説明

省エネバルブ

【課題】エア消費量の節減と設備の簡素化・小型化とにより、ランニングコストやイニシャルコストを抑制することが可能な省エネバルブを提供する。
【解決手段】弁孔3に給気ポートP、第1出力ポートA、第2出力ポートB及び排気ポートR1,R2とを連通された主弁本体2と、該弁孔内に摺動自在に挿通されて、第1及び第2出力ポートをそれぞれ給気ポート又は排気ポートに接続させる一本のスプール4と、該スプールを第1位置から第2位置へ切り換えるスプール駆動部20と、第2出力ポートの圧力を作用させる受圧面Sを有すると共に弾性的な付勢力が付与された調圧ピストン30とを備える。スプールは、第2出力ポートの圧力に応じて給気ポートから第2出力ポートに通じる流路の断面積を変化させるように移動し、第2出力ポートの圧力を給気ポートから供給される圧縮エアの圧力pより小さい設定圧力p′にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアの給排を切り換える機能を備えたバルブにおいて、一方の出力ポートに供給される圧縮エアを減圧して出力する減圧機能を有する省エネバルブに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、空気圧アクチュエータとして各種自動機械に広く用いられているエアシリンダでは、ロッドが固定されたピストンを、圧力室内において圧縮エアの給排により往復動させるようになっている。そして、このようなエアシリンダに対する圧縮エアの給排は、切換弁を通じて行うのが一般的である。
ところで、上記エアシリンダにおいては、ピストンの往復動のうち仕事をさせる作業ストローク時には、ロッドに外部負荷が掛かるため、大きな駆動力が必要とされるが、初期位置へ向けて戻す復帰ストローク時には、ロッドに上記外部負荷が掛からないため、上記作業ストローク時よりも小さな駆動力ですむことになる。そして、上記駆動力は、圧力室内に供給する圧縮エアの圧力の高低に依存する。したがって、エア消費量の節約による省エネやランニングコストの抑制を考慮すると、復帰ストローク時には作業ストローク時よりも、圧力室内に供給する圧縮エアの圧力を低く設定することが望ましい。
【0003】
そこで、このような問題を解決するため、特許文献1においては、シリンダチューブの圧力作用室に接続された主流路上に減圧弁6,125を設けることが提案されている。しかしながら、上記シリンダチューブの各圧力作用室に対する給排気を切り換えるバルブとは別途に当該減圧弁6,125を設ける必要性があるため、設備が複雑化・大型化し、イニシャルコストが嵩むという問題があった。
また、本発明者らも、先に特願2010−27943号として、復帰ストローク時には作業ストローク時よりも圧力室内に供給する圧縮エアの圧力を低く設定できるようにしたバルブを、より簡素化・小型化されたものとする技術を提案しているが、更なる構成の簡素化が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−13504号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、エア消費量の節減と設備の簡素化・小型化とにより、ランニングコストやイニシャルコストを抑制することが可能な省エネバルブを提供することにある。
本発明の他の課題は、本発明者らの上記既提案のバルブを一層簡素化・小型化したバルブを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係る省エネバルブは、軸方向両端に第1端と第2端とを備え、該軸方向に貫設された1本の弁孔と、該弁孔にそれぞれ連通させた給気ポート、第1出力ポート、第2出力ポート、及び排気ポートとを有している主弁本体と;前記弁孔内に摺動自在に挿通され、前記第1出力ポート及び前記第2出力ポートをそれぞれ前記給気ポート又は前記排気ポートに接続させる流路を備えた一本のスプールと;前記主弁本体の前記第1端の側に設けられ、前記スプールを前記第2端方向に押圧して摺動させ、該スプールを前記第1端側の第1位置から前記第2端側の第2位置へと切り換えるスプール駆動部と;前記スプールの第2端側に結合され、前記第2出力ポートの圧力を前記第2端方向に作用させる受圧面を有すると共に、前記第1端方向に弾性部材