説明

真空ポンプ

【課題】放熱性を確保しつつ、ケーシングの小型化を図った真空ポンプを提供すること。
【解決手段】ケーシング31内にロータ27やベーン28を備えた真空ポンプ1において、ケーシング31は、ロータ27やベーン28よりも熱伝導性の高い材料で形成されたケーシング本体22と、このケーシング本体22内に圧入されてロータ27やベーン28が摺動するシリンダ部23とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーシング内に回転圧縮要素を備えた真空ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ケーシング内に回転圧縮要素を備えた真空ポンプが知られている。この種の真空ポンプでは、回転圧縮要素を電動モータ等の駆動装置で駆動することによって真空を得ることができる。真空ポンプは、例えば、自動車のエンジンルームに搭載されて、ブレーキ倍力装置を作動させるための真空を発生させるために使用されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−222090号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、この種の真空ポンプでは、回転圧縮要素を駆動させてケーシング内で空気を圧縮することにより、ケーシング温度が上昇するため、ケーシングを冷却(放熱)することが望ましい。この場合、大きな放熱面積を確保するために、電動ポンプに取付ベースを取り付け、この取付ベースにシリンダ本体を積層してケーシングを形成する構成が考えられるが、この構成では、ケーシングが電動モータの軸方向に延び、真空ポンプが大型化してしまうという問題がある。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、放熱性を確保しつつ、ケーシングの小型化を図った真空ポンプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明は、ケーシング内に回転圧縮要素を備えた真空ポンプにおいて、前記ケーシングは、前記回転圧縮要素よりも熱伝導性の高い材料で形成されたケーシング本体と、このケーシング本体内に圧入されて前記回転圧縮要素が摺動するシリンダ部とを備えたことを特徴とする。
【0006】
この構成によれば、ケーシング本体内にシリンダ部を圧入してケーシングを構成しているため、このケーシングの小型化を図ることができる。また、ケーシング本体が回転圧縮要素よりも熱伝導性の高い材料で形成されているため、回転圧縮要素が作動した際に発生した熱がケーシング本体に速やかに伝達できることにより、ケーシング本体から十分に放熱することができる。
【0007】
この構成において、前記ケーシング本体及び前記シリンダ部は、それぞれケーシング本体及びシリンダ部を貫通して当該シリンダ部内に連通する連通孔を備え、この連通孔に吸込管を設けるとともに、この吸込管の先端を前記シリンダ部の連通孔に係合させても良い。この構成によれば、例えば、ケーシング本体にシリンダ部よりも熱膨張係数の高い材料を使用した場合に、熱膨張によってシリンダ部の圧入代が減少したとしても、吸込管の先端がシリンダ部の連通孔に係合するため、当該シリンダ部の回転防止や抜け防止を実現できる。
【0008】
また、前記シリンダ部は、前記回転圧縮要素と略同等の熱膨張係数を有する材質で形成しても良い。この構成によれば、温度変化に伴う回転圧縮要素とシリンダ部とのクリアランスの変化を抑制することができ、当該回転圧縮要素の外周面とシリンダ部の内周面との接触を防止できる。
【0009】
また、前記ケーシング本体には、前記回転圧縮要素の回転中心から偏心した位置に前記シリンダ部が配置され、このシリンダ部の前記回転中心側の周縁部に当該シリンダ部に連通する膨張室が形成されていても良い。この構成によれば、膨張室をケーシング本体の外部に設ける必要がなく、ケーシング本体の小型化を図ることができ、ひいては真空ポンプの小型化を図ることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ケーシング本体内にシリンダ部を圧入してケーシングを構成しているため、このケーシングの小型化を図ることができる。また、ケーシング本体が回転圧縮要素よりも熱伝導性の高い材料で形成されているため、回転圧縮要素が作動した際に発生した熱がケーシング本体に速やかに伝達できることにより、ケーシング本体から十分に放熱することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本実施形態に係る真空ポンプの側部部分断面図である。
【図2】真空ポンプをその前側から見た図である。
【図3】ケーシング本体の背面側を示す斜視図である。
