説明

真空冷却機能搭載食品機械とその運転方法

【課題】 食材の過冷却および冷却不足を防止すると共に、温度ムラのない真空冷却を実現する食品機械の提供。
【解決手段】 減圧手段3は、処理槽2内の気体を外部へ吸引排出して、処理槽2内を減圧する。復圧手段4は、減圧された処理槽2内へ外気を導入して、処理槽2内を復圧する。圧力センサ5は、処理槽2内の圧力を検出する。温度センサ6は、処理槽2内に収容される食材の内、冷却され易い食材12または冷却され易い箇所の温度を検出する。温度センサ6が冷却目標温度T1を検出するまで、減圧手段3により処理槽2内を減圧する。その後、圧力センサ5による処理槽内圧力が冷却保持温度T2相当の飽和蒸気圧力を維持するように、減圧手段3を作動させつつ復圧操作弁28の開度を調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、処理槽内を減圧することで、処理槽内の食材(食品を含む)を真空冷却することができる各種食品機械とその運転方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、下記特許文献1に開示されるように、真空冷却機が知られている。真空冷却機は、処理槽内の気体を外部へ吸引排出して、処理槽内を減圧することで、処理槽内の飽和蒸気温度を低下させ、食材からの水分蒸発を促すことにより、その気化潜熱を利用して食材の冷却を図る装置である。このような真空冷却機においては、処理槽内を減圧する際、減圧手段の能力にまかせて、処理槽内の気体を外部へ吸引排出している。そして、品温(食材の温度)を温度センサで監視しておき、品温が所望の冷却設定温度になると、処理槽内を大気圧まで復圧して、真空冷却を終了していた。
【特許文献1】特開平9−296975号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の方法では、減圧手段の能力にまかせて処理槽内の気体を外部へ吸引排出するので、処理槽内圧力が冷却設定温度よりも低い温度の飽和蒸気圧力となるまで、処理槽内は真空にされる。従って、食材を冷却し過ぎるという過冷却を生じるおそれがあった。
【0004】
また、従来の方法では、食材に差し込まれた温度センサに接触している箇所の品温により冷却終了するので、温度ムラが生じ、場所によっては過冷却または冷却不足を生じるおそれがあった。
【0005】
さらに、食材の種類により冷却速度に差があるので、同時に異種食材の冷却を行うと、温度ムラ、過冷却または冷却不足を生じるおそれがあった。また、同じ食材であっても、大きさや、容器内での位置や詰り具合の差などにより、冷却され易い箇所と冷却され難い箇所とが出現するため、異種食材の場合と同様に、温度ムラなどを生じるおそれがあった。
【0006】
この発明が解決しようとする課題は、食材の過冷却および冷却不足を防止すると共に、温度ムラのない真空冷却を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、前記課題を解決するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、食材が収容される処理槽と、この処理槽内の気体を外部へ吸引排出して、前記処理槽内を減圧する減圧手段と、減圧された前記処理槽内へ外気を導入して、前記処理槽内を復圧する復圧手段と、前記処理槽内の圧力を検出する圧力センサと、前記処理槽内に収容される食材の温度を検出する温度センサと、この温度センサが冷却目標温度を検出するまで、前記減圧手段により前記処理槽内を減圧後、前記温度センサによる品温が冷却保持温度を維持するか、前記圧力センサによる処理槽内圧力が前記冷却保持温度相当の飽和蒸気圧力を維持するように、前記減圧手段および/または前記復圧手段を制御する制御手段とを備えることを特徴とする真空冷却機能搭載食品機械である。
【0008】
請求項1に記載の発明によれば、品温が冷却目標温度になるまで処理槽内を減圧後、その品温が冷却保持温度を維持するか、処理槽内圧力が冷却保持温度相当の飽和蒸気圧力を維持するよう制御される。このようにして、減圧手段による処理槽内の減圧レベルが規制されると共に、圧力または温度の維持制御がなされることで、食材の過冷却や温度ムラを抑えることができる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、前記温度センサは、前記処理槽内に収容される食材の内、冷却され易い食材または冷却され易い箇所の温度を検出することを特徴とする請求項1に記載の真空冷却機能搭載食品機械である。