による弾性的な付勢力を付与している調圧ピストンと;を有し、前記スプールが前記第1位置にあるとき、前記第1出力ポートが前記排気ポートに接続されると共に、前記第2出力ポートが前記給気ポートに接続され、前記スプールが前記第2位置にあるとき、前記第1出力ポートが前記給気ポートに接続されると共に、前記第2出力ポートが前記排気ポートに接続され、前記給気ポートから前記第2出力ポートへの圧縮エアの供給により、前記調圧ピストンへの弾性部材による付勢力と前記調圧ピストンの受圧面に作用する第2出力ポートの圧力とがバランスしたときに、前記スプールが、第2出力ポートが前記給気ポートにも前記排気ポートにも接続されない第3位置に移動し、前記受圧面に作用する第2出力ポートの圧力が前記弾性部材の付勢力により付与されている設定圧力よりも小さくなると、前記給気ポートから前記第2出力ポートに通じる流路の断面積を大きくする方向に前記スプールを移動させ、上記第2出力ポートの圧力が上記設定圧力よりも大きくなると、前記給気ポートから前記第2出力ポートに通じる流路を閉じると共に、前記第2出力ポートを前記排気ポートに連通させる流路を開く方向に、前記スプールを移動させるように構成していることを特徴とするものである。
【0007】
上記構成を有する省エネバルブの好ましい実施形態においては、前記調圧ピストンは、前記主弁本体の前記第2端の側に設けられた第2のシリンダボディにおける、前記主弁本体の弁孔と同心のシリンダ孔内に、前記軸方向に摺動するよう挿通される。
また、前記第2出力ポートのエア圧力を前記受圧面へと導く調圧用流路が、前記スプールの外周に形成された前記第2出力ポートに連通する環状流路に開く開口から、前記スプール内部を前記軸方向に延びて、前記シリンダ孔内の前記受圧面により区画されたシリンダ室へ接続されているものとして構成される。
【0008】
更に、上記省エネバルブの他の好ましい実施形態においては、前記調圧ピストンが、前記第1端方向への弾性的な付勢力を付与する弾性部材と、該弾性部材の圧縮量を調節する調節機構とを有し、該調節機構により前記付勢力を変更可能に構成され、或いは、前記調圧ピストンに弾性的な付勢力を付与する弾性部材を、弾性係数が異なるものと交換可能に構成される。
【0009】
また、上記省エネバルブにおいては、前記スプール駆動部を、前記主弁本体の前記第1端の側に設けた第1のシリンダボディ内の前記弁孔に連通するシリンダ孔内で、前記軸方向に前記スプールとは別個に摺動自在となっている駆動ピストンと、前記駆動ピストンを駆動するパイロット電磁弁とを有し、前記駆動ピストンをパイロットエアで押圧移動させることにより、前記スプールを前記第2端方向に押圧可能に形成するものとして構成することができる。
【発明の効果】
【0010】
上記構成を備えた本発明に係る省エネバルブによれば、大きな駆動力を要しない復帰ストローク時において、供給される圧縮エアを減圧する機能を主弁と一体化して備える構成とすることにより、エア消費量の節減による省エネルギーと、設備の簡素化・小型化とを同時に実現することが可能となる。その結果、設備のランニングコストやイニシャルコストを抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る省エネバルブの構成を示す断面図である。
【図2】本発明に係る省エネバルブにおいて、スプールが第1位置にあるときの状態を示す断面図である。
【図3】本発明に係る省エネバルブにおいて、スプールが第2位置にあるときの状態を示す断面図である。
【図4】本発明に係る省エネバルブにおいて、スプールが第3位置にあるときの状態を示す断面図である。
【図5】本発明に係る省エネバルブにおいて、スプールが第4位置にあるときの状態を示す断面図である。
【図6】本発明に係る省エネバルブの、弾性部材を交換可能とする構成とした実施例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、本発明に係る省エネバルブの構成を示すもので、該省エネバルブ1の主弁本体2は、概略的には、該主弁本体2を構成する弁ケーシング7の第1端2aとそれと反対側の第2端2bとの間を軸l方向に貫設する1本の弁孔3と、該弁孔3に連通させると共に該弁孔3に平行する一方の面側に開口させ、上記第1端2a側から第2端2b側に向かって順次開設された第1排気ポートR1、給気ポートP、及び第2排気ポートR2と、上記弁孔3に連通させ、上記主弁本体2における上記一方の面とは弁孔3を挟んで反対側に位置する他方の面側に開設された第1出力ポートA及び第2出力ポートBとを有している。
