説明

相対角度検出装置および相対角度検出装置の製造方法

【課題】製造するために用いられる材料量が低減された軟磁性体を備える装置を提供する。
【解決手段】2つの回転軸の相対角度を検出する相対角度検出装置であって、2つの回転軸の一方の回転軸である第1の回転軸120に設けられた磁石22と、磁石22により形成される磁界内となるように2つの回転軸の他方の回転軸である第2の回転軸130に設けられ、磁石22とともに磁気回路を形成するヨーク30と、磁気回路の磁束密度を検出する磁気センサ40と、を備え、ヨーク30は、磁性粉末と合成樹脂とを混合した材料を用いて射出成形されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、相対角度検出装置および相対角度検出装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電動パワーステアリング装置に用いられるトルク検出装置(相対角度検出装置)の製造歩留まりを向上する技術が提案されている。
例えば、特許文献1に記載のトルク検出器は、以下のように構成されている。すなわち、連結軸を介して同軸に連結された第1の軸及び第2の軸と、第1の軸または連結軸の一端に固定された永久磁石と、第2の軸または連結軸の他端に固定され、永久磁石と共に磁気回路を形成する一対のセンサヨークと、永久磁石及びセンサヨークと共に磁気回路を形成する一対の集磁ヨークと、センサヨーク及び集磁ヨークが誘導した磁束を検出する磁束検出器と、を有し、前記第1の軸及び第2の軸のうちいずれか一方へ加えられたトルクを磁束検出器の出力に基づいて検出するトルク検出器であって、一対のセンサヨークは、平板部材から一対の帯状のセンサヨーク部材がそれぞれ打ち抜かれ、一対の帯状のセンサヨーク部材が各々環状に湾曲させられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−168727号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
磁石とともに磁気回路を形成するヨークなどの軟磁性体に用いられる材料は一般的に高価であるため、安価な装置を得るためには、軟磁性体を製造するための材料量は少ないことが望ましい。
本発明は、製造するために用いられる材料量が低減された軟磁性体を備える装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる目的のもと、本発明は、2つの回転軸の相対角度を検出する相対角度検出装置であって、前記2つの回転軸の一方の回転軸に設けられた硬磁性体と、前記硬磁性体により形成される磁界内となるように前記2つの回転軸の他方の回転軸に設けられ、当該硬磁性体とともに磁気回路を形成する軟磁性体と、前記磁気回路の磁束密度を検出する検出手段と、を備え、前記軟磁性体は、磁性粉末と合成樹脂とを混合した材料を用いて射出成形されていることを特徴とする相対角度検出装置である。
【0006】
ここで、前記軟磁性体の材料となる磁性粉末には、ニッケルが含まれているとよい。また、前記軟磁性体の材料となる磁性粉末には、ニッケルが40%以上含まれているとよい。
また、前記軟磁性体は、前記硬磁性体の外形よりも大きな孔が内側に形成された円板状の円環部と、当該円環部における当該硬磁性体側の部位から前記一方の回転軸の軸方向に突出するように形成された突起部と、を有し、前記突起部における外側の部位は、先端部側から前記円環部の方へ行くに従って徐々に拡径しているとともに、当該突起部における内側の部位は、前記硬磁性体に対する距離が当該先端部側から当該円環部にかけて同じであるとよい。
【0007】
また、他の観点から捉えると、本発明は、同軸的に配置された2つの回転軸の一方の回転軸に設けられた硬磁性体と、当該硬磁性体により形成される磁界内となるように当該2つの回転軸の他方の回転軸に設けられ、当該硬磁性体とともに磁気回路を形成する軟磁性体と、当該磁気回路の磁束密度を検出する検出手段とを備え、当該2つの回転軸の相対角度を検出する相対角度検出装置の製造方法であって、前記軟磁性体は、磁性粉末と合成樹脂とを混合した材料を用いて射出成形にて製造することを特徴とする相対角度検出装置の製造方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、軟磁性体を製造するのに用いる材料量を低減させることができ、安価な装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施の形態に係る電動パワーステアリング装置の外観図である。