【0010】
請求項2に記載の発明によれば、冷却され易い食材または冷却され易い箇所の品温が冷却目標温度になるまで処理槽内を減圧後、その品温が冷却保持温度を維持するか、処理槽内圧力が冷却保持温度相当の飽和蒸気圧力を維持するよう制御される。これにより、食材の過冷却や温度ムラを抑えることができる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、前記冷却目標温度と前記冷却保持温度とは、それぞれが設定されるか、一方が設定されることで他方が特定され、前記冷却目標温度は、前記冷却保持温度と同一温度か、所定温度だけ異なる温度に設定または特定されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の真空冷却機能搭載食品機械である。
【0012】
請求項3に記載の発明によれば、冷却目標温度と冷却保持温度とは、互いに同一温度か、上下いずれかに若干異なる温度に、手動で設定または自動で特定される。これにより、食材の過冷却や温度ムラを確実に抑えて、食材の真空冷却を図ることができる。
【0013】
請求項4に記載の発明は、前記復圧手段は、前記処理槽内への給気路に、開度調整可能な復圧操作弁が設けられて構成され、前記制御手段は、前記減圧手段を作動させた状態で、前記圧力センサによる検出圧力に基づき前記復圧操作弁の開度を調整して、処理槽内圧力を前記冷却保持温度相当の飽和蒸気圧力に維持することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の真空冷却機能搭載食品機械である。
【0014】
請求項4に記載の発明によれば、冷却目標温度の到達は温度センサにて検知し、その後、圧力センサにより冷却保持温度相当の飽和蒸気圧力に処理槽内を維持制御することで、食材の過冷却および温度ムラを抑えることができる。しかも、この維持制御は、減圧手段を作動させつつ、復圧操作弁の開度を調整することにより行われるので、構成および制御が簡易である。典型的には、減圧手段の能力にまかせて処理槽内の気体を外部へ吸引排出しつつ、復圧操作弁の開度を調整するだけでよい。
【0015】
請求項5に記載の発明は、前記処理槽内に収容される食材の内、冷却され易い食材または冷却され易い箇所の温度を検出する第一温度センサに加え、冷却され難い食材または冷却され難い箇所の温度を検出する第二温度センサを備え、前記第一温度センサが前記冷却目標温度を検出するまで、前記減圧手段により前記処理槽内を減圧後、前記第二温度センサが前記冷却目標温度または前記冷却保持温度を検出するまで、前記第一温度センサによる品温が前記冷却保持温度を維持するか、前記圧力センサによる処理槽内圧力が前記冷却保持温度相当の飽和蒸気圧力を維持することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の真空冷却機能搭載食品機械である。
【0016】
請求項5に記載の発明によれば、冷却され易い食材または冷却され易い箇所が所望温度に到達した後は、冷却され難い食材または冷却され難い箇所が所望温度に下がるまで、品温または処理槽内圧力の維持制御がなされる。これにより、温度ムラ、過冷却および冷却不足が確実に防止される。
【0017】
請求項6に記載の発明は、食材が収容される処理槽内を減圧して、前記食材を真空冷却可能な食品機械の運転方法であって、冷却され易い食材または冷却され易い箇所の温度が冷却目標温度になるまで、前記処理槽内を減圧する減圧工程と、その後、冷却され易い食材または冷却され易い箇所の温度が冷却保持温度を維持するか、前記処理槽内の圧力が前記冷却保持温度相当の飽和蒸気圧力を維持する保持工程とを含むことを特徴とする真空冷却機能搭載食品機械の運転方法である。
【0018】
請求項6に記載の発明によれば、冷却され易い食材または冷却され易い箇所の品温が冷却目標温度になるまで処理槽内を減圧後、その品温が冷却保持温度を維持するか、処理槽内圧力が冷却保持温度相当の飽和蒸気圧力を維持するよう制御される。これにより、食材の過冷却や温度ムラを抑えることができる。
【0019】