【0013】
前記主弁本体2の弁孔3には、前記給気ポートPを第1出力ポートA又は第2出力ポートBに連通させ、また、それらの出力ポートを第1排気ポートR1又は第2排気ポートR2に連通させる環状流路5を備えた一本のスプール4が、摺動自在に挿通されている。そして、該スプール4の摺動位置に応じて、第1出力ポートA及び第2出力ポートBの一方が給気ポートPに接続されると共に、他方が第2排気ポートR2又は第1排気ポートR1に連通するように切り換えられるものである。
【0014】
前記主弁本体2の第1端2a側にはスプール駆動部20の第1のシリンダボディ25が設けられている。該第1のシリンダボディ25は、前記弁孔3に連通した第1シリンダ孔24を有し、パイロット電磁弁22からのパイロットエアにより、前記弁孔3に連通した第1シリンダ孔24内において摺動自在の駆動ピストン21を駆動して、例えば、図2に示すような第1位置にある前記スプール4を、主弁本体2の第2端2b方向に押圧し、図3の第2位置に移動させるものである。
スプール4が前記第1位置にあるときには、第1出力ポートAが第1排気ポートR1と接続されると共に、第2出力ポートBが給気ポートPに接続される。また、スプール4が前記第2位置にあるときには、第1出力ポートAが給気ポートPに接続されると共に、第2出力ポートBが第2排気ポートR2に接続される。
【0015】
一方、スプール4における主弁本体2の第2端2b側には、調圧ピストン30が結合されている。該調圧ピストン30は、主弁本体2の第2端2b側に取り付けた第2のシリンダボディ36に設けた第2シリンダ孔31内に摺動自在に配設している。該第2シリンダ孔31は、前記弁孔3の軸l方向に連通するように同軸に設けたものである。そして、前記調圧ピストン30は、前記主弁本体2の第2端2bと対向する受圧面Sを有し、該受圧面Sには第2出力ポートBのエアの圧力が作用するように該圧力を導入している。また、前記調圧ピストン30には、弾性部材32によって主弁本体2の第1端2a方向の付勢力が付与されている。
【0016】
前記調圧ピストン30は、受圧面Sに作用する圧力と弾性部材32の付勢力とがバランスするようにスプール4を押圧して移動させるものである。即ち、受圧面Sに作用する第2出力ポートBのエアの圧力が、前記弾性部材32の付勢力により付与されている設定圧力p′よりも小さくなると、弾性部材32の付勢力により前記給気ポートPから前記第2出力ポートBに通じる流路の断面積を大きくする方向に前記スプール4を移動させて、図5の浮動的な第4位置に保持し、また、上記第2出力ポートBの圧力が上記設定圧力p′よりも大きくなると、前記給気ポートPから前記第2出力ポートBに通じる流路を閉じると共に、前記第2出力ポートBを前記排気ポートR2に連通させる流路を開く方向に、前記スプールを移動させるように構成している。そして、究極的には、スプール4を図4に示す第3位置、つまり、第1出力ポートAが第1排気ポートR1に接続されると共に、第2出力ポートBが給気ポートP及び第2排気ポートR2のいずれにも接続されない位置に移動させるようにしている。
【0017】
次に図1を参照しながら、本発明に係る省エネバルブ1の構成について、上述したところとの重複を避けながらより具体的に説明する。上記省エネバルブ1の主弁本体2は、弁孔3が貫設された弁ケーシング7とポート接続ブロック8とによって構成されている。前記弁ケーシング7の一方の側には、前記第1排気ポートR1、給気ポートP、第2排気ポートR2が設けられ、また、前記弁ケーシング7の他方の側には、第1出力ポートAと第2出力ポートBとが設けられているが、第1出力ポートAの軸l方向の位置は、第1排気ポートR1と給気ポートPとの間にあり、第2出力ポートBの軸l方向の位置は、給気ポートPと第2排気ポートR2との間にある。そして、前記弁孔3の内周には、第1排気ポートR1、第1出力ポートA、給気ポートP、第2出力ポートB及び第2排気ポートR2の位置に、環状の内周溝3aが設けられている。
【0018】
