説明

真性半導体とオーミック接触部の間にPドープ半導体を備えた有機ショットキーダイオード

有機ショットキーダイオードは多結晶有機半導体層を含み、その層の一方の側面に整流接触部を有する。上記多結晶有機半導体層のもう一方の側面に非晶質のドープ半導体層が配置され、これが上記半導体層とオーミック接触層の間のバッファとして働く。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オーミック接触層と有機半導体層の間にバッファ層を組み込んだショットキーダイオードに関する。
【背景技術】
【0002】
金属−半導体接合部は、あらゆる固体デバイスにおいて重要な役割を演ずる。金属−半導体接合部は、整流接点またはオーミック接点のどちらかであることができる。理想的にはオーミック接点は、電流と電圧が線形関係を示す。整流接点は、電流と電圧が超線形関係を示す。実際にはダイオードを創り出すために整流接点を用いることができる。ダイオードは、回路の一方向に大量の電流が流れるようにし、一方その反対方向にはごくわずかな量の電流が流れるようにする一種の電子的弁として働く。ダイオードは、かなりの電流が流れるようになるのに先立って一定量の電圧をその両端間に印加する必要がある。この電圧は「順動作電圧」Vfと呼ばれ、そのダイオードに規定の順電流(または電流密度)を通すのに必要な順バイアスと定義される。通常、ダイオードはその逆方向に著しい電流が流れるのを許さないはずだが、十分な大きさの逆バイアスを加える場合、そのダイオードに逆方向にかなりの量の電流を流すことが可能になる。この逆バイアスは一般に降伏電圧と呼ばれ、或る規定の逆電流(または電流密度)がそのダイオードを通過する電圧と定義される。
【0003】
一般にショットキーダイオードと呼ばれる種類のダイオードは、金属と半導体の接合により作製される。典型的なショットキーダイオードは、2種類の異なる金属の間にはさまれた半導体から構成される。一方の金属は半導体とオーミック接点を形成し、もう一方の金属は半導体と整流接点を形成する。
【0004】
半導体はキャリアとして電子および正孔を利用する。大部分のキャリアとして電子を有する半導体は、一般にn型半導体と呼ばれ、または電子型導電率を有する半導体と呼ばれる。大部分のキャリアとして正孔を有する半導体は、一般にp型半導体と呼ばれ、または正孔型導電率を有する半導体と呼ばれる。
【0005】
有機半導体中の電子輸送にとって整流接点はその金属のフェルミエネルギーがその半導体の伝導帯端のエネルギーよりも低い場合に形成される。この半導体の伝導帯端はまた半導体の最低空軌道(LUMO)とも呼ばれる。有機半導体中の電子輸送にとってオーミック接点は、その金属のフェルミエネルギーがその半導体の伝導帯端のエネルギーよりも高い場合に形成される。別法ではオーミック接点は、そのオーミック接触部金属に隣接する半導体を多量にn型ドープすることによって形成することもできる(S・M・シェ(S.M.Sze)著、「Physics of Semiconductor Devices」(半導体デバイスの物理学)、1981年参照)。反対の状況が、有機半導体中の正孔輸送にもあてはまる。有機半導体中の正孔輸送用のオーミック接点は、その金属のフェルミエネルギーが、最高被占軌道(HOMO)とも呼ばれるその半導体の価電子帯端のエネルギーよりも低い場合に形成される。正孔輸送用のオーミック接点は、またそのオーミック接触部金属に隣接する半導体を多量にp型ドープすることによって形成することもできる。有機半導体中の正孔輸送にとって整流接点は、その金属のフェルミエネルギーがその半導体の価電子帯端のエネルギーよりも高い場合に形成される。
【0006】
伝統的に無機シリコンおよびガリウムヒ素半導体が半導体業界を支配してきた。しかし近年では伝統的な無機半導体に代わるものとしての有機半導体の使用に対する要望がますます高まってきている。一つの有機半導体はペンタセン、すなわちπ共役分子である。その多結晶形でペンタセンは、有機半導体の膜表面に平行に比較的高い正孔移動度を有する。ペンタセンの価電子帯端は、真空準位から下に約4.9eVである。したがって5.1eVの仕事関数を有する金は、ペンタセンによる正孔に対するオーミック接点を形成し、一方4.3eVの仕事関数を有するアルミニウムは、ペンタセンによる正孔に対する整流接点を創り出す。
【0007】
