説明

看板用難燃性シート

【課題】本発明は、優れた難燃性を有し且つ接合加工性に優れた看板用難燃性シートに関する。
【解決手段】 本発明の看板用難燃性シートは、ガラスクロスと、このガラスクロスの一面に積層一体化された第一難燃性樹脂層と、上記ガラスクロスの他面に積層一体化された第二難燃性樹脂層とを備えた看板用難燃性シートであって、第一難燃性樹脂層は、酸素含有熱可塑性樹脂、層状珪酸塩及び難燃剤を含有しており、上記層状珪酸塩は、広角X線回折測定法によって測定された(001)面の平均層間距離が3nm以上で且つ少なくとも一部が5層以下であると共に、第二難燃性樹脂層は、フッ素系樹脂を主成分として含有していることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた難燃性を有し且つ接合加工性に優れた看板用難燃性シートに関する。
【背景技術】
【0002】
内照式電飾看板は、商店やコンビニエンスストアなどの店名表示や商品の広告などの幅広い分野で使用されており、例えば、所定の標示印刷が施された透光性のシート材の背後に光源を配置し、その光源からの光をシート材に照射して、シート材の標示を浮かび上がらせるようにしたものがある。
【0003】
このような内照式電飾看板に用いられるシート材は、耐候性、耐水性、耐磨耗性、柔軟性及び抗張力などの力学的性質と同時に、使用部位によっては、建築基準法に規定されているように、火災時における延焼を防ぐために難燃性が必要とされている。
【0004】
特許文献1には、不燃性に優れた積層シートとして、ガラス繊維基布と、これに積層した軟質フッ素樹脂からなる積層シートが記載されており、優れた不燃性と、柔軟性、耐屈曲性を備える旨が記載されている。
【0005】
又、特許文献2には、ガラス繊維布の一方の面に軟質フッ素樹脂に酸化チタンを配合してなる難燃性フィルムを積層し、他方の面に、熱可塑性樹脂又はシリコーン樹脂よりなるコート層を積層した不燃性積層体が記載されており、難燃性に優れ、かつ、雨水の染み込みによるシミ、カビも防止することができることが記載されている。
【0006】
更に、特許文献3には、酸素含有熱可塑性樹脂と、特定の分散状態で分散される層状珪酸塩と、難燃剤とを含有する不燃性シート材料が記載されている。
【0007】
一方、近年、内照式看板の大型化の強く求められることが多くなっており、難燃性シートについても大型化が求められている。又、用途や使用する部位によっては、従来以上に高い難燃性が要求されている。
【0008】
難燃性シートを一定以上に大判化する場合には、複数枚の難燃性シートを用意し、複数枚の難燃性シート同士を接合することが考えられる。特許文献1、2に記載のフッ素系樹脂を用いた難燃性シートは、難燃性に非常に優れているものの、難燃性シート同士の接合加工性に劣り、大型化が困難であるという問題があった。又、特許文献3に記載の難燃性シートは、用途や使用部位によっては不燃性が充分ではないという問題があった。
【0009】
このように、より高い難燃性と大判化への要求とを同時に満たした難燃性シートは未だ得られていなかった。
【0010】
【特許文献1】特開平8−259637号公報
【特許文献2】特開2004−269635号公報
【特許文献3】特開2005−179597号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、優れた難燃性を有し且つ接合加工性に優れた看板用難燃性シートに関する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の看板用難燃性シートは、ガラスクロスと、このガラスクロスの一面に積層一体化された第一難燃性樹脂層と、上記ガラスクロスの他面に積層一体化された第二難燃性樹脂層とを備えた看板用難燃性シートであって、第一難燃性樹脂層は、酸素含有熱可塑性樹脂、層状珪酸塩及び難燃剤を含有しており、上記層状珪酸塩は、広角X線回折測定法によって測定された(001)面の平均層間距離が3nm以上で且つ少なくとも一部が5層以下であると共に、第二難燃性樹脂層は、フッ素系樹脂を主成分として含有していることを特徴とする。
【0013】
看板用難燃性シートを構成しているガラスクロスは汎用のものが用いられる。ガラスクロスの経糸密度及び緯糸密度は、低いと、看板用難燃性シートの抗張力や引張強度などの機械的強度が低下し、或いは、ガラスクロスと第一、第二難燃性樹脂層との密着性が低下することがあり、高いと、看板用難燃性シートの透光性が低下して意匠性及び鮮明性が低下し、或いは、ガラスクロスと第一、第二難燃性樹脂層との密着性が低下することがあるので、15〜45本/25mmが好ましく、20〜40本/25mmがより好ましい。
【0014】
ガラスクロスを構成している単繊維の直径は、細いと、看板用難燃性シートの耐候性、耐磨耗性及び抗張力などの機械的強度が低下することがあり、太いと、看板用難燃性シートの透光性が低下して意匠性及び鮮明性ガラスクロス低下することがあるので、3〜10μmが好ましい。
【0015】
又、ガラスクロスの厚さは、薄いと、看板用難燃性シートの機械的強度が低下し、或いは、看板用難燃性シートの難燃性が低下することがあり、厚いと、ガラスクロスの柔軟性が低下することがあるので、100〜400μmが好ましく、150〜300μmがより好ましい。
【0016】
そして、ガラスクロスの目付は、低いと、看板用難燃性シートの抗張力などの機械的強度が低下し、高いと、看板用難燃性シートの軽量性が低下して施工性が低下することがあるので、150〜350g/m2が好ましい。
【0017】
更に、看板用難燃性シートの難燃性を向上させるために、ガラスクロスの表面をポリリン酸カルバメートなどの難燃剤によって処理してもよい。ガラスクロス表面への難燃剤の塗工量としては、少ないと、看板用難燃性シートの難燃性が向上しないことがあり、多いと、ガラスクロスが硬くなって看板用難燃性シートの柔軟性が低下することがあるので、20〜70g/m2が好ましい。
【0018】
ガラスクロスの一面には第一難燃性樹脂層が積層一体化されており、この第一難燃性樹脂層は、酸素含有熱可塑性樹脂、層状珪酸縁及び難燃剤を含有している。
【0019】
