説明

真空チャック

【課題】真空チャックによる単位時間当たりの取り扱い部品数を増やすこと。
【解決手段】本実施の形態に用いる組立装置は、予めプログラムされた軌跡に沿って移動するアームを有しており、アームの先端には部品を吸着及び離脱する真空チャック2が装着されている。組立装置は、アームを移動して部品供給エリアから部品を取り出してこれを組み立て品の位置まで搬送し、組み立て品の部品配置位置にてこれを離脱する。このような組立装置において、真空チャック部の減圧路にニードル弁6を設け、これを開閉することにより部品の吸着と離脱を行う。ニードル弁と真空チャックの開口部は近接しているので、ニードル弁の開閉による効果を即座に開口部に現れる。また、変形例として、チャック部に加圧路を設け、部品の離脱時に部品表面を加圧することにより離脱を促進する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空チャックに関し、例えば、腕時計の組立ラインで微少な部品を吸着して搬送するものに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、腕時計、家電製品、マイクロマシンなど、微細な部品を用いた製品を組み立てる組立ラインの自動化が進んでいる。
これら組立ラインでは、ベルトコンベアを用いて組立品が上流工程から下流工程に送られ、ベルトコンベアに隣接して設置された組立装置が組立品に部品を順次追加していく。
このような微少部品を扱う組立装置では、真空チャックが多用されている。真空チャックは、組立装置のアーム先端などに取り付けられ、真空ポンプによる吸引によって部品を部品供給エリアで吸着し、吸引を停止することにより組立品の組立位置に部品を放す。
【0003】
このような従来の真空チャックの仕組みについて図4を用いて説明する。
アーム先端部1には真空チャック部102が取り付けられている。アーム先端部1、及び真空チャック部102の内部には減圧路8が形成されており、減圧路8は、チューブなどの配管や汎用の電磁弁103を介して真空ポンプ101に接続している。
【0004】
真空ポンプ104は、常時排気動作を行っており、電磁弁103を開くと減圧路8の排気が行われて真空チャック部102の開口部7に部品11が吸着され、電磁弁103を閉じると減圧路8の排気が中断されて部品11が開口部7から離脱する。
このような真空チャックを用いた技術としては次の「真空チャックを搭載したマニピュレータ及び部品組立方法」がある。
【0005】
【特許文献1】特開2002−254380公報
【0006】
この技術は、マニピュレータ(アーム)の先端に真空チャックの位置を微調整する機構を設けることにより、位置決め精度の向上などを図るものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の組立装置では、開口部7と電磁弁103との配管距離が長かったため(例えば、数10[cm]以上)、電磁弁103の開閉の効果が開口部7に到達するのに時間がかかるという問題があった。
即ち、配管内の容積を排気する必要があるため、電磁弁103が開いてから開口部7に十分な吸着力が働くまでにタイムラグが生じる。
そのため、開口部7を部品11に当てて電磁弁103を開いてから部品11が吸着されるまでに時間を要し、更に、電磁弁103を閉じてから部品11が離脱するまでにも時間を要する。
【0008】
近年は、単位時間当たりの生産性を高めるために部品の取り付け時間を極限まで短縮することが重要視されているが、電磁弁103の開閉操作と開口部7での応答に遅延があるため、時間短縮に限界があった。このため、このような構成は高速の組立装置には適していなかった。
なお、特許文献1の技術では、このような問題を解消することが可能であるが、チャックが大型化し、微細部品の組立には適していない。
【0009】
そこで、本発明の目的は、真空チャックによる単位時間当たりの取り扱い部品数を増やすことである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、前記目的を達成するために、ワークを吸着によって保持して搬送する搬送装置の先端に取り付けられる真空チャックであって、大気圧よりも圧力が小さい減圧源に接続する減圧源接続口と、ワークを吸着する吸着口と、気密性を有し、前記減圧源接続口と前記吸着口の間に形成された減圧路と、前記減圧路を開閉する減圧路開閉弁と、を具備したことを特徴とする真空チャックを提供する(第1の構成)。
第1の構成において、大気圧よりも圧力が大きい加圧源に接続する加圧源接続口と、前記ワークの表面を加圧する加圧口と、気密性を有し、前記加圧源接続口と前記加圧口の間に形成された加圧路と、前記加圧路を開閉する加圧路開閉弁と、を具備するように構成することもできる(第2の構成)。