さらに、請求項7に記載の発明は、冷却され易い食材または冷却され易い箇所の温度が前記冷却目標温度または前記冷却保持温度になった後、設定時間経過するか、および/または、冷却され難い食材または冷却され難い箇所の温度が前記冷却目標温度または前記冷却保持温度になるまで、前記保持工程を行うことを特徴とする請求項6に記載の真空冷却機能搭載食品機械の運転方法である。
【0020】
請求項7に記載の発明によれば、冷却され易い食材または冷却され易い箇所が所望温度に到達した後は、設定時間経過するか、および/または、冷却され難い食材または冷却され難い箇所が所望温度に下がるまで、品温または処理槽内圧力の維持制御がなされる。これにより、温度ムラ、過冷却および冷却不足が確実に防止される。
【発明の効果】
【0021】
この発明によれば、食材の過冷却および冷却不足を防止すると共に、温度ムラのない真空冷却を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
つぎに、この発明の実施の形態について説明する。
この発明は、真空冷却機能を有する各種食品機械に適用される。真空冷却とは、処理槽内の気体を外部へ吸引排出して、処理槽内を減圧することで、処理槽内の飽和蒸気温度を低下させ、食材からの水分蒸発を促すことにより、その気化潜熱を利用して処理槽内の食材に図られる冷却をいう。
【0023】
真空冷却機能を有する食品機械には、たとえば、真空冷却機、蒸煮冷却機、飽和蒸気調理機、真空冷風複合冷却機が含まれる。真空冷却機は、処理槽内を減圧して、処理槽内の食材の真空冷却を図る装置である。蒸煮冷却機は、蒸気により処理槽内の食材の加熱を図った後、処理槽内を減圧して、処理槽内の食材の真空冷却を図る装置である。飽和蒸気調理機は、処理槽内の圧力を調整することで、処理槽内の飽和蒸気温度を調整して、所望温度の飽和蒸気により処理槽内の食材の加熱を図る装置であり、加熱調理後には所望により、処理槽内を減圧して、処理槽内の食材の真空冷却を図ることができる装置である。さらに、真空冷風複合冷却機は、食材を収容した処理槽内を減圧することによる真空冷却と、処理槽内の食材へ冷風を吹き付けることによる冷風冷却とを図ることができる装置である。
【0024】
真空冷却機、蒸煮冷却機、飽和蒸気調理機および真空冷風複合冷却機などの内、いずれの食品機械の場合でも、真空冷却機能に関する構成および運転は同じである。具体的に説明すると、いずれの場合も、食材が収容される処理槽と、この処理槽内を減圧する減圧手段と、減圧された処理槽内を復圧する復圧手段と、減圧手段および復圧手段を制御する制御手段とを備える。
【0025】
処理槽は、食材を収容可能な中空構造に形成され、典型的には略矩形のボックス状に形成された金属製の缶体である。この処理槽は、一側面へ開口して中空部を有する処理槽本体と、この処理槽本体の開口部を開閉する扉とから構成される。但し、処理槽は、このような構成に限らず、上方へ開口する有底円筒状の処理槽本体と、この処理槽本体の上部開口を開閉する扉とから構成してもよい。
【0026】
処理槽には、減圧手段および復圧手段が接続されると共に、圧力センサおよび温度センサが設けられる。圧力センサは、処理槽内の圧力を検出し、温度センサは、処理槽内に収容される食材の温度(品温)を検出する。ここで、温度センサは、処理槽内に収容される食材の内、冷却され易い食材または冷却され易い箇所の温度を検出するよう設けるのが好ましい。特に、最も冷却され易い食材または最も冷却され易い箇所に、温度センサを設けるのが好ましい。通常は、最も冷却され易い食材の最も冷却され易い箇所と思われる部分の温度を検出可能に、食材に温度センサを差し込むなどして設けられる。
【0027】
ここで、冷却され易い食材としては、たとえば炊飯された米飯が挙げられ、逆に冷却され難い食材としては、たとえば鳥の唐揚げのように水分が少なく穴の空いていない食材や、カレーなどの液状物が挙げられる。また、同種食材でも、小さな食材ほど、冷却され易い食材といえる。さらに、容器内での位置や詰り具合の差などにより、冷却され易い箇所と冷却され難い箇所とが出現するので、これらを考慮して温度センサは設置される。
【0028】
減圧手段は、処理槽内の気体を外部へ吸引排出する手段である。減圧手段は、真空ポンプ、またはそれに代えてもしくはそれに加えて、蒸気エゼクタまたは水エゼクタなどを備える。減圧手段は、排気路を介して、処理槽に接続される。従って、減圧手段により、排気路を介して処理槽内の気体を外部へ吸引排出して、処理槽内を減圧することができる。
【0029】