【図2】電動パワーステアリング装置の概略構成図である。
【図3】電動パワーステアリング装置の断面図である。
【図4】図3におけるX部の拡大図である。
【図5】実施の形態に係る相対角度検出部の主要部品の概略構成図である。
【図6】相対角度検出部を、図3におけるY方向から見た図である。
【図7】トルク検出部の出力部が出力する第1のトルク信号および第2のトルク信号と、操舵トルクとの関係を示す図である。
【図8】ステアリング装置のECUの概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための最良の形態(実施の形態)について詳細に説明する。
図1は、実施の形態に係る電動パワーステアリング装置100の外観図である。図2は、電動パワーステアリング装置100の概略構成図である。図3は、電動パワーステアリング装置100の断面図である。なお、図2においては、後述するECU10のカバー15を省略して示している。
本実施の形態に係る電動パワーステアリング装置(以下、「ステアリング装置」と称す。)100は、コラムアシスト式の装置であり、右ハンドル仕様の、例えば自動車などの乗り物に適用される装置である。ステアリング装置100は、ステアリングホイール(図示せず)に連結されたステアリングシャフト101と、このステアリングシャフト101の回転半径方向の周囲を覆うステアリングコラム105と、を備えている。
【0011】
また、ステアリング装置100は、後述するウォームホイール150およびウォームギヤ161を収納するギヤボックス110と、ステアリングコラム105およびギヤボックス110を、乗り物の本体フレームに直接的または間接的に固定するブラケット106と、を備えている。
また、ステアリング装置100は、ステアリングホイールに加える運転者の操舵力をアシストする力を付与する電動モータ160と、電動モータ160の作動を制御する制御装置の一例としての電子制御ユニット(以下、「ECU」と称する場合もある。)10と、運転者の操舵トルクTを検出するトルク検出装置20と、を備えている。
【0012】
ステアリングシャフト101は、上端がステアリングホイール(図示せず)に連結される第1の回転軸120と、この第1の回転軸120とトーションバー140を介して同軸的に連結された第2の回転軸130とを有している。第2の回転軸130には、例えば圧入などによりウォームホイール150が固定されている。このウォームホイール150は、ギヤボックス110に固定された電動モータ160の出力軸に連結されたウォームギヤ161と噛み合っている。
【0013】
ギヤボックス110は、第1の回転軸120を回転可能に支持する第1部材111と、第2の回転軸130を回転可能に支持するとともに第1部材111に例えばボルトなどにより結合される第2部材112と、を有している。第1部材111は、電動モータ160を取り付ける部位であるモータ取付部111aと、ECU10を取り付ける部位であるECU取付部111bと、を有している。
【0014】
以上のように構成されたステアリング装置100においては、トルク検出装置20が、第1の回転軸120と第2の回転軸130との相対回転角度に基づいて操舵トルクTを検出し、ECU10が、検出された操舵トルクTに基づいて電動モータ160の駆動を制御し、その回転駆動力をウォームギヤ161、ウォームホイール150を介して第2の回転軸130に伝達する。これにより、電動モータ160の発生トルクが、ステアリングホイールに加える運転者の操舵力をアシストする。
【0015】
次に、トルク検出装置20について詳述する。
トルク検出装置20は、第1の回転軸120と第2の回転軸130との相対回転角度を検出する相対角度検出部21と、相対角度検出部21が検出した相対回転角度に基づいて操舵トルクTを検出するトルク検出部50と、を有している。
【0016】
先ずは、相対角度検出部21について説明する。
図4は、図3におけるX部の拡大図である。図5は、実施の形態に係る相対角度検出部21の主要部品の概略構成図である。図6は、相対角度検出部21を、図3におけるY方向から見た図である。なお、図6においては、ブラケット60は省略している。
相対角度検出部21は、第1の回転軸120に取り付けられる硬磁性体の一例としての磁石22と、磁石22が形成する磁界内に配置され、磁石22とともに磁気回路を形成する軟磁性体の一例としてのヨーク30を有している。また、相対角度検出部21は、磁石22およびヨーク30にて形成される磁気回路中の磁束密度を検出する磁気センサ40と、ヨーク30を支持するブラケット60と、を有している。
