説明

真空バルブ

【課題】差圧式真空バルブの応答性、特に弁閉鎖時の応答性を向上させることにおり、排気側から吸引側へのガスの逆流を防止する。
【解決手段】排気路33に介在されたバルブハウジング34、及び該バルブハウジングの内部に摺動自在に収納され弁座38に当接又は離間して排気路33を開閉する弁機能体40と、該弁機能体に形成された仕切り部43の一側に画成されたバネ室51、及び該バネ室に装着されたバネ部材52と、仕切り部43の他側に画成され該バルブハウジング壁に設けられた貫通孔47を介して大気と連通する大気圧室50と、バネ室51を弁機能体40の出口側排気路36又は大気圧室50に選択的に接続可能な連通路53〜55とからなり、出口側排気路36又は大気圧室50に選択的に接続させることにより該排気路を開閉し、貫通孔47の大気流量に対してバネ室51に流入する大気流量を大きくする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクロールポンプ、ベーンポンプ等の真空ポンプを用いて真空チャンバを真空状態とする場合に、真空ポンプと真空チャンバとを接続する排気路に介設される差圧式真空バルブの応答性を高め、真空ポンプ停止時に真空チャンバにガスが逆流するのを確実に防止できるようにした真空バルブに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、真空ポンプにより真空チャンバ内の空気を吸引して排出させる真空装置は周知である。例えば、真空蒸着装置において、例えば半導体ウエーハの表面に金属蒸着膜を形成する場合、まず装置の蒸着室内の雰囲気を真空ポンプで排気して高真空にし、高真空状態で蒸着を行い、蒸着終了後には蒸着室内の圧力を大気圧に戻すことが行なわれている。
【0003】
真空ポンプが停止するときの真空チャンバと真空ポンプ間の差圧によって発生する逆流を防止する手段として、真空チャンバと真空ポンプ間に真空バルブを介設している。自動開閉機能を有する真空バルブとしては、直動ソレノイド式又は差圧式の自動開閉バルブが使用されている。
【0004】
直動ソレノイド式は、開閉の応答性が良いものの、ストロークが大きく取れないことから排気抵抗が大きかったり、バルブの開閉動作を維持するためにソレノイドが多量の電力を消費するという問題がある。
これに対し、差圧式の真空バルブは、弁体に対して開動作方向に加わる力と閉動作方向に加わる力との差圧によって開動作又は閉動作を行なうものであるため、ストロークを大きく取ることができるとともに、消費電力を低減できるという利点がある。
【0005】
特許文献1(特開平5−272456号公報)には、差圧式の真空バルブの一例が開示されている。この構成を図2に基づいて説明する。図2において、この差圧式真空バルブは、ボデイ1とボンネット2を備え、ボデイ1に図示しない真空ポンプに接続された吸引ポート3が形成されるとともに、ボデイ1の外周に放射方向に取り付けられたポート部材4に、図示しない真空チャンバに接続された真空ポート5が形成されている。
【0006】
吸引ポート3と真空ポート5を直接連通させる主流路6の真空ポート5側に弁座7が形成されている。ボデイ1とボンネット2の間はプレート9で気密に区画され、ボンネット2の内部は、受圧体の一例であるピストン10によって、真空作用室11と外部に開口した大気室12とに区画されている。真空作用室11は、後述するバイパス流路13によって吸引ポート3と真空ポート5とに連通している。
【0007】
真空作用室11内には、ピストン10をプレート9に向けて付勢する調圧ばね14が縮設され、調圧ばね14の付勢力は、ボンネット2に気密に螺着された調圧機構15を構成する調圧ねじ回転によって調整することができる。
一端がピストン10に螺着された中空の弁棒18は、プレート9を気密に貫通した先端に、弁座7を開閉する弁体19が取り付けられており、ピストン10側の先端に大径のオリフィス23が取り付けられている。
【0008】