前記ポート接続ブロック8は、前記弁ケーシング7にボルト等の固定部材で気密に固定され、エア配管を接続するための第1ポート接続孔9及び第2ポート接続孔10が貫設されて、該第1ポート接続孔9は前記第1出力ポートAに連通させ、第2ポート接続孔10は前記第2出力ポートBに連通させて、出力用のエア配管をそれぞれ前記第1及び第2出力ポートA、Bに接続できるようにしている。
【0019】
弁ケーシング7の弁孔3に挿通した前記スプール4には、前記弁孔3の内面のランド部に接して弁孔3内を通して隣り合う各ポート間の流路を遮断し、また弁孔3の両端を封じるための弾性体からなる第1シール部4a〜第6シール部4fが設けられている。また、スプール4における各シール部の間には、スプール4の径を小さくした環状流路5が形成されている。なお、スプール4の第1端2a側にある第1シール部4aは、第1排気ポートR1と前記弁ケーシング7の第1端2aとの間を常にシールし、また、スプール4の第2端2b側にある第6シール部4fは、第2排気ポートR2と前記弁ケーシング7の第2端2bとの間を常にシールするものである。
【0020】
スプール4の第2端2b側には、先端部で拡大する断面略T字状の凸状部4hが設けられ、一方、調圧ピストン30には弁孔3側で開口して奥部で拡大する断面略T字状の凹状部30aが設けられていて、前記スプール4の凸状部4hと前記調圧ピストン30の凹状部30aが相互に凹凸係合することにより、スプール4は第2端2b側において調圧ピストン30と結合している。そのため、調圧ピストン30とスプール4は、一体となって軸l方向に移動するものである。
【0021】
主弁本体2の第1端2a側に設けられたスプール駆動部20は、前記弁孔3に対して軸l方向に連通した該弁孔3よりも径の大きい第1シリンダ孔24を同軸に備えた第1シリンダボディ25と、該第1シリンダ孔24内において前記スプール4とは別個に軸l方向に摺動自在となっている駆動ピストン21と、該駆動ピストン21の弁孔3とは反対側の面に給気ポートPから供給される圧縮エアの圧力を作用させて、該駆動ピストン21を駆動するパイロット電磁弁22とを有している。前記第1シリンダ孔24を備えた第1シリンダボディ25は、前記弁ケーシング7の第1端2aの端面に気密に固定されている。
【0022】
前記パイロット電磁弁22は、その通電により、給気用流路23を通じて給気ポートPから供給される圧縮エアを、第1シリンダ孔24の第2シリンダ室24bに流入させ、また、通電を解除することにより上記第2シリンダ室24bに流入した圧縮エアを外部に排出するように切り換えられるものである。
一方、前記駆動ピストン21は、弁孔3側に該弁孔に嵌入してスプール4を押圧する凸状の小径部21bが形成され、弁孔3とは反対側に、前記第1シリンダ孔24に嵌入する大径部21aが形成されている。前記駆動ピストン21の大径部21aには、外周に弾性体から成る環状のシール部材21cが固定され、前記第1シリンダ孔24は、駆動ピストン21の大径部21aによって弁孔3の側の第1シリンダ室24aと、弁孔3とは反対の側の第2シリンダ室24bとに区画されている。
【0023】
スプール4と第2端2b側において結合している調圧ピストン30は、第2のシリンダボディ36に設けられた第2シリンダ孔31内を軸l方向に摺動自在に嵌挿されている。第2シリンダ孔31は、前記弁孔3と同軸に配設してその軸l方向に連通して、弁孔3側の大径部31cとその反対側の小径部31dとを有し、小径部31dには呼吸孔31eが設けられている。前記シリンダボディ36は、前記弁ケーシング7の第2端2bの端面に気密に固定されている。
【0024】
一方、前記調圧ピストン30は、第2シリンダ孔31の大径部31cの径よりは小さいが小径部31dの径よりは大きい環状凸部30bを有し、該環状凸部30bの弁孔3側にリップ状のシール部材30cを配設して、該シール部材30cにより第2シリンダ孔31内を第1シリンダ室31aと第2シリンダ室31bとに区画し、該シール部材30cによって第1シリンダ室31aの受圧面Sが形成されている。該第1シリンダ室31aは、弁孔3内を貫通する調圧用流路6を通して、前記第2出力ポートBに連通させている。該調圧用流路6は、前記スプール4の第4シール部4dと第5シール部4eとの間に形成された環状流路5に開口し、該スプール4内を軸lに沿って第2端2b方向に延び、該スプール4の凸状部4h内及び調圧ピストン30内を順次通って、該調圧ピストン30の第1シリンダ室31aを画する外周面に開口するものである。