酸素含有熱可塑性樹脂としては、特に限定されないが、エチレン−(メタ)アクリル酸アルキル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体及びエチレン−ビニルアルコール共重合体からなる群より選択される少なくとも1種を用いることが好ましい。
【0020】
酸素含有熱可塑性樹脂がエチレン成分を含有する共重合体である場合、エチレンと共重合している共重合成分の含有量は、少ないと、看板用難燃性シートの難燃性が低下することがあり、多いと、看板用難燃性シートの製膜性が低下し、或いは、看板用難燃性シートがブロッキングを生じることがあるので、10〜30重量%が好ましい。
【0021】
又、酸素含有熱可塑性樹脂の酸素含有量は、少ないと、看板用難燃性シートの難燃性が低下することがあり、多いと、看板用難燃性シートの製膜性が低下し、或いは、看板用難燃性シートの表面がべたついて。塵挨が付着するなどの不具合を生じることがあるので、5〜15重量%が好ましい。
【0022】
更に、酸素含有熱可塑性樹脂の重量平均分子量は、5000〜5000000が好ましく、20000〜300000がより好ましい。又、酸素含有熱可塑性樹脂の分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量)は、1.1〜80が好ましく、1.5〜40がより好ましい。
【0023】
そして、ガラスクロスの一面に第一難燃性樹脂層を形成するにあたって、酸素含有熱可塑性樹脂としてエチレン−酢酸ビニル共重合体を用いる場合、固体状のエチレン−酢酸ビニル共重合体をガラスクロスの一面に押出ラミネートしても、或いは、エチレン−酢酸ビニル共重合体のエマルジョンを作製し、このエマルジョンをガラスクロスの一面に塗布し乾燥させてもよい。
【0024】
エチレン−酢酸ビニル共重合体のエマルジョンの粘度は、低いと、ガラスクロスに塗布した際に、エマルジョンがガラスクロスの表面にはじかれて第一難燃性樹脂層の厚みが不充分となることがあり、高いと、ガラスクロス上に均一に塗布することができず、第一難燃性樹脂層の厚みが不均一となることがあるので、1000〜10000mPa・sが好ましい。
【0025】
又、第一難燃性樹脂層には層状珪酸塩が含有されている。この層状珪酸塩は、広角X線回折測定法により測定した(001)面の平均層間距離が3nm以上であり、且つ、少なくとも一部が5層以下である。
【0026】
第一難燃性樹脂層中に上述の如き層状珪酸塩を含有していることによって、看板用難燃性シートは、燃焼被膜となりうる焼結体を形成しやすくなる。この焼結体は、燃焼時の早い段階で形成され、外界からの酸素の供給を遮断するのみならず、燃焼により発生する可燃性ガスも遮断し、酸素含有熱可塑性樹脂の発熱速度を抑制することができ、第一難燃性樹脂層は優れた燃焼防止性能を発現する。
【0027】
従って、第一難燃性樹脂層中に上記層状珪酸塩を含有させることによって、難燃剤や難燃助剤の含有量をそれほど多くしなくても充分な難燃性を得ることができる。そして、難燃剤や難燃助剤の配合量を減らすことによって、第一難燃性樹脂層中における酸素含有熱可塑性樹脂量を相対的に多くすることができ、その結果、看板用難燃性シートは接合加工性に優れている。
【0028】
層状珪酸塩における広角X線回折測定法により測定した(001)面の平均層間距離は、3nm以上に限定され、6nm以上が好ましい。これは、上記平均層間距離が大きいほど、層状珪酸塩の結晶薄片層が層ごとに分離し、層状珪酸塩の結晶薄片層間における相互作用が殆ど無視できるほどに弱まるので、層状珪酸塩を構成する結晶薄片の酸素含有熱可塑性樹脂中での分散状態が離砕安定化の方向に進行するからである。
【0029】
更に、層状珪酸塩において、少なくとも一部、好ましくは全部が5層以下であるということは、結晶薄片層が通常、数十層積層してなる積層体である層状珪酸塩の層状分子の少なくとも一部が剥離して広く分散していることを意味しており、これも層状珪酸塩の結晶薄片層間における相互作用が弱まっていることになり、上記と同様の効果を得ることができる。
【0030】
又、第一難燃性樹脂層中に含有されている層状珪酸塩の10重量%以上が5層以下となっていることが好ましく、層状珪酸塩の20重量%以上が5層以下となっていることがより好ましく、層状珪酸塩の全てが5層以下となっていることが特に好ましい。
【0031】
更に、第一難燃性樹脂層中に含有されている層状珪酸塩の層数は、多いと、層状珪酸塩の結晶薄片層間における相互作用が大きく、層状珪酸塩を構成する結晶薄片の酸素含有熱可塑性樹脂中での分散状態の離砕安定性が低下するので、5層以下に限定され、1層が好ましい。
【0032】
なお、層状珪酸塩における広角X線回折測定法によって測定された(001)面の平均層間距離は下記の要領で測定される。X線回折測定装置を用いて第一難燃性樹脂層中の層状珪酸塩の積層面の回折により得られる回折ピークの2θを測定し、下記のブラッグの回折式に基づいて層状珪酸塩の(001)面間隔dを算出し、この値を層状珪酸塩の平均層間距離(nm)とした。なお、X線回折測定装置は、例えば、リガク社から商品名「RINT1100」)にて市販されている。
λ=2dsinθ
式中、λは0.154(nm)であり、θは回折角を示す
【0033】
又、層状珪酸塩の層数は、第一難燃性樹脂層を透過型電子顕微鏡を用いて観察し、各層状珪酸塩の層数を数えた。透過型電子顕微鏡は、例えば、日本電子社から商品名「JEM−1200EX II」にて市販されている。
【0034】
以上の如く、第一難燃性樹脂層中の層状珪酸塩は、酸素含有熱可塑性樹脂中に高分散しているので、燃焼時に、層状珪酸塩がガラスクロスの隙間に円滑に入り込み、高強度の難燃性被膜層を形成することができる。
【0035】
従って、織目が粗いガラスクロスであっても優れた難燃性を実現することができ、看板用難燃性シートに優れた透光性と難燃性を付与することができる。
【0036】
又、層状珪酸塩は、その層数が少なく、酸素含有熱可塑性樹脂中に高分散していることから、層状珪酸塩と酸素含有熱可塑性樹脂との接触面積が増加しており、層状珪酸塩の結晶薄片間の平均隣接距離が小さくなる。
【0037】
そして、酸素含有熱可塑性樹脂と層状珪酸塩との接触面積が増大すると、層状珪酸塩の表面における酸素含有熱可塑性樹脂の拘束の度合いが高まり、第一難燃性樹脂層の弾性率などの力学的強度が向上する。
