説明

真空ポンプ

【課題】ピストンを排気方向に作動させた場合に駆動室に対する外気の吸入を抑制する真空ポンプを構成する。
【解決手段】ピストン2の排気方向への作動時に負圧室Aから空気が送られる排気経路Eと、駆動室Bの通気口7Aに連通する通気経路Fとが合流空間としてのサイレンサ18で合流し、このサイレンサ18はフィルタ空間Gのエアーフィルタ17の外側位置の開放口15Aによりポンプ外空間と連通している。ピストン2の排気方向への作動時にはピストンリング30の変位により連通孔2Tが開放し、負圧室Aの空気を連通孔2Tから駆動室Bに送り、これと同時に負圧室Aの空気が排気経路Eに送られるため、サイレンサ18から駆動室Bに空気が流れることになり、駆動室Bの外気の吸入を抑制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピストンの作動により負圧を作り出す真空ポンプに関し、詳しくは、ピストンに備えたピストンリングの作動により流体の流れを制御する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
上記の真空ポンプとして特許文献1には、シリンダの内部に往復移動自在にピストンを備え、モータの駆動力をクランク機構により往復作動に変換してピストンに伝える駆動手段を備え、シリンダヘッドには吸気弁と排気弁とを有するバルブボディを備えた構成が示されている。この特許文献1ではピストンの外周にピストンリングを備えている。
【0003】
上記した真空ポンプと異なるものであるが、特許文献2には空気を圧縮するコンプレッサが示され、このコンプレッサには真空ポンプと同様にシリンダの内部に往復移動自在にピストンを備え、このピストンを往復作動させる駆動手段を備えている。
【0004】
この特許文献2では、ピストンの外周の環状溝に対し、この環状溝の溝幅より狭い幅のピストンリングを幅方向に移動自在に備え、環状溝にはシリンダヘッド側に連通するインレットと、クランクケース側に連通する開口とを形成することで、このピストンリングを開閉弁として構成している。この構成からピストンの圧縮方向への作動時にはピストンリングが開口を閉塞してシリンダヘッド側からクランクケース側への空気の流れを阻止して圧搾を実現し、ピストンの吸気方向への作動時にはピストンリングが開口を開放することでクランクケース側からシリンダヘッド側への空気の流れを許容している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011‐7118号公報
【特許文献2】特開平09‐14141号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
真空ポンプとして、シリンダヘッド側に負圧室を形成し、この負圧室の反対側にクランク機構等を収容する駆動室を形成したものを想定すると、駆動室内への塵埃等の浸入を抑制し、作動時の作動音を抑制する観点から駆動室は閉じた空間であることが望ましい。
【0007】
しかしながら、駆動室を閉じた空間として構成した場合にはピストンの作動時に内部の空気の圧縮と減圧とが行われることになり、ピストンを作動させる電動モータ等の駆動トルクの変動を招き安定的な駆動が損なわれるものであった。
【0008】
そこで、空気の出入りを許すため小径の開口を形成することも考えるが、このように開口を形成した場合には、ピストンの排気方向への作動時には駆動室の減圧に伴い開口から塵埃や湿気を駆動室内に吸入する現象は避けられず、改善の余地がある。
【0009】
このような不都合に対し、ピストンの排気方向への作動時に負圧室の空気を駆動室に送り出すようにピストンリングを作動させることも考えられるが、特許文献2に記載される構成はピストンの排気方向(圧縮方向)への作動時に空気の流れを阻止する構造であるため単純に組み合わせることができないものであった。
【0010】
本発明の目的は、ピストンを排気方向に作動させた場合に駆動室に対する外気の吸入を抑制する真空ポンプを合理的に構成する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の特徴は、シリンダと、当該シリンダの内部をシリンダヘッドの側の負圧室と前記負圧室と反対側の駆動室とに仕切りつつ、シリンダの内部で往復作動自在に設けられたピストンと、前記ピストンの外面全周に形成された環状溝に嵌め込まれた前記環状溝の幅よりも狭い幅を有するピストンリングと、前記ピストンの往復作動時に前記負圧室への流体の給排を制御するよう前記シリンダヘッドに設けられた弁ユニットとを備え、前記環状溝の底部と前記駆動室とに亘って連通孔を形成すると共に、前記駆動室と外部空間とに亘る通気口を形成している点にある。