減圧手段は、さらに熱交換器を排気路に備えるのが望ましい。熱交換器は、減圧手段として真空ポンプを備える場合には、真空ポンプより上流側に設けられ、減圧手段として蒸気エゼクタを備える場合には、蒸気エゼクタより下流側に設けられる。熱交換器は、排気路内の蒸気を、冷却し凝縮させるものである。この冷却および凝縮作用をなすために、熱交換器には冷却水が供給され、排気路の冷却が図られる。排気路内の蒸気を予め熱交換器で凝縮させておくことで、その後の真空ポンプの負荷を軽減して、減圧能力を高めることができる。
【0030】
復圧手段は、減圧された処理槽内へ外気を導入して、処理槽内を復圧する手段である。復圧手段は、給気路を介して、処理槽に接続される。給気路の中途には、復圧操作弁が設けられ、この復圧操作弁を開くことで、処理槽内を大気圧まで復圧することができる。処理槽内への外気の導入は、衛生面を考慮して、フィルターを介して行うのが望ましい。
【0031】
復圧操作弁としては、開度調整可能なものを用いるのが好ましい。この場合、減圧手段を作動させた状態で、復圧操作弁の開度を徐々に閉じることで、処理槽内を徐々に減圧することができる。処理槽内を徐々に減圧することで、食材を徐冷することができる。また、復圧操作弁が開度調整可能な場合、減圧手段の作動を停止した状態で、復圧操作弁の開度を徐々に開くことで、処理槽内を徐々に復圧することができる。処理槽内を徐々に大気圧まで復圧することで、ムラのない真空解除が可能である。
【0032】
制御手段は、減圧手段および復圧手段などを制御する手段である。逆にいうと、減圧手段や復圧手段などは、制御手段により制御され、予め設定されたプログラムに従い、所定の運転工程が順次に実行される。その際、圧力センサによる処理槽内圧力、温度センサによる品温の他、経過時間などを用いて制御される。そして、本発明では、前記運転工程には、少なくとも真空冷却工程が含まれる。
【0033】
本実施形態の真空冷却工程について説明すると、まず、温度センサが冷却目標温度を検出するまで、減圧手段により処理槽内の減圧が図られる(減圧工程)。その後、温度センサによる品温が冷却保持温度を維持するか、圧力センサによる処理槽内圧力が冷却保持温度相当の飽和蒸気圧力を維持するように、品温または圧力の維持制御がなされる(保持工程)。
【0034】
ここで、冷却目標温度と冷却保持温度とは、互いに同一の温度であってもよいし、異なる温度であってもよい。また、冷却目標温度や冷却保持温度は、通常は、特定温度であるが、特に冷却保持温度は、ある程度幅のある温度域であってもよい。
【0035】
また、冷却目標温度と冷却保持温度とは、それぞれを手動で設定してもよいし、いずれか一方が手動で設定されることで、他方が自動で特定される構成としてもよい。たとえば、冷却保持温度が手動で設定されると共に、冷却目標温度は、冷却保持温度と同一温度か、所定温度だけ上下に異なる温度に、手動で設定または自動で特定されてもよい。冷却目標温度を冷却保持温度よりも若干高くしておくことで、冷却保持温度相当の飽和蒸気圧力(処理槽内の飽和蒸気温度が冷却保持温度である状態)より処理槽内が減圧されても、冷却目標温度の検出後、冷却保持温度へ移行するまでに、品温が冷却保持温度を下回るのを防止することができる。一方、冷却目標温度を冷却保持温度よりも若干低くしておくことで、冷却され易い食材または冷却され易い箇所の温度が、冷却目標温度になった後、冷却保持温度またはそれ相当の飽和蒸気圧力を維持することで、冷却され難い食材または冷却され難い箇所の温度が、冷却目標温度よりも高い側で冷却を終了することができる。
【0036】
前記維持制御は、典型的には、圧力センサによる処理槽内圧力に基づき、復圧操作弁の開度を調整することでなされる。具体的には、減圧手段を一定能力で作動させた状態で、圧力センサによる検出圧力に基づき復圧操作弁の開度を調整して、処理槽内圧力を冷却保持温度相当の飽和蒸気圧力に維持する。つまり、処理槽内の飽和蒸気温度が冷却保持温度になるように、処理槽内圧力を調整する。通常は、減圧手段の能力にまかせて処理槽内の気体を外部へ吸引排出しつつ、復圧操作弁の開度を調整するだけでよい。但し、品温が冷却保持温度を維持するように、温度センサの検出温度に基づき、復圧操作弁の開度を調整してもよい。いずれの場合も、品温が冷却目標温度または冷却保持温度になった後、設定時間経過後、処理槽内を大気圧まで復圧して、真空冷却工程を終了する。
【0037】