【0017】
磁石22は、円筒状であり、図5に示すように、第1の回転軸120の周方向にN極とS極とが交互に配置されるとともに周方向に着磁されている。この磁石22は、カラー23を介して第1の回転軸120に取り付けられている。つまり、磁石22がカラー23に固定されており、カラー23が第1の回転軸120に固定されている。そして、磁石22は第1の回転軸120とともに回転する。なお、磁石22の第1の回転軸120の軸方向の長さは、ヨーク30の長さよりも長い。
【0018】
ヨーク30は、第1のヨーク31と、第2のヨーク32と、を有している。
第1のヨーク31は、磁石22の外径よりも大きな径の孔が内側に形成された円板状の第1の円環部31aと、この第1の円環部31aから第1の回転軸120の軸方向(以下、単に「軸方向」と称する場合もある。)に伸びるように形成された複数の第1の突起部31bとを有している。第1の突起部31bは、磁石22の周方向には、この磁石22の外周面に沿うように湾曲している。
第2のヨーク32は、磁石22の外径よりも大きな径の孔が内側に形成された円板状の第2の円環部32aと、この第2の円環部32aから軸方向に伸びるように形成された複数の第2の突起部32bとを有している。第2の突起部32bは、磁石22の周方向には、この磁石22の外周面に沿うように湾曲している。
【0019】
第1のヨーク31の第1の突起部31bおよび第2のヨーク32の第2の突起部32bは、磁石22のN極およびS極と同数形成されている。つまり、磁石22のN極およびS極がそれぞれ例えば12個である場合には、第1の突起部31bも12個形成されており、第2の突起部32bも12個形成されている。そして、この第1の突起部31bおよび第2の突起部32bは、第1の回転軸120の回転半径方向においては、図4,図6に示すように、磁石22の外周面と対向するようにこの外周面よりもやや外側に配置されており、その第1の突起部31bおよび第2の突起部32bの磁石22と対向する面は、第1の回転軸120の回転軸に直交する方向に見ると長方形である。第1の突起部31bと第2の突起部32bとは、第1の回転軸120の周方向に交互に配置されている。
【0020】
そして、本実施の形態に係るトルク検出装置20においては、トーションバー140に操舵トルクTが加わっていない状態、つまりトーションバー140に捩れが生じていない中立状態のときに、図6に示すように、第1の回転軸120の周方向において、時計回転方向に見た場合に磁石22のN極とS極との境界線と第1のヨーク31の第1の突起部31bの周方向の中心が一致するように配置されている。
【0021】
第2のヨーク32の第2の突起部32bは、中立状態のときに、第1の回転軸120の周方向において、図6に示すように、時計回転方向に見た場合に磁石22のS極とN極との境界線と第2の突起部32bの周方向の中心が一致するように配置されている。そして、トーションバー140に操舵トルクTが加わってトーションバー140に捩れが生じ、第1の突起部31bが磁石22のN極あるいはS極と対向する場合に、第2の突起部32bは、第1の突起部31bが対向する磁極とは異なる極性の磁極に対向する。
【0022】
ブラケット60は、第2の回転軸130の軸方向に伸びる薄肉円筒状の軸方向部位61と、軸方向部位61から第2の回転軸130の回転半径方向に伸びる円板状の半径方向部位62とを有する。そして、ブラケット60の軸方向部位61が第2の回転軸130に圧入、溶接、カシメあるいはねじ止めされることにより、軸方向部位61が第2の回転軸130に固定されている。これにより、ヨーク30は、第2の回転軸130に固定される。
【0023】
磁気センサ40は、後述するトルク検出部50の検出用基板50aを介してギヤボックス110に固定されており、軸方向において、第1のヨーク31の第1の円環部31aと第2のヨーク32の第2の円環部32aとの間に配置されている。磁気センサ40は、第1のヨーク31と第2のヨーク32との間の磁束密度を検出し、検出した磁束密度を電気信号(例えば電圧信号)に変換して出力するセンサであり、磁気抵抗素子、ホールIC、ホール素子などを例示することができる。
【0024】
次に、トルク検出部50について説明する。