【0038】
更に、層状珪酸塩の表面における酸素含有熱可塑性樹脂の拘束の度合いが高まると、酸素含有熱可塑性樹脂の溶融粘度が高くなり、第一難燃性樹脂層の形成時における成形性も向上する。
【0039】
加えて、第一難燃性樹脂層の酸素含有熱可塑性樹脂中に含有されている添加剤がブリードアウトするのを層状珪酸塩が阻止し、第一難燃性樹脂層中の添加剤がブリードアウトするのを防止することができると共に、層状珪酸塩によって第一難燃性樹脂層内に紫外線が入射するのを低減させることができ、第一難燃性樹脂層の酸素含有熱可塑性樹脂が紫外線によって劣化するのを防止して、看板用難燃性シートの耐候性を向上させることができる。
【0040】
このような層状珪酸塩とは、結晶薄片層間に交換性金属カチオンを有する珪酸塩鉱物をいい、層状珪酸塩としては、例えば、モンモリロナイト、サポナイト、ヘクトライト、バイデライト、スティブンサイト、ノントロナイトなどのスメクタイト系粘土鉱物やバーミキュライト、ハロイサイト、膨潤性マイカ(膨潤性雲母)などが挙げられ、モンモリロナイト及び/又は膨潤性マイカが好ましい。層状珪酸塩は、天然物であってもよいし、合成物であってもよい。なお、層状珪酸塩は、単独で用いられても二種以上が併用されもよい。
【0041】
層状珪酸塩としては、看板用難燃性シートの機械的強度が向上することから、下記式(1)で定義される形状異方性の大きい、スメクタイト系粘土鉱物や膨潤性マイカを用いることが好ましい。
形状異方性=結晶表面(A)の面積/結晶側面(B)の面積 (2)
なお、結晶表面(A)は、層状珪酸塩の層表面を意味し、結晶側面(B)は、層状珪酸塩の層側面を意味する。
【0042】
層状珪酸塩の形状は、特に限定されないが、平均長さが0.01〜3μm、平均厚みが0.001〜1μm、アスペクト比が20〜500であることが好ましく、平均長さが0.05〜2μm、平均厚みが0.01〜0.5μm、アスペクト比が50〜200であることがより好ましい。なお、層状珪酸塩の平均長さ、平均厚み及びアスペクト比は、下記の要領で測定されたものをいう。
【0043】
層状珪酸塩の結晶薄片層間に存在する交換性金属カチオンとは、層状珪酸塩の結晶薄片層間に存在するナトリウムイオンやカルシウムイオンなどの金属イオンのことであり、これら金属イオンは、他のカチオン性物質とのカチオン交換性を有するため、カチオン性を有する種々の物質を層状珪酸塩の結晶薄片層間に挿入(インターカレート)若しくは捕捉させることができる。
【0044】
層状珪酸塩のカチオン交換容量は、低いと、カチオン交換により層状珪酸塩の結晶薄片層間に挿入若しくは捕捉されるカチオン性物質の量が少なくなるために、結晶薄片層間が充分に非極性化(疎水化)されないことがあり、高いと、層状珪酸塩の結晶薄片層間の結合力が強固になりすぎて、結晶薄片層同士が剥離しにくくなることがあるので、50〜200ミリ等量/100gが好ましい。
【0045】
そして、層状珪酸塩の結晶薄片層間の交換性金属カチオンをカチオン性界面活性剤でカチオン交換して、結晶薄片層間を非極性化しておくことが好ましい。層状珪酸塩の結晶薄片層間を非極性化しておくことにより、層状珪酸塩と、酸素含有熱可塑性樹脂中の低極性部分との親和性が高まり、層状珪酸塩を酸素含有熱可塑性樹脂中により均一に高分散させることができる。
【0046】
カチオン性界面活性剤としては特に限定されず、例えば、4級アンモニウム塩や4級ホスホニウム塩などが挙げられ、層状珪酸塩の結晶薄片層間を充分に非極性化しうることから、炭素数が6以上のアルキル基を1個以上有する4級アンモニウム塩(アルキル基の炭素数が6以上のアルキルアンモニウム塩)が好ましい。カチオン性界面活性剤は、単独で用いられても二種以上が併用されもよい。
【0047】
4級アンモニウム塩としては、特に限定されず、例えば、ラウリルトリメチルアンモニウム塩、ステアリルトリメチルアンモニウム塩、トリオクチルメチルアンモニウム塩、ジステアリルジメチルアンモニウム塩、ジ硬化牛脂ジメチルアンモニウム塩、ジステアリルジベンジルアンモニウム塩、N−ポリオキシエチレン−N−ラウリル−N,N−ジメチルアンモニウム塩などが挙げられ、単独で用いられても二種以上が併用されもよい。
【0048】
又、4級ホスホニウム塩としては、特に限定されず、例えば、ドデシルトリフェニルホスホニウム塩、メチルトリフェニルホスホニウム塩、ラウリルトリメチルホスホニウム塩、ステアリルトリメチルホスホニウム塩、トリオクチルメチルホスホニウム塩、ジステアリルジメチルホスホニウム塩、ジステアリルジベンジルホスホニウム塩などが挙げられ、単独で用いられても二種以上が併用されもよい。
【0049】
第一難燃性樹脂層中における層状珪酸塩の含有量は、少ないと、燃焼時に焼結体を形成しにくくなり、看板用難燃性シートの難燃性が低下することがあり、多いと、看板用難燃性シートの軽量性及び柔軟性が低下して加工性や施工性が低下し、或いは、看板用難燃性シートの接合加工性が低下することがあるので、酸素含有熱可塑性樹脂100重量部に対して0.1〜50重量部が好ましく、1〜20重量部がより好ましい。
【0050】
第一難燃性樹脂層の酸素含有熱可塑性樹脂中への層状珪酸塩の配合方法としては、特に限定されず、酸素含有熱可塑性樹脂と層状珪酸塩とを押出機、二本ロール、バンバリーミキサーなどに供給して溶融混練する方法、酸素含有熱可塑性樹脂と層状珪酸塩との両者が溶解又は分散する有機溶媒中で混合する方法、重合触媒としての遷移金属錯体を含有する層状珪酸塩の存在下にて、酸素含有熱可塑性樹脂の原料となる単量体を重合することによって酸素含有熱可塑性樹脂中に層状珪酸塩を分散させる方法などが挙げられる。
【0051】
遷移金属錯体としては、酸素含有熱可塑性樹脂の原料となる単量体の重合触媒としての作用を有するものであればよく、特に限定されず、例えば、IV族、V族、X族、XI族の金属錯体などが挙げられ、単独で用いられても二種以上が併用されもよい。
【0052】
なお、層状珪酸塩には、上述したカチオン性界面活性剤によるカチオン交換法以外に、酸素含有熱可塑性樹脂への分散性を向上させるために、各種化学処理法が施されてもよい。
【0053】
