説明

真空乾燥装置

【課題】乾燥釜を加熱する際に温度ムラが生じ難く、加熱効率が良く、熱源温度の設定精度が良いと共に、乾燥釜を加熱し過ぎて団子状の塊が発生しない真空乾燥装置を提供する。
【解決手段】内部が真空状態で加熱する処理空間10となる乾燥釜1と、乾燥釜1の周囲に設けられ熱媒が供給されて乾燥釜1を加熱する加熱ジャケット12とを具備する。乾燥釜1の処理空間10で真空状態で被乾燥物3を加熱して乾燥処理を行う。加熱ジャケット12に熱媒として真空蒸気を供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水分を含んだ有機廃棄物を真空状態で加熱して乾燥する真空乾燥装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に水分を含んだ有機廃棄物としては、食堂やホテルにおける厨房残滓物や残飯、学校や病院等の給食の残飯、スーパーマーケット、コンビニ、デパート、食料品店等における保証期間の過ぎた食料品、食品工場における残滓物等がある。このような有機廃棄物はそのままでは産業廃棄物処理業者に引き取って貰う量が極めて多くなり、コストが嵩んだりするという問題がある。
【0003】
そこで、有機廃棄物を減量するために近年、有機廃棄物を真空状態で加熱して乾燥する真空乾燥装置が提供されている(例えば、特許文献1参照)。かかる真空乾燥装置は、内部が真空状態で加熱される乾燥釜と、被乾燥物を攪拌するために乾燥釜に設けられた攪拌機とを具備し、被乾燥物を装置内に投入して密閉し、真空状態で被乾燥物を加熱すると共に攪拌して乾燥するバッチ式の処理を行うようになっている。
【0004】
この装置の主体となる乾燥釜は内部に投入した被乾燥物を真空状態で加熱して乾燥するもので、乾燥釜の周囲には加熱ジャケットが設けてあり、この加熱ジャケットに温水又は油、蒸気等の熱媒で熱を供給することで乾燥釜の内壁を加熱できるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−337258号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記において、熱媒として温水を用いる場合、加熱ジャケット中で温度ムラが生じ易く、均一に加熱することが難しい点、加熱効率が悪く、熱源温度の設定に時間がかかる点、熱源温度の設定精度が悪い点、等の問題点があるため制御性が悪いものであった。
【0007】
また、熱媒として蒸気を用いる場合、通常は圧力0.1〜0.3MPa、温度100〜133℃の蒸気を加熱ジャケットに供給するもので、温度ムラが生じ難い点、加熱効率が良い点、熱源温度の設定精度が良い点、において温水より優れているものの、温度が100℃以上となり、乾燥釜内が高温になり過ぎる。このため、乾燥釜の伝熱面となる内面に焦げ付きが発生すると共に、蒸発能力が低下し、被乾燥物が白米等の澱粉系食品残渣である場合、練りこねる動作によって、攪拌軸部等への固着(団子現象)が発生して大きな塊状となり、場合によっては、大きな塊同士が付着し、巨大な塊となり、良好な乾燥処理が困難であった。
【0008】
本発明は上記の従来の問題点に鑑みて発明したものであって、その目的とするところは、乾燥釜を加熱する際に温度ムラが生じ難く、加熱効率が良く、熱源温度の設定精度が良いと共に、乾燥釜を加熱し過ぎて団子状の塊が発生しない真空乾燥装置を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために請求項1に係る発明は、内部が真空状態で加熱する処理空間10となる乾燥釜1と、乾燥釜1の周囲に設けられ熱媒が供給されて乾燥釜1を加熱する加熱ジャケット12とを具備し、乾燥釜1の処理空間10で真空状態で被乾燥物3を加熱して乾燥処理を行う真空乾燥装置において、加熱ジャケット12に熱媒として真空蒸気を供給して成ることを特徴とするものである。
【0010】
本発明では、温水でなく蒸気(真空蒸気)を用いるため、加熱ジャケット12を均一に加熱することができて温度ムラが生じ難い。また、真空蒸気の温度の素早い制御が可能で、負荷変動に柔軟に対応可能であり、また、制御弁42のON−OFF制御のみで、容易に高精度で所望の温度に設定することができ、制御性に優れる。
【0011】
また、真空蒸気の凝縮の際の潜熱により乾燥釜1を加熱することができて、非常に高い加熱効率が得られると共に、温度差(ヒートショック)を小さくすることができる。