但し、真空冷却工程は、第一温度センサと第二温度センサとの二つの温度センサを用いて、次のように行ってもよい。この場合、第一温度センサは、冷却され易い食材または冷却され易い箇所の温度を検出するよう設けられ、第二温度センサは、冷却され難い食材または冷却され難い箇所の温度を検出するよう設けられる。そして、まず、第一温度センサが冷却目標温度を検出するまで、減圧手段により処理槽内を減圧する。その後、第一温度センサによる品温が冷却保持温度を維持するか、圧力センサによる処理槽内圧力が冷却保持温度相当の飽和蒸気圧力を維持するよう制御する。そして、第二温度センサが冷却目標温度または冷却保持温度を検出すると、処理槽内を大気圧まで復圧して、真空冷却工程を終了する。但し、第一温度センサによる冷却目標温度または冷却保持温度の検出からの設定時間の経過と、第二温度センサによる冷却目標温度または冷却保持温度の検出との双方を、前記維持制御の終了条件としてもよい。
【0038】
ところで、処理槽内の圧力や温度の調整は、本実施形態では、減圧手段による減圧時に処理槽内へ外気を導入して行うが、減圧手段の吸込口へ外気を導入するようにしてもよい。また、外気を導入せずに、減圧手段の駆動の有無を切り替えてもよい。さらに、減圧手段の能力を可変しつつ、復圧手段を調整してもよい。
【実施例】
【0039】
以下、この発明の具体的実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の真空冷却機能搭載食品機械の一実施例を示す概略構成図である。本実施例の食品機械は、真空冷却機1である。
【0040】
この真空冷却機1は、冷却を図りたい食材が収容される処理槽2と、この処理槽2内の気体を外部へ吸引排出して処理槽2内を減圧する減圧手段3と、減圧された処理槽2内へ外気を導入して処理槽2内を復圧する復圧手段4と、処理槽2内の圧力を検出する圧力センサ5と、処理槽2内に収容される食材の温度(品温)を検出する温度センサ6と、これらセンサ5,6の検出信号などに基づき前記各手段3,4を制御する制御手段7とを備える。
【0041】
本実施例の処理槽2は、正面へ開口して中空部8を有する処理槽本体9と、この処理槽本体9の開口部を開閉する扉(図示省略)とを備えた金属製の缶体である。このような構成であるから、扉を閉じることで、処理槽本体9の中空部8は密閉される。処理槽2内への食材の収容は、処理槽2に出し入れされるワゴン(図示省略)を介して行ってもよいし、図示例のように処理槽2内に棚板10,10,…を設けることで対応してもよい。また、食材は、適宜、ホテルパンなどの容器11に入れて、処理槽2内に収容される。
【0042】
処理槽2には、前述したとおり、圧力センサ5と温度センサ6とが設けられる。本実施例の温度センサ6は、測温部を食材に差し込んで、食材の温度を検出する。この際、温度センサ6は、処理槽内に収容される食材の内、冷却され易い食材または冷却され易い箇所の温度を検出するように設けるのがよい。
【0043】
図1では、異種食材を処理槽2内に収容して、同時に真空冷却を図る状態を示している。そして、上段の食材は、下段の食材と比べて、冷却され易い食材とする。すなわち、図示例では、上段の食材が、冷却され易い食材12とされ、下段の食材が、冷却され難い食材13とされる。この場合、温度センサ6は、冷却され易い食材12に、差し込まれて設けられる。
【0044】
処理槽2には、処理槽2内の空気や蒸気を外部へ吸引排出して、処理槽2内を減圧する減圧手段3が接続される。本実施例では、処理槽2からの排気路14には、処理槽2の側から順に、蒸気エゼクタ15、熱交換器16、逆止弁17および水封式の真空ポンプ18が設けられる。
【0045】
蒸気エゼクタ15は、吸入口19が処理槽2に接続されて設けられる。そして、蒸気エゼクタ15には、入口20から出口21へ向けて、給蒸路22からの蒸気が噴出可能とされる。入口20から出口21へ向けて蒸気を噴出させることで、処理槽2内の気体も出口へ向けて吸引排出される。給蒸路22に設けた給蒸弁23の開閉を操作することで、蒸気エゼクタ15の作動の有無を切り替えることができる。
【0046】
熱交換器16は、排気路14内の蒸気を冷却し凝縮させるものである。そのために、熱交換器16には、熱交給水弁24を介して水が供給され、熱交換器16からの排水は、排水口へ排出される。排気路14内の蒸気を予め凝縮させておくことで、その後の真空ポンプ18の負荷を軽減して、処理槽2内の減圧を有効に図ることができる。
【0047】