ショットキーダイオードは、ペンタセンを含めた有機半導体を用いて製造されてきた(Y・S・リー(Y.S.Lee)、J・H・パーク(L.H.Park)、およびJ・S・チョイ(J.S.Choi)の論文、Optical Materials,21,433〜437頁(2002年))。しかし無機半導体とは異なり、有機半導体はそれらのキャリア輸送特性を得るためには通常はドープされない。有機輸送層の電気特性に影響を及ぼすような制御されたドーピングは新しい進展である。多結晶フタロシアナニン類および非晶質4,4’,4”−トリス(N,N−ジフェニル−アミノ)トリフェニルアミン(TDATA)のような物質は、強力な有機アクセプタであるテトラフルオロテトラシアノキノジメタン(F4−TCNQ)をドープすることができ、これは無ドープ材料よりもずっと大きな導電率をもたらす(M・プフェッファー(M.Pfeffer)、A・ベイヤー(A.Beyer)、T・フリッツ(T.Fritz)、およびK・レオ(K.Leo)の論文、Appl.Phys.Lett.,73,729(1998年))。
【0008】
近年、有機発光ダイオード(OLED)が非常に注目されている。超低動作電圧多層OLEDは、TDATAの厚いドープ正孔輸送層をトリフェニル−ジアミン(TPD)の薄い無ドープバッファ層と組み合わせることにより達成されている。この構造は、無ドープデバイスと比べて、より低い動作電圧および改良されたエレクトロルミネッセンス効率を有するOLEDをもたらした(X・シュウ(X.Zhou)、M・プフェッファー(M.Pfeiffer)、J・ブロチヴィツ(J.Blochwitz)、A・ワーナー(A.Werner)、A・ノロー(A.Nollau)、T・フリッツ(T.Fritz)、およびK・レオ(K.Leo)の論文、Appl.Phys.Lett.,78,410〜412頁(2001年))。
【0009】
またドープした無定形物質の使用については、4,4’,4”−トリス(3−メチルフェニルフェニルアミノ)トリフェニル−アミン(MTDATA)をその真性形態で用いた、またF4−TCNQ)をドープしたそれを用いた金属/真性/pドープ(Mip)ダイオードに応用されている。導電率は、MTDATAのドーピングの増加と共に増大することが明らかにされ、真性層を厚くすることによりMipダイオードの降伏電圧と順電圧の両方を増加することができる(J・ドレシェル(J.Dreschel)、M・プフェッファー(M.Pfeiffer)、X・シュウ(X.Zhou)、A・ノロー(A.Nollau)、およびK・レオ(K.Leo)の論文、Synthetic Metals,127,201〜05頁(2002年))。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
金、ペンタセン、およびアルミニウムから作製されるものなどの典型的な有機ショットキーダイオードは、(1)順バイアスモードにおいて低い順電圧を有し、(2)逆バイアスモードにおいて低い降伏電圧を有し、かつ(3)そのデバイスは堅牢でなく、実際に応用する場合に簡単に短絡するという3つの顕著な特徴を示す。無線自動識別(RFID)タグなどの或る種の電子用途では比較的低い順電圧を維持しながら、はるかに高い降伏電圧を必要とする。さらに、短絡しないもっと堅牢なデバイスがまた望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0011】
手短に言えば本発明は、有機半導体とオーミック接触部の間にドープバッファ層を含む有機ショットキーダイオードである。オーミック接触部と有機半導体の間にドープバッファ層を加えると降伏電圧の大きさを著しく増加させ、順電圧の大きさの増加は比較的小さいことを発見した。これに加えてオーミック接触部と有機半導体の間にドープバッファ層を使用することは、オーミック接触部のスパイキングがその有機半導体を貫通するのを防止することにより有効なデバイスの収率を増すことによって、より堅牢なデバイスを生み出す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図は原寸に比例して描かれていない場合もある。下記で明らかにされる図面における図は本発明の実施例を示しているが、考察のなかで言及される他の実施例もまた考えられる。すべての事例においてこの開示は、限定ではなく代表として本発明を提示するものである。本発明の原理の範囲および精神に包含される無数の他の修正形態および実施形態が、当業技術者により考案することができることは理解されるはずである。
【0013】
図1は、本発明の有機ショットキーダイオード10を示す。ダイオード10には、基板12、オーミック接触部14、ドープバッファ層16、多結晶有機半導体層18、およびショットキー接触部20が含まれる。
【0014】
