることを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項22】
前記二ナトリウム塩はビスフェノールA二ナトリウム塩であり、前記ビスイミドスラリーは1,3−ビス[N−(4−クロロフタルイミド)]ベンゼンのスラリーであり、前記相間移動触媒はヘキサアルキルグアニジニウムクロリドであり、前記1,3−ビス[N−(4−クロロフタルイミド)]ベンゼンのスラリーは、m−フェニレンジアミンと、4−クロロフタル酸無水物と、o−ジクロロベンゼンまたはアニソールとを含み、固形分含量が約5質量%以上である混合物と、選択的なイミド化触媒との反応生成物を含むことを特徴とする請求項10乃至請求項21のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
式(III)の構造を有するポリエーテルイミドを含むポリマーであって、
【化3】

前記ポリエーテルイミドのOH含量は0超〜100ppm以下であり、
前記ポリエーテルイミドの相対温度指数は170℃以上であり、
前記ポリエーテルイミドの塩素含量は0超〜4000ppm以下であり、
前記ポリエーテルイミドは、希釈剤としてのo−ジクロロベンゼンまたはアニソール中、触媒活性化量の相間移動触媒の存在下で、実質的に等モル量のビスフェノールA二ナトリウム塩と1,3−ビス[N−(4−クロロフタルイミド)]ベンゼンのスラリーとを接触させて、前記1,3−ビス[N−(4−クロロフタルイミド)]ベンゼンとビスフェノールA二ナトリウム塩を重合するステップを備える方法で製造され、
前記1,3−ビス[N−(4−クロロフタルイミド)]ベンゼンと前記ビスフェノールA二ナトリウム塩は、アルカリ金属炭酸塩、アルキル水素化物、アルカリ金属リン酸塩、アルカリ金属重炭酸塩、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属酢酸塩およびこれらの組み合わせから構成される群から選択される塩基の存在下で重合され、
前記1,3−ビス[N−(4−クロロフタルイミド)]ベンゼンのスラリーは、m−フェニレンジアミンと、4−クロロフタル酸無水物と、o−ジクロロベンゼンまたはアニソールと、を含み、固形分含量が約5質量%以上である混合物と、選択的なイミド化触媒との反応生成物を含み、
前記塩基は、請求項1に記載のポリエーテルイミドの生成に十分な量で添加されることを特徴とするポリマー。
【請求項24】
請求項1乃至請求項4のいずれかまたは請求項7に記載のポリマーを含むことを特徴とする物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2013−516523(P2013−516523A)
【公表日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−547227(P2012−547227)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【国際出願番号】PCT/US2010/062191
【国際公開番号】WO2011/082147
【国際公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【出願人】(508171804)サビック・イノベーティブ・プラスチックス・アイピー・ベスローテン・フェンノートシャップ (86)
【Fターム(参考)】