【0012】
この構成によると、ピストンが吸気方向に作動した場合には、ピストンリングが連通孔を閉塞する位置に変位するため負圧室に負圧を作り出すと共に、駆動室の圧力上昇に伴い駆動室の流体を通気口から送り出す。これとは逆にピストンが排気方向に作動した場合には、ピストンリングが連通孔への流体の流れを許す位置に変位するため負圧室の流体が駆動室に流れることになり負圧室の圧力の低下が制限される。これにより、ピストンが往復作動する際に駆動室の圧力変動を抑制して通気口から外気の吸引を抑制すると共に、駆動室の圧力変動の抑制からピストンを駆動するアクチュエータに作用する負荷変動も抑制して安定的な駆動を実現する。
その結果、ピストンを排気方向に作動させた場合に駆動室に対する外気の吸入を抑制し、塵埃や湿気を駆動室に吸引することがなく、安定的な駆動が可能な真空ポンプが構成された。
【0013】
本発明は、前記弁ユニットが、前記ピストンの吸気方向への作動時に閉塞し、前記ピストンの排気方向への作動時に開放する排気弁を備え、前記排気弁に連通する排気経路と、前記通気口に連通する通気経路とを備えると共に、前記排気経路と前記通気経路とを合流空間で合流させ、この合流空間をポンプ外の空間に連通させる開放口を備え、前記合流空間と開放口との中間に流体フィルタを備えても良い。
【0014】
これによると、ピストンが排気方向に作動した場合には、負圧室の流体が排気弁から排気経路に送り出され、合流空間から流体フィルタを通過し、開放口からポンプ外に送り出される。また、ピストンが排気方向に作動した場合には、ピストンリングの変位により負圧室の流体が駆動室に流れるため駆動室の圧力低下が抑制されるが、負圧が完全に解消されない場合には、通気口から流体が駆動室に吸い込まれる。通気口は通気経路を介して合流空間と連通しているため、通気口から流体を吸い込む場合には、排気経路から合流空間に送られた流体を吸い込むことになり外気を吸引することは少ない。また、駆動室に外気を吸引する場合でも、開放口から吸引した空気に含まれる塵埃や湿気が流体フィルタで取り除かれ、塵埃や湿気が駆動室に吸引される不都合が抑制される。
【0015】
本発明は、前記ピストンの吸気方向への作動時に前記駆動室の流体を前記通気口から送り出し、前記ピストンの排気方向への作動時に前記通気口から前記駆動室への流体の流れを抑制するチェック弁を備えても良い。
【0016】
これによると、ピストンが吸気方向に作動し駆動室の圧力が上昇した場合には、チェック弁が駆動室の流体を通気経路に送り出す。これとは逆に、ピストンが排気方向に作動し駆動室が負圧になった場合でも、チェック弁が駆動室への流体の流入を抑制するため駆動室に対する流体の吸引が抑制される。これにより、駆動室に対する塵埃や湿気の吸引を阻止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】真空ポンプの断面図である。
【図2】ピストンが排気方向と吸気方向とに移動する際のピストンリングと連通孔との位置関係を示す断面図である。
【図3】別実施形態の真空ポンプの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
〔基本構成〕
図1に示すように、シリンダ1の内部に往復移動自在にピストン2を備え、このピストン2を基準にしてシリンダヘッド側に負圧室Aを備え、ピストン2を基準にして負圧室Aと反対側にピストン2に駆動力を伝えるクランク機構Cを収容した駆動室Bを備えてレシプロ型の真空ポンプが構成されている。
【0019】
この真空ポンプは、自動車のブレーキブースター(図示せず)の負圧源として使用されるものであり、ピストン2を吸気方向(図1で右側)に作動させることにより、負圧室Aに負圧を作り出し、ピストン2を排気方向(図1で左側)に作動させることにより、流体としての空気を負圧室Aから外部に排出する。尚、この真空ポンプは自動車に使用されるものに限らず、負圧を必要とする他の機器にも使用可能であり、流体として空気以外のガスを対象にしても良い。
【0020】
〔具体構成〕
この真空ポンプは、シリンダ1の一方の端部(シリンダヘッド側)に弁ユニットVを配置することにより、この弁ユニットVとピストン2との間に負圧室Aが形成される。また、シリンダ1の他方の端部側にポンプハウジング3を配置し、このポンプハウジング3の内部空間によって駆動室Bが形成される。
【0021】