トルク検出部50は、ステアリングホイールに操舵トルクTが付与されておらず、トーションバー140に捩れが生じていない中立状態のときの磁気センサ40の出力値である基準値を記憶する記憶部51(図8参照)と、この記憶部51に記憶された基準値と磁気センサ40の出力値とに基づいて操舵トルクTに応じた電気信号(本実施の形態においては電圧信号)であるトルク信号を出力する出力部52(図8参照)とを備えている。
出力部52は、磁気センサ40から取得した値と記憶部51に記憶された基準値との差を演算するとともに、演算することにより得た値に応じた値であり、かつ相関関係がある2つの電圧信号である第1のトルク信号T1,第2のトルク信号T2を出力する。
【0025】
図7は、トルク検出部50の出力部52が出力する第1のトルク信号T1および第2のトルク信号T2と、操舵トルクTとの関係を示す図である。
図7においては、横軸に操舵トルクT、縦軸に第1のトルク信号T1の第1の電圧V1および第2のトルク信号T2の第2の電圧V2を示している。横軸は、操舵トルクTが零の状態、言い換えれば、トーションバー140の捩れ量が零の状態を中点にし、右方向の操舵トルクTをプラス、左方向の操舵トルクTをマイナスとしている。
そして、本実施の形態に係るトルク検出部50の出力部52は、図7に示すように、第1のトルク信号T1が示す第1の電圧V1および第2のトルク信号T2が示す第2の電圧V2が、最大電圧VHiと最小電圧VLoとの間で変化するように出力する。なお、最大電圧VHiは、トルク検出部50が第1のトルク信号T1,第2のトルク信号T2として出力可能な出力上限値よりわずかに低く、最小電圧VLoは、出力可能な出力下限値よりわずかに高く設定される。
【0026】
図7の実線で示すように、第1のトルク信号T1は、操舵トルクTの右方向への大きさが増加(トーションバー140の右方向への回転量が増加)するのに伴って電圧が上昇する特性を有する。すなわち、ステアリングホイールが右方向に回転すると第1のトルク信号T1の第1の電圧V1が上昇する。他方、図7の破線で示すように、第2のトルク信号T2の第2の電圧V2は、第1のトルク信号T1と逆の特性(負の相関関係)を有し、操舵トルクTの右方向への大きさが増加するのに伴って電圧が低下する特性を有する。すなわち、ステアリングホイールが右方向に回転すると第2のトルク信号T2の第2の電圧V2が低下する。
【0027】
そして、中点では第1のトルク信号T1の第1の電圧V1と第2のトルク信号T2の第2の電圧V2とが等しい電圧(以下、「中点電圧Vc」と称する場合がある)となるように構成されている。中点電圧Vcは、例えば、最大電圧VHiと最小電圧VLoの中間の電圧(Vc=(VHi+VLo)/2)である。
さらに、操舵トルクTの変化に対する第1のトルク信号T1の変化の割合と第2のトルク信号T2の変化の割合(絶対値)は等しく、同じ操舵トルクTを示す第1のトルク信号T1の第1の電圧V1と第2のトルク信号T2の第2の電圧V2を合計した合計電圧が常に予め定められた所定電圧(2Vc)となる特性を有する。
【0028】
トルク検出部50は、図2,図3に示した、算術論理演算回路が実装された検出用基板50aにて構成される。出力部52は、検出用基板50aに接続されたリード線50bを介して第1のトルク信号T1,第2のトルク信号T2を出力する。リード線50bは、ECU10の後述する制御基板12に接続されている。また、検出用基板50aは、リード線50bを介して、電源電圧およびGND電圧が供給される。
【0029】
次に、ECU10について詳述する。
図8は、ステアリング装置100のECU10の概略構成図である。
ECU10には、上述したトルク検出装置20からの出力信号、車速センサ(不図示)にて検出された車速が出力信号に変換された車速信号vなどが入力される。
そして、ECU10は、トルク検出装置20からの出力信号をトルク信号Tdに変換する変換部215と、変換部215から出力されたトルク信号Tdに基づいて目標補助トルクを算出し、この目標補助トルクを電動モータ160が供給するのに必要となる目標電流を算出する目標電流算出部220と、目標電流算出部220が算出した目標電流に基づいてフィードバック制御などを行う制御部230とを有している。
【0030】
変換部215は、トルク検出装置20から出力された第1のトルク信号T1および第2のトルク信号T2からトルク検出装置20に異常が生じているか否かを診断するとともに、異常が生じていない場合には、第1のトルク信号T1を操舵トルクTに応じたデジタル信号であるトルク信号Tdに変換するとともに、変換したトルク信号Tdを、目標電流算出部220へ向けて出力する。