第一難燃性樹脂層には、酸素含有熱可塑性樹脂中において層状珪酸塩の分散性を向上させるために分散剤を含有させてもよい。このような分散剤としては、特に限定されず、例えば、無水マレイン酸変性ポリオレフィン系オリゴマーや無水マレイン酸変性ポリオレフィン系樹脂などが挙げられ、両端が異なる性質を有するA−B型ジブロックオリゴマーや、両端が異なる性質を有するA−B型ジブロック樹脂が好ましい。
【0054】
両端が異なる性質を有するA−B型ジブロックオリゴマーや、両端が異なる性質を有するA−B型ジブロック樹脂とは、層状珪酸塩との化学的親和力が大きい部位(Aサイト)と、酸素含有熱可塑性樹脂との化学的親和性の高い部位(Bサイト)を有しており、AサイトとBサイトの作用によって、層状珪酸塩を酸素含有熱可塑性樹脂中に高分散させることができる。
【0055】
第一難燃性樹脂層中における分散剤の含有量は、少ないと、充分に分散しないことがあり、多いと、機械的強度が低下することがあるので、酸素含有熱可塑性樹脂100重量部に対して1〜10重量部が好ましい。
【0056】
又、第一難燃性樹脂層には難燃剤が含有されている。このような難燃剤としては、特に限定されず、例えば、金属水酸化物、メラミン誘導体、金属酸化物、リン系難燃剤、シリコーン系難燃剤などの非ハロゲン系難燃剤が挙げられ、金属水酸化物、メラミン誘導体及び金属酸化物からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。なお、難燃剤は、単独で用いられても二種以上が併用されもよい。
【0057】
金属水酸化物は、特に限定されず、例えば、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、ドーソナイト、アルミン酸化カルシウム、2水和石こう、水酸化カルシウムなどが挙げられ、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムが好ましい。なお、金属水酸化物は、単独で用いられても二種以上が併用されもよい。
【0058】
又、金属水酸化物としては、その表面が各種の表面処理剤によって表面処理されていてもよい。表面処理剤としては、特に限定されず、例えば、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、ポリビニルアルコール系表面処理剤、エポキシ系表面処理剤などが挙げられ、単独で用いられても二種以上が併用されもよい。
【0059】
金属水酸化物(表面処理金属水酸化物も含む)は、燃焼時の高熱下で吸熱脱水反応を起こすことにより、吸熱し且つ水分子を放出することで燃焼場の温度を低下させ、消火する効果を発揮する。なお、複数種類の金属水酸化物を併用することにより、各々の金属水酸化物が異なる温度で吸熱脱水反応を開始するので、更に高い難燃効果を得ることができる。
【0060】
そして、本発明の看板用難燃性シートでは、第一難燃性樹脂層中に層状珪酸塩を含有しているので、金属水酸化物による難燃化効果が増大される。これは、層状珪酸塩の燃焼時の被膜形成による難燃化効果と金属水酸化物の吸熱脱水反応による難燃化効果とが協奏的に起こり、それぞれの難燃化効果が助長されるからである。
【0061】
メラミン誘導体としては、特に限定されず、例えば、メラミン、メラミンシアヌレート、メラミンイソシアヌレートや、これらに表面処理が施されたものなどが挙げられ、メラミンシアヌレートが好ましい。なお、メラミン誘導体は、単独で用いられても二種以上が併用されもよい。
【0062】
メラミン誘導体は、燃焼時の高熱下で重合反応を起こすことによって焼結体を形成し、この焼結体は燃焼時の早い段階で形成されるので、外界からの酸素の供給を遮断するのみならず、燃焼により発生する可燃性ガスも遮断して、看板用難燃性シートの発熱速度を抑制し、優れた延焼防止性能を発揮する。
【0063】
金属酸化物としては、特に限定されず、例えば、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化銅、硼酸亜鉛(2ZnO・3B23・3.5H2O)や、これらに表面処理が施されたものなどが挙げられ、硼酸亜鉛が好ましい。なお、金属酸化物は、単独で用いられても二種以上が併用されもよい。
【0064】
金属酸化物は、燃焼時の高熱下で重合反応を起こすことによって焼結体を形成し、この焼結体は燃焼時の早い段階で形成されるので、外界からの酸素の供給を遮断するのみならず、燃焼により発生する可燃性ガスも遮断して、看板用難燃性シートの発熱速度を抑制し、優れた延焼防止性能を発揮する。
【0065】
第一難燃性樹脂層中における難燃剤の含有量は、少ないと、看板用難燃性シートの難燃性が低下することがあり、多いと、看板用難燃性シートの軽量性及び柔軟性が低下し加工性や施工性が低下することがあるので、酸素含有熱可塑性樹脂100重量部に対して5〜100重量部が好ましく、20〜60重量部がより好ましい。
【0066】
又、第一難燃性樹脂層には、酸素指数を向上させ或いは最大発熱速度を大幅に低下させるために、難燃助剤が含有されていることが好ましい。このような難燃助剤としては、特に限定されないが、シリコーン・アクリル複合ゴム、シリコーンオイルが好ましい。難燃助剤は、単独で用いられても二種以上が併用されもよい。
【0067】
シリコーン・アクリル複合ゴムやシリコーンオイルは、活性基を有する酸素含有熱可塑性樹脂と燃焼時に反応してチャー形成(チャー化)を促進し、又は、ガラス状の無機化合物の被膜が形成されるときには、保護材として強固なものとなり、酸素含有熱可塑性樹脂の熱分解を抑制する。
【0068】
第一難燃性樹脂層中における難燃助剤の含有量は、少ないと、看板用難燃性シートの酸素指数が充分に向上せず、或いは、最大発熱速度が充分に低下しないことがあり、多いと、看板用難燃性シートの軽量性及び柔軟性が低下し加工性や施工性が低下することがあるので、酸素含有熱可塑性樹脂100重量部に対して0.1〜20重量部が好ましく、0.5〜15重量部がより好ましい。
【0069】
なお、第一難燃性樹脂層中には、必要に応じて、層状珪酸塩以外の無機充填剤、酸化防止剤(老化防止剤)、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、離型剤、帯電防止剤などの添加剤が添加されていてもよい。又、第一難燃性樹脂層の物性を均質なものとするために、結晶核剤となりうるものが少量含有されて酸素含有熱可塑性樹脂の結晶が微細化されていてもよい。