ポンプハウジング3に電動モータ4が備えられ、この電動モータ4の出力軸4Aと一体的に回転するクランクアーム5にコネクティングロッド6の基端を連結し、このコネクティングロッド6の先端にピストン2が連結している。このようにクランク機構Cは、クランクアーム5とコネクティングロッド6とを備えて構成されている。この構成から、電動モータ4の出力軸4Aの回転駆動力をクランク機構Cが往復作動力に変換してピストン2に伝え、このピストン2を往復作動させる。
【0022】
駆動室Bは、ポンプハウジング3において側方に開放する空間をプレート状の閉塞部材7で閉塞した構造を有しており、閉塞部材7には通気口7Aが穿設されている。この通気口7Aと連通する内部空間を有する経路ブロック15が閉塞部材7の外側に配置され、この経路ブロック15と閉塞部材7とが固定ボルト8によりポンプハウジング3に連結固定されている。また、経路ブロック15には、内部空間に連通する筒状部16が弁ユニットVの方向に突設している。
【0023】
弁ユニットVは、弁ボディ21の吸気空間21Aと連通する部位に吸気弁22を備え、この弁ボディ21の排気空間21Bと連通する部位に排気弁23を備えている。また、この弁ユニットVは、吸気空間21Aと排気空間21Bとを外部空間から隔絶するカバープレート24を備え、このカバープレート24には外部のブレーキブースターに負圧を作用させるチューブ25が接続している。吸気弁22はゴムや樹脂のように柔軟に変形し得る素材を用いて構成され、空気の流れを阻止する場合には外周のリップ部が弁ボディ21に密着し、空気の流れを許す場合にはリップ部が弁ボディ21から浮き上がり空気の流れを許す空間を形成する。また、排気弁23は、バネ23Sで閉塞方向に付勢される構成を有しており、空気の流れを阻止する場合にはバネ23Sの付勢力により外周が弁ボディ21に密着し、空気の流れを許す場合には、バネ23Sの付勢力に抗して外周部分が弁ボディ21から浮き上がり空気の流れを許す空間を形成する。尚、吸気弁22と排気弁23として、バネで閉じ方向に付勢されたボールやポペット等を用いることや、ヒンジによって作動する板状の部材を用いても良い。
【0024】
弁ボディ21には、排気空間21Bに連通する筒状の突出部26がポンプハウジング3の方向に向けて突設されている。この突出部26と筒状部16とを連通状態で接続する筒状の接続管9が備えられ、この接続管9は、一端を突出部26に外嵌し、他端を筒状部16とに外嵌する形態で備えられる。
【0025】
弁ユニットVは、弁ボディ21とカバープレート24との貫通孔に挿通する連結ボルト10の先端をポンプハウジング3の雌ネジ部に螺合させる形態でポンプハウジング3に連結している。この連結は複数の連結ボルト10により行われるものであり、連結時に弁ユニットVとポンプハウジング3との間にシリンダ1を挟み込み、弁ユニットVと経路ブロック15との間に接続管9を挟み込むことで、これらが一体化される。
【0026】
通気口7Aから経路ブロック15の内部空間を通過し、経路ブロック15の外面に穿設された開放口15Aに亘って通気経路F形成されている。また、弁ボディ21の排気空間21Bから接続管9を介して経路ブロック15の内部空間に亘って排気経路Eが形成されている。通気経路Fは、フィルタ空間Gを介して開放口15Aに連通しており、このフィルタ空間Gにエアーフィルタ17(流体フィルタの一例)が備えられている。
【0027】
特に、経路ブロック15の内部にはフィルタ空間Gを取り囲むドーナツ状となる空洞型のサイレンサ18が形成されている。サイレンサ18を構成する空間と、フィルタ空間Gとは、閉塞部材7の外壁と経路ブロック15の内壁との間に形成され、サイレンサ18が排気経路Eと通気経路Fとを合流させる合流空間として機能する。フィルタ空間Gには閉塞部材7の外壁と経路ブロック15の内壁とに密接する状態でエアーフィルタ17が備えられている。このエアーフィルタ17は除塵性能を有する羊毛フェルトや、紙材、ウレタンフォーム等が使用される。
【0028】
〔ピストンリング〕
図2に示すように、ピストン2の外面の全周に環状溝2Gが形成され、この環状溝2Gの溝幅より狭い幅で、環状溝2Gの内部で幅方向(ピストン2の作動方向)に変位自在にピストンリング30が嵌め込まれている。また、ピストン2の外周にはピストンガイドブッシュ31が嵌め込まれ、シリンダ1の内周面にはピストンリング30とピストンガイドブッシュ31とが接触し、ピストン2の両端の外周がシリンダ1の内周面に接触しないように構成されている。環状溝2Gは、負圧室側の第1側壁2Gaと駆動室側の第2側壁2Gbと、これらに挟まれる位置の環状溝2Gの底部となる底壁2Gcとを有している。ピストンリング30は、内リング30Aと中間リング30Bと外リング30Cとの3種を重ね合わせた3重構造を有している。