バイパス流路13は、ボデイ1とボンネット2に形成した流路20と、弁棒18の中空部に形成された流路18aよりなり、バイパス流路13を流れる空気の流量を調節するため、流路20に可変絞り機構21の一例としてのニードル弁が設置されている。該ニードル弁の開度は、弁体22を回転させてボンネット2に対して進退させることによって調節する。
【0009】
かかる構成において、図示しない真空ポンプの運転が停止し、かつ真空チャンバ内が大気圧又はそれに近いときは、該大気圧とピストン10に作用する調圧ばね14の付勢力との和が大気室12内の大気圧を上回るため、弁体19が下降して主流路6を閉鎖する。一方、吸引ポート3と真空ポート5とはバイパス流路13によって連通しており、この状態で真空ポンプを運転すると、真空チャンバ内の雰囲気は、バイパス流路13の可変絞り機構21により排出量を制御されて、徐々に真空ポンプに吸引される。
【0010】
従って、真空チャンバ内の雰囲気が大きく攪拌されないので、塵埃の舞い上がり等のトラブルを防止することができる。その後、真空チャンバ内のガス圧の低下により、真空作用室11における真空圧の作用力と調圧ばね14の付勢力との和が大気室12の大気圧の作用力より小さくなると、ピストン10が上昇して弁体19が主流路6を開放する。これによって、真空チャンバ内のガスが主として主流路6を通って排出される。この場合、真空チャンバ内のガス密度が低下しているので、真空チャンバ内の雰囲気が攪拌されることはない。
【0011】
また、特許文献2(実開平7−41173号公報)には、特許文献1と同様の差圧式真空バルブが開示されている。しかし、特許文献2に開示された差圧式真空バルブは、バルブの閉動作を流体圧アクチュエータ等の駆動部によって行なうものである。
【0012】
【特許文献1】特開平5−272456号公報
【特許文献2】実開平7−41173号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
差圧式の真空バルブは、特許文献1で例示したように、弁体に作用する開動作方向の力と閉動作方向の力との差圧によって開閉動作を行なうものであるため、ソレノイド式等のように強制的に弁体を動作させる方式と比べて、応答性に遅れが生じやすい。そのため、真空ポンプの稼動が停止した時、真空ポート5と吸引ポート3間に存在する差圧によって排気側(真空ポンプ側)のガスが吸引側(真空チャンバ側)に逆流する事態が発生する。これは非常に短時間で起こる。
【0014】
そのため、逆流したガスにより真空チャンバの真空破壊が起こったり、真空ポンプの摩耗粉が真空チャンバに侵入して、真空チャンバ内に配置された機器類の汚染を起こすおそれがある。また、真空ポンプが給油式である場合に、真空ポンプの油が真空チャンバに侵入するおそれがある。
【0015】
また、複数の真空ポンプを排気路系に配設し、複数の真空ポンプを圧力センサなどで交互運転する場合、逆流したガスによる圧力上昇を誤認識して制御が不安定になるおそれがある。特許文献1を例に取れば、バルブ開閉動作は、真空作用室11又は大気室12へのガスの給排により行なうので、応答性が悪く、特に、閉動作に時間がかかる。そのため、排気側から吸引側へのガスの逆流を完全に防止することができない。
【0016】
バルブ開閉動作の応答性を早くするためには、弁体に作用する力を大きくしたり、即ち、特許文献1を例に取れば、ピストン10の径を大きくしたり、あるいは真空ポンプ側排気路の流路容積を大きくして、逆流ガスの伝播速度を遅くする等の対策が考えられるが、真空バルブ又は真空装置の大型化につながるという問題がある。
また、特許文献2の差圧式真空バルブでは、バルブの閉鎖を流体圧アクチュエータ等の駆動部で行なうため、構成が複雑かつ高価になるという問題がある。
【0017】
本発明は、かかる従来技術の課題に鑑み、差圧式真空バルブの弁開閉動作の応答性、特に弁閉鎖時の応答性を向上させることにおり、真空ポンプ側から真空チャンバ側へのガスの逆流を防止し、これによって、真空チャンバの真空破壊や真空チャンバ内に配置された機器類の汚染を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
かかる目的を達成するため、本発明の真空バルブは、