【0070】
層状珪酸塩以外の無機充填剤としては、特に限定されず、例えば、炭酸カルシウム、タルク、クレー、シリカなどが挙げられる。無機充填剤は、単独で用いられても二種以上が併用されもよい。
【0071】
第一難燃性樹脂層の厚みは、薄いと、機械的強度が得られないことがあり、厚いと、施工性・透光性が低下することがあるので、30〜200μmが好ましく、50〜150μmがより好ましい。
【0072】
又、第一難燃性樹脂層はガラスクロスの一面に積層一体化されているが、第一難燃性樹脂層は、ガラスクロスの一面に単に積層されているのではなく、第一難燃性樹脂層の一部がガラスクロス内に進入(含浸)していることが好ましい。このように、第一難燃性樹脂層の一部がガラスクロス内に進入していることによって、第一難燃性樹脂層とガラスクロスとが強固に一体化し、看板用難燃性シートに接合加工を行うにあたってガラスクロスと第一難燃性樹脂層とが不測に剥離するようなことはなく、看板用難燃性シート同士を美麗な状態に接合一体化することができる。
【0073】
そして、ガラスクロスの他面には、フッ素系樹脂を主成分として含有する第二難燃性樹脂層が積層一体化されている。第二難燃性樹脂層がフッ素系樹脂を主成分として含有していることによって、看板用難燃性シートは優れた難燃性を発揮する。
【0074】
フッ素系樹脂は耐熱性が高く、看板用難燃性シート同士を接合加工する際に加えられる熱によっても歪みが生じにくく熱変形が生じにくいため、看板用難燃性シート同士を接合一体化させて、美麗な大判の看板用難燃性シートを得ることができる。
【0075】
フッ素系樹脂としては、特に限定されず、テトラフルオロエチレン(TFE)とパーフルオロアルキルビニルエーテルとの共重合体、TFEとヘキサフルオロプロピレン(HFP)の共重合体、TFEとエチレンの共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)とエチレンの共重合体、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデン(VDF)とHFPの共重合体、VDFとCTFEの共重合体、VDFとTFEとHFPの三元共重合体、これらの重合体を構造中に含む、ブロックポリマー、グラフトポリマーや、フッ素化エチレン−プロピレン共重合体(FEP)、パーフルオロアルコキシ重合体(PFA)、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ポリビニリデンフッ素樹脂(PVDF)、クロロエチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、シクロとエチレンテトラフルオロエチレンなどが挙げられる。
【0076】
なお、フッ素系樹脂は、例えば、arkem社から商品名「kynar」、ダイキン社から商品名「ポリフロン」で市販されている。
【0077】
なお、第二難燃性樹脂層には、その物性を損なわない範囲内において、フッ素系樹脂以外にその他の合成樹脂を含有していてもよい。このような合成樹脂としては、例えば、ポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂などが挙げられる。
【0078】
第二難燃性樹脂層中におけるフッ素系樹脂の含有量は、少ないと、第二難燃性樹脂層の難燃性が低下し、或いは、看板用難燃性シートの接合加工性が低下することがあるので、合成樹脂成分中、50〜100重量%が好ましく、100重量%がより好ましい。
【0079】
又、第二難燃性樹脂層中において、フッ素系樹脂以外に合成樹脂が含有されている場合には、この合成樹脂の含有量は、上記と同様の理由で、第二難燃性樹脂層の合成樹脂成分中、0.1〜20重量%が好ましく、1〜10重量%がより好ましい。
【0080】
なお、第二難燃性樹脂層中には難燃性を向上させるために、酸化チタン、酸化アンチモン、水酸化アルミニウムなどの金属酸化物、炭酸カルシウムなどの難燃助剤を含有していてもよい。
【0081】
第二難燃性樹脂層中における難燃助剤の含有量は、少ないと、難燃助剤を添加した効果が発現しないことがあり、多いと、機械的強度が十分に得られないことがあるので、第二難燃性樹脂層中の合成樹脂成分100重量部に対して1〜50重量部が好ましい。
【0082】
そして、第二難燃性樹脂層の厚みは、薄いと、機械的強度が十分に得られないことがあり、厚いと、施工性・透光性の低下となることがあるので、30〜200μmが好ましく、50〜150μmがより好ましい。
【0083】
更に、第二難燃性樹脂層上にアクリルウレタン共重合体を含有するコーティング層が積層一体化されていてもよい。このコーティング層を設けることによって、看板用難燃性シートに耐候性、防汚性、マーキングフィルムとの接着力、耐水性、耐摩耗性などを付与することができる。
【0084】
第二難燃性樹脂層の樹脂成分中におけるアクリルウレタン共重合体の含有量は、少ないと、充分な耐候性が得られなくなることがあるので、100重量%が好ましい。
【0085】
上記コーティング層を構成しているアクリルウレタン共重合体は、エチレン性の不飽和二重結合基を両末端に有する高分子直鎖状ポリウレタンプレポリマーに、少なくとも一種の(メタ)アクリル酸エステルを含有するビニル系化合物を重合させることによって得られる共重合体であり、基本的には、特開平10−1524号公報に記載される方法に従って得ることができる。
【0086】
即ち、アクリルウレタン共重合体は、両末端不飽和二重結合基を有する高分子直鎖状ポリウレタンプレポリマーを製造する工程と、このプレポリマー存在下で、少なくとも1種の(メタ)アクリル酸エステル基を有するビニル系化合物を重合させる工程とによって製造することができる。
【0087】
詳細には、第一工程でエチレン性不飽和二重結合基を有する高分子直鎖状ポリウレタンプレポリマーを製造する。具体的には、第一工程は、重量平均分子量が10000〜100000の範囲にある両末端にNCO基を有する高分子直鎖状ウレタンセグメントを合成し、次に、両末端のNCOに、これと反応し得る水酸基一個を含む(メタ)アクリル酸エステルを理論量付加させることからなる。この高分子直鎖状ウレタンセグメントを合成するには、一般的な手法に従えばよく、長鎖ジオール、短鎖グリコール、必要に応じて、鎖延長剤などを併用し、共重合体の設計分子量に対して理論量の有機ジイソシアネートを加えて反応させればよい。この反応は不活性有機溶剤中で行い、反応を促進するために金属触媒や第三級アミン触媒を用いることも可能である。