【0029】
内リング30Aは、ステンレス鋼で成りリング部にスリットが形成されている。中間リング30Bと外リング30Cとは4フッ化エチレン樹脂で成り、リング部にスリットが形成されている。尚、内リング30Aと中間リング30Bと外リング30Cとのスリットは環状溝2Gに嵌め込む際に内径の拡大を容易にするために一般的に形成されるものと変わりはない。また、内リング30Aのスリットに対し中間リング30Bのスリットの位置を180度異なる位置に配置し、この中間リング30Bのスリットの位置に対し外リング30Cのスリットを180度異なる位置に配置することでシール性能の向上が図られている。
【0030】
このピストンリング30は、内リング30Aが半径を拡大する方向に付勢力を作用させており、この付勢力により外リング30Cの外周をシリンダ1の内周面に接触させると共に、内リング30Aの内周面と環状溝2Gの底壁2Gcとの間に隙間を形成している。
【0031】
環状溝2Gの底壁2Gcとピストン2の内部とを連通させる複数の連通孔2Tが形成され、この連通孔2Tは駆動室Bに連通している。そして、ピストン2が吸気方向へ作動した場合には、図2(b)に示すように、ピストンリング30が第1側壁2Gaの方向に変位して第1側壁2Gaに当接し、負圧室Aから連通孔2Tへの空気の流れを阻止する。これとは逆に、ピストン2が排気方向へ作動した場合には、図2(a)に示すように、ピストンリング30が第2側壁2Gbの方向に変位して第2側壁2Gbに当接し、このピストンリング30と第1側壁2Gaとの間に隙間を形成するため負圧室Aから連通孔2Tへの空気の流れを許す。
【0032】
〔作動形態〕
このような構成のため、ピストン2が吸気方向に作動する場合には、ピストンリング30が第1側壁2Gaに当接(密接)する位置に変位するため負圧室Aから駆動室Bへの空気の流れが阻止される。このピストン2の作動により吸気弁22が開放してチューブ25からの空気を負圧室Aに吸引して負圧を作用させることになり、駆動室Bの空気が通気口7Aから通気経路Fに送られ開放口15Aからポンプ外に排出される。
【0033】
また、ピストン2が排気方向に作動する際には、排気弁23が開放して負圧室Aからの空気が排気経路Eに送られる。これと同時に、ピストンリング30が第2側壁2Gbに当接する位置に変位するため負圧室Aの空気がピストンリング30と第1側壁2Gaとの間の隙間から連通孔2Tに送られる。この作動では駆動室Bが負圧状態に達するが、連通孔2Tから駆動室Bに空気が送り込まれるため負圧の程度は低く、通気口7Aから駆動室Bに吸引される空気量は低減される。特に、通気口7Aに空気を送る通気経路Fはサイレンサ18の空間で排気経路Eと合流しているため、通気経路Fに対して排気経路Eからの空気を送ることが可能となり、負圧により駆動室Bに空気が吸引される場合でも、排気経路Eの空気と、開放口15Aで吸引された空気とが混合することになり、外気の吸引量を低減できる。尚、開放口15Aから空気が吸引される場合にはエアーフィルタ17で濾過された空気が吸引されることになるので、塵埃や湿気(水分)がエアーフィルタ17で除去され駆動室Bに浸入することがない。
【0034】
更に、排気方向にピストン2が作動する場合に、負圧室Aの空気が連通孔2Tを介して直接的に駆動室Bに流れるため、この駆動室Bが負圧化を抑制して駆動負荷の変動を少なくして電動モータ4の駆動トルクを安定させる。また、電動モータ4を一定の負荷で駆動することにより電動モータ4に供給される電力を変動させず電動モータ4の耐久性を向上させる。ピストン2の往復作動時には排気経路Eと通気経路Fとの空気が間歇的に流れ、圧力変動に伴い騒音を発生させるが、サイレンサ18が騒音を抑制する。
【0035】
〔別実施形態〕
本発明は、上記した実施形態以外に以下のように構成しても良い(この別実施形態では前記実施形態と同じ機能を有するものには、前記実施形態と共通の番号、符号を付している)。
【0036】
(a)図3に示すように、駆動室Bから空気が送り出される場合には開放し、駆動室Bに空気を吸引する場合には閉塞するチェック弁35が通気口7Aに備えられ、このチェック弁35を保持する保持部材36が取り付けられている。このチェック弁35は、前述した実施形態の吸気弁22と同様にゴムや樹脂のように柔軟に変形し得る素材を用いて構成され、空気の流れを阻止する場合には外周のリップ部が閉塞部材7に密着し、空気の流れを許す場合には外周のリップ部が閉塞部材7から浮き上がり空気の流れを許す空間を形成する。尚、このチェック弁35として、バネで閉じ方向に付勢されたボールやポペット等を用いることや、ヒンジによって作動する板状の部材を用いて構成しても良い。