第2の構成において、前記加圧路開閉弁と、前記減圧路開閉弁と、に連接し、前記加圧路開閉弁と前記減圧路開閉弁のうち、一方が開状態のときに他方を閉状態とする連動部材を具備するように構成することもできる(第3の構成)。
第2の構成、第3の構成において、前記減圧路と、前記加圧路は、前記減圧路開閉弁と、前記加圧路開閉弁の前記ワーク側で合流し、前記吸着口と前記加圧口が同一の開口部により構成されているように構成することもできる(第4の構成)。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、真空チャックによる単位時間当たりの取り扱い部品数を増やすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
(1)実施の形態の概要
真空チャック部の減圧路にニードル弁を設け、これを開閉することにより部品の吸着と離脱を行う。ニードル弁と真空チャックの開口部は近接しているので、ニードル弁の開閉による効果が即座に開口部に現れる。また、変形例として、チャック部に加圧路を設け、部品の離脱時に部品表面を加圧することにより離脱を促進する。
【0013】
(2)実施の形態の詳細
図示しないが、本実施の形態に用いる組立装置は、予めプログラムされた軌跡に沿って移動するアームを有しており、アームの先端には部品(ワーク)を吸着及び離脱する真空チャックが装着されている。
組立装置は、アームを移動して部品供給エリアから部品を取り出してこれを組立品の位置まで搬送し、組立品の部品配置位置にてこれを離脱する。このようにして部品が配置された組立品は、ベルトコンベアなどの搬送装置により次工程に送られる。
組立装置は、ワークを吸着によって保持して搬送する搬送装置を構成している。
【0014】
以下に、図1の各図を用いて本実施の形態のチャック部について説明する。
図1(a)は、アーム先端部1の構造を説明するための断面図であり、後述のニードル弁6が開状態となっており、部品11が吸着されているところを示している。
アーム先端部1は凸部を有する円柱部材であり、中心軸上に減圧路8が形成されている。
図示しないが、減圧路8は、例えば、ロータリーポンプやその他の真空ポンプなどの排気装置によって排気されており、組立装置の稼働中は大気圧よりも圧力が低い状態に保たれている。排気装置と共に減圧路8は、大気圧よりも圧力が小さい減圧源を構成している。
【0015】
チャック部2は、アーム先端部1の凸部に勘合する凹部が形成された金属製の円柱部材であり、外寸は、おおよそ、直径15[mm]、高さ20[mm]である。ただし、この外寸は一例であって、チャック部2の外寸を限定するものではない。
アーム先端部1の凸部とチャック部2の凹部が勘合することによりチャック部2の組立装置に対する位置決めがなされる。
チャック部2の中心軸上にはアーム先端部1の減圧路8と接続口9にて接続する減圧路8aが形成されており、減圧路8aの先端には開口部7が形成されている。減圧路8aは気密性を有している。
ここで、開口部7は吸着口に該当し、接続口9は減圧源接続口に該当し、減圧路8aは、気密性を有する減圧路に該当する。
チャック部2の側面には、凹部を貫通するねじ穴10が設けられており、ねじの先端によってアーム先端部1の凸部を押圧することにより、チャック部2はアーム先端部1に固定される。
【0016】
このように、チャック部2を取り外し式としたのは、他種類の部品に対応するためである。
即ち、開口部7は部品の吸引に適した形状や寸法に形成されており、扱う部品に応じてチャック部2を取り替えることにより、1台の組立装置で他種類の部品に対応することができる。
【0017】
減圧路8aの接続口9と開口部7の間には、ニードル弁6が設けられている。ニードル弁6は、先端が円錐形状に形成された針状の円柱部材であって、減圧路8aと垂直に交叉している。ニードル弁6は、鉄など、磁石によって吸引される磁性部材によって構成されている。
ニードル弁6の中心線と減圧路8aの中心線は一致し、また、ニードル弁6の円柱部分の外径は減圧路8aの内径以上となっている。
【0018】
チャック部2には、ニードル弁6が中心軸方向にスライドして移動するための移動路12が形成されている。
ニードル弁6の円錐部分が減圧路8aと交叉する位置にある場合は、減圧路8aを気体が移動することができ、ニードル弁6の円柱部分が減圧路8aと交叉する位置にある場合は、気体の移動がニードル弁6によって妨げられる。このようにニードル弁6は、減圧路を開閉する減圧路開閉弁を構成している。
【0019】
ニードル弁6の後端(円錐部分と対向する側)方向には電磁石を構成する円筒状のコイル3が設けられている。