【0031】
目標電流算出部220は、目標電流を設定する上で基準となるベース電流を算出するベース電流算出部(不図示)と、電動モータ160の慣性モーメントを打ち消すための電流を算出するイナーシャ補償電流算出部(不図示)と、モータの回転を制限する電流を算出するダンパー補償電流算出部(不図示)とを備えている。また、目標電流算出部220は、ベース電流算出部、イナーシャ補償電流算出部、ダンパー補償電流算出部などからの出力に基づいて目標電流を決定する目標電流決定部(不図示)と、トルク信号Tdの位相補償を行う位相補償部(不図示)を備えている。そして、目標電流算出部220は、変換部215から出力されたトルク信号Tdに基づいて目標補助トルクを算出し、この目標補助トルクを電動モータ160が供給するのに必要となる目標電流を算出する。
【0032】
制御部230は、電動モータ160の作動を制御するモータ駆動制御部(不図示)と、電動モータ160を駆動させるモータ駆動部(不図示)と、電動モータ160に実際に流れる実電流Im(不図示)を検出するモータ電流検出部(不図示)とを有している。
モータ駆動制御部は、目標電流算出部220にて最終的に決定された目標電流と、モータ電流検出部にて検出された電動モータ160へ供給される実電流Imとの偏差に基づいてフィードバック制御を行うフィードバック(F/B)制御部(不図示)と、電動モータ160をPWM駆動するためのPWM(パルス幅変調)信号を生成するPWM信号生成部(不図示)とを有している。
【0033】
モータ駆動部は、所謂インバータであり、スイッチング素子として6個の独立したトランジスタ(FET)(不図示)を備え、6個の中から選択した2個のトランジスタのゲートを駆動してこれらのトランジスタをスイッチング動作させることにより、電動モータ160の駆動を制御する。
モータ電流検出部は、モータ駆動部に接続されたシャント抵抗(不図示)の両端に生じる電圧から電動モータ160に流れる実電流Imの値を検出して、検出した実電流Imをモータ電流信号Ims(不図示)に変換して出力する。
【0034】
上述したECU10の変換部215、目標電流算出部220および制御部230は、電子部品が実装されたECU用基板11(図2、図3参照)にて構成される。ECU用基板11は、目標電流算出部220、モータ駆動制御部、モータ電流検出部などを構成する、マイクロコンピュータやその周辺機器が実装された制御基板12(図2参照)と、モータ駆動部を構成する、電動モータ160を駆動制御するトランジスタなどが実装されたパワー基板13(図2参照)と、を備えている。制御基板12には、トルク検出部50のリード線50bが挿入される挿入孔12a(図2参照)が形成されている。パワー基板13には、電動モータ160に挿入されて電動モータ160の巻き線端子(不図示)に電気的に接続されるモータ端子18が取り付けられている。
【0035】
また、ECU10は、制御基板12をギヤボックス110の第1部材111に取り付けるためのフレーム14(図2参照)と、制御基板12、パワー基板13およびフレーム14などを覆うカバー15(図1参照)と、を備えている。
フレーム14は、絶縁性樹脂によりインサート成形され、複数の導電線からなる配線パターンを有し、制御基板12とパワー基板13とを電気的に接続する。このフレーム14には、自動車などの乗り物に搭載されるバッテリや、この乗り物に搭載される各種の機器とのネットワーク(CAN)などに接続するための接続コネクタ16が取り付けられている(図1,図2参照)。
【0036】
次に、トルク検出装置20のヨーク30について詳述する。
ヨーク30は、磁性粉末と合成樹脂とを混合した材料の射出成形体である。つまり、ヨーク30は、磁性粉末と合成樹脂とを混合した材料を用いて射出成形されている。磁性粉末は、Ni(ニッケル)が40重量%以上、残部がFe(鉄)の組成を有するFe−Ni合金である。
ヨーク30は、金属製のブラケット60とともに射出成形される。つまり、ヨーク30およびブラケット60は、金型内に挿入したブラケット60の周りに磁性粉末が混合(分散)されていない合成樹脂を注入するとともに、ヨーク30の部位には磁性粉末が混合(分散)された合成樹脂を注入する二色成形にて一体成形されている。これにより、第1のヨーク31、第2のヨーク32およびブラケット60は、一部品となった状態で、第2の回転軸130に固定されている。
【0037】