【0012】
また請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明において、飽和温度が90℃以下の真空蒸気を用いることを特徴とするものである。
【0013】
このような構成とすることで、温水よりも温度ムラが生じ難く、制御性に優れ、加熱効率のよい蒸気を90℃以下という100℃よりも低い温度で使用することができて、過加熱により乾燥釜の伝熱面となる内面に焦げ付きが発生するのを防止することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明にあっては、乾燥釜を加熱する際に温度ムラが生じ難く、加熱効率が良く、熱源温度の設定精度が良いと共に、乾燥釜を加熱し過ぎて団子状の塊が発生しないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態の全体をシステムを示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を添付図面に示す実施形態に基いて説明する。
【0017】
真空乾燥装置の主体となる乾燥釜1は、内部が真空状態の処理空間10となるもので、この処理空間10に投入した被乾燥物3を真空状態で加熱して乾燥するようになっている。乾燥釜1の周囲には加熱ジャケット12を設けてあり、この加熱ジャケット12に熱媒を供給することで乾燥釜1の内壁を加熱できるようになっている。本発明では、熱媒として真空蒸気を用いるもので、これについては後述する。
【0018】
また乾燥釜1内の空気は集塵器14、熱交換器15(コンデンサー)、ドレンタンク16、逆止弁17を介して真空ポンプ13で吸引されて真空状態が維持されるようになっている。またクーリングタワー18で冷却された冷却水が熱交換器15に循環させられて熱交換器15が冷却されるようになっている。真空ポンプ13を駆動して乾燥釜1内を真空引きしたとき乾燥釜1内が60〜100Torr程度に減圧されるようになっている。以下、前記程度の圧力状態を真空状態というものとする。乾燥釜1の加熱により乾燥釜1内の被乾燥物3に含有した水が蒸発されて行き、真空ポンプ13の吸引により蒸発水含有排ガスは集塵器14を通り、熱交換器15で冷却凝縮されて気液分離され、凝縮水がドレンタンク16に溜まると共にドライ排ガスは大気に排気される。ドレンタンク16には液面計19が設けられており、ドレンタンク16に一定量の凝縮水が溜まると排水されるようになっている。
【0019】
乾燥釜1内には攪拌機2を内装してあり、被乾燥物3を攪拌機2にて攪拌することにより乾燥できるようになっている。この攪拌機2はモータ(図示せず)で駆動される攪拌軸21から羽根支持軸22を放射状に突設すると共に羽根支持軸22の先端に短リボン状の羽根23を装着してあり、攪拌軸21を回転駆動することで羽根23にて攪拌できるようになっている。羽根支持軸22は攪拌軸21の周方向及び軸方向に複数本並べて突設してある。図に示す例の場合、攪拌軸21の周方向に90°づつ位相をずらせて4本突設してある。また、羽根23が攪拌軸21と平行な状態から例えば45°の角度傾斜させてある。この攪拌軸21は正転と逆転とを繰り返すように駆動されるようになっており、回転速度は2〜3rpm程度である。
【0020】
また、乾燥釜1の底部には乾燥した乾燥物を排出する乾燥物排出部24を設けてある。
【0021】
上述した真空乾燥装置は、図示しないが制御装置を備えており、真空ポンプ13や攪拌機2等の全ての被制御機器の制御を行っている。
【0022】
上記のような真空乾燥装置で水分を含んだ有機廃棄物からなる被乾燥物3を乾燥する場合について説明する。投入口蓋を開けて被乾燥物3を乾燥釜1内に投入し、投入口蓋を閉じ、真空ポンプ13にて真空引きすることで処理空間10を真空にする。そして、乾燥釜1の加熱ジャケット12に熱媒としての真空蒸気を供給して乾燥釜1内を加熱し、更に攪拌機2を駆動する。被乾燥物3は乾燥釜1内で攪拌および加熱されて水分が蒸発し、蒸発した蒸気は真空ポンプ13により吸引され、集塵器14で集塵された後、熱交換器15にて凝縮され、凝縮水はドレンタンク16を経て排水されると共に排気が排出される。
【0023】