【0088】
第二工程では、第一工程で合成した両末端にエチレン性不飽和二重結合基を持った高分子直鎖状ポリウレタンプレポリマーに、少なくとも1種の(メタ)アクリル酸エステルを含有するビニル系化合物を加え、ラジカル発生剤の存在下、有機溶剤中において高分子直鎖状ポリウレタンプレポリマーの両末端不飽和二重結合を起点としたビニル系化合物のラジカル重合反応を行い、アクリルウレタン共重合物を合成する。この反応はアクリル樹脂重合の一般的な手法であり、ラジカル発生剤の存在下にてラジカル重合を行えばよい。この際、適宜チオール基含有化合物を連鎖移動剤として反応液に添加してアクリルの重合度を調整することもできる。
【0089】
アクリルウレタン共重合体の重量平均分子量は、15000〜150000が好ましい。なお、アクリルウレタン共重合体の重量平均分子量は、GPC(ゲエルパーミエーションクロマトグラフィー)を用いて測定されたものをいう。
【0090】
又、コーティング層には、架橋剤、顔料、光安定剤、紫外線吸収剤などが添加されていてもよい。コーティング層中に架橋剤を含有させることによって緻密な三次元網目構造をコーティング層に付与することができ好ましい。
【0091】
架橋剤としては、アクリル樹脂の架橋剤として使用されているものであれば、特に限定されず、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、アジリジン系架橋剤などが挙げられ、コーティング層が耐候性に優れることから、イソシアネート系架橋剤が好ましく、脂肪族イソシアネート系架橋剤がより好ましい。
【0092】
コーティング層中における架橋剤の含有量は、少ないと、架橋剤を添加した効果が発現しないことがあり、多いと、コーティング層の柔軟性が低下することがあるので、アクリルウレタン共重合体100重量部に対して0.2〜30重量部が好ましい。
【0093】
なお、コーティング層の架橋方法としては、特に限定されず、架橋剤を含有するアクリルウレタン共重合体を加熱する方法、架橋剤を含有するアクリルウレタン共重合体に放射線を照射する方法などが挙げられる。
【0094】
コーティング層の厚みは、薄いと、看板用難燃性シートに充分な耐候性や防汚性を付与することができず、或いは、マーキングフィルムとの接着性が低下することがあり、厚いと、看板用難燃性シートの柔軟性が不足し、或いは、コーティング層が第二難燃性樹脂層上から剥離することがあるので、1〜100μmが好ましく、2〜50μmがより好ましく、3〜19μmが特に好ましい。
【0095】
第二難燃性樹脂層上にコーティング層を積層一体化する方法としては、特に限定されず、例えば、コーティング層となるアクリルウレタン共重合体を含有するシートを第二難燃性樹脂層上に積層一体化する方法、アクリルウレタン共重合体を含有する溶液を第二難燃性樹脂層上に塗布し乾燥させる方法などが挙げられる。
【0096】
又、第二難燃性樹脂層上にコーティング層を積層一体化するにあたって、第二難燃性樹脂層とコーティング層との間に粘着剤層を介在させてもよい。この粘着剤層を構成する粘着剤としては、エチレン−酢酸ビニル共重合体系粘着剤が好ましい。
【0097】
第二難燃性樹脂層上に粘着剤層を形成するにあたって、第二難燃性樹脂層上に、溶剤中に溶解させてなる溶剤型のエチレン−酢酸ビニル共重合体系粘着剤を塗布し乾燥させることによって粘着剤層を形成しても、或いは、水中にエチレン−酢酸ビニル共重合体系粘着剤を乳化分散させてなるエマルジョン型のエチレン−酢酸ビニル共重合体系粘着剤を塗布し乾燥させることによって粘着剤層を形成しても、或いは、エチレン−酢酸ビニル共重合体系粘着剤自体を溶剤や水に溶解又は分散させることなく第二難燃性樹脂層上に塗布してもよい。
【0098】
粘着剤層の厚みは、薄いと、第二難燃性樹脂層とコーティング層とを強固に一体化させることができないことがあり、厚くても、粘着剤層の効果は変わらないので、1〜10μmが好ましく、3〜5μmがより好ましい。
【0099】
次に、看板用難燃性シートの製造方法について説明する。看板用難燃性シートの製造方法としては、特に限定されず、(1)ガラスクロスを撥水処理した後に、ガラスクロスの一面に第一難燃性樹脂層となる第一シートを積層一体化すると共に、ガラスクロスの他面に第二難燃性樹脂層となる第二シートを積層一体化する看板用難燃性シートの製造方法、(2)ガラスクロスの一面に、酸素含有熱可塑性樹脂、層状珪酸塩及び難燃剤を含有する樹脂組成物を塗布、乾燥させて第一難燃性樹脂層を形成すると共に、ガラスクロスの他面に、フッ素系樹脂を主成分とする樹脂組成物を塗布、乾燥させて第二難燃性樹脂層を形成する看板用難燃性シートの製造方法などが挙げられる。
【0100】
上記第一難燃性樹脂層となる第一シートは、特に限定されず、例えば、酸素含有熱可塑性樹脂、層状珪酸塩及び難燃剤を含有する樹脂組成物を押出成形法、カレンダー成形法、熱プレス成形法、インフレーション成形法などの公知の成形法でシート状に成形することによって製造することができる。
【0101】
又、上記第二難燃性樹脂層となる第二シートは、例えば、フッ素系樹脂を主成分とする樹脂組成物を押出成形法、カレンダー成形法、熱プレス成形法、インフレーション成形法などの公知の成形法でシート状に成形することによって製造することができる。
【0102】
そして、上記看板用難燃性シートは、その第二難燃性樹脂層上に直接、所望の印刷を施し、或いは、その第二難燃性樹脂層上に、所望の印刷が施された印刷シートを粘着剤を介して積層一体化させた上で看板装置に配設され、看板装置の光源によって背後から光を照射することによって、看板用難燃性シート上の印刷を浮かび上がらせることができる。
【0103】