真空ポンプと真空チャンバとに連結され該真空チャンバ内の雰囲気を排気する排気路に介設され該排気路を開閉する真空バルブにおいて、
前記排気路に介在されたバルブハウジング、及び該バルブハウジングの内部に摺動自在に収納され該バルブハウジング内に形成された弁座に当接又は離間して該排気路を開閉する弁機能体と、
該弁機能体に一体に形成され該バルブハウジング内を2つの領域に仕切る仕切り部と、
該仕切り部の一側に画成されたバネ室、及び該バネ室に装着され該弁機能体に対して該排気路を閉鎖する方向にバネ力を付勢するバネ部材と、
該仕切り部の他側に画成され該ハウジング壁に設けられた貫通孔を介して大気と連通する大気圧室と、
該バネ室を該弁機能体の出口側排気路又は該大気圧室に選択的に接続可能な連通路と、からなり、
該バネ室を該弁機能体の出口側排気路又は該大気圧室に選択的に接続させることにより該排気路を開閉するとともに、
該貫通孔から流入する大気の流量に対して該バネ室に流入する大気の流量を大きくすることにより、該排気路の急速閉塞を可能としたものである。
【0019】
本発明において、真空バルブを稼動させて真空チャンバの排気運転を実施する場合には、前記連通路を介してバネ室と弁機能体の出口側排気路とを連通させて、真空ポンプを稼動する。真空バルブの稼動によって該出口側排気路は負圧になり、該出口側排気路と連通したバネ室も負圧になる。弁機能体の仕切り部には、バネ室側からバネ部材の付勢力とバネ室内のガス圧の作用力が負荷され、大気圧室側から大気圧による作用力が負荷される。バネ室が負圧となることにより、バネ室のバネ部材の付勢力とバネ室内のガス圧による作用力との和より大気圧室内の大気圧の作用力が大きくなるため、弁機能体は弁座を離れる方向に動き、排気路を開放する。
【0020】
その後、真空チャンバ内を真空状態として、排気運転を終了する場合は、真空ポンプの稼動を停止すると同時に、連通路を切り替えてバネ室と大気圧室とを接続する。その際、大気圧室の貫通孔から流入する大気の流量より該バネ室に流入する大気の流量を大きくするため、一時的に大気圧室内の圧力が大気圧より低圧となり、バネ室内の圧力に近づく。即ち、大気圧室より低圧の状態で大気圧室とバネ室の圧力が均衡する。このため、弁機能体にはバネ部材の付勢力のみが負荷される結果となり、弁機能体はバネ部材の付勢力により排気路を閉鎖する方向に移動する。そして、バネ室内が大気圧に戻る時間よりも短時間で真空バルブの閉動作を行なうことができる。
【0021】
このように、バネ部材による閉方向の力が弁機能体に作用するタイミングが早まり、従来よりも短時間で真空バルブを閉じることができる。従って、本発明によれば、真空バルブ又は真空装置を大型化することなく、逆流防止性能を向上させることができる。従って、逆流したガスにより真空チャンバの真空破壊が起こったり、真空ポンプの摩耗粉や潤滑油が真空チャンバに侵入して、真空チャンバ内に配置された機器類の汚染を起こすおそれがなくなる。
【0022】
本発明において、前記連通路は、前記バルブハウジング壁に設けられ前記弁機能体の出口側排気路、前記大気圧室及び前記バネ室を接続する連通路と、該連通路に設けられ該バネ室を該弁機能体の出口側排気路又は該大気圧室に切換え接続する三方弁と、からなり、該大気圧室と該バネ室とを接続する連通路の流路断面を前記貫通孔の断面より大きく形成することにより、該排気路の閉塞時に該貫通孔から流入する大気の流量より該バネ室に流入する大気の流量を大きくするように構成するとよい。
【0023】
かかる構成とすることにより、簡単な構成で真空バルブの弁開閉動作の応答性を向上させることができる。なお、該貫通孔の流路面積を調節することにより、大気圧室の圧力上昇速度を調整可能になるとともに、該貫通孔の流路断面積と大気圧室とバネ室を連通する連通路の流路断面積との比を適宜調整することにより、大気圧室とバネ室の圧力が均衡する時間を調整することができる。
【0024】