【0037】
このように構成することにより、ピストン2が吸気方向に作動した場合には駆動室Bからの空気の排出を可能にしながら、ピストン2が排気方向に作動して駆動室Bが負圧状態に達した場合でも駆動室Bに対して外部からの空気の吸引を阻止し、駆動室Bへの塵埃や湿気の吸引を阻止でき、電動モータ4の駆動トルクの安定も実現する。
【0038】
(b)別実施形態(a)のチェック弁35に代えて、ピストン2が排気方向に作動した場合に、駆動室Bに対する空気の流入を制限する構成の弁体を備える。その一例として別実施形態(a)のチェック弁35の一部にオリフィスとして機能する開口を形成した構成が考えられる。このような構成を採用することにより、ピストン2が吸気方向に作動した場合には駆動室Bからの空気の排出を実現しながら、ピストン2が排気方向に作動して駆動室Bが負圧状態に達した場合にはチェック弁35のオリフィスが駆動室Bへの空気の吸気量を制限する作動が実現する。
【0039】
尚、この弁体として、バネで閉じ方向に付勢されたボールやポペット等の部材を用いることや、ヒンジによって作動する板状の部材を用いることも可能であり、何れの構成であっても完全な閉じ状態に達しない構成が採用される。これにより、ピストン2が吸気方向に作動した場合には駆動室Bからの空気の排出を可能にしながら、ピストン2が排気方向に作動して駆動室Bが負圧状態に達した場合には駆動室Bに対して外部から吸引する空気量を低減することで駆動室Bへの塵埃や湿気の吸引を抑制し、電動モータ4の駆動トルクの安定も実現する。
【0040】
(c)本発明の真空ポンプは弁ユニットVの構成や配置は任意に設定でき、排気経路Eと通気経路Fをとポンプハウジング3と一体的に形成する等、各部材の構成や配置は任意に設定できる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、シリンダの内部でピストンが作動する構成の真空ポンプ全般に利用することができる。
【符号の説明】
【0042】
1 シリンダ
2 ピストン
2G 環状溝
2Gc 底部(底壁)
2T 連通孔
7T 通気口
15A 開放口
17 流体フィルタ(エアーフィルタ)
18 合流空間(サイレンサ)
23 排気弁
30 ピストンリング
35 チェック弁
A 負圧室
B 駆動室
E 排気経路
F 通気経路
V 弁ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダと、
当該シリンダの内部をシリンダヘッドの側の負圧室と前記負圧室と反対側の駆動室とに仕切りつつ、シリンダの内部で往復作動自在に設けられたピストンと、
前記ピストンの外面全周に形成された環状溝に嵌め込まれた前記環状溝の幅よりも狭い幅を有するピストンリングと、
前記ピストンの往復作動時に前記負圧室への流体の給排を制御するよう前記シリンダヘッドに設けられた弁ユニットとを備え、
前記環状溝の底部と前記駆動室とに亘って連通孔を形成すると共に、前記駆動室と外部空間とに亘る通気口を形成してある真空ポンプ。
【請求項2】
前記弁ユニットが、前記ピストンの吸気方向への作動時に閉塞し、前記ピストンの排気方向への作動時に開放する排気弁を備え、
前記排気弁に連通する排気経路と、前記通気口に連通する通気経路とを備えると共に、前記排気経路と前記通気経路とを合流空間で合流させ、この合流空間をポンプ外の空間に連通させる開放口を備え、前記合流空間と開放口との中間に流体フィルタを備えている請求項1記載の真空ポンプ。
【請求項3】
前記ピストンの吸気方向への作動時に前記駆動室の流体を前記通気口から送り出し、前記ピストンの排気方向への作動時に前記通気口から前記駆動室への流体の流れを抑制するチェック弁を備えている請求項1又は2記載の真空ポンプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−251501(P2012−251501A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−125553(P2011−125553)
【出願日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】