真空ポンプ18には、封水給水弁25を介して水が供給され、真空ポンプ18からの排水は、排水口へ排出される。真空ポンプ18を作動させる際、封水給水弁25は、真空ポンプ18に連動して開かれる。
【0048】
処理槽2には、減圧された処理槽2内へ外気を導入して、処理槽2内を復圧する復圧手段4が接続される。本実施例では、処理槽2への給気路26には、処理槽2へ向けて順に、除菌フィルター27、復圧操作弁28および逆止弁29が設けられる。従って、処理槽2内が減圧された状態で、復圧操作弁28を開くと、フィルター27を介して外気を処理槽2内へ導入し、処理槽2内を復圧することができる。
【0049】
復圧操作弁28は、比例制御弁またはモータバルブのように、開度調整可能なものが好ましい。この場合、処理槽2内の減圧時または復圧時に、復圧操作弁28の開度を調整することで、処理槽2内の圧力を徐々に変化させることができる。
【0050】
減圧手段3や復圧手段4などは、制御手段7により制御される。この制御手段7は、それが把握する経過時間の他、前記各センサ5,6の検出信号などに基づき、前記各手段3,4を制御する制御器30である。具体的には、給蒸弁23、熱交給水弁24、真空ポンプ18、封水給水弁25、復圧操作弁28、圧力センサ5および温度センサ6などは、制御器30に接続されている。そして、制御器30は、所定の手順(プログラム)に従い、処理槽2内の食材12,13の真空冷却を図る。
【0051】
図2は、本実施例の真空冷却機1を用いた真空冷却方法の一例を示す図であり、温度センサ6により検出される冷却され易い食材12または冷却され易い箇所の温度と、経過時間との関係を示している。
【0052】
本実施例の真空冷却工程は、温度センサ6が冷却目標温度T1を検知するまでの減圧工程S1と、その後の処理槽内圧力の保持工程S2とを含んで実行される。真空冷却工程の実行に際しては、予め、処理槽2内に真空冷却を図りたい食材12,13を収容して、処理槽2の扉を閉めておけばよい。真空冷却を図りたい食材12,13とは、典型的には加熱調理後の食材である。
【0053】
減圧工程S1は、温度センサ6にて品温を監視しつつ、品温が冷却目標温度T1になるまで、処理槽2内を減圧する工程である。この際、復圧操作弁28の開度を徐々に閉じることで、処理槽2内を徐々に減圧して、食材12,13を徐冷することができる。
【0054】
本実施例では、温度センサ6は、冷却され易い食材12または冷却され易い箇所の温度を検出するよう設けられているので、冷却され易い食材12または冷却され易い箇所の温度が冷却目標温度T1になるまで、処理槽2内は減圧される。冷却され易い食材12または冷却され易い箇所の温度に基づき制御することで、食材12,13の過冷却を防止することができる。
【0055】
また、本実施例の減圧工程S1では、処理槽内圧力を制限することなく、品温が冷却目標温度T1になるまで減圧を図ることができる。すなわち、処理槽内圧力を、冷却目標温度T1相当の飽和蒸気圧力よりも低くして、食材12,13の真空冷却を図ることができる。従って、特に、減圧手段3の能力一杯で食材12,13の急冷を図る場合、処理速度の向上を図ることができる。
【0056】
温度センサ6が冷却目標温度T1を検知すると、処理槽内圧力の保持工程S2へ移行する。この保持工程S2は、圧力センサ5にて処理槽内圧力を監視しつつ、処理槽内圧力を冷却保持温度T2相当の飽和蒸気圧力に維持する工程である。つまり、処理槽内の飽和蒸気温度を冷却保持温度T2に維持する工程である。
【0057】
本実施例では、保持工程S2の冷却保持温度T2は、減圧工程S1の冷却目標温度T1と同一温度としている(T1=T2)。但し、冷却保持温度T2は、冷却目標温度T1と同一温度ではなく、異なる温度としてもよい。たとえば、冷却保持温度T2は、冷却目標温度T1よりも所定温度だけ、低い温度または高い温度としてもよい。
【0058】
冷却目標温度T1および冷却保持温度T2は、変更可能に制御器30に設定されるが、その際、一方の温度が設定されることで、他方の温度が特定される構成としてもよい。たとえば、冷却保持温度T2が設定可能とされ、冷却目標温度T1は、冷却保持温度T2と同一温度か、所定温度だけ高い温度または低い温度に設定または特定される。さらに、本実施例では、冷却保持温度T2に加えて、冷却保持時間も自由に設定可能とされている。
【0059】