また、本発明において、前記弁機能体を、弁棒と、該弁棒の排気路側端部に設けられバルブハウジングに形成された弁座に当接又は離間して該排気路を開閉する弁体と、該弁棒の他端に設けられ該ハウジング内をバネ室と大気圧室とに仕切る仕切り部と、からなり、該弁棒がバルブハウジングに一体に形成された支持部に摺動自在に支持され、該支持部と該仕切り部との間に該大気圧室を画成するように構成するとよい。
【0025】
かかる構成とすることにより、真空バルブの構成を簡易なものとすることができるとともに、かかる簡単な構成で真空バルブの弁開閉動作の応答性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、真空チャンバと真空バルブとを接続する排気路に介在されたバルブハウジング、及び該バルブハウジングの内部に摺動自在に収納され該バルブハウジング内に形成された弁座に当接又は離間して該排気路を開閉する弁機能体と、該弁機能体に一体に形成され該バルブハウジング内を2つの領域に仕切る仕切り部と、該仕切り部の一側に画成されたバネ室、及び該バネ室に装着され該弁機能体に対して該排気路を閉鎖する方向にバネ力を付勢するバネ部材と、該仕切り部の他側に画成され該ハウジング壁に設けられた貫通孔を介して大気と連通する大気圧室と、該バネ室を該弁機能体の出口側排気路又は該大気圧室に選択的に接続可能な連通路と、からなり、該バネ室を該弁機能体の出口側排気路又は該大気圧室に選択的に接続させることにより該排気路を開閉するとともに、該貫通孔から流入する大気の流量に対して該バネ室に流入する大気の流量を大きくすることにより、真空バルブの構成を複雑化又は大型化することなく、弁開閉動作の応答性を向上できる。
【0027】
従って、真空ポンプ停止時の排気の逆流を防止することができるため、逆流したガスにより真空チャンバの真空破壊が起こったり、真空ポンプの摩耗粉や潤滑油が真空チャンバに侵入して、真空チャンバ内に配置された機器類の汚染を起こすおそれがなくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明を図に示した実施形態を用いて詳細に説明する。但し、この実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは特に特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではない。
(実施形態)
【0029】
図1は、本発明の実施形態に係る真空バルブの縦断立面図である。図1において、内部雰囲気を排気されて真空状態とされる真空チャンバ31と真空ポンプ32との間に排気路33が接続され、排気路33に該排気路を開閉可能とする真空バルブ30が介設されている。以下、真空バルブ30の構成を説明する。
【0030】
真空バルブ30は、排気路33にバルブハウジング34が介在され、バルブハウジング34には、真空チャンバ31に接続された排気路33aに連通する真空ポート35と、真空ポンプ32に接続された排気路33bに連通する吸引ポート36が形成されている。バルブハウジング34の内部には、弁機能体40が矢印a又はb方向に摺動可能に収納されている。
【0031】
弁機能体40は、バルブハウジング34の長手方向に配置された弁棒41と、真空ポート35側に面して弁棒41の端部に取り付けられた円板状の弁体42と、弁棒41の他端に取り付けられた円板状のピストン43とから構成されている。バルブハウジング34の略中央部には内側に突出した支持部37がバルブハウジング34に一体に形成され、該支持部37が弁機能体40をバルブハウジング34の長手方向に摺動可能に支持している。支持部37と弁機能体40との間には、シール用のOリング44が介在されている。
【0032】
バルブハウジング34の真空ポート35近傍には弁座38が形成され、弁座38に対面して弁体42の入口側端面42aが配置されている。入口側端面42aにはOリング45が装着され、入口側端面42aが弁座38に当接することにより、真空ポート35が閉鎖される。また、ピストン10のバルブハウジング34との間にOリング46が設けられて、バルブハウジング34とピストン43との間をシールしている。これによって、ピストン43の両側に2つの密閉空間を形成している。