乾燥釜1内では、含水率が例えば60%程であった被乾燥物3は乾燥処理にて含水率が15%未満にまで減少される。乾燥された乾燥物は細かな粒状となり、乾燥物排出部24から排出される。このように乾燥することにより減量され、産業廃棄物としての引き取り量を減らすことができる、また乾燥したものは肥料化したりすることもできる。
【0024】
以下、熱媒について説明する。熱媒としての真空蒸気は、90℃以下の飽和温度をもつ蒸気とし、本実施形態では一例として85℃の飽和温度をもつ蒸気、すなわち−0.042MPaG(58kPa、435mmHg)とする。
【0025】
ボイラー等の蒸気供給源41と加熱ジャケット12の熱媒入口との間に、制御弁42を途中に備えた蒸気供給管43を接続する。加熱ジャケット12の熱媒出口にドレン排出管44を接続し、ドレン排出管44の先端をトラップ45に接続する。また、加熱ジャケット12内の温度を計測する温度センサー46を設け、温度センサー46の温度に基づいて制御弁42を制御する。
【0026】
蒸気供給源41は、常圧又は高圧の蒸気を発生させるもので、0.1〜0.3MPa、本実施形態では0.2MPaの蒸気を供給可能となっている。制御弁42は通常は閉とし、蒸気供給時に開として必要量の蒸気を供給して再び閉とする。
【0027】
加熱ジャケット12に供給され85℃で飽和状態となった真空蒸気は、加熱ジャケット12を均一に加熱するため、熱媒に温水を用いる従来例のように温度ムラが生じ難いものである。また、被乾燥物3は85℃以上に加熱されず、乾燥釜1の伝熱面となる内面に焦げ付きが発生して蒸発能力が低下したり、攪拌軸21等への固着(団子現象)が発生して大きな塊状となったりすることがない。
【0028】
本発明では、温水でなく真空蒸気を用いるため、加熱ジャケット12内の真空蒸気の温度の素早い制御が可能で、負荷変動に柔軟に対応可能である。また、制御弁42のON−OFF制御のみで、容易に高精度で所望の温度(この場合は85℃)に設定することができ、制御性に優れるものである。
【0029】
加熱ジャケット12に供給された飽和状態の真空蒸気は、乾燥釜1を加熱すると、潜熱が奪われ、凝縮したドレンとなる。熱媒に85℃の温水を用いる従来例と比較すると、加熱温度は同じであるが、従来例では温水の顕熱を回収するのみで加熱効率が低いのに対し、本発明では真空蒸気の凝縮の際の潜熱を回収することができるため、非常に高い加熱効率が得られるものである。また、真空蒸気の潜熱を回収することができるため、移動する熱量の割りには熱源(真空蒸気)と被乾燥物3との温度差(ヒートショック)を小さくすることができる。
【0030】
また、従来例の温水を用いるもののように、温水を流すためのポンプを設ける必要もなく、省コスト、省施工を図ることができる。
【0031】
なお、被乾燥物3に油分が多く含まれる場合には、焦げつき防止のため、80℃の飽和温度をもつ蒸気を用いることが好ましい。
【符号の説明】
【0032】
1 乾燥釜
10 処理空間
12 加熱ジャケット
13 真空ポンプ
14 集塵器
15 熱交換器
16 ドレンタンク
17 逆止弁
18 クーリングタワー
19 液面計
2 攪拌機
21 攪拌軸
22 羽根支持軸
23 羽根
24 乾燥物排出部
3 被乾燥物
41 蒸気供給源
42 制御弁
43 蒸気供給管
44 ドレン排出管
45 トラップ
46 温度センサー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部が真空状態で加熱する処理空間となる乾燥釜と、乾燥釜の周囲に設けられ熱媒が供給されて乾燥釜を加熱する加熱ジャケットとを具備し、乾燥釜の処理空間で真空状態で被乾燥物を加熱して乾燥処理を行う真空乾燥装置において、加熱ジャケットに熱媒として真空蒸気を供給して成ることを特徴とする真空乾燥装置。
【請求項2】
飽和温度が90℃以下の真空蒸気を用いることを特徴とする請求項1記載の真空乾燥装置。

【図1】
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【公開番号】特開2010−223550(P2010−223550A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−74345(P2009−74345)
【出願日】平成21年3月25日(2009.3.25)
【出願人】(000000284)大阪瓦斯株式会社 (2,453)
【Fターム(参考)】