処理槽内圧力の保持工程S2は、本実施例では、減圧手段3を一定能力で作動させた状態で、圧力センサ5による検出圧力に基づき、復圧操作弁28の開度を調整することで行われる。これにより、処理槽内圧力が冷却保持温度T2相当の飽和蒸気圧力に維持され、品温が冷却保持温度T2を下回るのが防止される。このようにして、冷却され難い食材13または冷却され難い箇所の温度が冷却保持温度T2にまで下がってくるのを待機することで、食材12,13の過冷却および冷却不足を防止しつつ、温度ムラのない真空冷却が実現される。
【0060】
具体的には、保持工程S2は、温度センサ6が冷却目標温度T1または冷却保持温度T2を検知してから冷却保持時間を経過するまで継続される。あるいは、これに代えてまたはこれに加えて、冷却され難い食材13または冷却され難い箇所に、第二の温度センサ(図示省略)を差しておき、これが冷却目標温度T1または冷却保持温度T2になるまで保持工程S2が継続される。
【0061】
保持工程S2の終了後には、減圧手段3の作動を停止した状態で、復圧操作弁28を開いて、処理槽2内を大気圧まで復圧すればよい。この際、復圧操作弁28の開度を徐々に開くことで、処理槽2内を徐々に復圧して、ムラのない真空解除を図ることができる。
【0062】
本発明の真空冷却機能搭載食品機械とその運転方法は、前記実施例の構成に限らず、適宜変更可能である。たとえば、前記実施例では、真空冷却機1に適用した例を示したが、蒸煮冷却機、飽和蒸気調理機、真空冷風複合冷却機などにも同様に適用可能である。
【0063】
すなわち、蒸煮冷却機または飽和蒸気調理機の場合には、前記実施例において、処理槽2内へ蒸気を供給する給蒸手段をさらに設置すればよい。これにより、給蒸手段により、処理槽2内へ蒸気を供給して食材12,13の加熱を図った後、減圧手段3により、処理槽2内を減圧して食材12,13の真空冷却を図ることができる。但し、給蒸手段は、ボイラなどからの蒸気を処理槽2内へ供給する以外に、処理槽2内に予め貯留しておいた水を蒸発させてもよい。
【0064】
また、真空冷風複合冷却機の場合には、前記実施例において、処理槽2内に冷風を生じさせる手段をさらに設置すればよい。これにより、食材12,13を収容した処理槽2内を減圧することによる真空冷却と、処理槽2内の食材12,13へ冷風を吹き付けることによる冷風冷却とを図ることができる。
【0065】
また、前記実施例では、温度センサ6による冷却目標温度T1の検知後、圧力センサ5を用いた冷却保持温度T2の維持制御がなされるが、温度センサ6の故障などに備えて、所望時には、圧力センサ5による制御のみに自動で切り替える構成としてもよい。たとえば、減圧工程S1において所定圧力まで減圧されるか、減圧工程S1が所定時間だけ継続された後は、仮に温度センサ6が冷却目標温度T1を検知しなくても、保持工程S2へ移行するよう構成する。
【0066】
また、前記実施例では、保持工程S2は、処理槽内圧力が冷却保持温度T2相当の飽和蒸気圧力を維持するように、復圧操作弁28の開度を調整したが、圧力の維持制御は、適宜変更可能である。たとえば、復圧操作弁28は閉じたままとしておき、単に減圧手段3をオンオフ制御して、処理槽2内を設定圧力に保持してもよい。さらに、減圧手段3と復圧手段4の双方を制御して、処理槽2内の圧力を調整してもよい。
【0067】
また、保持工程S2は、圧力センサ5によらず温度センサ6を用いて制御してもよい。この場合、温度センサ6のよる検出温度が冷却保持温度T2を維持するように、減圧手段3および/または復圧手段4を制御すればよい。そして、冷却保持時間だけ保持工程S2を実行するか、冷却され難い食材13または冷却され難い箇所に、第二の温度センサを差しておき、これが冷却目標温度T1または冷却保持温度T2になるまで保持工程S2を継続すればよい。
【0068】
さらに、減圧手段3や復圧手段4の各構成は、前記実施例の構成に限定されない。たとえば、減圧手段3は、前記実施例において蒸気エゼクタ15を省略したり、熱交換器16や真空ポンプ18に替えて水エゼクタを用いたりしてもよい。また、復圧手段4は、開度調整可能な復圧操作弁28を設ける替わりに、給気路26を並列して設けておき、それぞれに電磁弁を設けて構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の真空冷却機能搭載食品機械の一実施例を示す概略構成図であり、真空冷却機に適用した例を示している。
【図2】図1の真空冷却機を用いた真空冷却方法の一例を示す図であり、温度センサによる品温と経過時間との関係を示している。
【符号の説明】