【0033】
ピストン43の一側(図1中ピストン43の左側であって、弁機能体40の閉動作方向a)には、バルブハウジング34に貫設された貫通孔47を介して外気と連通した大気圧室50が形成されている。一方、ピストン43の他側(図1中ピストン43の右側であって、弁機能体40の開動作方向b)には、バネ室51が形成され、バネ室51には、一端がピストン43の一方の面43aに接続され、他端がバルブハウジング34の内壁に取り付けられたコイルバネ52が設けられている。これによって、ピストン43には、大気圧室50側から大気圧室50の大気圧による作用力が負荷されるとともに、バネ室51側からは、コイルバネ52のバネ力とバネ室51内のガス圧による作用力との和が負荷される。
【0034】
また、バルブハウジング34には、吸引ポート36と、大気圧室50と、バネ室51とを連通する連通孔53,54及び55が穿設されるとともに、バネ室51を吸引ポート36又は大気圧室50に選択的に連通する三方電磁弁56が設けられている。三方電磁弁56は、コントローラ57によって切り替え作動される。そして、大気圧室50とバネ室51とを連通する連通路54及び55の流路断面は貫通孔47の流路断面より大きく形成されている。
【0035】
かかる構成の本実施形態において、真空ポート35が弁機能体40によって閉鎖された状態で、真空チャンバ31の排気運転を開始する。この場合の運転手順は、コントローラ57によって三方電磁弁56を作動させ、吸引ポート36とバネ室51とを連通させる。同時に、真空ポンプ32を稼動させる。真空ポンプ32の稼動開始によって、吸引ポート36が急速に負圧となり、吸引ポート36とバネ室51とが連通しているために、バネ室51も負圧となる。
【0036】
バネ室51が真空圧になると、弁機能体40に負荷される開動作方向bの力(入口側端面42aに負荷される真空ポート35のガス圧と、ピストン43の一方の面43aに負荷される大気圧による作用力の和)が弁機能体40に負荷される閉動作方向aの力(コイルバネ52のバネ力とバネ室51内のガス圧による作用力との和)を上回ることになり、これによって、弁機能体40がバネ室51側に移動するため、真空ポート35が開放される。この状態で真空ポンプ32の稼動を継続し、真空チャンバ31内の空気を真空ポンプ32で吸引して真空チャンバ31内のを真空状態とする。
【0037】
真空チャンバ31を真空状態とした後、真空ポンプ32の稼動を停止する。この時、排気が真空チャンバ31側に逆流するおそれがあるので、真空バルブ30によって真空ポート35を素早く閉鎖する必要がある。そのため、本実施形態では、真空ポンプ32の停止と同時に、コントローラ57によって三方電磁弁56を作動させ、連通路53と連通路5とを遮断し、連通路54と連通路55とを連通させる。この時バネ室51は真空状態であるため、大気圧室50内の空気がバネ室51内に流入する。
【0038】
大気圧室50とバネ室51とを連通したことによって、大気圧室50とバネ室51の圧力が均衡する方向に向い、一時的に大気圧室50の圧力が大気圧室より下がり、バネ室51の圧力に近づく。本実施形態では、貫通孔47の断面積を連通路54及び55の断面積より小さくしてあるため、バネ室51が大気圧に昇圧する前に短時間で両室間の差圧が縮まり、均衡する。これによって、ピストン43に負荷される力はコイルバネ52のバネ力のみとなるので、弁機能体40が真空ポート35を閉鎖する方向に移動する。
【0039】
このように、本実施形態によれば、真空ポンプ32の稼動停止時に、真空ポート35を閉鎖する方向に働くタイミングが早まり、従来の真空バルブよりも短時間で排気路33を閉鎖することができる。しかも簡単なバルブ構成で、応答性を向上でき、装置が大掛かりになることはない。これによって、真空ポンプの停止時に排気の真空チャンバ31側への逆流を防止することができるので、真空チャンバ31内の真空破壊や、真空ポンプ32の磨耗粉や潤滑油が真空チャンバ31内に侵入して、真空チャンバ31内に設けられた機器類を汚染するのを防止することができる。
【0040】