【0025】
前記第2シリンダ孔31の第2シリンダ室31bには、前記調圧ピストン30の弁孔3とは反対側の面に当接するように弾性部材(コイルばね)32が縮設され、該弾性部材32によって、該調圧ピストン30には第1端2a方向の付勢力が付与される。従って、前記調圧ピストン30は、前記受圧面Sに作用する第2出力ポートBのエアの圧力と、前記弾性部材32の付勢力とのバランスが取れる位置に移動することになる。この場合、弾性部材32の付勢力は、前記受圧面Sに作用する第2出力ポートBの圧力とバランスさせるものであるから、第2出力ポートBに出力させる圧力についての設定圧p′と言えるものである。
【0026】
上記設定圧p′を調整するため、前記弾性部材32の調圧ピストン30と反対側の端部はバネ受け部材33によって保持させ、該バネ受け部材33の外面側には、第2シリンダボディ36に螺挿した調圧ネジ34を当接させている。従って、前記調圧ネジ34を前進又は後退させることにより、弾性部材32の圧縮量を調節して、前記調圧ピストン30に付与される弾性部材32の付勢力、つまり、前記設定圧p′を調節することができる。
【0027】
次に図2〜図5を参照して、上記構成を有する省エネバルブ1の動作について具体的に説明する。なお、図2〜図5に示される例では、省エネバルブ1がエアシリンダ40に取り付けられ、エアシリンダ40のヘッド側圧力室41に第1出力ポートAが接続され、ロッド側圧力室42に第2出力ポートBが接続されたものとして示している。
【0028】
まず、図2は、給気ポートPにエア供給源から圧縮エアが供給されず、パイロット電磁弁22がオフになっている初期状態を示している。この場合、給気ポートPに圧縮エアの供給がないため、調圧ピストン30の受圧面Sに圧力が作用せず、該調圧ピストン30は弾性部材32の付勢力により第2シリンダ孔31の第1シリンダ室31aを縮小する方向に押圧されて、それに伴って、スプール4は該調圧ピストン30により主弁本体2の第1端2a側に押圧され、第1シリンダ孔24内の駆動ピストン21は該第1シリンダ孔24の弁孔3とは反対側の端面に当接している。
【0029】
そのため、第1出力ポートAは、前記スプール4の第2シール部4bが弁孔3のランドから外れた位置にあり、第2シール部4bと第3シール部4cとの間の環状流路5を通して、第1排気ポートR1に連通し、該第1出力ポートAは、前記スプール4の第3シール部4cにより給気ポートPとは遮断されている。一方、第2出力ポートBは、前記スプール4の第4シール部4dが弁孔3のランドから外れた位置にあり、第4シール部4dと第5シール部4eとの間の環状流路5を通して給気ポートPに接続され、また、第2排気ポートR2との間はスプール4の第5シール部4eによって遮断されているが、給気ポートPに圧縮エアの供給がないため、第2出力ポートBは圧縮エアが供給されていない状態にある。
なお、この初期状態において、上記エアシリンダ40のピストン43は、図2に実線で示しているようにヘッド側端部の初期位置に位置するとは限らず、鎖線で示すように、ロッド側に位置して該ピストン43のロッド44が突出状態になっていることもある。
【0030】
次に、エア供給源からの圧力pの圧縮エアを給気ポートPに供給し始めると、図5に示すように、第1出力ポートAは第1排気ポートR1に連通したままであるが、給気ポートPからの圧縮エアが第2出力ポートBに流入して、第2出力ポートBのエアの圧力が上昇し、そのため、スプール4内の調圧用流路6を通して第2シリンダ孔31の第1シリンダ室31aにエアが流入して、その圧力が調圧ピストン30の受圧面Sに作用するようになる。そこで、調圧ピストン30が、受圧面Sに作用するエアの圧力に基づく力と、弾性部材32の付勢力とがバランスするまで、主弁本体2の第2端2bから脱出する方向に移動し、そのときの調圧ピストン30の位置により前記スプール4の位置が設定される。
なお、上記弾性部材32には、調圧ネジ34により第2出力ポートBの設定圧力p′とバランスさせる付勢力が付与されている。
【0031】