【図4】Aは、電動モータとポンプ本体との連結構造を示す図であり、Bは、その連結構造の変形例である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明に係る好適な実施の形態について説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る真空ポンプ1の側部部分断面図である。図2は、図1の真空ポンプ1をその前側(同図中の右側)から見た図である。ただし、図2は、シリンダ室Sの構成を示すべく、ポンプカバー24,サイドプレート26等の部材を取り外した状態を図示している。また、図2では、取付部材40を取り外した状態を示している。なお、以下では、説明の便宜上、図1および図2の上部にそれぞれ矢印で示す方向が、真空ポンプ1の上下前後左右を示すものとして説明する。また、前後方向については軸方向、左右方向については幅方向ともいう。
【0013】
図1に示す真空ポンプ1は、回転式のベーン型真空ポンプであり、例えば、自動車等のブレーキ倍力装置(図示略)の負圧源として使用される。この場合、真空ポンプ1は、通常、エンジンルーム内に配置されて、真空タンク(図示略)を介してブレーキ倍力装置に配管接続される。なお、自動車等に用いる真空ポンプ1の使用範囲は、例えば、−60kPa〜−80kPaである。
【0014】
図1に示すように、真空ポンプ1は電動モータ10と、この電動モータ10に配置されたポンプ本体20とを備えており、これら電動モータ10及びポンプ本体20が一体に連結された状態で、取付部材40によって自動車等の車体50に固定支持されている。
取付部材40は、ポンプ本体20の幅方向に延びる矩形の突出溝41Aを設けた取付板41と、この取付板41の前端及び後端にそれぞれ固定される防振ゴム42,42とを備える。これら防振ゴム42,42は、車体に形成された孔部に嵌入して保持される。取付板41は、突出溝41Aでポンプ本体20の下面にボルト43で固定されている。
【0015】
電動モータ10は、略円筒形状に形成されたケース11の一方の端部(前端)の略中心からポンプ本体20側(前側)に向かって延びる出力軸12を有している。出力軸12は、前後方向に延びる回転中心X1を基準として回転する。出力軸12の先端部12Aには、ポンプ本体20の後述するロータ27に嵌合し、当該ロータ27の回り止めとなるスプライン部12Bが形成されている。なお、出力軸12の外表面にキーを設けてロータ27の空回りを防止することも可能である。
電動モータ10は、電源(図示略)の投入により、出力軸12が、図2中の矢印R方向(反時計回り)に回転し、これにより、ロータ27を回転中心X1を中心として同方向(矢印R方向)に回転させるようになっている。
【0016】
ケース11は、有底円筒形状に形成されたケース本体60と、このケース本体60の開口を塞ぐカバー体61とを備え、ケース本体60は、その周縁部60Aが外方に折り曲げて形成されている。カバー体61は、ケース本体60の開口と略同径に形成された円板部61Aと、この円板部61Aの周縁に連なり、ケース本体60の内周面に嵌まる円筒部61Bと、この円筒部61Bの周縁を外方に折り曲げて形成した屈曲部61Cとを備えて一体に形成され、円板部61A及び円筒部61Bがケース本体60内に進入し、屈曲部61Cが、ケース本体60の周縁部60Aに当接して固定されている。これにより、電動モータ10には、ケース11の一方の端部(前端)が内側に窪み、ポンプ本体20がインロー嵌合される嵌合穴部63が形成される。
また、円板部61Aの略中央には、出力軸12が貫通する貫通孔61Dと、この出力軸12を軸支するベアリング62の外輪を保持する凹部61Eが形成されている。
【0017】
ポンプ本体20は、図1に示すように、電動モータ10のケース11の前側に形成された嵌合穴部63に嵌合されるケーシング本体22と、このケーシング本体22内に圧入されてシリンダ室Sを形成するシリンダ部23と、当該ケーシング本体22を前側から覆うポンプカバー24とを備えている。本実施形態ではケーシング本体22、シリンダ部23及びポンプカバー24を備えて、真空ポンプ1のケーシング31を構成している。
【0018】
ケーシング本体22は、例えば、アルミニウム等の熱伝導性の高い金属材料を用いて、図2に示すように、前側から見た形状が上記した回転中心X1を略中心とした上下方向に長い略矩形に形成されている。ケーシング本体22の上部には、このケーシング本体22に設けられたシリンダ室S内に連通する連通孔22Aが形成され、この連通孔22Aには真空吸込ニップル(吸込管)30が圧入されている。この真空吸込ニップル30は、図1に示すように、略L字状に屈曲されたパイプであり、当該真空吸込ニップル30の一端30Aには、外部機器(例えば、真空タンク(図示略))から負圧空気を供給するための管またはチューブが接続される。本実施形態では、真空吸込ニップル30をケーシング本体22の連通孔22Aに圧入しているため、車両のように事前に外部機器の配置される位置が判明する場合には、この外部機器が配置される方向に一端30Aを向けて圧入すればよく、簡単な構成で、負圧空気を供給するための管またはチューブの引き出し方向を自由に設定することができる。