オーミック接触部14は基板12上に配置される。オーミック接触部14は、ドープバッファ層16に関して適切な仕事関数を有する材料で作製される。ショットキーダイオード10が正孔輸送により動作する場合、オーミック接触部14は、好ましくはバッファ層16中に正孔を注入するのに適した大きな仕事関数を有する。ショットキーダイオード10が電子輸送により動作する場合、オーミック接触部14は、好ましくはバッファ層16中に電子を注入するのに適した低い仕事関数を有する。例えば金は、多くのp型有機半導体でオーミック接触部を形成する。
【0015】
オーミック接触部14の上にはドープバッファ層16が配置される。例えば、有機半導体層18がp型材料である場合、4,4’,4”−トリス(3−メチルフェニルフェニルアミノ)トリフェニルアミン(MTDATA)を用いてバッファ層16を作製することができる。MTDATAは、有機発光ダイオード用の正孔輸送材料として機能する安定な無定形ガラスである。そのガラス転移温度は約75℃であり、またその融点は約203℃である。そのドープしていない導電率は室温で10-10S/cmである。
【0016】
この無ドープ非晶質MTDATAの低い導電率のために、オーミック接触層から半導体層までの接触抵抗は、このバッファ層がない構造の場合よりも金とペンタセン層の間にこの層を挿入したダイオード構造の場合、ずっと高いことになる。これは、許容できない高い順電圧をもたらすことになる。この問題を克服するためにこのMTDATAの層をドープしてその導電率を大きく増加させる。MTDATAは、それをテトラシアノキノジメタンのフッ素化形態(F4−TCNQ)のアクセプタ分子と同時昇華させることによってドープすることができる。MTDATA中F4−TCNQが3〜20%のドーピング濃度が効果的であり、MTDATA中F4−TCNQが約5〜約10%のドーピング濃度が最もよい結果を与える。
【0017】
ドープバッファ層16はまた他の材料から作製することもできる。有機半導体18がp型半導体で作製される場合、他のp型ドープした無定形物質を用いてドープバッファ層16を作製することができ、これらには、テトラチオフルバレン(TTF)をドープしたテトラシアノキノジメタン(TCNQ)(A・R・ブラウン(A.R.Brown)、D・M・デリーユ(D.M.de Leeuw)、E・E・ハヴィンガ(E.E.Havinga)、およびA・ポンプ(A.Pomp)の論文、Synthetic Metals,68,65〜70頁(1994年))、2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノ−1,4−ベノキノン(DDQ)をドープしたポリ(β’−ドデシロキシ(−α,α’,−α’,α”)ターチエニル)(ポリDOT3)(C・P・ジャレット(C.P.Jarret)、R・H・フレンド(R.H.Friend)、A・R・ブラウン(A.R.Brown)、およびD・M・デリーユ(D.M.de Leeuw)の論文、J.Appl.Phys.,77,6289〜6294頁(1995年)、アラキジン酸をドープしたポリ(3−ヘキシルチオフェン)(PHT)またはキンケチオフェン(quinquethiophene)(QT)(J・パロハイモ(J.Paloheimo)、P・クルバライネン(P.Kulvalainen)、H・スタッブ(H.Stubb)、E・ヴオリマー(E.Vuorimaa)、およびP・イリ−ラハティ(P.Yli−Lahti)の論文、Appl.Phys.Lett.,56,1157〜1159頁(1990年))、空気に暴露してO2と反応させたルテチウムおよびツリウムビスフタロシアニン(G・ギヨード(G.Guillaud)、M・アルサドウン(M.Al Sadoun),M・マイトロット(M.Maitrot)、J・シモン(J.Simon)、およびM・ブーヴェ(M.Bouvet)の論文、Chem.Phys.Lett.,167,503〜506頁(1990年))、あるいはインジウムまたはアンチモンをドープしたC60(K・ホシモノ(K.Hoshimono)、S・フジモリ(S.Fujimori)、S・フジタ(S.Fujita)、およびS・フジタ(S.Fujita)の論文、Jpn.J.Appl.Phys.,32,L1070〜L1073(1993年))が挙げられる。有機半導体18がn型半導体で作製される場合、ドープバッファ層16は、ビス(エチレンジチオ)−テトラチアフルバレン(BEDT−TTF)をドープしたナフタレンテトラカルボン酸二無水物(NTCDA)(A・ノロー(A.Nollau)、M・プフェッファー(M.Pfeffer)、T・フリッツ(T.Fritz)、およびK・レオ(K.Leo)の論文、Appl.Phys.,87,4340〜4343頁(2000年))、またはカチオン染料の塩化プロニンB(A・ワーナー(A.Werner)、F・リー(F.Li)、K・ハラダ(K.Harada)、M・プフェッファー(M.Pfeiffer)、T・フリッツ(T.Fritz)、K・レオ(K.Leo)、およびS・マチル(S.Machill)の論文、Adv.Func.Mater.,14,255〜260頁(2004年))などのn型ドープした無定形物質から作製されねばならない。