スプール4が図5に示す位置にある状態では、給気ポートPから第2出力ポートB側に流れる流路の断面が大きくて第2出力ポートB側のエアの圧力が上記設定圧力p′よりも高くなれば、そのエアの圧力がスプール4内の調圧用流路6を通して第2シリンダ孔31の第1シリンダ室31aに流入し、調圧ピストン30の受圧面Sに作用するため、該受圧面Sに作用する圧力で弾性部材32が圧縮され、その結果、調圧ピストン30と共にスプール4が主弁本体2の第2端2b方向に移動し、逆に、第2出力ポートBのエアの圧力が例えばエアの漏洩等によって低下すれば、上記調圧ピストン30の受圧面Sに作用するエア圧力に基づく力が弾性部材32の付勢力よりも低下するので、該弾性部材32の付勢力でスプール4が主弁本体2の弁孔3を第1端2a方向に押し戻される。
【0032】
即ち、図5に示すスプール4の第4位置は、第2出力ポートBの圧力により浮動的なものであって、スプール4の移動により給気ポートPから第2出力ポートB側に流れる流路の断面積が変動してもスプール位置が該断面積を変動させる範囲で移動し、しかしながら結果的には、第2出力ポートBのエアの圧力が弾性部材32に設定された設定圧力p′に接近する方向にスプール4が駆動され、究極的には、スプール4を図4に示す第3位置、つまり、第1出力ポートAが第1排気ポートR1に接続されると共に、第2出力ポートBが給気ポートP及び第2排気ポートR2のいずれにも接続されない位置に移動させることになる。
【0033】
上記スプール4の第4位置(図5)では、上述したように、上記第2出力ポートBのエアの圧力が弾性部材32に設定された設定圧力p′付近に保持され、究極的には、スプール4が図4に示す第3位置に移動することになるが、上記第4位置にあっても機能的には第3位置にある場合と同等である。
そして、上記エアシリンダ40のピストン43が、図2に実線で示すようにロッド側に位置していたときには、そのままの位置に保持されるが、同図に鎖線で示すようにロッド側に位置していたときには、上記第2出力ポートBへのエアの導入によりヘッド側端部の初期位置に移動する。
【0034】
上記スプール4が第3位置にあるときには、第2出力ポートBは、該スプール4の第4シール部4dと第5シール部4eのシールによって、給気ポートPと第2排気ポートR2から遮断され、その結果、該第2出力ポートBに接続しているエアシリンダ40のロッド側圧力室42の圧力は所定圧力p′で一定になる。一方、第1出力ポートAは第1排気ポートR1に接続されており、該第1出力ポートAに接続しているヘッド側圧力室41は引き続き大気に連通した状態となっている。
【0035】
前述したように、上記エアシリンダ40においては、ピストンを初期位置へ向けて戻す復帰ストローク時には、通常、ロッドに外部負荷が掛からないため、ロッドに外部負荷が掛かる作業ストローク時よりも小さな駆動力で済むことになるが、上記駆動力は、弾性部材32に設定される設定圧力p′により適宜低下させることができるので、復帰ストローク時におけるエア消費量の節約により省エネやランニングコストの抑制を図ることができる。
【0036】
次に、エアシリンダ40のロッド44を前進させて該ロッド44に仕事をさせる作業ストロークに切り換えるために、パイロット電磁弁22をオンにすると、パイロット給気用流路23を通じてパイロット電磁弁22に供給されていた圧縮エアが、第1シリンダ孔24の第2シリンダ室24bに導入される。そのため、図3に示されるように、駆動ピストン21はスプール4を押圧する方向に駆動され、該スプール4を主弁本体2の第2端2b方向に押圧して、図3に示す位置まで摺動させる。この場合に、第2シリンダ室24bに導入されて前記駆動ピストン21を押圧する圧縮エアの駆動力は、弾性部材32による第1端2a方向への付勢力よりも十分に大きいものであり、そのため、駆動ピストン21の大径部21aが主弁本体2の第1端2a側の端面に当接するまで駆動される。そして、前記スプール4の位置は、図3に示される第2位置になる。
【0037】
前記スプール4が第2位置に移動すると、第1出力ポートAは、前記スプール4の第3シール部4cがランドから外れるので、第2シール部4bと第3シール部4cとの間の環状流路5を通じて、給気ポートPに連通すると共に、第2シール部4bによるシールで第1排気ポートR1との間が遮断される。一方、第2出力ポートBは、第5シール部4eがランドから外れて第4シール部4dと第5シール部4eとの間の環状流路5を通じて第2排気ポートR2に接続されると共に、第4シール部4dにより給気ポートPとの間が遮断される。