コイル3の中心軸とニードル弁6の中心軸は一致するように配置されている。コイル3の中心には鉄心4が設けられており、コイル3が励磁された場合に鉄心4が磁化するようになっている。
鉄心4の端部とニードル弁6の後端は、ばね5によって連結されている。ばね5の自然長は、ニードル弁6の円柱部が減圧路8aと交叉した位置となる長さである。即ち、ばね5が自然長の状態では、減圧路8aはニードル弁6により閉状態(遮断状態)となる。
【0020】
コイル3を励磁すると鉄心4が磁化し、鉄心4により集中した磁界によってニードル弁6が鉄心4に吸引される。鉄心4の吸引力は、ばね5の弾性力よりも大きくなるように励磁され、これによってニードル弁6は、ばね5の弾性力に抗して鉄心4方向にスライドして移動する。
ニードル弁6が鉄心4の方向に移動すると、図に示したようにニードル弁6の円錐部分が減圧路8aと交叉し、減圧路8aを気体が移動できるようになる。
【0021】
以上のように、コイル3に電流を供給する(オンの状態)とニードル弁6が開き、電流の供給を停止する(オフの状態)とニードル弁6が閉じる。一方、減圧路8は排気装置によって組立装置の稼働中は減圧されている。
そのため、コイル3をオンにするとニードル弁6が開いて開口部7に吸引力が発生し、コイル3をオフにするとニードル弁6が閉じて吸引力が消失する。
組立装置は、アームが部品11を供給エリアに移動して開口部7を部品11の表面に置いた直後にコイル3をオンし、アームを移動して部品11を組立品の所定位置に移動した直後にコイル3をオフする電源装置を備えている。
【0022】
開口部7は、減圧路8aの末端に形成されており、コイル3のオン時に部品11を吸引してこれを保持する。
即ち、部品11の開口部7側は大気圧よりも小さい圧力が作用し、開口部7と対向する側には大気圧が作用するため、この圧力差により部品11は開口部7に吸引される。なお、この圧力差は、部品11を空間中で保持するのに十分な値となるように減圧路8の圧力は設定されている。
部品11は、例えば、腕時計に使用する歯車や歯車を支える筐体、組立品の完成物など、組立装置のアームによって移動するものである。
歯車の場合、部品11の典型的な諸元は直径3[mm]、厚さ0.1[mm]、重さ10[mg]程度である。なお、これらの値は一例であって、部品11の諸元を限定するものではない。
【0023】
図1(b)は、ニードル弁6が開いた状態を示している。
ニードル弁6が閉じると、減圧路8aが遮断され、減圧路8の排気が減圧路8aに及ばなくなる。また、開口部7と部品11との隙間から大気が漏れ入るため、開口部7の圧力と大気圧との圧力差が小さくなり、部品11は自重によって開口部7から離脱する。
【0024】
以上のように、本実施の形態のチャック部2では、ニードル弁6を開口部7に近接して設けたため、ニードル弁6の開閉による効果がほとんど瞬時に開口部7に及ぶ。
そのため、部品11を吸着、及び離脱するのに要する時間が短縮され、単位時間当たりの組立個数が向上する。
本発明者らの実験によると、従来のチャックではサイクルタイムが1秒程度であったが、本実施の形態のチャック部2を採用することにより0.3秒程度まで短縮することができ、単位時間当たりの取り扱い部品数を3倍程度に増やすことができた。
【0025】
次に、図2のフローチャートを用いて組立装置の動作について説明する。
組立装置では、真空ポンプを稼動して継続的に減圧路8を排気すると共にニードル弁6は閉じているものとする。
まず、組立装置は、アームを原点復帰する(ステップ5)。組立装置は、コンピュータプログラムに基づいてアームを数値制御し、高精度な速度制御、位置制御ができるようになっている。そして組立装置の起動時には、原点復帰を行って機械系の原点とソフトウェア系の原点を一致させる。
【0026】
次に、組立装置は、アームを基準位置に移動する(ステップ10)。基準位置はコンピュータプログラムによって適当に決められている。
次に、組立装置は、アームを部品供給エリアに移動し、部品供給エリアの定位置に置かれている部品11を開口部7に当てる(ステップ15)。
次に、組立装置は、ニードル弁6を開いて開口部7を減圧し、開口部7に部品11を吸着する(ステップ20)。
なお、部品供給エリアでは、部品11が組立装置にて持ち去られると、次の部品11が定位置に繰り出されるようになっている。
【0027】
組立装置は、部品11を吸着すると、アームを組立品が置かれている位置に移動し(ステップ25)、ニードル弁6を閉じて、部品11を組立品の所定位置にて離脱する(ステップ30)。これによって組立品に部品11が追加される。
組立品は、ベルトコンベアなどによって搬送されてくるが、組立品の送りと組立装置の動作は同期しており、組立装置が部品11をセットする際には組立品が所定位置に置かれるようになっている。
【0028】