【0018】
有機半導体18はドープバッファ層16の上に配置される。この有機半導体は多結晶構造を有し、適切な半導体特性を与える任意の材料から作製される。ペンタセンは、その比較的高いキャリア移動度のせいで望ましい有機半導体である。しかし他のp型有機半導体もまた用いることができ、それらには、金属を含まないフタロシアニン(例えばH2Pc)およびメタロフタロシアニン(ただしこの金属は銅、バナジル(VO)、ニッケル、鉄、鉛、亜鉛、マグネシウム、またはコバルトである)、インジウムもしくはアンチモンをドープしたフラーレン(C60)、ポリアニリン、ポリピロール、ポリ(p−フェニレン)、ポリ(p−フェニレンビニレン)、米国公開特許出願第2003−0105365号明細書として公開されている本権利者の同時係属中の出願である米国特許出願第10/256,616号明細書に記載されている置換ペンタセン化合物、本権利者の同時係属中の出願である米国特許出願第10/620,027号明細書に記載されているビス(2−アセニル)アセチレン化合物、または本権利者の同時係属中の出願である米国特許出願第10/641730号明細書に記載されているアセンチオフェン化合物が挙げられる。有機半導体18はまたn型有機半導体から作製することもでき、それらには、F16CuPc、F16ZnPc、F16FePc、およびF16CoPcなどのヘキサデカハロゲン化メタロフタロシアニン(Z・バオ(Z.Bao)、A・J・ロビンガー(A.J.Lovinger)、およびJ・ブラウン(J.Brown)の論文、J.Am.Chem.Soc.,120,207〜208頁(1998年))、またはN,N’−ジオクチル−3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸ジイミド(PTCDI−C8H)(P・R・L・マレンファント(P.R.L.Malenfant)、C・D・ジミトラコパウロス(C.D.Dimitrakopoulos)、J・ゲローム(J.Gelorme)、L・L・コスバー(L.L.Kosbar)、およびT・O・グラハム(T.O.Graham)の論文、Appl.Phys.Lett.,80,2517〜2519頁(2002年))が挙げられる。
【0019】
ショットキー接触部20は、有機半導体18の上に配置される。ショットキー接触部20は、有機半導体18に関して適切な仕事関数を有する材料で作製される。ショットキーダイオード10が正孔輸送により動作する場合、ショットキー接触部20は、有機半導体18の価電子帯端よりも高いフェルミエネルギーを有さなければならない。ショットキーダイオード10が電子輸送により動作する場合、ショットキー接触部20は、有機半導体18の伝導帯端よりも低いフェルミエネルギーを有しなければならない。例えばアルミニウムは、ペンタセン中で正孔輸送に対するショットキー接点を形成する。
【0020】
有機半導体ダイオードを造る場合、一つの問題はスパイキングである。どんな表面も完全には平滑ではない。半導体材料の薄層が2層の金属の間に配置される場合、その金属は半導体を貫通してスパイクし、もう一方の金属と直接に接触するようになるおそれがある。これは、半導体を通る望ましくない短絡を生み出す。
【0021】
バッファ層16は無定形物質から作製される。その結果、バッファ層16は、オーミック接触部14の粗い表面を平滑にする。バッファ層16はまた、オーミック接触部14とショットキー接触部20の間の距離を増す。より厚い有機半導体18の層を用いることもまた、オーミック接触部14とショットキー接触部20の間の距離を増すはずである。しかし、より厚い無ドープ有機半導体層はまた、ダイオード10の順電圧を増すことになり、これは望ましくない。バッファ層16を加えることはスパイキングの確率を低減し、それによって比較的低い順電圧を維持しながらデバイスをより堅牢にする。バッファ層16は少なくとも厚さ1500Åであり、また10,000Åもの厚い層であることもできる。最適な性能は、2000Å〜5000Åの間のバッファ層16で達成される。
【0022】