磁性粉末と合成樹脂とを混合した材料を用いた射出成形では、例えば鋼板をプレス加工する場合と比べて、より複雑な形状を成形型にて成形できることから、ヨーク30の形状の自由度が増す。したがって、射出成形することで、プレス加工あるいは切削加工を施すことなく、より複雑な形状にすることが可能となる。言い換えれば、射出成形することで、プレス加工あるいは切削加工では必要となるスクラップ量を低減しつつ、より複雑な形状の物を成形することが可能となる。また、射出成形することにより、容易にヨーク30を大量生産することが可能となる。
【0038】
したがって、本実施の形態に係るヨーク30のように、ヨーク30を射出成形することで、同じ形状の物を射出成形以外の方法で製造する場合よりも、ヨーク30を製造するのに必要となる材料量を少なくすることができる。つまり、Ni(ニッケル)などを含む高価な材料の量を低減させることができる。これにより、相対角度検出部21、ひいてはトルク検出装置20を安価に製造することが可能となる。
【0039】
また、本実施の形態に係るヨーク30では、射出成形することでヨーク30の形状の自由度が増すことに鑑み、効率よい磁気回路を実現するべく以下の形状としている。
すなわち、ヨーク30の第1のヨーク31の第1の円環部31aから軸方向に伸びるように形成された第1の突起部31bの外周側の部位31cは、先端部側から基端部側、すなわち第1の円環部31aの方へ行くに従って徐々に拡径している。他方、第1の突起部31bの内周側の部位31dの磁石22に対する距離は、先端部側から基端部側にかけて同じである。同様に、ヨーク30の第2のヨーク32の第2の円環部32aから軸方向に伸びるように形成された第2の突起部32bの外周側の部位32cは、先端部側から基端部側、すなわち第2の円環部32aの方へ行くに従って徐々に拡径している。他方、第2の突起部32bの内周側の部位32dの磁石22に対する距離は、先端部側から基端部側にかけて同じである。
【0040】
以上のように形成されたヨーク30においては、第1の突起部31b(第2の突起部32b)の外周側の部位31c(32c)が先端部側から第1の円環部31a(第2の円環部32a)の方へ行くに従って徐々に拡径していることから、第1の突起部31b(第2の突起部32b)から第1の円環部31a(第2の円環部32a)に向かう磁力線、第1の円環部31a(第2の円環部32a)から第1の突起部31b(第2の突起部32b)に向かう磁力線が通り易くなる。
【0041】
また、第1の突起部31b(第2の突起部32b)の内周側の部位31d(32d)の磁石22に対する距離が先端部側から基端部側にかけて同じであることから、例えば先端部側から基端部側にかけて磁石22から徐々に離れて外側に向かう形状の物と比べると、第1の突起部31b(第2の突起部32b)が磁石22と対向する領域は大きい。それゆえ、磁石22とヨーク30との間で出入りする磁力線の量が多くなる。
【0042】
以上のことより、本実施の形態に係るヨーク30によれば、本実施の形態に係るヨーク30を用いない場合に比べて、磁石22およびヨーク30にて形成される磁気回路中の磁束密度をより大きくすることができ、磁気センサ40にて検出する磁束密度をより大きくすることができる。その結果、トルク検出装置20にて操舵トルクTをより精度高く検出することが可能となる。
【0043】
言い換えれば、第1の突起部31b(第2の突起部32b)の外周側の部位31c(32c)が先端部側から第1の円環部31a(第2の円環部32a)の方へ行くに従って徐々に拡径し、および/または第1の突起部31b(第2の突起部32b)の内周側の部位31d(32d)の磁石22に対する距離が先端部側から基端部側にかけて同じであれば、そうでない形状と比べて、第1の突起部31b(第2の突起部32b)および/または第1の円環部31a(第2の円環部32a)の肉厚を薄くしたとしても磁気回路中の磁束密度を同じにすることが可能となる。これにより、トルク検出装置20による検出精度を低下させることなく、ヨーク30の大きさを小さくすることができる。その結果、安価でかつ車両搭載性に優れたトルク検出装置20を得ることが可能となる。
【0044】
また、本実施の形態に係るヨーク30の材料として用いる磁性粉末にはNi(ニッケル)が含まれているので、保持力が低く、ヒステリシスを小さくすることが可能となる。磁性粉末におけるNi(ニッケル)の含有率が40重量%以上であると、ヒステリシスを小さくする効果が顕著に現れることから、Ni(ニッケル)の含有率は、40重量%以上であるとよい。ヒステリシスを小さくすることで、トルク検出装置20の検出精度をより高めることが可能となる。