組立品は、部品11が追加されると、ベルトコンベアなどによって次工程の組立装置が設置されている場所まで搬送される。
組立装置は、部品11を組立品に追加すると、更に組立を続行するか否かを判断する(ステップ35)。組立を続行する場合(ステップ35;Y)、組立装置はステップ10に戻りアームを基準位置に移動する。
組立を終了する場合(ステップ35;N)、組立装置は、アームを原点復帰して動作を終了する。
【0029】
以上に説明した本実施の形態により次のような効果を得ることができる。
(1)開口部7に近接してニードル弁6を設置したため、排気に要する容積を極小にすることができる。そのため、ニードル弁6を開いた直後に部品11を吸着することができ、ニードル弁6を閉じた直後に部品11を離脱することができるため、時間の損失が少なくなる。
(2)ニードル弁6の制御と部品11の吸着・離脱の時間差が小さいため、サイクルタイムを縮小することができ、単位時間当たりの生産数を増大することができる。
(3)チャック部2は、小型に構成することができるため、微細部品の組立に適している。
(4)チャック部2は、取り替え可能であるため、部品11に適したものをアーム先端部1に装着することができる。そのため、1台の組立装置によって他種類の部品11に対応することができる。
【0030】
なお、本実施の形態では、ニードル弁6によって減圧路8aの開閉を行ったが、これは減圧路開閉手段をニードル弁6に限定するものではなく、その他の種類の開閉手段を用いることもできる。
また、組立装置では減圧路8の排気に真空ポンプなどを用いたが、減圧路8の圧力と大気圧の間に所望の圧力差が生じればよく、他の方法を用いて排気してもよい。
【0031】
(実施の形態の変形例)
図3(a)は、実施の形態の変形例に係るチャック部の構造を示した断面図である。先に説明した実施の形態に対応する構成要素には同じ符号を付し、説明を簡略化又は省略する。
アーム先端部1aは、減圧路8を有する他、加圧路21を備えている。組立装置は加圧装置を備えており、これによって加圧路21には大気圧よりも大きな圧力が加えられている。加圧装置と加圧路21は加圧源を構成している。
アーム先端部1aは、先端が凸部に形成されており、チャック部2aに形成された凹部と勘合するようになっている。
【0032】
チャック部2には、接続口9にて減圧路8と接続する減圧路8aと、接続口24にて加圧路21と接続する加圧路21aが形成されている。減圧路8aと加圧路21aは開口部7側(ワーク側)で合流して気密路22となっており、これらは気密性を有している。
接続口24は、加圧源に接続する加圧源接続口を構成し、開口部7は、部品11を吸着する他加圧するためワーク表面を加圧する加圧口を構成し、加圧路21aと気密路22は加圧路を構成している。
【0033】
減圧路8aと加圧路21aの合流点よりもアーム先端部1a側には、ニードル弁6aが設けられている。
減圧路8aと加圧路21aは平行に形成されており、ニードル弁6aは、これら減圧路8a、加圧路21aと垂直に交叉するように配置されている。
ニードル弁6aは、移動路12aを軸線方向にスライドして移動するようになっている。ニードル弁6aをばね5の弾性力、及びコイル3と鉄心4による磁力によって移動する機構は先に実施の形態で説明したニードル弁6と同じである。
【0034】
ニードル弁6aは、減圧路8a、加圧路21aの内径よりも大きな外径を有する大円柱部と、減圧路8a、加圧路21aの内径よりも小さな外径を有する小円柱部が同心に形成されている。小円柱部は、所定間隔を隔てて2カ所形成されている。
小円柱部の間隔は、減圧路8a、加圧路21aの間隔よりも小さく設定されており、小円柱部の一方が減圧路8aの位置にある場合は、加圧路21aには大円柱部が位置し、小円柱部の他方が加圧路21aの位置にある場合は、減圧路8aには大円柱部が位置する。
減圧路8a、及び加圧路21aは、大円柱部が位置する場合は閉状態となって気体の移動が阻止され、小円柱部が位置する場合は開状態となって気体が移動することができる。
【0035】
ニードル弁6aの移動量は、コイル3がオンになってニードル弁6aが鉄心4に吸引された場合、減圧路8aが開状態となって加圧路21aが閉状態になり、また、コイル3がオフになってばね5の弾性力によってニードル弁6が反発された場合、減圧路8aが閉状態となって加圧路21aが開状態となる量に設定されている。なお、図3(a)は、減圧路8aが開状態であり、加圧路21aが閉状態となっている場合を示している。
【0036】
以上のように構成されたチャック部2aで、コイル3をオンにすると減圧路8aが開状態、加圧路21aが閉状態となるため、気密路22、及び開口部7は減圧される。
一方、コイル3をオフにすると減圧路8aが閉状態となり加圧路21aが開状態となるため気密路22、及び開口部7は加圧される。