図2は、その平衡状態における有機ショットキーダイオード10のエネルギー帯の概念図を示す。この図は、オーミック接触部14、ドープバッファ層16、有機半導体18、整流接触部20、LUMOエネルギー22、HOMOエネルギー24、およびフェルミエネルギー26を含む。正孔は、オーミック接触部14からドープバッファ層16へ注入される。正孔は、ドープバッファ層16を通って有機半導体18中へ移動する。正孔は、有機半導体18を通って整流接触部20へ移動する。有機ショットキーダイオード10が順方向にバイアスされる場合、有機半導体18と整流接触部20の間の障壁はその順バイアスによって低下し、正孔が有機半導体18から整流接触部20へ自由に流れることを可能にする。これに反して逆バイアスが有機ショットキーダイオード10に印加される場合、有機半導体18と整流接触部20の間の障壁が逆方向への正孔の流れを防止する。
【実施例】
【0023】
本発明の目的および利点を下記の実施例によってさらに例示するが、これらの実施例中の特定の材料およびその量、ならびに他の条件および詳細は、本発明を不当に限定するものと解釈されるべきではない。
【0024】
実施例1
図3は、半導体層とオーミック接触層の間にドープバッファ層を含む有機ショットキーダイオードについての典型的なI−V曲線を示す。図3では、その電流密度の絶対値は縦軸に沿って描かれ、またバイアス電圧は水平軸に沿って描かれている。この特定のダイオードは、30Åのチタンおよび600Åの金で作製されたオーミック接触部、5〜7%のF4−TCNQをドープした3500ÅのMTDATA、3000Åのペンタセンで作製された有機半導体層、および2000Åのアルミニウムで作製された整流接触部を有する。非常に改良された降伏電圧が、その逆バイアス側で観察される。−50ボルトでさえ漏れ電流密度はまだ10-5A/mm2に保たれる。
【0025】
実施例2
ドープバッファ層16中のドーパント濃度は、順電圧と降伏電圧の両方に影響を及ぼす。図4は、20Åのチタンおよび500Åの金で作製されたオーミック接触部、5%未満のF4−TCNQをドープした3200ÅのMTDATAで作製されたドープバッファ層、4900Åのペンタセンで作製された有機半導体層、および2000Åのアルミニウムで作製された整流接触部を有する有機ショットキーダイオードを示す。このデバイスは、MTDATA中のF4−TCNQのドーピングレベルが低いこと以外は、図3に示したデバイスと似た構造を有する。図4では、電流密度の絶対値が縦軸に沿って描かれ、またバイアス電圧が水平軸に沿って描かれている。このより低いドーピングレベルの場合、−60ボルトを超える一層すぐれた降伏電圧が達成される。しかしその順電圧は15ボルトに増加する。
【0026】
比較例A
図5は、比較のためにドープバッファ層16なしで作製された有機ショットキーダイオードを示す。この特別なダイオードは、20Åのチタンおよび550Åの金で作製されたオーミック接触部、4900Åのペンタセンで作製された有機半導体層、および2000Åのアルミニウムで作製された整流接触部を有する。図5では、電流密度の絶対値が縦軸に沿って描かれ、またバイアス電圧が水平軸に沿って描かれている。
【0027】
図3を図5と比較すると、ドープバッファ層16を含む有機ショットキーダイオード(図3)は、在来のショットキーダイオード(図5)の場合の−36ボルトの降伏電圧と比べて−50ボルト超の改良された降伏電圧を示す。しかし、そのI−V曲線を図3に示したダイオードは、相変わらず約9ボルトの低い順電圧を示す。
【0028】
実施例3〜5
一般にドーピングのレベルは、順電圧と降伏電圧の両方に影響を及ぼすはずである。降伏電圧を増加させる(一般にそれが望ましい)には、一般には望ましくない順電圧もまた増加させなければならない。表1は、順電圧および降伏電圧に及ぼす、MTDATAにF4−TCNQをドープする効果をまとめる。
【0029】
【表1】

【0030】
有機ショットキーダイオードのオーミック接触部と半導体層の間にドープバッファ層を加えることは、実用レベルにおける順電圧を維持しながらそのデバイスの降伏電圧を大きく向上させる。さらにその追加されたバッファ層は、オーミック接触部とショットキー接触部の間のスパイキングを防止し、それによってより堅牢なデバイスを生み出し、かつ有効なデバイスの収率を向上させる。
【0031】
本発明を好ましい実施形態に関して記述してきたが、当業者は、本発明の精神および範囲から逸脱することなく形態および詳細の変更を行うことができることを認めるはずである。例えば図1に示した基板上の構造の全体の順序を逆にすることができ、それでもやはり同一の改良された性能を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】オーミック接触部と有機半導体の間にドープバッファ層を有する有機ショットキーダイオードの側面図である。