【0038】
そのため、エア供給源から供給される圧力pの圧縮エアが、給気ポートPから第1出力ポートAを通してエアシリンダ40のヘッド側圧力室41に供給されると共に、ロッド側圧力室42の圧縮エアが前記第2排気ポートR2を通じて大気に放出される。その結果、エアシリンダ40のピストン44がロッド側圧力室42方向に駆動されると同時に、ロッド44が必要な仕事をしながら作業ストロークする。
この作業ストローク時には、ロッド44に外部負荷が作用するが、ヘッド側圧力室41に対し十分に高い圧力pの圧縮エアを供給することになるので、ピストン43に該外部負荷に応じた十分な駆動力を付与することが可能となると同時に、作業ストロークの応答性を確保することができる。
【0039】
作業ストロークにおいて仕事をさせながらロッド44を前進させた後は、ロッド44を後退させて初期位置に戻す復帰ストロークに移ることになるが、この際には、まずパイロット電磁弁22をオフにして、第1シリンダ孔24の第2シリンダ室24bを大気に連通させる。そうすると、前記調圧ピストン30に付与される弾性部材32の付勢力により、前記スプール4及び前記駆動ピストン21は第1端2a方向に押圧されて摺動し、前記スプール4の位置は図2に示される第1位置となる。従って、エアシリンダ40のロッド側圧力室42は、給気ポートPから第2出力ポートBを介して設定圧力p′の圧縮エアが供給され、ヘッド側圧力室41は第1出力ポートA及び第1排気ポートR1を介して大気に連通される。そのため、ピストン43は、破線で示される状態から実線で示される状態へと後退する。
【0040】
その後、第2出力ポートBへ圧縮エアが供給されるのに伴い、第2出力ポートBの圧力が上昇し、調圧用流路6を介して前記調圧ピストン30の受圧面Sに作用するエアの圧力が上昇すると、受圧面Sに作用する圧力と弾性部材32の付勢力とがバランスする該調圧ピストン30の位置が、前述したように図5に示す第4位置に移動し、最終的には図4の第3位置に至ることになる。
【0041】
このように、上記省エネバルブ1では、第2出力ポートBのエアの圧力を前記調圧ピストン30に作用させて、該第2出力ポートBのエアの圧力に応じて前記スプール4の位置を移動させようにしているので、復帰ストローク時にロッド側圧力室42に供給される圧力を減圧してエア消費量の節減を図ることができる。また、この減圧機能を主弁と一体として備える構成とすることにより、省エネルギーと設備の簡素化・小型化とを同時に実現することができ、その結果、設備のランニングコストやイニシャルコストを抑制することができる。
【0042】
図6には、本発明に係る省エネバルブ1の他の実施例を示している。この実施例では、調圧ピストン30に第1端2a方向の付勢力を付与する弾性部材32を、弾性係数の異なる他の弾性部材32と交換交換できる構成としている。即ち、第2シリンダボディ36の端部に、キャップ状の蓋部材37を螺挿により着脱可能に取り付けるようしている。前記弾性部材32を弾性係数の異なる弾性部材32に交換する際には、該蓋部材37を第2シリンダボディ36から取り外し、適切な設定圧力p′を得るための弾性係数のものと交換すればよい。図6に示される省エネバルブ1のその他の構成は、図1に示される省エネバルブ1の構成と実質的に変わるところがないので、同一または対応部分に同一の符号を付してその説明を省略する。
【0043】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明してきたが、本発明はその要旨を逸脱しない範囲において、様々な設計変更が可能である。
【符号の説明】
【0044】
1 省エネバルブ
2 主弁本体
2a 第1端
2b 第2端
3 弁孔
4 スプール
6 調圧用流路
20 スプール駆動部
21 駆動ピストン
22 パイロット電磁弁
24 第1シリンダ孔
30 調圧ピストン
31 第2シリンダ孔
32 弾性部材
l 軸
A 第1出力ポート
B 第2出力ポート
P 給気ポート
R1 第1排気ポート
R2 第2排気ポート
S 受圧面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向両端に第1端と第2端とを備え、該軸方向に貫設された1本の弁孔と、該弁孔にそれぞれ連通させた給気ポート、第1出力ポート、第2出力ポート、及び排気ポートとを有している主弁本体と;