【0019】
ケーシング本体22には、前後方向に延びる軸心X2を基準とした孔部22Bが形成され、この孔部22Bに円筒状に形成されたシリンダ部23が圧入されている。軸心X2は、上述の電動モータ10の出力軸12の回転中心X1に対して平行で、かつ、図2に示すように、回転中心X1に対して左側斜め上方に偏心している。本構成では、回転中心X1を中心とする後述のロータ27の外周面27Bが、軸心X2を基準に形成されているシリンダ部23の内周面23Aに接するように軸心X2が偏心されている。
シリンダ部23は、ロータ27と同一の金属材料(本実施形態では、鉄)で形成されている。この構成では、シリンダ部23とロータ27とは熱膨張係数が同じなので、シリンダ部23及びロータ27の温度変化にかかわらず、ロータ27が回転した際の当該ロータ27の外周面27Bとシリンダ部23の内周面23Aとの接触を防止することができる。さらに、シリンダ部23とロータ27とは熱膨張係数が同じなので、ロータ27の側面とシリンダ部23の後端および前端にそれぞれ配置されるサイドプレート25,26(後述する)とのクリアランスを安定させることができる。
また、ケーシング本体22に形成された孔部22Bにシリンダ部23を圧入することにより、ケーシング本体22の前後方向の長さ範囲内でシリンダ部23を収容することができるため、このシリンダ部23がケーシング本体22から突出することが防止され、ケーシング本体22の小型化を図ることができる。
更に、ケーシング本体22はロータ27よりも熱伝導性の高い材料で形成されている。これによれば、ロータ27及びベーン28が回転駆動した際に発生した熱がケーシング本体22に速やかに伝達できることにより、ケーシング本体22から十分に放熱することができる。
【0020】
また、一般に、アルミニウムの方が鉄よりも熱膨張係数が大きいため、ポンプ本体20が高温となった場合、シリンダ部23の圧入代が減少する傾向にある。このため、本構成では、シリンダ部23には、ケーシング本体22の連通孔22Aに連なる開口(連通孔)23Bが形成されており、この開口23Bに、真空吸込ニップル30の他端(先端)30Bが係合するように配置されている。これによれば、熱膨張によってシリンダ部23の圧入代が減少したとしても、真空吸込ニップル30の他端30Bがシリンダ部23の開口23Bに係合するため、当該シリンダ部23の回転防止や抜け防止を実現できる。
また、ケーシング本体22及びシリンダ部23の下部には、これらケーシング本体22及びシリンダ部23を貫通し、シリンダ室Sで圧縮された空気が吐出される吐出孔22C,23Cが設けられている。
【0021】
シリンダ部23の後端および前端には、それぞれサイドプレート25,26が配設されている。これらサイドプレート25,26は、その直径がシリンダ部23の内周面23Aの内径よりも大きく設定されており、ガスケット25A,26Aにより付勢されて、シリンダ部23の前端及び後端にそれぞれ押し付けられている。これにより、シリンダ部23の内側は、真空吸込ニップル30に連なる開口23B及び吐出口23C,22Cを除いて、密閉されたシリンダ室Sが形成される。
【0022】
シリンダ部23の内側のシリンダ室Sには、ロータ27が配設されている。ロータ27は、厚肉円筒形状に形成されていて、その内周面27Aには、上述のスプライン部12Bが形成された出力軸12が嵌合されている。このスプライン嵌合の構成により、ロータ27は出力軸12と一体となって回転する。ロータ27の前後方向の長さは、シリンダ部23の長さ、すなわち、上述の2枚にサイドプレート25,26の相互に対向する内面間の距離と略等しく設定されている。また、ロータ27の外径は、図2に示すように、ロータ27の外周面27Bが、シリンダ部23の内周面23Aのうちの右斜め下方に位置する部分と微小なクリアランスを保つように設定されている。これにより、図2に示すように、ロータ27の外周面27Bと、シリンダ部23の内周面23Aとの間には、三日月形状の空間が構成される。
【0023】
ロータ27には、三日月形状の空間を区画する複数(本例では5枚)のベーン28が設けられている。ベーン28は、板状に形成されていて、その前後方向の長さは、ロータ27と同様、2枚のサイドプレート25,26の相互に対向する内面間の距離と略等しくなるように設定されている。これらベーン28は、ロータ27に設けられたガイド溝27Cから出入り自在に配設されている。各ベーン28は、ロータ27の回転に伴い、遠心力によってガイド溝27Cに沿って外側へ突出し、その先端をシリンダ部23の内周面23Aに当接させる。これにより、上述の三日月形状の空間は、相互に隣接する2枚のベーン28,28と、ロータ27の外周面27Bと、シリンダ部23の内周面23Aとによって囲まれる5つの圧縮室Pに区画される。これら圧縮室Pは、出力軸12の回転に伴うロータ27の矢印R方向の回転に伴い、同方向に回転し、その容積が、開口23B近傍で大きく、一方、吐出口23Cで小さくなる。つまり、ロータ27,ベーン28の回転により、開口23Bから1つの圧縮室Pに吸入された空気は、ロータ27の回転に伴って回転しつつ圧縮されて、吐出口23Cから吐出される。本構成では、ロータ27及び複数のベーン28を備えて回転圧縮要素を構成する。