【図2】オーミック接触部と有機半導体の間にドープバッファ層を有する有機ショットキーダイオードのエネルギー帯の概念図である。
【図3】オーミック接触部と有機半導体の間に5〜7%のF4−TCNQをドープしたMTDATAのバッファ層を有する有機ショットキーダイオード(実施例1)についての電流−電圧(I−V)関係のグラフである。
【図4】オーミック接触部と有機半導体の間に5%未満のF4−TCNQをドープしたMTDATAのバッファ層を有する有機ショットキーダイオード(実施例2)についてのI−V関係のグラフである。
【図5】オーミック接触部と有機半導体の間にバッファ層のない有機ショットキーダイオード(比較例A)についてのI−V関係のグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多結晶有機半導体層と、
前記有機半導体層の第一表面上の整流接触部と、
前記有機半導体層の第二表面と接触しているドープバッファ層であって、非晶質のドープ有機半導体から形成されるドープバッファ層と、
前記ドープバッファ層へのオーミック接触部と
を備えるショットキーダイオード。
【請求項2】
前記有機半導体層がπ共役ポリマーである、請求項1に記載のショットキーダイオード。
【請求項3】
前記有機半導体層が、ペンタセン、金属を含まないフタロシアニンおよびメタロフタロシアニン、インジウムまたはアンチモンをドープしたフラーレン、ポリアニリン、ポリピロール、ポリ(p−フェニレン)、ポリ(p−フェニレンビニレン)、置換ペンタセン化合物、ビス(2−アセニル)アセチレン化合物、アセン−チオフェン化合物、F16CuPc、F16ZnPc、F16FePc、F16CoPc、並びにN,N’−ジオクチル−3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸ジイミドからなる群から選択される、請求項1に記載のショットキーダイオード。
【請求項4】
前記非晶質有機半導体が、1500〜10,000オングストロームの間の厚さを有する、請求項1に記載のショットキーダイオード。
【請求項5】
前記非晶質有機半導体が、2000〜5000オングストロームの間の厚さを有する、請求項4に記載のショットキーダイオード。
【請求項6】
前記非晶質有機半導体がMTDATAである、請求項1に記載のショットキーダイオード。
【請求項7】
前記MTDATAがF4−TCNQでドープされる、請求項6に記載のショットキーダイオード。
【請求項8】
前記MTDATAが、3〜20%のF4−TCNQでドープされる、請求項7に記載のショットキーダイオード。
【請求項9】
前記MTDATAが、5〜10%のF4−TCNQでドープされる、請求項8に記載のショットキーダイオード。
【請求項10】
基板と、
前記基板の第一表面と接触している第一表面を有するオーミック接触部と、
前記オーミック接触部の第二表面と接触している第一表面を有するドープバッファ層であって、非晶質のドープ有機半導体から形成されるドープバッファ層と、
前記ドープバッファ層の第二表面と接触している第一表面を有する多結晶有機半導体層と、
前記有機半導体層の第二表面と接触している第一表面を有する整流接触部と
を備える、請求項1〜9のいずれか一項に記載のショットキーダイオード。
【請求項11】
基板と、
前記基板の第一表面と接触している第一表面を有する整流接触部と、
前記整流接触部の第二表面と接触している第一表面を有する多結晶有機半導体層と、
前記多結晶有機半導体層の第二表面と接触している第一表面を有するドープバッファ層であって、非晶質のドープ有機半導体から形成されるドープバッファ層と、
前記ドープバッファ層の第二表面と接触している第一表面を有するオーミック接触部と
を備える、請求項1〜9のいずれか一項に記載のショットキーダイオード。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2007−531272(P2007−531272A)
【公表日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−504994(P2007−504994)
【出願日】平成17年3月10日(2005.3.10)
【国際出願番号】PCT/US2005/008002
【国際公開番号】WO2005/104262
【国際公開日】平成17年11月3日(2005.11.3)
【出願人】(599056437)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (1,802)
【Fターム(参考)】