前記弁孔内に摺動自在に挿通され、前記第1出力ポート及び前記第2出力ポートをそれぞれ前記給気ポート又は前記排気ポートに接続させる流路を備えた一本のスプールと;
前記主弁本体の前記第1端の側に設けられ、前記スプールを前記第2端方向に押圧して摺動させ、該スプールを前記第1端側の第1位置から前記第2端側の第2位置へと切り換えるスプール駆動部と;
前記スプールの第2端側に結合され、前記第2出力ポートの圧力を前記第2端方向に作用させる受圧面を有すると共に、前記第1端方向に弾性部材による弾性的な付勢力を付与している調圧ピストンと;
を有し、
前記スプールが前記第1位置にあるとき、前記第1出力ポートが前記排気ポートに接続されると共に、前記第2出力ポートが前記給気ポートに接続され、
前記スプールが前記第2位置にあるとき、前記第1出力ポートが前記給気ポートに接続されると共に、前記第2出力ポートが前記排気ポートに接続され、
前記給気ポートから前記第2出力ポートへの圧縮エアの供給により、前記調圧ピストンへの弾性部材による付勢力と前記調圧ピストンの受圧面に作用する第2出力ポートの圧力とがバランスしたときに、前記スプールが、第2出力ポートが前記給気ポートにも前記排気ポートにも接続されない第3位置に移動し、
前記受圧面に作用する第2出力ポートの圧力が前記弾性部材の付勢力により付与されている設定圧力よりも小さくなると、前記給気ポートから前記第2出力ポートに通じる流路の断面積を大きくする方向に前記スプールを移動させ、上記第2出力ポートの圧力が上記設定圧力よりも大きくなると、前記給気ポートから前記第2出力ポートに通じる流路を閉じると共に、前記第2出力ポートを前記排気ポートに連通させる流路を開く方向に、前記スプールを移動させるように構成している、
ことを特徴とする省エネバルブ。
【請求項2】
前記調圧ピストンは、前記主弁本体の前記第2端の側に設けられた第2のシリンダボディにおける、前記主弁本体の弁孔と同心のシリンダ孔内に、前記軸方向に摺動するよう挿通されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の省エネバルブ。
【請求項3】
前記第2出力ポートのエア圧力を前記受圧面へと導く調圧用流路が、前記スプールの外周に形成された前記第2出力ポートに連通する環状流路に開く開口から、前記スプール内部を前記軸方向に延びて、前記シリンダ孔内の前記受圧面により区画されたシリンダ室へと接続されている、
ことを特徴とする請求項2に記載の省エネバルブ。
【請求項4】
前記調圧ピストンが、前記第1端方向への弾性的な付勢力を付与する弾性部材と、該弾性部材の圧縮量を調節する調節機構とを有し、該調節機構により前記付勢力を変更可能に構成している、
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の省エネバルブ。
【請求項5】
前記調圧ピストンに弾性的な付勢力を付与する弾性部材を、弾性係数が異なるものと交換可能に構成している、
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の省エネバルブ。
【請求項6】
前記スプール駆動部が、前記主弁本体の前記第1端の側に設けた第1のシリンダボディ内の前記弁孔に連通するシリンダ孔内で、前記軸方向に前記スプールとは別個に摺動自在となっている駆動ピストンと、前記駆動ピストンを駆動するパイロット電磁弁とを有し、前記駆動ピストンをパイロットエアで押圧移動させることにより、前記スプールを前記第2端方向に押圧可能に形成している、
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の省エネバルブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−24345(P2013−24345A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−160780(P2011−160780)
【出願日】平成23年7月22日(2011.7.22)
【出願人】(000102511)SMC株式会社 (344)
【Fターム(参考)】