【0024】
本構成では、シリンダ部23は、図2に示すように、このシリンダ部23の軸心X2が回転中心X1に対して左側斜め上方に偏心してケーシング本体22に形成されている。このため、ケーシング本体22には、シリンダ部23が偏心したのと反対の方向に、吐出口23C、22Cに連通する膨張室33が形成されている。この膨張室33は、シリンダ部23の外周面に沿って三日月状に形成されており、吐出口23C、22Cに近傍する部分は更に下方に膨出して、ポンプカバー24に形成された排気口24Aに連通している。本構成では、回転中心X1に対して、シリンダ部23を偏心させてケーシング本体22内に形成しているため、このケーシング本体22内に吐出口23C、22Cに連通する膨張室33を形成することができる。このため、膨張室33をケーシング本体22の外部に設ける必要がなく、ケーシング本体22の小型化を図ることができ、ひいては真空ポンプ1の小型化を図ることができる。また、吐出口23C、22から吐出された空気は、膨張室33内に導かれて膨張することにより、騒音が低減される。
【0025】
ポンプカバー24は、前側のサイドプレート26にガスケット26Aを介して配置され、ケーシング本体22にボルト34で固定されている。ケーシング本体22の前面には、図2に示すように、シリンダ部23や膨張室33を囲んでシール溝22Dが形成され、このシール溝22Dには環状のシール材35が配置されている。ポンプカバー24には、膨張室33に対応する位置に排気口24Aが設けてある。この排気口24Aは、膨張室33に流入した空気を機外(真空ポンプ1の外部)に排出するためのものであり、この排気口24Aは、機外からポンプ内への空気の逆流を防止するためのチェックバルブ29が取り付けられている。
【0026】
図3は、ケーシング本体22を背面から見た斜視図である。
上記したように、真空ポンプ1は、電動モータ10とポンプ本体20とを連結して構成されており、電動モータ10の出力軸12に連結されたロータ27及びベーン28がポンプ本体20のシリンダ部23内で摺動する。このため、ポンプ本体20を電動モータ10の出力軸12の回転中心X1に合わせて組み付けることが重要である。
このため、本実施形態では、上記したように、電動モータ10は、ケース11の一端側に出力軸12の回転中心X1を中心とした嵌合穴部63が形成されている。一方、ケーシング本体22の背面には、図3に示すように、シリンダ室Sの周囲に後方へ突出した円筒状の嵌合部22Fが一体に形成されている。この嵌合部22Fは、電動モータ10の出力軸12の回転中心X1と同心に形成されており、電動モータ10の嵌合穴部63にインロー嵌合する外径に形成されている。
このため、この構成では、電動モータ10の嵌合穴部63にケーシング本体22の嵌合部22Fを嵌め込むだけで、簡単に中心位置を合わせることができるため、電動モータ10とポンプ本体20との組み付け作業を容易に行うことができる。また、ケーシング本体22の背面には、嵌合部22Fの周囲にシール溝22Eが形成され、このシール溝22Eには環状のシール材36が配置されている。
【0027】
本構成では、電動モータ10とポンプ本体20とをインロー嵌合することにより、これらを仮固定できるため、ポンプカバー24を固定するためのボルト34でケーシング本体22及び電動モータ10のケース11をまとめて固定することができる。
具体的には、図4Aに示すように、ケース本体60の周縁部60Aに雌ねじ部60A1を設け、この雌ねじ部60A1にボルト34を螺合することにより、1本のボルト34でポンプカバー24、ケーシング本体22及び電動モータ10のケース11をまとめて固定する。この場合、雌ねじ部60A1の厚みを周縁部60Aの板厚よりも厚く形成することで、ポンプカバー24、ケーシング本体22及び電動モータ10のケース11を強固に固定することができる。
また、図4Bに示すように、雌ねじ部60A1をケーシング本体22側に突出させて形成するととともに、この雌ねじ部60A1をカバー体61の屈曲部61Cに形成した孔部60C1内に収容しても良い。この構成によれば、雌ねじ部60A1が真空ポンプ1の表面に突出して露出することがなく、デザイン性の向上を図ることができる。
【0028】