【0070】
1 真空冷却機(食品機械)
2 処理槽
3 減圧手段
4 復圧手段
5 圧力センサ
6 温度センサ
7 制御手段
12 冷却され易い食材
13 冷却され難い食材
26 給気路
28 復圧操作弁
S1 減圧工程
S2 保持工程
T1 冷却目標温度
T2 冷却保持温度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
食材が収容される処理槽と、
この処理槽内の気体を外部へ吸引排出して、前記処理槽内を減圧する減圧手段と、
減圧された前記処理槽内へ外気を導入して、前記処理槽内を復圧する復圧手段と、
前記処理槽内の圧力を検出する圧力センサと、
前記処理槽内に収容される食材の温度を検出する温度センサと、
この温度センサが冷却目標温度を検出するまで、前記減圧手段により前記処理槽内を減圧後、前記温度センサによる品温が冷却保持温度を維持するか、前記圧力センサによる処理槽内圧力が前記冷却保持温度相当の飽和蒸気圧力を維持するように、前記減圧手段および/または前記復圧手段を制御する制御手段と
を備えることを特徴とする真空冷却機能搭載食品機械。
【請求項2】
前記温度センサは、前記処理槽内に収容される食材の内、冷却され易い食材または冷却され易い箇所の温度を検出する
ことを特徴とする請求項1に記載の真空冷却機能搭載食品機械。
【請求項3】
前記冷却目標温度と前記冷却保持温度とは、それぞれが設定されるか、一方が設定されることで他方が特定され、
前記冷却目標温度は、前記冷却保持温度と同一温度か、所定温度だけ異なる温度に設定または特定される
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の真空冷却機能搭載食品機械。
【請求項4】
前記復圧手段は、前記処理槽内への給気路に、開度調整可能な復圧操作弁が設けられて構成され、
前記制御手段は、前記減圧手段を作動させた状態で、前記圧力センサによる検出圧力に基づき前記復圧操作弁の開度を調整して、処理槽内圧力を前記冷却保持温度相当の飽和蒸気圧力に維持する
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の真空冷却機能搭載食品機械。
【請求項5】
前記処理槽内に収容される食材の内、冷却され易い食材または冷却され易い箇所の温度を検出する第一温度センサに加え、冷却され難い食材または冷却され難い箇所の温度を検出する第二温度センサを備え、
前記第一温度センサが前記冷却目標温度を検出するまで、前記減圧手段により前記処理槽内を減圧後、前記第二温度センサが前記冷却目標温度または前記冷却保持温度を検出するまで、前記第一温度センサによる品温が前記冷却保持温度を維持するか、前記圧力センサによる処理槽内圧力が前記冷却保持温度相当の飽和蒸気圧力を維持する
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の真空冷却機能搭載食品機械。
【請求項6】
食材が収容される処理槽内を減圧して、前記食材を真空冷却可能な食品機械の運転方法であって、
冷却され易い食材または冷却され易い箇所の温度が冷却目標温度になるまで、前記処理槽内を減圧する減圧工程と、
その後、冷却され易い食材または冷却され易い箇所の温度が冷却保持温度を維持するか、前記処理槽内の圧力が前記冷却保持温度相当の飽和蒸気圧力を維持する保持工程と
を含むことを特徴とする真空冷却機能搭載食品機械の運転方法。
【請求項7】
冷却され易い食材または冷却され易い箇所の温度が前記冷却目標温度または前記冷却保持温度になった後、設定時間経過するか、および/または、冷却され難い食材または冷却され難い箇所の温度が前記冷却目標温度または前記冷却保持温度になるまで、前記保持工程を行う
ことを特徴とする請求項6に記載の真空冷却機能搭載食品機械の運転方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−249256(P2008−249256A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−91811(P2007−91811)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(000175272)三浦工業株式会社 (1,055)
【出願人】(504143522)株式会社三浦プロテック (488)
【Fターム(参考)】