更に、看板用難燃性シートは接合加工性に優れており、看板用難燃性シート同士を接合一体化して大判の看板用難燃性シートとして用いるのに特に適している。具体的には、二枚の看板用難燃性シートを接合一体化するにあたっては、先ず、二枚の看板用難燃性シートをそれらの端縁同士が隙間なく突き合わせられた状態に接合した上で、看板用難燃性シートの第一難燃性樹脂層同士の接合部分に接合用テープを貼着した後、看板用難燃性シートの接合部分に熱を加えて、看板用難燃性シートの第一難燃性樹脂層及び接合用テープを溶融させることによって、二枚の看板用難燃性シートを接合一体化させることができる。なお、接合用テープとしては、テープ基材の一面にホットメルト接着剤を積層一体化してなるもの、ホットメルト接着剤自体をテープ状に形成してなるものなどが挙げられる。
【0104】
この際、看板用難燃性シートの第二難燃性樹脂層は、フッ素系樹脂を主成分としていることから、第一難燃性樹脂層よりも耐熱性に優れており、看板用難燃性シート同士を接合一体化させるために加えられる熱によって溶融することはなく、看板用難燃性シートの第二難燃性樹脂層側の接合部分は熱を加える前の状態を確実に維持しており、第二難燃性樹脂層同士の接合部分は溶融に伴う変形などは発生しておらず、第二難燃性樹脂層同士は殆ど継目が認識できない状態に美麗に接合一体化されている。
【0105】
更に、看板用難燃性シートのガラスクロス内に第二難燃性樹脂層の一部が進入している場合には、看板用難燃性シート同士を接合させるために加える熱によってガラスクロス内に進入した酸素含有熱可塑性樹脂同士も溶融一体化し、看板用難燃性シート同士はより強固に接合一体化される。
【発明の効果】
【0106】
本発明の看板用難燃性シートは、ガラスクロスと、このガラスクロスの一面に積層一体化された第一難燃性樹脂層と、上記ガラスクロスの他面に積層一体化された第二難燃性樹脂層とを備えた看板用難燃性シートであって、第一難燃性樹脂層は、酸素含有熱可塑性樹脂、層状珪酸塩及び難燃剤を含有しており、上記層状珪酸塩は、広角X線回折測定法によって測定された(001)面の平均層間距離が3nm以上で且つ少なくとも一部が5層以下であると共に、第二難燃性樹脂層は、フッ素系樹脂を主成分として含有しているので、第一難燃性樹脂層中には、特定の層状珪酸塩が酸素含有熱可塑性樹脂中に高度に均一に分散し、層状珪酸塩による酸素遮断効果によって優れた難燃性を発揮する。
【0107】
従って、第一難燃性樹脂層中に含有させる難燃剤の量を低減させて酸素含有熱可塑性樹脂の含有量を相対的に高めることができ、その結果、本発明の看板用難燃性シートは優れた接合加工性を有している。
【0108】
又、第一難燃性樹脂層中の層状珪酸塩は、第一難燃性樹脂層中に含有させている添加剤がブリードアウトするのを効果的に防止すると共に、第一難燃性樹脂層中に紫外線などが入射して酸素含有熱可塑性樹脂が劣化するのも効果的に防止しており、看板用難燃性シートは長期間に亘って優れた性能を維持することができる。
【0109】
そして、第二難燃性樹脂層はフッ素系樹脂層を主成分としているので、看板用難燃性シート同士を接合一体化させるにあたって、第一難燃性樹脂層を溶融させるために加える熱によって第二難燃性樹脂層が溶融するようなことはなく、看板用難燃性シート同士を接合一体化した後も第二難燃性樹脂層は美麗な状態を維持し、看板用難燃性シートの第二難燃性樹脂層同士の継目は殆ど目立たず、よって、本発明の看板用難燃性シートによれば、美麗な大判の看板用難燃性シートを容易に得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0110】
(実施例1)
エチレン−アクリル酸エチル共重合体(日本ポリオレフィン社製 商品名「A4250」、酸素含有量:8重量%)100重量部、ジステアリルジメチル4級アンモニウム塩で有機化処理した膨潤性フッ素マイカ(コープケミカル社製 商品名「ソマシフMAE−100」)10重量部、水酸化マグネシウム(協和化学工業社製 「キスマ5J」)25重量部、無水マレイン酸変性エチレンオリゴマー(日本ポリオレフィン社製 「ERA403A」)5重量部及びシリコーン・アクリル複合ゴム(三菱レイヨン社製 「メタブレンSX−005」)2重量部を押出機(日本製鋼所社製 商品名「TEX30」)中に供給して180℃にて溶融混練してストランド状に押出し、このストランドをペレタイザーを用いてペレット化した。得られたペレットを180℃にて熱プレスして厚みが120μmの第一シートを得た。
【0111】
なお、第一シート中に含有されている層状珪酸塩は、その広角X線回折測定法によって測定された(001)面の平均層間距離が3nm以上であって、20重量%以上が層数5以下であった。
【0112】
又、フッ素系樹脂としてビニリデンフロライド−ヘキサフルオロプロピレン系重合体(arkema社製 商品名「kynar2820」)80重量部、ビニリデンフロライド−ヘキサフルオロプロピレン系重合体(arkema 社製 商品名「kynar9310」)20重量部及び酸化チタン(テイカ社製 商品名「JR301」)3重量部を押出機(日本製鋼所社製 商品名「TEX30」)中に供給して180℃にて溶融混練してストランド状に押出し、このストランドをペレタイザーを用いてペレット化した。得られたペレットを180℃にて熱プレスして厚みが120μmの第二シートを得た。
【0113】
経糸密度44本/25mm、緯糸密度33本/25mm、単繊維の直径9μm、撚り数0回/25mm、厚さ180μmであるガラスクロス(カネボウ社製 商品名「KS2500」)を用意し、ガラスクロスの一面に第一シートを積層すると共に、ガラスクロスの他面に第二シートを積層し、180℃に維持された加熱圧着ロールを用いて両側から挟圧して、ガラスクロスの一面に第一シートからなる第一難燃性樹脂層が積層一体化され且つガラスクロスの他面に第二シートからなる第二難燃性樹脂層が積層一体化されてなる看板用難燃性シートを得た。
【0114】
(実施例2)
攪拌機、温度計、冷却器及び窒素ガス導入管を備えた反応容器に、分子量1000のポリカーボネートジオール(日本ポリウレタン工業社製 商品名「ニッポラン981」)320.3重量部、イソホロンジイソシアネート(住友バイエルウレタン社製 商品名「ディスモジュールI」)75.1重量部及びトルエン500重量部を供給して窒素雰囲気下にて80℃で6時間以上に亘って反応させた。
【0115】