【0045】
なお、上述の実施の形態においては、ヨーク30を、磁性粉末と合成樹脂とを混合した材料を用いて射出成形する点について説明したが、特に限定されることなく、他の軟磁性部材を、磁性粉末と合成樹脂とを混合した材料を用いて射出成形してもよい。
例えば、トルク検出装置20が、ヨーク30の第1のヨーク31および第2のヨーク32それぞれの外側に、第1のヨーク31および第2のヨーク32それぞれに近接して配置され、第1のヨーク31および第2のヨーク32それぞれから磁束を誘導する一対の誘導部材を備えている場合には、この一対の誘導部材を、磁性粉末と合成樹脂とを混合した材料を用いて射出成形するとよい。射出成形することで一対の誘導部材を製造するのに必要な材料量を少なくすることができるとともに、形状の自由度も増すことが可能となる。
【0046】
また、上述の実施の形態においては、ヨーク30を、金属製のブラケット60とともに二色成形にて一体成形する点について説明したが、特に限定されることはない。例えば、ヨーク30を、先に、磁性粉末と合成樹脂とを混合した材料を用いて射出成形しておき、その後、このヨーク30とブラケット60とを金型内にセットした状態で磁性粉末が混合(分散)されていない合成樹脂を注入して一体化してもよい。逆に、ヨーク30を最後に射出成形してもよい。つまり、ヨーク30の形状をした型と、ブラケット60とを金型内にセットした状態で磁性粉末が混合(分散)されていない合成樹脂を注入した後に、ヨーク30の形状をした型を取り出し、その後、ヨーク30の部位に磁性粉末と合成樹脂とを混合した材料を注入してもよい。
【符号の説明】
【0047】
10…ECU、20…トルク検出装置、21…相対角度検出部、22…磁石、30…ヨーク、40…磁気センサ、50…トルク検出部、60…ブラケット、100…電動パワーステアリング装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの回転軸の相対角度を検出する相対角度検出装置であって、
前記2つの回転軸の一方の回転軸に設けられた硬磁性体と、
前記硬磁性体により形成される磁界内となるように前記2つの回転軸の他方の回転軸に設けられ、当該硬磁性体とともに磁気回路を形成する軟磁性体と、
前記磁気回路の磁束密度を検出する検出手段と、
を備え、
前記軟磁性体は、磁性粉末と合成樹脂とを混合した材料を用いて射出成形されていることを特徴とする相対角度検出装置。
【請求項2】
前記軟磁性体の材料となる磁性粉末には、ニッケルが含まれていることを特徴とする請求項1に記載の相対角度検出装置。
【請求項3】
前記軟磁性体の材料となる磁性粉末には、ニッケルが40%以上含まれていることを特徴とする請求項1に記載の相対角度検出装置。
【請求項4】
前記軟磁性体は、前記硬磁性体の外形よりも大きな孔が内側に形成された円板状の円環部と、当該円環部における当該硬磁性体側の部位から前記一方の回転軸の軸方向に突出するように形成された突起部と、を有し、
前記突起部における外側の部位は、先端部側から前記円環部の方へ行くに従って徐々に拡径しているとともに、当該突起部における内側の部位は、前記硬磁性体に対する距離が当該先端部側から当該円環部にかけて同じであることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の相対角度検出装置。
【請求項5】
同軸的に配置された2つの回転軸の一方の回転軸に設けられた硬磁性体と、当該硬磁性体により形成される磁界内となるように当該2つの回転軸の他方の回転軸に設けられ、当該硬磁性体とともに磁気回路を形成する軟磁性体と、当該磁気回路の磁束密度を検出する検出手段とを備え、当該2つの回転軸の相対角度を検出する相対角度検出装置の製造方法であって、
前記軟磁性体は、磁性粉末と合成樹脂とを混合した材料を用いて射出成形にて製造することを特徴とする相対角度検出装置の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2013−88140(P2013−88140A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−226019(P2011−226019)
【出願日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【出願人】(000146010)株式会社ショーワ (715)
【Fターム(参考)】