このようにニードル弁6aは、加圧路21aのニードル弁と減圧路8aのニードル弁を連接した構造となっており、一方が開状態のときに他方を閉状態とする連動部材を構成している。
図3(b)は、コイル3をオフにし、開口部7を加圧したところを示している。図に示したように、部品11が開口部7に吸引された状態でコイル3をオフにすると開口部7が大気圧よりも高い圧力に加圧され、部品11を速やかに離脱することができる。
【0037】
先に説明した実施の形態では、部品11の離脱は、開口部7の排気が停止し、部品11と開口部7の間から漏れ入った気体によって開口部7から部品11が離脱したが、本変形例では、加圧路21aによって開口部7の圧力を積極的に加圧することにより、より短時間で速やかに部品11を離脱することができる。
ここで、加圧路21aによって加圧する圧力は、大気圧よりも若干高めの圧力でよい(即ち、加圧量は微少でよい)ため、次のような更なる変形例も可能である。
【0038】
組立装置は、減圧路8での単位時間当たりの排気量を十分に大きくし、加圧路21の加圧量を微少に保つ。このような条件の下、ニードル弁6aによる開閉は減圧路8aに対して行い、加圧路21は常時開状態とする。
このように構成すると、ニードル弁6aが開状態の場合の開口部7での減圧値は、減圧路8aによる減圧値から加圧路21による加圧値を減算した値であり、この値が部品11を吸引・保持するのに十分な値であれば、加圧路21aは常時開状態とすることができる。このように構成すると、加圧路21aはニードル弁6aによる開閉制御が必要ないのでチャック部2aの構成が簡略化される。
【0039】
以上に説明した本変形例によると、部品11の離脱をより確実に、かつ迅速に行うことができ、マシンサイクルの更なる短縮化、及び組み立て作業の信頼性を高めることができる。
なお、本変形例では、ニードル弁6aにより、減圧路8aと加圧路21aの開閉を同時に行ったが、減圧路8aと加圧路21aに個別にニードル弁を設けてもよい。
この場合は、減圧路8aを開く場合は加圧路21aを閉じ、減圧路8aを閉じる場合は加圧路21を開くように各ニードル弁を制御する。
更に、本変形例では、減圧路8aと加圧路21aが気密路22に合流したが、減圧路8aと加圧路21aが別々の開口部を有するように構成することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本実施の形態のチャック部について説明するための図である。
【図2】組立装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【図3】変形例に係るチャック部について説明するための図である。
【図4】従来の真空チャックについて説明するための図である。
【符号の説明】
【0041】
1 アーム先端部
2 チャック部
3 コイル
4 鉄心
5 ばね
6 ニードル弁
7 開口部
8 減圧路
9 接続口
10 ねじ穴
11 部品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを吸着によって保持して搬送する搬送装置の先端に取り付けられる真空チャックであって、
大気圧よりも圧力が小さい減圧源に接続する減圧源接続口と、
ワークを吸着する吸着口と、
気密性を有し、前記減圧源接続口と前記吸着口の間に形成された減圧路と、
前記減圧路を開閉する減圧路開閉弁と、
を具備したことを特徴とする真空チャック。
【請求項2】
大気圧よりも圧力が大きい加圧源に接続する加圧源接続口と、
前記ワークの表面を加圧する加圧口と、
気密性を有し、前記加圧源接続口と前記加圧口の間に形成された加圧路と、
前記加圧路を開閉する加圧路開閉弁と、
を具備したことを特徴とする請求項1に記載の真空チャック。
【請求項3】
前記加圧路開閉弁と、前記減圧路開閉弁と、に連接し、前記加圧路開閉弁と前記減圧路開閉弁のうち、一方が開状態のときに他方を閉状態とする連動部材を具備したことを特徴とする請求項2に記載の真空チャック。
【請求項4】
前記減圧路と、前記加圧路は、前記減圧路開閉弁と、前記加圧路開閉弁の前記ワーク側で合流し、前記吸着口と前記加圧口が同一の開口部により構成されていることを特徴とする請求項2、又は請求項3に記載の真空チャック。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−30139(P2007−30139A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−220946(P2005−220946)
【出願日】平成17年7月29日(2005.7.29)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】