以上、説明したように、本実施形態によれば、ケーシング内にロータ27やベーン28を備えた真空ポンプ1において、ケーシングは、ロータ27やベーン28よりも熱伝導性の高い材料で形成されたケーシング本体22と、このケーシング本体22内に圧入されてロータ27やベーン28が摺動するシリンダ部23とを備えたため、ケーシング本体22内にシリンダ部23を圧入してケーシング31を構成することにより、このケーシング31の小型化を図ることができる。また、ケーシング本体22がロータ27やベーン28も熱伝導性の高い材料で形成されているため、ロータ27やベーン28が駆動した際に発生した熱がケーシング本体22に速やかに伝達できることにより、ケーシング本体22から十分に放熱することができる。
【0029】
また、本実施形態によれば、ケーシング本体22及びシリンダ部23は、それぞれケーシング本体22及びシリンダ部23を貫通して当該シリンダ部23内に連通する連通孔22A,開口23Bを備え、この連通孔22Aに真空吸込ニップル30を圧入するとともに、この真空吸込ニップル30の他端30Bをシリンダ部23の開口23Bに係合させたため、例えば、ケーシング本体22に熱膨張係数の高いアルミニウム、シリンダ部23に熱膨張係数の低い鉄を用いた場合に、熱膨張によってシリンダ部23の圧入代が減少したとしても、真空吸込ニップル30の他端30Bがシリンダ部23の開口23Bに係合するため、当該シリンダ部23の回転防止や抜け防止を実現できる。
【0030】
また、本実施形態によれば、シリンダ部23は、ロータ27と略同等の熱膨張係数を有する材質で形成されているため、温度変化に伴うロータ27の側面とサイドプレート25,26とのクリアランスの変化及びシリンダ部23の内周面23Aとロータ27の外周面27が接触する事を防ぐことができる。
【0031】
また、本実施形態によれば、ケーシング本体22には、ロータ27の回転中心X1から偏心した位置にシリンダ部23が配置され、このシリンダ部23の回転中心X1側の周縁部に当該シリンダ部23に連通する膨張室33が形成されているため、膨張室33をケーシング本体22の外部に設ける必要がなく、ケーシング本体22の小型化を図ることができ、ひいては真空ポンプ1の小型化を図ることができる。
【0032】
以上、本発明を実施するための最良の実施の形態について述べたが、本発明は既述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術思想に基づいて各種の変形および変更が可能である。例えば、本実施形態では、真空ポンプ1として、ベーン型の真空ポンプを用いているが、回転圧縮要素を備えるものであれば、例えば、スクロール型のものを用いてもよい。
【符号の説明】
【0033】
1 真空ポンプ
10 電動モータ
20 ポンプ本体
22 ケーシング本体
22A 連通孔
22B 孔部
22C 吐出孔
22F 嵌合部
23 シリンダ部
23B 開口(連通孔)
23C 吐出口
24 ポンプカバー
27 ロータ(回転圧縮要素)
28 ベーン(回転圧縮要素)
30 真空吸込ニップル(吸込管)
30B 他端(先端)
31 ケーシング
33 膨張室
63 嵌合穴部
60A1 部
60C1 孔部
P 圧縮室
S シリンダ室
X1 回転中心
X2 軸心

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシング内に回転圧縮要素を備えた真空ポンプにおいて、
前記ケーシングは、前記回転圧縮要素よりも熱伝導性の高い材料で形成されたケーシング本体と、このケーシング本体内に圧入されて前記回転圧縮要素が摺動するシリンダ部とを備えたことを特徴とする真空ポンプ。
【請求項2】
前記ケーシング本体及び前記シリンダ部は、それぞれケーシング本体及びシリンダ部を貫通して当該シリンダ部内に連通する連通孔を備え、この連通孔に吸込管を設けるとともに、この吸込管の先端を前記シリンダ部の連通孔に係合させたことを特徴とする請求項1に記載の真空ポンプ。
【請求項3】
前記シリンダ部は、前記回転圧縮要素と略同等の熱膨張係数を有する材質で形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の真空ポンプ。
【請求項4】
前記ケーシング本体には、前記回転圧縮要素の回転中心から偏心した位置に前記シリンダ部が配置され、このシリンダ部の前記回転中心側の周縁部に当該シリンダ部に連通する膨張室が形成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の真空ポンプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−214519(P2011−214519A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−83699(P2010−83699)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(510063502)ナブテスコオートモーティブ株式会社 (34)
【Fターム(参考)】