なお、貫通孔47の断面積を適宜に調整することにより、大気圧室50の圧力上昇速度を調節可能であるとともに、貫通孔47の断面積に対する連通路54及び55の断面積の比を適宜調節することによって、弁機能体40が弁閉鎖方向に移動するタイミングを適宜調整することができる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明によれば、真空バルブの応答性を向上できるので、真空バルブ停止時に真空チャンバへの排気の逆流を防止できて、真空チャンバの真空破壊や真空チャンバ内に配置された機器類の汚染を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の一実施形態に係る真空バルブの縦断立面図である。
【図2】従来の真空バルブの縦断立面図である。
【符号の説明】
【0043】
30 真空バルブ
31 真空チャンバ
32 真空ポンプ
33a,33b 排気路
34 バルブハウジング
36 吸引ポート(出口側排気路)
37 支持部
38 弁座
40 弁機能体
41 弁棒
42 弁体
43 ピストン(仕切り部)
47 貫通孔
50 大気圧室
51 バネ室
52 コイルバネ(バネ部材)
53,54,55 連通路
56 三方電磁弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空ポンプと真空チャンバとに連結され該真空チャンバ内の雰囲気を排気する排気路に介設され該排気路を開閉する真空バルブにおいて、
前記排気路に介在されたバルブハウジング、及び該バルブハウジングの内部に摺動自在に収納され該バルブハウジング内に形成された弁座に当接又は離間して該排気路を開閉する弁機能体と、
該弁機能体に一体に形成され該バルブハウジング内を2つの領域に仕切る仕切り部と、
該仕切り部の一側に画成されたバネ室、及び該バネ室に装着され該弁機能体に対して該排気路を閉鎖する方向にバネ力を付勢するバネ部材と、
該仕切り部の他側に画成され該バルブハウジング壁に設けられた貫通孔を介して大気と連通する大気圧室と、
該バネ室を該弁機能体の出口側排気路又は該大気圧室に選択的に接続可能な連通路と、からなり、
該バネ室を該弁機能体の出口側排気路又は該大気圧室に選択的に接続させることにより該排気路を開閉するとともに、
該貫通孔から流入する大気の流量に対して該バネ室に流入する大気の流量を大きくすることにより、該排気路の急速閉塞を可能としたことを特徴とする真空バルブ。
【請求項2】
前記連通路は、
前記バルブハウジング壁に設けられ前記弁機能体の出口側排気路、前記大気圧室及び前記バネ室を接続する連通路と、該連通路に設けられ該バネ室を該弁機能体の出口側排気路又は該大気圧室に切換え接続する三方弁と、からなり、
該大気圧室と該バネ室とを接続する連通路の流路断面を前記貫通孔の断面より大きく形成することにより、該排気路の閉塞時に該貫通孔から流入する大気の流量より該バネ室に流入する大気の流量を大きくしたことを特徴とする請求項1に記載の真空バルブ。
【請求項3】
前記弁機能体は、
弁棒と、該弁棒の排気路側端部に設けられ前記バルブハウジングに形成された弁座に当接又は離間して該排気路を開閉する弁体と、該弁棒の他端に設けられ該バルブハウジング内を前記バネ室と前記大気圧室とに仕切る前記仕切り部と、からなり、
該弁棒が該バルブハウジングに一体に形成された支持部に摺動自在に支持され、該支持部と該仕切り部との間に該大気圧室が画成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の真空バルブ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−85241(P2009−85241A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−252103(P2007−252103)
【出願日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【出願人】(390028495)アネスト岩田株式会社 (224)
【Fターム(参考)】