イソシアネート(NCO)濃度が理論量に到達した時点で2−ヒドロキシエチルメタアクリレート4.6重量部及びトルエン100重量部を反応容器に供給し、ウレタンプレポリマーの両末端のNCOが消滅するまで更に80℃で6時間に亘って反応させ、樹脂固形分濃度40重量%、粘度4000mPa・s(25℃)、重量平均分子量34000の高分子直鎖状ウレタンプレポリマー溶液を得た。
【0116】
次に、攪拌機、温度計、冷却器、窒素ガス導入管及び滴下装置を備えた反応容器に、高分子直鎖状ウレタンプレポリマー溶液393.8重量部、メチルメタアクリレート184.4重量部、2−ヒドロキシエチルメタアクリレート8.1重量部、1−チオグリセロール 1.75重量部及びトルエン82.7重量部を供給して攪拌しながら105℃まで昇温した。
【0117】
しかる後、ラジカル開始剤(日本ヒドラジン工業社製 商品名「ABN−E」)3.5重量部及びトルエン331重量部からなる混合液を反応容器に4時間かけて滴下した。
【0118】
混合液を反応容器中に滴下し終わった後に105℃で6時間に亘って反応させ、樹脂固形分濃度35重量%、25℃における粘度4000mPa・s、重量平均分子量84000のアクリルウレタン共重合体溶液を得た。
【0119】
そして、アクリルウレタン共重合体溶液1000重量部に、ヒンダードアミン光安定剤(HALS)(チバ・スペシャリティケミカルズ社製 商品名「チヌビン622LD」)10重量部及び紫外線吸収剤(UVA)(サンケミカル社製 商品名「UV5411」)5重量部、及び、架橋剤としてイソシアネート硬化剤((旭化成工業社製 商品名「デュラネートD−101」)15重量部を添加してコーティング層用組成物を得た。
【0120】
次に、実施例1と同様の要領で得られた看板用難燃性シートの第二難燃性樹脂層上にバーコーターを用いて変性エチレン−酢酸ビニル共重合体系粘着剤(ハニー化成社製 商品名「ハニセメンP−957」)を乾燥膜厚5μmにて塗工した後、看板用難燃性シートを乾燥機に供給して乾燥させて、看板用難燃性シートの第二難燃性樹脂層上に粘着剤層を積層一体化させた。
【0121】
しかる後、看板用難燃性シートの粘着剤層上にコーティング層用組成物をバーコーターを用いて塗布し乾燥させて厚みが4μmのコーティング層を積層一体化した。
【0122】
(比較例1)
ガラスクロスの両面に第一シートを積層一体化したこと以外は実施例1と同様にして看板用難燃性シートを得た。
【0123】
(比較例2)
ガラスクロスの両面に第ニシートを積層一体化したこと以外は実施例1と同様にして看板用難燃性シートを得た。
【0124】
得られた看板用難燃性シートの第一難燃性樹脂層中における層状珪酸塩の層状態、看板用難燃性シートの総発熱量及び発熱時間、並びに、接合加工性を下記の要領で測定し、その結果を表1に示した。
【0125】
(層状珪酸塩の層状態)
透過型電子顕微鏡(日本電子社製 商品名「JEM−1200EX II」)を用いて看板用難燃性シートの原料となった第一シート中の層状珪酸塩を観察し、下記の基準に基づいて判断した。
◎:5層以下の層状珪酸塩が20重量%以上で存在していた。
○:5層以下の層状珪酸塩が20重量%未満で存在していた。
×:全ての層状珪酸塩が5層を超えていた。
【0126】
(総発熱量及び発熱時間)
看板用難燃性シートから一辺が99mmの平面正方形状の試験片を切り出し、この試験片に燃焼試験ASTM E 1354に準拠してコーンカロリーメーターを用い50kW/m2の熱線を照射して試験片を燃焼させた。試験片を20分間に亘って加熱して燃焼させた後の総発熱量(MJ/m2)及び200kW/m2を超える発熱時間(秒)を測定した。
【0127】
(接合加工性)
二枚の看板用難燃性シートを用意し、二枚の看板用難燃性シートをそれらの端縁同士が隙間なく突き合わせられた状態に接合した。しかる後、看板用難燃性シートの第一難燃性樹脂層の接合部分に接合用テープ(積水化学工業社製 商品名「シームテープ」)を貼着し、次に、看板用難燃性シートの接合部分を400℃に加熱することによって、看板用難燃性シートの第一難燃性樹脂層及び接合用テープを溶融させて、看板用難燃性シート同士を接合一体化させた。そして、看板用難燃性シートの接合部分を目視観察し下記基準に基づいて評価した。
◎:看板用難燃性シート同士を完全に接合一体化することができ、看板用難燃性シート
同士の接合部分の継目も目視で認識できなかった。
○:看板用難燃性シート同士を完全に接合一体化することができたが、看板用難燃性シ
ート同士の接合部分の継目が目視で若干認識できた。
△:看板用難燃性シート同士を完全に接合一体化することができず接合部が目立った。
×:看板用難燃性シート同士を全く接合一体化することができなかった。
【0128】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラスクロスと、このガラスクロスの一面に積層一体化された第一難燃性樹脂層と、上記ガラスクロスの他面に積層一体化された第二難燃性樹脂層とを備えた看板用難燃性シートであって、上記第一難燃性樹脂層は、酸素含有熱可塑性樹脂、層状珪酸塩及び難燃剤を含有しており、上記層状珪酸塩は、広角X線回折測定法によって測定された(001)面の平均層間距離が3nm以上で且つ少なくとも一部が5層以下であると共に、上記第二難燃性樹脂層は、フッ素系樹脂を主成分として含有していることを特徴とする看板用難燃性シート。
【請求項2】
第二難燃性樹脂層上にアクリルウレタン共重合体を含有するコーティング層が積層一体化されていることを特徴とする請求項1に記載の看板用難燃性シート。
【請求項3】
第一難燃性樹脂層は、酸素含有熱可塑性樹脂100重量部、層状珪酸塩0.1〜50重量部及び難燃剤5〜100重量部を含有していることを特徴とする請求項1に記載の看板用難燃性シート。
【請求項4】
ガラスクロスの経糸密度及び緯糸密度が15〜45本/25mmであることを特徴とする請求項1に記載の看板用難燃性シート。

【公開番号】特開2010−72378(P2010−72378A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−240244(P2008−240244)
【出願日】平成20年9月19日(2008.9.19)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】